【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す １１(上) ~ヘンダーソン氏の福音を~】 Schuld／ランサネ オーバーラップ文庫
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絶えぬ襲撃（ウェーブ）を喰い破れ！
氏族“剣友会”を率いて厄ネタまみれの護衛任務を乗り切り、マルスハイムに帰還したデータマンチ転生者エーリヒ。
厄介ごとに巻き込んでくれた組合と距離を置いてしばしの休息を満喫した彼らは、真っ当な長期依頼を受けてキナ臭いマルスハイムをしばらく離れることに。
依頼主が治める馴染みの荘で、“剣友会”の面々と冒険者らしい仕事を楽しんだり、見目麗しいお嬢様から好意を向けられたりするエーリヒ。
しかし平和な荘は突如として戦火に晒され、エーリヒ達は絶望的な防衛線を強いられることになり……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、激闘の第11幕スタート！
エーリヒがなりたかった冒険者って、いわゆる少数のパーティーを組んで、様々な依頼を熟し、世界を救うような冒険を繰り広げるようなやつだったはず。その理想形というのが、おそらく宿屋でお世話になってる聖者フィデリオと、彼のパーティーだと思うんだけれど、実際のエーリヒの冒険者活動ってその理想形からはもうだいぶ外れて来ていますよね。
今のエーリヒも冒険者と言えば冒険者の在り方ではあるんだろうけれど、一介の冒険者じゃなくてクランリーダーとして一党を率いるボス猿なんだよなあ。
そして主にやっていることはというと、冒険よりも戦争である。これでもまだ、ヘンダーソンスケール１．０（致命的な脱線により、エンディングに到達不可能になる）にはなってないのかぁー。
前回は辺境の王の末裔と目された姫を装ったホムンクルスを巡る特大の陰謀に巻き込まれて、さすがにもうやってられんわー、と懇意にしている荘での教導依頼にかこつけて陰謀の渦中であるマルスハイムを一旦離れることにしたエーリヒと剣友会であったが、マルスハイムからさほど離れていない治安も悪くないはずのモッテンハイム荘に、何故かどこからか湧いて出た盗賊団の影が垣間見え……、と政争から逃れた先でもさらにトラブルに巻き込まれるエーリヒたち。
これがただの盗賊団だったら良かったものの、またぞろ屍霊術師の暗躍やら魔術師だけじゃないどこぞの正規軍の偽装も見えだして……と、全然陰謀暗闘から逃げられてないじゃないですかーー！！ という案件である。
まあこれねえ、もう西方辺境は中央から導火線に火をつけられて、あとはいつ爆発するか、という段階になってる火薬庫なんでねえ。というのが序章のアグリッピナ師の暗躍でも語られているわけで。
西方地域に居る限り、もう士豪の決起に伴う戦乱からは逃れられないんですよね。なんで、そんな所に本拠を置いてしまったのだエーリヒよ、てなもんである。
ヘタに政争から逃げるために西方辺境の中央部から離れたために、逆に孤立無援の中で荘に立てこもっての防戦に。いやまあ、ナケイシャさんがわざわざベアト寄越して今はマルスハイムから離れてなさい、と忠告するくらいだから、マルスハイムに残ってたとてえげつない政争に巻き込まれてたんだろうけれど。そして、同時多発的にあちこちで火の手が上がっていた以上、どこに居ても戦乱に巻き込まれていたんだろうけれど。
こういうでっかい動乱にもなると、少数パーティーでは出来ることは少なかっただろうし、そういう意味では剣友会という組織を率いていた、というのは最適の結果だったのかもしれないね。少なくとも、エーリヒとマルグリット、ジークとカーヤの四人パーティーで活動していたとしたら、荘を護るなんて出来なかっただろうし。
