書籍感想2017

いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱 ★★★★   

いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱 (GA文庫)

【いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱】 嬉野秋彦/ POKImari GA文庫

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「箱」を巡り、魔術師たちが東京の夜を駆ける!


「何というか、実に……この国は無法地帯だな」
「居候のくせに、いつもいつも偉そうなんだから――! 」

西洋・東洋の魔術師たちが闇に潜みながら生きる現代。女子高生と陰陽師の二重生活をしているひよりは、同居人の『魔女術』使いレイジと共に行方不明になった父の遺した探偵事務所を経営していた。同業の女性魔術師、史鳳(シフォン)が受けた「箱を探して欲しい」という依頼に協力するひよりだ
ったが、簡単だと思われた箱探しは、時を同じくして発生していた連続殺人事件とも繋がり、事態は思わぬ展開を見せることに――! ?
嬉野さんの作品、ファンタジー異世界モノも面白いのだけれど、中華系と現代魔術モノも面白いんだよな。
ということで、本作の美少女女子高生陰陽師のひよりちゃんは、天台姫宮派の使い手なのである。天台姫宮派陰陽道というと、作者の作品の【ハルマゲドンバスターズ】、【シャイニングウィザード】シリーズでは主人公が使ういざなぎ流のライバルキャラが使ってた流派なので、途端みょみょみょみょ!となってしまった。懐かしの「式王子」なる式神も出てきましたし。
でも、ひよりって流派のあれこれとはほとんど関わってなくて、かなり独学入ってるんですよね。身辺事情明らかになってみると、あれほとんどこれってド素人じゃないの!? というくらい、父親から習った基礎をもとにして自分一人で構築してきてたみたいだし。いやいや、でも逆に独学であんな[
三面頬」みたいな式王子仕えてるのって、けっこうすごいんじゃないだろうか。
しかし、才能はともかく組織や一族血族に所属する形で魔術業界に関わっていないので、それだけダークサイドに踏み込んでおらず、メンタルも一般人寄りなんですよね、この子。実戦経験もほとんどないし、それ以上に素直で良い子すぎて、魔術界特有の黒い内実にもシビアで酷薄な世界観にも慣れてないとも言える。プロや玄人とは程遠いところにいるのだけれど、それだけスレてないとも言えるわけで、結構気が強くて頑固者ではあるんだけれど、基本的に聞き分けもよくて善人だし真面目で努力家だし、と作者のひねくれたキャラクターが多い傾向からスルと、なかなか珍しいタイプの子かもしれない。
一方で、彼女の心霊探偵事務所の居候で、実質師匠格であり、ひよりを助手扱いで事務所の主力を担ってるレイジくんはというと、いつものあれである。反論できないくらい直球の正論をバールみたいに握ってガンガン殴ってくるタイプの、超偉そうだけれど言ってることは全部だいたい正しくて思わず「むぐぐぐ」となってしまうお兄さんである。ただ、このレイジくん、この系統のキャラの中ではとびっきりに優しいんですよね。上からの物言いではあるものの理不尽なことは一切言わないし、間違ってたら反省するし、気遣いの言葉もけっこう絶やさないですし。厳しいことは言うものの、嫌味さは感じられないし、わかりやすく親切なんですよね。ひよりちゃんが、変に反発したり反抗するタイプじゃなく、偉そうな物言いにむっとはしながらも、だいたい素直に受け止め、アドバイスも真面目に捉えて、自分なりにちゃんと噛み砕いて糧にしていくし、レイジくんからしてもわざわざ嫌味言うようなシチュエーションにならないからなのかもしれないけれど、思いの外良いコンビなんだよなあ。レイジくんからしても、わりと鍛え甲斐のある世話し甲斐のある弟子なんだろう、ひよりって。変に業界スレしていない素人さが、むしろスポンジみたいに教えを吸収する土台になっているような感じでもある。それにしても、レイジくんのそれはスパルタではあるのだけれど。あれ、傍から見るとよく着いてってるなあ、というレベルなんですよね。愚痴はこぼしても文句らしい文句も言わずに素直に頑張られると、そりゃ気持ちも入るわなあ。
本来、レイジくんのキャラクターからして、かなりサバサバした、というよりも人間関係ドライなタイプなようにも見えるだけに、ここまで親切に見えるというのはそれだけ思い入れの強さにも見えてくる。
自分の見通しの甘さでひよりちゃんが怪我を負ってしまったとき、レイジくんかなり怒ったしねえ。彼のファミリアーであるミス・レオナも、あれひよりちゃんかなり可愛がってるように見えるし。扱い難しそうなJKっぽいくせに、歴代主人公というか歴代ヒロインの中でもかなりいい娘なんじゃないだろうか、この子って。

でも、レイジくんべったりではなく、同じく大学生と魔術師の二足のわらじ履いて活動してる史鳳と即席でコンビ組んで仕事を請け負って、と半人前なりに独自に情報屋とコンタクト取って活動したり、と自立した行動もとってるのである。この女学生魔術師コンビの半分アングラに踏み込んだような活動も、おおそれっぽい仕事してる、って感じで読んでて心浮き立つものがあったんですよね。
また、警察サイドでも魔術関係の事件の増加で、本物の魔術師のコンサルタントを活用する方針が動き出していて、その接触を受けて公的機関の下請けも兼ねて、みたいな事件との関わり方も出てきて、単なる現代魔術異能モノとは違う、お仕事モノというか、探偵モノみたいな要素も絡みつつ、謎の箱を巡る魔術師界隈の中でもやばい領域に首を突っ込む展開もあり、と現代社会の表と裏の境目、現実と神秘の世界を跨ぐような、ふわふわとしているようで地に足の着いた設定に基づくストーリーは、ベテランのお仕事らしく歯ごたえと味わいが両立してて、ほんと面白かった。
嬉野さんのこっち系統の話はまた読みたいなあ、と思っていただけに、どストライクだったかもしれない。これは期待のシリーズの開幕でありますよ。

嬉野秋彦作品感想

異世界魔法は遅れてる!8 ★★★☆  

異世界魔法は遅れてる! 8 (オーバーラップ文庫)

【異世界魔法は遅れてる!8】 樋辻臥命/猫鍋蒼 オーバーラップ文庫


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最強の現代魔術師 VS 七剣の頂点!

