【魔王と勇者の戦いの裏で ６ ~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~】 　涼樹悠樹／山椒魚 オーバーラップ文庫

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"深まる古代王国の謎――
失われた「真実」の一端を見る。"

"転生したゲーム世界で、モブ貴族として死んでしまう未来を回避しようとするヴェルナー。
魔将ゲザリウスを斃し、勇者マゼル一行とともに王都へ凱旋した。
ヴェルナーに一息つく暇はなく、王太子ヒュベルトゥスから古代王国について、秘密の地下書庫での調査を命じられる。
しかしその書籍の分量にヴェルナーは唖然とする。
さらに地下でリリーが不思議なことに気がついたようで……？
そんなヴェルナーとリリーに突如問題が降りかかる。
マゼルの力を利用しようとした勢力が動き始め、その陰謀に二人は巻き込まれていく――。
伝説の裏側で奮闘するモブキャラによる本格戦記ファンタジー、第六幕。"

もう以前から、マゼルの妹のリリーはヴェルナーに嫁がせる、という思惑はリリーの身柄を預かるツェアフェルト伯爵家の両親やヒュベルトゥス王太子ら王国中枢で意思統一されている、と思しき動きは垣間見えてたんだけれど、これに関してはリリーは立場的にも性格的にも自分から意思表示する事はないだろうし、ヴェルナーの方はとんと無頓着に見えたのでどうなるのかな、とは思ってたんですよね。
周囲としては、状況を整えることでヴェルナーに促しているような雰囲気もあるように見えたんですけどねえ。
将来、貴族位を与えられる事が既定路線になってる勇者マゼルの家族、特に未婚の女性である妹のリリーの嫁ぎ先なんてのは、盛大な政治問題であるわけです。
下手なやつに嫁いでしまうと、勇者という或いは王権に影響を及ぼすような力を持ってしまうだろう権威を手に入れて、勝手をやりだす貴族家が現れてしまうかもしれない。
そんな中で、将来の王太子や王太孫の側近候補であり、右も左もわからないだろう勇者マゼルの後ろ盾となりつつ勇者個人と信頼関係にあり、無欲で承認欲求にも権力欲にも縁がなく勇者の威光を嵩にきて権力を壟断する恐れが少ないヴェルナーは、王国中枢サイドからするとコイツ以外に勇者の身内にしたくない、という候補筆頭なわけですよ。
もうちょっと王太子サイドからせっついてきても不思議はなかったのですけれど、ヒュベルトゥス殿下ってその辺意外と強引に押し付けてこないというか、無理押ししない人ですよねえ。でも、それは押しが甘いというのではなく、外堀を徹底的に埋めて選択の余地をなくしてくるという意味でもあるので、下手にああやれこうしろと直接迫ってくるより余程おっそろしいです。
まあ、ヴェルナーの場合は王太子の意を汲んで、望んだ成果をあげてくるどころか、これやって欲しいなあと考えてる範囲を遥かに超える成果と、勝手にあれこれと動いて想定とはまったく異なるものまで成果物、企画、立案を持ち込んでくるんだから、王太子サイドとしては押し付ける必要は無いんだろうなあ。
ただ、言わなくても汲めよ？　というヴェルナー側に自己判断させるやり方は胃がキリキリしますけど。これ、ヴェルナーを見込んで今のうちにありったけ鍛えて成長させようという思惑なのは明言されてますけれど、王太子はじめ幹部の皆様みんな評価点厳しすぎませんかね！？　他の貴族子息のレベルを見ても、ヴェルナーって頭３つくらいは抜けてる高性能なんですが、皆様比べる基準が同じ若手じゃなくて絶対自分たちになってますよこれ。まあヒュベルトゥス殿下筆頭に、皆様ヴェルナーが若造に見えるほどに実際、バケモンみたいな有能さだもんなあ。
ほんと毎度毎度、毎巻言ってますけれど、ヒュベルトゥス殿下以下王国軍・政府中枢が軒並み全滅してしまったゲーム正史ルートって、もう無理ゲーだろ、これ。

ともあれ、勇者マゼルの名声と実績が積み上がっていく中で、その妹であるリリーの価値も暴騰していて、彼女の後見を狙う貴族は外国勢力を含めて害虫みたいに湧いてきているという状況は、いつまでもリリーの立場を宙ぶらりんにしている余裕がどんどんなくなっていってるということでもありました。
リリーの気持ちについては、ヴェルナーも何となく察してはいたでしょうし、前巻で勇者パーティーの面々からも言われていましたから、わかってはいたんでしょうけれど。政治的思惑がある上の人達ばかりじゃなくて、周囲の親しい人達もリリーとはお似合いだよ、みたいな事は度々ヴェルナーに告げてましたしねえ。
それでも、なかなかヴェルナーに踏ん切りがつかなかったのは、やっぱり立場に差がある以上自分から迫るとリリーは断れないというのがあったんでしょうかね。そういう意味では、必要に迫られて、ではなくてリリーの方から告白してきてくれた、というのはこういっちゃなんですが有り難いことだったのでしょうね。

