徒然雑記 : 魔法×科学の最強マシンで、姫も異世界も俺が救う!　★★★

【魔法×科学の最強マシンで、姫も異世界も俺が救う!】　語部マサユキ／ソエジー角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

異世界転移した最強ロボが、魔法も使えて圧倒的無双!

人型兵器ラマテラスを操縦するバサラは最終決戦で命を散らせたが、目が覚めると愛機とともに異世界にいた。
生活のため受けたモンスター討伐クエストは、異世界の常識をぶっ壊すラマテラスのビーム兵器で無双解決!
そんな中偶然命を助けた王女ナディラからこの国の危機を知る。王都に迫る魔族の悪意。ナディラによって最上級魔法をも武器にしたラマテラスを駆り、バサラは再び戦うことを決意する。
「もう誰も死なせない、お姫様もこの世界も俺が救ってやる!」
科学の力だけで無双、さらに桁違いな魔法も使えて超最強!
ロボット異世界無双ファンタジー開幕!

あちらは漫画ですが【戦隊レッド異世界で冒険者になる】が先日アニメ化もされて人気を博しましたが、戦隊モノが異世界転生するのなら、ロボットアニメの主人公とロボットがファンタジー世界に転生したっていいじゃない、というコンセプトですね、これは。

というわけで、長い戦いの末に最終決戦で敵の本拠地を破壊するために自爆特攻を仕掛け、宇宙に散ったはずの主人公バサラとその愛機ラマテラス。
しかし目が覚めたとき、自身もラマテラスも多少のダメージはあったものの自爆したにも関わらず無事で、周囲の生態系は記録にないものばかり。
特に異世界転生というジャンルに馴染みもなく知識もないバサラは、科学と異なる魔法という法則やそれに伴う現象に忌避感を感じながらも、この世界で生きていくための活動を開始するのであった、という導入で始まる本作ですが。
……とりあえず、主人公機が自爆特攻して終わるロボットアニメって、これもしかしなくてもバッドエンドなんじゃないの！？
しかも、この主人公のバサラの精神状態が最悪なんですよね。辛うじて親友の男だけは一人残っているみたいなんだけれど、それ以外の仲間は全員死んじゃっているみたいで。しかも田舎で機械整備して暮らしていた彼が戦い始めたのは、故郷を敵の威嚇攻撃の巻き添えで滅ぼされて家族友人縁者全部を喪った復讐から、というネガティブスタート。
さらに戦いの中で親しくなったり友誼を結んだ友人や仲間たちも片っ端から戦いの中で喪って、もう最期には復讐さえ完遂すれば後はもうどうなってもいい。という捨て鉢で未来への希望なんざ何も胸のどこにも残っていなさそうな状態で、主人公が最終回でこのメンタルって救いがどこにもないんですけど！？
おかげで、折角生き残ったにも関わらず、死に損なってしまったという憤りと諦め。見知らぬ異世界という状況にも全くテンション上がらず、見知らぬ魔法や科学とかけ離れた法則や現象にも好奇心を刺激されたり目を輝かせたり、なんてするはずもなく、むしろ既知の物理法則やらから外れた魔法やらには戸惑いや忌避感しかないようで。
それに、元の世界では選民思想の敵と戦い続け、味方でも責任も義務も果たさない偉いやつらに相当に不快な思いをさせられたようで、とにかく偉そうな奴に対しては敵意と反発を抱いてしまう。
トドメに、自爆特攻した際のメンタルは回復しておらず、希死念慮めいたものに囚われていて、特に積極的に死ぬ理由もないから生きていこう、くらいの意気しかないんですよね。そして、仲間を次々と喪ってしまった事から、自分と関わると碌な事がない厄に巻き込んでしまう、と積極的に知人や仲間を作ろうとせず、というかかなり避け気味で。
……いやあ、テンション低いなあ！！

スーパーロボットごと異世界に転生だー、というはっちゃけた設定に対して主人公がダウナーのネガティブ、ローテンションなものだから、ロボットの強さを活かして魔物の大群を超科学兵器によって一掃したり、絶体絶命のピンチのお姫様を助けても、なかなかお話のテンション自体が盛り上がっていかないんですよねえ。
これは正直、ロボット転生という設定に対して勿体ないものがあったと思う。

それでも、最低限正義の味方らしい矜持と、どれほど精神的に荒れ果て疲れ果てていても、救いを求めている人を見捨てられないという善良さでもって、暗雲垂れ込める情勢の中で平和ボケしている王族の中で孤軍奮闘している王女ナディラを助けていくうちに、彼女の王女としての責任感や献身的な振る舞いによって、バサラの中で枯れ果てていたものが蘇ってくる、という構成は王道らしい揺るぎのなさがありましたね。
ただ、今回直接戦うことになった敵役も、単純に悪いやつというわけではなく、それなのに後の行動には同情の余地がなくなってしまっていて、改心や本来あっただろう情を取り戻す、という事もなく単なる外道に落ちてしまったまま、姫様の心に影を落としたまま終わってしまい、痛快で心すくような結末というわけにはいかなかったので、なんともくもり空の晴れないスッキリしない気持ちでした。
物語の構成自体はかっちりと固めてある土台のしっかりした余念のない作品だったんですが、ド派手ではっちゃけたロボット転生なコンセプトに対して、主人公が完全に燃え尽きてて纏う雰囲気がダウナーなもんで、何だかんだと結構積極的に人助けして回っているのに盛り上がっていくための熱量にどうしても欠けるあたりが、どうにも個人的には勿体なかったです。空気感、アゲアゲで行ってたら全然違った感じの作品になってたんじゃないだろうか、これ。