ネルフェリア帝国へ侵攻する魔族軍を退けた、現代日本の魔術師・八鍵水明。
因縁の敵との邂逅を経た水明は、ついに親友の遮那黎二に現代魔術師であることを打ち明ける。
驚く黎二と一旦別れ、帝都に戻った水明を待っていたのは――水着でプール!?
英気を養った水明は、アステル王国ハドリアス公爵邸で消息を絶った勇者エリオットの救出へ向かう。
魔術で密かに公爵邸へ潜入し、事件の真実を暴くべく立ち回るが、その果てに思わぬ人物――異世界最高の剣士“七剣"の第一位と対峙することになり……!?
異世界魔法と現代魔術が交錯する異世界ファンタジー、端緒を拓く第8巻!
やっぱり水明くんと黎二の親友関係って好きだなあ。黎二って、いわゆる性格的に遊びの少ない面白みのあんまりない主人公タイプだと思うんだけれど、それが水明くんと水樹の三人一緒だと年相応の稚気と気の置けない関係特有のノリの良さを見せてくれるんで、ほんといい関係なんだな、というのが伝わってくる。水明くんもあんな風にふざける姿って黎二たち相手にしかあんまり見せないですもんね。レフィールたちと一緒にいるときもそれはそれでリラックスはしているんだけれど、黎二たちと居る時のそれとはまたちょっと違うんですよねえ。どっちがどうというわけじゃないんだけれど。
水明くんが黎二たちに魔術師としての自分を教えたくなかったというのは、彼らの身の危険もそうなんだけれど、レフィールたち相手にしている時の水明くんがあくまで魔術師であるというのを前提としているのを見ると、そういうのを抜きにしてまっさらの状態で付き合える相手として黎二たちはほんとに掛け替えのないものだったのでしょう。サクラメントを手に入れてしまったことで、否応なく元の世界に戻ったとしても魔術師たちの世界と関わることになってしまった黎二に、真実を知らせるのは仕方のないことだったのでしょうけれど、それでもまったく以前の関係と変わらなかったというのはむしろみているこっちの方がホッとしたかもしれない。
黎二がサクラメントと繋がることでパワーアップする一方で、女神の干渉という傍から聞くと明らかにやばい侵食めいたものを想起する単語が飛び交っているのだけれど、水明くんそっち関係は調べるつもりないんだろうか、ってか気がついてないんだろうか。水明くん当人も異世界というフィールドの違いからか、魔術師としての全力をまったく出せていないそうなので、自分の力を取り戻す方に意識が傾いているのだから仕方ないのかもしれないけれど。考えることが色んな方向に多すぎるんですよね。
それでも、元の世界に戻れるようになった、というのは非常に大きいように思う。ってか、向こうの仲間引き入れて、という展開もあり得るんですわねえ。間違いなく元の世界にも現地妻的な外国系の女子がいるみたいですしw
次は現代編、ということでこういう展開は凄く楽しみ。一方でハドリアスは実際ちゃんと機会を見つけて一発殴ってほしいものである。

シリーズ感想

ワキヤくんの主役理論 ★★★☆   

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

【ワキヤくんの主役理論】 涼暮皐/すし* MF文庫J

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主役男vs脇役女。同棲から始まるおかしな青春勝負

青春を最大限楽しむためのメソッド《主役理論》を掲げ、夢の一人暮らしを勝ち取った俺・我喜屋未那。隣に住む少女・友利叶も一人暮らしで、クラスメイトで、バイト先も趣味嗜好も全てが同じ……なのに俺と真逆の《脇役哲学》を掲げる、決して相容れない天敵だった! そんな叶との口喧嘩の果て、同時に部屋の壁を蹴破ってしまい、何故か同棲する羽目に。そして俺たちは、やはり同時に考えた――これは戦争だ、と。
「そのさもしい青春に嫌気が差したら、いつでも言ってくれればいいぜ?」
「そっちこそ、煩わしい人間関係に嫌気が差したら、いつでも頼ってくれていいよ」
俺の《主役理論》と叶の《脇役哲学》、どちらが正しいかこの同棲で白黒つけようか!
目指す方向が違うだけで……いや、目指している方向すらまったく同じなのか。結局そこに至る過程が異なってるだけで、趣味趣向から考え方からノリ、生活リズム、細かいニュアンスに至るまで息ピッタリ完全に合致していて意気投合してしまってる我喜屋くんと友利さん。彼らが提唱する主役理論と脇役理論にしても、結局論拠はまったく一緒なんですよね。人類、同じ顔をした人間は三人いるというけれど、ここまで何もかもが合致してしまった人間は果たして三人いるんだろうか、てなぐらいに奇跡のようにピッタリと合わさった二人なんですよね。それが、主義主張のみの違いを持って不倶戴天となってしまっている。不倶戴天のくせに比翼の鳥とはこれいかに。
細かいことはいいじゃないか、と言いたくなるのだけれど、その細かいことこそ大事なんだと思っているのかは定かではないけれど、細々と論理建てて自分の生き方を規定しないと気がすまない人種というものはいるもので、まあよくぞそこまで迂遠にロジックを組み立てて日常の方向性を定めるもんだな、と感心してしまう。普通の人間はもっとなんとなく生きているものだと思うのだけれど、いわゆる「一生懸命」生きている人たちというのは彼らのように計画的というか企画的なのかもしれないなあ。
そんな彼らに劣等感を感じてしまうというのは、ちょっと筋違いだとも思うのだけれど青春時代というのは、それが出来ない自分というものに引け目というものを感じてしまうもので、なかなか開き直れないんだよね。開き直りすぎるとただの馬鹿みたいになってしまうし、ここで劣等感を感じるというのは誠実と言っていいのかもしれない。
いやまあここで「かのじょ」の話は置いておくとして、この我喜屋くんと友利さんである。
まあどう考えても「運命的」なんですよね。同じクラスメイトが隣同士の部屋になって、云々じゃなくて、まさにその人間的な性能と性質の合致っぷりが、ですよ。その意味ではこの時点で我喜屋くんの主役理論に則ってしまっているんじゃなかろうか。だが、彼の主役理論とやらはどうも向いているベクトルが全方向性であって、八方美人というとあれなんだけれど、うーんなんだろう、自分を中心において周りで起こる何もかもを積極的に加わって楽しむ、というものなのかしら。それからすると、友利さん一人に絡め取られてしまった時点で彼女の為の主役、になっている気もするんですよね。
一方で、自分を中心から外れた場所に置き続けるっぽい脇役理論の友利さん。目立たない影の部分で一人を心いくまで楽しむ生き方という方向性からスルと、我喜屋くんに引っ張り出されて劇的な中に取り込まれてしまった時点で彼女の理論からは外れてしまっているのだけれど、一方で彼女の求める最低限の原則は我喜屋くんとの合致っぷりから崩れてなくて、妥協を交えつつも破綻はしてないんですよね。
なんだかんだと、お互いの理論において足りてなかった部分を、図らずも二人が出会って一緒になったことで補ってしまったんじゃなかろうか。それを本能的に察知したからこそ、同棲なんて結論に至ったんでは、ともう新婚生活さながらの二人の同棲生活を見ていて思うわけで。
新婚どころか熟年夫婦ですよね、これ。もう最初の段階で「ん」「ん」くらいで醤油とかのやり取りできそうなくらいだし。近親憎悪に発展せず、あまりに同じ過ぎて以心伝心なのが心地よくなってしまっている段階で、もうどうしようもないくらい運命的なんだよなあ。これで出会って間もないというのが信じられないくらい、間に誰も入れない息の合いっぷりなんだもんなあ。そして、紆余曲折あったとはいえ、二人共がこの関係を続けたいと思ってた。なら、それがベストでしょう。
にしても、それを貫くためとは言えあそこまでこっ恥ずかしいセリフをよくぞ言ってのけた、我喜屋くん。

不可思議なのは、我喜屋くんと主役理論なるメソッドを構築したという「旧友」か。いったい彼か彼女かわからないそれが何者なのか。なんで親友ではなく旧友なのか。そもそも我喜屋くんの回想からして、以前に彼にそれらしい友人の影は一切見えないのに。
要所要所で適切な助言を電話越しに与えてくれているし、発言からして我喜屋くんの脳内友人ではありえなさそうな、我喜屋くん以外の人間でないとおかしい発言もけっこうあるし、実在の人物であるとは思うのだけれど、なんか一筋縄ではいかなさそうなんだよなあ。ただの中学時代の友達、という範疇に入るとは思えないんだよなあ。何気に重要な鍵となる要素なのかも、この旧友とやらわ。

涼暮皐作品感想

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.15 ★★★★☆   

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.15 (電撃文庫)

【ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.15】 聴猫芝居/Hisasi 電撃文庫

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修学旅行は大波乱!残念で楽しい日常≒ネトゲライフ、大願成就の第十五弾!