ってか、剣友会ってケンタウロスのディートリヒが加わったことで、騎兵隊も保有しているのか。騎馬隊持ってる冒険者ってなんだよ、てな話だよなあ。完全に戦闘私兵集団である。これで傭兵団じゃなくて、剣を志すものたちの互助会というのもなんともはや。
前回の護衛任務とはまた状況が異なり、さらに過酷になったともいう防衛拠点とも言えない荘での籠城戦。完全に求められてるのが指揮官としての才覚なのよねえ。剣友会を率いるうえで、そっち系のスキルもエーリヒどんどん取ることになっているし。
Web版と違ってこの段階でミカと合流していたので、どうなるかと思ったらモッテンハイム荘には同行しなかったのか。作中でもエーリヒがミカの不在に悶絶しているけれど、逆に言うとミカが一人いるだけで今回の籠城戦ほぼ安牌になっていた可能性が高いので、そりゃ参加はご遠慮してもらいますってなりますわなあ。
これに関しては、Web版では居ないメンツ。どれほど攻撃力衝撃力が高くても１ユニットに過ぎないディートリヒ（彼女は勿論、同行している）と、一人で城塞瞬時に構築できるミカとの戦略単位のレベルの違いが同行と離脱の命運を分けているのだろう。
と、そう言えば今回の一幕においてのゲストヒロインは、やっぱり人外な蛾系の虫人である荘の長の娘であるフィレネ嬢だったと思うのですけれど、やはり彼女では表紙絵を飾るほどの重きをはなせなかったか。一期一会の逢瀬の相手、くらいの貫目ですもんねえ。表紙絵飾るとなると、やはり一緒に死線を潜るか血風吹きすさぶ闘争を繰り広げる相手でないと。ナケイシャやベアトくらいに。
そういう意味では、もう一組の主人公コンビと言えるくらいまで存在感が増しているジークフリートとカーヤ嬢が表紙絵を飾るのは妥当も妥当といったところなのでしょう。てか、今まで二人が表紙飾らなかったのが不思議なくらい。カラー口絵の方には何度も出てきてましたけれどね。
正直、Web版ではフィレネ嬢の扱い方はなんだかなあ、とあんまり面白くはなかったんですよね。マルギットに背中押されたとはいえ、行きずりの関係みたいに一夜の相手をつとめるとか、いやあそんなぽっと出の女の人の相手、ミカとかセスとか他にも大事にすべき相手がいるだろうに、彼女らを差し置いてなにやってんの、と。
このへん、書籍版ではだいぶ加筆されていると思われます。マルギットがフィレネを推す理由もかなり懇切丁寧にロジックひねり出してましたし、その上でエーリヒがゴネるゴネる。いやそりゃそうだよね、そんなん言われてもエーリヒが気が進まないよね。
まあ状況も相まって仕方なく押し切られることになるのですけれど、Web版よりはだいぶそうなる説得力はましていたと思うので、まあしょうがないかなあと思えるくらいにはなっていたと思われます。
ただこの理屈だと、ナケイシャさんあたりに迫られても断れなくなったんじゃない？
そして、死体の軍勢のみならず、正体を隠した士豪の正規軍と思しき軍勢の急襲まで重ねられて、ついに冒険者を初めて以降ずっと隠し通してきた魔法を解禁。
うはははは、格好良い格好良い格好良いよぉ。
術式「騎士団」。
最初期からずっと愛剣「送り狼」以上に慣れ親しみ相棒みたく使ってきた家事魔法の「見えざる手」。
単なる家事を補佐的な魔法だった見えざる手。これをエーリヒは当初から戦闘補助、というにも見事な発想の妙で、意表を突く外連味のある使い方をしてきたのだけれど、ほんと昔からずっと使ってきたもんだから、馴染みが違うんですよね。親しみすら感じる心の距離感の近い術式だっただけに。
その発展型、進化系の究極として、多重思考、今は多重併存思考か、これを用いて多数の剣をただ飛ばすどころじゃない、見えざる手の一つひとつにエーリヒと同じ技量をもたせた上で、それぞれに武器を持たせて同時運用する、術式「騎士団」。
これもう、見栄えが最高なんですよね。たった一人で多数となる、一対多の概念をぶち崩す戦いっぷり。
