
【フロスト・クラック ~連続狙撃犯人の推理~】 時雨沢 恵一/黒星 紅白 電撃文庫
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日本で起きている連続狙撃殺人事件をご存知ですか?
「日本で起きている、連続狙撃殺人事件をご存知ですか?」
――ある日、海外に住む男のもとに、若い警官から突然電話がかかってくる。猟銃が使用されたと思われる事件。その警官は、犯行の状況を語り、かつてハンターだった男に推理を求める。男は、自らの想像を語り、実行犯のトリックを暴いていく。見事な推理だと喜んだ警官だったが、事件はそのまま解決へとは向かわなかった。
全てが電話の会話だけで構成されたクライムサスペンス。
複数の人物が織りなすその物語が示した衝撃の結末とは――。
……面白かった。
いやあ、凄えなあこれ。めちゃくちゃ面白かった!!
いやいやいや、なんぞこれってなもんですよ。こんなん普通書けるの!? 書いてみたらなんかスラスラ書けた、みたいな事をあとがきで書いてらっしゃったけれど、書けても普通はこんなに面白くならないと思いますよ?
会話文だけで構成される小説なんて!!
地の文無いじゃん!!
無いんですよ、地の文。なのに、自分読初の冒頭の初っ端からぐいぐいとお話そのものに引き込まれてしまって、しばらく本作が会話文だけで構成されている、という事実を意識していなかったと思います。
事前に何の情報も頭に入れていなかったから、特になんも考えんと読み始めたんですよ。そんで、あまりにスルスルと会話の内容に没頭してしまって、これが会話文だけしかないとか地の文がない云々には気づかなかったというか、まったく意識が向かなかったというか。
そんなことすらどうでも良くなっていた、というべきか。
だって、面白いんだもん!!
というか、普通会話文だけだとそこから広がるイメージって極小の狭いものにはずじゃないですか。それがなんでこんな臨場感とその場の情景や雰囲気、空気感がくっきり感じられるような描写になってるの!? 地の文があっても、これほどの情景描写って難しいと思うんだけれど。
もちろん、もちろん! それはスズキくんとカレの会話の内容が、事件の概要を説明し幾つかの質問と解説によって当時の状況をより詳細に、詳らかにしていき、をカレが安楽椅子探偵よろしく真相を紐解いていく、という形だからこそ。
つまり、会話の内容そのものが当時の事件の様相を事細かに描写していくものだった、お互い相手にその状況が伝わるように会話をしていた、という理由もあるんでしょうけれど。
それにしても、それにしてもですよ。読んでいる間中、実際に狙撃事件が起こった時の様子がありありと脳裏に浮かびながら、それを解説解体していく二人の軽快な掛け合いに引きずり込まれていって、まさに没頭というべき勢いで、お話にのめり込んでいきました。
なにより、この現代の必殺仕事人、とでもいうかのような連続狙撃事件の概要そのものが面白いという他無いものでしたし、その事件の奥に秘められていた真実は、最初に想像……見えていた、それが事実だと思っていたものが分厚いベールによって覆い隠されていたもので、それが一枚一枚、真実というベールをめくりあげていく行為によって引っ剥がされる度に、まったく見えるものが変わってくる、これがミステリーというもので摂取できる快感の真骨頂の一つを、これでもかと味わえた作品だったわけですよ。
まあこいつ、怪しいだろう、というやつは疑う余地なく怪しかったのですが。
でも、本作において重心は全くそこではなかったわけです。
そこが本作において尤も重要な、真なる重心であった、という部分については本当に最後の最後まで意識させられなかった。気づかなかった。本人が真相を語るまで、まったく欠片も想像していなかった。
そういう意味では、まさにミステリーの醍醐味である
そういうことだったのかぁ!!
