書籍感想(2009〜

Landreaall 155   

Landreaall 15 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

【Landreaall 15】 おがきちか IDコミックス/ZERO-SUMコミックス

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ああほら、やっぱり第一印象は当てにならないんだ。
とはいえ、第一印象はやっぱり胡散くさかったんだよなあ。イオンの語るクエンティンのイメージは、此方が受けた印象を論理的ではないが感覚的に見事に言い表していて、やはりその辺は意図的に表現していたんだなあ、と。
とはいえ、ただそれだけにつまらない人間とは、やはりかけ離れてるんですよね。アンちゃんとはまた違う人種だけれど、変人なのは間違いない。その理想からして異端だし、それを当事者であるDXにはっきりと明言してキングメーカーとしてあなたを推薦したい、とのたまうその神経と言うか在り方はやっぱり常人とはかけ離れてるし。
父であるリゲインの知り合いであり、少なくとも親しくしている様子を見るならば、宮廷政治を楽しみ利権を食い物にするタイプとは程遠いんだろう。ただ、リゲインもただ親しいという感じじゃないですよね。少なからず緊張しているというのは、クエンティンの立場のみならずどうも人物そのものにある種の危険性を感じているようには見える。リゲインとの会談の中で語られたクエンティンの壮絶な過去。彼の抱いている将来の目的、理想、野望と言ってもいいその道筋から見ても、アニューラスとは変人同士と言ってもちょっと方向性が違うようにも見える。DXはレイ・サークと似てると言ってたけど(その理由が最高で、まさしくと思わされる)、その性向は似てるけど、レイがどちらかというと享楽を旨として動いているのに比べて、クエンティンには強固な意志の方向性が垣間見える。
でも、当初想像したような他者の思惑など無視して自分の信念を押し通すようなタイプの危険人物とは、ちょっと違う気がするなあ。したたかで実に政治的な曲芸を乗りこなすことに練達している人物ではあるものの、柔軟である種の素直な優しさを秘めている人にも見える。誠実ですらありそうだ。うーん、アンちゃんの方がタチが悪いんじゃないか(笑
とはいえ、まだまだ底の見えない人ではあるんだけれど。
そういえば初めてじゃないかな。DXが王様に向いてないと言ったのは。でもDXの人物認識は非常に的確なんですよね。おそらく、DXが王様に向いていると言ってきた人たちと何も変わらない。さらに面白いのは、その双方がDXを王に推したいと思っている所か。
とりあえず、アンちゃんを押しのけDXの意思を無視して一方的に何かをしようという気はさらさら無いようなので、その辺はひとまず安心した。てっきりDXも反発するかと思ってたけど、お互いよく話すことでDX自身、クエンティンという存在を飲み込んだみたいだし。

そんなクエンティンのエカリープ来訪の本当の目的は、リゲインに行方不明だった王女の消息を伝えること。それを機会に、これまで情報が伏せられていた革命の真実の一端がようやく見えてくる。
現体制の王不在の理由や、リゲインが田舎に引っ込んでいる理由。なるほど、今は平和なアルトリア王国だけれど、一昔前は血なまぐさい時代そのもので、それは現在もまだ拭い去れてはいないわけだ。
アンちゃんやクエンティンがDXに望む王様像の所以もこれで徐々に見えてくる。なるほどねえ。

そして、ライナスとルーディーのターン。こいつらの贈り物攻勢はホント大したもんだよなあ。いつもイオンちゃんを伊達に餌付けしてないということか。まさか、ファレル母さんを光モノで落とすとは(笑
所謂宝石にはとんと興味を示さないだろうファレルに普通の貴族の奥方に対する贈り物とは趣向の違うものを贈るのは想像できたものの、敢えてなおも光モノを贈るとは、やっぱり一味違うよなこいつらわ。
あんなにウキウキときめいてるファレル母さんはじめてみた(笑
ここできっちり、リゲインがルーディーにあの誘拐事件の件で謝るのには感心させられる。そうだよなあ、ルーディーはあれ、DXの巻き添えくらった被害者なんだよね。そういう事を忘れずきっちりしてる作者さまには、重ねて感心させられる。こういう積み重ねが、世界観とストーリーラインの強固な親和性を構築していくわけだ。なるほど、世界観がべらぼうに広大になるわけだよ。

しかし、この飲んだくれながらの、忌憚の無いというか堅苦しさの欠片もない言いたい放題のダラダラとした時間を過ごせるのは、素敵だなあ。これ以上ない友達同士のだべりあいって感じで。目の当たりにしたファレル母さんが大笑いするのも道理だわ。親としても、自分の息子がこんな友達作ってたら、嬉しいだろうなあ。

ライナスたちと話す、スピンドル事件のことも、相変わらず意味深、というか何重もの意が織り込まれてて、非常に面白い。やっぱり、DXの本質はみんなとはどっか違うんだよなあ。視点、立脚点がまるで人と違っている。それは身分や生い立ちから来るものであると同時に、それらとは隔絶したDXという人間そのものの資質によるものなのか。
フィルについての話もそうで、あのしてやったりの顔は反則だよなあ。叶わない。

君は報われない幸せを知らない
か。ふむふむ。

槍熊の話も含めて、こいつらホントにイイ友達同士だよなあ。お互いみんながいい意味で感化しあってる。

そして、ついにリゲインの口から語られる誰も知らない革命の真実。彼が犯した罪と得た自由。
DXの本質とは自由であるこそそのものなんだろうけれど、その<自由>というものも、決して一概に一括りに出来る概念じゃないんだろうね。アカデミーに入り人の集団の中に入ることでDXはそこで自由というものの意味を色んな角度から捉え始め、今また父を縛る<自由>を目の当たりにするわけだ。


で、毎度おなじみ今回のおまけーー。

(w

いやもうね、これは何も言えんわーー(笑
よくぞまあ、なんというか、アホばっかりというか男は世知辛いというか、騎士というのもなんだかなー、というか。
面白いなあ、もう(苦笑


感想一覧

機巧少女は傷つかない 1.Facing "Cannibal Candy"4   

機巧少女は傷つかない 1―Facing“Cannibal Candy” (MF文庫 J ) (MF文庫J)

【機巧少女は傷つかない 1.Facing "Cannibal Candy"】 海冬レイジ/るろお MF文庫J

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かっ、かかか、かっけぇぇぇぇ! なにこの主人公、べらぼうに格好イイじゃないですかよっ♪
思わず「スカしてんじゃないわよっ、ふん!」とか無意味にツンデレしたくなってしまうほどカッコイイ!
いやあ、これは惚れる。惚れざるを得ない。さすがは【グリモアリス】の海冬レイジ先生というべきか。人付き合いが下手糞で向こう気ばかり強く孤独な、でも心優しくひたむきな少女をメロメロにしてしまう手腕に関しては、他の追随を許さないところがある。
ヒロインの絶体絶命のピンチに颯爽と駆けつける主人公というのはありがちといえばありがちなんだけれど、嵌まるとやっぱりこれ、破壊力というか殺傷力が必ず殺すと書いて必殺のレベルなんですよねえ。トキメキすぎて死ぬかと思った(笑
なによりここで肝心なのは、主人公が救うのがヒロインの生命だけではなく、ボロボロに傷つけられた彼女の心をも救うところなのでしょう。否定され騙され傷つき立ち上がれないほど打ちひしがれた心を、生き様を、誰にも理解されず孤独の中に置いてけぼりにされていた思いを、ちゃんと認めて、理解してくれて、全肯定してくれた時の嬉しさが如何ばかりか。彼自身には本来関係の無いことなのに、傷つき血みどろになりながら、お前は何も間違っていない、何も悪くは無い、だから助けると言われた時の気持ちはどれほどのものか。
そりゃあもう、分厚い装甲に鎧われたハートだろうと、ズキュンと射抜かれるに決まってる。
こんなにストライクに心奪われる<恋に落ちる瞬間>を目の当たりしたのは久々で、相好がニヤ崩れて仕方ありません。
やっぱり海冬さんの手がける主人公って、バリバリの<騎士さま>だよなあ。そのすがすがしいところは後ろ暗い目的のために邁進しようとも、それを叶える道については甘さを捨てず、むしろ壮絶な覚悟を持ってその甘さを貫こうとしているところか。
なんにせよ、その姿勢は痛烈なほどカッコいい。
【グリモアリス】の誓護もそうだったけど、何気にこの主人公・雷真って女の子のあしらい方、上手いんですよね。ヒロインのシャルロットはプライドの高い跳ねっかえりのツンデレ娘だし、自動人形の夜々は微妙にヤンでるしと、扱い方を間違えると一方的に酷い目に遭いそうなものだけど、実に絶妙にツンの部分をくすぐり、ヤンの部分は突き放しては宥めてと、まったくもって卒が無い。
シャルの自動人形であるドラゴン型のシグムントがまた、暴走しがちなシャルにとって諭し役、同じ自動人形の先達として夜々にとっても先生みたいな感じになってて、別にシャルたちと雷真たちがコンビを組むというわけじゃないんだけれど、この二人と二体のキャラ構成はバランスの取れたチームという感じになってて面白い。

ストーリーの方も、元々富士見ミステリーで書いてただけあって<魔術食い カニバルキャンディ>と呼ばれる連続人形破壊犯の正体露見に至るまでの流れもしっかりしていて、読み応えがありました。登場人物構成からして、犯人はあの人というのが定番だったんだろうけれど、その人の普段の描写のせいか、最後まで意識上から外してたもんなあ。あれはちょっとやられたと思ったし。
魔術と人形兵器の隆盛目覚しい前世紀という時代設定、世界観も雰囲気出てて、新シリーズスタートの掴みとしては、これが最上の部類じゃないでしょうか。
ハート、鷲掴みにされましたし。これは、次回以降楽しみだ。
シャルも、これから檻から解き放たれた猛獣みたいに、ツンツンしながらデレデレしまくりそうだしw

L 4 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説4   

L 4  詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説 (富士見ファンタジア文庫)

【L 4 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説】 坂照鉄平/水谷悠珠 富士見ファンタジア文庫

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堪能した堪能した堪能させられた! 
これぞまさしく<パワー・オブ・ラブ!!>
いいなあ、昨今これほど直球の愛の力を感じさせる物語も珍しい。女の子がたくさん出てくる作品もいいけれど、めぐり合った男女の一途な恋物語もいいもんじゃないですか。
バーンが飲み込んでしまった<罪人竜の息吹>がとうとう暴走を始めた上に、自身が行ってきた鎮静化がバーンの生命そのものを削っていたことを知ったアーティアは、<アビスパス>に彼を預け、自分の生誕の秘密を知る村長と母竜に真実を聞くために故郷に戻る。
離れ離れになった二人。思えば、この物語が始まって以来、この二人がこれだけ遠くに離れてしまったのって初めてだったんですよね。逢えなくなった事で、声を聞けず、顔を見れず、触れ合えなくなった事で、余計にお互い相手のことがどれだけ大切で、大事で、大好きであったかを思い知るはめになった二人。そもそも恋という感情そのものを知らなかったアーティアが、抱えきれないほど溢れかえってくる想いの奔流におぼれていく様が、いっそ凄絶ですらある。
母竜たちに訴える、今まで知らなかった感情、湧き上がる思いの丈をぶちまける姿のなんと眩しかったことか。
これほど必死で、必死で、気が狂いそうな叫びの、なんと胸を締め付けられたことか。
そう、恋とは「落ちる」ものなのだ。

そして、恋は愛へと昇華され、力となる。

罪人竜の力を、最後まで最強の武器ではなく、二人が乗り越える障害として扱っていたのも良かったなあ。バーンは所詮口先任せの詐欺師であり、嘘つきで嘘のつけない好きな女の子のために頑張るやせ我慢の男の子なんだから、そんな星を滅するような力を振り回すようなキャラクターじゃないんですよね。だから、最後まで罪人竜が二人を苦しめる害悪であったのは、地味に徹底していて素晴らしかった。

