【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? １９】 手島史詞／COMTA HJ文庫
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終焉の地に、〈魔王〉集結――!!
仲間たちと共に観光旅行、そしてネフィとの挙式と、堂々と寄り道をしながらも遂に〈魔王〉が集う終焉の地に辿り着いたザガンたち。現〈魔王〉が勢揃いの集会にて、敵の首魁〈最長老〉マルコシアスは驚くべきことを口にする。
「いまから一年後、世界が滅びる。俺はこれをなんとかしたい」
そして明かされる1000年前の戦いの真実。衝撃の連続がザガンたちを襲う中、〈最長老〉の陰謀の魔手も迫っていて――
アニメ化もした大人気ファンタジーラブコメ激動の19巻!!
これ、１８巻と一枚綴りの表紙絵なんですね。普通主人公とメインヒロインのウェディング姿が２巻連続で一枚絵として表紙で描かれるって、それもう最終巻で使われるような演出なのですが、本作は別に終わりません！！ 終わりません！！
まあかなりクライマックスに入っている事は間違いないのですが。果たしてラスボスかは未だにはっきりしないのですけれど、最初期から名前が上がっていて裏で暗躍していることが中盤で発覚して、しかもそれがザガンとも縁のある人物で、そしてついに本人が出張ってきて今魔王を参集させ、そしてザガンファミリーの向こうを張る一大勢力のボスとして、絶対相容れない目的で対抗することになった相手ですからねえ……いや、でもこれってラスボスというよりもライバルに近い立ち位置になってしまうような。
マルコシアスと言えば、最古の魔王として最長老と呼ばれて今まで登場した魔王の中でも名だたる存在でしたからね。それが、若いマルクの姿で現れて以来、ずっと締まらない。最長老に相応しい威厳ある恐ろしい謀略家として頑張って振る舞おうとしているのに、ザガンたちにいつも透かされて情けない顔をして嘆く羽目になるわけで。
いや、わりとザガン当人相手にはそんな事ないと思うんだけれど、お婆ちゃんの暴走やその他の部下連中のやりたい放題に振り回され、途方に暮れて。威厳はどこにいった、という半泣きで煤けた背中が似合うことになってしまって、いとあわれ。
今回も、マルコシアスによる招集によって、魔王の座を得た全員がついに揃って参集するというシリーズ始まっての集大成みたいなイベントで、しかもマルコシアス派とザガンファミリーの一触即発の状況であり、またマルコシアスの本当の目的が明らかになるという緊迫感ある展開だったのに。
魔王も一斉に代替わりした事もあって、マルコシアスが新顔も多いことだし自己紹介から始めようか、と切り出したら、フォルが名前と一緒に好きな食べ物なんかを言い出したもんだから、続く幼い枠のフルフルまで名前と好きな人の事を話しだしたもんだから、続く魔王みんな自分の趣味とか好きなこととか好きな人の紹介をはじめて……なんか、魔王の名乗りじゃなくて小学校のクラス替えのあとの自己紹介みたいなのになっちゃいましたよ！？
マルコシアスとしては、魔術師の頂点たる魔王たちの威風と火花飛び散るような名乗り合いみたいなのをしてほしかっただろうに、恐ろしくグダグダになってしまって、可哀想で見ていられなかったんですけどｗ
トップバッターでこのグダグダの空気を生み出してしまったフォルが、思わずごめんねと謝って慰めてしまうほど可哀想だったんですけどｗ
いや、まじで大丈夫かこいつ、と敵なのに心配でハラハラしてしまうほどだったのですが、とりあえずこの魔王会議によって最長老たる彼が長年立ち向かってきた問題であり、彼の目的がようやく明らかに。
それ自体は、おおよそこれまでのマルコシアスの動きや、魔族が大量発生している状況などから推察できていたことで、何なら世界を救うという一点でザガンたちと対立する要素はあんまりないんですよね。
だったら、最初から協力体制を申し込んでくればよかったのに、なんでかただ魔族の侵攻を止めて世界の滅びを回避するため、というには不穏な暗躍が多すぎて、ザガンたちも不信を抱かずにはいられなかったわけです。
マルコシアスの正体が、ザガンが浮浪児やってた頃に色々と面倒を見てくれていたマルクという兄貴分だった、という事実からしても昔なじみであることですし、何ならマルクってザガンの母親であるアルシエラの兄でもあることから、血縁の伯父でもあるんですよね。
