【貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士 ５】 道造／めろん22 オーバーラップ文庫
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騎士見習いマルティナ、目覚めの時――
現代日本から男女の貞操観念が真逆の異世界へ転生し、その世界では珍しい男騎士となった辺境領主ファウスト。
そんな彼に騎士見習いとして仕える少女マルティナは、ファウストの治めるポリドロ領を訪れていた。
アスターテ公爵からポリドロ領について探るよう言われていたが、自らの興味から調査を進めていくマルティナ。
しかしファウストや領民と過ごす日々の中、彼女は次第に亡き母――王国を裏切った罪人でありファウストによって討たれた母カロリーヌについて思いを馳せるようになり……？
貞操が逆転した世界で“誉れ”を貫く男騎士の英雄戦記、少女が愛に気付く第五幕!!
本作って貞操が逆転……この貞操逆転って今更ながら造語ですよね。この単語でだいたい世界観が通じるようになってきてるんだけれど、具体的には男女の社会的立場が逆転している世界、とするべきか。
本作においては性的な嗜好？ 嗜好というか傾向？ 雄々しいとか女々しいみたいな男性とはこうあるべき、女性とはこうあるべき、という今となっては旧世紀以前の価値観となりつつあるようなそうでもなく根付いたものは早々簡単には変わらないというべきか。まあいずれにしても、男らしい、女らしいという言葉で思い浮かぶイメージに基づく感性が、男女入れ替わっている世界、と大まかに定義できるでしょう。
この世界では、女が父親に役割を果たし、男が母親の役割を果たしている……のかというと、案外疑問が生じる。
確かに、女が家長となって家を継ぎ従えているのだけれど、なんていうんだろうね。本作において、女たちは父親にはなってない気がするんですよ。女たちはあくまで女であり、彼女らが産んだ子供たちに対してもあくまで母親のように思える。
ファウストに対する母マリアンヌ然り、カタリナ女王とレッケンベル卿の関係然り。そして愚かなるカロリーナとその娘にして天才たるマルティナ然り。
母と子の物語。この作品って、その傾向が非常に強いように思うんです。
いかにこの無情なる世界で、母は我が子を愛し子は母を慕ったか。男女の立場が入れ替わっている世界だからこそ、この世界の母親たちは雁字搦めの身分に縛られた、価値観に強いられた立場に追われて、ただ純粋に我が子を愛することが出来ない。彼女らは母であるだけでなく、あまりにも騎士の社会に囚われた一員であったのだから。領主として、騎士として、彼女らは子らに自らを縛る鎖を引き継がせなければならない。重荷を、背負わせなければならない。
これが父と息子の関係であったなら、もう少し割り切ったと言ったら変だけれど後継に何かを背負わすことにこれほど切羽詰まったものを抱かないと思うんですよね。
しかし、母親としての愛情はそんな風に割り切れない、母性の根源にある「護る」という概念が子供に残す責務、重荷を少しでも自分の手で軽減しようと、マシにしようと、抗ってしまう。
愛情を注ぐ以外のなにかを与えんと、必死に、不器用に形骸を整えようとしていたように思う。
その不器用さゆえに、子供には母が何を思ってそんな行動を取っていたかわからない。そこに愛情があったのかすらも、一見して理解できない。
面白いことに、本作って騎士の物語であり戦いの、戦場の物語である以上に、今は亡き人の想いを、その人が何を考えどんな思いでその軌跡を残していったのかを。
どのように「愛していた」のかを、解き明かしていく真相究明の物語であるようにも見えるんですよね。
２巻でヴィレンドルフの女王カタリナに、ファウストが気狂いと言われた母がいかに自分を愛して自分をこのような男騎士として育てたのか。その真実を探り当てる過程を通じて、カタリナとレッケンベル卿の間に存在した母子の愛情を探り当てていったように。
４巻でリーゼロッテ女王の王配であるロベルトの殺人事件の真相を究明していくことで、女王の恋を蘇らせたように。
そしてこの５巻で、幼いマルティナにもまた、その身に知らず課せられていた業を、悲劇を、残酷な現実を突きつけることを通じて、彼女がどれほどの愛情を受けていたのかを、幼い少女自身に解き明かさせていく。
