【魔法使いの引っ越し屋 ２．ダンジョン・天空城・時を越えたお仕事もお任せください】 坂石 遊作／いちかわ はる カドカワBOOKS
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引っ越し屋に訪れる最大の試練――魔法が紡ぐ出会いと別れの物語、第二弾!
王国一と謳われる魔法使いソフィは引っ越し屋を営む少女。
今度のお客さんは、ダンジョンに住みたいという研究マニアの学者に、地上の暮らしに憧れる天空城住まいの女の子!? ダンジョンを「内見」しながらクリスタルに秘められた謎を探ったり、罠や仕掛けだらけの天空城に悪戦苦闘していたら、魔王が生きていた五十年前の過去から「あるもの」の引っ越しに挑むことになって――?
剣と魔法の世界で紡がれる出会いと別れの物語、第二弾。
いや、流石にテーマがテーマだけに、何巻も続く長期シリーズにはならなかったか。そりゃ、引っ越しってあとがきでも書いてらっしゃいましたが、究極モノを動かすだけですもんね。
でも、出会いと別れ。素敵な旅立ちというコンセプトを込めることで、これだけドラマチックなストーリーとなるのですから、素晴らしいなあ。
何気にこれ、一つ一つの話は独立した別の物語なのに、この２巻で色んなところで繋がって連結して一綴りのお話になってもいくんですよね。
でもそうかー、別れを惜しみ出会いを恐れ、それでも引っ越し屋という出会いと別れを紡ぐお仕事に憧れて、それを志して夢を叶えた魔法使いの物語を描くのなら、やっぱり彼女……ソフィ自身の出会いと別れもまた最大の主題となり得たのでしょうし、あの結末も納得は出来るんですよね。
その相手となるユーリが、出自や経緯なんかは全然違うのだけれど、ソフィと同じように目をキラキラさせながら世界の広さに魅了され、なんてことのない日常の風景に感動し、そこに行ってみたい、そこで暮らしてみたい。そうやって憧れた場所が同じ王都であったというのも、ソフィととても良く似ていました。
ユーリは、在りし日のもうひとりのソフィだった、とも言えるのではないでしょうか。
ソフィがただの依頼人という以上にユーリに肩入れしていったのも、そう考えるとよくわかるんですよね。ただ、親愛の情を深めていったというだけじゃない、かつて自分に育ての親であった引っ越し屋の老夫婦が伝えてくれたものを、自分もまたこの娘に伝えられたら、という思い。
それは転移事故で天空城に閉じ込められるはめになったソフィを、地上の友人たちが必死で探し回っている様子をユーリが知って、とても大きなショックを受けて泣いてくれたときに、尚更ソフィは強く思ったんじゃないかと感じたんですよねえ。
このとき、ユーリはずっとたった一人で過ごしていた天空城にソフィが現れ、そして自分の知らなかったことをたくさん教えてくれて、環境を整えてくれて、ずっと抱いていた空虚な寂しさを一気に埋めてくれたソフィと過ごす時間に満足してこのままずっとここに居てくれれば、と思うようになっていた所に。
ソフィが地上に戻れなくなって、大切な人達と別れてしまって、かつての自分以上に寂しい思いを胸に抱いたままそれをユーリに一切見せようとしなかった、その優しい思いと辛い思い、その両方にちゃんと気づいて、自分が引き止めてしまっていたという罪悪感に苦しんで、とユーリという生まれてこの方ずっと一人で生きてきた娘が、そうやって人に寄り添う優しい心根をこんなにも色濃く備えていてくれた。そしてこれを期に大きく心を成長させ幼さを脱ぎ去り、子供であることを卒業していったユーリの姿は、ソフィにはどう見えていたのでしょう。
ソフィ自身、望まれて育ての親の引っ越し屋を継いだんじゃなくて、反対されていたのを自分で望んで目指したわけですから、ユーリに対して後継者みたいなことは思いもしていなかったでしょうけれど。
それでも、老夫婦から教えてもらった世界の素晴らしさを、依頼人に対して以上にかつての自分のように教えてあげたい、伝えてあげたい、という気持ちは多分にあったんじゃないかなあ。
それこそが、ユーリのお引越しにその生涯を掛け注ぐに至った根源のように思います。ソフィにとっての出会いと別れ。それを受け取って、素敵な旅立ちのお手伝いをユーリが受け継いでいくという流れは、寂しくもありますけれど非常に納得の行く流れでありました。
にしても、まさか時を駆けるお引越しにまで、スケールが大きくなるとは思いませんでしたけれど。
なんたる歴史をまたにかけた壮大なお引越し。
でも、これだけスケールの大きな話になっても、一番根っこの人の心に寄り添うという身近な部分は一切ブレることなく主題であり続けたのは感慨深くあります。
お話としても、引っ越し話って一巻から一応一話一話区切られた別の話になってるはずなんですけれど、引っ越ししたいと頼んでくる依頼人たちの抱えている問題や憂い、苦悩や諦めを取り払い解決していくうちに、ただの仕事の関係以上の心に寄り添ったもの同士の情が、大きな力となってまた帰ってくるのが良かったなあ。優しさの連なりが、全体の話そのものを連結していき、クライマックスへと繋がっていくのです。
