3歳 オープン (国際)牡・牝(指定) 馬齢 東京競馬場2,400メートル(芝・左)

漆黒の白鳥羽ばたく府中かな。

星の冠を戴いたのは、世代ナンバーワンの前評判通り、クロワデュノールでした。
皐月賞は不利などもあり、2着に敗れてしまったのですが負けて強しの内容で評価自体は全く落ちなかったですね。2歳から一貫して彼が頂点であり、他の馬たちは北天に輝くノーザンクロスを追いかけて追いかけて食らいついていくのが今年のクラシックだと言えるのではないでしょうか。
だからこそ、皐月賞のミュージアムマイルは星に手を届かせたという意味でも凄まじい馬である事は間違いないです。このダービーでは残念ながら適性が合いませんでしたが。

スタートから先行位置にスーッとつけたあのスムーズさには身震いしましたね。最初のコーナーの位置を見て、これはもうよっぽどの事がない限りまず間違いなく勝ったな、と思いました。
まあよっぽどのことがしょっちゅうあるのが競馬でもあるのですけれど、

北村友一騎手も、期するものがあったでしょう。背骨を折る大怪我からの騎手としての復帰。その怪我で無念にも相棒であるクロノジェネシスの現役の晩年をともに過ごせなかった悔しさ。
海外遠征にクロノと行ったとき、北村騎手がずっとクロノといっしょに居て遊んでた、というエピソードを聞いて以来、このコンビは好きだっただけに、怪我で降りざるを得ずクロノの鞍上が変わってしまった事はやっぱり残念でしたからね。ルメさんの宝塚記念でのコメントは気遣いを感じてグッときたのですが。
ともあれ、そんな無念を抱え、しかし怪我を克服。騎手としても復活し、去年は重賞を6つも勝ってかつての勢いを取り戻し、何よりクロノジェネシスと同じ斎藤厩舎から圧倒的世代ナンバーワンと言われた同じ「クロ」の名前を持つクロワデュノールを任されて、見事ホープフルステークスを勝ってクロノジェネシス以来のG1を奪取。
ただ北村騎手の復活の物語は自分の中ではあそこで区切りついてたんでしょうね。初のクラシック制覇、初のダービージョッキーにも鞍上に涙はありませんでした。高く掲げた一本の指は、すぐさままたがる愛馬に向けられます。

こいつが一番だ。こいつこそが一番だ。

舞台の主役はクロワデュノール。その相棒として、彼の持てる力を全て発揮させる、そうすれば自ずと勝てるのだから。そんなやるべきを当たり前にやる、そんな使命を果たした支える者としての達成感、満足感を感じさせるような穏やかで落ち着いた表情がとても印象的でした。

クロワデュノールはフランス語で北十字星。はくちょう座を描き出す北の空に輝くノーザンクロス。
しかしその毛並みは青鹿毛からの漆黒で、はくちょう座の冠を頂きながら、真っ黒な馬体を輝かせています。父はキタサンブラック。父が果たせなかった、そしてあの魔王イクイノックスですら果たせなかったキタサンブラック産駒として初のダービー制覇。さらに父の種牡馬としての価値を高めてくれました。夏を超えて、果たして父のようにさらに馬体を大きくしてスケールアップしていくのでしょうか。
陣営は凱旋門挑戦にも言及しています。はからずも三冠馬への挑戦を皐月賞で脱落してしまったからこその新たな可能性。菊花賞を目指すにしても、どちらにしても楽しみ意外のなにものでもありません。
最強の馬が勝つべくして勝つ、これが成ったダービーはコントレイル以来でしょうか。これから、競馬界そのものを背負って立つ偉大なる名馬への道を歩み始めたと感じられる日本ダービーでした。

2着にはマスカレードボール。皐月賞では苦手の右回りで3着。そしてこの府中では大外枠ながらピタリとクロワをマークして、直線で大外から強襲。力及ばずも最後突き放すかと思われたクロワに最後まで食い下がって3/4馬身まで詰め寄った迫力は、彼こそが世代最強に真っ向から立ち向かうライバル筆頭を印象付けるレースでしたよ。
父はキタサンブラックの同期でもあり、あの世代のダービー馬でもあるドゥラメンテ。早逝してしまった彼のラストクロップでもあり、2世代前のタスティエーラ、ソールオリエンス、ドゥレッツァ以来の父親世代からの宿命のライバル関係に、なってほしいものですね。

