年末も迫ってきたところで、前回は７月あたりにやったんだったかな。今年後半で自分が新しく読み出した、スコップした、新連載始まった中で特に面白かったウェブ上の小説サイトで連載されている作品をピックアップしたいと思います。
今回は二次創作作品も含めて、一回にまとめました。

ちなみに、これが上半期の記事です




こちらがＷｅｂ小説の紹介記事全般。






では、今年後半のピックアップがこちらからになります。


＜カクヨム＞から
憤怒の悪役転生　破滅確定だった当て馬ボスに原作知識がインストールされました（作者：稲荷竜）

　最初のほうで主人公にからんで破滅させられる悪役の『氷邑梅雪』として、和風R-18シミュレーションRPG『剣桜鬼譚』の世界に転生した。
　　目覚めた時は１０歳。しかしまだ取り返しがつく段階だ。これから人に嫌われないようにつつましやかに、目立たないように生きて行けば破滅ルートにはのらないはず。
　と、思っていたのに……この体、煽り耐性がゼロ！
　煽られるとすぐ煽り返す。挑発には必ず乗る。そのせいでつつましく生きられない！

　これは煽り耐性ゼロのせいで無双するしかなくなってしまった悪役令息が、破滅ルートを回避しようとあがくお話。
最初の方は誰が何を言っても煽られてるようにしか捉えられなくて、瞬間湯沸器どころか触発機雷みたいなもんで、これどうにもならんだろ？と思ってたのですが、成長してある程度抑制がきくようになった。或いは、言われても怒らずにいられるだけの信頼できる相手が出来てきて心の余裕が生まれるようになると、途端に面白い主人公になったんですよね。とにかく、煽り耐性無いという以上に、めちゃくちゃ煽りが上手いんですよ。作者さんどっからこんな煽り文がひねり出されてくるんだ！？ってくらいに梅雪くんの煽りがまた絶品。そして、やたらトンチキな世界観。ちょっと【ランス】とかのアリスソフト風味も入ってますよね。結構ハードでシリアスな展開が続き、登場人物も頭のネジが２，３本飛んじゃってるようなキャラばかりなのですが、トンチキな世界観のお陰でひと味もふた味も違った独特の作品になっていて、とにかく面白いですわー。



邪竜幼女　〜村娘に転生した最強ドラゴンは傍若無人に無双する〜　(作者：ふれんだ（富士伸太）)

魔物たちの支配者にして最強の邪竜ソルフレアは人の勇者に倒された。しかし、その強大なる魂が滅びることはなかった。千年の長き眠りについた後に目覚めたソルフレアは、自分を打ち破った人間たちを学ぶために人間へと転生する。そして辺境開拓村の若き村長ゴルド、その妻ヨナのところに拾われて人間の赤ん坊となったソルフレアは「ソル」と名付けられた。

このときうっかり邪竜だった頃の記憶をなくしたソルはただの赤ん坊となり、夫婦によって愛をこめて大事に育てられ、甘やかされた結果……ソルはママとパパのことが大好きな最強甘えん坊幼女になってしまった！

１０歳の誕生日の前に記憶を取り戻したソルは「魔物たちの頂点に立ち、人間に勝利してみせる……！　だが……パパとママは大好きだしおうちは居心地がいい……！」という悩みを抱きつつも、両親の目の届かぬところで最強ドラゴンとして暴れまわり、世界を激戦させていく。
【人間不信の冒険者たちが世界を救うようです】や【バズれ、アリス】などの書籍化作品を送り出した富士伸太さんの新シリーズですね。
人間などよりも遥かに上位の存在が人間に生まれ変わってしまう形での転生モノ、それ自体は珍しくはないのですけれど、ここまで精神が肉体に引っ張られてしまって、かつての神に等しい存在だった頃の記憶を全部ちゃんと持ったままなのに、ここまで見事な幼児と化してしまったお話はなかなか見たことがないぞ。そして、この精神年齢だだ下がりに下がってしまって思考パターンが幼くなりつつも、頑張って邪竜やろうとする姿が可愛くて可愛くて。そしてどれだけ邪竜の生まれ変わりと主張しても信じて貰えなくてベソかいてるソルちゃんが可愛くて可愛くて。ひたすらソルちゃんを愛でるお話ですのう。




