【ほうかごがかり ４】 　甲田 学人／potg 電撃文庫

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これは、いま最も恐ろしい「学校の七不思議」。第2部開幕!

知らなかった。わたしたちが、神様の餌だなんて。

助けてください。わたしたちの学校の『かかり』は、いま大変なことになっています……とても理解できないことが起こっています。どうすればいいのか分かりません。
あかね小学校の『ほうかごがかり』から、『かかりのしおり』を作った者に届いた一通のメール。学校中の教室に棲む『無名不思議』と呼ばれる名前のない異常存在を観察し、その正体を記録するために集められた少年少女たちは、一人また一人、その命を『ほうかご』の暗闇に消していく。
三本足の人形、メリーさん……。これは化け物たちに捕食される運命に抗う五十嵐華菜と仲間たちの、生き残りを懸けた戦いの記録。
鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第2部、開幕。

ラスト、本気で「へひゃぁ！？」と声が出てしまったんですけどぉ！？
もうクエスチョンマークが乱舞ですよ、乱舞。
これはもう本当に、大変なことになってる。理解できないことが起こってる。こんなんどうしたらいいかわからんよ！？

第三巻で二森啓たちの学校の物語は一旦終結を見たのだけれど……そう言えば、啓たちの学校も新学期になったら新しい「ほうかごがかり」が任命されるんですよね。顧問の太郎さんがいるからまだマシなんだろうけれど、啓たちの時みたいな前年からの生き残りが、啓と由加志の二人が卒業しちゃったから残ってないんですよね。大丈夫なんだろうか、と心配になるところだけれど、新しい章の舞台は啓たちの学校ではなく、あかね小学校という新設されてまだ５年、という非常に歴史の浅い小学校。
この子供達が生贄にされる現象、全国の小学校で余すことなく起こっている、という話は衝撃とともに前巻までに明らかになっていたわけですけれど、その事実とともに気になっていた疑問も生じていたわけです。
他の学校には、太郎さんみたいな顧問、いないんじゃないの？
あのほうかごがかりの顧問である太郎さんも、途中まで係りの一員と思ってしまっていたように元は普通の人間で、この「ほうかご」に捕らわれてしまい、長きに渡ってあの部屋から動けなくなり、逃げ出せないままずっとそこにいる、という存在でした。
だから、太郎さんてあの学校にだけいる特別な存在だったはずなんですよね。しかし、他の学校では彼みたいな「顧問」がいなければ、ほうかごがかりが一体何をすればいいのか。何をすれば生き残れるのか、という必要な情報を教えてくれる存在がいないって事になってしまう。
実は、他の小学校の係りの生存率ってめちゃくちゃ少ないんじゃないのか？　というのは薄っすらと考えていたことなんですよね。