ご婚約、おめでとうございます。

即座に両親に告げに行ったのは偉いけれど……そう言えば、肝心のマゼルには報告しましたっけ！？　あれ？　言ってなくない？　いや、マゼル他国にまで遠征中で、直接報告できる所にいなかったわけだから仕方ないけれど。それに、マゼルは反対するどころか諸手を上げて喜んでくれる方だとは思うけれど。
とはいえ、婚約して、つまりお付き合い、交際がはじまって二人のイチャイチャ、仲睦まじい時間がはじまるのかと思ったら、ヴェルナーは相変わらず多忙の上に、リリーの方はというとその才覚を見込まれたのと、常にヴェルナーの傍にいることでリリーに近づこうとする貴族から守るために、ヴェルナーの仕事を手伝うことになり、二人でゆっくりと恋人の時間を、というのはほとんどなかったような。
それ以上に、リリーの立場が将来のツァイフェルト伯爵夫人ということが決定したために、貴族としての教育、貴族家夫人としての勉強も始まって、それどころかヴェルナーの婚約者として他の貴族家とのお付き合いなんかもしなくてはならなくなるから、その準備や練習も始まって、リリー個人としてもえらく忙しそうになってるんですよねえ。
お茶会への参加や、面会者との応接でも、将来の伯爵夫人として、というのが一気に増えましたし。これも、ツァイフェルト伯爵家の両親が主導しての勉強なんでいきなり無茶振りとかじゃなく、ちゃんと段階踏んでのことなんで、厳しくも必要なことであり、むしろとても丁寧な教育でこれ両親ほんとにリリーの事気に入ってるんだなあ、大切にしようと思ってるんだなあ、というのが伝わってくるんですよねえ。
でも、忙しそうだ。二人でイチャイチャしてる暇が全然ねえ。
それでも、同じ職場で一緒に動いて働いているので、一緒に過ごす時間はたっぷりある、と思うべきなのか。
表向きにも、マゼルの代理としてリリーが表舞台に立って、決闘裁判の片側で主役を務め、リリーの騎士としてヴェルナーが決闘の舞台に立ち、見事に勝ってリリーに勝利を捧げた、という絶好のパフォーマンスも出来たので、世間的にもヴェルナーとリリーの婚約が公表されても祝福されるような下地が形成されましたしね、これ。
この決闘裁判には、王太子サイドの政治的な思惑も多分にあったわけですけれど、ほんとこの一事にどれだけの意味を込めていたのか、王太子殿下は。
ヴェルナーを釣り餌にした謀略としては、あまりに早く乱暴に釣り餌に魚が掛かってしまったので、思惑より相当早く計画を巻いて実行しなくてはいけなくなって、王太子殿下自身愚痴ってたし、想定外の事態も起こったわけだけれど、結局思惑通りに事は進んでいるわけですしねえ。
ほんと、主人公のヴェルナーがもうとんでもなく高性能の起用万能で実績上げまくっているのに、全然彼の独壇場に見えないのは、明らかにヴェルナー以上の化物が王太子以下揃ってて、ヴェルナーを手のひらの上に乗せているからなんでしょうね。ヴェルナーは度々、掌の上を飛び出していくんですけれど、慌てず騒がず掌を広げて、ヴェルナーの持って来る企画を具体化したり、結果をより昇華させて施政に組み込んで無駄にしないどころじゃない実践や将来の予定に仕上げてるのを見ると、この人らとんでもねーなー、としか思えんｗ

正直、王国中枢の陣容が盤石過ぎて、チョロチョロと動き回っている貴族勢力が役者不足にしか見えん。今回は特に政治的な立ち回りの話がメインだったけれど、ヴェルナーを目立ったところで泳がせて、今片っ端から釣り針引っ掛けてあとは釣り上げるだけ、になってるんじゃないだろうか、これ。
同時に、ヴェルナーを将来の王国の幹部候補として鍛えまくってますし。これはもうほぼ自分たちの後継者候補の一角として見定め終わって、仕込む段階に入ってますよねｗ　仕込みだけじゃなく、表舞台に立たせることで、じわじわと名声を積み上げさせて、囮のために被っていた汚名を雪ぐ準備も整えつつありますし。このままだと、勇者マゼルとの二枚看板くらいの名望を得そうなんだが、大丈夫なのかヴェルナーくんｗ



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