＜ハーメルン＞から
勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん（作者：Mckee ItoIto）

頑張る勇者くんと素直になれないTS魔女さんとそれを見守る人たちのお話。

(なお、闇深魔女が幼馴染勇者と離れ離れになって遠距離ストーカーと化しているものとする)
これ、周囲から虐げられ続けて、幼馴染のアルくんに連れられて二人で旅するようになってからも色々あってアルくんに迷惑かけない為に離れちゃった魔女ちゃんなのですけど……。
アルくんの方は魔女ちゃんを守ってやれなかったとずっと悔いていて、勇者となったあともずっと彼女の事を探し回っていて相当に拗らせちゃってるのですよ。
一方魔女ちゃんの方はというと、スパダリな帝国の皇帝陛下に拾われて自由に魔術の開発に従事し、帝国内で偉くなり、とわりと伸び伸びと過ごしている上に、アルくんの事は魔術でずっとストーキングして様子は常に窺っている、というなかなかいい空気吸ってやがるんですよね。
ただアルくんが聖剣を抜いてからは聖剣ちゃんが魔女ちゃんの監視魔術を妨害していて、熾烈な攻防戦が行われつつアルくんの現況を見失ってしまったものだから、アルくんが帝国に入国してきているのにすれ違ってしまっているパターン。お互いがお互いに好きすぎて病みすら入ってるのに、エンカウントすら出来ないんだけど、なんかやたらと面白いんですよねえ。





機甲猟兵エルフリーデの屈折した恋愛事情〜最強ロボパイロットは無礼なスパダリにキレている〜（作者：灰鉄蝸）


英雄と謳われたパイロット、エルフリーデ。陰謀の犠牲となった少女を救ったのは貴族の男クロガネ。
「俺の犬になれ、帝国の英雄」「わたしは犬じゃない」
最強少女とお人好し伯爵の凸凹コンビは、激動の時代の中――様々な陰謀を破壊する！
※ロボットメカアクション、戦争、陰謀などが含まれる感じのラブコメ。

これは近年頭一つ抜けてピカ一のロボット戦争アクションものですよ。
いやこれ、惜しいのが一章の導入がちょっと駆け足すぎでいきなり初っ端から長期シリーズのクライマックスみたいな所に話が突入して、間は！？　なんか途中飛ばした！？　と大変面食らったのですが、１章も後半以降人間関係と立ち位置がある程度落ち着いて以降は、もう滅茶苦茶おもしろいのなんの。エルフリーデの、天然というかわりと自由だよね！？というキャラもさることながら、ミリタリーものらしい緻密性なロジックと、それを踏まえたうえでのど迫力のアクションシーン。ある種のアイロニー、諧謔混じりの掛け合い。そして何よりエルフリーデの駆る人型ロボットのべらぼうな格好良さ。
剣の悪魔エルフリーデが駆る機甲駆体（バレットナイト）「アシュラベール」の降臨シーンからの単騎による対サンクザーレ侵攻軍殲滅戦は、今まで読んだロボットアクションの中でも間違いなく最高潮に数えられるテンション激ヤバの戦闘シーンでした。これ以降も、エルフリーデの戦闘シーン例外なく有頂天ばっかりなんですよぉ！　最高。