素晴らしかったといえば、あの人の再登場もそうですね。あれは、バーンにとってもアーティアにとっても消せない傷跡だっただけに、そこにもちゃんと傷を癒すためのフォローを持ってきてくれたのは、素直にジンと来た。

そんでもって、最後のオチがまた最高なんですよね。故郷を旅立つアーティアのあれは、彼女の人間的な成長やなんやを含めて、無茶苦茶かわいらしかった。恋する女の子は、心に翼が生えているかのようで、その手を掴んでくれる人がいるならばきっと、この荒野をどこまでも飛んでいけるに違いない。
もう、ぎゅーーっと抱きしめてあげたくなるくらい、素敵な恋の物語でした、はい。

2巻感想 3巻感想

SH@PPLE しゃっぷる 74   

SH@PPLE―しゃっぷる―(7) (富士見ファンタジア文庫)

【SH@PPLE-しゃっぷる- 7】 竹岡葉月/よう太 富士見ファンタジア文庫

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ああっ、こうなっちゃったかーーっ。これはもう、タイミングが悪かったとしか言いようが無い。もしくは、運命的とすら言っていいのかも。お互いに好意を抱きあい、それを両者がちゃんと誤解無く知ることが出来た。それは歴とした両想いのはずなのに、それでも恋が成就しない事はあるんだなあ。いまさらのように、この作品がラブコメであると同時に繊細でガラス細工のように脆く美しい思春期の男女の恋情の機微を描いた青春恋愛劇だというのを思い知らされたようである。
然れども、雪国と蜜の恋路が交わらなかったのは、タイミングが合わなかったのであり、舞姫の余計な手出しがあったからこそなんだけれど、そもそも雪国が舞姫に変装して女子高に忍び込むというこすっからい手段を取った事がそもそもの原因なんですよね。結局彼は自分から自分の正体を明かすことなく最後まで来てしまった。自分が何をしてきたかを言わないまま、自分の想いだけを告げてしまった。そこに、この失恋の要因が横たわっている。
でも、哀しい事にその卑劣ともいえる手段を実行に移さなければ、二人の距離はそもそも縮まることすらなかったとも言える。その手段を実行に移したからこそ、失恋まで行けたのだとも言えてしまうのである。なんとも、ココロ苦しい話じゃないか。
となると、彼の一番大きな失敗はやはり、告白の順番を間違えた事なんだろう。蜜を信じて、自分のすべてを曝け出す事が出来なかった事がそもそもの失敗だったのだろう。残念でかわいそうだが、やはり自業自得だったのだ。

意外だったのが、正体が露見した際にそれほど大騒動にならなかったことか。主要人物にしかバレなかったとはいえ、蜜にしても胡蝶の宮にしてもわりとすんなり受け入れていたのは驚きだった。もっと怒ってもいいと思うのに。雪国と舞姫が結果的に何度も入れ替わりを繰り返すことで彼女らの心を弄んだ事は紛れもない事実なのに。
舞姫も今回は酷かったというか、やらかしちゃったよなあ、これは。舞姫のブラコンが原因と言うより、これは舞姫が恋というものを知らないからこそ無思慮に行えてしまえた暴挙というべきなんだろうけど。だからこそ、あそこは会長が止めておかないと。手伝ってどうするんですかー。恋する少女を応援する魔法使いとしては、これまた致命的な失敗を犯してしまったものです。薄々間違いを悟ってはいたみたいだし、普段の彼ならこういうミスはしないと思うんだけど、誰かに恋する女の子ではなく自分が恋する女の子に目が眩んでしまったが故の錯誤ということか。

そして運命的とも言える、ラストの鳥子との遭遇。この展開にはアッと驚かされると同時に、ガツンと頭をぶん殴られたような衝撃に襲われた。ここで、あんな劇的な失恋があった直後に、こういう展開を持ってくるかーー。普通の失恋の後なら、ただの噛ませにしか見えないところだけれど、これは正直どうなるかまったくわかんなくなってきた。
もしかしたらこの作品、こっから素晴らしい失恋の物語になるのかも。素晴らしい失恋の物語って変な言い回しだけど、ただの失意とネガのスパイラルじゃなくて、失恋もまた人を成長させる大切な経験であり、また恋というものが素晴らしいものだと実感させてくれるような、そんな話という意味での、失恋の物語が始まるんじゃないのかなあ、と思ってみたり。

今回、誰しもがあたふたとみっともなくおぼれていた中で、一人胡蝶の宮の凛として優美な立ち振る舞いに、心奪われました。言わば、この人こそが失恋第一号なんだよなあ。雪国への想いにキッパリと決着をつけたこの人の余裕と優しさ、温かみ。一回り人間が大きくなったような柔らかな存在感は、弱りきった周りの人たちを包み込み、行くべき道を見失った子らの背を、毅然と支え、そっと押すその姿。今、間違いなく一番魅力的なのはこの人ですね。


6巻感想

神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック3   

神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック (GA文庫)

【神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック】 大迫純一/BUNBUN GA文庫

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一応まだ続くことにはなったみたいだけれど、マティアとマナガ、二人の出会いを始まりとした物語はこの巻を以って決着。
以前から徐々に始まっていたマティアの体の異変。成長の停止や肉体の再生、そしてマナガと同じ黒い涙。これらの原因、てっきり私はマティアが黒の女神の生まれ変わりだからなんだとばかり思い込んでいたら、思いっきり誤解だったよ! 恥ずかしっ!
ある程度ミスリードはしていたんだろうか。そのへん、どうも微妙なので勝手に勘違いしてたのなら見る目がなかったという所だよなあ。そもそも、黒の女神レティアコールが白の女神エターナリアみたいに消滅したという話は一度たりとも持ち上がってなかったんだよなあ。でも、マティアとレティアコールって名前似てるじゃないですかw
そもそもポリ白のスノーと状況が似ているからマティアが黒の女神と勘違いしていたわけだけれど、考えてみればすぐわかる話で、同じネタを使うはずがないんだよなあ。不覚。
ただ、過去で黒の聖獣ラグがどうなったという具体的な話は今まで出てこなかっただけに、この真相を予想しろというのは幾らなんでも難しい。いい加減一般的な精霊の生態についてはだいたい理解できてきたけれど、始祖精霊と聖獣に関してはちょいとでたらめなところがあるからなあ。

それはそれとして、顕現成った黒の聖獣ラグがあまりにアンポンタンで、思わず吹いてしまった。この人間の理解度の低さ、というか現実の事象に対する理解力の無さ、ぶっちゃけて言うところの頭の悪さが、白の聖獣のブランカそっくりで、聖獣っていうのはみんなこんなんなんか(苦笑
そういえばポリ白に出てた紫と翠の聖獣も、別の意味で相当頭の悪い連中だったしなあ。こんな連中ばっかりなんだ。
伊達に精霊のくせに獣呼ばわりされてるわけではなかったのね(マテ

なによりも今回驚かされたのが、本物の黒の女神さまだったんですけどね。これはホントにまったく予想も何もしてなかったのでかなりびっくりさせられた。そういえば精霊専門とか、共通項はあったんだ。

今回最終回でマティアとマナガの二人の物語となりながら、途中から、殆どシェリカが主人公役みたいになってたんじゃないだろうか、これ。マナガはあれで「おうおう」と唸りながら物事に対しては受身な部分が多いので、自力でガンガン難局を切り開いていくタイプじゃないもんなあ。お陰で、今回の急展開についても状況を受容していくばっかりだったし。その意味ではマナガって、マティアに対する役どころはあくまで父親役になってしまうんだろうなあ。しかも、わりと甘やかすタイプの。

すべての謎と過去からの頸木が解き放たれ、物語に決着がついた以上、今後続いていく話はもう一度初心に戻っての、刑事モノをやって欲しいなあ。初期の事件の謎を解き明かし、犯人を追い詰めていく形式が好きだったので。

1巻 2巻 4巻感想

コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED3   

コップクラフト (ガガガ文庫)

【コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED】 賀東招二/村田蓮爾 ガガガ文庫

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あ、あれ? ティアナさんが、ティアナさんがおっぱい魔人から幼女に縮んでますよーーっ!? ますよーーっ!?
ちょっ、待ってくださいよ。これじゃあ、ケイとティアナの間に艶っぽい展開が訪れたら、ケイが確実にロリコンの称号を獲得してしまうじゃないですか、おいおい。

元々ゼータ文庫から二巻だけ出ていたシリーズ。それも、この一巻は賀東さんは原案に携わったのみで、実際の執筆は別の人が書いていたはず。何があったのか、二巻は賀東さんが自ら書かれていたわけですが。この二巻がべらぼうに面白かったんだよなあ。二巻では良くも悪くも息の合ってしまったデコボココンビのバディとしてドタバタ大騒ぎを繰り広げる二人でありますけれど、この一巻では出会った最初の印象が最悪の一言で、ギスギスと通り越してガリガリとガラスを引っかくような最低のところからはじまる所なんぞ、バディものとしてはまずはお約束といったところか。
個人的には最初の反発が強すぎた分、バディとしての信頼を築くまでの過程がちょっと足りなかった気がするんだよなあ。あの一つ、いやもう二つほど二人の距離を縮め、心情を繋ぎ、同じ方向を向いて突っ走れるための原動力となるきっかけが欲しかったところ。まだこの段階だと、ケイにしてもティアナにしてもお互いの腕や心意気といったものは認めるに至ったものの、命を預ける相棒として繋がっていくにはまだまだ足りないっぽい感じなんですよね。特にティアナ、<棄剣>する相手としてケイにそれほど信頼を置くに至る何かがあったのかというと……。
さすがに他の人が書いた話を書き直すというのは難しかったのかなあ。想像以上に前の部分を外枠として認識してしまったのかもしれない。二巻も思い出してみれば、冒頭らへんは二人の書き方がちょっと窮屈に感じるところがあったし。
それでも、言っちゃあなんだけど、旧作よりやっぱり面白かったんですよね。キャラの息遣いが違うというかなんというか。読み比べてみるとなかなか面白いかもしれない。
以降の賀東さんの、完全に自分のものにしたケイとティアナの描き方の自由奔放でドライブの効いたタッチを思うと、これから二巻以降もさらに続きが出てくれる可能性があると言うのは楽しみで仕方が無いのは間違いない。

あとがきのアレにはちょっと焦ってしまった。本気で信じかけましたがな。こんな日本のライトノベルそのままなのやってるはずがないのに。というか、旧作読んでるんだからそんなはずないというのは分かってるのに(苦笑


追記:やべっ。コメントいただいて、どうやら旧作も賀東さん本人だったらしいです。正直えーっという感じですけど。完全に違う人だと思い込んでました。文章読んだらわりと分かるつもりだったので、けっこうショック&恥ずかしいです、はい(苦笑
二巻の冒頭の固い感じはつまるところ仕様だったのかー。

てるてる天神通り 44   

てるてる天神通り (4) (角川コミックス・エース 135-12)