残念美少女・アコたちネトゲ部(二年生組)に修学旅行の季節がやってきた!
そこで英騎が抱いた野望は――「修学旅行でアコとファーストキスをしたい!」
……こないだやった? こないだのはノーカン! 最高のキスでアコのファーストキスの想い出を上書きしてやる!
そんな修学旅行に襲いかかるのは期間限定の周回クエスト。旅行中にこっそりネトゲをするための条件は『修学旅行を最高に楽しむ』こと!?
真のファーストキス達成へ向けて、ネトゲとリアルを同時クリアするための挑戦が始まる……! 残念で楽しい日常≒ネトゲライフ、大願成就!?の第15弾!
もう、めちゃくちゃ楽しそーだなー!!
学生生活、ここまで満喫してる子たち、ラノベ業界見渡しても居ないんじゃないですかね? 100%完璧に、満喫しまくってるよ。
修学旅行だって、普通に観光して回ってるだけで特別な事件とか起こらないのにめちゃくちゃ楽しそうで面白そうで、一生モノの思い出になるだろうな絶対、というような様相なんですよね。
一人先輩ということで修学旅行からハブられた会長がどうなんだろう、と思ったらルシアンが相談したアコとファーストキスしたい、という話に付き合って、うまいこと適度にサポートとして電話越しだけれど旅行に介入してきて、それも邪魔するでもなく一緒に旅行楽しんでいるような感じで入ってくるので、全然ハブられてる感じしなかったんですよね。また、あっちはあっちで妹たちが会長のお相手しててくれてて、一人寂しくというわけではなかったですし。近くに居ないほうがなんか頼もしかったぞ、会長w
何気にあっちこっち回る観光のアクセントになっていたのが、猫姫先生が旅行中にネトゲのイベントにかまけないように、と先生として寄越した修学旅行を楽しむためのクエスト集、なんですよね。
特に難易度が高いわけじゃない、その観光地でならすぐに出来るような簡単なものなんだけれど、中身が現地についてから開かないとわからなかったり、ただ観光地を見て回るだけにならないアクセントになってて、凄くいい具合に旅行を盛り上げる要素になってたんですよね。あれは猫姫先生、先生としてグッドジョブすぎるお仕事でしたよ。
いつかの合宿みたいに、外で遊ぶことそっちのけでひたすらネトゲ、みたいなことにならないか、という心配は猫姫先生もセッテさんと同様に見ているこっちも考えることだったのですけれど、アコ含めて全員修学旅行の方楽しみすぎてて、いやはや、なんかこっちまで多幸感が……。
だいたいさー、このグループ仲良すぎるんですよねえ。マスター含めて、茜にしてもセッテさんにしてもルシアンに対しての好感度、めちゃくちゃ高いんですよね。好感度95/100とか、ほとんどフルコンプ間近じゃないですか。これ、他人から見てじゃなくて、茜の直答というのがまた。セッテさんの80だって、アコに気を使わないとねー、と公言しながらのものですから、実際はもっと高いよー、と言ってるようなものですし。
これでカップリングとしてはアコとルシアンで揺るぎなし、なんですからなんかもうすごい。ここまで見事に恋愛臭を出さずに男女の仲の良さを体現しているのも、あまり見たことないですもんねえ。まあルシアンとのそれ以上に、女性陣同士の仲がもう無茶苦茶良すぎるというのもあるんでしょうけれど。親友通り越して心友レベルだもんなあ。まあそれでも、茜なんかは特に内心思うところはあるのかもしれませんけどねえ。でも、我慢しているという様子はまず見えないし、そこはきっぱりすっぱり割り切ってるんだろうなあ。
今度はマスターも連れて、普通にギルドのメンツで旅行行ってもいいんじゃないだろうか。でも、時間に追われながらの旅行って急かされるばかりで楽しくなさそうなのに、この子らはタイムアタックのノリで駆け回りながら、その場その場では全力で楽しみ切っていた、という旅路でしたので、下手にじっくり回るよりこの子たちはこういうタイプの旅行の方が合っているのかしら。いや、じっくりあっちこっちを見て回るタイプの旅行でも関係なく存分に満喫しそうだし、今のこの子たちは何してても100%楽しめるんだろうなあ。羨ましいし、ほんと素敵ですわ。

シリーズ感想

東京ダンジョンスフィア ★★★☆  

東京ダンジョンスフィア (電撃文庫)

【東京ダンジョンスフィア】 奈坂秋吾/柴乃櫂人 電撃文庫

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最新のVR技術が暴走し、使用者の脳内世界がダンジョンに!そのダンジョン攻略を行う『冒険者ギルド』に、高給&様々な特典を目当てにして、軽い気持ちで入隊した赤峰光。しかし、入隊後すぐに突入したダンジョンでは、右も左も分からず、武器の具現化にも苦労して後れを取るハメになってしまう。パーティーを組むのは、長剣と氷を操る蒼倉、精霊を杖で使役する桜白、スナイパーライフルで戦場を支配する緑の三人。リーダーに指名され、何か深刻な事情を抱えている様子のメンバーたちと攻略に挑む赤峰は、仲間と協力してダンジョンの秘密を解き明かす!ダンジョン創造主の脳内世界を攻略せよ!

この現代日本において極めて危険な職業である冒険者として成功しなければならないだけの、ヘヴィな理由を抱えている仲間三人に対して、主人公の赤峰くんはぶっちゃけ後戻りできるところにいるんですよね。あらすじでは軽い気持ちで、とは書いてあるのだけれど母子家庭で金銭的に非常に苦しく母親が過労気味、という彼の家庭環境はそんな軽い気持ちで冒険者をやろうとしているものではない。実際、共に試験に挑んだ学友たちは実戦の恐ろしさに怖気づいて辞退してしまっている。
決して軽い気持ちではない。相応の覚悟、というものが彼にはあった。それでも、後に引けない仲間となる同期の三人に比べれば、冒険者を辞めて危険のないアルバイトで頑張る、という選択肢はあったはずなのだ。
彼の母親も、息子がどれほど高い報酬と引退後の社会的な立場が優遇される特典があったとはいえ、危険な職に就くことは望んでいない。
そんな退路が用意されている状況で、彼自身冒険者として仲間たちに比べて才能に乏しい結果も思い知らされて、それでもなおそれこそ軽い気持ちで、安易な英雄願望で、赤峰くんを前に進ませることなく、ちゃんと悩ませ躊躇わせ怯ませた上で、強制ではなく誘導でもなく、ただ彼の意思をもって選択させた展開は、こう言っちゃ何だけれど「頼もしい」ものでした。
力で突出してるわけでもすごいカリスマがあるわけでもない、ちょっとお調子者であんまり自信をもって言葉を発することの出来ない彼が、リーダーとしてみんなを引っ張っていくだけの「ナニカ」をはっきりと見せてくれてるんですよね。命を預けることができるだけの信頼を。彼の言葉に従えるだけの信用を。
特別な力も才能もない、性格も凡庸である本当に平凡な少年である彼が見せるリーダーとしての振る舞い、責任感、仲間を思う心。シンプルで平凡な在り方だけれど、その見せ方の堅実さはばっちり読み応えとして返ってくるものだったんですよね。
ダンジョン化したマンションの、核となった人物の背景や執心しているものを反映したダンジョン内部の様子や、ボスキャラの隠れ場所や正体など、それぞれダンジョンによって特徴があって、攻略も力押しではなくある種の謎解きみたいなクエストになっていて、登場人物たちの切実な人間関係も相まってか、なんか味のある面白さのある作品でした。
今回は初対面だし、仲間として繋がるための踏み込み具合だったキャラクター同士の関係だけれど、続くなら今度は個々人同士の関係として新たなものを見せてってほしいところですねえ。



