
【顔の良すぎる幼馴染と、気づいたら朝チュンしてた件】 星光 音音 /葛坊 煽 角川スニーカー文庫
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「もう、離してあげない」 高嶺の花に甘く深く愛される泥甘ラブコメ
「おはよう、伊織」
目が覚めると、隣に生まれたままの姿の美女がいた。
学園No.1の絶対的美女にして僕の幼馴染・雪村美月。
圧倒的な美貌とカリスマ性で誰も寄せ付けない高嶺の花は、なぜか僕のベッドで、聖母のように微笑んでいた。
事の始まりは一ヵ月前、僕が通称『学年で二番目に可愛い』と人気の美少女柏木さんに告白されたこと。
幼い頃からずっと好きだった美月は僕には手の届かない存在で、追いかけることもとっくに諦めていた。
なのに。
「――待ってるからね。ずっと」
美月は全部分かった顔で微笑みかけてきて――。
美しすぎる高嶺の花に蕩けるほど甘やかされる、純愛ラブストーリー。
これは、思っていたよりもかなり、かなり不穏な話っぽいぞ。
ごく最近多くなってきている、恋愛関係に発展する前に勢いや成り行きで肉体関係を結んでしまい、そこから人間関係を再編成していく幼馴染とのラブストーリー、とは少し違っていて。
この巻においては、そのタイトルの展開は最終局面なんですよね。
ちゃんと主人公が告白して、幼馴染がそれに応えて、ちゃんと恋人という関係になってから朝チュン展開になっているので、気がついたら……という話では実はなかったりする。
主人公の伊織からすると、気がついたら、と言いたくなるのもわかる怒涛の展開だったかもしれないが。
それだけなら、単なるハッピーエンドで終わるラブストーリーなんですけどねえ……。どうも事はそう単純ではないようで。
二人が結ばれたあとのエピローグまで、メインヒロインの美月はあまり直接伊織には関わってきません。物語が伊織を中心に進むとしたら、彼女は彼が演じる舞台のさらに上の演台からじっと彼のことを見ているかのような、少し離れた距離感で……しかし、ずっとその場にあり続けています。
ふとした瞬間に、伊織の傍らに出現し、彼の心に楔を打つように存在を示して、またふわりと距離をおいて遠くからじっとこちらを見つめ続けてくる、みたいな不思議な存在感を見せ続けるのですけれど、意外と直接は関わってこないんですよね。
……いや、自宅に帰るとこの幼馴染、ほぼ同棲感覚で一緒に暮らしているかのように過ごしているので、冷静に考えると学校以外では殆ど一緒にいるはずなのですが。
微妙に物語の中心軸から外れ、しかし太陽か月のように物言わぬ天体が如くあり続ける圧倒的存在感なのは、彼女の内心が一切見えてこないからだったのでしょうか。
ほんと、何考えているか何も描かないんですよね。学校では人間というよりも美の化身めいた人間というあり方から逸脱しているかのような硬質のオーラを見せながら、自宅ではふっと伊織だけに見せる人の体温を感じさせる柔らかさ。
って、所で単純にこの幼馴染は感情を表に出さないタイプというだけで、内心は伊織のことしか見ていない両片思いの関係なんだろうなあ、とありふれた不器用なクール美少女系統だと思っていたわけです。
実際問題、美月の動きって本当に最小限で、伊織に対して何も求めず何も与えず何も訴えず、その距離感を保ち続けただけ。そしてただ見つめ続けただけ。
一つだけ動きを見せたのは、彼が柏木さんに告白されたのを聞いた時だけ。いつも通い妻していたのをやめて距離を置くわけです。
これがもう伊織には覿面に聞いていて、美月が家にいない生活、日常、当たり前の日々というものにジクジクと深刻なダメージを受けていき、自分にとっての美月の存在の重さを改めて認識していくわけですが……。
これ、最初に読んでいた時は普通に伊織のことを気遣って、彼の心の整理が出来るまで距離を置こうとしていたのか、と思っていたのですけれど。彼女の本質を見てしまったあとだと、これ明らかに意図的に伊織に自分の存在を刻みつけようとしていますよね。
絶対に自分のもとに帰ってくる、と絶対の自信確信を持ちながら、そのうえで柏木さんの告白に動揺している彼の心を揺さぶるために、揺れて大きく振れた心の在り処が自分の所に飛び込んでくるように、意図して揺さぶりをかけてきた、としか思えなくなってきた。
魔性である。
元々、美月の美貌って学校一の美少女というレベルを通り越して、完全に人心を惑わす傾国レベルなんですよね。本人が人形じみた無機質さをまとっていることもあってか、視る人の正気を奪う化外の魔性かとしら思えてくる。
