【最強の剣聖、美少女メイドに転生し箒で無双する ２】
三日月猫／ａｚｕタロウ オーバーラップ文庫
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美少女メイド（♀）は学園で暗躍無双する！
真の実力を隠してメイドとして暮らす元・剣聖(♂)の異世界無双ファンタジー、第２幕！
剣聖を目指す主人・ロザレナに頼まれ一緒に聖騎士養成学校に通うことになった前世は歴代最強の剣聖であり、今世では美少女メイドとして暮らすアネット。
個性豊かな寮の仲間と親交を深めながら、楽しい学園生活が始まる――はずだったが、
ロザレナが級長に選ばれたことをよく思わない名家の令嬢・ルナティエがロザレナに決闘を申し込み!?
この学園で決闘に負けた者は敗者の烙印を押され地獄の生活を送ることになる。
剣に関しては全くの初心者であるロザレナを勝たせるため、アネットはかつての力の一端を解放し、鬼のような特訓を開始する――！
アネットは養成学校ではその剣腕を隠す方向で行くのか。まあその剣の技量が知れ渡ってしまうと、出世してロザレナお嬢様の傍に居られなくなるから、という理由には大いに納得なのだけれど、表立って動けなくなるので、今後は表舞台には出てこないでひたすら裏で悪漢どもをぶちのめしたり、と暗躍する形になってしまうんだろうか。
いやあ、このアネットの中身の先代剣聖のおっさんって、そういう器用なことの出来なさそうな、ひたすら暴れまわるタイプの人に見えるので、ちゃんと影働きとか敵の陰謀をさらなる此方の企みで防いで潰す、みたいな真似が出来るのか、と思ったら結構ちゃんと仕込みやら仕掛けやらしてやっちゃってますね。
相手の計画がずさんというか、アネットと寮の友人を誘拐して人質に取る、というシンプルなものだったからかもしれませんけれど、事前に対策立ててちゃんと対抗作戦を練って敵をハメる、という事が出来ていたんで、案外やれば出来るんだなあ、と。
というか、元剣聖様わりとそういう作戦立案なんかも仕事としてやってたんだろうか。前巻の元貴族のマフィアのボスは逃がしちゃったみたいだけど、それ以外の任務では狙った獲物は逃していない、みたいな事を言っていたので、単なる力任せの猪突猛進のわんぱくオジさんじゃなくて、ちゃんと考える頭を持っていたのかもしれない。
や、なんか凄く失礼なことを考えてしまっていたけれど、普段のおっさんの言動からして大雑把そうにしか見えなかったもんで。
意外とアネットとしてマメなメイド業を見事にこなせているのは、単に女性らしさの会得、祖母からの丁寧な教導で身についたものだけではなくて、根っこの性根としても結構きっちりした性格があったんだろうか。謎である。
とりあえず、アネットとしては自分はあくまで裏方で、主人公はお嬢様のロザレナという意識が強いんでしょうね。剣聖を目指す、とのたまう彼女を支援するのが自分の使命と。
とはいえ、未だド素人に過ぎないロザレナが剣聖を目指すとか大言壮語しても、笑われるのは仕方ないと言うか当然というか。修道院では魔法の習得とともに、唐竹の型の練習ばかりしていた、というけれどさすがに５年もそればっかりというのは、と思ってしまう所はあります。十代半ばになるまで素人同然にしか見えない技量しか持ってないのに剣聖になる、なんて大口叩いてたら、今まで何してたの？ と思われちゃいますよ。
ただ、アネットとしては唐竹だけでも見れる練度になってただけで、取っ掛かりとしては十分、という見立てのようですけれど。
いやでも、アネットってロザレナに関しては入れ込みすぎて目が曇ってるんじゃないのか、と思わないでもないです。どこに、かつての自分を超えるかもしれない、という見込みを感じたんだろう。
確かに、強くなるためにどんな困難にも立ち向かう、痛みにも恐怖にも屈しない、不屈の闘志という意味では常人離れしたものを持っていて、それが唯一の技である唐竹を必殺にまで昇華させただけの、剣士としての資質は間違いなくあるのでしょう。強くなるための根性、というか精神性みたいなものは強く感じ取れます。
でも、それ以外のメンタルのヌルさは実のところ、幼い頃から何にも成長していないようにも見えるんですよね。いや、修道院で精神修養も収めてきたのかと思ってたのに、幼さがなんにも成長してなくない？ 短慮で短気で直情的で、考えなしで思慮が足らず、落ち着きがなく冷静な状況判断が出来ず、思い込みが激しく、見通しが甘く、脇が甘く、無知で世間知らずで貴族同士の狡猾さや悪意に対しての備えが何にも出来てない。幼い子供のまんまで、あれロザレナさま全然成長してなくない！？ と、色んな意味で度肝を抜かれてしまいました。善良で心根が真っすぐで愛情深くて、やるとなったら覚悟決めれるタフさと直向きさがあって、そりゃもうアネットとしてはストライクなんでしょうけれど、今のままだと剣の技量があがっても、剣士として強くなれるのかどうか。剣聖という立場ある存在になれるのかどうか、相当に怪しい気がするなあ。いくらなんでも足元が疎かすぎるし、稚拙な嫌がらせなどには全く動じないかも知れないけど、狡猾な謀略なんかには引っかかり放題になりそう、このままだと。
それをアネットが裏で防いでいくつもりなのかもしれないけど、あんまりアネットにおんぶにだっこになってしまうと、お嬢様もっとしっかりしなさいよ、という印象になってしまいかねないのが心配ではあります。
それに、このお嬢様。アネットへの依存がすぎるので５年間離れて暮らすことになったのに、全然依存度が変わってなくないですか？ 愛ゆえの独占欲だけなら、尊い百合の花が咲くばかりなんですけど、それだけじゃない精神依存が随所に見られて、この娘アネットがまた離れてしまったらとたんにボロボロにならないか、とやっぱり心配になってしまいます。
いずれにしても、ロザレナお嬢様がもうちょっと精神的にも自立した頼もしさすら感じさせてくれる存在になってくれないと、アネットにより力を与えてくれる存在じゃなくて重石になってしまいかねないんじゃないかなあ、と。アネットはお嬢様大好きなので、重かろうがなんだろうが気にしないのかもしれませんが。
相変わらず、アネットのおっさんなキャラクターと気配りの行き届いたメイドで女の子らしいキャラクターがうまいこと混ざった、見ているだけで面白いキャラなんですけどね。どうも、思ってたより学園編で力を隠さないといけなかったり、その他もろもろもあって存分にキャラを発揮できていない気もするんですよねえ。
前世の力も、前巻であらかたサビ落としが済んで取り戻してしまったみたいですし。お嬢様と一緒に強くなっていく、という形ではないのか。
前世の愛弟子の出番のなかったですし、さらに今度はアネット自身の出自の話も出てきた所で、これはアネットがメインとなるお話になっていくのでしょうか。
養成学校で暮らすことになった寮のメンバーも色々と事情を抱えているようで、事件トラブルには事欠かないみたいですけど。
