【悪役令嬢は大航海時代をご所望です １】 浦和 篤樹／ nyanya ドラゴンノベルス
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辺境だと笑わせない。領地を救う富を求め、海の向こうの新大陸へ!
前世の記憶が甦り乙女ゲームの悪役令嬢マリー(2歳)に転生したと知った私はすぐ動き出した。なぜなら一族もろとも断罪で処刑されるから! 何とかしようにも領地は西の果て。貧乏だ田舎者だと馬鹿にされ、経済的な嫌がらせまで! でも、私は知っている。果てと言われた領地の更に西、海の向こうには新大陸が広がっていることを! 本編開始まであと十年足らず。大海原進出を目指して『ゼンボルグ公爵領世界の中心計画』発動よ!
この世界、地球と地理が似ているっぽいんだけれど、アフリカ大陸に当たる大陸が赤道近くまで北半分なくて地中海が大海になっている、というのは面白いなあ。
舞台となるゼンボルク公爵領は、イベリア半島にあたる位置。となると、オルレアーナ王国って相当な大国だぞ。
ブリテン諸島やスカンジナビア半島も存在しないみたい。それでも、一番西の端っこにあると言っても、北と南の海上交通路の中継地点として賑わいそうなもの、と思ったら北側の海は冬になると凍ってしまって通行不能になるの？ どんな氷河期だよ。実質、大陸の北側全体がロシアみたいなもんなのか。
これは確かに、ゼンボルク公爵領が辺境僻地、中央から取り残された田舎とされるのもわからなくはない流通事情である。元々ゼンボルクが王国で、何世代か前にオルレアーナ王国によって占領されて産業基盤となる農業地帯や鉱山地帯を丸ごと持っていかれた、となったらなおさらに苦しいだろう。
そんな領地を故国にして、主人公のマリーは産まれたのでした。
ゲームでは悪役令嬢となり、どのルートでも助からないという末路を辿るわけだけれど、問題はマリーがヒロインや王国の王子様たちをはじめとする攻略対象たちと対立してしまうのは、マリーの個人的な性格や事情ではなく、ゼンボルク公爵一派全体の意志。王国への反逆のための謀略の一環なわけですよ。
だから、マリーが個人的に関係者との人間関係を改善したところで、問題は何も解決はしないし対立は発生する。たとえ両親を説得したとしても、もはやこれ公爵家の単独の反逆じゃなくて、王国からの支配や差別に苦しむ旧ゼンボルク王国全体の意志となってしまうので、個人の意志ではとても止められない大きな流れになってしまう。
となると、ゲーム原作がはじまる十数年後までに、ゼンボルク側が追い詰められて決起するような現状そのものを改善しないことには、悪役令嬢ルートは避けられない。
しかし、公爵領……かつては王国であった程の領地を、決起を思いとどまらせるほどに改善するのに、果たして十余年という歳月は果たして十分であろうか。
足りない、全然足りない！ １０年なんてあっという間。モタモタしていたら、間に合わない。
というわけで、まだ産まれて間もないマリーは、前世の記憶を取り戻し現状を把握して、大いに焦ることになるのである。さすがに、最初は自重して控えめに行動していたものの、さすがにまだ３歳４歳で大人が読むような難しい本を調達して読むなんて難易度が高すぎて、バレてしまったのを気にあんまり自重しなくなるんですね。
それもこれも、愛すべき両親と家族同然の使用人たちのため。我が領地の領民たちのため。ということで、天才という評判と異常すぎる自分を受け入れてくれる両親にすがって、どんどんと世界を変える開発を企てていくのであります。幼児でも自重しない理由として、この時間がない、という焦燥は納得が行くものではありましたね。
本人的には、あり得ない知識を開示していくことには怯えもあるんですよ。まだ幼い自分がこんな事を言い出すのは異常だという自覚もあるし、果たして受け入れられるか、怖れ疎まれ忌まれてしまうんじゃないか、という恐れもある。まあ殆どごまかせていませんでしたし、両親がもう何でも受け入れてくれる事を理解してからはほんと自重しなくなりやがりましたけれど、どうにか幼い自分がこんな発明ができることへの理由付けには、頭悩ませていましたねえ……なんもいいアイデア思いついてなかったまま、バレてしまってましたがｗ