だから、協力は全然出来て不思議ではなかったはずなのに、どうしてもマルクの動向には後ろ暗い怪しい部分があったわけで、そこがずっと懸案だったんですね。
それがついに明らかにされたわけですよ。いや、それは絶対にザガンサイドからしたら受け入れられないですわ。
その最終目的自体はむしろザガンたちも出来うるならば同じようにしたいと思う所なんですよね。
つまり、魔族の侵入を防いでいる結界の核であるアルシエラの救出。彼女がどうも近い将来、限界を迎えて存在を保てなくなる、というのは彼女が結界の核だという真相が明らかになる前からはっきり明示されていたのですけれど、寿命か何かだと思っていたのがこういう理由だったのか。
当人は古馴染みの新しい恋人とイチャイチャしてらっしゃいますけどｗ
ただ、アルシエラを救うために身代わりを用意しなくてはならなくて、それがアルシエラの娘でありザガンの妹という事になるリリスである、というのはそりゃ受け入れられんですわねえ。
とはいえ、そのリリスを守るために戦うのは実のところ兄妹としてはほとんど接していないザガンではなく、その騎士様のお役目は当然告白済み返事待ちの恋人未満なフルカスくんなわけですよ。
大好きな女の子を守るために、限界突破して頑張る男の子という誰もが大好きなシチュエーションですよぉ！
狭間猫と呼ばれた歴戦の魔王にして空間魔術師としての記憶を亡くしてしまい、今は無邪気で天真爛漫な少年に過ぎなかった少年が、往年の力を取り戻して最長老と呼ばれる最古の魔王マルコシアスと真っ向から渡り合う。シリーズの中でも屈指の手に汗握る激戦でした。
いや、敵のマルコシアスの方がこいつ大丈夫かよ、というような有り様だったのでちゃんと戦えるの？ とまで心配してしまったのですがどうしてどうして。
一度見た攻撃はニ度は通じない、て聖闘士星矢の昔から定番みたいに言われる戦闘シーン標語でありますけれど、これをガチでやられると。しかもラスボス級にやられてしまうとマジで手に負えない状況になるんですね。なまじフルカスの攻撃が威力スケールともに今までのシリーズの戦闘シーンを遥かにぶっちぎるようなド派手ド迫力の代物で、しかも自信満々なマルコシアスを圧倒してしまうほどのものだったので、最初面食らってやられていたマルコシアスに攻撃がどんどん通じなくなっていき、何をしても完封されてしまうような状況にジリジリと追い込まれていくのが、マルコシアスの底の見えない恐ろしさがジワジワと感じられる展開になっていったんですね。
あれだけ情けない面をさらしまくって、恐ろしいと思うよりこの人可哀想と思うようなキャラだったのが、ちゃんとラスボスらしい手のつけられない最強の敵としてのベールを脱いでいく様子は、フルカスの奮闘が際立ったものだけに尚更身震いさせられるものがありました。
やれば出来るじゃん。
やれば出来るんだ、と感心されるラスボスというのもアレですがｗ
そして、結局魔王になれないままだったにも関わらず、一番いい所で現れるバルバロス。こいつ、ほんと一番美味しいキャラになったよなあ。
てかさあ、今まで一番魔王に相応しいだろう魔王候補だったバルバロスが、何人も代替わりしてネフィまで魔王になったのに彼だけ魔王の刻印を得られなかった展開が、ラストのあれの為だった、というのはやっぱり美味しい役すぎますよ。ザガンとネフィの対となるのはバルバロスとシャスティルのカップルなんだねこれ。
ザガンの城も魔族の襲来によって陥落し、ザガン一派は敗走。まさか囚われのお姫様があの娘になるとは予想外でしたけれど、ザガンがああいう状態になった以上ネフィやフォルがザガンから離れるのは違いますしねえ。とはいえ、黒花とは。リリスの身代わりになったというのもあるのですけれど、銀眼の王という要素が重要になってくるのか。にしても、今度はシャックスが囚われのお姫様を救う騎士役なんですか！？
今回はほぼ魔術師サイドの話だったので、負けたとはいえザガンファミリーとしてはシャスティルたち聖騎士は今回関わっていないだけに、総力戦となると今度は教会の共生派の協力も仰ぐことになるんだろうか。
ザガンが自分以外の誰かに敗れることを心の底から認めないライバルの鑑みたいなキャラクターですよねぇ。
八岐
が
しました