これまでは、ファウストが大いに語り、演説し、ある種容赦なく真実を解体していったものだけれど、今回の相手はまだ９歳の幼子。いくら天才だと言っても、知能は既に並の大人を上回っている超人であるマルティナと言えど、情緒が育ちきっていない護るべき子供であることには変わりない。
ファウスト、幼い娘に過酷な現実を突きつけることを良しとせず、マルティナを真実から遠ざけようとしていた。せめて、これを受け止めることが出来る歳になるまでは、と。
ここらへんの、ファウストの庇護の意識って父親のそれだと思うんですよね。父性に基づく愛情なんだと思うんですよね。
しかし、賢いマルティナは早晩この真実に気づいてしまうだろう。とケルン派の神父……この世界では神母というのか。神母は幼いマルティナに気づきのきっかけを与え、マルティナに自らを問う時間を与えてしまう。
なぜ、愚かなる母カロリーナは反逆を企てたのか。マルティナの知る母は、自分の置かれたスペアという立場を、スペアという立場以上に虐げられ蔑ろにされ誇りを踏みにじられた立場を恨み憎みこそしていたものの、そこに諦観と絶望に縛り付けられてそこから這い上がろう、覆そうという野心や覇気を持っているような人物ではなかった。
そんな小心は母が、あんなだいそれた反逆を企てた。それに、母の数少ない親友でありマルティナの師であった賢明なる神母や、自分に優しくしてくれた領民たちがなぜ従ったのか。
記憶にある姿と、反逆を行ったという行為とがどうしても結びつかない。納得がいかない。それがずっとマルティナの中で引っかかっていて、ファウストの助命嘆願によって救われ彼の従士となり、母の反逆を愚かと断罪しながらも、ずっと考え続けていた。どうしてか、その疑問を放置し続けることが出来なかった。
賢い賢い、それこそこの国、この世界においても有数の知性を有するだろう知能超人のマルティナである。きっと、最初から真相には無意識にたどり着いていたのだ。しかし、まだ９歳の幼子である。その真相を直視するにはまだあまりにも小さかった。しかし、その気付きを無視して埋没させなかったことにしてしまうには、彼女はあまりにも理性的すぎた。
なにより、彼女もまた母カロリーナを愛していた。それが、真実に無意識に気づくまいとしながらも、ずっと引っかかりとなって彼女を苛んでいたのだろう。
ケルン派の神母に指摘されて、マルティナが自分の中に既にあるだろう答えに、真実を直視するまでの自問自答の歩み。あの繰り返し繰り返し、何度も同じフレーズを、問いかけを自分にかしながら、既に気づいてしまっている真相をはっきりと形に、言葉にしていくことに怯え、慄き、ただ歩いているだけなのにボロボロになっていく様子は、筆舌に尽くしがたい。
この子は、まだ９歳の子供に過ぎないのに。彼女は、自分こそがすべての発端であったと、もうわかっている。
そんな彼女が求めたのは、神の許しではなく、ファウストの姿でした。あの大きな分厚い腕であり、胸板であり、背中でありました。
縋るようにファウストの姿を求めてふらふらと歩き、たどり着いたマルティナを、あの男騎士は苦痛をこらえるような顔をして、マルティナが今抱いている世界の痛みをすべて受け止めてくれるような顔をして、彼女を迎え入れてくれたのです。
マルティナは母から、周囲からこの上なく愛されていました。愛されていたがゆえの、悲劇でありました。その悲劇を終えてなお、彼女はこの追放者たちの最後の行き場だったと告白されたポリドロ領にて受け入れられ、ファウスト卿の愛情によって護られていたのです。
幼子は、愛をただ享受するべき庇護される存在です。特に、この無情なる世界でファウストはそうあるべきだという信念を持っています。
でも、マルティナは幼くして愛された代償がどれほどのものだったかをわかってしまう、哀しくも賢い子でした。愛される重みをちゃんと理解して知っている子で、母カロリーナの不器用な愛情をずっと蔑ろにしてしまった、どこが賢いんだと自らも愚かだと悔やむような子でありました。そんな子が、今ファウストから与えられている愛情を知り、体感し、実感したらどうなるのか……。
……この世界、なんでかファウストはモテモテで彼の慈愛を欲するケダモノめいた女たちは無数に存在するのだけれど、彼女らの愛ってなんかこう、むしゃぶりついてくる愛なんですよね。欲する愛欲なのである。