を堪能させられたんですよねえ。なんだかんだ、ミステリー系統はこれが一番楽しい瞬間なんだ。
口絵のあのイラストも、あとになってみればそういう事だったのか、って最初読んだ時はまったく意識せずスルーしていて、あとで見返してこんなイラストあったんだ、と気づいたくらいだったのですが。
モロじゃないですか。あからさまなくらいじゃないですか。でも、最後まで読まないとこれは意味わからんと思われ。
いやしかし、そうか。そういう事だったのか。カレのあの性急と思えるほどの決断は、若干の違和感というか、なんでそこまで危険を犯すのか。という疑問は生じてはいたんですよね。
確かに、身元を辿られる危険性はあったにせよ、ですよ。でも、そこまで即決でその行動を選択するだけの理由が、アクセルを踏むだけの重さがあったか、というと「え!?」とは思う即断ではあったと思うんですよ。
スズキくんからしても、まさかそうくるとは思ってなかったからこそ、迂闊で軽薄ではあったけれど、接触を図ったんでしょうし。
いやもう、スズキくんのそれはこれが藪蛇の典型例です!というくらい見事な藪蛇だったわけですけれど。
でも、真実を知ってしまうと、スズキくんがどれほどの地雷を踏み抜いてしまっていたのかがよくわかるし、同時にカレの即断がどれほど凄まじく重たい、本当の意味で決定的な決断であったのかが知れて、別の意味でよくぞそこまで即決した上で最後までやり遂げたよな、ともうなんとも言えない複雑な想いを伴う感嘆の吐息を漏らしたものです。
そしてイモトさんの回顧からくる、とあるラインを越えた人に訪れる変化。これはもうなんか、あれですね。上っ面の倫理とかこうあるべきという常識?を引っ剥がした、剥き出しの生々しさが感じられて、ぞわぞわっとするものがありましたよ。
そっちの顔の方が好きです、って台詞、考えてみると凄まじいですよね。本当に凄まじい。どんな感情なんだ、と問いたくなるけれど、この子の様子から考えると感情とか考えとかを完全に抜いた本能から生じた台詞のようにも思えます。
はからずも、イモト刑事とカレの会話の中であったこの子の事を表現する描写、あれがもうこの子の根本に根差す在り方になっているようにも、この子の言動を見ているとそう思うのです。
それをもう、どうこうと評価する気にもならないのですけれど。ただ、そう獣だって幸せになれるのでしょう。
カレはどうなんだろう。濁流に押し流されるようだったとはいえ、カレはずっと決断し続けているわけです。それは自分の人生を吹っ飛ばすような決断であり続けたわけです。でも、それはカレにとってほんの一瞬行き逢ってしまった子のためなんですよね。特に、今回のそれは自分から一線を飛び越えるそれだった。ある意味、自分なんかよりも遥かに場数を踏んだ本物を相手取る、命を懸けた戦いだったわけです。なにがそこまで、カレを駆り立てたのか。なにがカレをそこまでさせたのか。
きっとカレ自身にもわからない、人の心のミステリーだよなあ。
この読み終わったあとの、モヤっとするようなスカッとするような、ゾッと寒気の襲われるような、ほわっと心温まるような、様々なものが矛盾したまま複雑に揺蕩う読後感はちょっと覚えがありません。
こういう感覚は解釈せず、ただあるがまま感じるのが読書の醍醐味、というものかもしれませんね。
面白かった。たまらん面白さだった。つまるところ、そこなのでしょう。
にしても、本作にも凄まじいまでのガンマニアっぷりが随所に盛り込まれてるなあ。自分は詳しくなくても、こういうマニアごりごりの解説って、頭に入らなくてもニコニコと楽しく感じながら流し読めるタチなので、むしろ好きな方なのですが。
いやあ、凄えなあこれ。めちゃくちゃ面白かった!!
いやいやいや、なんぞこれってなもんですよ。こんなん普通書けるの!? 書いてみたらなんかスラスラ書けた、みたいな事をあとがきで書いてらっしゃったけれど、書けても普通はこんなに面白くならないと思いますよ?
会話文だけで構成される小説なんて!!
地の文無いじゃん!!
無いんですよ、地の文。なのに、自分読初の冒頭の初っ端からぐいぐいとお話そのものに引き込まれてしまって、しばらく本作が会話文だけで構成されている、という事実を意識していなかったと思います。
事前に何の情報も頭に入れていなかったから、特になんも考えんと読み始めたんですよ。そんで、あまりにスルスルと会話の内容に没頭してしまって、これが会話文だけしかないとか地の文がない云々には気づかなかったというか、まったく意識が向かなかったというか。
そんなことすらどうでも良くなっていた、というべきか。
だって、面白いんだもん!!
というか、普通会話文だけだとそこから広がるイメージって極小の狭いものにはずじゃないですか。それがなんでこんな臨場感とその場の情景や雰囲気、空気感がくっきり感じられるような描写になってるの!? 地の文があっても、これほどの情景描写って難しいと思うんだけれど。
もちろん、もちろん! それはスズキくんとカレの会話の内容が、事件の概要を説明し幾つかの質問と解説によって当時の状況をより詳細に、詳らかにしていき、をカレが安楽椅子探偵よろしく真相を紐解いていく、という形だからこそ。
つまり、会話の内容そのものが当時の事件の様相を事細かに描写していくものだった、お互い相手にその状況が伝わるように会話をしていた、という理由もあるんでしょうけれど。
それにしても、それにしてもですよ。読んでいる間中、実際に狙撃事件が起こった時の様子がありありと脳裏に浮かびながら、それを解説解体していく二人の軽快な掛け合いに引きずり込まれていって、まさに没頭というべき勢いで、お話にのめり込んでいきました。
なにより、この現代の必殺仕事人、とでもいうかのような連続狙撃事件の概要そのものが面白いという他無いものでしたし、その事件の奥に秘められていた真実は、最初に想像……見えていた、それが事実だと思っていたものが分厚いベールによって覆い隠されていたもので、それが一枚一枚、真実というベールをめくりあげていく行為によって引っ剥がされる度に、まったく見えるものが変わってくる、これがミステリーというもので摂取できる快感の真骨頂の一つを、これでもかと味わえた作品だったわけですよ。
まあこいつ、怪しいだろう、というやつは疑う余地なく怪しかったのですが。
でも、本作において重心は全くそこではなかったわけです。
そこが本作において尤も重要な、真なる重心であった、という部分については本当に最後の最後まで意識させられなかった。気づかなかった。本人が真相を語るまで、まったく欠片も想像していなかった。
そういう意味では、まさにミステリーの醍醐味である
そういうことだったのかぁ!!
