【転生してショタ王子になった剣聖は、かつての弟子には絶対にバレたくないっ　２．剣徒燦爛】 　ぽんこつ少尉／しあびす 一迅社ノベルス

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見た目は子供、中身は無敵の元剣聖が対峙する“現在”と“過去”。波瀾万丈の学園ファンタジー第２巻！

エレミア・ノイと名を変えてレアン騎士学校高等部の生徒となった十歳のエレミー・オウルディンガム。
ガリア国王であり学校の理事長でもある父キルプス暗殺未遂を犯した同級生ミクの罪もエレミア必死の嘆願により帳消しとなり、彼女も本来の名であるリオナとして生徒で居続けられることとなった。
にぎやかな学生生活、同居するかつての弟子リリとの日常に戻り剣の道に邁進するエレミアだが、レアンダンジョンでのホムンクルスとの遭遇、そして善戦してみせたエレミアたち一組三班を中心に、実力不足の貴族の子弟たちを伴い再度命懸けのカリキュラムに挑むことに――!?
その一方、亡きブライズの面影をのぞかせるエレミアに、リリは秘めていた複雑な想いを膨らませていき……。

うわぁ、なんかもう騎士学校の同級生たち、みんな重い背景、重い人生抱えすぎなんじゃない？！　まだ大人になってないのに、それぞれ尋常じゃないもの抱えてるじゃないか。
これ、エレミアたち３班のメンツだけじゃなくて、同じクラスの平民貴族問わずですよ。
一巻で明らかになったミア……リアナ・ベルツハインひとりでもヘヴィーこの上無しだったのに、最近女性慣れしていないのがギャグみたいになってきた東方からの留学生、クールな剣士だったリョウカも尋常ならざる覚悟を持ってこのレアン騎士学校に留学してきていた事を教えてくれたし、猟兵だったという特待生のヴォイドなんざ、それこそエレミアくらいの歳から戦場を駆けずり回ってきたような少年だ。この世の地獄を見てきたと言っていい。
この３班のメンツだけでもエレミアとしてはお腹いっぱいだっただろうに、もうほんとにみんなじゃないですか。
前回の最初のダンジョン探索では、最初の最初で人事不省となる大怪我を負い、クラス全員の脱出のお荷物となってしまっていた侯爵家嫡子のイルガ。いやー、こいつがまた貴族至上主義の嫌なやつで、前回自分が迷惑かけたにも関わらず、次のダンジョン探索ではクラスを２つに、平民と貴族に割ってしまうような行動に出て、どうしようもないやつだと思ってたらさあ。
いやー、いざ貴族組の方にエレミアとリョウカが参加して一緒に行動していると思っていた様子と全然違っていて、ああこれは貴族として平民を下に見てるとかじゃなくて、むしろ貴族としての義務感を必要以上に背負っているような、プライドを悪い方じゃなくこじらせちゃってる実はいい奴なのかなー、と思って読んでたら……イルガくん、背負ってるもんがそれどころじゃなかったんですよねえ。
いやもうただの貴族の嫡子として重責担ってるだけでも十分重いのにさぁ、彼の人生ってそれどころじゃなかったんですよ。もう、エレミアに告白してくれたその身の上話が、それ以上に彼が抱いている覚悟がもう聞いてるだけでたまんなくて。
思わず堪えきれずに感情高ぶるままに泣いちゃってる小さい子を、泣くな泣くなと隣に腰掛けて笑いながらポンポンと頭叩いて撫でているイルガの挿絵、これめちゃくちゃ良かったんですよねえ。
辛い告白したのに、笑って慰めてくれてるの、イルガくん。それまでの戦闘でボロボロになってるのに、凄くいい顔で笑ってるの。ぐずぐず涙目になってるエレミアの頭に手を置きながら。
もうなんか、たまらんグッとくるイラストでしたわ。
かくのごとく、エレミアって前世のおっさん剣聖だった頃より多分遥かに共感性高くなってるんですよね。めっちゃ泣くのよ、この子。それも自分の事では別になかないのに、リリやリアナや、友人たちの痛みを知った時辛さを感じた時、その苦しみを目の当たりにしたとき、その壮絶な覚悟を知った時。
この子、思わず泣いちゃうんですよ。感じ入って、共感して、なんかもうたまらなくなって。
これはきっと子供特有の感受性の高さもあるんだろうし、弱くなったからこそ相手の身になって、相手の心に触れて色々と深く考えるようになったからこそなんでしょう。
エレミアもそろそろ自覚しつつあったのだろうけれど、もう自分は剣聖ブライズとは違う人間なんだなあ、と。
それでも、弟子で娘同然だったリリが今も家族同然なのは変わらず、親友だった今の父親キルプスが今ももっとも信頼している友人であることも変わらず、でも自分の父親だという意識もあり、大人だったころのこの国への、そして子供達への責任感は失われないまま、今は年上である同級生のお兄ちゃんお姉ちゃんたちへの、なんていうんだろう、クラスの仲間としての意識や友人としての気持ち。こういうのが全部両立しつつあるんですよねえ。
