【怠惰の魔女スピーシィ 1.魔剣の少年と虚栄の塔】 あかのまに/がわこ MFブックス

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魔に魅入られた国の謎を、怠惰の魔女が暴き出す!

若くして魔法使いの才覚を持ち、王子の婚約者だったスピーシィ。
しかし、あらぬ嫌疑をかけられ、婚約破棄され罪人が住まう辺境の地に追放されてしまう。
それから20年後――王国は【停滞の病】によって滅びの危機に面していた。
「貴女に王から調査依頼が出されています――原因を突き止めろと」
「私を追放した国王様から? 不思議なナリのあなたに免じて、私を護衛してくれるなら考えましょう」
辺境で怠惰な日々を過ごす魔女を訪ねてきたのは、魔剣を佩いた少年。
怠惰の魔女が動く時、魔に魅入られた王国の真実が紐解かれる!
(なお、魔女にやる気はあまりない)

うわぁ……うわぁ。これはなるほど、いやあ……ハッハッハ。
怠惰の魔女さま、めんどくせーー。いやあうん、これはごくごく特定の人に向けてだけの面倒くささなのかもしれないけれど、目ぇつけられた人からすると心底メンドクセーー。
作者のあかのまにさんは【かくして少年は迷宮を駆ける】シリーズを手掛けてる人なんですが、クライマックスに向けて加速度的に事件のスケールが爆発していくのは、この人の語りのダイナミックさでありますなあ。
それ以上にキャラが濃い。いや、マジ濃いよ!?
主人公の怠惰の魔女スピーシィからして、濃いの極みなんだけれど他のメインとなる人達もバイタリティといいキャラの濃さといい、存在感が唸りを上げている。
ってかスピーシィ、魔力で若さを保っているとかじゃなくて美容に傾倒して年齢重ねても美しさを保っている人なのね? 純粋アラフォーじゃねえか!
サブタイトルにもなっている魔剣の少年こと暗部の騎士であるクロくんは実のところそんなに主人公ではなく、このお話の主人公は完全に女性陣なんですよね。その女性陣が尽くみんなアラフォー!! そりゃ、同世代同年代なんだから当然だけれど、追放されて独身で悠々やってたスピーシィと違って他の人は既婚で子持ちのアラフォー女性。この作品、男も女もほぼ既婚子持ちの登場人物ばっかりだ。クロくんがなんか若いツバメみたいなポディションになってませんか? 魔女さまがクロくんのこと随分と気に入って、色んな意味で自分のものにしてしまうのですけれど、若干犯罪臭がしてしまうのはスピーシィの行状がよろしくないからですよ! あんた、別にいい年して騎士に護られるお姫様気取りたいわけじゃないだろ、そういう性格でも趣味でもないし。若い子侍らせて喜んでるよう見えちゃうんですけどー!
まあこちとら、この魔女さまたちよりも年上なんで、余計に微妙な気持ちにさせられてしまうところがあるんですけれど。三十代くらいは後半だろうとまだまだ若いんですよ。美魔女とか冠をつけるとするとアラフィフくらいにならないと。

