【変人のサラダボウル ８】 平坂読／カントク ガガガ文庫
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東京も名古屋も全部岐阜!
ブレンダとの一件で自分の生き方を反省したリヴィアは、己を見つめ直すべく愛馬嵐丸に乗って放浪の旅に出るも、当然のようにトラブルが降りかかる。
一方、サラは東京の芸能事務所で着々と自分のポジションを確立し、経営にまで影響を及ぼすようになっていた。
そんなとき、岐阜では局所的豪雨により鏑矢探偵事務所のあるビルが床上浸水。オーナーである『らいてう』のマスターはビルの改築を決定し、惣助と通い妻JKの友奈は新たな事務所を探すことに。
岐阜を舞台にした群像喜劇、第8弾!東京も名古屋も全部岐阜だ!
表紙絵の白装束の女、あまりに性欲モンスターすぎて、マジで出家したほうがいいよｗ
リヴィアさん、ほんと男じゃなくて良かったですね、としか言いようがない。ただ、これまで女性問題でトラブルを起こしていなかったという事からも、相手の意思を無視して事に及んだような真似はしてこなかったのだろう。ブレンダに拒否られてあれだけショック受けて自戒のあまり出家する、と飛び出してきたくらいですから、ある意味潔癖ですらあるのだろう。
にも関わらず、旅先で軒を借りることになった旅館の母娘相手にギトギトの性欲たぎらせているあたり、なかなかどうしようもない。この女、旅から旅であっちこっちに現地妻作ってまわるんじゃなかろうなあ。
それはそれとして、馬で移動という無法……いや、馬は軽車両扱いなので順法なのか？ それはそれとして、ちゃんと飼葉の問題やボロ……馬も生き物なので糞をします、の問題について言及しているのは偉いなあ、と思うんだけれど、馬って普通に移動中でも糞しますからね？ いちいち、止まって待機しているときにするわけじゃないですからね。道路でも平気でするから。おまけにワンコのそれとは比べものにならないくらい、量が多い。量が多い！！ ひたすら馬糞の処理に追われるリヴィアさん、おつおつ。
さても、前巻はサラとリヴィアとは別に、三人目の異世界人がサラたちの命を狙う刺客として送り込まれてきた、って話でしたね。もっとも、本人には任務に対してやる気がなく、こっちの世界を楽しんだ挙げ句に怪盗を志し、名探偵と評判になっている友奈と運命的な出会いを果たす、てな展開でした。
さあ、これから怪盗になったアルバと、名探偵友奈の追いかけっこがはじまるぜ、と思うじゃないですか。いやあ、追いかけっこは始まったものの、まさか追いかけ回すのがアルバの方で、逃げ回るのが友奈の方だとは思わなかった。様々なトリックや思考誘導などを駆使してストーカーまがいのアルバの追跡から逃げ回る友奈に、探偵さながらに地道に友奈の行く先、行動ルートを導き出し、証拠を集め、分析し、ついに友奈を追い詰める、というなんでか逃走追跡の立場が逆転している二人の話がなんだかんだと面白かった。
アルバ、まだ怪盗になる！ と志しただけで、家宅侵入とかはしているものの、盗難とかはまだしてないんですよね。友奈もたまたま殺人未遂事件を解決しただけで、いやこの子ほんとフィクションの名探偵みたいになれるだろ、というスキルや観察力、着眼点の持ち主でめちゃくちゃ頭いいんだけど、そんな名探偵とかやる気ないし、ましてや怪盗とライバル関係になって毎夜追いかけっこ、みたいなことなんか面倒でしたくない。という塩梅のはずなんだが、友奈ってこの子向こうからトラブルが飛び込んできそうなところあるからなあ。サラと親友になっている、という時点で大いにその資質が感じられるわけですし、さらにアルバに目をつけられてしまったわけですしね。
とはいえ、単純に怪盗と探偵のライバル関係になるとは、この様子を見ている限りは思えなくて、むしろこれってバディになる前フリなんじゃないの、と思えてきた。
友奈としては、とにかく惣助の助手として身を固めたいところなんだろうけれど。
これまで、バイトとして事務所に入り浸る立場を得て、いつの間にか通い妻よろしく家事一切を取り仕切り、台所を任され、ふりふりとお尻を振りながら毎日ご飯を作る日々。
ヒロインレースとして見るならば、もう完全に内側に入り込んで圧倒的リードを保っている状態なんですよね。ここまで身内になってから負ける要素はなかなかないよ。
ただ、名探偵として世に知られてしまったことで、惣助の助手という立場から逸脱して友奈の物語の主人公の道へと自立独立しはじめてしまった、とも物語の枠組みとしては考えられるわけで、そういう意味では万全完勝の道からは微妙に外れてしまった感覚はあったわけです。
そこに来て、今更ながら突きつけられる。当事者である惣助の気持ちは？ という問題である。
惣助だって、名探偵じゃないけれど探偵業を長年やってきているベテランにして腕利きの探偵だ。察しが悪いはずがなく、人間観察力は並より外れたものがある。友奈の気持ちに全く気づいていないはずもなく。しかし、そのわりに反応が鈍かったのは……まあ、相手の年齢考えるとねえ。友奈がそれこそ小学生の頃から知っている仲なわけですし。
ただ、これまでの惣助の対応からすると、女性に対して特に反応らしい反応、結婚願望や恋人欲しいみたいな欲を一切見せず、サラの父親に徹していたことから、女性や恋愛に関しては今更特に関心ないのかな。女性の好みとかあんまりなくて、無味無臭なのかな、と思っていたのですが……。
……あれ？ もしかして、ブレンダさんわりと好みなの？
今回の反応見ていると、過去の恋愛遍歴からしても意外とブレンダのキャラクターって惣助の好みに沿ってるんじゃないか、と思しき様子がうかがえるのである。
特に積極的に欲するわけじゃないのは、これまで惣助の側から何らのアプローチもなく、何も求める様子もなかったことからも明らかなんだけれど。あれ？ これ、ブレンダ側からストレートにアプローチされてたら、すんなり受けてた可能性もあるんじゃない？ 今までブレンダがやってた遠回しな好感度稼ぎ、意味なかった？ いや、意味なくはないか。好感度自体はジリジリ上がってたかもしれないですし。でも、変の遠回りしなくても、ちょくで行ったら即OKだった可能性も無きにしもあらず。
そういう意味では、ブレンダはずっと下手こいてて友奈の圧倒的な寄せに太刀打ち出来ていないんだけれど、実際にはものすごく好位につけてるのか！？
閨さんの方は、それ後方ポツンじゃない？ 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、はいいんだけれど、馬に付き合いすぎじゃない？！
そのお馬さんことサラの方はというと……うん、これは大体なんとなく想像できていた。この子、アイドルとして輝くタイプとはやっぱり少し違うわ。お馬さん呼ばわりしちゃったけれど、サラこそが将の中の将。帥の人だわ。アイドルのグループのリーダーにとどまらない、もっと大きな枠組みの大将になる人だわ。ってか、なんで新人アイドル候補生が、芸能事務所の人たち立場身分老若男女関係なく頼られて、主催のイベント仕切ってるの？ 大きなトラブル、サラ主体で乗り切ってるの！？
常識の範疇にとどまらないアイドル候補生、というキャラは色々と見てきたけれど、こういう方向に振り切ってるアイドル候補生はさすがに初めて見たよ！！
そして、まさかなのか当然なのかわからないけれど、サラの進路変更。こ、この少女、ガチで芸能界の天下取りに行く体勢に入ったんじゃね！？
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
