【回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした! 勇者パーティーを追放されたヒーラーは、戦場の天使と讃えられました】 雪車町地蔵／tokiwa. 宝島社
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応募総数13,116作品！ 第10回ネット小説大賞の金賞受賞作！ コミカライズも同時進行中！ ヒーラーとして独自の治療を続けていたエイダは、勇者のパーティーで力を尽くすも、戦力外通告を受けて追放されてしまう。しかし、いかなる死地からも生還できる彼らの躍進はエイダの治療技術によるもので……。彼らが落ちぶれていく一方で、追放されたエイダは誰かを助けたいという思いから従軍を決意し、地獄の最前線へと配属されることに。そこで彼女は自分の独自の治療技術を施すことができればもっとたくさんの命が救えるのではないかと行動を始めて――。のちに“戦場の天使”と呼ばれる少女の奮闘劇、ここに開幕です。
衛生兵でした！って勝手に自分の中にそういうスキルとかジョブが発生したとか、他者から任命された、みたいなニュアンスですけど違うじゃん！ 全然違うじゃん。
そもそもこの世界には存在しなかった「衛生兵」という兵科を自分で創設し、立ち上げて国家に対して認めさせてるじゃないですか。
魔法の力で場合によっては四肢の欠損すら再生させてしまう回復魔法。効果の強弱はあっても、教会が抱え込んでいる彼女らヒーラーたちが扱うその回復魔法こそが、この世界における主たる治療手段。
それが常態化しているので、医療に関する知識知見が発達していないんですね。皆無ではなく、秘匿された知識として錬金術師などが抱え込んでたんですね。偶々、実家にあった秘密の図書館でそれらの知識を得たのがこの主人公であるエイダ。微弱な回復魔法しか使えない彼女は、その秘匿された知識を用いて応急手当などの医療技術を確立して活用していたのですが、世間的にはそういう医療行為って胡乱な得体の知れない民間療法なんですね。目に見えて回復させられる魔法と違って、即座に効果があるようには見えないし。
しかし、それまで働いていた冒険者パーティーを追放されて、生きていくために募兵に応募して軍隊に入隊したエイダは、そこでヒーラーの居ない前線で放置されて簡単に死に絶えていく兵卒たちを目の当たりにしたのでした。
この時なんでしょうね、エイダが「使命感」に目覚めたのは。
自分の知る知識を使えば助けられる命が、今ここでは吸い終えたタバコの吸殻のように放り捨てられていく。
そして最前線勤務を、それも最悪の戦場を望んだ彼女が差し向けられたのは、人間からは虐げられた亜人たちばかりが集められた部隊。同じ種族が魔王軍に参加している事もあって、人類側に属したものたちも危険視され、亜人たちは収容所送りにされてしまったんですね。
家族のために志願して兵役につき、命をかけて自分たちが人類の側だと証明する。第二次世界大戦でのアメリカ軍の日系人部隊と同じような経緯を辿って編成された彼らは、支援体制は乏しく優先順位も後回しなだけに、使い捨てのように消耗させられていく。
エルダの目覚めた使命感に、さらに火が付いた。点火されてしまったのです。
こうなった彼女はもはやブレーキが端から存在しない暴走機関車。ただ命を救うため、という唯一無二の目的のために、手段を問うことなく彼女は驀進を開始するのである。
このエネルギッシュを通り越した人間機関車、人間発電所みたいな働きっぷりで、反対勢力抵抗勢力官僚主義を押しのけてシステムを構築していく様子は、もろにあのクリミアの天使と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールがモチーフなんでしょうね。
ただ実際のモデルは、応急手当の概念を持ち込み南北戦争に従事して、のちに赤十字を立ち上げたアメリカンナイチンゲールと呼ばれたクララ・バートン女史の方なんだそうですけれど。
こちらの人はちらっと名前聞いたことがあるくらいで、ここまでの人とは知らなかったなあ。
誰に目にも明らかな負傷者の生存率の爆発的向上という結果を残し、さらに前線の兵卒達の莫大な指示を得て、さらなる救済のために傷病兵への新たなアプローチをもたらす様々なシステムを構築していくエイダ。
幸いだったのは、この戦域のヒーラーをまとめる教会の責任者である聖女さまと、軍側の担当責任者が物わかりの良い人だったこと。この物わかりがいいというのは、なんでもハイハイと受け入れてくれる、という意味ではなくて、ちゃんと理路が整然としていて理論理屈が正当であり、具体的に大きな効果が認めることを証明してみせたならば、提言を受け入れてこちらも動くよ、という人達だったということですね。
