【無双ゲーに転生したと思ったら、どうやらここはハードな鬱ゲーだったらしい 1 〜聖剣を抱きし最凶少女の蹂躙無双譚〜】 久路途 緑 ／英エイスト オーバーラップ文庫
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可憐な少女が聖剣の力と容赦ない凶気で世界を蹂躙する!!
「ふふ、あははははっ！ 死に方は選ばせねえが、死ぬ順番は選ばせてやるよ！」
前世で異常な暴力性と「悪」に対する容赦のなさを持って転生した、7歳の可憐な少女シャロン・ベルナ。
レベルカンストのスキルで今日も楽しく魔族を蹂躙！
そんな中、この世界へのもう一人の転生者・モニカと邂逅する。
どうやらここはハードな鬱ゲー『聖剣を抱きし者たちへ』の世界であり、シャロンの行動が既に最悪の大量虐殺シナリオを引き寄せてしまっているようで……!?
しかし、そんなことはシャロンには関係ない。
圧倒的な戦闘力と、何者にも容赦のない凶気で全てを蹂躙しにいく――！
うぎゃぁぁぁ、これはナチュラル・ボーン・サイコパスキラーだぁ。
生まれながらの殺人鬼。それも、快楽殺人鬼だ。人をいたぶって踏み躙って殺しまくるのが大好きで大好きでたまらない、頭のイカレたやばいやつだ。
恐るべきはこの少女、まともな社会性を装えるだけの理性を備えているところだろう。殺人欲という本能に、欲望に身を任せてやりたい放題、というわけじゃないんですよね。同時に、我慢して我慢して耐えているわけでもない。
見事に本能をコントロールしつつ、適度に発散してやがる。
さらにいうと、この彼女シャロンが転生した世界がもうグロ耐性リョナ耐性が必要なようなタイトル通りのハードな鬱ゲー世界なんですよ。これもう、人間が気づかないうちに世界が魔族の飼育する人間牧場になり果ててしまっている世界、とでも言うんでしょうか。
先代勇者が敗れたことで、魔族と人間の戦力の均衡が崩れて世界を魔族が支配しようとしている黄昏の世界、なんて人間たちの間では共通認識みたいになっているみたいだけれど、既に状況は最悪で人間社会の中にまで魔族が浸透していて、魔族に対抗するために精霊たちが人間たちに与える「聖剣」と呼ばれる武器を、効率よく搾取するために対魔族用の人材を育成する魔法学園という教育現場を密かに人間に化けて浸透している魔族たちが掌握してるんですよ。
先生のほぼすべてが魔族で、生徒の少なくない数がやっぱり魔族で、ここで人間たちをある程度強くして聖剣を手に入れさせたあと、学校側が行う授業や魔物討伐の任務などを利用して、人間の学生を間引いていき、彼らの聖剣を奪取する、という養殖マガイのことまでやっているわけである。
えげつない。
この魔族たちがまた最悪で、絶対に人間種族と和解できない人側からすれば絶対悪なんですね。
なにしろ、人間を対等の生命と思っていない。会話は出来ても話をするつもりがない。まだ牛や豚なんかの方が家畜でも飼ってる人間に愛情を込められているんじゃなかろうか、ってくらいに魔族って人間の事を生き物としてすら見ていないんじゃないかな。
おもちゃ、弄んでいい声をしてなく玩具、くらいにしか思っていないのである。
ただそれだけなら、邪悪で人の心が欠片もない絶対悪、と蔑めばいいだけなんだけれど。たちの悪いことにこの魔族たちって、同族相手には普通の人間みたいに、深い家族愛があり、思いやりがあり、厚い友情があり、確かな仲間同士の絆があり、男としての矜持や、戦うものとしての誇りがあり、魔族としての意地があり、優しさや慈しみの心だってあるわけだ。情愛を持ち、笑いあい、悲しみを分け合い、共に歯を食いしばって苦境から立ち上がる心意気があり、恐ろしい状況でも負けない勇気がある。
素晴らしくまともな社会性を有した知的生命体なんですよね。
そして同時に、そんな同族に対しての愛を示しながら、その足元で欠片の尊厳も認めず人間種を踏みにじり、搾取し、弄び、悲鳴や断末魔、絶望のうめきを心地よさげに聞きながら、人間たちが壊れるまで遊び倒すのである。