【てるてる天神通り 4】 児玉樹 角川コミックス・エース

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和菓子、御菓子と来たら、次の子はもう洋菓子しか残ってないじゃないか。なんて読むかって? ……ヨカコ? さすがに洋菓子店の娘が洋菓子じゃあ笑い話にもならない。でも、御菓子のお母さんは甘味処の跡取り娘で和菓子なんだから、別にいいのか?
しかし、鈴花お母さんの若いころのスペックは尋常じゃなかったんだな。このキャラデザインって殆どメインヒロイン仕様じゃないですか。明るく強気でそそっかしく、本番では押しが弱いところなんぞ、典型的な幼馴染スペックだし。この点は、大らかでポワポワとした天然素材の御菓子とはだいぶ違っているわけで、そりゃあ親父と同じ女の趣味ってわけにも行くまいなあ。それだとただのマザコンになってしまうし。いや、天志の場合、小さいころに随分と和菓子さんに懐いてたっぽいからなあ。多少マザコンの卦はあるのかもしれん。
まあ、現状でも鈴花ママの若々しさは図抜けているんですけどね。
しかし、今のこのイチャイチャラブラブ夫婦が、昔はこんなだったんかー。いやはや、気心の知れた幼馴染同士だから恋人同士、夫婦になってもさほど変わらんだろうというのはきっと思い込みの類なんだな。幼馴染カップルによっちゃあこいつらのように箍が外れてえらいことになるケースも出てくるわけか。
くぅ、となると天志と御菓子もくっつくとこうなってしまうのか。どうやら天志の方が先に自覚したみたいなのは意外だったけど、いやこの様子だと最初から好きだという自覚はあったっぽいなあ。その気持ちから目をそらしていたのが、タイムスリップで両親の馴れ初めを見てしまって、ごまかしきれなくなったというところか。親父さんと一緒でこいつも一旦誤魔化せないと理解したらもういちいち優柔不断に躊躇わない気風のよさがあるからなあ。御菓子の方も段々と天志の事を男性として意識し始めてるみたいだし、こりゃあ次の巻で一気に決着がついてしまうかも。他にも草輔と冬子や、頼子姉と本屋というほかのカップルも着実に仲は進展しているみたいだし、シリーズ自体がそろそろまとめに入っているのかも。
となると可愛そうなのは高津原嬢なんですけどね。このツンデレお嬢様もイイキャラなんだけど、逆に言うと典型的な報われなさそうな女の子という立ち位置になっちゃうんだよなあ。まあ、天志と御菓子の関係が鉄板という揺ぎ無さが、それ以上の立ち位置を許さないのですけれど。このまま、気持ちも知られず終わってしまうのはさすがにかわいそうなので、盛大に振られるイベントくらいはあるのかなあ。

蒼海ガールズ! 23   

蒼海ガールズ!2 (GA文庫)

【蒼海ガールズ! 2】 白鳥士郎/やすゆき GA文庫

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あははは…………おい、誰かこいつらなんとかしろよ。
飢えた狼の群れに子羊一匹としか言いようの無い男女比1:200の軍船ビシャスホース。元々アラミスという国が男女比1:20という特殊な国で、男女の扱いがまるで逆という環境というのがどういうものなのか、改めて納得させられた。エーレンの兄のお婿入りまでの育てられ方って、完全に箱入り娘のそれだもんなあ。
このシューくんのチヤホヤされかたはある意味男所帯に可愛い女の子が一人紛れ込んだのとあんまり変わらない扱いだもんなあ。それにしては、シューくんへのセクハラがドギツすぎて、いい加減可愛そうになってくるんだが。みんなが女の子だから許されていることであって、これ男女が逆だったら酷い話だぞw
かと言って、うらやましいかと言うと全力でノーだけど。この子ら、どいつもこいつも女としてはどうよ、という所までイッちゃってるやつばっかりだもんなあ。女所帯が行き過ぎるとこういう凄まじい結果が現出してしまうものなのか。ぶっちゃけ、一番女の子らしいのは唯一の男であるシューくんというのはどうよ!?
お客さん扱いされて疎外感に苛まれ、ついにはヒステリーを爆発させてメソメソと泣いてしまうシューくんは、どう見ても女の子なんですけど。周りに感化されたというのはちなみにありえない。そんな女々しい女の子、一人もいないじゃん、周り。
とりあえず、当作品で一番可愛いのはシューくんというのは衆目の一致するところでしょう。

あー、このままだと確実にシューくんの貞操は航海が終わる前にアウトだな。幸い、まだ貞操云々についてはまるで知識の無い王女のファムがずっと傍についてるから、虫がつかないで済んでるけど、そのうち船長あたりが食っちまいそうだ。副長もヤバい。というか、副長がヤバい。ダメさ加減ではもはや他の追随を許さなくなってる。船長はまだ曲者だから、シューくんの色気にコロッといっちゃうこともないだろうけど、副長はあっさり理性とんで後先考えずに襲い掛かりかねない。なまじシューくんが副長のことを尊敬していて、他のセクハラしてくる子に対するような警戒を全然していないのが余計にまずい。
こいつはいつか絶対ヤる(ナニヲ

さて、この作品の特徴である海洋冒険小説としての側面は、今回も赤道祭や傾船修理など自分の知識欲を充分満足させてくれる興味深いものでした。赤道祭というと、須賀しのぶさんの【天気晴朗にして波高し。】でもワーデン祭という似たようなのやってたなあ。
傾船修理のやり方については、これは圧巻だったなあ。さすがにこれ、女性のみの手でやるのは根本的な体力差からちょっと無理じゃないかとも思う。それだけ凄まじい体力仕事。男でもよほど屈強な水兵でないと、いや男女云々は抜きにしてもぶっちゃけ人力だけでこれをやるというのは信じがたい。昔の船乗りは凄かったんだなあ。

一巻感想

DARKER THAN BLACK 漆黒の花 1  

DARKER THAN BLACK ~漆黒の花~ 1 (ヤングガンガンコミックス)

【DARKER THAN BLACK 漆黒の花 1】 岩原裕二 ヤングガンガンコミックス

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うわぁ、これは想像以上に素晴らしかった。漫画とアニメという媒体の違いこそあれ、これま紛れも無く【DARKER THAN BLACK】そのものじゃないですか。アニメの漫画化とかスピオンオフとはこれ、レベルが違うというか根本から異なっています。まさに続編そのもの。雰囲気や話の筋立て。これは感覚的なものなんだけど、構図なんかもかなりそのままなんじゃないかな。
この漫画を書いた人が、そもそもDTBのキャラクター原案者というのもあるんだろうけれど、これほどしっくり来るとは。
この【漆黒の花】はちょうどアニメ一期と二期の間を繋ぐ物語。なので、黒はまだ銀と行動をともにしており、霧原未咲は未だ公安外事四課の課長としてバリバリと働いています。彼女が八丈島に飛ばされたのはこの事件がきっかけとなるんだろうか。パンドラに乗り込んで、事件関係者と協力してなにかやらかしそうな雰囲気だし、相変わらず無茶やってて、そりゃあ親父さんがいくら警備部のお偉いさんでも飛ばれておかしくない事やってますね。むしろ娘の身の安全を考えた親父さんが手を下したとも考えられますけど。まあ、まだ起こってないことを想像しても仕方が無い。
話はトーキョーエクスプロージョンの残滓。そこから派生した契約者と人間、両方の未来を貶める可能性を秘めた謎の黒い花の契約者が暗躍し、アンバーから未来を託された黒がそれを追うというもの。
契約者ではない普通の人間に、擬似的に契約者と同じような得意な能力を付与する黒い花。誰がなってしまうか完全なランダムである契約者に、その男に頼めば慣れてしまうというのは、その代償も含めてまさに悪魔との契約である。その悪魔がもたらす力に魅了され、元いた日常から逸脱していく普通の人々。いや、元よりその日常の中に燃やし尽くしたい怨念や憎悪を抱えていたからこそ、悪魔の力を求めることになったわけだけど、これがまたえぐいんだ。人間の醜さをまざまざと見せ付けるような醜悪な男の所業に振り回される親友同士だった女子高生の二人組み。この二人の顛末が、二人の秘めた愛情と憎悪と友情の鬩ぎあいと、その悲しい末路を含めて、圧巻の出来栄え。黒と花の契約者との戦いの添え物どころではなく、完全に今回はこの娘たちが主役ですわ。その意味では、話ごとに主人公がそれぞれ設定されていた一期のスタイルをそのまま踏襲しているとも言える。

一方で、一期の間とは違って格段に距離感が近くなった黒と銀の関係もまたこの巻の見所ですね。描かれているシーン自体は少ないものの、疲れて眠り込む黒の隣にちょこんと座り込んでじっと眠る黒を見つめる銀や、空腹でお腹を鳴らす銀に自然な笑みを浮かべて何か作ろうと口ずさむ黒とか、見ててニヤニヤさせてもらいましたよ、うん。
未咲さんもそのどこか惚けた日常シーンから緊迫した事件のシーンまで、全部未咲のターン! と言うくらい縦横無尽に走り回ってくれて、未咲分を堪能させてもらいましたし、これは本当に面白かった。
まだまだ事件もとっかかりで、続くようなのでこれはひたすらに追いかけたいと思います。DTB好きな人は、これは見逃したら大損ですわ。

このライトノベルがすごい! 2010  

このライトノベルがすごい! 2010

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あ、自分のコメが載ってる。去年はなかったので、何気に嬉しい。
というわけで、今年も協力者サイトとして参加させて貰ったのですが、案の定というべきか投票した作品はベスト10には一切あがらず。
まとめによると、今年の協力者票はバラけまくってたようで、やはりこの類の人種には流行は置いておいてそれぞれに一押しで譲れない好きな作品を抱えているでしょうから、集合勢力としては機能しないんだろうなあ。
一位のバカテスについては、意外だったなあ。そこまで盛り上がっているという気運を感じていなかっただけに。確かにアニメ化も決まって今からが旬というところではあるけれど、あくまで今からであって、まだピークに来ている風はなかったと思ったんだが。
まさに今が旬であるところの化物語を抑えるとはねえ。
ぶっちゃけ、自分は最新6.5巻まで読んでもういいかな、と思ってしまった口なので、これが一位になった理由とかわかんないです。ほんとに、似たような系統の作品とバカテスが違う要素ってどこなんだろう。
いや、むしろ兆候のあったバカテスよりも驚いたのは7位のみーくんまーちゃんですよ。これ、そんなに人気だったのか。

嬉しかったのは、アンゲルゼが30位にランクインしてたことですか。少女系レーベルではこの作品が唯一なのかな。紛れもない屈指の傑作なのでこれを機会に手をとってくれる人がいればいいんだけど。

というわけで、自分が投票した五作品を探してみると、ブラックブラッドブラザーズは20位、翼の帰る処は60位、戦闘城砦マスラヲは16位。アンゲルゼは30位と概ねランクイン。ただ、一位で投票した時載りリンネの姿は影も形もないやー(涙
去年はまだ、名前あったのに。ちょいヘコむ。
個人的には翼の帰る処も、評判からしてもっと上に食い込んでくると思ったんだけどなあ。レーベル的にそこまで広がってなかったってことなのか。むしろ60位に入ったのが凄いのかもしれないけど。

ちなみに公表されている60位までで、途中でシリーズを追うのを止めたのが11作。まったく未読だったのは【電波女と青春男】【これはゾンビですか?】【いつか天魔の黒ウサギ】の三作だけでした。我ながら読んでるなあ。そりゃ、部屋が埋まるわけだ。
ちなみに、電波女は近々手を出す予定。

イラストレーターは竹岡美穂さんが二連覇。これはもう納得としか。
本文中で名前がピックアップされてるブリキさんだけど、この人は確かにイイですよ。カラーの淡い色彩といい、くしゃっとなった時の表情の描き方が凄い印象的で惹かれるんですよね。

売り上げや今年の総括、各レーベルの状況などの記事も興味深い内容で面白かったです。

この流れだと、来年当たり上位にあがってきそうなのは【僕は友達が少ない】あたりか、と予想してみたり。

無限のリンケージ 2.ディナイス・ザ・ウィザード4   

無限のリンケージ 2 -ディナイス・ザ・ウィザード- (GA文庫)

