【泥酔彼女 ３．「キミに酔ってまーす」「ノーコメント」】 串木野たんぼ／ぽんこつわーくす GA文庫
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距離間激近泥酔卓飲みラブコメ、第3巻!
超絶顔がいい酒ヒロインと紡ぐ、距離感激近青春宅飲みラブコメ第3弾！
酒好きダメ美人・和泉七瀬。アンチ酔っぱらいの俺、瀬戸穂澄とは相性最悪。彼女とどうにかなるなんて未来永劫ありえない、はずだったのだが――バレンタインに激震走る！
「もしも私を選んでくれるなら……一生甘えちゃうから、覚悟しろ？」
和泉七瀬、恋する泥酔乙女と化す。いきなりキスされて、こんなの動揺するなっていうほうが無理だろう。
しかもその直後、同級生・羊子からの爆弾じみた告白が炸裂。おまけに、元カノ・月浦が俺に隠していたとある真実まで明らかになり……？
恋なんて、酔わなきゃやっていられない!? 距離感激近青春宅飲みラブコメ、ヒロイン三つ巴な真冬の大決戦で堂々完結の第３巻
マジで登場人物全員が愛情という感情に泥酔していたような最終巻でした。
サブタイトルだとふざけた感じで「キミに酔ってまーす」なんてコメントしてるけれど、こんなもんじゃないんですよ、本編。もう溢れ出てくる感情を抑えきれずに溺れているみたいな感じで、狂えるような愛情にのたうち回ってる。
恐るべきは、このヒロイン三人。七瀬に水守に羊子の三人、恋敵にも関わらず絶えず相手をサポートし続けるんですよね。かといって嫉妬や絶望感がないわけじゃない、むしろのたうち回るくらいに恐れ怯えながら、それでも出し抜くまいと他の二人の背を押し続け、穂澄との機会を与え合うその姿勢には狂気すら感じます。
誰かがへこたれようとすると、後押しして応援して勇気を出させて、立ち直らせて。そこまでするか、というくらい献身的にお互いを支え合ってる。
穂澄を愛しているのと同様に、あまりにもお互いへの親愛が深すぎて深すぎて、それをもう切り捨てられなくなっている。恋敵のはずの可愛い同輩を切り捨てた途端、自分の心まで死んでしまいそうで、穂澄への愛情が穢れてしまいそうで、もう切り離せなくなってる。
ここまで深く深く絡み合ってしまった関係を、とても精算なんて出来るはずがない。
いやー……２巻までってこんな話でしたっけ。２巻って三人のヒロインがそれぞれの事情から穂澄への愛情に向き合えず、穂澄自身とどう接していくかも迷走していて、そのあたりを手のかかる七瀬のお世話と彼女の俳優としての欠点を献身的に解消させていく過程で、水守や羊子との関係も整理していって、そこでようやくヒロイン三人と穂澄がそれぞれ自分の気持ちを整理できて、横並び一線でこれから真っ向から恋の勝負を仕掛けていくぞ、みたいなスタートラインにたちました、みたいな終わり方をしてたんですよね。ラブコメでよくある、わたしたちの戦いはこれからだ、みたいな終わり方ですよ。実際、そこでこのシリーズ終わりを迎えてもおかしくはなかったのですが。
３年ほどの月日を経て、はじまってしまったこの３巻。なあなあで終わったかに思えた競争が、本当に号砲を鳴らしてスタートしてしまったわけです。
そこから、もう手加減もなしの本気の全力ですよ。きれいなキラキラとした光みたいな感情じゃない、ここで彼と彼女たちが制御できず溢れ出させてしまっている恋だの愛だのという感情は、もう液体である。情念という名の噴出孔だ。その止めようのない感情に飲まれて、誰もが溺れている。
これが一人の愛情を得るための奪い合いなら、単なる修羅場となっていくんだろうけれど、三人と一人が全力で支え合い、お互いを決して蔑ろにしようとせずに、フルでその情念をぶつけあい受け止めあえる環境を、みんなで作り出そうとするものだから、全員が際限なくもつれ合って絡み合って、深みへと沈んでいくのである。だから、溺れてるってそれ。溺死するぞ！！
まさに愛に酔っている、泥酔しているような有り様なんだけれど、酒に泥酔しているのと違って彼らから判断能力や正気が失せちゃっているわけじゃない。むしろ素面である意味冷静で、途方もなく感情的でありながら、全部を理性で後押ししているから、愛に溺れ狂っている、としか言いようがないだろう。冷静に狂ってる、正気のまま狂ってる。狂わないと、アタマがおかしくなってしまいそうなほどに愛してしまっている、という感じで。
いやこれ、ここまでおかしくなってると、振られたら選ばれなかったらもう人間として崩壊してしまうんじゃないか、とすら心配になってしまったのだけれど、恋人として選ばれなくても役者として一生支えてくれる、という保証を穂澄から得ていることで保てているという感じかしら、これ。
ちょっとここまでイカレてしまうと、実際の心境がどのようになっているのかわからん！ 穂澄が全力で愛情を受け止めてくれた上で愛してくれた上で、のたうちまわって穂澄が選べなかった事に苦しみ抜いてくれたから、否定された感に苛まれることがなかったんだろうか。
みんなを選べよ、とはここでは言うまい。穂澄の中でどうにも感情ははっきりしていた、してしまったみたいだし。
でも、選ばれなかった二人はもうこれ以上の愛情を他の男性に抱くことは無理だろう、というぐらい深みにハマって狂ってしまっているので、恋人としての責任は取れなくても、役者としての彼女たちを一生支える、という約束以上に責任はお裾分けしてあげてほしい、とついつい思ってしまいます。
それはもう浮気じゃないだろ。
何にせよ、恋の決着というものをここまで深みに沈めながらしっかりと描いて書き抜いたことは、凄いです。妥協せず、ひたすら深いところに沈めて沈めて息継ぎのために浮かばせることすらさせずに徹底的に深みに沈めきって、全部描いてのけたその顛末は、凄みすら感じました。ここまで登場人物の内面に向き合って掘り下げて、キャラ当人たちに吐き出させるのって難しいですよ、しんどいですよ。それをヤリきって、魅せてくれたことには感動すら覚えました。
恋愛物語の結末として、結晶みたいな作品でした。いやあ、凄かった、ほれぼれとしました。
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
