
【炒飯大脱獄】 えるぼー/絵葉 ましろ ガガガ文庫
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「わたしの脱獄、舐めんなよっ!」
サイレンが鳴り、監視塔のサーチライトが少女――柳葉蒼音を追う。
ここは上海――とある炒飯の監獄。
衣食住のグレードが炒飯で決定される狂った世界。
解放条件は、一年で千皿の炒飯を積み上げること。
「やってられるか脱獄だっ!!!」
世俗を断つ断獄壁、そびえ立つ豪鋼門、精神をえぐり削る懲罰房。
数々の障壁に立ち向かうのは、純白のコックコートをまとった四人の少女。
【反逆者】蒼音
【熱烈車輪舌】シャルン
【メモ魔のカンフー使い】メイリー
【疾風逃走】ウサギ
最後に降り注ぐのは、千皿の炒飯流星群。
――その果てに、少女たちはどこへ辿り着くのか。
前代未聞の炒飯プリズン・ブレイク、ここに開演。
応募総数1142作品。
斬新かつ奇想天外なストーリーで第19回小学館ライトノベル大賞の頂点に輝いた快作。驚異の新人・えるぼーが贈る人類未体験の炒飯大活劇。
みなさん、炒飯は好きですか? 私は好きです、大好きです。
料理は殆どしない自分ですけれど、炒飯は鉄鍋振って作ります。あの鍋を振るという行為は、米粒がバラけていく実感もあって、妙な楽しさがあるんですよね。
さても、料理なんぞ作ったこともない少女が一人、父親に騙されて船に載せられ、入国審査も受けずに放り込まれたのは、中国は上海近海のとある島。四方を壁で覆われた城塞、或いは監獄のごとき様相を呈した料理学校。
その名を上海炒飯大学。
料理を極めんとする料理人の卵たちが入学を切望する中国料理界の虎の穴。そしてこの門をくぐるものは一切の希望を捨てよ、な一度入れば出られない(嘘)大監獄。
そこに問答無用で放り込まれた主人公柳葉蒼音の、理不尽を蹴っ飛ばして囚われの束縛から脱出するための、大脱獄物語。それが、この炒飯大脱獄だ。
……って、脱獄を図ってたのは序盤だけで、途中から至高の炒飯を作るために四人の仲間たちと切磋琢磨して、上へ上へと駆け上っていく料理版カンフー映画みたいなのになっていくのですけれど。
脱獄はどうした!?
一応中国が舞台だから、って訳でもないと思うんだけれど、序盤の同じ班になった個性的な班員たちとのわちゃわちゃした衝突から、勢い任せで脱獄に巻き込んでいくドタバタ感は、妙に往年の香港映画のアクション・コメディを連想させてくれるものがありました。
息継ぎなしのノンストップで、ずっとドタバタしてるって感じがありましたもんね。大学側の管理官たちの、まさに刑務官といった風情の威圧感、不条理さ。最底辺の結果しか出せない自分たちに対する上位の同級生たちからの嘲り。それらに屈せず折れず反発して、とにかく脱出してやる。一切の説明も何もなく連れてこられて拉致監禁同然のありさまにさせられた、こんな牢獄めいたところから脱獄してやる! と、意気軒昂に班員たちを巻き込んで手段を問わぬ脱獄計画を実行に移していく、もうちょっと慎重に行動しろよ、と言いたくなるような情熱と憤怒と考えなしのドタバタ脱獄劇。
いや、まじで門を超えてもここ島なんだから、その先を考えておかないと結局逃げられんだろ。アホなのか?