【無限のリンケージ 2.ディナイス・ザ・ウィザード】 あわむら赤光/せんむ GA文庫

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ディナイス・ザ・ウィザードってサブタイトル、確かに魔術師めいた器用な技量の持ち主だけど、ディナイスのあの暑苦しい筋肉ダルマなガタイを見てしまうと、ウィザードとか言われても詐欺っぽいというか何か騙されてる感を感じてしまうなあ(苦笑
とはいえ、この暑苦しさもまたキャラ立てに一役買っているんだが。あの暑苦しさの大半は見てくれよりも、うっとうしい親バカ加減にあるんだけれど、それ故に最強の敵として立ち塞がりながら妙に愛嬌があって、今回の話の流れにはふさわしい相手だったんじゃないだろうか。
前回はラーベルトの過去の因縁の憎むべき敵に対する復讐劇という側面が強く、どちらかというと競技ではなく旧世界の戦争の延長という感じだったのだけれど、今回は大きく方向転換して競技としての決闘BRTと、そこに挑むラーベルトとそのチームスタッフという形になってて、上手いことスポーツものに舵取りすることに成功している。特に、サクヤとベックスのみに焦点が当たっていたラーベルトのチームスタッフを、ちゃんと全員一人ひとり描いて、話自体も一部リーグに上がったあと連敗続きでスランプのラーベルトをどうやって勝たすのかと、試合以前のところでみんなで喧々諤々と意見をぶつけ合い、アイデアを出し合い、対戦相手が決まるやその対抗策をみんなで練り上げる、という槍を合わせる前の準備段階の描写を非常に重視し丁寧に描いているんですよね。こういう、バックアップスタッフに焦点をあて、本番前の準備段階をむしろメインにして話を進める作品というのは、大概はずれがないというのが、これまでの私の経験則。
お陰で、ラーベルトのスランプの原因というのはわりとあからさまなんだけど、そこにみんなが気づき、総意で以ってバクチのような戦術方針を選択し、最強の敵に挑みかかる展開は、素直にこれは燃えましたよ。
一巻ではサクヤとベックス二人だけのやり取りに終始していた賑やかな掛け合いは、オデットコーチにモニカやケディラ、セシリアが加わることでさらに楽しげなことに。ディナイスのセリフからして、BRTのチームというのはビジネスライクでチームワークというのには程遠いものが多いらしい中、このラーベルトのチームは見てても実にいい雰囲気で、暗い情念みたいなのが漂ってた前巻からの方針転換にも一役買ってる感じ。
対戦相手のディナイスも、前の最悪の卑劣漢と違って、実に堂々とした偉丈夫の戦士であり、少々イカレた親バカという愛嬌もあり、試合相手としては申し分ない相手なわけです。それこそ、相手を排除するのが目的な殺し合いではなく実力を存分にぶつけ合い、これ以降も何度も槍を合わせられる試合であることが喜ばしいと、ラーベルトにBRTを単なる贖罪の場ではなく、自身も楽しんでいい場所だという考えを芽生えさせ、サクヤたちチームスタッフと一緒に戦っているのだと実感させてくれるような、素晴らしい好敵手。
重たい負債を背負って戦うラーベルトですけど、この試合を通じて、なんかすごく良い方に変化してる感じで、このラーベルトならサクヤとの仲も今後進展するんじゃないかなあ。お邪魔虫も増えそうですけどw

一巻感想

C3 シーキューブ 83   

C3-シーキューブ 8 (電撃文庫 み 7-14)

【C3 シーキューブ 8】 水瀬葉月/さそりがため 電撃文庫

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巻を重ねるごとに露出度が拡大の一途を辿っていた表紙絵のフィアの紐パンも、ついに全体像が露わとなるほどにまで至ってしまいました。
凄まじくローレグだな!!
ここまで描いてしまうともう次は紐が解けた状態でないといけないような空気が流れてしまうじゃないか!(流れてません

クリスマスなどというイベントが近づくと、俄然やる気になるのがお祭り好きの黒絵さん。この人、マイペースに見えてイベントとなるとひそかにテンションあがりまくってるっぽいんだよなあ。何気に普段に倍する勢いで同居人弄りに勤しんでるし。
クリスマスというとラブコメならば恋愛ムードたっぷりのお話になりそうなものなんだけれど、このシーキューブは案の定というべきか、笑っちゃうほど異性間の盛り上がりは皆無で、欧米風(?)の家族中心のクリスマスという感じに。フィアがクリスマスをはじめて体験するというのもあるんだろうけど、クリスマスプレゼントも好きな人との距離を縮めるためじゃなく、家族の間同士で交換、という風情だったし、夜知家は相も変わらずアットホームでいいなあ。
辛うじて恋愛事のエピソードとなったのは錐霞の初めてのお泊りイベントくらいか。今まで彼女が夜知家に泊まったことがなかったという事実に驚きだけど。もうとっくに錐霞の存在は夜知家に馴染んでしまっていただけに、これは何気に意外だったなあ。はじめて見るいいんちょのパジャマ姿にドキドキしたり、寝ぼけて同じ布団にもぐりこんできたいいんちょにドキドキしたり、とラブコメ展開が炸裂するのってやっぱり錐霞相手が圧倒的に多いんですよね。このはの苦戦傾向はしばらく変わらなさそうだ、こりゃあ。
そうこうする内に、唯一のアドバンテージだった巨乳属性ですらも、隠れ巨乳にして脱衣癖の持ち主というン・イゾイーの参入でがけっぷちに陥ってしまってるし。あの汚れ属性が圧倒的に足を引っ張っているのを、そろそろ何とかしないと。
もういっそ、折々で見せる妖刀バージョンを常態化させるしかないんじゃないかい?w

これまでも、呪いの道具<禍具>に纏わる組織は出てきているわけですけど、竜頭師団のタチの悪さは、組織の趣旨が人類最強を目指すという単純明快さが、むしろろくでもない惨状を引き出すことになってるなあ。切子のやり口も、フィアの心をズタズタに引き裂いたひどいものだったけれど、今回のココロのはさらに胸糞悪いものだった。
こんな無関係の人に大量に被害が出たのって、初めてじゃなかったっけ。ひたすらに強さを求めるのはいいけれど、その為に捨て去り無下にするものが多すぎて、共感するものが何もない。これまで出てきた連中はろくでなしにしても、そこに至るまでの過程に同情の余地というものがあっただけに、なおさらに。
さらに、この連中に勝ってしまうと余計に狙われる羽目になるからホントたち悪いんだよなあ。その意味では、ン・イゾイーが完全な味方というわけではないけれど状況如何によっては協力してくれるポディションに入り、理事長たちが胸襟を開いて正体を明かし、完全な味方としてついてくれたのは、フィアの能力が封印されていってることもあり、頼もしいところだ。理事長は戦力とはならないにしても、彼らがバックアップに入ってくれたらかなり助かりそうだしなあ。ン・イゾイーも組織の立場はあるだろうけど、以前のいいんちょと同じく心は通じているわけだし、あの娘の性格からして本気で困ってたらなんだかんだと助けてくれそうだしねえ。

そしてラストには、フィアの祈りが届いた天からのプレゼントが。この案件はずっとこびりついて離れなかった影だけに、素直に良かったなあ、と思う。

とある魔術の禁書目録 194   

とある魔術の禁書目録(インデックス)〈19〉 (電撃文庫)

【とある魔術の禁書目録 19】 鎌池和馬/灰谷キヨタカ 電撃文庫

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あれ? もう19巻と長く続いているこのシリーズだけれど、ここまで明確にカップル成立したキャラが出たのって初めてじゃないですか?
フラグばっかり乱立するばかりでいい加減フラストレーション溜まってたので、ラストの滝壷の思いの丈が詰まったキスにはテンションがあがりまくってしまいました。シンプルで安っぽいかもしれないけれど、男が一番頑張れるのは大切な人を守るため、というのが一番やっぱりガツンとくるんですよね。

相変わらず、学園都市の治安は悪すぎるわ、政治闘争の基本原則がでたらめで暴力的だわと、オカルト方面や科学部分のハードの物語の構造部分に関わる使い方は非常に興味深いのだけれど、政治論法や国際情勢、組織間のパワーバランスなど個人ではなく集団が動く論理のソフト面が不良同士の抗争程度の感覚でやられているようなもんで無茶苦茶、というのは変わらないのだけれど、故にこそ前巻の国そのものの根幹に関わるような紛争と違って、個人にスポットが当たるとやっぱり面白いんだよなあ。なんか悔しいんだけど、これが面白いったらありゃしない。
明らかに頭がおかしいというか行動原理がイカレている(英国渡航時の旅客機での言動で確信しました。こいつ、おかしい)まさに正義の味方そのものである上条さんと違って、一方通行や浜面のそれは非常に明快で親近感の湧く分かりやすい原動力であり、勇気の発露だというのも大きいんだろう。
特に、コンプレックスでひねた一方通行とはまた違い、浜面のそれは男として普遍的であるからこそ、その熱い思いには感情移入してしまうし、なんだかんだと特別な力を持ち、自分が誰かを助ける事を絶対の事としている上条さんと違って、本当の意味でレベル0の無能力者でありながら、無力を勇気と必死さを武器として覆し、圧倒的な死の予感に歯向かい、絶望に抗い、恐怖に打ち勝ちながら助けなきゃいけない人を助けるその姿は、無条件で惚れてしまう。
こいつは、きっと誰と組んでもどんな集団の中に入っても、下っ端として扱われそうなんだけど、そのくせ皆からなんだかんだと頼られそうな所があるんですよね、イメージとして。どういうタイプのキャラと合わせても、容易にそういう想像が出来てしまうあたり、面白いキャラクターだわなあ。

一方通行も、なんかもう完全に打ち止め至上主義に入ってるよなあ(苦笑 以前はもうちょっと抵抗してた気がするんだけれど、他のやつのロリコン疑惑に、自分には口出しする資格がねえとか呟いているあたり、もう陥落してる!?
彼のいうところの<悪党>も、以前はもう少しダークなにおいが残ってたんだけれど、この巻の言動はもう言い訳のしようのない正義の味方をやってたよなあ、これ。此処までくると、悪党の意味を反転させて使ってるようにしか見えないんだよなあ。
その辺の彼の心情、コンプレックスのことは作中でも言及されているけれど。まあ彼のこれまでの来歴を思えば、堂々と言えたもんじゃないというのも分かるんだけれど、罪と向き合うために厚顔無恥にでも、自分の行為を善行と宣言するのもありだと思うんだけどなあ。

ラストの展開を見る限り、物語もそろそろ佳境に入ってると言う事なんだろうか。主人公三人揃い踏み、というのはどうしても燃えてしまうんだけど、いい様に操られてるみたいで悔しいなあ。でも、燃える。

しかし、この学園都市の暗部を描いたシリーズ読んでると、子供たちが容赦なく汚れ仕事に手を染めている事自体、ムカムカするんですよね。子供にやらすこっちゃないだろう、と。
そんな闇に沈んだ子供たちと比べて、美琴や黒子たちは境遇として非常に恵まれているんだなあ。汚い部分に踏み込まずに済んでいるのにはホッとさせられるんだけど、同時に、けっこう複雑な心境になるもんですねえ。
でも、そういう汚い部分には身を染めなくていいけれど、美琴にはそろそろ一度は上条さんの物語の中に飛び込んでほしいものです。結局彼女、シスターズの一件以外はずっと関わりあえない部外者のままだったもんなあ。インデックスも不遇だけれど、美琴も美琴でヒロインとしては結構不遇な立ち位置にいる気がします。特に次のロシア編ではインデックスは囚われのお姫様状態なのに対し、美琴はまたも部外者のままで終わりそうだし。

1巻 3巻 16巻感想

CAPTAINアリス 15   

CAPTAINアリス 1 (イブニングKC)

