【軍神悪役令嬢ロアンナの救国譚 ~英雄の能力と幽霊の知識を借りて、勝利をつかみ取ります~】  来須 みかん/ しがらき 旭 電撃の新文芸

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敵は王宮にあり! 英雄の力と知識を武器に、この戦場で勝ち上がる!

侯爵令嬢ロアンナは、英雄の末裔である。
彼女の婚約者は、この国の王子・ジーク。妖精と称えられるほど美しいジークは、いつもロアンナを陥れるために愛人エリーと一緒に無理難題をつきつけてくる。
「ロアンナなら、できるよな?」
ロアンナは【幽霊が見える】という、英雄の能力を使い、通りすがりの幽霊に知恵を借りた。
幽霊の正体は、ロアンナと同じく英雄の末裔であり、兵法書や軍記が好きな辺境伯ライズ。
ライズはロアンナに軍記の知識を与え、ふたりはジークたちを打ち倒す。

ロアンナの戦場は王宮。
英雄の能力×軍記の知識を使い、王宮で勝ち上がる!


軍神悪役令嬢なんてタイトルについているから、てっきり女将軍として主人公が敵軍を蹴散らしていくような戦記ものだとばかり思っていたのだけれど、第一巻を読んだ限りではそういう戦記的な要素は一切無し。
ロアンナも、英雄の末裔ではあるけれど自身に武術や軍隊を指揮した経験なんてものはなく、正統派の貴族令嬢なんですよね。舞台も未来の王太子妃として王太子の婚約者となり、既に宮を与えられているのでそこを中心に王宮でのお話となっている。
なんで軍神悪役令嬢というタイトルになったんだろう。確かに、ロアンナの懐刀として軍師的なポディションにつく幽霊の辺境伯ライズは、先祖の異世界人がもたらした異世界の知識から、軍記物をベースにした知恵……孫子の兵法の引用や、軍記物のエピソードから得たアイデアなどを用いて、色々と策略や駆け引きのやり方を授けてくれるんだけれど、それらが活用されるのは王太子との権力争いで、いうなれば宮廷劇の範疇なんですよね。将来的に、王族との戦いになっていくんだろうか。

ともあれ、政略結婚……結婚はまだしていないものの、政治的な要因から婚約しているロアンナと王太子のジークはもう犬猿の仲。お互いに嫌いあっていて、ロアンナは義務感だけで仕方なく相手をしている状態。お互いに婚約破棄したいと思っているものの、自分から言い出すことは家の大きな失点になってしまうために、王太子の場合は自分のメンツとかプライドもあるんだろうけれど、相手に婚約破棄を言い出させて責任を負わせようとしているわけですね。
そのために、王太子は嫌がらせに近い難題をロアンナにつきつけて、それをロアンナは馬鹿正直に受けて立っていたわけです。ただ、この対処法は王太子の無茶振りな言い分に従ってしまっているとも言えて、十全難題をやり遂げても失点がつかなかったってだけで、どうやったって加点はされず、ロアンナに王太子妃として相応しくないという印象が累積していってしまう状態だったわけです。
やり方としては、全然ダメなやり方でした。真面目で負けん気が強くて、誠実で正しくあらんとする姿勢が、この場合は悪い方に出ていたのでしょう。

そんな折に、幽霊が見える彼女が出会ったのが、辺境伯ライズの幽霊だったのでした。幽霊とはいうものの、早晩この人実は死んでないんじゃないの?という事がわかって、ほぼ生霊扱いなのですが。
ともあれ、ロアンナと同じく過去に異世界から召喚された英雄たちの末裔一族だったライズ卿。本人はのほほんとして穏やかというよりのんびりした好青年という感じの男なのですが、彼は理不尽を強いられ不遇をかこつロアンナの境遇に憤り、彼女に知恵をさずけてくれるわけです。
賢者とか軍師というにはいささか頼りないけれど、本心から自分のことで怒ってくれて、辛い思いをしてきた自分を心配してくれるライズの幽霊をロアンナは信頼し、彼のアイデアを下に王太子がまたぞろ仕掛けてきた難題に、ただクリアしようとする受け身の姿勢ではなく、それを利用して王太子本人ではなくその周囲の人心に対してアプローチを仕掛けることで、徐々に情勢が変わってくるのでありました。
もちろん、人の心に訴える、これまでと違った印象を与える、という方策に対しても、ロアンナ自身に人の心を惹きつけるものがなくてはなりません。彼女にはそれに相応しい誠実さがあり、責任感があり、他人を思いやる心がありました。
ただ、そうしたロアンナの実態が、そして王太子の実態が王太子の権勢と小賢しい振る舞いによって見えづらくなっていて、それをライズの知恵によって得た駆け引きのコツによって、暴かれていくわけですな。

まあ王太子がほんと、クズ野郎のゲス野郎なんで、その卑劣で卑賤な心根が見えるようになれば、誰もこいつについていこうと思わなくなりますわなあ。
ってか、あまりにもろくでなしなもんだから、当初は婚約破棄を目指していたロアンナも、こいつに国政を任せていたんじゃ、国が滅ぶし婚約破棄してもあとで難癖つけられてろくでもない事になってしまう、と逆にしばし婚約を維持して、こいつなんとかしないと、を実行することにしてしまうんですよね。
もう王太子の性格や人格、人間性の改善はクズすぎて不可能だし、わざわざロアンナもいくら責任感が強くてもそこまでやってられるか、てなもんなので、どうも王家の力を削ぐ方向で動いているみたいだけれど……。
王太子だけが問題なのかと思ったら、どうも他の王族も王妃様含めてろくなやついないみたいなので、これ将来的には今の王族リストラする方向で進んでるのかな、これ。
騎士団長からも忠誠を得るどころか、害虫みたいに軽蔑されてるような状況になってるからなあ、王太子。王家自体、今もうそんな忠誠向けられてないんじゃないのか、これ?
既に、辺境伯のライズにも継承権がありそうなニュアンスの話が出ているし、話の進んでいく方向性が見えてきたような、と思ってたんだけれど、肝心のライズの器の方、今生霊となってロアンナのところにいるのがライズの中身だとしたら、彼の肉体の方にはなんか知らん人が勝手に入って勝手に動かしているみたいなので、そっちはそっちで不穏どころか大問題なんじゃない?
ライズくん、戻る体がないと仄かに想いを寄せているロアンナさまと結ばれないよ?