【ダンジョン付き古民家シェアハウス】 猫野 美羽／しの 電撃の新文芸
Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
ダンジョン付きの古民家シェアハウスで自給自足のスローライフを楽しもう!
大学を卒業したばかりの塚森美沙は、友人たちと田舎の古民家でシェア生活を送ることに。
心機一転、新たな我が家を探索をしていると古びた土蔵の中で不可思議なドアを見つけてしまい……?
扉の向こうに広がるのは、うっすらと光る洞窟――なんとそこはダンジョンだった!!
ダンジョンで獲得したスキルのおかげで貧乏生活も乗り越えられる!? 魔法を駆使して悠々自適なスローライフを満喫!
可愛いニャンコやスライムを仲間に加え、男女四人の食い気はあるが色気は皆無な古民家シェアハウスの物語が始まる。
内定貰ってた会社が潰れたり、雇われ店長やってたバーが閉めることになったり、とちょうど同じタイミングで仕事や生活拠点を失うことになった塚森美沙とその友人達は、美沙の提案で都会から脱出して彼女の亡き祖父母の田舎にある古民家をシェアハウスにして暮らすことにした。
それだけだと、さすがに仕事もなくて先々しんどかったんだろうけれど、家を片付け中に土蔵で見つけたどこでもドアが、謎のダンジョンに繋がっていたことで思わぬ展望が開けたのだ。
異世界ではなくて、まんまダンジョンだけ、というあたりがシンプルですね。また、ダンジョンに潜ることによって得ることになったそれぞれの個人のスキルや、ドロップアイテム。これが、不便な田舎暮らしを一変させてしまうのである。
都会暮らしだと、案外と魔法や特殊なスキルを習得したとてあんまり使い所がないんじゃよ、という話は異世界からの冒険から元の世界に戻ってきた異世界帰りの物語なんかではよく聞くじゃないですか。
実際、人の目がたくさんあり、生活に必要なものがあらかた整っている都会部では、隠れて使うには、普通の攻撃魔法にしても、回復魔法みたいなものでも案外使い所がない。補助魔法系なんかだとこっそり使えるかもしれないけれど、それでも魔法の効果で派手な動きを見せてしまったら、なんぞそれ！？と目立ってしまうことになりますしね。
ところが、インフラが整っていないご近所さんもお隣の家も大変遠くに離れていらっしゃる、みたいな田舎の家で自給自足の生活をしよう、となるとこれらの魔法やスキルは途端に極めて有用になってくる。
……美沙さんのアイテムボックスは都会でもめっちゃ便利だろうけれど。実際、引っ越し代をほぼタダにできたのは大変大きい。
とまあ、そんなこんなで、ダンジョンに潜ることでそれぞれスキルを手に入れ、またポーションなどのドロップアイテムや倒した動物系モンスターのお肉なんかをゲットしつつ、それらのスキルやアイテムを使って農作物を大量に何毛作だよ、というくらい生産したり、小物をクラフトしたり、とそうして作ったものを通販などで売るなどして安定した収入を獲得していくことになるのである。
ここまでガッツリ、ダンジョンでの成果物を実生活の方に活用してガンガン売る話はあんまり今まで自分は読んだことなかったなあ。
ってか、アクセサリー類なんかはともかく、生産した農作物をネット通販で売るのは昨今怪しい販売元が跋扈しているだけに（盗品とか、横流し品とかね）え、そんなガッツリ農作物、個人のネット通販で売っちゃって大丈夫なの？ 怪しまれない？ と心配にはなってしまった。
当初はともかく、途中から個人の家庭菜園レベルじゃない出荷量になってきてるし。いや、さすがに量増え過ぎたら、箱詰めだけでも大変よ？ と思ってたらテイムしたスライムたちを動員しはじめよったんだが、これ見られない？ 大丈夫？
それよりも、結構大々的に販売を初めていて、これって稼ぎもそこそこになってきているんで、税務署さんがアップをはじめませんか！？ と、そっちの方がさらに心配になってきた。
生産しているはずの畑の規模と、出荷量が明らかに釣り合っていない上に、これは流石に売り物にはしてないものの、ダンジョンで狩った鹿やイノシシのモンスターの肉をジビエ肉として、ぽんぽん近所に配りまくってるもんだから、いやそれどこでそんな大量の肉狩ってきたの！？ と、出所不明の食料品を大量に供給しだしているの、怪しいってもんじゃないですよ！？
田舎らしくご近所付き合いは密にして、引っ越ししてすぐに全員で挨拶して回った上に、イベントや会合にも積極的に顔を出し、暇さえあればお裾分けを配って周り、と大変に良好な関係をさっさと作り上げている面々ですけれど、さすがにあのお裾分けの量と質は怪しまれないか？ ジビエ肉の方はさすがに出所の言い訳が難しすぎて、知り合いから貰ったもののお裾分けみたいな話にしているみたいだけれど、どれだけ狩りまくってるんだ、って量ですしねえ。
いやそれよりも絶対に流通の怪しさから役所に目をつけられると思うんだけどなあ。マジで出所不明過ぎるものｗ
ともあれ、このシェアハウスで暮らし始めた美沙をはじめとした四人。幼馴染で止まってると息ができなくなって死ぬマグロタイプの青年に、バーの店主だったオネエ系頼れるお兄さん。その妹のクラフト女子、となんかこう……全員、陽の者なんですよねえ。妹だけど見た目王子様な晶ちゃんだけ、ちょっと大人しめの性格してますけれど、人付き合いが悪いわけではなく田舎のじいさまばあさまとの交流は他の面々と変わらないくらい、みたいですし。そもそも、他人と一緒に暮らすシェアハウスで生活している時点で、コミュ力高くないと無理なんですよ。
さらにマメな人付き合いが大切以上に死活問題な田舎暮らしで、積極的に交流を欠かさない、という時点でもう人と関わるのが大好き、でないとやってけないんですよ。
そういう意味で、全員陽の者で、前向き志向で、トドメに毎週BBQやってもしんどいと思わずひたすら楽しいっ、となりそうなアウトドアタイプである。自給自足でポーション振りまいてなんか変な回復浄化効果のついた野菜を食べて、ダンジョンで狩ってきた肉を食って、それらをうまいこと調理してくれるオネエなお兄さんの絶品の料理に舌鼓をうち、庭でバーベキュー。ダンジョンでキャンプ、と自給自足生活を……いや、通販なんかでめっちゃ稼ぎ出しはじめてますが、それはともかくとして日々の謳歌の仕方、スローライフの形がもうなんか「キラキラ」してるんですよ。四人とも美男美女って感じで垢抜けてますし。たまたま折り悪く都会での生活ができなくなりましたけれど、四人とも運さえ悪くなければ普通に都会で不自由なくキラキラした生活を送ってそうな人達ですしねえ。
まぶしい、マブシイ、眩しい。
目が焼けそうですｗ
今のところ、生活拠点はあくまで古民家の方で、ダンジョンの方は採取場といった感じで、キャンプしたりと遊びに行くこともありますけれど、あちらが異世界という別の世界という広がりや、あちらの世界の人間という存在も現れていないので、現実世界のスローライフが主体の話って感じですねえ。ただ、ここからどう話が広がっていくかはどうにでも転がりそう。
……ってか、表紙で抱えている動物、猫だったのか。ワンコかと思ったぞ。猫デカくね！？
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