おぞましいまでの残虐性と、とても素晴らしい人間性が完全に両立している。なんか、見ていて頭バグりそうな種族なんですよね、魔族って。
そんな魔族たちを、こっちはもう心底から魂から腐れきった邪悪そのものである主人公が、魔族たちが人間たちをゴミクズ以上に扱う凄惨な有り様を遥かに上回る残虐さで、残酷さで、悍ましさで蹂躙し、尊厳を破壊し、勇気も愛も何もかもを冒涜しながら皆殺しにしていくの。
見ていてもう悪そのものなのに、胸糞悪くなる所業ばっかりなのに……それが相手が同じおぞましい魔族だからなのか、不思議なほどの痛快感が伴うわけですよ。
先生や生徒たちに化けた魔族たちって、同じ同族相手にはほんとまともな人間性を示しているから、そのまともな人間性を欠片も持たないシャロンと比べると、魔族たちの方が遥かに真っ当な人間に見えてしまうんですよね。
しかし、その魔族たちも同じように人間たちの尊厳を踏み躙っていたのを目の当たりにしてきただけに、ざまぁみろ、の気持ちが浮かんできてしまうのです。
魔族たちの方がなんかまともに見えるのに、それでもやつらが惨めに殺されていく様子を見て、痛快を覚える、というのはなんか背徳感もあり、気持ち悪さもあり、頭のなかがバグりそう。
これでシャロンが頭の天辺から足の爪先まで嫌なクソ野郎だったら、嫌悪感も湧いてきてシャロンの行動に嫌気が指すんでしょうけれど……いや、実際全身これ肝、ならぬ邪悪の化身みたいな魂から腹の中まで真っ黒な鬼畜外道ですし、同じ人間相手でも殺したくて殺したくてたまらないご様子なのですが……。
でも、シャロンって同じ人間相手にはほぼ手を出さないのですよ。その人間が犯罪者だろうと、同じ人間たちを痛めつけるようなろくでなしでも、人でなしでも、この世界のルールに則って殺すことはないのです。倫理観とかがあるから、ではなく、ルールを守ったほうが好き勝手やれる、という理由に過ぎないんですけどね。
でも、そこで欲望に流されない、というのはやっぱり違うんですよ、快楽殺人者としても。
魔族なら好き放題やりたい放題殺しまくれるぜ、ひゃっはーー！ てな感じなんですけれど、だからこそまあ人間もついでにやっちゃっていいや、ってならないのはなにげに大きいんですよねえ。
なので、内心はともかくとして、シャロンって実働と結果だけ見るならば完全に人類側にとっての正義の味方であり、勇者そのものなわけですよ。
絶望の海に沈みつつある人類にとっての、最後の希望。世界を支配しようとしている魔族たちを、思うがままに蹂躙していく、死んだはずの勇者の亡霊。それは希望であり、人にとっての光なわけです。
中身が吐き気のする邪悪だろうが関係ない。
なかなか癖のある、というか読み手側にへんな癖を植え付けかねない結構な特異なる作品ですけれど、サイコパスでシリアルキラーの主人公と、あの同族間では真っ当な人間性を見せながら、他種族にはおぞましいばかりの邪悪という２つの側面を並列させている魔族という種族を、こんな風に掛け合わせて、あれだけの事をしているシャロンにヘイトを向けづらくしている、この構成のバランス感覚はとんでもないセンスを感じさせてくれます。いやこれ、このバランスめっちゃ難しいですよ。
魔族たちが潜伏運営する魔法学園に潜入し、まだ正体を魔族たちに見せないまま、じわじわと末端のバレないところから殺戮していっているシャロン。
学園でも魔族全体でも幹部クラスの大物相手にはまだ手を出していないけれど、相手らの方が大事な身内や部下たちを無惨に殺されて平静を失いつつあるので、これはまたとびっきりの鏖殺になっていきそうだ。果たして、この背徳の痛快感のバランスを今後も保っていけるんだろうか。シャロン、まじでクソ野郎だからなあ。これ、男ならやっぱムリーって感じになってたんかな。かわいいは正義の派生形なのかもしかしてｗ
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