アホでした。
まあそういうアホっぽい所が、ハリウッドなんかの映画の脱獄ものみたいなのと違って、70,80年代の香港映画の楽しさを想起させられたんですよねえ。
ところが、話は途中からゴロンゴロンと変転していきます。
主人公の蒼音は、この子いわゆる負けず嫌いなのでしょう。親に騙され、何も知らされずに監獄に放り込まれて、そこで毎日毎日作ったこともない炒飯を作らされて、朝昼晩とその炒飯を食べさせられ、千皿完食しないと卒業できない。しかも炒飯の作り方を教えてくれるわけでもなく、理不尽とも言える仕打ちにのたうち回るばかり。
ここでの脱獄という手段は、蒼音にとって理不尽に打ち勝つための手段であり、勝利を勝ち取るためのゴールだったはずなのです。
ところが、失敗を繰り返して懲罰房に入れられたりしているうちに、それでも絶対に脱獄してやると魂を燃やしていた蒼音の前に提示されたのは、歓迎の日と呼ばれる、自主退学が許される日でした。
別に脱獄なんかしなくても、この理不尽の監獄を出ることが許されたわけです。
しかしそれは、脱出が勝利ではなくただの遁走になってしまう裏返りの日ともなりました。
これまで蒼音が受けた理不尽を、蒼音が滾らせていた怒りの炎を、脱獄という形で炒飯大学のクソ野郎どもにぶつけて、勝利の凱歌をあげる、なんて事にならなくなってしまったわけです。
理不尽を強いてきた連中をぎゃふんと言わせることを断念して、尻尾を巻いて逃げ出すことを意味してしまったわけです。
しかし、そもそも蒼音は料理人なんかじゃありません。有名大学を卒業して大企業に務めてバリキャリになる事を目指していたただの学生です。炒飯なんて作ったこともありませんでした。
そんな彼女が、強制的に料理を強いられていた環境を逃げ出して、何も悪いことはないでしょう。
ただ、ただ、ただ、蒼音の気が済まなかったのです。この子、やられたらやりかえす、の精神でも根ざしてたんでしょうか。
やったらー、とばかりに開いた門に背を向けて、至高の炒飯を創り上げてこの学校の頂点に立つ事を、仲間達とともに誓うのでありました。
タイトルの大脱獄はどうしたーー!?
いやあ、ここからマジで脱獄のだの字もなくなって、仲間達と時に衝突しあい、時にぶつかりあい、時に馴れ合いながら切磋琢磨し、他の班との激闘を繰り広げながら、至高の炒飯を突き詰めていき、中国の武林の訓練場なお寺とかにありそうな塔の上のてっぺんを目指して駆け上がっていくわけですよ。
料理版スパルタンX。或いは料理の鉄人炒飯編みたいな感じで。いや料理の鉄人は勝ち上がって塔を登っていくとかないけれど。
でも脱獄ないんじゃ、タイトル嘘になっちゃわない!?
これはこれで面白かったんですけどね。理不尽に思われた校則や管理官たちの態度にも一定の論理があり、理由があり、生徒たちへの愛情と情熱があり。本気で真剣に炒飯に向き合えば、この大学の理念もまた理解できて頭の中に浸透してくる。
染まっていく。
作中で出てくる炒飯、美味しそうでしたよ。とはいえ、観念が強すぎてなにがどう美味そうなのかわからない皿もありましたけれど。
歴代の生徒たちの中でもぶっちぎりの問題児揃いとして名をはせることになる蒼音たち四人のメンバー。破天荒にしてその突破力は天元を貫くばかり。
ライバルとも言えるエリート中のエリートである劉星くん、もっぱら蒼音に見下してんじゃねえよ、と言われてましたけれど、マジであのスマートな物言いはシンプルに見下していただけだったのか。それなりに仲良いように見えて、蒼音の方も実は徹底的に線引いてたんだな、これ。
とはいえ、この大学のトップであり、父の恩師でもあった人を唸らせ、大陸料理界の重鎮たちを狂騒に追いやるほどの凄まじい炒飯を創り上げて、ついに頂点に立ち堂々とこの大学を卒業することが叶った蒼音たち。
万事めでたしめでたし、ではあったんだけれど、だから大脱獄は看板だけですか? 結局、あれだけ最初理不尽な目にあい、強制からの束縛、拉致されてからの監禁という状態に反発していたのに。結局、この枠組みに唯々諾々と従って、馴染んで、受け入れて、管理官たちに感謝しながら巣立ちを迎えた雛鳥たちの如く、外の世界に旅立っていく……のね? と、若干のがっかり感とともにこのグッドエンドを受け入れていたら。
最後の最後にやってくれましたよ。
彼女らにとっての勝利とは。相手の提示してきた難題を真正面から突破して自らを証明した上で、その枠組ごと蹴倒して、自らの力で壁を乗り越え門をこじ開け、飛び出していくこと。
ぎゃふんと言わせてやることだったわけだ。
大脱獄パーフェクトコンプリート。
最後にきっちりオチをつけてくれて、すっきりしました。ご馳走様。
料理は殆どしない自分ですけれど、炒飯は鉄鍋振って作ります。あの鍋を振るという行為は、米粒がバラけていく実感もあって、妙な楽しさがあるんですよね。
さても、料理なんぞ作ったこともない少女が一人、父親に騙されて船に載せられ、入国審査も受けずに放り込まれたのは、中国は上海近海のとある島。四方を壁で覆われた城塞、或いは監獄のごとき様相を呈した料理学校。
その名を上海炒飯大学。
料理を極めんとする料理人の卵たちが入学を切望する中国料理界の虎の穴。そしてこの門をくぐるものは一切の希望を捨てよ、な一度入れば出られない(嘘)大監獄。
そこに問答無用で放り込まれた主人公柳葉蒼音の、理不尽を蹴っ飛ばして囚われの束縛から脱出するための、大脱獄物語。それが、この炒飯大脱獄だ。
……って、脱獄を図ってたのは序盤だけで、途中から至高の炒飯を作るために四人の仲間たちと切磋琢磨して、上へ上へと駆け上っていく料理版カンフー映画みたいなのになっていくのですけれど。
脱獄はどうした!?