愛の形は変われども、それが愛という事は変わりない。
特にリリに対しては、未だに教官とか年上とか認められてないのだけれど、リリの方もブライズの事を具体的にどういう関係の相手なのか、というのを具体的に言語化することは今も尚ずっと出来ていないことは、リリとエレミアの対話の中からわかってきている。
それでも……エレミアが聞き方変えたの、良かったよなあ。彼と彼女にとって関係性の名前とか固有名とかはどうでもよかったんですよ。それが親子愛だろうと異性愛だろうと、ただ愛していたのは間違いないと。リリがはっきりと明言したのと同じくして、エレミアも自分がブライズだった頃の特に向き合おうとせず放置していた想いを、はっきりと明確な形にしたのでしょうね。全部ひっくるめて、この娘を愛していたのだと。
そして、それは今生まれ変わって、もうブライズではなくなってしまった自分だが、それでも今も尚このかつての弟子を、今の教官を、家族同然に愛してると。
これはほんと、エレミアになったからこそわかるようになったこと。考えるようになった事だったのでしょう。かつて自分が死んでしまってから、この娘がどのようにして生きてきたのか。心配で不安でずっと考えてこのリリの心を見つめようとしていた。こんなにリリがどう思ってるかを前世では考えたことなんてなかったでしょうに。
でも、それまでずっと無意識に避けていた前世の自分、剣聖ブライズがどうやって死んだのか、という死の真相を知ることで、自分の末期の想いを、死に際に抱いた強烈な祈念を、彼は思い出したんですよね。
それはきっと、彼が生まれ変わってエレミー王子になった要因。いや、ブライズの記憶を持ったまま生まれ変わった理由、その一つであったことに間違いはないのでしょう。
……愛じゃないですかァ。もう恋愛とかそういう区分を抜きにした、ただただ深い慈しむような愛情がそこにあって、なんかたまらんくらいグッと来てしまいました。
みんなが色んな背景を背負っているなかで、エレミアって前世の記憶を引き継いだものの、剣を極めてやるぜ、的な動機だけで、それもそこまで人生全部注いで至ってやる的な求道的なものも切迫したものもなく、自分が自分がという感じじゃなくて他の人の思いに引きずられたり助けたり、かつて大人だった頃のやり残しや子供達を守ってやらないと、責任を果たさないとという義務感だったり、とわりと受け身なような、自由で定まりがないようなところがあったようにも思うんですよね。
でも、今確かな一つの理由を得たんじゃないでしょうか。そういう根が張れたならばこそ、リアナの人生を背負うことも、リョウカの覚悟に手を貸すことも、クラスの友人たちの人生の歩みの助けになっていくことも……王子として将来この国を担うことにも、芯が通ったような気がするんですよね。
今のエレミアはブライズなんかと比べる事も出来ないくらい弱いです。３班の仲間たちは、ブライズだった頃ですら敵わないんじゃないか、という一芸を既に今の段階で有している才能の持ち主だ。エレミアが剣聖面してあれこれみんなを牽引していく、なんて真似をするにはまだまだ全然役者が不足していて、何より飛び級したエレミアはちびっ子にすぎず、周りはみんなお兄さんお姉さんだ。どちらかというと、強かろうとエレミアは守られる側ですらある。実際、クラスのみんな、エレミアの実力を認め受け入れつつ、なんかあればちっさいエレミアは身を挺して守らないと、という強い意識を持っていて、頼り切りにならないというか、ちゃんとお兄さんお姉さんしてるのがなんか面映ゆいというか嬉しいと言うか。いい連中ですよねえ。個々のキャラも見えてきたし、いやあ好きだわこのクラスメイトたち。

対して、ショタショタしているエレミアの可愛いこと可愛いこと。いやこの子、なにかにつけて行動に幼いところが出ていて、思わずキュンキュンしてしまうんですけど！？
転生する際は子供まで戻って、というのは定番なんですけれど、敢えてショタっ子な特徴を前面に押し出してる作品ってあんまりないんですよね。【聖剣学院の魔剣使い】くらいだろうか、こんなキュンキュンさせられるショタっ子は。
いやあ、なんか性癖的にショタはありですよ。女の子とはまた別種のキュンとくる可愛さがある。実際、可愛くないですか？　背伸びして生意気だったり偉そうな態度とりながら、どうしようもなく幼い一面を同時に見せてくる小さな男の子って。ヤバいなあ、なんか沼にハマりそうだぞ。

あと、電子版の特典SSが、ちょっとビックリさせられる情報があったんですけど。え！？　あの二人ってそういう関係だったの！！！？
だ、だから背負ってるもんがみんなヘヴィーすぎるんだってぇ！



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