それぞれ冒険者

GODZILLA 怪獣黙示録 ★★★★   

GODZILLA 怪獣黙示録 (角川文庫)

【GODZILLA 怪獣黙示録】 大樹連司 角川文庫

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ゴジラ―かつて万物の霊長を僭称していた我々は、あの恐るべき怪獣と出会い、戦い、敗れて地球を追われた。当時最前線の兵士だった者、彼らを指揮する将官あるいは政治家、科学者だった者、あるいは一般市民、幼い子供だった者。これはそんな一人一人が語った、抗戦と敗北の記録である。果てしない絶望の日々を、人々はいかに生き抜いたのか?―謎に満ちたアニメ映画版GODZILLAの前史を読み解く唯一無二の小説版!

この11月17日より公開している映画【GODZILLA 怪獣惑星】の前史にあたる歴史が記述されているのが、本作【GODZILLA 怪獣黙示録】である。
虚淵玄シナリオ、ということでも話題になっているアニメ映画版ゴジラですけれど、本作ではなぜ人類が地球を捨て他の惑星へと恒星間移民を行わなければならなかったか。つまり、地球上にて如何にして人類は怪獣と出会い、怪獣と戦い、怪獣に敗れ去ったのか。その人類文明崩壊の過程のさなかに居た老若男女様々な人々から、当時のことをインタビューしたものを集めたドキュメンタリー方式で作られている。

これがもう、無茶苦茶面白かった。

【シン・ゴジラ】の映画館で見ていて、ゴジラが熱戦をはじめて吐いたときの、あの「あ、東京終わった」という途方もない絶望感を抱いた人は多いだろう。
いわゆる「ギャレスゴジラ」で知られるアメリカ版ゴジラのおいて、ゴジラとムートーによって北アメリカ大陸が横断的に壊滅していった様子を覚えているだろうか。
この【GODZILLA 怪獣黙示録】における地球という惑星では、1999年に初めてニューヨークに「カマキラス」の大群が出現したのを皮切りに、地球外惑星への移民計画が実行に移される2048年までの半世紀で、上記の規模の、いやそれを上回るだろう規模の怪獣災害が全地球規模で発生しまくる、という状況に置かれてしまうのである。それこそ、数百万人規模の死傷者が出るような災害が頻繁に、である。ずんどこ減っていく地球総人口。ガンガン減っていく人類生存権。地球上の殆どの場所が怪獣が跋扈する世界となりはてていく姿は、タイトル通り「黙示録」としか言いようがない。
そんな人類文明が滅びていくさまを、実際に体験した一人ひとりがその時に彼らがあった立場から見たまま感じたままに語るその内容は、だからこそ生々しくその当時の空気感、熱量を感じさせてくれるのである。
まさに、肉声、というやつでしょう。
一つ一つの、いやひとりひとりの物語は決して多くはなく、断片的ではあるものの、だからこそその集積である本作は、人類が滅びるまでの半世紀の只中に放り込まれたような、圧倒のさなかに首までどっぷりと浸かることができるんじゃないだろうか。
ただ怪獣たちの進撃に逃げ惑うだけじゃない、人類が、その時その場に居た人たちが、政府のえらい人や、情報部の工作員や軍の精鋭のみならず、街角に佇むただの一般人もいれば、国を滅ぼされて逃げてきた難民も居る。そんな人たちがそれぞれに戦った、生きるために、未来のために、戦った記録がここに記されているのである。絶望だけではない、自ら掴み取った栄誉があり、人類のために成した功績があり、家族を守るために果たした義務があり、たしかに届いたはずの希望もあった。

それらを、怪獣たちとも渡り合えるとようやく態勢を整えつつあった人類の前に出現したあの存在。
「G」の出現である。

これもう、あかんやろう。

シン・ゴジラのパねえさは言わずもがなですけれど、こっちのゴジラはそれをさらに上回っているっちうか、絶対に無理。勝てねえ。
正直、ここまで盛ってしまって、映画の方でこれ倒せるの? と深刻に疑問に思ってしまう程度には次元が違いすぎるんですよね。スケールが違いすぎる。これはもう、人類そのものの敗北以外のなにものでもないでしょうに。ぶっちゃけ、宇宙戦艦ヤマトでも勝てないんじゃないですかね!?

「宇宙の戦士」や「マブラブオルタネイティブ」なんかに例えられる世界観ですけれど、怪獣史的には平成ガメラでレギオンが勝利した世界とか、ガメラ3であのギャオスが大量発生したあとの世界、と見るほうが馴染むかもしれません。
ここで描かれてるクロニクルを見ると、東宝系の怪獣映画に出てきたあらゆる怪獣が山のように登場して、それに付属する様々なネタが盛り込まれていて、それはもう年表見ているだけでも楽しくなってしまうのですけれど、同時にあの怪獣たちの名前のセンスの古臭さが人類文明滅亡の歴史として語られる深刻さに全然マッチしてなくて、ものすげえ違和感たっぷりなのはちょっと参りました。いや仕方ないんですけどね。昔の怪獣の名前ってほとんどダジャレみたいなのばっかりだし、語感も似たようなのばっかりだからなあ。
ただ、メーサー殺獣光線車とか轟天号、スーパーXなどといった超兵器群も最終的に登場して活躍しているので、欧州奪還作戦である「オペレーション・エターナルライト」なんかは、むしろこれだけ映画化してくれないかな、と思ってしまうほどの熱さでした。あの軍人さんのモデルって絶対権堂一佐だよなあ。図らずも、ビオランテ戦で活躍させてるわけですし。

実のところ映画の方はどうしようかしばらく様子見のつもりだったのですけれど、前史でこれだけ魅せられてしまうとは。こうなんていうか、火が着いてしまった感もあるので、これは見に行かないとなあ。


大樹連司作品感想

異世界建国記 ★★★  

異世界建国記 (ファミ通文庫)

