【乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル 10】 春の日びより/ひたきゆう TOブックスノベル

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「始めよう。私たちの物語を――」
後日譚も待望の書籍化!
壮絶&爽快な異世界バトルファンタジー第10巻!
王都での決戦より数か月。アリアが“白髪の少女【スノー】”とともに向かっていたのは——レスター伯爵領の大規模ダンジョン。自ら討った『宿敵【とも】』を仮死状態から蘇生させたものの、彼女の寿命が残り少ないのは変わらない。それを解消するため精霊から新たに加護を得ようというのだ。ここに揃うは名実ともにクレイデール王国の最高戦力。難易度が下がっていることもあり、道中の魔獣を薙ぎ払いながらやすやすと攻略を進めていく!だが、深層では迷宮の意思により大異変が発生しているようで……? 「始めよう。私たちの物語を――」かつての“主人公【ヒロイン】”と“最凶の悪役令嬢”が、新たな道を歩き出す!壮絶&爽快な異世界バトルファンタジー第10巻!



前巻の表紙は向き合う純白のドレスに漆黒の髪の少女と、漆黒のドレスに桃色の髪の少女というコントラストが素晴らしかったんですけれど、その9巻での結実を思うとこの10巻のこの少女たち二人が並んで微笑んでいる、という構図は感慨深いものがあります。
まさか、こうなるとは想像もしていなかったからなあ。アリアが心中で温めていた想いになんも気づいていなかった。本懐を遂げさせてあげるだけだとばかり思っていた。
アリアの事を見くびっていた、と言っても良いかも知れない。さすがは本編ヒロインにして主人公である。本編のストーリーの主人公らしい事は全くしないまま、とんでもないルートを回ってきたわけですけどね。
でも、結果的に見てカルラ救済ルートってここしかなかったんだよなあ。いやまさか、彼女が救済されるなんてホント想像もしてなかったんですけどね。カルラ自身思いもしていなかっただろうし、だいたいアリアからしてガンダムWのヒイロよろしく、お前は殺す、とずっと仰っていましたし、カルラさんもアリアに殺されたい、と恋い焦がれていたわけですから、ある意味相思相愛で殺し愛へと昇華していったその果てが、あの9巻の表紙でしたからねえ。

まさかアリアがその先を考えてるなんて、彼女の器の大きさを見縊っていましたよ。
ちゃんと、カルラの事を一度殺しているのでカルラの願いは叶えてるんですよね。その上で蘇生させて、生きろと訴える。
生き返らせて放置、じゃなくてちゃんとその後の身の振り方から、彼女の生きるための指針を示し、寄り添い続けて一緒に生きていくことで、責任背負うところまでやってるところが本当に偉い。
カルラが全属性の魔石を備えていた事で元々余命幾ばくもなかったところを、ただ僅かな時間生きながらえさせるんじゃなくて、彼女がこれからもずっと生きていけるように全力で尽力してるあたり、甲斐甲斐しいくらいなんですよね。
まあだからといって甘やかすのではなく、かなりスパルタで追い込んでいくわけですが。エレーナのときもそうだったけれど、これと見込んだ相手にはアリアって実はお世話好きなんじゃないか、というくらいまめまめしく面倒見るんだけれど、これまでの壮絶なサバイバルというべき生き方のせいか、必要と思ったら相手がお姫様でも病弱なお嬢様だろうとギリギリの瀬戸際を見極めつつ、そのギリギリまで追い詰めて追い込んでいくので、彼女にお世話されるのってかなり厳しいんですよねえ。普通の人ならすぐに音を上げてしまうんじゃないだろうか。
これ、自分に極めて厳しいエレーナや、自分の苦痛に鈍感なカルラでなかったらまず心の方がくたばってたんじゃないだろうかw
まあアリアも二人がそういう人間だからと見極めた上での追い込みだったのかもしれないけれど。
でも、苦しいとか痛いとか、そういう気持ちに無頓着と言って良いカルラをして、あの薬はもう飲みたくないと拒否感を覚えるくらいヤバい味の薬湯を、グイグイと凄まじいプレッシャーで飲ませてくるアリア、師匠とかにすると大変な目にあいそう。
今のところ、男性のお相手に見合う男がいないので、メルローズ家を継ぐにしても子供が出来るかわかんないところですけれど、出来たら周囲ドン引きの修練を与えて追い込んでいきそうで、母親としてもヤバそうなんだよなあ、アリア。実子じゃなくて養子だろうと、まあ同じ目にあいそうですが。
そう思うと、セラやセレジュラ師匠は厳しいけど母親としての愛情は存分に注いでくれてたので優しい印象が強いのですが……いやでも、振り返ってみるとやっぱり厳しさも尋常じゃなかったよなあ。アリアがまったく堪えない人間なので、印象が残ってないだけで。

