【魔剣少女の星探し 十七（セプテンデキム）】 三枝 零一／ごろく 電撃文庫
Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
──これは、伝説となって語り継がれる、魔剣使いの少女達の物語。
「母様。リットは星を見つけました」
魔剣の使い手が争った戦争が終結して一年。母の願いにより最強の魔剣使いを目指すリットは、魔剣の所持が許される唯一の都市「セントラル」を訪れた。そこで彼女は各国の思惑が絡み合った《はぐれの魔剣》を巡る陰謀に巻き込まれ、優れた魔剣『山嶺』の使い手である少女、クララと決闘をすることに――。
「リット・グラントと魔剣『十七』、謹んでお相手いたします」
「もっともっとわたくしを楽しませてくださいまし!」
様々な目的を持つ魔剣少女たちが出会い、剣戟で幕は開かれる。
『ウィザーズ・ブレイン』の著者が放つバトルファンタジー、推参!
ッ！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！（興奮のあまりバンバン机を叩きつつ、叫びが声にもならない様子）
これはアカンやつやーー！ こんなん最高傑作に決まってるやないですかァ！！
ふぁああああああああああああ、ふあああ、うああ……あああ、うあうあうあうあ。
いやあ、もう何でしょうね。近年、こんなドキドキしながら本読んだ記憶ないんですけど。読み終わっても興奮冷めやらなくて、今思い出しただけでも体温上がってきそうな感じなんですけど。
ふふふふははははは、やっべえですわ。テンションやっべえですわ。
ふはーー、ヒッヒッヒ、ふふふ、あーあーあー、うん。
落ち着け落ち着け、深呼吸深呼吸。いやあ、読み終わってからしばらく時間経ってるはずなのに、思い出して書こうとしだしたら途端に心拍数があがってきてしまいました。
やばいですよこれは、最高です。
バチン、と目の奥で火花が散ったのが、クララが登場したあのシーンでした。クララって、使う魔剣ってガラス製のレイピアみたいな形状で、ああそういうタイプの剣士なのねー、とカラー口絵の姿絵付きのキャラ紹介のあれを見て、勝手に思い込んでたんですよ。
いやいやいやいやいや、とんでもねーとんでもねー。ひっくり返りましたよ、度肝抜かれましたよ。なっなっ、なんじゃこりゃぁ！？ と。
ビジュアルがね、映像がね、いきなり強制的にアリアリとまぶたの裏に浮かんで、そのあまりの迫力に、唖然呆然ですよ。
うわっ、うわっ、うわっ、と混乱してたら決闘相手のリットが今度は魔剣【十七（セプテンデキム）】の柄を握って、握って、
そっから、以降もうまぶたの裏で、頭の中で、バチバチバチバチと火花が、電気が、飛び散りまくって、なんかもう「うわぁーーーーー！！！」でしたよ。
こんな戦闘シーン、過去にも数えるほどしか味わったことがないですよ。
ただ動きが凄いとかじゃないんです。剣を交える二人の心、二人の想い。リットとクララ、魔剣士二人がね、それぞれ己のゆく道に迷いはないんだけれど、辿り着く先が見えなくて途方に暮れていて、寂しくて心細くて、自分たちは決して見つけることの出来ないものを探してるんじゃないか、と不安や失望を抱えていて。
そして、二人は出会ったんですよ。
お互い、代理の決闘人として戦いを引き受けて、何の面識もなく、何の因縁もなく、戦いの舞台にあがったのです。
まっさらで不純物のない白紙の感情、相手に思うことは何もなく、始まる前に言葉を交わすこともなく、二人は真実、剣から始まった。
そんな出会いだったのです。
最高の、出会いだったのです。
剣を交えて、彼女らは感じたんですよ、知ったんですよ、わかったんですよ。
戦えば戦うほどに、お互いの技量を、真価を、剣を、交えれば交えるほどに、自分たちが魔剣を手に取り、剣士足らんとしたのは……この出会いのためだったのだと、言葉を交えなくてもわかっていく、通じ合っていく。
相手の強さ、相手がこれまで積み上げてきたもの、技の切れ、鋭さ、研鑽、積み重ねが伝わってくる。溢れてくる敬意、尊崇。凄い！という驚き。凄い！！という感動。自分の中でギアが段飛ばして爆上がっていく。スイッチが片っ端から入っていく。頭の天辺から指先まで、痺れるように力が漲ってくる。相手の技に力に応えんと、応じんと、返答せんと、換気が湧き上がる。
楽しい、こんなに楽しいことだったんだ。剣とは、強い人と戦うのは、いや彼女と戦うことこそが、こんなにも楽しい。