3着には京都新聞杯を勝ってダービー出走権をもぎ取ったショウヘイが、1枠を活かした走りで内から脚を伸ばして食らいつきました。6番人気でしたけれど、正直1・2・3番人気。クロワ、ミュージアム、マスカレードは別枠で、以降の4番人気毎日杯圧勝のファンダム、5番人気サトノシャイニング、6番人気のショウヘイ、7番人気ホープフル2着のジョバンニ、そして8番人気のエリキング辺りまでは横並びでそこまで人気に差はなかったと思います。正直、9番人気以降の馬たちは穴馬としても差があったと思うんで、ファンダムからエリキングまでの誰かが上の3頭に割って入れるか、という雰囲気だったと思いますよ。
その中で、見事勝負にアタマ突っ込めたのがショウヘイだったわけです。乗ってたルメールのコメントだと、雨のあとの馬場のゆるさであんまりうまく走れてなかったみたいで、それでこの着順まで来たんですから、まだ伸びしろもありそうじゃないですか。以降もこれは期待できる子だと思います。
4着はサトノシャイニング。惜しかったですね。スタートから武さんが思い切って逃げたときは、おおっ!?と思いましたよ。そこからグッとペース落としてレースの主導権を握るか、と思われたんですが、まさかのホウオウアートマンがそこからさらに鼻を奪ってしまう展開に。アートマンに躱されたあと、なんじゃいこらーっとシャイニングがイキってしまったのを武さんが宥めている様子が映像に映ってましたね。うまいこと落ち着かせてしっかり番手でレースを刻んだものの、ここでシャイニングが一瞬掛かり気味になってしまったことがもったいないことになってしまいました。もし、気持ちよく逃げていたら、もうちょい際どい結果になっていたかもしれません。しっかり4着にまで残りましたしねえ。
5着はエリキング。見直したらスタートで勢いつかなかったんですね。2枠3番という内枠だったんで、こうなってしまうと内に閉じ込められるか、ジリジリ下がって外からまくるという方法を取るしか無い。どう考えても前有利な競馬になりそうでしたから、この時点で苦しい苦しい。それでも、勝ちを狙うならぶん回さなしゃあない。そういう苦しい競馬で、後方からぶっ刺してきて後ろからの競馬で唯一掲示板に乗ったんだから、その脚は本物でしょう。なかなかバッチリとハマる競馬をするのが難しそうなんですが、これからこそが楽しみな馬かも知れません。
6着に、皐月賞馬のミュージアムマイル。なんか、マスカレードボールの後ろにつけてましたね。後ろ?! 前じゃなくて? いや、どうだろう。残り200までくらいはマスカレードボールにしっかりとついていってるんですが、200のハロン棒越えたくらいで一気に差がひらきはじめるんですよね。というか、ミュージアムマイルから手応えがなくなってしまった。距離ちょっとしんどかったのかな、という失速でしたかねえ。調教師の先生が今の段階だと距離長かった、とコメントしてるのは。まあ今日の展開だとあの位置からの追い込みは、尋常じゃない鬼脚使える馬でないと無理だったでしょうね。

あとは、ファンダムが14着。道中だいぶ力んでてスタミナ切らしちゃったみたいなんで、これは2400長かったっぽいですね。これまで2000以上のレース経験したことなかったし、今は仕方ないかも。
ファウストラーゼンは終始最後方で、そのまま最下位でゴールイン。スタートからハミを取らず、マクろうとしても反応せず、直線でもピクリとも動かず、ってミルコめちゃくちゃ頑張って走らそうとしてるのに、ラーゼンちゃんこれ完全に走る気ナッシングになってたんじゃないですか!?
G1でここまではっきり、ワシ走らんのでよろしく、となってる馬珍しいんじゃないの!?
これもう、主戦の杉原くんが良いというラーゼンの抗議なんじゃなかろうか。ミルコはこれはどうしようもないよ。

あと、ダービーではなくそのあとの目黒記念ですが、ハヤヤッコ競走中止には青ざめましたが、無事で良かったです。もう9歳ですし、これが現役最後のレースとなるのでしょうけれど、よく頑張ってくれました。
3歳で白毛一族最初の重賞馬となり、長く現役を続けて最後まで衰え知らず。去年8歳でアルゼンチン共和国杯勝ったときは滾ったなあ。44戦7勝2着5回3着4回は立派も立派。重賞も芝ダート両方取って3勝。いい馬でした。ほんと、お疲れ様よ。

目黒記念、勝ったのはアドマイヤテラ。鞍上の武さんは今年初の重賞制覇。これで39年連続重賞勝利。今年も結局勝ちましたねえ。テラは思ってたよりかなり芯が通った強さでした。菊花賞3着は伊達じゃないですね。これ、ステイヤー戦線の主役になっていっても不思議はないですよ。
ただ目黒記念の勝ち馬ってG2大将のシルバーコレクターになりがちなのが不安といえば不安。
目黒記念を勝ってG1勝った馬って、遡るとステイゴールドまで戻らないといけないらしいw