【CAPTAINアリス 1】 高田裕三 イブニングKC

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わははは、面白い面白い! これはべらぼうに面白かった!!
人格破綻者だけれど際立った操縦技術とアクシンデントに見舞われ極限状態に陥るほどテンションがあがり冴え渡る女性パイロットを主人公にした、飛行機モノ。飛行機事故モノといった方がいいかもしれない。
突発的に襲い掛かる予測不明の飛行機事故に対して、パイロットたちが能力と知識の限りを尽くして地上に無事着陸させるまでの展開が、もうこれが激烈に燃える!
そして状況がヤバくなればなるほどはっちゃけるヒロインにして主人公たる長谷川ありすが、面白いったらありゃしない(笑
普通の人ならばパニックに陥り、青ざめ、真剣深刻に対処するような極限状態に、この娘ったらば完全にイッちゃった顔になってはしゃぐはしゃぐ。高田さんの作品で言えば、ブチきれて最高に楽しそうに大暴れしているときのパールバティ様みたいなもんか。あれをさらにイッちゃった状態にして突き抜けさせたような有様になりながら、次々と管制やらで見守るみなの度肝を抜くアプローチを次々と決めて、墜落非回避と思われた飛行機を滑走路に下ろしていくんだけど、この一冊で二件のアクシンデントを扱っているのですけど、これ一本一本で二時間ドラマは映画でも作れそうなほど内容濃くて面白かったーー。
二本目の、あの滑走路がぶわーーっと見えた瞬間なんか鳥肌たったもんなあ。
登場人物も普段はぎゃーぎゃーやかましくて人間としてどうよ、みたいな態度とってる人でも、ここぞと言うときにビシッと決めてみせる職業意識の高さや、プロの誇りを垣間見せるシーンがまたカッコいいんだ。
そしてビリビリと伝わってくるのは、それぞれが示す技量の凄まじさと、その凄まじさをキャッチボールのようにぶつけ合うことで共鳴し相乗され、挙句に現出する奇跡のような結末。ありすと金蚕が互いにその凄まじさを見せ付けあうことで、しびれて興奮しまくっていくのがこっちにも完全に伝染してしまいましたよ。墜落寸前の危機的状況にも関わらず、自然と破顔し高揚したまま舌なめずりという、獲物を前にした飢えた野生動物みたいな顔して突っ込んでいく二人に、テンションあがりまくりましたわ。
深刻ぶるのもいいけれど、こういうハイテンションで危機一髪回避劇をやられるのも、燃えまくっていいですなあ。

本来、現代の飛行機事故なんていうのは起こる可能性が究極に低く乗り物の中でも安全なものと言われていますけれど、この作品では飛行機事故を予知できてしまう少年の存在によって、アクシデントが起こると予知された機にチームガーディアンとして選抜された精鋭パイロットが乗り込み、予防措置を突き破り起こってしまった事故に対して最悪を回避するため奮迅する、という展開を用意しているため、まず事故が起きるという前提で話が進んで、うまくパイロットが主人公ながら何度も事故と遭遇するというありえない展開を処理してるんですよね。これはうまいなあ。

なんにせよ、これはべらぼうに面白かったです。おすすめ♪

ぐらシャチ4   

ぐらシャチ (電撃文庫 な 7-13)

【ぐらシャチ】 中村恵里加/双 電撃文庫

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ああああっ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!
気色悪い!!
この異様な齟齬感、得体の知れない不気味さ。言葉が通じて意志の疎通が図れるのに、だからこそ余計にジワジワと這いよってくる違和感。
相変わらずというべきか、この作者の人ならざるものの異質さを描き出す力は別格と言っていいでしょう。人間と人外との相容れない価値観の齟齬を描かせたら、今のライトノベル界隈ではこの中村恵里加さんと【珠枝さま】の内山靖二郎がちょっとほかと隔絶してると言っていい。
なまじ最初は人間じゃなくシャチの姿で現れたから、余計に異質感が際立つんですよね。シャチの姿の時には感じなかった不気味さが、人間の姿になったことで一気に浮き上がってくる。
人間の姿をし、人間の言葉を喋り、会話が出来る。それなのに喋れば喋るほど、相手が理解できなくなってくる。それが、人間の皮をかぶっただけのまったく別の生命体だというのが、否応無く理解できてしまう。この気持ち悪さは尋常じゃないです。
相手はとても友好的で勉強家で人間の文化や社会を理解しようと努力している、はっきり言うなればとてもいいやつなのです。それは分かる。彼と対面し、彼にグラボラスという名前をつけることになった少女・榛奈もそれはよく分かってる。でも、頭で分かることと生理的に感じる部分はやっぱり別物なんですよ。この生理的な不安感を引き立てる、生理的な嫌悪感を際立たせる描写が、もう神がかってる。ダブルブリッドの頃から、この手の演出が凄いんですよね、この作者は。
何故人間は、自分とは違う異質なものを排斥しようとしてしまうのか。これを読んでいると、もうそれは本能から湧き上がるものなんだと、嫌々ながら納得せざるを得ない。
人と人外の間に横たわる絶対的な価値観の断絶。相互理解が絶対に果たせない領域。そう、それは人間が人間であり、人外が人間でない限り絶対に相容れない部分というのがあるんですよね。
問題は、それを踏まえてなお、歩み寄り友好を結び親愛を交わすことができるのか。
前作ダブルブリッドでは、最終巻間際までその断絶は埋められることなく決定的な破滅へと至っていくのですが、9巻から最終10巻の間に横たわる5年弱の間に何かあったのか、最期の最後にメインの破滅は避けられなかったにしても、歩み寄るための可能性みたいなものは示されることになったんですよね。虎司や夏樹の存在に示されるように。
この【ぐらシャチ】は、その可能性の部分をより突き詰めた作品のように、読み終えて感じた気がします。
自分の目的とは別の所で人と、初めてまともにコミュニケーションをとることの出来た人間・榛奈ともっと話したいと思うようになったグラと、その天然ボケでちょっとズレたところのある少女・榛奈との交流は、グラが自分の知る親友でないと知らないまま友好を深めていくことになる平八とグラとの関係を含めて、価値観の断絶はディスコミュニケーションと直結するわけではなく、相互理解が届かない異種族間でも分かり合えないまま分かり合える事は不可能ではないのだと……ええっと、友達になれるよ、というと齟齬があるか。なれるよじゃなくて、いられるよ、というべきか。そう、ずっと友達のままでいられるよ、というのが描かれてたんじゃないかな。
さりげなく、その異種族間の繋がりというのはグラ関係のみならず、言葉の通じない犬である飼い犬のシノと榛奈やその家族との関係の中にも描かれていたような気がします。対比という感じではなかったけれど。
あのシノの描き方も今思うと、なんか凄いよなあ。

辛かったのは黒田くんの一件か。グラの告白には最初、こちらも青ざめたけど、グラの言うとおりなら黒田くんにはいったい何があったのか。何気に元の黒田くんのキャラクターもなかなか愉快そうだっただけに、残念といえば残念である。
彼に限らず、惚けた榛奈や平八、妙にこまっしゃくれた物言いをする榛奈の弟といい、それぞれがすごす日常のワンシーンは服の裾を引っ張られてついつい見つめてしまうような妙があって、面白かったなあ。キャラが立っているといえばそれまでなんだけど、そういうキャラの濃さとはまたちょっと違う感じなんですよね。心理描写や日常描写の妙というべきかなんと言うべきか。
この辺はかなり明後日の方向にかっとんでしまった【ソウルアンダーテイカー】と比べて、非常になじみやすい感じになってます。あれはぶっ壊れてたからなあ。

この巻でうまいこと終わっているので続きが出るのかは定かではないのですが、これで終わってもいいと思うし続きが出たら読んでみたいと思うし、なかなか複雑だ。なんにせよ、電撃の古豪・中村恵里加今なお健在! というのが良くわかって、良かった良かった。是非にこれからはどんどん本を出して欲しいなあ。

偽りのドラグーン 24   

偽りのドラグーン 2 (電撃文庫 み 6-25)

【偽りのドラグーン 2】 三上延/椎名優 電撃文庫

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ジャンはイイ奴なのだけれど、粗忽で直情的で考えなしという悪い意味で頭が悪い奴でもあるんですよね。三上さんの手がける作品の主人公っていい意味でも悪い意味でも思慮深いタイプが多かったので、この手の頭の悪いタイプの主人公は初めてなんじゃないだろうか。ただ頭は悪くても愚鈍ではないんですよね。物覚えは悪いし短慮だし結構根に持つタイプだけれど、自分が悪いと理解さえすれば反省するのに躊躇わず、失敗をちゃんと糧に出来、縺れた人間関係にもキチンと踏み込める。その辺は好感度高いんですよね。
すぐに調子に乗る傾向もあるけれど、図に乗って友情をぶち壊しにするようなひどいことはなかったし。
欠点はとても多いんだけれど、生まれ育ちの鬱屈した環境を思えば、根っこの部分が太く真っ直ぐ通っていると言ってイイ。
ある意味その真逆を行っているのがあの生徒会長か。なまじ元の能力が高い分他人を見下し、自分を高めるのではなく他人を貶めることで自分の優位性を確認しようと言う根性が頂けないし、自分の非や失敗を認めないことで、どんどん抜け出せない泥沼に嵌まっていきながら、それすらも認めず順調に破滅の道を辿っている。でも、こういうやからに限って、自分の破滅に他人を巻き込むんですよね、それも盛大に。小物は小物なんですけど、虫唾が走る下種野郎というタイプなので、こいつの末路こそ盛大にやってほしいところです。

一巻はジャンの無能すぎる能力と性格、ヒロインであるティアナの何を考えているか分からない辛らつな言動のお陰でなんか読んでてもストレスたまるばかりだったんですが、一巻の終わりで二人が決定的に決裂した結果、逆にティアナの不鮮明だった内面が良く見えてきたことで、俄然面白くなってきました。
なにより、ティアナとジャンが昔逢っていたというのは、決定的な要素だよなあ。さすがに幼馴染とは言えないけれど、過去に面識があるとないとではだいぶ違うでしょう。
ティアナが抱えたままだった先の戦争の傷跡と罪科。それはなるほど、彼女が戦うことを恐れるには充分な理由だ。ダレが悪いって、ティアナが悪いに決まっているのだけれど。彼女も昔はジャンと同じタイプの粗忽モノだったのか。だからと言って今が良くなったとはいえないんだけれど、逃げ回っているとはいえ自分の過去に痛みを感じ続けているというのは悪いことじゃないんだろう。その源泉が罪悪感であり罪への恐れであろうと、他人の名前を覚えようとしたり、パートナーとしてかつて戦場で心をつぶされた時に出会った少年を選んだのは、なんだかんだと前に向かって歩いていることでもあるんだし。
そんな彼女の真実を知ったとき、ジャンが放った宣言は、なるほど彼が主人公だと思わせるに充分な、背負う覚悟を持った一言だった。
あとは、彼女が彼に預けるばかりでなく、一緒に背負えるだけの強さを手に入れることなんだろうけれど、それはこれからのパートナー関係次第なんでしょう。なんにせよ、これで二人の間に隠し事は何もなくなり、本心からつながることの出来た二人の関係は劇的に進展しそう。逆にまた、劇的に衝突しかねない可能性もあるけれど。二人とも、頭悪いしなあ。
頭悪いといえば、クリスはクリスで完全に色ボケしてるんじゃないかw 二巻の彼女は、かなり危険なことに巻き込まれ自分の身も危ういことになってるのに、ジャンのことばっかり考えてるし。一巻のときはまだ普通に男の子に見えてたのに、この巻の彼女はもう乙女モード真っ盛りじゃないですか。とはいえ、報われそうにはないんだけど。
竜と人間とが異性として付き合うのはタブーとされているらしいので、ティアナとジャンとの間には恋愛に関しては大きな壁が立ち塞がっているので、そちらから攻めるケースはありそうだけれど。

ラストはまた、驚愕の新事実が明らかに。一巻でもそうだったけど、何気に巻末に仰天物が用意されてるな、このシリーズ。さすがにこれは、全然予想していなかった。そうする理由が全然見当たらないもんなあ。どうも彼の目的も含めて、この竜が存在する世界そのものに、物語の根幹が関わってきそうな感じ。そういえば、三上さんの作品でこれだけスケールが大きいのも初めてだなあ。わりと今までは地元密着的なものだったし。現代怪異モノと異世界ファンタジーの違いはあるんだろうけど。

狼と香辛料 13.Side Colors 34   

狼と香辛料 13 (電撃文庫 は 8-13)