もう一人のヒロインである柏木さん、彼女は二番目に可愛い、なんて言われているんだけれど、はっきり言って美月とはステージや次元が違っているんですよね。それは誰よりも柏木さん本人が痛感していて、美しさを比べて悔しがっているわけじゃないんだけれど、何をやっても勝てない相手、手の届かない高嶺の花の代替え品のように扱われることへの劣等感、悔しさを糧にして頑張っているような娘なのだ。敵わじとわかっていてもなお、挑むことの何という勇気と気概の持ち主か。しかも、卑怯な真似はせず、美月の足を引っ張って落とそうとするのではなく、ひたすら自分を高めて追いつこうとしているあたり、高潔なくらい真っ直ぐな女性なわけですよ。
そんな彼女が、代替ではなく自分という女性を見てくれて、大事に扱ってくれた、ということで伊織に恋し、これもまた堂々と告白してくるわけですよ。
これに関しては、伊織は美月の事を想っているわけだから、きっぱりと断るのだけれど、柏木さんは片思いしているという伊織くんを諦めず、自分に振り向いてもらうべく健気にアプローチを続けるわけです。
その想い人が、絶対に負けたくないと思いながら絶対に敵わないとわからされている雪村美月の事しか眼中にないのだと、知らないままで。
これほんと残酷なんですよね。伊織は、ちゃんと告白を好きな人がいるから、と断っているわけだから、やるべき事はやっていると思うんだけれど、それでも自分の想い人を柏木さんに明かさないまま、彼女のアプローチを拒絶しきれず絆されてしまい、仲の良い友達関係を維持してしまう、というのはやっぱり残酷ですよ。
柏木さん、ただ振られるなら失恋のショックで済む……いや、それでも相当傷ついてるんだけれど、その相手が美月だと知ったら、ちょっともう立ち直れなくなるんじゃないか、と心配になってくる。
柏木さん、散々美月に負けたくないという心情を、伊織に語ってましたからね。ミスコンでもうワンチャン、美月に勝負を挑んで良い所をみせることで、伊織を振り向いてもらおうと頑張っていたのに。
ずっと好きだけれど自信がなくて告白できなかった、という片思いしていた幼馴染を、念願かなって結ばれましたと言いながら連れてこられたら、それが雪村美月でしたとなったら、脳が焼かれて死ぬぜこれ。
まあこれが、かつての挫折によって自信喪失し、卑屈とすら言える自己肯定の低い人間になってしまった主人公が、もう一度挑戦することで自尊心を取り戻し、高嶺の花である幼馴染の隣に立てるだけの男になるという自信を得て、告白してくるのを、幼馴染の方もじっと信じて待っていた。
というだけなら、キレイな形をしたラブストーリーで終わっていたんだろうけれど。
最後の美月の独白で、色々と覆ってしまうんですねえ。
この女、もしかして意図して男を駄目にする女、なんじゃないのか?
そして、駄目になってどうしようもなくなってしまった男を自分無しでは生きられなくして、一生囲ってしまおう、とか思ってる感じ? 或いは、そういう低俗なヒモ関係レベルの階梯の話じゃなく。
相互依存レベルを最大級に満たしきった上で、半ば監禁の勢いで抱え込んで、余人が介入できない物理的に二人きりの世界に閉じこもろうとしている?
しかも、美月の思惑からするとそれを伊織が意識しないように、自覚しないように、自ら望むように誘導しようとしているっぽいんですよね。
……問題は、いや問題にならないのか? ともかく、その結末であっても、あながちバッドエンドではなく、二人が幸せならハッピーエンドというのも間違いじゃないっぽいところがなんともはや。
文字通り国を傾けかねない、世界を壊しかねない絶世の美貌、その毒が世界にばらまかれるのではなく、ただ一人の男にだけ注がれる、というのは社会的に見ても世界平和になるんじゃないの? などとすら思えてしまう。
あとがきによれば、むしろこの一巻は前日譚であり、本番はここからみたいなので、果たしてこの二人の物語がどうなっていくのか。ちょっと予想がつかないので楽しみであります。










































































































































































































































































































































































































































































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