最初のダンジョンの最深部に引っ越したい、という話も良かったんですよ。単にタンジョンを攻略してその一番深いところにどうやって住まう場所を確保するのか、という話じゃなくて、ダンジョンの成り立ちや今の形態に至った謎。依頼人たちの過去に纏わる絡み合った様々な思惑と、秘められた愛情。
思えば、どのお話も愛情深いものが込められていて、それを見つけ探り当てるお話でもあったんですよねえ。
心に温かな光を注ぎ込んでくるような、素敵な引っ越し屋さんのお話でした。
……アルくん、誰かと結婚したんだ。誰となんですかねえ？
でも、出会いと別れ。素敵な旅立ちというコンセプトを込めることで、これだけドラマチックなストーリーとなるのですから、素晴らしいなあ。
何気にこれ、一つ一つの話は独立した別の物語なのに、この２巻で色んなところで繋がって連結して一綴りのお話になってもいくんですよね。
でもそうかー、別れを惜しみ出会いを恐れ、それでも引っ越し屋という出会いと別れを紡ぐお仕事に憧れて、それを志して夢を叶えた魔法使いの物語を描くのなら、やっぱり彼女……ソフィ自身の出会いと別れもまた最大の主題となり得たのでしょうし、あの結末も納得は出来るんですよね。
その相手となるユーリが、出自や経緯なんかは全然違うのだけれど、ソフィと同じように目をキラキラさせながら世界の広さに魅了され、なんてことのない日常の風景に感動し、そこに行ってみたい、そこで暮らしてみたい。そうやって憧れた場所が同じ王都であったというのも、ソフィととても良く似ていました。
ユーリは、在りし日のもうひとりのソフィだった、とも言えるのではないでしょうか。
ソフィがただの依頼人という以上にユーリに肩入れしていったのも、そう考えるとよくわかるんですよね。ただ、親愛の情を深めていったというだけじゃない、かつて自分に育ての親であった引っ越し屋の老夫婦が伝えてくれたものを、自分もまたこの娘に伝えられたら、という思い。
それは転移事故で天空城に閉じ込められるはめになったソフィを、地上の友人たちが必死で探し回っている様子をユーリが知って、とても大きなショックを受けて泣いてくれたときに、尚更ソフィは強く思ったんじゃないかと感じたんですよねえ。
このとき、ユーリはずっとたった一人で過ごしていた天空城にソフィが現れ、そして自分の知らなかったことをたくさん教えてくれて、環境を整えてくれて、ずっと抱いていた空虚な寂しさを一気に埋めてくれたソフィと過ごす時間に満足してこのままずっとここに居てくれれば、と思うようになっていた所に。
ソフィが地上に戻れなくなって、大切な人達と別れてしまって、かつての自分以上に寂しい思いを胸に抱いたままそれをユーリに一切見せようとしなかった、その優しい思いと辛い思い、その両方にちゃんと気づいて、自分が引き止めてしまっていたという罪悪感に苦しんで、とユーリという生まれてこの方ずっと一人で生きてきた娘が、そうやって人に寄り添う優しい心根をこんなにも色濃く備えていてくれた。そしてこれを期に大きく心を成長させ幼さを脱ぎ去り、子供であることを卒業していったユーリの姿は、ソフィにはどう見えていたのでしょう。
ソフィ自身、望まれて育ての親の引っ越し屋を継いだんじゃなくて、反対されていたのを自分で望んで目指したわけですから、ユーリに対して後継者みたいなことは思いもしていなかったでしょうけれど。
それでも、老夫婦から教えてもらった世界の素晴らしさを、依頼人に対して以上にかつての自分のように教えてあげたい、伝えてあげたい、という気持ちは多分にあったんじゃないかなあ。
それこそが、ユーリのお引越しにその生涯を掛け注ぐに至った根源のように思います。ソフィにとっての出会いと別れ。それを受け取って、素敵な旅立ちのお手伝いをユーリが受け継いでいくという流れは、寂しくもありますけれど非常に納得の行く流れでありました。
にしても、まさか時を駆けるお引越しにまで、スケールが大きくなるとは思いませんでしたけれど。
なんたる歴史をまたにかけた壮大なお引越し。
でも、これだけスケールの大きな話になっても、一番根っこの人の心に寄り添うという身近な部分は一切ブレることなく主題であり続けたのは感慨深くあります。
お話としても、引っ越し話って一巻から一応一話一話区切られた別の話になってるはずなんですけれど、引っ越ししたいと頼んでくる依頼人たちの抱えている問題や憂い、苦悩や諦めを取り払い解決していくうちに、ただの仕事の関係以上の心に寄り添ったもの同士の情が、大きな力となってまた帰ってくるのが良かったなあ。優しさの連なりが、全体の話そのものを連結していき、クライマックスへと繋がっていくのです。
最初のダンジョンの最深部に引っ越したい、という話も良かったんですよ。単にタンジョンを攻略してその一番深いところにどうやって住まう場所を確保するのか、という話じゃなくて、ダンジョンの成り立ちや今の形態に至った謎。依頼人たちの過去に纏わる絡み合った様々な思惑と、秘められた愛情。
思えば、どのお話も愛情深いものが込められていて、それを見つけ探り当てるお話でもあったんですよねえ。
心に温かな光を注ぎ込んでくるような、素敵な引っ越し屋さんのお話でした。
……アルくん、誰かと結婚したんだ。誰となんですかねえ？