【狼と香辛料 13.Side Colors 3】 支倉凍砂/文倉十 電撃文庫

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<狼と桃のはちみつ漬け>
女とは兎角お金のかかるものである、というのは人の世の変わらぬ摂理の一つと言えましょうが、視点を変えてみるならばこれすなわち、女に費やす金こそ男の甲斐性、なんて風に嘯く人もいるわけで。
その意味では、ここぞと言う時ホロを喜ばすための散財を躊躇わないロレンスという男は、大した甲斐性の持ち主となる。普段、商人として金を愛で金を惜しみ金にこそこれ以上なく執着している人種であるからこそ、なおさらその大事な大事なお金様を惜しげもなく費やす行為には重みが増すというものである。
さらに言うならば、それだけ泥沼に脚を突っ込んだごとくズブズブにホロに絡め取られているとも言えるのだけれど。
まあ、その金の費やす先が殆どの場合、食い物に化けてしまうのはご愛嬌というものか。宝飾品などと言ったものではなく食べ物故にこそ、ロレンスもついつい財布の紐を緩めてしまうのかもしれないが。
もっとも、食べ物を与えられているばかりではただの飼い犬、狼とは言えぬもの、などといえばエネク氏がお怒りになられるか。なんにせよ、好いた男に貢がれて喜ぶにせよ、貢がれる一方の関係はホロにとって承服しがたい居心地の悪いもの。となれば、貢ぐための労働に手を貸し尻尾を差し伸べるのもむべなるかな。ロレンスの甲斐性は、ここでプライドに任せてホロを拒絶せず、素直にホロの申し出を受ける所なのだろう。それこそが、もっともホロを喜ばせていることをちゃんと分かっているのかは定かではないけれど。
つまるところ、目的が女の好物であろうと貢物であろうと、二人で働き稼いではしゃぐ姿と言うのは、もう夫婦そのものだなあ、ということなのである。

<狼と夕暮れ色の贈り物>
さてもこの男、女に食い物ばかりを与えるだけではなく、ちゃんと装飾品の類を送りたいという人並みの願望はきっちりと持ち合わせていたらしい。
それで与えるものがアレというのは、なんとも商人らしいというべきかロレンスらしいというべきか。なんにせよ実に本音むき出しをてらわない贈り物で、ホロとしてはむず痒くもそこまで直接的に言われてしまったならば喜ばずにはいられないものだろう。まったく、ご馳走様である。


<狼と銀色のため息>
三話目は待ちに待ったホロ視点でのベタ甘話である。ここぞとばかりに、ホロ女史は相棒がどれほど間抜けで愚か者で愛らしく自分にベタ惚れしている生き物かを力説しているが、あげつらえばあげつらうほど、それだけ彼女が彼のことを好いているのかが、左右に振れる尻尾のようにあからさまに伝わってくるばかりで、何ともむず痒い。
その上、結論として嬉々としてこんな御馬鹿に惚れたが負けよ、と惚気てこられるので、たまったもんじゃないのである。
ご馳走様ご馳走様。


<羊飼いと黒い騎士>
未だに根強い人気を誇るノーラが主人公となる書き下ろし中篇の登場である。といっても語り部はノーラ本人ではなく、なんとエネク氏となっているのだが。この作品も十三巻を数えて幾多の登場人物が現れたが、エネク氏ほど知的で勇壮で寡黙な雄はついぞ現れる事はなかった。その寡黙な彼が語り部となるのだから一体どういう内面が晒されるのかと思えば、なるほどこれはいっぱしの騎士様である。存外、気取り屋なのであった。人とは違う視点での語り口は、なかなかウィットに富んでいてこれがとても面白い。語り部が変わるごとに話の様相から変化する支倉先生の話作りの妙は、またホロとロレンス以外の人物が主人公の話を読みたいと思わされると同時に、【狼と香辛料】以外の作品への興味もまた引き立てられる。あとがきを読む限り、別シリーズの準備も進めているようなので、素直に楽しみである。
さて、本話であるが、ロレンスと別れ、羊飼いを廃業して仕立て職人を目指して旅立ったノーラのその後なのだが、何気にこの娘も波乱万丈の人生を歩んでいる。まさに現在進行形で波乱万丈の人生に脚を踏み入れたところ、というべきなのかもしれないが。
思うように生きられないのが人生と言うものなのかもしれないが、それでもその場その場で修正を繰り返し、望めるものをわずかなりとも手にしていけるのであれば、それはまた一つの幸せの道行きと言えるのかもしれない。そもそも、ノーラのように信心深く誰かの役に立つことを至上の喜びとするような性格だと、意外とこれは天職となりえるのかもしれない。政治的駆け引きなど出来る性格ではないのも間違いなく、下手をしたら抜け出せない底なし沼に嵌まってしまったのかもしれないけれど。
でも、魔女と呼ばれ人から隔離され人と交われずに生きてきたノーラにも、友人と呼べるような関係の相手ができ、人として人の中に交わることが出来たのだから、その先行きは決して暗澹たるものではないはずだ。なにより、彼女には賢しらながらも頼もしい騎士殿がいるのだから。
なんかの拍子に、将来随分とえらくなっててもまたおかしくはないのである。

2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻感想

アスラクライン 13.さくらさくら4   

アスラクライン 13 (電撃文庫 み 3-28)

【アスラクライン 13.さくらさくら】 三雲岳斗/和狸ナオ 電撃文庫

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 新たな機巧魔神(アスラ・マキーナ)《黒鐵(クロガネ)・改》を手に入れ、二巡目の世界へと帰還した智春たち。そこでは洛芦和高校の生徒たちが、洛高最大のイベントであるクリスマスパーティの準備に勤しんでいた。一見なにもかわらぬ平穏な日常。だが世界の崩壊の予兆は、そのときすでに智春たちの世界にも訪れ始めていた。
 非在化を始めた世界。虚空に浮かぶ機械仕掛けの巨大な腕。そして魔神相剋者と化した炫塔貴也、自らの目的を果たすために建てた巨大な塔……。
 かつてない世界の危機を前に、操緒と智春が選んだ最後の決断とは……!?。シリーズ衝撃のクライマックスへ!!


このシリーズ、当初から水無神操緒の立ち位置がわかんなかったんですよね。幼馴染にして智春に常時くっついて離れない幽霊(ベリアルドール)であるにも関わらず、智春が奏をはじめ、杏や佐伯妹といった女性陣が接近しても、多少状況によって邪険にされてムッとすることはあっても嫉妬したり女の子と仲良くすることを嫌がったりはしなかったわけです。それどころか、奏との関係なんかを茶化したりからかってたりすらしていて、これはもしかしたら操緒はトモに対して広大な親愛こそ抱いていても、女性として男性に向ける愛情は抱いていないのかもしれない。そもそもヒロインじゃないのか? とすら首を傾げる事度々で、二人の絆やつながりの深さは回を重ねるごとに伝わって来たものの、あの操緒の頓着の無さは一体なんなのか分からないまま、ついにこの最終巻まで来てしまったわけですが……。
此処に来て、トモと奏がついに結ばれたときに操緒が不敵な笑みを浮かべて呟いた一言で、一気にこれまでのあの操緒の態度の意味が、余裕の秘密が理解できました。

この女、おっそろしいなあ!!

いやあ、完全にこの操緒という少女のキャラクターを見縊ってました。あっけらかんとして執着だ女の業だのとは縁のない娘だと思ってましたけどとんでもないとんでもない、このシリーズに登場した女性の中でも図抜けて情念に満ちた怖いくらいに「女」そのものじゃないですか。
うわぁ、鳥肌たった。いろんな意味で。
男女関係でここまで揺ぎ無い自信と受容力と諦めを同時に持ち合わせるか。普通、ああ言う事を言ってしまう女性と言うのは大概受け身なんだけど、操緒はその点まったく違うもんなあ。いやあ、これは参った。確かに想いも身体も両方とも、奏と結ばれたにも関わらず、全部操緒に持っていかれた感じ。敵わんわ、これは。

なるほどつまり、そうかそうか。一巡目の智春が何故失敗したのか、二巡目の智春はまた違う見解を示しているけど、きっと多分それは、何の根拠も論理的でもないけれどこの一言で全部説明できるんじゃないだろうか。
すなわち、一巡目のトモには操緒がついていなかった、から。
二巡目の世界に来て、ついに言葉すら交わすことなく死に別れてしまった二人。環緒の最期の凄絶さは二人の関係の凄まじさをあらわしていたと同時に、二人はやっぱり一緒にいなきゃダメだったんだよなあ、と思い知らされた。
そして、ここでの二巡目の操緒の台詞や態度もまた凄まじい。それは冒頭で描かれる、操緒がベリアルドールになった時の話にも通じて、操緒が秘めていたトモへの想いの揺るがなさを示している。覚悟をすらも必要としない、当然にして必然、この世の摂理そのものであるかのような、その揺るがなさは、確かに余人が入る隙間が微塵もない。そして、間に割ってはいるようなことさえしなければ、この娘はトモとつながるあらゆるものを受容するのだ。それはもう寛容や許容ですらないのだ。ぶっちゃけ、相手にしていない。鼻にもかけていない。
そして恐ろしいことにその自信は独り善がりなどではなく、完全に双方向なのである。トモにとっても、別に恋人を作りその人を大切に思い愛したとしても、それと操緒はまた完全に別枠なんだから。
そりゃあもう、敵うわけがない。
加えて、こんな関係を受け入れられるのは、まさに奏しかいないわなあ。彼女のマイペースで余人とかなりピントの外れた鷹揚さがなければ、気が狂うぞ、これ。杏なんかも大概大らかだから大丈夫かもしらんが、佐伯妹じゃまずもって無理だわなあ。

と、操緒の正体に戦慄しっぱなしだった最終巻ですが、さすがクライマックスだけあって数々のなぞが一気に明らかに。と言っても、不明のまんま終わった設定も数あるんですが。その辺は、短編集や後日譚で明らかになるんだろうか。
なんにせよ、この最終巻で明らかになった最も大きい謎は、朱浬さんの正体だろう。てっきり単純に瑶が誤解していただけで、朱浬と紫浬が入れ替わっていただけだと思っていたんだが、真相は遥かに複雑怪奇に入り組んでいたわけだ。なるほど、単に瑶が誤認していたわけじゃなかったのか。確かにあれだけ仲が良く、生前は二人の区別がちゃんとついていた瑶が、なんで朱浬と紫浬を間違えたのか理由がわかんなかったもんなあ。

そして、大切な人を失って道を誤った部長や冬流会長と違い、一連の戦いの中で同じく大切な人を失った佐伯兄や、雪原瑶はちゃんと残された想いを違えず、自分の為すべきことを為していく。佐伯兄は、今回かっこよかったなあ。あの登場したときは融通利かない大迷惑だった人なのに、ラストでの頼もしさは素晴らしかったです。

しかしこれ、ラストは決して大団円じゃないんですよね。失われた命は戻らないし、悪魔の進行した非在化の症状は治らないわけでしょ。氷羽子や真日和の彼女の風斎美里亜はこのままじゃ長くないんだろうし。せめて非在化の件は後日譚で何とかして欲しいなあ。
心なしか急ぎ足に見えたのは気のせいなのかな。一巡目に戻ってからももう少し続きそうな感じだったんだけど。最後の書き方は、賛否あるように思えるし。それも、後日譚次第になるんだろうけど。
これは、なんとか出して欲しい。

和葉のエピソードは、どうもあとがきの内容からすると最初から考えられていたようで、だとすると彼女の出番が極端に少なかったのは最後のためだったのか。不憫な(苦笑
彼女の詳しい事情に関しても結局何一つ明かされないまま謎だけ増えたので、これも後日譚で……って、もう一つ書かなきゃ始まらないじゃないですか。出してくださいよ、お願いしますよ。

10巻 12巻感想

スクランブル・ウィザード 53   

スクランブル・ウィザード5 (HJ文庫)

