【界獣墓場のフォーリナー 1.界獣と令嬢】  海道左近/モリチカシュウト HJ文庫

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異世界に落ちた少女は水晶の界獣を宿して戦う!

「何で人間が怪獣になってるのー!?」 ある日、『界獣』を操る転移者たちが跋扈する異世界『界獣墓場(セメタリ―)』へと迷い込んだ少女・西園寺アヤメ。そんな彼女の相棒は戦闘力皆無の水晶界獣だった!
 二人で生き残るため戦う決意を固めたアヤメは、令嬢教育で培った知性と技術と怪獣オタク趣味を活かし、水晶の体を最高の界獣へとデザインしていく!!
「このまま……終わってなんてやらないッ!」
『』の海道左近が贈る、天才令嬢が相棒『界獣』と共に挑む異世界大界獣バトル、開幕!


怪獣墓場!! 字は違うんだけれど、怪獣墓場という単語を聞いてしまうと昭和生まれのソウルはビビッと来てしまうんや。
昭和生まれのガキンチョなんて、多かれ少なかれ怪獣と一緒に育ったようなものなのですよ(言い過ぎ?)
今みたいに動画配信も無く、小学生くらいだとまだレンタルビデオなんかも手が出なかったから、おおかた再放送だよりで、実際にウルトラマンの怪獣墓場の回とか見た記憶はないんですけどね。
多分、多分放送は見てないと思う、再放送でも。ただ、昔の懐かしい番組を特集するバラエティ番組とか、図鑑やムック本みたいなのは山程あったから、そういうので何度も繰り返し読んだり見たりしてたんですよねえ。
だから、怪獣墓場おいう単語はやっぱり聞くだけでも、ソウルにビビビっと来るものがある。

怪獣である。いや、この世界では界獣か。界獣墓場というのがタイトルについているのは伊達じゃなくて、この作品いろんな世界から舞台となるこの世界に週一で数人くらいのペースで人が転移し落ちてくるらしいのだけれど、この舞台となる世界に落ちてくる際に界獣たちが漂う空間を通り抜けてくるらしいんですね。その際に、例外無く一体の界獣と体と魂を共有して落ちてきてしまうらしい。
そうして人型と界獣型の両方に変身できる異世界人。繋死人(アンカー)と呼ばれる存在がこの世界には多く存在して、世界の発展や破壊に寄与しているのだという。
この繋死人にまつわる設定、人間と界獣との関係性については実際はもっと複雑なんだけれど、このあたりの設定が良く練られていて非常に面白いんですよね。
主人公のアヤメは、当初は不明だった彼女が共有共存している界獣の特性から、その身を付け狙われることになるんだけれど、この世界と界獣の設定も相まって、彼女の特別性と他の繋死人には中々無い、意思ある界獣との相棒感がまた良き、面白いんですよ。
アヤメ自身もとても存在強度の強いヒロインであり主人公で、まだ十歳未満にも関わらず年に似合わない聡明さと賢明さ、そして身につけている技術の多様さと度胸の強さに瞠目しながらも、同時にやっぱり年相応の子供らしい無邪気さや弱さもあって、どちらか一方に偏らない大人顔負けの意思の強さからくる魅力と、子供らしい魅力をちゃんと併せ持ってるいいキャラなんですよ。
だからか、互助組織の人間であり右も左もわからないアヤメを庇護し、指導する関係となったアレクとの関係性も、単なる大人と守られる子供でもなく、並び立とうという間柄でもなく、初対面から信頼関係を構築していく段階も含めて、一筋縄では行かないけれど迷走しない見ごたえある関係の醸成が起こっていて、こういう地固めがしっかりした関係って後々どんどんおもしろくなるよねえ、と思いながら読んでる所もありました。

そしてなにより、怪獣ですよ。いや界獣か。この世界では界獣に変身して戦うのが、メイン! これは、単なる変身ヒーローものとは違う味わいがあります。まずは巨大化。建物を見下ろすような巨体と化して、芥子粒のような人間を眼下に収めながら都市を破壊するように暴れまわる、このスケール感。
そして、人型とはまた違う、怪獣ならではの様々な形態。人間型、恐竜型、獣形に留まらない、いろんな形態の巨大生物同士が激突する、このワクワク感はまさに怪獣ならではなんですよ。巨大化するのでもウルトラマンみたいなの同士で戦うのとはまた一味違うんですよ。
怪獣ならでは! 怪獣バトルからしか摂取できない心の栄養があるんです。
いいねえ、好きですねえ。大好きですねえ。

一方で、この異世界に墜ちてくる人達の話がベースになっている以上、注目されるのは元の世界に帰れるかどうか。異世界転生ものでは重要だったり、最初から考慮外だったり、と扱い方が異なる帰還についてですけれど、本作ではこれこそが主軸となりそうなんですよね。
主人公のアヤメの持つ力が深く関わる設定ですし、この一巻で相対する敵となる人達が抱えていた、野望でも欲望でもない、ある意味愛がもたらした残酷な悲劇。
それは、繋死者たちの多くが持つ共通した願いでもあり、アヤメ自身が強く願う想いでもあるわけです。
面白いのは、アヤメを守護するアレクは、元いた世界に何の未練も持っていないところですけれど。でも、彼をこの世界で導いてくれた師が、強く帰郷を願っていた人でもあり、そうした帰りたいという願いを持つ人達の思いを汲んで献身してくれている人でもあるので、自分が自分がではない、誰かのため、今はアヤメのために身を投げ売って戦い、願いを導くために命を賭けることの出来る、ヒーロー感が素晴らしいんですよねえ。彼の変身する怪獣が、機械化されたサイボーグ界獣というのも硬質なソリッド感があって素敵♪

いずれにしても、導入から世界観も、怪獣バトルのスケール感も旅から旅のジャーニー感も、なんか色んなものが味わい深くて、濃口パチパチ口の中で始めるスプラッシュな感じがして、とてもおもしろかったです。この先々の展開がほんと楽しみだ。
ちなみに、この作者さんは【インフィニット・デンドログラム】の作者さんなんで、アヤメの元いた世界とかすごく繋がりがあるようです。というか、アヤメの妹、デンドロに出てるんですか?!
あのキャラ? え? あのキャラ? 
…………え? え? なんか、アヤメが語る妹の様子とそのキャラ、全然違うんですけど。ある意味変わり果ててるんですけどw
草はえるwww
どうした、どうしてこうなった。ってか、アヤメが失踪したからなの!?

あと、アレクの師匠がどうもあの宗教団体関連の人だったらしく。
……女化生先輩って、実はガチで化生の血が混じってたの!? ってか、あの世界って普通に妖怪とか居るんだ。まあ、レイの姉ちゃんのエピソードとか聞いてると、現実世界なのになんでもありっぽいからなあw