を堪能させられたんですよねえ。なんだかんだ、ミステリー系統はこれが一番楽しい瞬間なんだ。
口絵のあのイラストも、あとになってみればそういう事だったのか、って最初読んだ時はまったく意識せずスルーしていて、あとで見返してこんなイラストあったんだ、と気づいたくらいだったのですが。
モロじゃないですか。あからさまなくらいじゃないですか。でも、最後まで読まないとこれは意味わからんと思われ。
いやしかし、そうか。そういう事だったのか。カレのあの性急と思えるほどの決断は、若干の違和感というか、なんでそこまで危険を犯すのか。という疑問は生じてはいたんですよね。
確かに、身元を辿られる危険性はあったにせよ、ですよ。でも、そこまで即決でその行動を選択するだけの理由が、アクセルを踏むだけの重さがあったか、というと「え!?」とは思う即断ではあったと思うんですよ。
スズキくんからしても、まさかそうくるとは思ってなかったからこそ、迂闊で軽薄ではあったけれど、接触を図ったんでしょうし。
いやもう、スズキくんのそれはこれが藪蛇の典型例です!というくらい見事な藪蛇だったわけですけれど。
でも、真実を知ってしまうと、スズキくんがどれほどの地雷を踏み抜いてしまっていたのかがよくわかるし、同時にカレの即断がどれほど凄まじく重たい、本当の意味で決定的な決断であったのかが知れて、別の意味でよくぞそこまで即決した上で最後までやり遂げたよな、ともうなんとも言えない複雑な想いを伴う感嘆の吐息を漏らしたものです。
そしてイモトさんの回顧からくる、とあるラインを越えた人に訪れる変化。これはもうなんか、あれですね。上っ面の倫理とかこうあるべきという常識?を引っ剥がした、剥き出しの生々しさが感じられて、ぞわぞわっとするものがありましたよ。
そっちの顔の方が好きです、って台詞、考えてみると凄まじいですよね。本当に凄まじい。どんな感情なんだ、と問いたくなるけれど、この子の様子から考えると感情とか考えとかを完全に抜いた本能から生じた台詞のようにも思えます。
はからずも、イモト刑事とカレの会話の中であったこの子の事を表現する描写、あれがもうこの子の根本に根差す在り方になっているようにも、この子の言動を見ているとそう思うのです。
それをもう、どうこうと評価する気にもならないのですけれど。ただ、そう獣だって幸せになれるのでしょう。
カレはどうなんだろう。濁流に押し流されるようだったとはいえ、カレはずっと決断し続けているわけです。それは自分の人生を吹っ飛ばすような決断であり続けたわけです。でも、それはカレにとってほんの一瞬行き逢ってしまった子のためなんですよね。特に、今回のそれは自分から一線を飛び越えるそれだった。ある意味、自分なんかよりも遥かに場数を踏んだ本物を相手取る、命を懸けた戦いだったわけです。なにがそこまで、カレを駆り立てたのか。なにがカレをそこまでさせたのか。
きっとカレ自身にもわからない、人の心のミステリーだよなあ。
この読み終わったあとの、モヤっとするようなスカッとするような、ゾッと寒気の襲われるような、ほわっと心温まるような、様々なものが矛盾したまま複雑に揺蕩う読後感はちょっと覚えがありません。
こういう感覚は解釈せず、ただあるがまま感じるのが読書の醍醐味、というものかもしれませんね。
面白かった。たまらん面白さだった。つまるところ、そこなのでしょう。
にしても、本作にも凄まじいまでのガンマニアっぷりが随所に盛り込まれてるなあ。自分は詳しくなくても、こういうマニアごりごりの解説って、頭に入らなくてもニコニコと楽しく感じながら流し読めるタチなので、むしろ好きな方なのですが。























































































































































































































































































































































































































































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