さても、物語の様相が変わってきた、というか見え方が変わってくるのが、若かりし日スピーシィを王子の婚約者から追い落として追放し、自分が取って代わって国母となったプリシア。仇敵同士とも言えるこの二人の本当の関係、というより実際の関係というべきか? お互いがお互いに向ける感情が詳らかになったそこからでしょう。いえまあ、うん、思いっきり仇敵同士であるのも間違いなく、お互いに心底嫌い合っているのも間違いないんだろうけれど。……訂正、スピーシィの方は絶対大好きだろ、これ。好きすぎて拗らせてるやつじゃん、絶対! プリシア様の方は絶対嫌いだろうけれど。死ぬほど嫌いだろうけれど。いやわかるよ、これもうムカつくどころじゃないでしょ。お前ちゃんとやれよ、最初からやれよ、なんでそこでこっちに向かって本気出すんだよ、ぶっ殺してやる!!ってなるよ。
プリシア様がスピーシィ追放して自分が成り代わった理由も、説明されると仰るとおりでございます、大変申し訳ありませんでした、ってなりますよね。いや、読者のこっちが謝るのは全然見当外れだろうけれど、これこの国の中にプリシア様に謝らんといけん人、山程おるだろうこれ。まあ、プリシア様がそういう連中のケツ蹴っ飛ばしてまわったことは容易に想像できてしまうのですけれど。
うん、スピーシィは追放しないとダメでしたよね、これは。これは王妃にしちゃあかんだろう案件だ。むしろ何がどうして、この女が王太子の婚約者だったんだ? まじで誰か止めろよ、どうにかしろよ。
誰もやんないから、仕方なくプリシアが自分でやるはめになったんじゃないか。おまえこれ、十代半ばの少女が覚悟するには背負おうとする責任重すぎるだろ。
まあ、それをこの人は20年以上に渡って凄まじいパフォーマンスとバイタリティで背負いきってきたわけですが。
しかし、こういう後ろでコソコソと人を操り誘導して謀を巡らし、人を陥れて追い落とすという謀略系の嗜みに長けた女性が、本来はむしろバリバリの武闘派。ゴリゴリの力こそパワー系ってのは珍しいを通り越してません!? 普通この手のタイプって、ちまちました小細工なんざやってられるかー、と真正面からぶった切っていくタイプでしょ!? 見たことないんですけど!?
これで夫の国王に代わって国政もほぼ彼女が担ってたし、なんなら経済方面でもスピーシィとがっぷりよつに組んで商人界隈では伝説になるようなバトル繰り広げてたんでしょ? プリシア様、全方位に能力値がフルカンストしてません、これ!? この人さえいればいいだろ、てなもんである。
魔術にしか興味なく、世の中に興味なく、他人に対しても極々少数の友人を除いで興味なく、世界に対して白けた感心しか持たなかったスピーシィが、なにこいつすげーーー!! と、目をキラキラさせて厄介ファンになってしまうほどのカリスマ性。
いやあ……厄介にも程があるファン。ありとあらゆる趣向で嫌がらせして、相手が反応するとキャッキャと喜ぶ、という通報を通り越して訴訟レベルの厄介ファンじゃねえか、これ。
ネット上なら無視するのが最適解なんだろうけれど、スピーシィの場合は無視するとあらゆる方面にとんでもない被害損害が出てしまうので、片っ端から相手しないといけなくなってしまったプリシアさま、不憫でしかないんですけど、これ。ただでさえ、何もしない王様の代わりに忙しい王妃なのに、さらに厄介ファンの相手までしないといけないという……これ、プリシア様よく闇落ちしなかったな。
なにかしらこう、スピーシィとの暗闘がむしろストレス発散になってたんだろうか。
でも、アラフォーで学生時代のミニスカ制服を着せられ脱げなくなる呪いをかけられた挙げ句に、国の存亡をかけた悪魔との決戦に挑まなくてはならなくなった十代後半の息子を持つ女性のストレス値は、脳の血管の無事を心配しないといけないほどにヤバいと思うんですけれど!?
嫌がらせにもほどがあるよ、魔女様!! そっち方向にだけ怠惰どころか勤勉すぎるくらい勤勉なんですけど、魔女様!! とりあえず、彼女がプリシアのこと好きすぎというのは嫌と言うほど伝わってくるので、好きの発露がそっちに爆発してしまうのはやっぱり人間歪んでるよなあ、としみじみ頷いてしまうのでありました。

いやあ、でも面白かった。底抜けの面白さでした。これ続いてしまっていいんですか? と、言いたくなるんですけれど、続いてるよなあ。スピーシィの新たな被害者がクロに集中するのか、またぞろさらにプリシアさまに襲い来るのか。なんか、息子さんからも悪意のない嫌がらせがちょくちょく飛んでくる羽目になってるみたいで、王妃様おいたわしいw