それに対して、マルティナのそれは与えられたもの以上を与えてあげたい、この人のために尽くしたい、すべてをなげうちたい、という与える愛なんですよ。まだ齢９歳なんだけれど、マルティナの初恋は他の女たちと違って、ファウスト自身を幸せにしてくれそうな想いなんだよなあ。
強いていうなら、婚約者のヴァリエールはこの人なんでか周囲の人間から奪うよりも、ひたすら与えることに終始してしまうタイプの人なので、ファウストに対しても健全に与え与えられの関係になりそうなんですけどね。
でも、ファウストというこの世界においては異端の価値観を持つ男性についての理解度に関しては、自分で自負している通り、これマルティナが圧倒的に見えるなあ。ファウストとはどのような人物なのか、どのような人となりなのか。その頭の中でどのような考えたかをひねっているのか。マルティナのファウストへの解像度、理解度の高さ半端ないんですよね。
これは、マルティナはこの人のことが一番わかっているのは私。なんならファウスト自身よりもわかってる、という自負は間違いではないかと。
ともあれ、今回はマルティナという少女と、彼女を取り巻いていた環境をひたすら掘り下げていき、子供をいかに愛するのか、という形をこれでもかと、哲学する回だったようにも思います。
幕間と言えば幕間なのか。マルティナが、この後この騎士世界を揺るがす軍事革命を起こしそうな著書をファウストと一緒に作り上げる発端になる話でもあったのですが。
あと、ケルン派がもう教義から頭おかしい、けど人間的にはひどく優しいという、狂信的なんだけれど宗教的には素晴らしく寛容という、今まで見たことのない宗教宗派なのを知らしめる回でもあったように思います。こんな健全でヤベえ宗教見たこと無いよｗ
巻末のおまけであるIF編は、とある戦場でファウストの母マリアンヌと、マルティナの母カロリーナが偶々意気投合して、子ども同士を婚約者にしようと約束した世界線のお話。
えええ、この世界線だとさらにファウストの武力が向上して、レッケンベル卿との一騎打ちで卿を殺さず捕縛するルートが開拓されてしまうのか。
もう全部レッケンベル卿に任せちゃえばいいじゃないか、ルートである。
マジであとあと見ても、この人が死んだ影響半端ないからなあ。
このルート、今まででも一番ファウストが穏やかに平和に幸せになってる世界線なんじゃないだろうか。ちんちくりんのヴァリエールに不満しか言ってないファウストが、ちっちゃいマルティナには何の不平不満も持たずに仲睦まじくしている様子には、微笑ましさしか感じませんよ、ヴァリエールさま！！
本作においては性的な嗜好？ 嗜好というか傾向？ 雄々しいとか女々しいみたいな男性とはこうあるべき、女性とはこうあるべき、という今となっては旧世紀以前の価値観となりつつあるようなそうでもなく根付いたものは早々簡単には変わらないというべきか。まあいずれにしても、男らしい、女らしいという言葉で思い浮かぶイメージに基づく感性が、男女入れ替わっている世界、と大まかに定義できるでしょう。
この世界では、女が父親に役割を果たし、男が母親の役割を果たしている……のかというと、案外疑問が生じる。
確かに、女が家長となって家を継ぎ従えているのだけれど、なんていうんだろうね。本作において、女たちは父親にはなってない気がするんですよ。女たちはあくまで女であり、彼女らが産んだ子供たちに対してもあくまで母親のように思える。
ファウストに対する母マリアンヌ然り、カタリナ女王とレッケンベル卿の関係然り。そして愚かなるカロリーナとその娘にして天才たるマルティナ然り。
母と子の物語。この作品って、その傾向が非常に強いように思うんです。
いかにこの無情なる世界で、母は我が子を愛し子は母を慕ったか。男女の立場が入れ替わっている世界だからこそ、この世界の母親たちは雁字搦めの身分に縛られた、価値観に強いられた立場に追われて、ただ純粋に我が子を愛することが出来ない。彼女らは母であるだけでなく、あまりにも騎士の社会に囚われた一員であったのだから。領主として、騎士として、彼女らは子らに自らを縛る鎖を引き継がせなければならない。重荷を、背負わせなければならない。