さて、この10巻はアリアがメルローズ家の娘と正式に認定され、エレーナが正当な王位継承者となったその後の話、後日談にあたるわけですけれど、アリアさんもうエレーナの方は大丈夫、とばかりに蘇生させたカルラこと、新しい人生ではスノーを名乗ることになった国内でも突出した力を誇る魔術師の今後のために奔走する、というのがこの巻の主だった展開でしたね。
ってか、放置されたエレーナさまが激おこなのですけれど、この方ちゃんとした理由があればその怒りを収めることが出来るので、そのへんもアリアちょっと見越してますよね。エレーナ様拗ねそう。
ただ、スノーの方が蘇生したとはいえ、余命の問題がまったく解決していなかったのね。属性を一つ失うくらいでは取り返しがつかない状態だったのか。
じゃあどうやったらその属性を減らせるのか、ということでアリアはスノーを連れてダンジョンを踏破して、ダンジョンクリアの願いによってその目的を叶えることにしたのです。
というわけで、アリアとスノー、そしてネロという最小人数によるダンジョン踏破が行われることに。
いやもうこれ、アリア一人だけでも国をひっくり返す大暴れ、それに魔獣としてとんでもないレベルまで成長を続けているネロを加えれば一騎当千だったのが、さらに国中を焼き尽くす所だった魔術師の元カルラさんが加わったら、これもうアリアが二人いるようなものじゃないですか。
あれだけ命のやり取りをしていたにも関わらず、ずっと相思相愛でもあった二人ですから、殺し合いが完了した今、仲違いするようなこともなく、スノーはもうアリアのために命を使うつもりまで覚悟……なんて必要ないくらい当たり前の今後の生き方として、アリアのため、という方向になっているし、このレベルのヤバい二人が息ぴったりになっちゃってるわけですよ。
もはや手が付けられないのでは? このコンビ。
アリアの推薦で、冒険者パーティー虹色の剣に加わることになったわけですけれど、これもう過剰戦力もいいところなんじゃないだろうか。リーダーのドルトンさん、心労で死にやしないだろうか。サマンサに振り回されていた頃からずっと苦労してきたみたいだけれど、質の違う心労がドルトンを襲う!!
アリアたちが加わる前ですら伝説のパーティーだったのに、主要メンバーの二人が抜けたにも関わらず、アリアとスノーが加わってむしろ強化されてしまってるんですが、このメンツで何と戦うの? 魔王?
しかし、アリアがずっと「灰被り姫」と呼ばれてきたわけですけれど、此処に来て「白雪姫」が登場するとは思わなかった。ってか、カルラがあんな真っ白になるなんて思わないじゃないですか。
もう見た目からして浄化されました、てな感じで。いや、でも実際カルラ、スノーになって丸くなりましたよ。性格が和らいだ、とか優しくなったってわけじゃないんですけれど、刹那的で障害物は人間だろうと焼き尽くす破滅的な性分が落ち着いたことで、こんなにも柔らかくなるとは。前は触れれば骨まで灰にされそうな、近づくだけで死を感じさせるような少女でしたからねえ。ほがらかで躁的ですらありましたけれど、話が通じるような気がしませんでしたし。ただアリアに一途、彼女に殺されることだけが人生の目的、みたいに上り詰めていた状態でしたから。
その頃の状態からすると、今は全然違いますわ。話が通じるだけで全然違う。ほんと落ち着いたよなあ。これは確かに、見た目の色彩が激変したというだけじゃなく、人間としての雰囲気もだいぶ変わっているんで、知り合いでなければ気づかれないかも。
まあ、落ち着いていようがアリアと同じレベルで平然とやらかして、平然とだからどうした、としてる所はまあ全然変わっていないので……ほんと、アリアが二人になったようなもんじゃね、これ?!