自分の周辺に無数の剣を浮かべて、剣の竜巻のようにして振り回す、なんて技を使うキャラクターは今までも結構見たことがあるし、それだけでも十分見栄えするものでしたけれど、エーリヒに関してはここにさらに多重併存思考まで加えて、手の一つ一つが独自の動きをするもんだから、これ絶対絵とか映像にしたらド派手極まるものになりますよー。イメージしただけでも、あまりの格好良さに燃えてしまいます。
これ、エーリヒ当人もこの見栄えに関しては色々と考慮してたんでしょうね。ここぞというときまで温存していたのも、そのここぞという所でこの術式見せたら絶対格好良いからっ！ という少年の魂に殉じてのことだったみたいですし。わかるー、めっちゃわかるー。
そして、敵さんからすると、こんなんどうせーちゅうねん、という話ですよね。いやー……普通に考えてちょっとこの騎士団起動してるエーリヒに勝てるイメージ全然湧かないんですけど。いや、マジでこれどうすんの？
元々、こいつどうやったら死ぬんだ？ というちょっと意味不明な死ににくさ、負けそうにないしぶとさ、強かさを誇っていたエーリヒなんだが、ここからさらに魔法解禁したらマジで手に負えなくなるんですけど！？
これ、無双とか無敵というよく見る主人公のそれとはちょっとベクトル違ってるのが面白いところですよねえ。これが、色々と先々を想定しつつ、あれこれこねくり回しながらビルドを構築していった結果だからこそ、なんでしょうけれど。
でも、この騎士団はそのビルドの一つの結実だよなあ。そういう意味でも、この術式解禁は感慨深いものがあります。ベアトたち一椀党相手に使ったときは、ベアトたち以外見ている相手が居ない中での札の開陳であって、今回の公式公開とはまた意味合いも違ってきますしねえ。
まだまだ、状況は泥沼の西方火薬庫大爆発の起爆段階。モッテンハイム荘の襲撃の裏にいた魔術師も、あちこちで火をつけて回っている幾多いる中の一人、というだけだったので、確かにまだミドル戦闘なんですよねえ……そのミドル戦闘で切り札の熱核融合使っちゃうエーリヒ。魔法解禁だけじゃなくて、本当の切り札中の切り札まで切らなくちゃいけなかった所に、特にエーリヒはそのへん安易に札を切らないタイプなだけに、切羽詰まっていた事がわかります。今回の一件、本当に予期しない遭遇戦で事前の準備とか何も出来なかっただけに、マジで余裕なかったんだよなあ。
さて、今回のIFであるヘンダーソンスケール1.0は、フィレネとの一夜で子供が出来ていたパターンか。
いや、その前にエーリヒたちの生きる今が歴史の向こうになった、はるか未来、現代のお話が出てくるんだけれど……エーリヒ、女体化されておるｗ 挿絵の女体化エーリヒ、ふとももムッチムチなんですけど！！ かなり力入ったイラストで笑ってしまいましたｗ そうだよね、レア度SSRだもんね。
翻って、まだエーリヒも壮健な近未来のIFであるの話に行くのだけれど、フィレネとの間に出来た子供がエーリヒの名望を継ぐ一廉の英雄の道を歩もうとしているような話なんですよねえ。
……いやあ、これまでもこのIF編では色んな相手との間にできたエーリヒの子どもたちが出てきましたけれど、どの子も可能性の向こう側にだけ存在するキャラとするには勿体ないくらいキャラ立ってるよなあ。まあアグリッピナ師との間に出来た子どもたちがやっぱり強キャラすぎるんですけれど。
この幾多の世界線からエーリヒの子供たち集めて、世界征服でもはじめたら面白そうなんですけどね！？ それだけ濃いメンツが揃ってますし。
あと、どんどんとカーヤ嬢の発明品がマッド度上がっていってるのは気の所為でしょうか。この子、薬師じゃなかったでしたっけ？ もう錬金術師かなんかにしか見えないんですけれど。
ジークに持たせたテルミット投げナイフはヤバすぎでしょ。これ、何相手に使わせるつもりだったんだ？ 人間相手には過剰すぎるぞｗ
剣友会の面々にも、エーリヒよりヤバい人という認識が広がりだしてるしｗ
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
