【悪魔公女 ５】　春の日びより／海鵜げそ Kラノベブックス

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かつて「帰りたい」と願った、夢に見た“光の世界”――目覚めると私は前世の姿、塔垣柚子としてそこにいました。
異世界で悪魔として……ユールシアとして生まれ育った記憶をほとんど失って。
しかも、身体は五歳の幼女! これって、二度目の転生? それともタイムリープ? もし時間が巻き戻されたのなら、かすかに思い出せる前世、身体が弱く何年もベッドに寝たきりで十代前半で亡くなった柚子の生をやり直しましょう。ですが、私の悪魔としての邪悪な気配に引き寄せられるのか、私の周囲には人の悪意や悪霊が集まってきます。そして、ふと気づくと私を見ている、どこか見覚えのある黒猫、あなたはだあれ? 待望の第二部、現代日本を舞台にスタート!

第二部現代日本編スタートであります。これ、なんかコミカライズの方が先行してやってたんですよね。悪魔公女のコミカライズだ、わーい。と思って読みに行ったらユールシア様が出ておらず、柚子なる幼女が主人公で、当初はかなりどの時系列なんだ？と混乱した覚えがあります。
このコミカライズ、漫画担当したのが士貴智志先生というド級のベテラン漫画家さんでかなりそこでもびっくりしたんですが、これがまた面白かったんですよねえ。わりとダイジェストっぽく進んでさっくり終わってしまったのが勿体ないくらい。柚子のお姉ちゃんお兄ちゃんズはほとんど登場してなかったんじゃないかな。わりと人員も整理されてたんだろうか。
時系列がどこなのか混乱した、というのにも理由があって。この現代編って、現代で体弱くて病気で死んだ幼女が悪魔に転生して、そこから紆余曲折あって凄い悪魔になってしまったものの、元の世界に戻りたくて悪魔界から飛び出してみたら、そこは日本じゃなくて異世界の方で、ユールシアという王女に生まれ変わっていた、というのがこのシリーズのはじめの方だったわけです。
そこから更にもう一度、なんやかんやあって世界渡れそうなタイミングになったので、よし今度こそ日本行くぜー、みたいな感じだったかは忘れたけれど、わりとそんなノリでしたよね、ユル様。
というわけで、現代に戻ってきたわけですけれど、これがどうしてか元の柚子本人に生まれ変わったものの、死んだ直後ではなくてもっと前の時間軸……あれ？　違うか。前の柚子が亡くなったのはこの熱出したタイミングだったのかしら。だとすると、ちょうど死んだ時のタイミングで戻ってきたって事になるのね。
……美王子くん、こんな幼稚園児時代の友達との別れがトラウマになってさらに過重したのか。

そう、いきなりぶっ込んできた、幼馴染のお友達、美王子と書いてハンサムと読む。本名・二句之美王子（ニクノ・ハンサム）くんである。
いきなりぶっ込んできたなあ、おい。ユル様、もとい柚子さまが名前を口に出してはいけないあの人、みたいな反応になってるじゃないか。
この子自体はぷくぷく太っている以外はとても大らかでほんわかとした凄く良い男の子なんだけれど、とにかく名前のインパクトに対して、見た目のインパクト、さらに実家が超有名食肉加工会社という出自のインパクトが乱打で襲ってきて、個性、本人のキャラの個性というより存在の個性が強すぎるｗ
ちょっと見た目と名前のギャップに耐えられなくなった柚子さまが、一緒にお散歩したりとかなり率先して運動させるようにしたお陰で、成長するにつれてスマートになっていくわけですけれど。
このいっしょに手を繋いでお散歩、とか絵面がまた微笑ましくてねえ。周りの大人達もほわほわになりますわ。ハンサムくん自身も、太ってることで周りからはいじめられがちだった中で、甲斐甲斐しく養育……お世話してくれる幼馴染の存在はこう……脳が焼けるパターンですね、はい。
また、柚子さまってば転生して戻ってきてから、あの悪魔の美貌というか魔性の美しさがほんのりとにじみ出るようになってしまったので……ええはい、まあそういう事ですね。

ただ、ユールシアさまだった頃の周囲からの好意は、半ば崇敬にまで高まっていて、親しい人にはポンコツなところも知られていたとはいえ、それ以上にその存在に魅了されていたのを思うと……。
こっちの柚子の方はもうちょっと穏やかに、身近な感覚で愛されてる雰囲気があって、距離感としてはこっちの方が安心できる感じがあるんですよねえ。
柚子自身も、普通に家族や友人たちを愛していますし。悪魔としての歪んだ愛情も有していますけれど、正の側の愛情もけっこうストレートに抱いている感じがあってなんか安定感があるんだよなあ。
食べ物に関しても、旨味が感じられない、といいつつそれなりに食べられてますし。何より、友達のお父ちゃん、お兄ちゃん？　が作ってくれるらーめんは普通に美味しく食べてたり、と柚子の時の方が人間味がだいぶ残っているような気がします。……ユル様が人間味ないわけじゃないんですけどね。むしろ人間味がありすぎて、ポンコツになっているのですが。
……そうか、ユル様よりもポンコツ度が低い、とも言えるぞ。
ユル様の時は姉二人が相当に拗らせてて、ユル様に対して敵意を漲らせていたのに対して、こっちの琴お姉ちゃんと大葉お兄ちゃんと来たら、溺愛と言っていいくらいダダ甘に柚子の事を可愛がってくれてるんですよねえ。兄姉にもちゃんと愛されている。それを、ちゃんと嬉しく擽ったく受け止めて同じように愛情を返してますからねえ。
あっちの姉たちへの歪んだ愛情と比べると、かなり真っ当に家族を愛していらっしゃる。
同性の親友たちとの仲も良好ですし。
こうしてみると、幼少時の柚子の周辺って家族も友達もみんないい人なんですよねえ。愛し愛され、普通に幸せに暮らしている。

では何の波乱もないのか、というと……なんか隔日くらいのペースで事故にあったり、誘拐されそうになったりしてるみたいですけれど。ペース！
さらに、裏稼業の人間から巻き添えで狙われてしまったり、とこれは運命の流れ的なものなんだろうか。身近な人達はみんな良い人たちだから持ち得ていないような、人の悪意を…悪魔の好物であるそれを、そういう所から美味しくいただいている柚子さま。食糧不足には至っていないようであります。

一方で、この現代日本にも魔法使いはいるのかいないのかわからないものの、異能の使い手、退魔僧みたいなのはいるみたいで、そこ卵みたいな小坊主・恩座くんなる年上の少年とも、柚子は巡り合っていくのであります。
存在しているだけで、色んな人の人生を本来の運命からバンバン引っ剥がしていく幼女柚子。
まあこの５巻は、まだ現代編の主なメンバーが出揃った、くらいの所なんでしょうか。ユル様の頃はわりとツッコまれる側のボケ側だった気がするんだけれど、現代編の柚子になるとどうもツッコミに回らざるを得ないような人達が結構多くて……いい人なんだけど、いい人たちなんだけど！　そういう意味でも現代編、個性強めキャラ濃いめの登場人物が多い気がします。面白し。


ところで、４巻で日本に再転生したギアスさん。この人と待ち人だった女性、柚子の両親になるのかなあ、と勝手に思っていたのですけれど、どうやら両親ではなかったみたいですね。ただ……どうも特徴からすると、お祖父さんお祖母さんっぽいんだが、どうなんだろう。





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