【異世界建国記】 桜木桜/屡那 ファミ通文庫

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異世界に転生した少年アルムス。森を彷徨っていると神獣グリフォンが現れ、強引に住処に連れていかれてしまう。さらに「三年以内に独り立ちしろ」と一方的に告げるグリフォン。仕方なくアルムスは、前世の知識と経験を活かして農作物を育てたり、隣国の国王や大臣と交渉したりと、住処にいる子供達と一緒に村を作り始めるのだが、その一方で発展したアムルスの村を手に入れようと侵略を開始する国が現れ……!! のちに『神帝』と呼ばれる男の英雄譚、開幕!!
この味けなさすぎるタイトル! いや、よく元のタイトルを書籍化に際してむっちゃ変えてしまう、なんてケースがあるけれど、こういうのこそちゃんと変えるべきじゃないの!? と思うんだけれど。
舞台となるのが、おそらくは古代ローマ……いや、ローマという国が成立する以前の豪族が群雄割拠していた時代のイタリア半島っぽいところが物語の舞台となるようである。中世ヨーロッパどころか、共和政ローマが誕生するよりももっと前。伝説の初代ローマ王・ロムルスの伝説に当てはめているだろうから、古代も古代。国家という単位じゃなくて、部族単位で物事が動いていた時代。神代にまだ片足を突っ込んでいる時代が舞台なんだろう。なにしろ、グリフォンなんて神獣がデーンと不可侵領域を人類側に認めさせつつ存在しているわけなのだから。
このグリフォン様がまた便利でねえ。難しいことはグリフォンさまがやってくれました、とばかりに手の行き届かない部分はグリフォン様任せなんですよね。いやもう、それだけ助けてくれるならもっと親身に関わったらいいのに、と思うのだけれど、頼まれたときだけ助けてくれる、という都合の良さで。ここまで来ると単なる舞台装置なんじゃないのか、とすら思えてくる。物語の一員としての登場人物ではないんじゃないかな、これ。アルムスも、助けてもらったことや援助し続けて貰っていることに感謝はしているようなんだけれど、それにしては便利に使いすぎてるし、深く関わろうともしないですしねえ。
まあ子どもたちだけで村を作って暮らしを成立させる、といういわゆる内政モノ? としては頭で考えたことが百%以上の確率で成立しまくる、という前提で物事が転がっていく、という感じで常にサクサクっとうまいこと行きます。古代という文明レベルにも関わらず、普通に鉄製の農具とか出てくるのはおおっ!となりましたけれど。おおっ!って感じで。
ただ、適当にノリで書き散らしたようなアンバランスさは感じられなくて、村を作り、都市国家の王族と懇意になって、近隣で発生した戦争に参加し、どんどん出世して、という成り上がっていく流れをわりと淀みなく、盛り上げどころではちゃんと盛り上げながら転がしていくストーリーテリングは、けっこう巧みなものを感じさせてくれるんですよね。深くは潜らないけれど、流水プールみたくプカプカ浮かんでさえいれば、すいすいと勝手に動いていくように読み手をうまいこと誘導していくような風情で。
その意味では、読ませる文章、物語とも言えるのかもしれない。読み終わったあとに、なんとなく面白かったなあ、と不満めいたものは不思議と感じませんでしたしね。
ただやっぱりキャラクターにあんまり個性というか、印象が残らないだけにインパクトには欠けるしちょっと間をおくと色々と忘れてしまいそうなきらいもあるだけに、なるほど名は体を表すじゃないけれど、あのざっくりとしたタイトルはわりと内実に沿ったものなのかもしれない。

英雄教室 8 ★★★☆  

英雄教室 8 (ダッシュエックス文庫)

【英雄教室 8】 新木伸/森沢晴行 ダッシュエックス文庫

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ローズウッド学園の仲間は今日もすくすく成長中! アイン&ツヴァイの霊鳥姉弟が、人間になっちゃった!? 元気すぎるパワーで女帝もたじたじ!
夏!海!南の島にバカンスにやって来た生徒たち。そこでブレイドとクレアの仲が急接近!?
帰ってきた現代学園!アーネストが幼馴染でソフィが転校生!?仮想世界で繰り広げられる英雄教室「日常学園ver.」のゆくえは!?
反目しあう生徒と王都防衛隊の両方に国王から指令が下される!逃げ出した厄介なモンスターを討伐せよ!今回の「実戦的訓練」は犬猿の仲の防衛隊と共同作戦!?しかも能力コピーするモンスターとか!?反則なんですけどーっ!?冒険&青春マシマシの第8巻!
カシームーー!? 皇帝カシムイベントは、なんか学園モノの定番というか、一番お馬鹿な友達キャラを親の参観にかこつけて持て囃すハメになる、というアレなんだけれど、アーネストをあれだけ女扱いすらせずに好き放題やらかす命知らずっぷりは一周回ってカッケエ! となるほどで、何気に後輩に信奉されているというのもわからなくはなかっただけれど、この短編のラストのオチにびっくり仰天ですよ。え!? 平民の子じゃなかったの!?
キャラクターの方向性、似ていると言えば似ているけれど言われないとわからないほどだしなあ。その上、女子からのモテっぷりの差ですがな。まあ、現状極めてモテナイ型の頭悪い男の子ですけれど、ナイスガイではありますし、わりと肝心な時の女の子の扱い方下手ではないと思うので、やはりおとなになったら変わるんですかねえ。
ちょっと「ほえ!?」と思ったのが、このカシムに対してイェシカが何気に気がある素振りをみせたところなんですよね。シリーズ中盤入って有耶無耶になってたんですけれど、確か最初の方ってカシムってクレアのこと気にしてなかったけか。それで、イェシカに対してはクレイがすごい意識してたはずなんだけれど、今回クレアはクレアでクレイのことちょっと気にしてるらしいことイェシカが発言してたし、見事にクロスした関係になりつつあるんだろうか。初期の頃の男子たちのアレが継続しているなら。それはそれで面白そうではあるのだけれど。
今回のシリアスというかしんみり話は、まさかの仮想世界編での展開となりまして。現状、みんなハッピーで悩みも不満もとてもありそうになかっただけに、それこそアーネストがそろそろブレイドとの関係まったく進展しないしブレイドの精神年齢的成長が頭打ちだし(そうでもないっぽいけれど)、鬱憤溜まったんじゃないか、と考えたんだけれど、そうかー、そっちの話があったかー。
ソフィについては、姉妹は精神はソフィの体に緊急避難することで救えたので、それで解決だと思っていたのだけれど、ああして姉妹仲良く暮らしている姿を見せられると、違う個体で存在するということの意義というものを想起してしまう。同時に存在するのと一緒に居るのとは、また別なんですよねえ。
でもまあ、この世界観だとアインとツヴァイがなんとなく人間化できたように、頑張ればなんとかなりそうな気がしないでもないんだけれどなあ。
あと、兄妹でもその歳で一緒にお風呂とかアウトなのに、幼馴染だから一緒にお風呂オッケーとかエロゲでもまず見たことないですから。アーネストさん、そこんところ本当によろしく。

最後の劣化コピーブレイドとの激戦見ると、もうクラスメイト全員人間やめてますよね、これ。それでいて、まだ準勇者級になるかならないかレベルだってんだから、勇者業界のインフレどこまで青天井になってるんだろう。

シリーズ感想

クロニクル・レギオン 7.過去と未来と ★★★★   

クロニクル・レギオン 7 (ダッシュエックス文庫)

【クロニクル・レギオン 7.過去と未来と】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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過去と未来、すべての因果が激突する!! 女皇照姫(じょおうてるひめ)と平将門(たいらのまさかど)の反乱を抑えきり、ついに皇都の覇者となった征継(まさつぐ)と志緒理(しおり)。衛青(えいせい)とも協力して陣営を整えていたが、ついにカエサルが皇都へ向けて出撃。数千騎のレギオンが迫るなか、潜んでいたカエサル派による奇襲で皇都は大混乱に陥ってしまう! 衛青、大英帝国のエドワード黒王子率いる軍団と、カエサル軍が激突するなか、総大将である征継はローマの切り札、神箭(しんせん)ジェベと対峙する。悠久の時を越えて導かれる前世の因縁。かつての盟友との決戦に征継のとった行動は……!? さらに、まだローマ軍には謎多き不気味な英雄、ブルートゥスが残されていた……。 過去と未来、英雄たちのすべての因果が激突する第7巻!!

