徒然雑記 : ポンコツスキルしか使えない悪役魔女だけど、テイムしたパリピなスライムたちと強く生きます！２　★★★☆

【ポンコツスキルしか使えない悪役魔女だけど、テイムしたパリピなスライムたちと強く生きます！２】　雨傘ヒョウゴ／朝日川日和 HJ NOVELS

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『クラウディ国』の攻略キャラ・ロータス、そして仲間のスライム達と楽しく旅を続ける悪役魔女のエル。
新たな友人との出会いと別れを経て到着したのは、雨の国『レイシャン』。
そこでエル達はレイシャンの攻略キャラ・最強の侍ムラサメと知り合い、更にはモフモフ魔族ピア誕生のレアイベントに立ち会う。
しかし、魔族が悪という常識によってピアはムラサメに狙われてしまいーー
「心配しなくてもいいよ。私もピアと同じ、魔族だから！」
ピアを守るためにエル達が練った可愛すぎる作戦とは!?
癒し度MAXの最強スキルでピアとムラサメのハッピーエンドを目指す、第２巻！

冒頭から雨が振り続ける国レイシャンで、兄が魔族へと変じてしまい、村八分にされていた妹と遭遇するイベントから。
相変わらず元気で明るいエルに対して、この世界観のすさまじいヘヴィさよ。
特に前触れなく人が魔族へと変わってしまう現象。それで魔族になった人の人格まで変わってしまうわけでもないみたいなのに、魔族は悪と断じられてそれまで仲の良かった人、家族ですらも恐れられ憎まれ、崖から突き落として殺してしまうのが通例となっているのがこの世界。
一巻でもそうだったけど、エルも本当に仲の良かった親兄弟からすら突き放され、殺されかけたにも関わらずよくまああんな明るく出来るもんです。
まあそれも、ロータスに心開くまでは毛を逆立てた猫みたいに警戒しまくって、テイムしたスライムたちだけが心通わせられる相手だったわけですから、ロータスに心開けたのは本当に大きかったんだろうなあ。
１巻から３年。ちょうど原作のお話がはじまる直前くらいの時期になっているんですね。幸いにして、原作のエルが辿ったボディコン美女に幻覚スキルで変身する、みたいな変な嗜好は生まれないまま普通に成長。と言っても、８歳から１１歳ではそこまでは変わらんか。
一方でロータスの方はというと１６歳の少年から１９歳の青年になったわけで、男性はこのあたりの年代、人にもよるだろうけれどだいぶ変わるからなあ。特にロータスは随分と大人びたようで、エルに対するこう……見守り度の落ち着きがなんか段違いになっている気がするぞ。
ただその分、保護者度もあがってしまっているようで、エルとしてはかなりすきすき光線を出しているのでむしろ手応えが遠ざかっているのではないだろうか、という塩梅。
でも、そのままエルももうちょっと成長していくとロータスの好みど真ん中になっていく、はず。実際、ボディコン魔女みたいな体つきに成長するかは不明なのだが。

ともあれ、明るさを失わないエルに対して、レイシャンで出会った少女エルマは、暗く苦しみを抱えきったような娘さんで、魔族と関わったという人は本来ならこんな感じになってしまっていたんでしょうね。
特にエルマは、村の人達から距離をおいて孤立し、囚われた兄を逃がしたということに対する複雑な思いをずっと抱えていたのですから、明るくなんていられなかった。
魔族は絶対悪という価値観に縛られた世界で、それでも兄を見捨てられなかった、という事はどうしても心のどこかで重石になってしまう。兄を助けたことを後悔していなくても、だ。これは、今の世界の価値観そのものが悪い、としか言いようがない。
エルマがしたことは悪いことなんかじゃないと言い切れる、そんな世界に少しずつでもなっていけばいいのだけれど。それはとても難しい事なのだろう。でも、エルはその少しずつを出来る子なんですよね。エルとの交流は、エルマに失われていた笑顔をもたらし、彼女の心を押しつぶしていた重石をちょっとだけでも軽くしてあげられた。俯いていた彼女の視線を上へともたげ、エルマにこれから頑張っていけるだけの支えを与えてあげられた。
偉い子である。
そのエルマのお兄さんが、あの銀髪の魔族の側近をやっているとは思わんかったけれど。今も妹をずっと心配して、ちゃんと交流もしているあのお兄ちゃんが。妹に笑顔を取り戻させてくれたエルに対して恩義を感じるような、そんな心を持つお兄ちゃんが嫌々じゃなく付き従っている、ということはあの銀髪の魔族も一方的に悪なる存在というわけではなさそう。
てか、魔族になった時の他の人間たちの対応が極悪すぎて、どう考えても魔族悪い、というふうに思えなくなっているのだけれどね。ただ、銀髪の魔族が大きな破壊を各地にもたらしているのは間違いなく、でも単純に人間憎しで暴れてるわけじゃなくて何か明確な目的を持って行動しているっぽいだけに、今後の動向も気になるところ。
そもそも、こいつロータスの幼馴染だっつー話だしなあ。

なんか、人間だけじゃなく普通の猫まで魔族になる、という展開が原作にも用意されているらしく、今回はその猫の魔族ピアの顛末にハッピーエンドを持ち込むために、ピアの魔族化に時期的にあわせて街を訪れたエルとロータス。
いや、人間だけじゃないってこれもうなんか環境的な汚染か進化だろ。

また回り回って、エルは自分が悪名を背負いことで、多くの人から嫌われ恐れられ憎まれる、ボディコン魔女エルドラドへと変身して、人々を襲うふりをして大災害から助けてまわる。なんだかんだと自分から犠牲になり、人からの負の感情を背負い、それでも自分が信じた道をゆくエルは強いけど、その道はきついよなあ。
重たい、本当に重たい。でも、ロータスやスライムたちがいてくれるからこそ、そんな境遇でもエルはへこたれない。明るく天真爛漫に頑張れる。偉い子やー。これが孤独でへこたれてしまうと、なんでか貧相な体にコンプレックスを抱いて、ボディコン魔女に憧れる可哀想なちびっこにネジ曲がってしまうわけか。なるほど、色んな意味で悲惨だ。
幸い、今はその悲惨を避けられている。ロータスくん１９歳が色んな意味で頼もしすぎる。頼もしすぎて、もう保護者にしか見えんのだけれど。
ともあれ、どれだけ悪名を背負おうと、悪行を成していると見られようと、なかには真実に辿り着く人もいる。大っぴらに口には出せなくても、エルのことを信じてくれる人もいる。その当たり前のこの世界の価値観に根付いていた自分の考え方を、エルと出会って変えてくれる人もいた。
少数とは言え、ちゃんと行いに対して報われているのだ。そうして少しずつでも、魔族＝悪という概念に疑問を抱き、当たり前を当たり前じゃないと思える人達が増えていけば、世界はいつか変わっていける。
その突端に、今エルはロータスやスライムたちに支えられながら歩いているのだろう。
強く、強く生きろよ。

ついに原作スタートの時間となり、現れたるは原作の主人公ヒロイン。ああこりゃあ……俗悪だ。