徒然雑記 : 英雄と賢者の転生婚６ ~かつての好敵手と婚約して最強夫婦になりました~　★★★☆

【英雄と賢者の転生婚６ ~かつての好敵手と婚約して最強夫婦になりました~】　藤木わしろ／へいろー HJ文庫

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世界を救う鍵は――賢者レイドの遺稿に有り!?

少数精鋭で挑んだ第一世界遠征を無事に成功させ、前世の因縁に対しても決着をつけることが出来た英雄レイド。
しかし第一世界滅亡の危機を回避できたわけではない。
第一世界を完璧に救うため、レイド達は【賢者の遺稿】の解読を進めつつ大規模戦に向けた戦力増強へと動き出す。が、その準備にはレイドとエルリアが別々の世界で活動する必要があって!?
「――早く帰って、嫁さんに元気な姿を見せてやらないとな」
離れ離れでも心はひとつな夫婦無双ファンタジー、第6弾！

ファレグくん、最初は小物のかませ役でそのままフェイドアウトしてしまう予定のキャラだったのか。
それが、レイドに弟子入りして叩かれ鍛えられて、レイドからも信頼されて色々と任されるような人物へと成長したんだから、立派なものである。
何より、小物臭がさっぱりと抜けてないあたりが実に素晴らしい。ってか千年後にあたる第一世界の「英雄」だったアメリアのご先祖にあたるわけね。第一世界の歴史でも、汚名を被りながらも希望を遺した人物として記録されているみたいだし、ほんと立派になったよなあ。
直接会うことになったアメリアが、伝え聞くご先祖さまと違ってスペシャルに小物っぽくて、泣きそうになってましたがｗ
いやでも、レイドがあれだけ信任してるってほんと凄いんだぞ。
そんなファレグよりも遥かに小物にしてかませにして増長と傲慢と居丈高を拗らせまくってる第一世界の元皇太子ヴァルトスの方も、ノルンに電気ショック調教を受けながら弄られ役というかイビられ役というか、相変わらず調子に乗っているノルンにやりたい放題される可哀想なキャラなんだけれど、性格がろくでなしすぎて全然可哀想じゃなくてもっとやれっ、というキャラが面白すぎて、この作品小物界のパラダイスだよなあ。……ノルンもあれ小物系というか三下系のキャラの側面も強いしｗ

なんやかんや、今回は平和というか深刻シリアスな展開もなく（いや、現在進行系で世界の危機ではあるんだけれど）、第一世界の面々がレイドに引率されて第二世界に訪問、ということもあって、全体的に穏やかな日常回、という風情でした。
……いや、第一世界相変わらず「厄災」が押し寄せてて人類滅亡一直線の状況なんですけどね？
ただ、前回で黒幕というか裏で悪意のもとに戦争の手綱を握っていた悪役を排除出来たので、もう悪意や欲望をもって世界を壟断しようとしたり、人類を滅亡に追いやろうと意図的に動いているような存在がいなくなったので、平和っちゃ平和なんですよ。
やるべきはもう「厄災」という世界滅ぼす自然災害をなんとかして、楽園を除いて人がまともに住めなくなっている第一世界の環境を改善する、という目的に一直線に進めばよくなったわけですから。
第二世界の故郷であるヴェガルタ王国は概ねレイドとエルリアの夫婦の味方であり後援となってますし、今までの大きな事件の解決を通じて、他の大国も王族や首脳部と仲良くなっているので、味方はたくさんいますし、第二世界も帝国を解体したことであちらの「英雄」たちも今度は一緒に戦う仲間になりましたからね。
もうオールスターキャストで一致団結して目的に立ち向かう、という形になる……いや、そういう風に情勢を整えるためにレイドやエルリアが別れて行動する、というのが今回の話だったわけだ。
本人たちの意思による別れ別れなので、いやいや引き離されるわけではなく、もう完全に出張で出かける旦那様を送り出す奥様、的なイチャイチャが見られますｗ
他にも、ノルン関係の恋愛問題はノルン自身が第一世界で誰と結婚したのかに気づいて大混乱に陥っているのをエルリアたちがそばでニヤニヤして見守っている、のを皮切りに、あっちこっちでカップルめいたものが垣間見えるんですよねえ。アルマ先生とレイドの兄ちゃんとのあの私生活完全ダメ先生と、そのお世話係になってるお兄さん、というあれはなんかそのままスライドして夫婦になってしまいそうなんだが、どうなんだろうｗ

とまあ、厄災の討伐なんかもあるけれど、概ね穏やかな日常回だったせいか、それぞれのキャラクターにもスポットがあたり、切羽詰まった状況では見れないサブキャラたちの油断した表情、完全に緩んでる姿や、緊張感を必要としないわちゃわちゃした人間関係があっちこっちでじっくり描かれていて、改めて親しみが湧いてくるのでありました。
アリエルなんかも、食いしん坊キャラだったり小動物系だったりという人類が滅ぼうとしている世界の英雄として、苦しみながら戦っていた頃では絶対に見られなかった顔がこれでもか、と見ることが出来て今までと違う魅力がキャラクターから滲み出るようになりましたからねえ。
レイドとエルリアの、あの余裕の恩恵をうけて、ゆるいくらいの気分で振る舞っている方が、この作品では面白おかしくキャラに魅力が出るんじゃないでしょうか。ノルンだけは、レイドたち無関係に単騎独行で緩みまくってますがｗ

さても、レイドとエルリアの関係は、転生前の敵国のライバル同士だったその頃以前から複雑に絡み合った因縁、というか縁があったことが、第一世界で魔王となって世界を滅ぼしたエルリアや、それ以前に賢者として遺稿を遺していた「レイド」という存在も相まって、前巻までにわかってきてはいたんだけれど。
……これって、長い長い時を経て、一人の男が出会ったこともない少女を救わんとした物語だった、という枠組みが今回の話を通じて見えてきた感じですねえ。運命によって結ばれた関係、というよりも、自分たちで運命をゼロから創り上げた物語、というべきか。
次回で、その総決算。誰もがハッピーエンドにたどり着くための、大団円を掴むための総力戦が期待できそう。楽しみ楽しみ。