ああ、やることはちゃんとやってたんだ。そりゃあするよね。征継の素性からして女性の扱い方について我慢する、という文化はなさそうだし、そもそも抑制する必要性も理由もなにもないんだから。征継、オープン助平だし。
というわけで、女皇照姫の宮廷内クーデターにかこつけて、戦略的大転換を果たしてローマ帝国はカエサルの保護下から敵対していた大英帝国へとパートナーを取り替えた志緒理姫。ここで肝なのが、あくまで敵対のターゲットをカエサルのみに絞っていて、東ローマ帝国本国に関しては根回しをちゃっかり進めていて、カエサルを政治的にも戦略的にも孤立させてしまったところでしょう。謀略戦も然ることながら、こうした外交戦に関しても妖怪じみた辣腕さを見えた上に、宮廷政治においてもきっちり照姫の首根っこ押さえつつ、強硬手段で監禁、などという強引な手段に任せず、ある程度以上照姫の自由度を高めているあたり、加減をよく心得ているというか。実質、照姫はクーデター前よりも自身の勝手できる範囲は広がってるんですよね。おかげさまで変な属性はつくわ、けっこう志緒理とバチバチやりあってはいるんだけれど、ネガティブな方にどツボはまらなくなっただけでもだいぶマシなんですよね。照姫のキャラクターも相当面白いことになりましたし。以前が根暗で嫉妬深い小物っぽさからどうしても足抜けできない姫様だったことを思うと、これはもう一種の覚醒と言っていいくらいの変化ですし。あかん意味でも覚醒してる気がしますが。
これ、教育係の衛青将軍、苦労するでー。ただ、彼の場合その苦労を望んで買っているので、それこそ大船に乗せた気分なのですけれど。
徳川家康と天海という超大物政治家にしてネゴシエーターが手伝ってくれてる、というのも途方もなく大きかったんでしょう。ぶっちゃけ、徳川家康ってもっと信長とか秀吉みたいに召喚とか憑依とかされてもいい日本史上でも最強な偉人だと思うんだけどなあ。と、昨今の研究によって浮かび上がってる徳川家康の人物像を見るとそう思います。今回、ラストで美味しいところ持ってったのも大御所様だったしなあ。
こうしてみると、世界史上における最強クラスの将帥であろうジェベと征継の間に生まれた差、というのはそれこそ今世における充実感、だったのかもしれません。二度目の生に何を求めるのか。本作において活躍した復活者というのは、それぞれみんな今世に意義を見出し、また謳歌する人たちばかりだったんですよね。
どこか茫洋とした衛青将軍ですら、カエサルを裏切った理由を見てもわかるように前世における未練を今世で果たす道筋を見つけ、それに殉じたわけです。生きる目的を得、生きる楽しさを謳歌した。
その点、ジェベ将軍はそこに確固としたものを見いだせなかった。これはカエサルの抱え方の問題もあると思うのだけれど、飼い殺しみたいな真似をしてしまったからこそ腐らせてしまった、とも言えるんですよね。ジェベの将帥としての力量は一切衰えなかったかもしれないけれど、貪欲なまでの闘争心や野心、叶えるべき欲がなければ最後の最後の一線において及ばず開いてしまう差がある。
結局カエサルの致命となったブルートゥスの扱いにしても同様で、カエサルの弱点は同格たる英傑と肩を並べる、ということを知らなかった、というところにあるのかもしれません。黒太子エドワードは、ずっと獅子王リチャド1世と一緒に戦ってましたしね。征継もまた、前世から英傑たちとともに駆けるを人生としてきたわけですから、衛青将軍との息なんぞピッタリでしたし、共闘となったエドワード王子に対しても見事な任せっぷりでしたし。
皇帝の語源となったカエサルは、唯一無二の皇帝でありすぎたのか。征継の仮名となった土方歳三もナンバー2でしたし、衛青将軍もエドワードも何気に王にはならなかった人物。いわんや平将門なんぞは……アレはまた別の意味で王様ではありましたけれど。
それでも、偉大過ぎるカエサルを相手の闘争は、実に見ごたえのあるものでした。勝ち抜けたのは、これは愛の力と言っていいんでしょうかねえ。女の強かさのおかげ、とも言えそうです。
強かさばかりではなく、竜胆先生みたいに凄まじいデレっぷりなんぞも拝めたわけですが。いやあ、あのデレっぷりは凄まじかった。まさしく陥落じゃないですか。なんですか、あれ、もう本当にwww
もうちょっと日本を飛び出すスケールでのお話も見てみたかったですが、レギオンというシステムの面白さといい、最後まで楽しませていただきました。
レギオンシステムとか、あれ信長の野望形式のシミュレーションにも流用できそう。

シリーズ感想

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している ★★★☆  

僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している (ファミ通文庫)

【僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している】 手島史詞/烏羽 雨 ファミ通文庫

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美坂亜理寿10歳。職業は魔法使い。

浪人生になってしまった九条篤志。バイト先の珈琲店でおいしい珈琲を淹れることに腐心する日々の中、気がかりが一つあった。それは店の片隅で平日の昼間からランドセルを傍らに珈琲を飲む亜理寿のこと。そんなある日、魔法使いを自称するその少女から篤志はある悩みを打ち明けられて――「人を殺してほしいようなことを言われました。断ると今度はわたしが殺されてしまうそうで、少しだけ困っています」。――これは小さな魔法使いと若い珈琲係【バリスタ】が紡ぐ奇跡の物語。
タイトルは「僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している」だけれど、別に「僕」の珈琲店じゃなくて単にバイトしている店だし、JS魔法使いは別に店に居候しているわけじゃなくて普通に常連客として来店しているだけのような……。
むしろ、亜理寿とボンクラ店長との関係を考えるなら、僕の珈琲店じゃなくてアリスの珈琲店と言った方が誤謬は少ないんじゃなかろうか。
とか細かいところはまあどうでもいいとして、客が少なくても別に気にしなくていい個人経営の店って、色んな意味で最高ですよね! と、ぼんくら店長のあのやる気の無さに逆に店の潰れなさそうな雰囲気が伝わってきて、なんとも羨ましくなってくる。店の一切は九条くんに任せっきりですしねえ。
こういう店は変に客引きしないで、むしろ閑古鳥ないていた方がいいのかもしれない。繁盛してしまうと、頑張らないといけなくなってしまいますもんねえ。
でも、繁盛してアリスがエプロンして給仕してくれるような絵面になったら、それはそれで可愛らしくて良いのだけれど。小学生を働かせて店長サボってたらそれこそ末期なのですが。
本作の魔法使いはゲームみたいなそれと違って、古式ゆかしい伝統的な魔法のそれ。「魔法遣いに大切なこと」とか「ふらいんぐうぃっち」の類と思ってくれれば間違いはないだろう。アリスもまた、魔界から現れる怪物たちと夜な夜な戦う魔法少女ではなく、占いを嗜み異界に交わった障りを解き、時折持ち込まれる依頼や相談を請け負うわりと渋めの仕事人なのである、なんて言ってしまうとやはり大間違いか。大っぴらに魔法のこと承ります、と広告うっているわけではなく、彼女の依頼が持ち込まれる展開って本巻では少ないんですよね。あらすじにも載ってる一件だけじゃなかろうか。それもあんまり正式な依頼じゃなかったみたいだし、他はむしろ九条くん絡みで巻き込まれたことにアリスが助言や手助けをする、という形で短編連作とはいえ、アリスはあんまり主体とは言えないのである。ちゃんと九条君が主人公をしている、というべきなのかもしれないけれど、魔法や不思議な異界側の出来事、との遭遇という意味でもちょっと踏み込みが浅いというか、珈琲店の雰囲気も含めたこの不思議な静けさをまとった魔法の世界に、もっとどっぷりとハマった話を期待していた身とすると、ちょっと俗世の九条くんの側によってそこから魔法の世界を垣間見る、というもうちょっと首まで浸かりたい気分からスルと物足りなかった気がしないでもない。
それをしてしまうと、むしろアリスとしては気が気がないことになってしまうかもしれないけれど。でも、それほど危ない世界、というわけでもなさそうなんだよなあ。禁忌やヤバい魔導書がどうの、というのも少なそうですし、何しろアリスの師匠があんなんですからねえ。もうちょっと魔法の世界について色々と踏み込んで知りたいところでしたが、それを最も深く垣間見ることになるラストの話が、逆に大仰というか舞台のひっくり返し方がそれまでのアリスと一緒に覗いた魔法の世界とはスケールが違いすぎてて、若干その幅についていけなかった感もあるんですよねえ。
いや、そこまで大幅に改変してしまって大丈夫なのか、とか。あと、九条くんに生じていた異常って結局原因わからないままだったんだろうか。件の改変となにか関わりがあるんだろうか。いうほど話に関わって来なかったムキもありますし。
せっかくなので、もうちょっと小学生と浪人生のイチャイチャ?するような状況が発生してくれると、まあむにゃむにゃ……。アリス的にはもうバシバシ狙いすまして射掛けている節もありますし。

