【異世界のすみっこで快適ものづくり生活 ４ ~女神さまのくれた工房はちょっとやりすぎ性能だった~】 長田 信織／東上文 電撃の新文芸
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ものづくりで生活を豊かにしていく異世界スローライフ、第四弾!
自分が拓いたキャンプサイトに「ミコトの郷」と命名して、ついに郷長となったソウジロウ。醤油などの調味料を作って日本食を再現したり、新しくやってきた天使族も交えて稲刈りを楽しんだり、郷ではのんびりとした暮らしが続いています。
しかし、近くの町には侯爵令嬢が訪れたり、怪しい諜報員が現れたりと何やら騒動が起きそうで……!?
チートな元社畜の、等身大の異世界生活、第四弾!
ギリシャ神話なんかだと、女神に動物に変えられるという話は多すぎるだろ、というくらい沢山あるんだけれど、妖精のイタズラで人間が動物に変化させられるって話はあるんだろうか。あまり覚えがないんだけれど。
にしても、なぜアザラシ。なんでアザラシを選んだ。ここ、森の中なんですけど！？
というわけで、隙だらけだったからというしょうもない理由で、あざらしの皮を被せられてあざらしになってしまった千種。海獣類系ヒロイン。いや、それはいいんだが、鳴き声が汚い！ ラノベヒロイン史上最上級の汚い鳴き声だぞ？！
アザラシの皮を被った魔物、というと北欧の伝説にある「セルキー」があげられるんだろうけど、これって女のセルキーはアザラシの皮を盗られると、盗った相手の言いなりになっちゃって嫁になる、という伝承が残ってるらしいんですよね。天女の羽衣伝説みたいな話だなー。
千種の場合、なんかわりと言いなりになってしまいそうな気がする。
最初は妖精どものイタズラでむりやりアザラシにされてたのに、なんか後になって気に入ったのか自分からアザラシの皮を被ってアザラシになりきってご満悦してたんだが、このヒロインどういう方向性を目指してるんだろう。色物系にも程があるんじゃないのか？
宮廷魔術師やってたときも、相当にやらかしてたみたいだし。いやあ、これは千種が一概に悪いとは言えないのかもしれないけど、でもやっぱり千種も拍車をかけちゃってますよね？ という部分は間違いなくあるよねえ、これ。
まあボッチで周りにマナーとか聞けないと、礼儀知らずになってしまうという怖い例である。千種が宮廷アレルギーになるのも、まあわからなくはないんだが。だからといって、だんだんと人間でいるのも嫌になってきてるんじゃないか、と思えてしまうくらいアザラシになりきるの楽しそうなんだが。
お゙っお゙っお゙お゙、とか。ぅ゙え゙え゙え゙〜〜〜、とか間違っても女の子が発する発音じゃあないんですが。
メインヒロインは大人しくミスティアさんに任せておきましょう。
また人はガンガン増えていってるんだけれど、ちゃんとしたヒロインらしいのはミスティアだけだからなあ。天龍の子も好意はあるんだろうけれど、友達感覚だし。
さて、キャンプ地にミコトの郷と正式名称をつけて表舞台に出てきたソウジロウだけれど、そうなると痛くもない腹を探りにいろいろな勢力から調査監視の目が飛んでくるわけで。
噂だけだと、神の眷属を名乗るような胡乱な存在なだけに、さらにブラックリストに乗っちゃってるような千種が絡んでいるだけに、神を騙る不届き者ではないか、と怪しまれてたんですね。
普通だと、ここで大いに拗れるんだけれど、調査に訪れていたこれ異端審問員みたいな工作員なんだろうか。これらの人達がちゃんと仕事していて、これ絶対本物っぽいんですけど、現場判断無理ですー、と上に報告あげてるの、当たり前の仕事なんだけれど意外とこういう当たり前の仕事してくれてる諜報員みたいなのあんまりいないんで、新鮮でした。
そして、報告を聞いて適当せずに自分でかっ飛んでくる、教皇と同レベルの権限持つ代行の天使さま。
いや、本物の神の使いが絡んでるとなるとそりゃ一番偉い人が飛んでこないと行けないのは当たり前なんだけれど、権威と立場があるとそう簡単に動けないし現場判断を軽視しがちなのを思うと、ここで自分で動いてすっ飛んでくる、という行動に移れるのは素直にえらいなあ、と思っちゃいましたよ。
天使の彼女から、ソウジロウをこの世界に送り出してくれた。それも最後に残った力を使ってこの世界で楽しむようにと送り出してくれた女神のアナ様。その復活の可能性が示されたのは、ソウジロウとしてもめちゃくちゃ大きい出来事だったんじゃないでしょうか。アナ様のことはこの世界の人達はほとんど知らないみたいですし、アナさまの像を祀っているけれども、もう力をなくしてしまったと思われる女神さまにどう報いたらいいのか。女神様が望んでくれたように自分がこの世界を存分に楽しむ、という事以外指針が出なかったですからねえ。恩人であるアナ様復活の可能性が出てきたというのなら、そりゃソウジロウもテンションあがってしまいますわ。
一方で、深く交流を結んでいるブラウンウォルスの街も、ソウジロウが海の魔物を倒してくれたり、交流をきっかけに経済が活発になって、色々と盛り上がっているわけですけれど、そうやって街が急激に発展しだすと人間社会の中で注目を浴びてくるわけで。
ここ、街の領主と経済を握る商会の旦那二人と、その息子たち二人が非常に面白いというか愉快な人達で、ソウジロウとも波長が合う、ワクワクを楽しめて自分達で色々と思いついたことをやっていく、というタイプの人達なわけですけれど。
これでも領主さま、貴族なんで中央との難しい駆け引きもあるんですなあ。いや、そういう難しいのやだー、と領主様とかごねてるっぽいけれど、発展しだした以上向こうからあれこれと妨害にしても調査にしても、いっちょかみにしても、アプローチをしかけてくるわけで。
領主の息子の学友だった侯爵令嬢が来訪、というのは結構大きな、というか重要なイベントだったんじゃないだろうか。この侯爵令嬢って、領主の息子のヒロインっぽいですねえ。なんか、まだ来たばっかり、というか来て以降特に大きなイベントを起こしていないので、話何も進展はしていないのですけれど。でも長逗留するつもりみたいなので、千種と何やら因縁があるみたいですし……宮廷での千種のやらかしの原因になった人なのか。これ、別に千種も侯爵令嬢も悪気があったわけじゃないので、どっちも収拾の付け方を失敗した、という塩梅なんだろうけれど、この令嬢が千種が外部の人と打ち解けるために必要な要員になってくるんですかね？ 仲直りってわけじゃないですけど、自分からアザラシになってご満悦してるばかりじゃ流石にヒロインとして大丈夫じゃないよ？という有り様ですし。身内だけじゃなくて、外に友達作らないと引きこもり、だけなら兎も角引きこもり方が人外の方向に転げ落ちていきそうで怖いですし。
とりあえず、アザラシの皮燃やそうかとかソウジロウに言われてるけれど、セルキーの伝説的にはそのまま嫁になる流れなんだが、今の千種は嫁にするにはハードル高いなあ。実際、そういう嫁取り話では一切ないし。アザラシ化が深刻な千種を人間に戻すために必要な措置だしｗ