そういう気持ちが、多段ロケットが次々と点火していくように高まって発火して、気持ちも想いも何もかもが最高点へと駆け上がっていく、その上昇曲線が戦闘シーンの美しさ、そう美しいというほか無いあまりにも激しく止めどなくきらめくような剣戟によって彩られて、興奮という以上にドキドキして、鼓動が高鳴ってたまらないことになってしまったのよ。
これはもう、リットとクララの気持ちにシンクロしていたとしか思えないほどに、アタマン中電気走るわ、心臓バクバク動悸がやばくなるわ、ほんとたまらんかった。
これこそが、本作のテーマ、主題そのものだったんですよね。
星を見つけた！！
リットが母に言われて求めていた星って、これだ、これなんですよ。これだったんですよ。
全力をもって剣で語り合える、剣で心を通じ合わせることのできる、親友。ライバル。
そういう風に言葉で語ってしまうと陳腐になってしまうけれど、その星を、星を見つけた、という瞬間を、こんなあざやかに「剣戟」という形で語って、表現して、少女たちの目がドンドンきらきら輝いていくようにして描かれた、一連のシーンはもう今となっては感動としか言う他ありません。
剣で語り合うって、こういうことだったのか、とはじめて目の当たりにしたような気持ちすらあります。
そして、タイトルの星探しの意味を理解した時の、このキュンッッとなった「ときめき」、どうしてくれるんですか！！
畜生、最高だ、最高だよォ。なんだよそれ、ズルいよ、最高じゃんッ。
ってか、ここまで、リットとクララとソフィアが出会うまでがプロローグって、序章って、序章凄すぎません！？ 序章から最高潮に達してたんですけど！？
とはいえ、そこからまったく減速せずに加速しっぱなしで最後まで駆け抜けていくもんだから、たまったもんじゃなかったのですが。
あとがきで、本作のコンセプトについて色々と作者先生が語られているのですけれど、いやあこれは確かに「三匹が斬る」ですよ。リコリコよりも絶対「三匹が斬る」の方だと思う。少女三匹が斬る、ですよ。
もう一人加わるソフィアも加えて、これはガール・ミーツ・ガールズの極地ですよ。やっとう担いだ少女三匹、それぞれスネに傷ある身で、しかしそれぞれ擦れた所のない純真なお嬢同士、意気投合して一人は名をあげるため、一人は結婚相手を探すため、一人は姉の後始末をするために、つるんでギルドを立ち上げることになるのですけれど、いやあこんな少女三人組の話なんてありました？ 最高じゃないですか！？
これ三人が並んでる姿見ると、短剣型の魔剣を使うソフィアが一番背丈大きくて、あのとんでもなくでかい剣「十七」を使うリットが一番小さいんですよ。それを知った時の、このキュンキュンした気持ち、わかります？ てっきり、普通にメインっぽいリットが一番大きいと思ってたのに。小さいのかーー！！
そのリットの戦う姿がまたキレイで、ほんとキレイで。十七（セプテンデキム）ってそういう意味だったんか！ ってか、こんな魔剣使いこなせる奴なんて今まで出てこなかったの当然だろ。マルチタスクの極みだ。こんな戦い方するの【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す】のエーリヒの見えざる手の多重展開くらいしか知らないぞ。あれも、いっそ美しいとすら思えるハチャメチャさなのですが、こっちはさらに剣戟に練磨されたような描写が伴っているので、それがまた美麗でスピード感極まってて、綺麗なんですよ。
なんで文字読んでるだけなのに、こんなに映像になるんですかね。凄くないですか？
ラスボスとの戦闘ももうなんか動きっぱなしでしたよ。もう明確明朗に彼女らの動いてる様子、俯瞰からアップから下から見上げる様子から、カメラワークもグリグリ動くし、なにこの脳内映像。ヤバイですよ、ヤバかったですよ。ハラハラドキドキ、しっぱなしでしたもん。４Dの劇場版じゃないんだから。
リット・グラント。クララ・クル・クラン。ソフィアの三人に、ここに絡むだろう猫耳メイドのミオン。登場人物、みんな魅力的でキュンキュンしてしまうような愛おしさを感じさせてくれて、たまらなくなるくらい生き生きとしていて。
たまらん。
剣士であり、何より少女である彼女らの、太平の世を剣一本で渡り歩こうという心意気、同時に脆さや弱さも内包した彼女たちが、集って手を取り合って背中を預け合って、剣を振るう。
最高の冒険活劇、剣戟奇譚でありました。
【ウィザーズ・ブレイン】という長きに渡ったシリーズをついに完結させた三枝先生、またどえらいもんを送り出してきやがりましたよ。
こちとら、脳がこんがり焼きあがっちまいましたよーーーォ！！
ヒャハハハハ！！
しました
個人的にはクララがお気に入りで一番トラブルに突っ込みそうで好きです（笑）
八岐
が
しました