……いるんだ、顧問！！
さすがに太郎さんみたいな年季の入った博識な顧問、てわけじゃないのだけれど、ちゃんと最低限の情報を伝えてくれる顧問みたいな存在、各小学校に配置されているのか。
これが生贄の儀式である以上、ただ怪談の卵の巣の中に何も知らない子供達を放り込んで虐殺する、というだけでは学校の怪談は育たない。しっかりと認識され、その存在が固定されるまで観察されないことには、怪異たちもまた本物の怪談になれないまま潰えてしまう。だから、子供達に最低限の情報を与える存在は用意されているのか。悪意の塊みたいなシステムだけれど。
それはそれとして、顧問の人は機械的に情報を伝えるんじゃなくて、ちゃんと太郎さんみたいに子供達に対して情を抱き、本当に助けようとしてくれてる存在なんですね。でも、メリーさんなんかこの人あからさまに怪異だし、本当に全部信じていいかわからなくて怖いんですけれど。
それに顧問と言っても、太郎さんみたいな年季の入ったベテランと違って、学校の先生にも大学出たての頼りない新任教師がいるように、顧問も本当に最低限の情報しか知らない人達も当たり前なんですけれど、いるんですね。
このあかね小学校は、新設されてまだ５年というだけあって、情報の蓄積がまったくない。全国の小学校で繰り広げられている惨劇であるとはいえ、情報を共有する横のつながりがこれまでちゃんと構築されてこなかった以上、ほうかごがかりとしてのノウハウの蓄積というのは、その学校の歴史そのもの。その学校で繰り返された「ほうかご」で生徒たちの血と涙と絶望の繰り返しによって積み上げられた血と知の集積でもってしかないわけだ。セーフティーゾーンですら、太郎さんの部屋みたいなしっかりとした場所じゃなくて、バリケードを積み上げただけの心もとない場所でしたしねえ。
そういう意味では、啓たちかなり恵まれていた、というべきなんだろう。太郎さんという顧問が居て、歴史ある学校らしい毎年の記録が残っていて、先人たちの助言も残っていて、直近の前年からの生き残りが二人もいた。しかも霊能者付きだ。
それでもなお、あの惨劇になってしまったのは、正直言ってあの啓の世代のメンツは相当に問題が多かった、というべきなんでしょう。半数近くが、危機感が薄く、或いは生き残るための現実的な判断が取れない幼い子たちだった。……いや、まだ小学生なんだからそれが普通と言っていいのかもしれないけれど。でも、冷静な判断を下せなかった、というのは間違いない。独り善がりの、自分だけで精一杯の子が多かった、というのもまた間違いないだろう。
一方で、残る半数がまた逆方向にガンギマリすぎていたのも確かなんですよね。小学生としてはあまりにも生死に対しての覚悟が決まりすぎていた。自分が生き残ることよりも、自分の命の使い所をガンギマリで探しているような子たちだった。いずれにしても、極振りなメンツでしたよね。

それと比べると、あかね小学校の面々は……いや、これまじで優秀だな。この情報がろくにない中で、３ヶ月近く無難にやり過ごせてきたのは、ほうかごがかりに選ばれた子たち全員が強い危機感と現実認識を持ち、仲間を信頼して一致団結して助け合ってやってきたからだろう。みんな凄く責任感があって、友達思いで、人間関係が非常に安定していたのが話を聞いていてもよくわかる。
その中で特に図抜けているのが、リーダーの華菜である。表紙にもなっているバールみたいなものを携えた活発そうな少女である。……大丈夫よ？　表紙絵に立つことになっても必ず次の犠牲者認定されるわけじゃないから。
見た目の印象から、ワガママ系かそれでなくても我が強いタイプかと思えば、みんなの先頭に立つ事が出来ると同時に一人ひとりの内面の調子まで伺いつつきめ細やかにサポートできる調整型でもあるんですよね。パーフェクトだろ、こんなの。しかも、他のメンバー全員６年生の中で彼女だけ５年生なんですよ？
小学校で５年生と６年生ってもう全然成長度が違うんですよね。６年生なんかとんでもない上の方のお兄さんお姉さんですよ。にも関わらず、リーダーは華菜であり、我の強そうな湧汰も含めて全員が華菜に全幅の信頼を置いている。とんでもない子ですよ、この華菜ちゃん。
でも、優秀であればこそ危うい面もある、というのは後に啓が直接対面して見抜くことになるのだけれど、それにしても本当にこの子有能の極みで、前年からの生き残りの一人と顧問のメリーさん、最低限のほうかごのルールしか知らなくて……それでも一生懸命、性格も引っ込み思案だろうに責任負ってみんなを生き残らせるべく頑張ってるイイ先輩なんだけれど、それでも情報があまりにも足りてなかったんですよね。
そんな中でみんなを取りまとめて、協力しなければ生き残れないという意識を共有させ、率先してみんなを導いてきた華菜。彼女がいなければ、これ幾らこのメンバーでも早晩犠牲者が出ていた、どころか大半が生き残れなかったんじゃないだろうか。