一応中国が舞台だから、って訳でもないと思うんだけれど、序盤の同じ班になった個性的な班員たちとのわちゃわちゃした衝突から、勢い任せで脱獄に巻き込んでいくドタバタ感は、妙に往年の香港映画のアクション・コメディを連想させてくれるものがありました。
息継ぎなしのノンストップで、ずっとドタバタしてるって感じがありましたもんね。大学側の管理官たちの、まさに刑務官といった風情の威圧感、不条理さ。最底辺の結果しか出せない自分たちに対する上位の同級生たちからの嘲り。それらに屈せず折れず反発して、とにかく脱出してやる。一切の説明も何もなく連れてこられて拉致監禁同然のありさまにさせられた、こんな牢獄めいたところから脱獄してやる! と、意気軒昂に班員たちを巻き込んで手段を問わぬ脱獄計画を実行に移していく、もうちょっと慎重に行動しろよ、と言いたくなるような情熱と憤怒と考えなしのドタバタ脱獄劇。
いや、まじで門を超えてもここ島なんだから、その先を考えておかないと結局逃げられんだろ。アホなのか?
アホでした。
まあそういうアホっぽい所が、ハリウッドなんかの映画の脱獄ものみたいなのと違って、70,80年代の香港映画の楽しさを想起させられたんですよねえ。
ところが、話は途中からゴロンゴロンと変転していきます。
主人公の蒼音は、この子いわゆる負けず嫌いなのでしょう。親に騙され、何も知らされずに監獄に放り込まれて、そこで毎日毎日作ったこともない炒飯を作らされて、朝昼晩とその炒飯を食べさせられ、千皿完食しないと卒業できない。しかも炒飯の作り方を教えてくれるわけでもなく、理不尽とも言える仕打ちにのたうち回るばかり。
ここでの脱獄という手段は、蒼音にとって理不尽に打ち勝つための手段であり、勝利を勝ち取るためのゴールだったはずなのです。
ところが、失敗を繰り返して懲罰房に入れられたりしているうちに、それでも絶対に脱獄してやると魂を燃やしていた蒼音の前に提示されたのは、歓迎の日と呼ばれる、自主退学が許される日でした。
別に脱獄なんかしなくても、この理不尽の監獄を出ることが許されたわけです。
しかしそれは、脱出が勝利ではなくただの遁走になってしまう裏返りの日ともなりました。
これまで蒼音が受けた理不尽を、蒼音が滾らせていた怒りの炎を、脱獄という形で炒飯大学のクソ野郎どもにぶつけて、勝利の凱歌をあげる、なんて事にならなくなってしまったわけです。
理不尽を強いてきた連中をぎゃふんと言わせることを断念して、尻尾を巻いて逃げ出すことを意味してしまったわけです。
しかし、そもそも蒼音は料理人なんかじゃありません。有名大学を卒業して大企業に務めてバリキャリになる事を目指していたただの学生です。炒飯なんて作ったこともありませんでした。
そんな彼女が、強制的に料理を強いられていた環境を逃げ出して、何も悪いことはないでしょう。
ただ、ただ、ただ、蒼音の気が済まなかったのです。この子、やられたらやりかえす、の精神でも根ざしてたんでしょうか。
やったらー、とばかりに開いた門に背を向けて、至高の炒飯を創り上げてこの学校の頂点に立つ事を、仲間達とともに誓うのでありました。
タイトルの大脱獄はどうしたーー!?
