徒然雑記 : 剣聖悪役令嬢、異世界から追放される勇者や聖女より皆様のほうが、わたくしの強さをわかっていますわね!　★★★☆

【剣聖悪役令嬢、異世界から追放される勇者や聖女より皆様のほうが、わたくしの強さをわかっていますわね!】　しけもく／ゲソきんぐカドカワBOOKS

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

【衝撃】異世界人設定の美人お嬢様、無双すぎるんだがwww

「ここは……どこですの?」
性悪聖女の陰謀によって、剣と魔法の世界から追放された剣聖悪役令嬢・アーデルハイト。だが、追放先は科学技術が発達しながらも、ダンジョンに魔物が出現する現代日本だった。
「魔物の倒し方、教えて差し上げますわ!」
ダンジョン配信を始めたアーデルハイトは、【ゴブリンでサッカー】【ゴーレムを木の棒で一刀両断】【巨大蟹魔物のミサイル投擲】などやりたい放題に無双して!?

視聴者が見守る中、最強お嬢様の最速成り上がり、開幕!

お嬢様によるダンジョン無双配信、というとガガガ文庫から出ているあのシリーズが有名であり、メチャクチャ面白いんですけれど、同じお嬢様でもこちらのお嬢はまただいぶ毛色が違ってるんですね。
いや、あっちのがそもそも毛色が違いすぎているんですが、偽お嬢ですし。
こちらのアーデルハイトは本物の貴族令嬢。それも異世界産公爵令嬢と来た。とはいえ、普通の貴族令嬢と並外れているのは、彼女が剣聖の称号を持つ勇者パーティーの一員だったという所だろう。異世界からの転移者の中でも上澄み中の上澄みと言える戦闘ユニットである。
そもそも、気品と高貴を身にまとった優雅な容姿に立ち居振る舞い。ですわ口調でどこかお高くとまった言動は、それこそドレスで着飾って夜会の主役になっているのがお似合いの風情に見せるのだけれど、アーデルハイトはむしろ社交界には興味なく、貴族同士の関わりなんぞには背を向けて、ひたすら剣の道を極めることを希求する純粋剣士だったのであります。
とはいえ、公爵令嬢としての教育もちゃんと受けていて、社交界からは距離をおいていたものの、社交スキルそのものは身につけてるんですよねえ。
そういう社交スキルを含めた、いわゆる教養を高いレベルで身につけている女性でもあるのです。
その教養の高さとストイックなまでの努力家、勉強家な面こそが、この見知らぬ異世界で生きていく上で彼女の大きな武器になった事は否定できないでしょう。もしかしたら、その剣技武力よりも重要だったかもしれません。彼女がダンジョンの中で配信者としてその持ち得る力を存分に振るうだけの環境と知識と人脈を手に入れたのは、まさにその教養と勉強家なところが大事だったのですから。

アーデルハイトことアデ公、最初の印象だと異世界から迷い込んだ少女が、右も左もわからぬまま己の持つ異世界産の理外の力を無自覚にふるいまくって、そのハチャメチャさがウケてバズる、という本人の意図しないところで注目が集まってくる系かと思ってたのですが。
どうしてどうして、この子めちゃくちゃダンジョン配信というものを勉強して理解しているよ。もちろん、そうした知識を得るためには協力者が必要で、彼女には先行してこの世界に迷い込んで生活基盤を築いていた元専属従者だったメイドさんと、彼女の友人で配信者やってた経験があってそっち系の知識、要領、ノウハウを持っている現地民がスタッフとしてつくことになったのだけれど。
この構図って先だってアニメ化もした某魔王様の初期キャラ配置と構想が良く似てるんですよね。それだけ効果的な配置、ということなんでしょう。
こちら側の世界について何も知らないお嬢様に対して、異世界の世界観からお嬢様の身の上や人となりを十分知る側近でありつつ、先に地球側で生活をし自力で生活できるまでに自立している、いわば両方の世界について良く知り、主人公個人とも深い付き合いがあって、ホストとして主人公を迎え入れてくれる役割のキャラクター。そして、新しいことを始める際に、その先導役案内役となって導入までを手伝ってくれて、さらにスタッフとして新しい世界の友人として主人公を支えてくれる現地人。
そして、元の世界での自分の立場や身分を一旦置いて、新しい世界で一から始めないといけないという現状認識を持てる教養の高さ、未知の世界のことについて貪欲に知識を習得できる努力家な側面、それを一心不乱に実行できるストイックさ。身につけた知識を即座に実践できるリテラシーの高さ。
ダンジョン配信という分野においても、彼女は配信を開始するまでに研究勉強に余念がなく、この道で食っていくための配信者としてやるべきこと。動画をバズらせていく方法についても、協力者である汀とも綿密に作戦を練り、構想を立てた上で動画配信に挑んでるんですよね。
おかげで、撮れ高の鬼、と化してしまっていますが。撮れ高を求めてさまよう餓鬼と化していますが。

ただ、どれだけ勉強家で売れるためのノウハウを詰め込んだ、と言ってもこちらの世界に来てまだ数ヶ月。異世界側の価値観や常識との隔たりはどうしても存在するわけで。
計算しての行動もあるんでしょうけれど、異世界の剣聖の感覚で当たり前にやってしまうことが、この世界の戦闘レベルではまさに人外魔境の出来事で、そういう台本を感じさせない無邪気なギャップが余計に彼女をバズらせる要因になっていくんですね。そういうところも加味して、汀さんは指示を飛ばしているあたり、プロデューサーとしてもディレクターとしてもこの人、辣腕だよなあ。

地球側でのダンジョン探索者では到底真似できない、異世界の剣聖が織りなすハチャメチャな覇業は、さながらRPGで最初に訪れるダンジョンに、ラストダンジョン突入直前のキャラが飛び込んでしまうようなものですよ。そこに綿密な計算と天然の花が折り重なって描き出されるアデ公という他の追随を許さない唯一無二のスターの輝き。
まだ衝撃デビューという段階でまだまだ知名度は広がりはじめた段階ですけれど、ここからどんな形でお嬢剣聖の配信がバズっていくのか、楽しみの限りです。