それが前例を覆し、これまで定着してしまっている大きな構造を壊して組み替えないといけない、となるとたとえデータが正しさを証明し、結果がすでに伴っていてなお、認められません、動けません、前例が出来てから来てください、となっちゃう事は珍しくないわけです。
実際にナイチンゲールの前にはこうした大きな壁が立ちふさがり、彼女はでっかいハンマーを振り回して片っ端からこの壁を打ち壊していくことになるので、バーサーカーと言われても納得しか無いのですが。
少なくともエイダの場合、不慮の事故で連絡が途絶えていた実家の侯爵家が影に日向に全力で支援してくれた上に、現場サイドの教会と軍の担当者が嬉々としてとうんざりしながらの違いはあれど、エイダの要望を汲み取ってちゃんと上にネゴってくれたので、無駄な時間浪費と無意味な政争は避けられてるんですよね、ありがたいことに。
そして、それらの改革の一端が、衛生兵という兵科の創設。
タイトルには「衛生兵でした！」とまるでスキルやジョブが新たに生えたか、誰かに任命されたような言い回しですけれど、自分で兵科から作り上げたんですよ、一から！
とんでもないバイタリティである。
ただその暴走機関車ばりのバイタリティは、彼女に休むという選択肢を発生させず、比喩ではなく不眠不休で働き続ける怪物へと変えてしまうのでした。
絶対過労死コースでしたね。周囲が無理矢理に論を尽くして説得してようやく身体を休めることを受け入れさせたのですけれど、エイダ・エーデルワイスが壊れては元も子もないのは確か。では、エイダ・エーデルワイスを量産してカバーするのだヒャッハー！ というヒャッハーとか言ってないですけどそんな勢いで意味わからん事を言い出した際は、この女肉体は休憩のために止まってもエイダ概念は一切止まらず爆走したままだな、と実感したものです。
まあそれが衛生兵と呼ばれる兵科誕生の顛末であり、量産型エイダがどんどんと戦場に送り出されていく敵側からしたら悪夢の端緒でもあったのですが。
ちなみに幼い頃に大怪我を負って、ヒーラーにすら助からないと見放されたところを姉の献身的な看病で回復した、エイダの弟がこれまた……エイダの弟だなあ、という人物で。
亜人部隊の連隊長であるエルフのレーア特務大尉。完全にウォーモンガーという感じのヤバい人だったはずなのに、エイダからの縁もあって何かと交友が出来てしまったエイダの弟エルクの手綱を引っ張る役になってあれこれと説教する立場になっちゃってるのには微苦笑モノでした。
エルクに完全に懐かれて目をつけられちゃったじゃないか、レーアさん。食らいついたら絶対に離さない、というあたりも姉と同じく弟もしつこそうだぞー。
そもそもこの世界には存在しなかった「衛生兵」という兵科を自分で創設し、立ち上げて国家に対して認めさせてるじゃないですか。
魔法の力で場合によっては四肢の欠損すら再生させてしまう回復魔法。効果の強弱はあっても、教会が抱え込んでいる彼女らヒーラーたちが扱うその回復魔法こそが、この世界における主たる治療手段。
それが常態化しているので、医療に関する知識知見が発達していないんですね。皆無ではなく、秘匿された知識として錬金術師などが抱え込んでたんですね。偶々、実家にあった秘密の図書館でそれらの知識を得たのがこの主人公であるエイダ。微弱な回復魔法しか使えない彼女は、その秘匿された知識を用いて応急手当などの医療技術を確立して活用していたのですが、世間的にはそういう医療行為って胡乱な得体の知れない民間療法なんですね。目に見えて回復させられる魔法と違って、即座に効果があるようには見えないし。
しかし、それまで働いていた冒険者パーティーを追放されて、生きていくために募兵に応募して軍隊に入隊したエイダは、そこでヒーラーの居ない前線で放置されて簡単に死に絶えていく兵卒たちを目の当たりにしたのでした。
この時なんでしょうね、エイダが「使命感」に目覚めたのは。
自分の知る知識を使えば助けられる命が、今ここでは吸い終えたタバコの吸殻のように放り捨てられていく。
そして最前線勤務を、それも最悪の戦場を望んだ彼女が差し向けられたのは、人間からは虐げられた亜人たちばかりが集められた部隊。同じ種族が魔王軍に参加している事もあって、人類側に属したものたちも危険視され、亜人たちは収容所送りにされてしまったんですね。