しかし、犠牲者は出てしまった。いきなり巻の冒頭で凄まじい惨死を遂げてしまう越智春人くん。ただ、後々話を聞いている限りでは、彼なにかやらかした、という事でもなかったみたいなんですよね。
啓くんの世代のときは、誰かしら致命的なやらかしをやってしまっていた結果、デッドラインを越えてしまっていた、というケースが大半だったんだけれど、彼の場合特になにか性格に問題があったわけでもないようだし、こっそり何かをしでかしていた、というわけでもなかったみたい。
にも関わらず、怪談に食われた。
観察のやり方がまずかったのか。あかね小学校では、怪談を観察して記録を残す、という事が生存したまま卒業まで逃げ延びる事につながる、という漠然とした情報はあったものの、具体的に観察って、記録を残すってどういう風にやればいいの？　というわかってない部分は多かったんですよね。だから、何かが情報足らずで、欠けていた足りていなかった、という可能性はあるんだけれど……。
二人目の時は、明らかに行ってはいけない事を知らないからこそやってしまっていたが故に危険マシマシ状態ですからね。あれはほんと知らなかったからこそで、それが危ないなんてわからないもんなあ。
そういう意味では誰にも責任はないはずなんだけれど、裏目っちゃったよなあ。責任感じちゃうよなあ。

あの冒頭の問答無用にいきなり殺されてしまうシーンは、この新章が理不尽に塗りつぶされている、子供達に瑕疵がなかったとしても、容赦なく怪談に殺されることもありえる、というゾゾゾ、となるような実態を、初っ端から叩きつけてきたような空恐ろしさがあったのです。
そのあとから、どんどんとこのあかね小学校のほうかごがかりの子らの優秀さ、真っ当さ、善良さを……それこそ啓たちのときと全然違うと言っていいくらいの人品の良さ、それを見せつけられればられるほど。それでも、あんなふうに殺されるんだ、という絶望感、恐怖感がもう倍率ドン！　な感じなんですよ。
おまけに、何人かは自業自得の面も多分にあった前までの回と違って、今回の子らはみんなホント良い子なんで、犠牲になるの、しかも無惨極まりない酷い死に方をされると、ダメージが半端ない、半端ないんです。
初の犠牲者が出たあとの子供たちの反応も、それぞれがさあ……本気で友達の死に向き合い、また本気でこれ以上犠牲者を出させまいとする必死さと責任感、冷静であろうとする頼もしさとかがあって、なんか祈るような気持ちにさせられてくるんですよ。頼むから、頑張って。頼むから、死なないで、と。

それでも、二人目の犠牲者が出てしまったあとの、あの華菜のなりふり構わない必死さが、ほうかごがかりのOBとして活動していた啓たちに、コンタクトをとりつけることへとつながるわけで。
いやまじでMVPですよ。よく、よく啓にたどり着いた。値千金の情報の山が、ザクザクどっぱどっぱ浴びせられるくらいに手に入れることが出来て、いや本当に良かった。
ほうかごがかりの記憶については、卒業したあと急速に失われていく、という話もあり。またほうかごがかりの情報については、大人たちのみならずかかりと関係ない子供たちにも認識できないものらしくて、どうしても各学校のほうかごがかり同士の横のつながりって、これまで出来づらかったし、多分出来たとしても長く残らなかった、らしい。
それを、啓と由加志の二人は粘り強く活動していて、ほうかごがかりのしおり、というこれもう幻の冊子ですよね。その存在、実在にたどり着いた華菜が、そこからさらに啓に直接連絡を取ることに成功したことで、完全に行き詰まりデッドゾーンに入りかけていた華菜たちのかかり活動に、光が差す。頼もしすぎる助言者が、彼らの前に現れる……現れた、はずだったんですけれど。

ラストシーンですよ。啓と、あかね小学校の面々が初めて顔を合わせるシーンですよ。
もう完全に宇宙猫状態。頭の中に「？？？？？」が乱舞。
こ、これは確かに、確かに華菜ですら、どうしたらいいかわかりません、助けてください！　ってなるわ。こんなん、どうしたらいいんよ！？　どういうことなの？　どうなってるの？
ちょ、ここでこの巻終わりって、終るの？　次は次の巻？　ちょっとまって、待って、待って？
あわわあわわわわ！？！？！？！



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