「完全体になりさえすれば……！」から始まる人外転生者の追憶（作者：GT（EW版））

人外のカブトムシっぽい生体兵器に転生した主人公がなんやかんやでパーフェクトな完全体(TS銀髪美少女)に進化し世界を救う話。
これ、タイトルに追憶とある通り、すべてが終わったあとに主人公の美少女が、相方として一緒に戦った勇者をその世界に送り出した女神に、ことの顛末を語る、という形式のお話なんですね。
この主人公、最初から美少女型だったわけじゃなくて、最初は超大型のカブトムシ型生体兵器だったわけですけれど、彼女が世界に降り立ったときにはすでに世界は滅びかかり人間は国家という社会形態を保てないほどに衰退していたのです。まさにアポカリプス・ナウ。
その黙示録をもたらしたのは、異界より侵攻してくる謎の魔蟲たちイビルセクト。この蟲どもの侵攻は地上世界だけでなく魔界をも蹂躙して、既に魔王も倒され魔族も滅びかかってる状態なのである。
そんなこの世界の生物が根絶やしにされようとしている世界で、孤軍奮闘たった一人で孤独に獅子奮迅と戦っていたのが勇者ナナシ。あまりに多くの悲劇を前に精神が摩耗し戦闘マシーンと化しかけていた彼の前に現れた謎のカブトムシ。その妙にキャラの愉快なイキリカブトムシとの出会いが、世界の運命を変えていくわけですが、彼女リラ・クレースの語り口がまた軽快で聞いてるだけで面白いんですけれど、聞き役の女神様のほうも合いの手がやたらと絶妙で、いやそこでそんな面白いコメントしますゥ！？　てなくらいに聞き上手なんですよ。面白い女神様だなホント！！　このリラと女神様の掛け合いだからこそ、ここまで面白いんだという作品ですねえ、これは。






海外のエロ動画サイトで俺だけ無修正ダンジョン配信　〜無双してスパチャNo.1になったら世界中の女性パフォーマーから罵詈雑言がDMで届きました〜（作者：フーツラ）

「もうダンジョン配信にロマンはない」と言われてから、早十年。

かつてのダンジョン配信は自由だった。モンスターの死も人間の死もありのまま、視聴者に届けられていた。

しかし今は違う。

大手サイトはコンプライアンスが厳しくなり、血生臭いシーンには自動でモザイクが入るようになってしまった。

また、全てのダンジョンは攻略法が確立され、安全マージンをとった集団攻略が一般的となった。そこに、冒険の入り込む余地はない。

かつて個人で活躍した冒険者は旧世代と呼ばれ、効率を重視する現役世代には馬鹿にされていた。

そんな2044年のある日。

無修正が売りの海外アダルトチャットで日本人中年男性が単独でダンジョン配信を始めた。全裸で。

彼が攻略するのは20年振りに新しく発生した未開のダンジョンだった。

男はかつての熱狂を再現する為、今日もダンジョンに挑み続ける。世界中の女性パフォーマーからクレームを受けながら。
これはもう読んでもらったらわかるけれど、色んな意味で反則ｗ
ノクターンの方でも連載しているそうですけれど、配信のベースがアダルトチャットなだけで、話の中でそういう１８禁な描写はなかったですね……いや、男がパンツ脱ぐ全裸描写は毎度のようにあるので、それをエロスというのならエロスだけど！？　いわゆる、脱げば脱ぐほど強くなる系の能力なので、本人は大変真面目かつシリアスに脱いでおります。そしてそれを全世界に向けて配信もしておりますが、本人は大変真面目に（以下略
あとあと出てくる女性パフォーマーたちもやたらとキャラ濃くて、あれこの主人公全裸だけど実際かなりキャラ的にも真面目だよな、と改めて再認識させられたりもするのですけれど、このまずシチュエーションで勝ち確なのはズルいし最高ですよｗ



＜ハーメルン＞から二次創作小説

ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン　(作者：Schuld) 原作：対魔忍×ニンジャスレイヤー

◆◆◆◆◆◆◆◆
　古来より保たれてきた“人”と“魔”は不干渉たれという前提が崩れつつある近未来日本。魔族が人の領域を侵し、無辜の人々を貪らんとするマッポーカリプスもかくやというブッダが高鼾を掻く世でも、それに立ち向かう者達がいた。