家族のために志願して兵役につき、命をかけて自分たちが人類の側だと証明する。第二次世界大戦でのアメリカ軍の日系人部隊と同じような経緯を辿って編成された彼らは、支援体制は乏しく優先順位も後回しなだけに、使い捨てのように消耗させられていく。
エルダの目覚めた使命感に、さらに火が付いた。点火されてしまったのです。
こうなった彼女はもはやブレーキが端から存在しない暴走機関車。ただ命を救うため、という唯一無二の目的のために、手段を問うことなく彼女は驀進を開始するのである。
このエネルギッシュを通り越した人間機関車、人間発電所みたいな働きっぷりで、反対勢力抵抗勢力官僚主義を押しのけてシステムを構築していく様子は、もろにあのクリミアの天使と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールがモチーフなんでしょうね。
ただ実際のモデルは、応急手当の概念を持ち込み南北戦争に従事して、のちに赤十字を立ち上げたアメリカンナイチンゲールと呼ばれたクララ・バートン女史の方なんだそうですけれど。
こちらの人はちらっと名前聞いたことがあるくらいで、ここまでの人とは知らなかったなあ。
誰に目にも明らかな負傷者の生存率の爆発的向上という結果を残し、さらに前線の兵卒達の莫大な指示を得て、さらなる救済のために傷病兵への新たなアプローチをもたらす様々なシステムを構築していくエイダ。
幸いだったのは、この戦域のヒーラーをまとめる教会の責任者である聖女さまと、軍側の担当責任者が物わかりの良い人だったこと。この物わかりがいいというのは、なんでもハイハイと受け入れてくれる、という意味ではなくて、ちゃんと理路が整然としていて理論理屈が正当であり、具体的に大きな効果が認めることを証明してみせたならば、提言を受け入れてこちらも動くよ、という人達だったということですね。
それが前例を覆し、これまで定着してしまっている大きな構造を壊して組み替えないといけない、となるとたとえデータが正しさを証明し、結果がすでに伴っていてなお、認められません、動けません、前例が出来てから来てください、となっちゃう事は珍しくないわけです。
実際にナイチンゲールの前にはこうした大きな壁が立ちふさがり、彼女はでっかいハンマーを振り回して片っ端からこの壁を打ち壊していくことになるので、バーサーカーと言われても納得しか無いのですが。
少なくともエイダの場合、不慮の事故で連絡が途絶えていた実家の侯爵家が影に日向に全力で支援してくれた上に、現場サイドの教会と軍の担当者が嬉々としてとうんざりしながらの違いはあれど、エイダの要望を汲み取ってちゃんと上にネゴってくれたので、無駄な時間浪費と無意味な政争は避けられてるんですよね、ありがたいことに。
そして、それらの改革の一端が、衛生兵という兵科の創設。
タイトルには「衛生兵でした！」とまるでスキルやジョブが新たに生えたか、誰かに任命されたような言い回しですけれど、自分で兵科から作り上げたんですよ、一から！
とんでもないバイタリティである。
ただその暴走機関車ばりのバイタリティは、彼女に休むという選択肢を発生させず、比喩ではなく不眠不休で働き続ける怪物へと変えてしまうのでした。
絶対過労死コースでしたね。周囲が無理矢理に論を尽くして説得してようやく身体を休めることを受け入れさせたのですけれど、エイダ・エーデルワイスが壊れては元も子もないのは確か。では、エイダ・エーデルワイスを量産してカバーするのだヒャッハー！ というヒャッハーとか言ってないですけどそんな勢いで意味わからん事を言い出した際は、この女肉体は休憩のために止まってもエイダ概念は一切止まらず爆走したままだな、と実感したものです。
まあそれが衛生兵と呼ばれる兵科誕生の顛末であり、量産型エイダがどんどんと戦場に送り出されていく敵側からしたら悪夢の端緒でもあったのですが。
ちなみに幼い頃に大怪我を負って、ヒーラーにすら助からないと見放されたところを姉の献身的な看病で回復した、エイダの弟がこれまた……エイダの弟だなあ、という人物で。
亜人部隊の連隊長であるエルフのレーア特務大尉。完全にウォーモンガーという感じのヤバい人だったはずなのに、エイダからの縁もあって何かと交友が出来てしまったエイダの弟エルクの手綱を引っ張る役になってあれこれと説教する立場になっちゃってるのには微苦笑モノでした。
エルクに完全に懐かれて目をつけられちゃったじゃないか、レーアさん。食らいついたら絶対に離さない、というあたりも姉と同じく弟もしつこそうだぞー。
Ａｍａｚｏｎ
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