【毎度、最強ヤマネコ一家です 団員各位、またS級傭兵団をやるので戻ってきなさい】  伊達康/みきさい MF文庫J

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帰ってきた元伝説たちを、二代目の少女がまとめあげる!?

かつて大陸中に名をとどろかせた最強の傭兵団、ヤマネコ一家。その再興を掲げる前団長の娘ルディアの元に戻ってきた元最強の団員のひとり、“七爪”のクラーチェだが…すっかり丸くなった彼は“最強”とはほど遠かった。それでもかつての一家の仲間を呼び戻すべく、些細な仕事にも全力を尽くすルディア。果たしてふたたび一家をまとめあげ、大陸にその名をとどろかすことができるのか…



これ、以前のヤマネコ一家が解散した理由って、特別な悲劇とか惨劇とか避けられない特殊な事情があって無念のうちに解散したり、離散してしまった、ってわけじゃなくて。
普通に初代のカリスマ団長が病気で亡くなったので、穏当にみんなそれぞれ別の道に行ってしまった、という話なのか。
特に団長の娘であるルディアに反発してみんな消えていったとかでもなく、初代の親父さんはルディアに傭兵団を引き継がせるつもりはなく、そもそもルディアが傭兵になるのも反対していたから、晩年に傭兵団に関する資産や不動産は処分しちゃってたのね。
なので、ルディアが二代目団長として第二期ヤマネコ一家をはじめたのは、完全に自分で拠点だった店を買い戻して自力で再建しようとしているので、初代が築き上げた超一流の組織をそのままぼんぼんの二代目が引き継いだって話とはまるで違うわけですね。
とはいえこれだと、実績あるヤマネコ一家も一度実績リセットされて、最初からやり直し。傭兵ギルドに登録しながら、街のお使いみたいな依頼を引き受けてコツコツと実績を重ねる日々。
七爪と呼ばれたかつてのS級傭兵たちも、ルディアが戻ってこいと言ったからとてホイホイと戻ってくるようなタマではなく、それ以前にどこに居るのかもようとして知れない状態なわけだ。
団員として参加しているのは、フラッと戻ってきたクラーチェのみ。
そんな彼も、昔はビンビンに尖っていて触れる相手にゃ噛みつくぜ、みたいな狂犬模様だったのが、団の解散後ふらふらとあちこちを放浪した際にあれこれと人生経験を積んだらしく、随分と丸くなって人間出来上がって、かつてはお子様なルディアが喋りかけるのも躊躇うほど危険な雰囲気を醸し出していた男が、今や人好きする世話好きな好青年であり、拠点の店を切り盛りする客商売もなんのその、の社交性に優れた青年になっていたわけです。
おまえ誰だよ?! という変化ですねえ。
本作は、そんな時間の経過によって訪れる変化。良くも悪くも人は変わる、というのがテーマらしくて、再会するかつての家族同然の仲間たちは、完全にキャラ変わった状態で現れるのですが……。

読んでる限りだと、むしろこれって良くも悪くも人って根本変わらないよね、という話なんじゃないだろうか。
クラーチェも、あとで再会するもう一人の七爪のテレアも、かつてとは別人みたいにキャラ変わっているのですけれど、キャラクターは変わっていても根っこの人格、性格、人となりはやっぱり変わってないんですよ。
人間、そうそう変わるもんじゃないって。
もし、年月によって変わるところがあるのなら、それは経験を積んだ成長であり、或いは堕落した結果の怠惰であり。
本当の意味でその人の根本、根源、芯となる部分が変わるってのはやっぱり難しいし、変わるなら変わるだけの大きな理由があると思うんですよね。
そういう意味では、クラーチェの変化はまあ年を経ていろんな人生経験積んだ成長だと思うし、テレアのあれは……あれは迷走だろ。趣味というべきか、昔に抱いた夢や想いの実現への執着というべきか。
実際、あんまり自分でもしっくり行ってないような、納得できてないような、ほんとにこれがイイ、とは別に思ってないだろ、あのキャラ変。
それでももとに戻さないのは意地なのか、ムキになってるのか、それはそれである程度馴染んでしまったのか。
でもまあ、中身は変わってないよね。
むしろ、傍目変化がないような人物こそ、じわじわと変質していた、とも言えるんじゃないだろうか。
何も変わらない、かつて先代団長が居た頃からその本性を隠していた人が、結局何も変わらないまま揺らがないまま、そのありようを貫こうとして……実は彼女、ルディアに一番芯となる部分に確かな侵食を受けていた、というのはこれ、先代でも変えられなかったものをルディアが長い時間かけていたとしても、変えることができていた、という意味で先代を上回るカリスマを見せた、って話でいいんじゃないでしょうか。
この子、ほんと二代目というには根性が据わっているというか肝が太いというか、めげないブレない動じない。致命的な決別ですら、んなもん知るかぁ、とばかりに我を押し通せるあたり、先代の頃からの団員からすると、みんなの愛娘であり末の妹であり、庇護し可愛がり守ってあげたいと思う対象だったと思うのだけれど、二代目団長としての姿はもう見事に自分が先頭に立って率先してガンガンみんな引っ張っていく、という二代目にあるまじきタイプなんだよなあ。
見ていて気持ちがいい女傑ですよ。
それでいて、わりと末っ子の甘え上手なところもあって、ちゃんと可愛がられるタイプでもあるよねえ。

面白いのが、彼女の秘めていた真の力、先代が特に隠そうとしていた出自であり、災厄を招きかねない特殊能力が、なんか主人公とかヒロインにあるまじき力であるところでしょう。
そして、父親に厳に戒められて、それを使うなという約束を今まで堅実に守ってきたのに。
いざとなれば、全然使うのためらわないその度胸というか、悪びれなさというか。いやまじで、開き直り方があけっぴろげ過ぎて肝が太いとかのレベルじゃないですよw 
今の所、クラーチェはほぼ保護者感覚で彼女の事を見守っていますけれど、現状でもだいぶ振り回されている事からもわかるように、これ見守るとか言ってられないくらい引きずり回されていきそうだなあ。
どんどんと周囲に人が増えるほど、パワフルになっていく予感がするヒロインです。クラーチェと二人でやりくりしていた時よりも、テレアが戻ってきてからのイキイキ具合も全然違いますし。
これは続刊出るなら、出るほどに面白くなっていきそうなタイプの作品だと感じています。先が楽しみ。