【ミリしら転生ゲーマー ~1ミリも知らないゲームの世界に転生したけど全力で原作を守護ります~ 02】 ウスバー／瑞色 来夏 エンターブレイン
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攻撃力1!折れた刀で無双せよ!うっかりミスから始まる予測不能な英雄譚。
怪しいメールから届いた「理想の世界への転生権」。
昔やり込んだゲーム世界に行けるなら、と生まれ変わったその先は……1ミリも知らないゲームの世界!
そのうえ、攻略失敗=世界滅亡で!?
ミリしらな世界で立ち塞がる次なるイベントはレベル100超えの猛者が集う武術大会。
倍以上のレベルを誇る上級生たちを相手に裏取引や携帯魔物、自爆魔法に折れた刀など異次元の発想で大会の優勝を目指す!
全ては「原作を守護(まも)る」ため!!
秘策&奇策がさく裂する第2巻!
まあわかります。わかります。
これはゲームに限りませんけれど、ある程度以上に成熟したジャンルってのはテンプレートとなるものが出来上がります。
ゲームや物語のシナリオとか展開とかなら尚更ですね。傑作は、そういうテンプレートを越えたり逸脱した所に生じるものでもありますけど、それでも一から十まで定番となる展開や流れを無視できるものではない。逸脱するにしても、やっぱり導線ってのはあるんですよ。
もちろん、やたらとミスリードや導線伏線の隠蔽に優れていて、あとになってあれはそういう事だったのか！？ と気付かされるようなものも多分にあるので、一概には言い切れないんですけどね。
しかし、特にゲームという媒体はプレイヤーが行き詰まってしまうと、そこで攻略が止まってしまうために、そもそもクリアさせる気がないような変態作品でなければ、ちゃんとわかりやすく導線が引かれているもの、と捉えてかまわないでしょう。
たとえ、かけらもミリもそのゲームについて知らなかったとしても、幾多の同じジャンルのゲームをクリアしてきたゲーマーなら。特にやりこみにやりこみを重ねている重度のゲーマーなら、何となく先の展開や求められている流れ、というのはわかるでしょう。
この原作ゲームについて全く知らないにも関わらず、主人公のアルマが手探りではあってもある程度の自信を持って原作遵守の展開に持っていける、と思っているのはあながち過剰な自信ではない、という事をおわかりいただきたい。
ただ、この世界の原作ゲームが彼の思う所の「ギャルゲー」だったとしたら、の話ではあるんですけれど。
決して計算を間違えない電卓を使っても、そもそも入力する数値が間違ってたら正しい答えは出てこないんですよ！
「ああ、この問題は１０＋１０だから答えは＝２０だね」と正しい計算をしたとしても、そもそも問題が「１０＋１０」じゃなくて「１０×１０」だったとしたら！？
これが女性キャラを攻略するギャルゲーであり、自分がその主人公である、というそもそもの前提となる情報が間違えていて、これは乙女ゲームであり自分はその攻略キャラの一人である、というのが正しい入力値だったとしたら？
当然、原作を遵守しようとすればするほど、なぜか攻略キャラが主人公ムーブを乗っ取ってやりたい放題はじめる、というどう転んでも原作破壊にしかならない展開になっていくわけです。
わーい。
まあでも、これだけ個性的な女性キャラが多いしやり込み要素もやたらと濃い乙女ゲーとか知らないと予想つかないですよね。もともと、ギャルゲーをアーキタイプにして作ったゲームらしいですし。
てか、そもそもこれが想定通りギャルゲーだったとしても、全然原作の流れ守護れてないですよね！？ わりとやりたい放題やっちゃってますよね、アルマくん！？ どっちにしろアウトじゃねえか。
また徹底してシステムとしての強さを追求しているのは、この作者さんらしい要素と言えましょう。どれほど努力を積み重ねても、指定された要素をクリアしないと一切強くなれない、というのは攻略情報を持たない現地の人々にとっては、これかなり酷な仕様ですよね。
間違った練習方法では技量が伸びなかったり体力があがらなかったり、身体を壊してしまったり、というのは現実にもあることですけれど、それにしても条件がニッチすぎるんだよなあ。人生かかっている以上、検証勢なんてのが生まれづらいのもよくわかる。
こういうシステム的な強くなる方法を突き詰めていくお話ってのは、どうにも人間味に欠ける雰囲気になりかねないし、作業的な抑揚のない展開になってしまう事も珍しくないと思うのですけれど、本作はそのへん、とにかくキャラクターの明るさや魅せ方もあるんでしょうけれど、ひたすら楽しい作りになってるんですよね。
また、伸び悩んでいた子が殻を割ってメキメキと成長していく様子、というのは何だかんだとワクワクするお話なのです。ずっと頑張ってたのに報われなかった子が、ズルをしたわけじゃなく正しい訓練方法でちゃんと努力に見合った伸び方をした、ということでもありますからね。見てて気持ちいいんですよ。
アルマは、訓練方法についても秘匿せずにどんどんと公開してみんなに伝えているので、そのあたりのあけっぴろげさも鬱屈たまらなくていいですし。男友達とも実に爽やかなライバル関係を構築していってますし。
このあたり、乙女ゲーだというのは納得。イケメン攻略キャラ同士が清々しい感じで仲良くなるのって、乙女ゲーネタの物語だと見慣れた光景と言えなくもないですし。
しかし、アルマというキャラクターについて、またラストで衝撃的な情報が明らかになったわけですけれど……いや、それってそうなっちゃったらメイン攻略キャラとは言えないんじゃないの？ 個別エンドないってことなんじゃないのそれ！？
あと、本来のこの乙女ゲームの主人公でありますが、やはりというべきかレミナがそれなんですねえ。
ただ、一番最初にトリシャと一緒にアルマと行動するようになったわりには目立たないなあ、と思っていたら、トリシャと共にちゃんと意図してあまり前に出ないようにしていたのか。
レミナに関してはトリシャがかなり覚悟キメて様々なものを費やしてレミナを守っていて、むしろ作中で一番守護って居るのってトリシャじゃないの！？ 一番健気に献身的に頑張っている子に見えるので、この二人の淡い友情をこそアルマには守護ってほしいところでありますねえ。
しました
八岐
が
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