これが父と息子の関係であったなら、もう少し割り切ったと言ったら変だけれど後継に何かを背負わすことにこれほど切羽詰まったものを抱かないと思うんですよね。
しかし、母親としての愛情はそんな風に割り切れない、母性の根源にある「護る」という概念が子供に残す責務、重荷を少しでも自分の手で軽減しようと、マシにしようと、抗ってしまう。
愛情を注ぐ以外のなにかを与えんと、必死に、不器用に形骸を整えようとしていたように思う。
その不器用さゆえに、子供には母が何を思ってそんな行動を取っていたかわからない。そこに愛情があったのかすらも、一見して理解できない。
面白いことに、本作って騎士の物語であり戦いの、戦場の物語である以上に、今は亡き人の想いを、その人が何を考えどんな思いでその軌跡を残していったのかを。
どのように「愛していた」のかを、解き明かしていく真相究明の物語であるようにも見えるんですよね。
２巻でヴィレンドルフの女王カタリナに、ファウストが気狂いと言われた母がいかに自分を愛して自分をこのような男騎士として育てたのか。その真実を探り当てる過程を通じて、カタリナとレッケンベル卿の間に存在した母子の愛情を探り当てていったように。
４巻でリーゼロッテ女王の王配であるロベルトの殺人事件の真相を究明していくことで、女王の恋を蘇らせたように。
そしてこの５巻で、幼いマルティナにもまた、その身に知らず課せられていた業を、悲劇を、残酷な現実を突きつけることを通じて、彼女がどれほどの愛情を受けていたのかを、幼い少女自身に解き明かさせていく。
これまでは、ファウストが大いに語り、演説し、ある種容赦なく真実を解体していったものだけれど、今回の相手はまだ９歳の幼子。いくら天才だと言っても、知能は既に並の大人を上回っている超人であるマルティナと言えど、情緒が育ちきっていない護るべき子供であることには変わりない。
ファウスト、幼い娘に過酷な現実を突きつけることを良しとせず、マルティナを真実から遠ざけようとしていた。せめて、これを受け止めることが出来る歳になるまでは、と。
ここらへんの、ファウストの庇護の意識って父親のそれだと思うんですよね。父性に基づく愛情なんだと思うんですよね。
しかし、賢いマルティナは早晩この真実に気づいてしまうだろう。とケルン派の神父……この世界では神母というのか。神母は幼いマルティナに気づきのきっかけを与え、マルティナに自らを問う時間を与えてしまう。
なぜ、愚かなる母カロリーナは反逆を企てたのか。マルティナの知る母は、自分の置かれたスペアという立場を、スペアという立場以上に虐げられ蔑ろにされ誇りを踏みにじられた立場を恨み憎みこそしていたものの、そこに諦観と絶望に縛り付けられてそこから這い上がろう、覆そうという野心や覇気を持っているような人物ではなかった。
そんな小心は母が、あんなだいそれた反逆を企てた。それに、母の数少ない親友でありマルティナの師であった賢明なる神母や、自分に優しくしてくれた領民たちがなぜ従ったのか。
記憶にある姿と、反逆を行ったという行為とがどうしても結びつかない。納得がいかない。それがずっとマルティナの中で引っかかっていて、ファウストの助命嘆願によって救われ彼の従士となり、母の反逆を愚かと断罪しながらも、ずっと考え続けていた。どうしてか、その疑問を放置し続けることが出来なかった。
賢い賢い、それこそこの国、この世界においても有数の知性を有するだろう知能超人のマルティナである。きっと、最初から真相には無意識にたどり着いていたのだ。しかし、まだ９歳の幼子である。その真相を直視するにはまだあまりにも小さかった。しかし、その気付きを無視して埋没させなかったことにしてしまうには、彼女はあまりにも理性的すぎた。
なにより、彼女もまた母カロリーナを愛していた。それが、真実に無意識に気づくまいとしながらも、ずっと引っかかりとなって彼女を苛んでいたのだろう。
ケルン派の神母に指摘されて、マルティナが自分の中に既にあるだろう答えに、真実を直視するまでの自問自答の歩み。あの繰り返し繰り返し、何度も同じフレーズを、問いかけを自分にかしながら、既に気づいてしまっている真相をはっきりと形に、言葉にしていくことに怯え、慄き、ただ歩いているだけなのにボロボロになっていく様子は、筆舌に尽くしがたい。