【スクランブル・ウィザード 5】 すえばしけん/かぼちゃ HJ文庫

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シリーズ五冊目は短編集。これまで事件事件と殺伐とした展開が続いていたので、ここで一息付いたのはいい構成ではないでしょうか。幕間の何気ない日常の元にいる彼らを描くことで、登場人物の新たな側面に焦点を当てたり、掘り下げが叶いますし。その辺を意識してか、これまで登場したキャラクターを満遍なく短編の主人公として扱ってますしね。
幼い暴君として君臨していた駿介の成長や、十郎との出会いの回想から能勢の在りようなんかにも手を伸ばしていますし、まだまだ色々と描きたい事があるんだろうなあ、というか書けば書くほど描きたい事が増えてってるんだろうなあ、というのがなんとなく伝わってきますね。
能勢と行動を共にするアデルなんかも、今後は重要なキャラクターになってきそうなんですよね。彼女、4巻では意外な行動とってるし、単純な敵として考えるには段々と複雑な内面を獲得しつつある。能勢が自分とカノジョが似ていると感じたことを要にして、またぞろ波及してきそうな感じだ。十郎と能勢の関係というのも、仲が良いとか親密とは程遠いそっけない関係にも関わらず、妙にお互いの存在に引っ張られてる感じのする、なかなか奇妙な関係なんですよね。これも今後が興味深い関係だなあ。
魔法士として世間の注目を浴びるようになってしまった月子。魔法士の社会的立場を向上させるために、敢えて世間の目に自分を晒し、衆目の中を歩む覚悟を決めた月子。小学生でありながら、長い長いこの先の人生の行く先を決めてしまったこの子は、えらいとかそういうのを通り越して、敬服すら覚える。自分が歩む道がどれほど過酷で辛いものかを聡明な彼女ははっきりと自覚しているんですよね。元々は決して気の強くはない繊細なこの子が、その選択を毅然と選んだわけだから、ホント大したもんだわ。その簡単に手折れそうなカノジョの心を頑強な大木と成して支えているのは、十郎の存在そのもので、彼はその重みを本当に自覚しているのか。他人の人生を生涯背負うのは、大変だぞう。もっとも、見てる限りでは充分以上に十郎は支えとしての役割を果たしていると言えるけど。ただ、男性としてではなく先生として、というよりも師としてって感じかな、あの雰囲気では。
ぶっちゃけ、ロリコンの気が一切皆無な成人男性からしたら、小学生の女の子なんて異性として認識しろというほうが無理なんだよね。ゆえに、最後の月子のあの行動には、ぶったまげたんじゃないのか、十郎くんは(苦笑
ろくでもない祖父に駒として利用されているとはいえ、頼もしい父親に守られ、自分がどんな立場に立っても離れずにいてくれる親友たちに囲まれ、何より大切な人に生涯傍にいると誓ってもらえた今の月子には、覚悟によって据わった度胸と勇気が備わって、女の子としても一段も二段も成長してしまって、いやはや。

2巻 3巻 4巻感想

六畳間の侵略者!? 33   

六畳間の侵略者!?3 (HJ文庫)

【六畳間の侵略者!? 3】 健速/ポコ HJ文庫

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この主人公はあれだなあ……非常に良く出来た人間なんですが、出来すぎている分、俗っぽさが薄いというか年頃の男の子らしい欲とか邪まさが乏しいというか、実はどこぞの寺で住職でもしてるんじゃないかというような雰囲気があるんですよね。周りが女の子ばかりなのに、まるで異性を意識している風情が見えない。二巻の体育祭を通じて、皆との仲が良くなってきた分、その辺が顕著に見えるようになってきた。
ある意味、とてもギャルゲーの主人公らしいといえばらしいんですよね。現状がいわゆる「共通ルート」上にあると考えれば。ある種の主人公には、共通ルート上にいる間はヒロインに対して完璧なほど友情を構築するのに徹して、個別ルートに入るまで異性として認識しないというタイプのがいるんですが、こいつはまさにそんな感じ。
考えてみると、これほどギャルゲの形式を踏襲している気配を感じる作品も意外と珍しい。現役シナリオライターでライトノベルを出している人は何人もいますけど、こんな風に読んでてギャルゲーをプレイしているみたい、と感じさせられるものはなかったように思うし。
まー、そう感じているのは自分だけかもしれないけど。
肝心のヒロインたちも、仲は良くなってるけど恋愛フラグに関しては笑っちゃうほど立ってないし。早苗なんかはだいぶ意識している風に前の巻なんかは感じたけど、今回の顛末を読んでいると単に孝太郎に懐いてて、他の子らと仲良くなる事で阻害されるんじゃないかと危機感を抱いていただけみたいで、恋愛云々はなさそうだしなあ。ティアもその辺は同レベル。ゆりかに至っては未だに変人扱いされてるし。
結局、本命は晴海先輩になるのかなあ。その割りに、今回は話自体に参加してこなかったし。明確に孝太郎に恋愛感情を抱いている唯一の女性だったのに、六畳間の一員でないという一点で他のメンバーに比べて一歩遅れた位置にいるんですよね。孝太郎本人も彼女に対して先輩として敬意を払ってるけど、対応が丁寧で非常に気遣って接している分、なんかちょっと距離感ある感じだもんなあ。
その意味では、前々からその素振りを見せてて、今回ガリガリと食い込んできたルースさんが台風の目になりそうじゃないですか。この人、ティアのおつきで最初は完全にサブヒロイン的な扱いだったくせに、メインヒロイン衆全部ごぼう抜きしやがった(笑
元々六畳間メンバー唯一の良識人で孝太郎の好感度高かったのをイイことに、一人でラブコメモード入ってるし。何気に孝太郎をドキドキさせている唯一と言っていい人だし。
まー、とはいえ水着の一件を見る限り、まだまだまるで相手にして貰ってないみたいですけど。孝太郎の朴念仁ぶりはひどいな、ホント。好意に気づかない云々以前に、恋愛そのものに感心も興味もないって感じだもんなあ。
実のところ、真の本命メインヒロインはキリハさんだと睨んでるんですけどね、私。スペックに対してこの人の動静が静か過ぎるんですよね。もっと積極果敢に動いてもよさそうなのに、ひたすら影で牙を研いでいる感じ。動き出しさえすれば、ラブコメの鉄則からして主人公との絡みが増えて、関係が深まっていくのが常なんだけど。キリハさんの幼いころの思い出とか、あからさまに主人公との幼馴染フラグだしw
それはそれとして……
そろそろゆりかが本格的に可哀想になってきたんですが(苦笑
本人の負け犬気質が原因と言えば原因なんですが、彼女も頑張ろうとしているわけだし、そろそろ決め付けと無理解で彼女を否定するのはやめて欲しいなあ。いい加減、弄られてるというよりも苛められてるみたいになってきてるし。

1巻 2巻感想

鳥籠の王女と教育係 4.姫将軍の求婚者3   

鳥籠の王女と教育係 姫将軍の求婚者 (コバルト文庫 ひ 5-83)

【鳥籠の王女と教育係 姫将軍の求婚者】 響野夏菜/カスカベアキラ コバルト文庫

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あらすじを読んで、ゼルイークとアレクセル王子の二人が苦手にしているゼルイークの姉登場、ということでまたぞろ良くあるパターンの家族ネタか、と思っていたんですが、これがどうしてどうして……。
決して悪女というタイプではないんですが、これはマジでタチの悪い女ですね。苦手云々というのは単純に頭が上がらないというんじゃなくて、生理的に苦手とかそういう解釈で考えた方がいいんじゃないか、というくらい。どうも彼女なりにゼルイークの運命に思うところがあり、彼女なりの信念があって行動してるんだろうけれど、やり方が陰湿すぎて虫唾が走るレベル。エルレインに直接手を出せばゼルイークの怒りを買うから、周りの人間に手を出すという考え方からして卑怯を通り越して卑劣だし、この嫌がらせがまたひどいんだ。他人の人生を何だと思っているんだ、こいつは。
エルレインが怒り狂うのも無理はない。というか、もっと怒ってもいいくらいじゃないのか。エルレインの事となると果断なゼルイークが、今回に関しては動きが鈍かったのも苛々させられた要因か。彼は彼で姉が何故こういう嫌がらせ行為に走るかの理由を知っている節があり、そのせいか腹立たしく思っていながらも積極的に行動に出ないんですよね。その理由が明らかにならないだけに、憤懣は溜まる。
結局、嫌がらせの煽りを食った人たちは、エルレインたちの機転やアレクセルの活躍もあって、なんとか元鞘に戻ったのだけれど、犯人である女は何の咎も受けず、エルレインに対して宣戦布告と不穏な文言を残して去っていき、どうにもすっきりしない結果に。
サブタイトルからして、てっきりオルフェリアがメインの話、特にアレクセルとの関係が進むような話になると思ったんだけどなあ。いや、実際アレクセル、着実にオルフェリアへのフラグは立ててるんですけどね。とはいえ、まだ双方とも異性として気になる相手、とまでは行ってないんだよなあ。気にしては来てるんだけど。
意外だったのは、エルレインもまた、しっかり段々とアレクセルのこと、好きになっててるんですよね。ゼルイークに惹かれながらもきっちりと線を引いているような素振りを見せ、明るく天真爛漫ながら深くも底を見せない、でもあけすけで心底まですっきり見えるアレクセルの人柄に、着実に好意を抱いていっている。
なんか、アレクセル王子がエルレインとオルフェリア二人まとめてゲットだぜ、ルートに入ってるような気がしてきた。大穴じゃないか、そのルートはw あとは、オルフェリアとゼルイークにラインが通れば、綺麗なスクエアが形成されるんですけどねえ。その辺にもうちょっと強化イベントが欲しいところだ。

1巻 2巻感想

ハニカム 35   

ハニカム 3 (電撃コミックス)

【ハニカム 3】 桂明日香  電撃コミックス

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萌さんが、萌さんがとんでもなくはるか遠くの世界に行ってしまわれた……。それこそ糸の切れた風船のように。アンカーの切れたボートのように。
さようなら、さようなら。

いったいどうしてこうなったんだ、と問い詰めたくなるような惨状にもう苦笑しか浮かばない。は、ハニカム内では米斗と舞さんが面白がってるからいいとして、日常生活でもあれだと少々交友関係とか心配な域に達してしまっている気もするんですが……。
萌さんはちょっと大穴が過ぎるよなあ。確かに御手洗くんはまだけっこう気にしているのですが。
やっぱり本命はどう考えても守時規子なんですよね。みんなを弄って楽しんでいる米斗と舞の二人をして、バランスが取れすぎててちょっかい出す隙がねえ、と言わしめるほどの関係にすでになってしまっているし。
とはいえ、二人のフォローもあってか、二巻時の守時インパクトからの劣勢より、鐘成さんもかなり盛り返しては来てるんですよね。不器用なツンデレかましている状況ではなくなった、というのもあるんでしょうけど、以前のやたら反射的に本心と裏腹の行動をとってしまう傾向もかなり鳴りを潜め、けっこう素直に自分の思ったとおりの行動を取れるようになってきてるんですよね。それに比例して御手洗くん、彼女に敬語使わなくなってきたし。あれで結構扱い難しいなと思ってた節もあったんだけれど、最近はわりと屈託なく接してきて、彼女の貧乏な境遇にも遠慮がなくなってきたし、雰囲気は確かによくなってきてるんですよね。
とはいえ、守時さんのほうも後退したどころか、こちらはこちらで守時さんが完全に御手洗くんの事を意識しだして、もうスキンシップも恋人みたいなものになってきてるし。鐘成さんが冒頭に、自分もうあきらめた方がいいんじゃないか? と真剣に落ち込むほど距離感縮まってしまってるもんなあ。
ということで、御手洗くんの自覚ないところで段々ときわまってきた三角関係ですが、実のところこのハニカムで現状一番注目すべき恋愛模様って、本人たち傍観者のつもりでいる米斗と舞の二人の大人の微妙な関係なんですよね。
この、程よい緊張感に包まれた、つやっぽい恋の駆け引きも、米斗さんの家庭の事情もあるんでしょうが、なんか米斗さんの箍が外れかかってきていて、一定を保ってきた二人の距離感もついに感覚を維持しきれなくなってきた感じ。舞さんも、踏み込んでくる米斗さんに対して戸惑いながらも、逃げようとはしないんですよね。彼女から踏み込むことはないものの、その場から一歩も動こうとはしないわけで。
ただ、ここでハニカムの人間関係にこうした形で時限爆弾が仕掛けられるとは。湧水に迫られたときの舞の顔を見てる限り、この爆弾って爆発した途端、現状を維持できないほどの威力となって炸裂するのはまず間違いないわけで、怖いは怖いんだけど、いつ使われるかという意味でもスリル満天だわ。御手洗くんがどういう反応を示すのかというのも興味深いし。