まあうちの子天才、だけで済ませている両親が、我が子に甘すぎ、と思わないでもないですけれど。さすがに思いつきや発想だけでは理由が説明できない、大系立てられた理論。そこに至るまでに幾重もの技術的な蓄積や歴史が必要だろう経緯をすっ飛ばした、基礎から柱から枠組みから中身まで全部できあがっている完成品。そういうものの計画をポッと持ってくる幼児に対して、天才で済ませるのはもうおおらかというよりも、両親なりにある種の覚悟を決めてしまっているのかもしれません。全然なんにも考えていない、という感じの人達ではありませんでしたし。いや、お母様の方は本気でうちの子天才！となってるだけかもしれませんけれど。
他の類似した前世の記憶からどんどんと知識を活用して、新しい技術や概念を持ち込んでくる、という物語に対して、本作が独自の方向性を見せるのは、やはり大航海時代を作り出す、というところなんでしょう。帆船や航海方面の開発が重点的になるわけで、そっち方面は珍しいだけになかなか美味しいネタであります。
まだその存在すらも認知されていないアメリカ大陸にあたるだろう新大陸を目指して、大型の船を建造する。そのために必要な技術や航海そのものに対する必要な知識、概念、考え方や道具類。最初から完成図を描けるマリーとしても、そこに至るために準備や技術の蓄積はやっぱり必要なわけで、提案などが全部まるっと受け入れられたとしても、簡単にできあがるものではない以上、やっぱり焦るのもわかるんですよねえ。１０年ちょっとじゃ全然足りない。
自分でも言ってますけれど、開発しようという帆船のタイプとか、歴史百年単位ですっ飛ばしてるんで、これ普通に領地が繁栄しすぎても中央との対立は発生しそうなんだがなあ。ちょいちょい、王国の王族とは好を結んで、交友を増やしているので、対立構図を王国全体対ゼンボルク領というものから、ちょっとずつ違うものへと変えていくための流れは段々とでき始めている感じもありますけれど。
しかし、主人公のマリー、１巻の終了時点ですらまだ６歳なんで、これだと同世代がまだおこちゃますぎる以前に幼児なんで、周りは大人かお兄さんお姉さんばっかりという、これ人間関係……というか恋愛模様云々は発生しようがないなあ。中央には寄り付いてもいないので、同じ世代の攻略対象たちとの交流も一切ありませんし、僅かに孤児の面々とちょっと接触したくらいだから、本作でラブコメ的な話が発生するの、当分先はもう来ないんじゃないだろうか、これｗ
舞台となるゼンボルク公爵領は、イベリア半島にあたる位置。となると、オルレアーナ王国って相当な大国だぞ。
ブリテン諸島やスカンジナビア半島も存在しないみたい。それでも、一番西の端っこにあると言っても、北と南の海上交通路の中継地点として賑わいそうなもの、と思ったら北側の海は冬になると凍ってしまって通行不能になるの？ どんな氷河期だよ。実質、大陸の北側全体がロシアみたいなもんなのか。
これは確かに、ゼンボルク公爵領が辺境僻地、中央から取り残された田舎とされるのもわからなくはない流通事情である。元々ゼンボルクが王国で、何世代か前にオルレアーナ王国によって占領されて産業基盤となる農業地帯や鉱山地帯を丸ごと持っていかれた、となったらなおさらに苦しいだろう。
そんな領地を故国にして、主人公のマリーは産まれたのでした。
ゲームでは悪役令嬢となり、どのルートでも助からないという末路を辿るわけだけれど、問題はマリーがヒロインや王国の王子様たちをはじめとする攻略対象たちと対立してしまうのは、マリーの個人的な性格や事情ではなく、ゼンボルク公爵一派全体の意志。王国への反逆のための謀略の一環なわけですよ。
だから、マリーが個人的に関係者との人間関係を改善したところで、問題は何も解決はしないし対立は発生する。たとえ両親を説得したとしても、もはやこれ公爵家の単独の反逆じゃなくて、王国からの支配や差別に苦しむ旧ゼンボルク王国全体の意志となってしまうので、個人の意志ではとても止められない大きな流れになってしまう。
となると、ゲーム原作がはじまる十数年後までに、ゼンボルク側が追い詰められて決起するような現状そのものを改善しないことには、悪役令嬢ルートは避けられない。