この子は、まだ９歳の子供に過ぎないのに。彼女は、自分こそがすべての発端であったと、もうわかっている。
そんな彼女が求めたのは、神の許しではなく、ファウストの姿でした。あの大きな分厚い腕であり、胸板であり、背中でありました。
縋るようにファウストの姿を求めてふらふらと歩き、たどり着いたマルティナを、あの男騎士は苦痛をこらえるような顔をして、マルティナが今抱いている世界の痛みをすべて受け止めてくれるような顔をして、彼女を迎え入れてくれたのです。
マルティナは母から、周囲からこの上なく愛されていました。愛されていたがゆえの、悲劇でありました。その悲劇を終えてなお、彼女はこの追放者たちの最後の行き場だったと告白されたポリドロ領にて受け入れられ、ファウスト卿の愛情によって護られていたのです。
幼子は、愛をただ享受するべき庇護される存在です。特に、この無情なる世界でファウストはそうあるべきだという信念を持っています。
でも、マルティナは幼くして愛された代償がどれほどのものだったかをわかってしまう、哀しくも賢い子でした。愛される重みをちゃんと理解して知っている子で、母カロリーナの不器用な愛情をずっと蔑ろにしてしまった、どこが賢いんだと自らも愚かだと悔やむような子でありました。そんな子が、今ファウストから与えられている愛情を知り、体感し、実感したらどうなるのか……。
……この世界、なんでかファウストはモテモテで彼の慈愛を欲するケダモノめいた女たちは無数に存在するのだけれど、彼女らの愛ってなんかこう、むしゃぶりついてくる愛なんですよね。欲する愛欲なのである。
それに対して、マルティナのそれは与えられたもの以上を与えてあげたい、この人のために尽くしたい、すべてをなげうちたい、という与える愛なんですよ。まだ齢９歳なんだけれど、マルティナの初恋は他の女たちと違って、ファウスト自身を幸せにしてくれそうな想いなんだよなあ。
強いていうなら、婚約者のヴァリエールはこの人なんでか周囲の人間から奪うよりも、ひたすら与えることに終始してしまうタイプの人なので、ファウストに対しても健全に与え与えられの関係になりそうなんですけどね。
でも、ファウストというこの世界においては異端の価値観を持つ男性についての理解度に関しては、自分で自負している通り、これマルティナが圧倒的に見えるなあ。ファウストとはどのような人物なのか、どのような人となりなのか。その頭の中でどのような考えたかをひねっているのか。マルティナのファウストへの解像度、理解度の高さ半端ないんですよね。
これは、マルティナはこの人のことが一番わかっているのは私。なんならファウスト自身よりもわかってる、という自負は間違いではないかと。
ともあれ、今回はマルティナという少女と、彼女を取り巻いていた環境をひたすら掘り下げていき、子供をいかに愛するのか、という形をこれでもかと、哲学する回だったようにも思います。
幕間と言えば幕間なのか。マルティナが、この後この騎士世界を揺るがす軍事革命を起こしそうな著書をファウストと一緒に作り上げる発端になる話でもあったのですが。
あと、ケルン派がもう教義から頭おかしい、けど人間的にはひどく優しいという、狂信的なんだけれど宗教的には素晴らしく寛容という、今まで見たことのない宗教宗派なのを知らしめる回でもあったように思います。こんな健全でヤベえ宗教見たこと無いよｗ
巻末のおまけであるIF編は、とある戦場でファウストの母マリアンヌと、マルティナの母カロリーナが偶々意気投合して、子ども同士を婚約者にしようと約束した世界線のお話。
えええ、この世界線だとさらにファウストの武力が向上して、レッケンベル卿との一騎打ちで卿を殺さず捕縛するルートが開拓されてしまうのか。
もう全部レッケンベル卿に任せちゃえばいいじゃないか、ルートである。
マジであとあと見ても、この人が死んだ影響半端ないからなあ。
このルート、今まででも一番ファウストが穏やかに平和に幸せになってる世界線なんじゃないだろうか。ちんちくりんのヴァリエールに不満しか言ってないファウストが、ちっちゃいマルティナには何の不平不満も持たずに仲睦まじくしている様子には、微笑ましさしか感じませんよ、ヴァリエールさま！！
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