手島史詞作品感想

我が驍勇にふるえよ天地 5 ~アレクシス帝国興隆記~ ★★★★   

我が驍勇にふるえよ天地5 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

【我が驍勇にふるえよ天地 5 ~アレクシス帝国興隆記~】 あわむら赤光/卵の黄身 GA文庫

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リント攻防戦、最佳境へ!!

レイヴァーンの策により壊滅間際まで追い詰められたアレクシス軍。
だがレオナートは奪還した故郷リントを早くも発ち、戦況を打破する豪胆な一手へ向けて走りだしていた。
それは知謀シェーラが示す電撃作戦。不利が有利へ塗りかわり、敗走が大戦果への活路となる!
興奮必至のリント攻防戦、最佳境へ――!!

「急げ。次へ行く」
闇を往く百騎の死神。今宵、我らの英雄譚は終わらない――
終局まで読み切り、正着手を打ち続けるレイヴァーンの作り上げた、盤面全てを覆せ!
魔法がないから盛り上がる、痛快・本格ファンタジー戦記。両軍雌雄を決する第5弾!!
戦記モノって一種の群像劇だと思っているんだけれど、本作のアレクシス軍のキャラクターの多様性はなかなか類を見ない広さだわなあ。これだけ多士済々いるのも珍しいんじゃないだろうか。好漢が粒ぞろいに揃っているというタイプはよくあるんですけどね。お陰で味方陣営の人間模様を眺めているだけでも十分に面白いのだけれど、これが戦場での様子を描くとまた違った側面が出てきて、その上本作って味方が圧倒的に強いばかりではなく、敵側も常に強敵ばかりで一敗地に塗れるときもある。今回なんぞその極地であり、全軍崩壊敗走という憂き目にあうのだけれど、そういった局面だからこそ普段では見えてこない側面なんぞも見えてくるんですよね。
心弱ったジュカの捻くれまくったデレっぷりも、この一敗あってのことでしょう。ってかこの娘、予想以上にアランのこと大好きなんじゃないのこれ? 刺々しい語り口に誤魔化されそうになりますけれど、言ってること客観的に見てみると、めちゃめちゃ恥ずかしいことばっかり言ってないですか?
キスの約束反故にされたときのものすげえガッカリっぷりには笑ってしまいましたがな。シェーラに負けず劣らずの可愛らしさなんですけど。
一方でこの敗走で目立ったのがやはりアランのしぶとさでしょう。士気が崩壊して規律も何もかもがボロボロになった中でさえ、きっちりと軍をまとめて抵抗を続けられた、というだけで名将の器でしょう。このあたりは、同じく軍人としても騎士としても極めて有能であること疑いなしであるフェルナント卿が、戦う集団として指揮下の勢をまとめられなかったことでより引き立っている。いや、フェルナント卿もあの状況で部隊を四散させてないだけで大したもののはずなんですけどね。
最初は将としては特に特徴のない可もなく不可もなく、という塩梅に見えたアランだけれど、巻を重ねるごとにレオナート以外では唯一大軍を任せられる総司令官タイプ、というのが見事に浮き彫りになってきたんじゃないだろうか。
そんでもって、やっぱり一番派手なのがトラーメですよねえ。この忠義心の一切の無さは見事なくらいで、レオナートの方も彼のことはまず間違いなく嫌いなのに、この主従としては面白いほどの噛合いっぷりときたら。見てて一番面白いですわ、この人は。
今回の潰走は、機を見るに敏であり裏切るタイミングとしては最適であり、トラーメみたいなタイプがどう転ぶにしても一番暗躍して好き勝手する機会であったにも関わらず、ある意味一番彼が使い尽くされ働かされ倒す結果になってるわけですしねえ。
それで褒められて喜んでしまっていながら、自分で気づいていない姿ときたら。いやはや。
トラーメを要とした、全面潰走という絶体絶命のピンチからの起死回生の一手。これは、そりゃ後世に渡って軍記物なんかの語り草になるわなあ。なんというか、絵面がもう伝説的じゃないですか。
逆に、あそこまで全面的に勝っていながら、ヤバいとみるやそれまで多くを費やし積み重ねてついに切り出した一手を、まったく拘らずに放り出して致死になりかねない一撃をあっさりかわしてみせたレイヴァーンの徹底した合理性は、空恐ろしさしか感じませんでした。戦場の帥としては極みに至る一人なんじゃないだろうか。
だからこそ、その無謬の合理性をついてみせたシェーラの見ている景色の高さに背筋を震わされるのですが。
ジュカのそれが戦争芸術とすれば、レイヴァーンのそれは鉄血の合理性。そしてシェーラのそれは、血も涙も夢も何もない非情な戦争の現実に、【フォークロア】という浪漫と未来と希望で彩ってみせる演出家。煽動者であり語り部でありコンダクターというわけだ。レイヴァーンも、自ら状況を作り出せる戦略家だけれど、彼の場合それは自分の手が及ぶ範囲なんですよね。シェーラのそれは、ステージが一つ上側に違うと言っていい。そりゃ、前線の将帥の一人にすぎないレイヴァーンからすると想像つかんかもしれんなあ。
彼の手の長さの限界というのは、ラストシーンにも及んでいて、だからこそのあの度肝を抜かれるような仰天の展開に繋がっているのでしょうけれど、あれはまさかまさかだわなあ。
予想外過ぎて、もうどう転ぶにせよワクワクするしか無い展開ですがな。どうすんだこれ!