しかし、公爵領……かつては王国であった程の領地を、決起を思いとどまらせるほどに改善するのに、果たして十余年という歳月は果たして十分であろうか。
足りない、全然足りない！ １０年なんてあっという間。モタモタしていたら、間に合わない。
というわけで、まだ産まれて間もないマリーは、前世の記憶を取り戻し現状を把握して、大いに焦ることになるのである。さすがに、最初は自重して控えめに行動していたものの、さすがにまだ３歳４歳で大人が読むような難しい本を調達して読むなんて難易度が高すぎて、バレてしまったのを気にあんまり自重しなくなるんですね。
それもこれも、愛すべき両親と家族同然の使用人たちのため。我が領地の領民たちのため。ということで、天才という評判と異常すぎる自分を受け入れてくれる両親にすがって、どんどんと世界を変える開発を企てていくのであります。幼児でも自重しない理由として、この時間がない、という焦燥は納得が行くものではありましたね。
本人的には、あり得ない知識を開示していくことには怯えもあるんですよ。まだ幼い自分がこんな事を言い出すのは異常だという自覚もあるし、果たして受け入れられるか、怖れ疎まれ忌まれてしまうんじゃないか、という恐れもある。まあ殆どごまかせていませんでしたし、両親がもう何でも受け入れてくれる事を理解してからはほんと自重しなくなりやがりましたけれど、どうにか幼い自分がこんな発明ができることへの理由付けには、頭悩ませていましたねえ……なんもいいアイデア思いついてなかったまま、バレてしまってましたがｗ
まあうちの子天才、だけで済ませている両親が、我が子に甘すぎ、と思わないでもないですけれど。さすがに思いつきや発想だけでは理由が説明できない、大系立てられた理論。そこに至るまでに幾重もの技術的な蓄積や歴史が必要だろう経緯をすっ飛ばした、基礎から柱から枠組みから中身まで全部できあがっている完成品。そういうものの計画をポッと持ってくる幼児に対して、天才で済ませるのはもうおおらかというよりも、両親なりにある種の覚悟を決めてしまっているのかもしれません。全然なんにも考えていない、という感じの人達ではありませんでしたし。いや、お母様の方は本気でうちの子天才！となってるだけかもしれませんけれど。
他の類似した前世の記憶からどんどんと知識を活用して、新しい技術や概念を持ち込んでくる、という物語に対して、本作が独自の方向性を見せるのは、やはり大航海時代を作り出す、というところなんでしょう。帆船や航海方面の開発が重点的になるわけで、そっち方面は珍しいだけになかなか美味しいネタであります。
まだその存在すらも認知されていないアメリカ大陸にあたるだろう新大陸を目指して、大型の船を建造する。そのために必要な技術や航海そのものに対する必要な知識、概念、考え方や道具類。最初から完成図を描けるマリーとしても、そこに至るために準備や技術の蓄積はやっぱり必要なわけで、提案などが全部まるっと受け入れられたとしても、簡単にできあがるものではない以上、やっぱり焦るのもわかるんですよねえ。１０年ちょっとじゃ全然足りない。
自分でも言ってますけれど、開発しようという帆船のタイプとか、歴史百年単位ですっ飛ばしてるんで、これ普通に領地が繁栄しすぎても中央との対立は発生しそうなんだがなあ。ちょいちょい、王国の王族とは好を結んで、交友を増やしているので、対立構図を王国全体対ゼンボルク領というものから、ちょっとずつ違うものへと変えていくための流れは段々とでき始めている感じもありますけれど。
しかし、主人公のマリー、１巻の終了時点ですらまだ６歳なんで、これだと同世代がまだおこちゃますぎる以前に幼児なんで、周りは大人かお兄さんお姉さんばっかりという、これ人間関係……というか恋愛模様云々は発生しようがないなあ。中央には寄り付いてもいないので、同じ世代の攻略対象たちとの交流も一切ありませんし、僅かに孤児の面々とちょっと接触したくらいだから、本作でラブコメ的な話が発生するの、当分先はもう来ないんじゃないだろうか、これｗ
Ａｍａｚｏｎ
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