
【暗殺女帝ベルリュージュ 〜虐げられし皇女は愛を得て成り上がる〜】 宮前葵 /匈歌ハトリ マッグガーデンノベルズ
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不遇の皇女と美貌の辺境伯が出会う時、歴史が動き出す。
帝国第一王女の侍女であるベルリュージュはある日突然「血塗れ辺境伯」アスタームからの求婚を受ける。その事で帝都を追われアスタームに頼って辺境伯領に逃げる事を余儀なくされたベルリュージュ。しかし色々追い詰められたその時、秘められた彼女の才能が爆発するのだった。後に「暗殺女帝」と呼ばれる事になるベルリュージュと「血塗れの狼」アスタームの恋愛劇を主体とした架空歴史物語。
得意としている得物がスティレットという刺突特化の剣であり、気配を消して急所をブスリ、という戦い方をするものだから、暗殺者めいているけれどベルリュージュさん、別に暗殺したり暗殺させたり、という事は今までしてないんですよね?
むしろ、幼少時代からずっと命を狙われ続けて刺客に日常茶飯事レベルで襲われていた、暗殺され皇女ですよ。死にませんでしたけれど、生き残り続けましたけれど。
まあその生命を狙われ、というのは庶子である自分を疎み排除しようとした正妃によるもので、女傑としか言いようがない母親に守られ、或いは自衛方法を仕込まれて、年がら年中殺されかけながらかろうじて生き残ってきたという経歴ゆえか、お姫様らしいお花畑な頭とは程遠いクレバーな女性に育つわけですが。
そんな彼女にとって唯一の癒やしであり救いであり、生を実感させてくれる、生きる喜びを、平穏という幸せを与えてくれたのが、怨敵だった正妃の娘であり腹違いの姉であるエリマーレ姫だったわけですね。
二人の関係は素晴らしく良好で、仲睦まじい姉妹同士として育ったわけですが、それが正妃の急逝を契機にエリマーレ姫の態度が急変してしまうのです。それまで可愛がり慈しんでいたベルリュージュを不倶戴天の敵として憎み呪い、それから正妃以上の苛烈さでベルを虐げ、勢い余ってではなく明確な殺意を以て殺そうと刺客を送り込んでくるようになったわけですね。
もはや二人の関係は完全に決裂し、この時点で生きるか死ぬか、殺すか殺されるかしか選択肢がない状態にまで陥っていたにも関わらず、ベルリュージュはどうしてもエリマーレと仲睦まじく過ごした日々を忘れられなかった。
常に殺意にあてられ、まともな情緒を育てる環境ですらなかった幼き日々に、自分を平和へと導いてくれた幸せの象徴こそが、姉のエリマーレであるという、もう魂への刷り込みに近いものがあるんでしょうね、姉ともう一度仲良くしたいという未練を捨てられなかった。
だからこそ、不利極まる取引で絶対服従を近い、妹で皇女にも関わらずエリマーレの下っ端の侍女として仕えるような真似までしていたわけです。侍女としての日々も常に悪意にさらされ、ひどいイジメに遭い続けていたのですけれど、ベルはずっと堪え続け、和解の日を夢見続けていた。
それをぶち壊したのが、突如ベルに求婚してきた辺境伯の息子アスターム。彼の強引なプロポーズだったわけですけれど、彼によってベルの臥薪嘗胆の日々が台無しにされたとはいえ、アスタームが言及しているように、いずれエリマーレはベルを殺していただろう事は間違いないんですよね。
エリマーレが女帝として登極したら、唯一ベルを庇護する存在だった父皇帝の権力が失せる以上、ベルを守る力は何もなくなってしまう。何らかの難癖をつけて、ベルを殺すのはもう既定路線だったとしか言いようがない。
どう考えても、和解なんて無理なんですよ。
なのに、ベルはエリマーレに関してだけは客観的事実からも現実からも目を背け、僅かな望みにすがり続けている。
魂に焼きつけられているレベルで、敵は殺さないと自分が殺される、という命題がベルには幼少時から植え付けられているのに、エリマーレに関してだけはどうしても敵と認定できないっぽいんですよねえ。
ベルリュージュって、これ以外に関してはむしろ果断で決断力に優れている。速く強くきっぱりと、どんな厳しい判断でも必要とあれば下し、勇気胆力に足りないところはまったくない。
帝都でエリマーレの私兵の襲撃を受け、都に残れば死あるのみ、という状況に陥ってしまい、アスタームに連れられて彼の故郷である辺境の都市に赴いたベルですけれど、そこで生き残るために味方を見出し、味方を作り、うるさい敵は叩き潰して、いっそ自由奔放といっていい程動き回って、自分の生存圏を構築していくわけです。その手腕は鮮やかであり、迅雷であり、華麗であり、柔らかくも厳しく、まあ容赦がないというか、躊躇があんまりないんですよね。
アスタームとの政略結婚みたいなはじまりに関しても、理としても情としてもアスタームと対等に向き合って、ときに自分の決断を見せ、相手に決断を委ね、と母親とはまた別の種類の女傑なのは間違いない振る舞いを見せてくれるわけです。
ところが、女帝になる事に関してだけはずっとグズグズしている。それが、姉エリマーレが敵であると認める最後の一線なもんだから、これに関してだけはずっと判断を決断を濁し続けて、周りの状況変化に流され続けている。もうどう見ても一線超えて、後戻りできない状態になっているのにね。
とっくに、ルビコン川はわたっているにも関わらず、まだ大丈夫、まだ可能性はある、と思い込もうとし続けている。
未練である。
ベルリュージュ、ほんとにエリマーレのこと好きだったんだ。あれだけ命狙われ憎まれているのに、疑いようのないくらい殺意を向けられ、呪われているのに。いじめられ虐げられ踏みにじられてなお、それでも、ベルにとって最愛はエリマーレで有り続けているのだろう。アスタームにすら、絆されて心開いて距離感詰めても、ここまでの情念を持ってないですよ。
未練を引きずったまま、敵と認められないまま、どちらが女帝になるかという継承権を巡る争いは、すでにそれぞれの後援となる勢力が滑走をはじめ、誰にも止められない破局を迎えつつある。
あとはもうベルが受け入れて現実が進捗するか、受け入れないまま現実だけが進んでしまうか、だけだと思うんだけれど、ベルはどうするつもりなんだろう。最後まで流されてしまうのか。
そもそも、どうしてエリマーレの態度が豹変したのか、怪しさプンプン漂ってきているのは間違いなくあるんですよね。問題は、誰が裏で画策していたのか、なんだけれど。
そこに、父である皇帝陛下がアスタームとの婚約を頑なに認めようとせず、都に戻ってくるように求め続けていたあたりに、答えかヒントがあるんだろうか。
とりあえず、強さこそが評価される蛮族文化な辺境の地で、皇族として都の華やかな文化を持ち込みブームを作り出すと同時に、幼少時から修羅場くぐり抜け続けた叩き上げどころじゃない蛮族もドン引きの暴れっぷりで武名を上げる、という文武両道というには油っ気と血糊が濃すぎるベルリュージュのカリスマって、暗殺という闇に潜みそうなあだ名とは裏腹に派手なことこの上ないんですけどねえw
普通だと仲良くなりそうなアスタームの弟妹も、盛大にぶちのめした上で怯えられちゃってるのには苦笑いを禁じ得ない。わりと根っこえげつないよね、この皇女様。結構、エリマーレと性格似てる部分あるんじゃなかろうか。
何にせよ真相、思惑の謎秘密も気になるところで、続きが楽しみな急展開でありました。










































































































































































































































































































































































































































































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