　魔を持って魔を制す。その者達の名は対魔忍。

　「ドーモ、マゾクスレイヤーです」

　そして、これはそんな原作の設定をミリも知らないニンジャヘッズが転生を果たした結果、自分を対魔忍ではなくニンジャと勘違いして動き続けた結果のお話…………。

◆◆◆◆◆◆◆◆
以下注意事項重点な。
・対魔忍世界とニンジャスレイヤー世界の親和性に気付いて勢いで書きました。
・ニンジャソウル、もといヘッズが対魔忍世界に転生しただけなのでニンジャスレイヤー人物は登場しません。
・主人公はニンジャのコスプレをした対魔忍です。ニンジャの精神的なコスプレです。
・卑猥は一切ない。イイネ?
・現在（2024/10/17）対魔忍アサギ2部分まで完結。
・Twitter、FANBOXなどで更新情報発信中。備えよう。

【ＴＲＰＧプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 〜ヘンダーソン氏の福音を〜】の作者であるSchuldが手掛ける、対魔忍シリーズとニンジャスレイヤーという禁断の二作品のコラボ作品。これは劇薬だよぉ。面白すぎるんですけどぉぉ！！
これはもう見てくれ読んでくれ、としか言いようがない。あまりにアンタッチャブルでエキセントリックで、ぶっ飛んでる割に土台となる部分がやたらめったらしっかりしていて、飛んだり跳ねたりしまくっている内容に対して、揺るぎがないんですよねえ。作者の力量が唸りを上げすぎている。
もともと気晴らしで書き始めたらしいのですけれど、面白さが反則すぎて一気に長期連載化。仕方ないよ、だってどうしようもなく面白いんだもの。凛子サンが完全必殺鉄砲玉兵器に魔改造されててワラタ。


ちょっと待って！　私の下の階級に猪熊柔がいるんだけど……！（作者：怪盗218）原作：ＹＡＷＡＲＡ！

2024年パリオリンピック。柔道女子52kg以下級で金メダルを獲得し、前回東京オリンピックから数えて2連覇を達成した私。▼しかし、私の前世の記憶はその金メダルを獲得した日までだった。不慮の事故により、平成生まれだった私は、何故か昭和の時代に新たな生を得ていた。それも前世の記憶を持ったまま。▼しかし、問題はそれだけでは無かった。高校2年にして初めてこの昭和の時代でも女子52kg以下級の日本一に輝いた私は気付く。私はただ過去にさかのぼっただけではないということに。
そう、過去は過去でも、私は別の次元の過去にさかのぼっていたのだ。
何故なら、私の一つ下の階級にはあの無敗伝説を築いたミラクルガール『猪熊柔』がいるのだから！
懐かしのヤワラである。いや、マジで懐かしいな。漫画じゃなくてアニメで嗜んだタイプの人間なのですが、まだ小学校だった頃ですよ私が。アニメ自体は平成初年度からの放映でしたけど、作中の時代は昭和ですよねえ、これ。この頃の柔道と今の柔道ってもう別物と言っていいほどルールやらに違いはあると思うのですけれど、無差別級などの体重差を考慮しない対戦形式が残っているなかで、階級が一つだけ違うところでってのがミソでもあるんですよねえ。
原作の主人公であるヤワラが、あまり柔道そのものに意欲や魅力を感じていない引き気味の姿勢であるのが焦れったかったりする中で、このお話の主人公が思いっきり柔道大好きガールで、柔道って面白いんだというのをグイグイと牽引していってくれるので、作品の雰囲気もいきいきと躍動していて読んでて楽しかったです。肝心の柔道の試合のシーンも、動きやスピード感をダイレクトに感じさせてくれる迫力ある描写で、カタルシスたまんないです。
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