いやあ、ここからマジで脱獄のだの字もなくなって、仲間達と時に衝突しあい、時にぶつかりあい、時に馴れ合いながら切磋琢磨し、他の班との激闘を繰り広げながら、至高の炒飯を突き詰めていき、中国の武林の訓練場なお寺とかにありそうな塔の上のてっぺんを目指して駆け上がっていくわけですよ。
料理版スパルタンX。或いは料理の鉄人炒飯編みたいな感じで。いや料理の鉄人は勝ち上がって塔を登っていくとかないけれど。
でも脱獄ないんじゃ、タイトル嘘になっちゃわない!?
これはこれで面白かったんですけどね。理不尽に思われた校則や管理官たちの態度にも一定の論理があり、理由があり、生徒たちへの愛情と情熱があり。本気で真剣に炒飯に向き合えば、この大学の理念もまた理解できて頭の中に浸透してくる。
染まっていく。
作中で出てくる炒飯、美味しそうでしたよ。とはいえ、観念が強すぎてなにがどう美味そうなのかわからない皿もありましたけれど。
歴代の生徒たちの中でもぶっちぎりの問題児揃いとして名をはせることになる蒼音たち四人のメンバー。破天荒にしてその突破力は天元を貫くばかり。
ライバルとも言えるエリート中のエリートである劉星くん、もっぱら蒼音に見下してんじゃねえよ、と言われてましたけれど、マジであのスマートな物言いはシンプルに見下していただけだったのか。それなりに仲良いように見えて、蒼音の方も実は徹底的に線引いてたんだな、これ。
とはいえ、この大学のトップであり、父の恩師でもあった人を唸らせ、大陸料理界の重鎮たちを狂騒に追いやるほどの凄まじい炒飯を創り上げて、ついに頂点に立ち堂々とこの大学を卒業することが叶った蒼音たち。
万事めでたしめでたし、ではあったんだけれど、だから大脱獄は看板だけですか? 結局、あれだけ最初理不尽な目にあい、強制からの束縛、拉致されてからの監禁という状態に反発していたのに。結局、この枠組みに唯々諾々と従って、馴染んで、受け入れて、管理官たちに感謝しながら巣立ちを迎えた雛鳥たちの如く、外の世界に旅立っていく……のね? と、若干のがっかり感とともにこのグッドエンドを受け入れていたら。
最後の最後にやってくれましたよ。
彼女らにとっての勝利とは。相手の提示してきた難題を真正面から突破して自らを証明した上で、その枠組ごと蹴倒して、自らの力で壁を乗り越え門をこじ開け、飛び出していくこと。
ぎゃふんと言わせてやることだったわけだ。
大脱獄パーフェクトコンプリート。
最後にきっちりオチをつけてくれて、すっきりしました。ご馳走様。























































































































































































































































































































































































































































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