1巻 2巻感想

とある科学の超電磁砲 45   

とある科学の超電磁砲 4―とある魔術の禁書目録外伝 (電撃コミックス)

【とある科学の超電磁砲 4】 冬川基 電撃コミックス

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う、うわあ、うわあ。
ついに木山先生が予告していた件の絶望、シスターズ編に突入したわけですが、これはキッツいなあ。妹ちゃんとビリビリの交流が思いのほかホットで屈託なく、初対面同士にも関わらず本当の姉妹みたいだっただけに、その後の顛末のショックたるやとんでもないレベルでザクザクと刻まれる。
元々、これまでの巻でもアクションの描写力の凄まじさには圧倒されていたものの、どちらかというと痛快感の方が強かったんですよね。
でも、シスターズとアクセルレータの実験は殺し合いであり、一方的な殺戮であり、問答無用の惨劇なのです。ここまで徹底して克明に、残虐な殺人を見せられるとは覚悟していなかったので、かなり衝撃が強かったですわ。ビリビリから強奪、もといプレゼントされたバッチにすがりより、最期の瞬間ギュッと抱きしめるミサカ妹の姿がまた、象徴的で……実験の真相を知り、別れたミサカ妹を探し求める美琴の表情がイイんですよ。今まで見たことのない彼女の表情。怒りでも悲しみでもない、純粋なまでの恐怖。自分の知ってしまった事実への怯え、信じることを拒否する心。実験が今まさに行われている事を確認しようとする行為へ完全にビビり倒しながら確認せずにはいられない真っ黒な恐怖。真の絶望へと至る絶壁の手前。

正直、原作小説のこの事件での、ビリビリのあの悲壮な、自分が死んでも実験をとめてやろうという決意は、そこに至る彼女の心の変節が描かれていなくて、随分と唐突感に苛まれて彼女の決意とやらに特に思うこともなかったんですが、これを見せられると、彼女がどうしてなんで、あそこまで何もかもをかなぐり捨ててこの実験をとめようとしたのかが嫌というほどわからされる。というか、思い知らされる。
事件の顛末は既に知っているだけあって、このシスターズ編、ちょっと舐めてた所があったんですよね。これまでのエピソードと違って新鮮味に欠けてしまうかなあ、と。
とんでもなかった。完全に見縊っていた。
感想を書くたびに繰り返しになってしまっているけど、この冬川基という漫画家の力量はマジ半端ねえっすよ。この人が描いてなかったら、ぶっちゃけここまで面白くならんですよ。シスターズも、全然可愛いし。あのシニカルに惚けた感じ、たまんねえ。繰り返しになってしまいますが、ほんとにビリビリと彼女の掛け合いは楽しく面白く、ニヤニヤさせられたんですよね。それだけに、ラストのキツかった。
五巻を、五巻を早くお願いします、マジで。

2巻 3巻感想

ディーふらぐ! 25   

ディーふらぐ!2 (MFコミックス アライブシリーズ)

【ディーふらぐ! 2】 春野友矢 MFコミックス アライブシリーズ

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一巻に引き続き、ひたすら高尾部長かわいいよ。廊下の隅で膝抱えてカタカタ震えてる高尾部長かわえーーー!! いや、逃げてるならせめて隠れようよ(爆笑
そして優位に立った途端、速攻で調子に乗る部長かわええなあ! そっから落ちるのも急降下だし。
やっぱりツンデレさんの最強付属属性はドジッ娘&ダメッ娘だよなあ、と実感した。見てて放っておけないですものね。もう、見過ごすのがむしろ悪いみたいな気すらしてくるしw
一応この人、ロカと並ぶメインヒロイン格で間違いないんですよね。この二巻ですでに表紙を飾っているわけだし。ですから、そろそろ部長に名前のほうを進呈してほしいんですが。いまだに名前不明とか、メインヒロインとしてどうなんだよ(笑
しかも高尾部長の部長って、この作品の活動のメインとなる部活とは別の部の部長だし。まー、順調に高尾部長がツンデレ道を極めつつあるので、それさえ楽しめれば何でも構いませんよ?
一巻では高尾部長とロカの二人ばっかりが目立って、むしろ本来のゲーム製作部(仮)(正式名)のメンバーの紹介すらおろそかにされていたのだけれど(このへん、完全に勢い任せだ)、安心めされよ。この二巻では思いっきり影が薄かった水上桜にもスポットが当たっている。
なに、このエグい娘さんは……しまった、ボーイッシュな外見にだまされてた。わりと単純アーパーな体力勝負っ娘だと誤解していた。こいつ、しれっと笑いながら人の心の傷をグリグリつま先でえぐって喜ぶタイプだw

しかし、二巻になってもこの完全に予想想像の範疇外から繰り出されてくるギャグのたたみかけは、衰えるどころか切れ味を増している。
もう最初から最後まで笑いっぱなし。小ネタの応酬だけでは済まず、魔の十四楽団編なんて、ストーリー展開の根元からギャグとして聳えてるんだもんなあ。魔の十四楽団なんて全然覚えてなかったよ!! 実在すら信じてなかったよ!
そもそも、主人公の風間が不良さんで、学園制覇などという昭和の匂いすら嗅ぐってくる野望を秘めているなんて、根本から忘れ去っていましたよw
というか、あのリストを見る限り、この学校かなりの不良天国なんじゃないのか、とすら思えてくる。全部、ゲテモノばっかりだけどw
この調子だと、二人ブラザーズとかも出てくるのか?
何気に、あの嘘次回予告の魔の十四楽団過去回想編とか見てみたいよな。あいつら、無闇に面白いもんなあ。とはいえ、ロカと高尾部長が出てこないとそれはそれでヘコむんですけど。
この漫画、やたらと面白すぎるのでもっと短い間隔で出てほしいんですが、ほとんど9〜10ヶ月置きだもんなあ、焦れる焦れる。

1巻感想

天川天音の否定公式 25   

天川天音の否定公式 II (MF文庫J)

【天川天音の否定公式 2】 葉村哲/ほんたにかなえ MF文庫J

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そうか、これはそういう事だったのか!!
完全に登場人物の立ち位置を勘違いしていたのが、シロコの天音への痛烈な指摘とエピメテウスの繰り言によって、この作品について捉えていた構図がガラリと百八十度引っ繰り返った。
そもそも、非日常の象徴として雪道と瑛子を巻き込む存在として現れたはずの天音こそが、逆に巻き込まれた側であり、もっとも普通の人間であり、この惨劇が約束されている未来の運命に対する部外者だったという事か。
故にこそ逆に彼女――天川天音こそが雪道・瑛子・天音の三人によって紡がれ始めていたこのぬるま湯のような安息の日常を護る担い手となり、部外者であるが故に運命を覆す要となり、雪道や瑛子の歯止め――ストッパー、いつか彼らが境界を飛び越えてしまうのを、日常の側に引き留める存在になるということか。

てっきり典型的パターンとして元々日常サイドの人間だった瑛子の方がその役割を担う側だと思い込んでいたんだけれど、今回の一連の事件での瑛子の行動を見ている限り、彼女にはそういう立場に立つ事が絶対に無理だと思い知った。
瑛子と雪道の関係は、あまりに重く深く断ち難い繋がりによって、それこそ魂の根源からと言えるほどの深度で繋がっているので、日常とか非日常とか周りの環境、生死の境ですら問題ではないんですよね。彼女にとって雪道とは絶対と言っていい存在であり、彼の辿る道ならたとえ地獄だろうと奈落の底だろうと何の躊躇なく付いていく。他の何を捨てても振り返る事すらないだろう、まさしく絶対存在。
それは、雪道にとっての瑛子もまた同じで、それはかつて雪道が彼女のことを「自分にとっての光だ」とのたまったように、瑛子の存在は雪道にとって何を引き換えにしても後悔のない掛け替えの無い存在。今でこそ天音やシロコが現れ、彼にとって護るべき存在は増えているとはいえ、瑛子はまるで別格なんですよね。
そんな二人が、二人だけでいたなら、きっと軽々と越えてはいけない境界を踏み越えてしまうに違いない。いずれ襲い来るであろう明示された絶望の運命に、彼ら二人だけでは抗えない。
そこに、天音の存在が必要になるわけです。
ただ二人だけで完結しかねない雪道と瑛子の間に現れた、運命の部外者天川天音。彼女は異能者であり非日常の側の人間でありながら、あまりに普通の人間であり、多くのしがらみを捨て切れずにいる人間です。ラストに近いとあるシーン。あのシーンで躊躇なく雪道のいる場所に駆けこんでいった瑛子と違って、天音は異常な空間に隔てられた雪道のいる場所に飛びこむことを躊躇い、迷ってしまいました。
ヒロインとして致命的に見えるこの行動こそが、きっと天音の存在がこの物語において、雪道と瑛子の二人にとって、かけがえのない者となる事を示しているんじゃないかと思うのです。
異能者でありながら普通の人間そのものである彼女だからこそ、二人を日常の側に引き留める、過酷な運命から二人を護る存在になるのでは、と。
ですが、部外者が、普通の人間が運命の楯になるのなら、それ相応の代償が必要。大好きな二人を守るため、彼女はここでしばらく前、同じような選択を迫られた瑛子と正反対の選択をするわけです。それぞれが多大な勇気と覚悟を持って。
この時点を以って、雪道と瑛子と天音の三角関係というものは、誰一人欠けてもいけない、尊いまでの繋がりと化したのではないでしょうか。
もっとも、正直、今回の一件で天音はめちゃめちゃな勢いで死亡フラグを立てまくった気がします。雪道は、きっと最後に立てた誓いを果たす事はできないんでしょうけれど、守られたその先にこそ、もう一度果たせなかった誓いを果たす機会を得るのでは、となんとなくそんな展開を想像してみたり。それには、きっと瑛子が必要なんだろうね。瑛子こそが雪道の光なのだし。だからこそ、誰一人欠けたらいけないんだわ、きっと。

とまあ、完璧に入り込む隙のないように見えたこの三人の中に、見事にすべり込む事に成功した浅闇シロコというキャラクターの描き方は絶妙の一言。なるほど、出自と言い雪道や瑛子との関係といい、彼女が秘めていた知識と目的といい、その行動の果てに辿り着いた居場所といい、彼女もまた運命のキーパーソンとして重要な立ち位置を担う存在になるわけだ。具体的にどういう役割を担うかは、次回以降に見えてくるんだろうけど


シリアスパートの尻上がりの面白さと同様に、ラブコメパートもまたニヤニヤが止まらんのよですねえ。一番常識人で抑え役だったはずのクールで冷静だったはずの瑛子さんが、際限なく暴走しまくり、それをあたふた右往左往しながら必死に宥める天音の構図。おい、逆、元々の立ち位置と逆逆(w
猫被りのダメッ娘という属性に苦労症という属性まで付けて、天音さんはいったいどこまで行くつもりだ(笑
一巻で、既に振り回され役と思われた主人公の雪道が実は無自覚に振り回す方だったと発覚した上に、瑛子の無表情に惑乱暴走するタイプ、しまいにシロコは小悪魔的に事態をひっかきまわすタイプ、となると必然的に天音の抑え役の役回りが回ってきてしまうのか。傍若無人のお調子者に見えて結構根は常識人というのが発覚しちゃったからなあ(笑

一巻で絶賛に絶賛を重ねた本作品、二巻でますます惚れた、ベタ惚れ。自分の好みをスマッシュヒットされまくり。前シリーズの【この広い世界にふたりぼっち】よりは一般向けにカスタマイズされてるけど、まだまだ読み手を選ぶタイプの作品だとは思います。けど、自分相手にはまったくもって傑作様でございました。もう、こういうの大好きなんだよな、たまらん!!

1巻感想
 

11月29日


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11月14日

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11月9日

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11月7日

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11月6日

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