シリーズ感想

とっとと

賭博師は祈らない 2 ★★★☆   

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 2】 周藤蓮/ニリツ 電撃文庫

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奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。
それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが……。
「ねえ、ラザルス。私と結婚しましょ?」
道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは――。
少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。
一巻で自らの生き方を自ら決めたラザルス。でも、そのきっかけとなり助けられた側であったリーラはこうしてみると外側から付与された「奴隷」という在り方に対して、まだ何にも意思表明をしていなかったのでしょう。彼女自身が精神的な奴隷という身分に縛られたままだった。
ラザルスはリーラに一人の人間であることを望んでいたのに、リーラの方はまだ人間であることを選べていなかった。この時代、異民族であり奴隷身分として扱われるリーラの一族は当然のように普通の市民からも人間扱いされません。その現実に、ロンドンを出ることで否応なく直面したリーラは自分の価値というものを見失ってしまうのである。ラザルスが、命を賭けてまで守ったものに対して、リーラ自身が価値を見いだせていなかったわけだ。そりゃあ、ラザルスはへこむよねえ。
ラザルスにしてもリーラにしても、基本的に内向きで他者に対して言葉を費やさないタイプである。リーラに至っては言葉そのものを失っているわけで、何かを伝える意思というものがどうにも薄弱になってしまっているし、ラザルスにはそもそもその手の習慣が存在しない。
二人きりだと何一つ進展しないどころか、自分だけで色々と考え込んでしまって螺旋状にドツボにハマってくという悪循環のスパイラルになってしまうわけだ。この二人、ある意味二人だけで閉じているのに、二人だけだとどうにも上手く回らないペアなんですよね、こうしてみると。
とても対人関係を好まない二人でありながら、どうしようもなく他者の介在が必要な二人、というのがまた興味深い。
一巻においては、あのボクサーの兄ちゃんがなんだかんだとラザルスの思考や意思に風を吹き込み後押しをしてくれたわけだけれど、今回に関してはもうエディスの七面六臂の仲人役である。本人、随分大変な状況に追い込まれているのにも関わらず、なんだかんだと下心ありとか言いながらも実際かなり自分のこと度外視でこじれかかった二人の中を取り持ってくれるあの親切さは、めぐり合わせにしてもえらい人と出会ってしまったものだ、とそう思う。
事実上はともかく、表向きにはちゃんと結ばれることが非常に難しいラザルスとリーラだけに、もういっそ本当にエディスと結婚してしまってもいいんじゃないか、と思わないでもないのだけれど、やっぱりラザルスがまともな生活を送れるとも到底思わないし、そもそも絵面が想像できないので、得難い良き友人ポディションが両者にとっても良い形なのかなあ、と。エディスくらいだと、他にいくらでも良い出会いが待ってそうだし。あのボクサーとか。
結局、ラザルスはどこまでいってもアングラサイドの人間ですしねえ。傍らに生涯奴隷の女一人を寄り添わせて生きていく、というスタイルが一番似合っているじゃあないですか。
同時に、何の後ろ盾もないそういう生き様の人間だけに、あの弁護士を徹底的に敵に回しておきながら、後腐れないケリをつけられなかったのは、あとあとちょっと怖いんですよね。一応脅しはつけて一時的に手出ししてこないようにはなりましたけれど、あれっていつまでも有効というわけじゃないでしょうし、逆に向こうのあの粘着質な性質を考えると一生根に持たれそうなだけに、本当に怖い。今後、まだ出番あるんじゃないだろうか、あの野郎。

前回は18〜19世紀の倫敦という歴史情緒を感じさせる描写が随所に垣間見えた本作でしたけれど、今回は逆に倫敦を離れることで当時の首都以外の都市郊外の当時の様子というのが、色々と描かれていて非常に興味深かった。なんだかんだとあの頃のイギリスを描くと必ずと言っていいほどロンドンが舞台なだけに、それ以外って案外描かれているのを見たことがなかったんですよね。
やはり異世界モノとは違う、外国の風俗というのもを肌で感じられる、これは良い作品だなあ。

1巻感想

美人上司とダンジョンに潜るのは残業ですか? ★★★   

美人上司とダンジョンに潜るのは残業ですか? (Novel 0)

【美人上司とダンジョンに潜るのは残業ですか?】 七菜なな/にぃと Novel 0

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とある企業の会社員・牧野祐介は、上司・黒木姫乃(26)から業務後の呼び出しを受ける。巨乳の黒髪ロング美人である黒木主任と、まさかの社外デート?などということはなく、それはダンジョンアタックへの同行命令だった!?だが、仕事では「鬼の黒木」と呼ばれるエースなのに、どういうわけかダンジョン内では超絶へっぽこで―「これは、営業よりたいへんなことになったぞ…」牧野は黒木を一流のハンターに育成し、ダンジョンでのサービス残業から脱出できるのか!?職場とダンジョンでは立場が変わる、お仕事系ダンジョンファンタジー!

無理に上司やらから業務終了後まで付き合わされたら、そりゃあ残業扱いにしてくれよー、と思うのが常なんだろうけれど、このケースはどう見てもプライベートでしょうがー!
ってか若いって良いよね。ノー残業デーとはいえ、仕事終わったあとにダンジョンアタックですよ。体力的に死ぬる。ってか、仕事のあととかコンディション最悪なんですけど。翌日休みというわけでもないのに、よくやるわー。とか、そんなんばっかり気になってしまって。でも、世の人は仕事終わってからジム行ったり泳ぎに行ったりとか運動系の趣味に勤しむ人も少なくはないんですよね。異世界だよなあ。異次元だよなあ。
いや、それにしてもアフター5でダンジョンアタックはやっぱりすげえですよ。現代を舞台としたダンジョンものだと、週末だけダンジョンに潜る週末冒険者、みたいな兼業冒険者なんてカテゴリーが存在しましたけれど、本作くらい気軽に挑戦できるとなると、完全に遊びとかスポーツの延長になってるんだな、この世界のダンジョンって。世間の認識もそんな感じですし、実際にダンジョンの潜ることを仕事にしている人やダンジョンの運営やハンターの支援業務に携わっている人たちも一貫して同じ認識を共有しているみたいですから、そういうものとして見たほうがいいのでしょう。主人公の過去の大失敗でも、どうやら死人は出てないみたいですし。
そのわりに、マジで死ぬんじゃないか、という場面がけっこうあった気もするのだけれど。主任のスキルにまつわる話からしても、ダンジョンで死ぬ人珍しくないんじゃないか、という感じなんですよね。
登山趣味みたいなものかしら。わりと気軽に趣味にしている人が多い割に、毎年けっこう死んでるわけですし。安全にきちんと気を配っている限りはまず危険はないけれど、油断や見通しの甘さが即座に死に直結する、という意味では似ていると思っていいのかもしれない。
その体からすると、この上司ってば平気でサンダル履きと半袖軽装、荷物も適当という格好で登山しに来るあかん人と同じタイプだよなあ。
いや、普段の仕事での辣腕っぷりや頭脳明晰さからすると、あのダンジョンでの体たらくはポンコツとか云々じゃなくて、殆ど別人なんじゃないか、という無茶苦茶さで、ぶっちゃけ連続性が感じられないのも確かなんですよね。仕事ではやり手なのにダンジョンではポンコツ、というコンセプトはいいと思うんだけれど、これだと普段の彼女のキャラクターを無視して、無理やりポンコツにしているような感じですものねえ。
それに、彼女のそのポンコツっぷりが話の肝になってくるのかというと、なんか突然スキルに目覚めて、そのあたりのポンコツさ、まったく関係なくなってしまいましたし。うまく状況や設定を活かせているようには見えなかったなあ。
雰囲気は悪くないのだけれど、もう1つ2つ物足りない、という感じの作品でした。

ヒマワリ:unUtopial World 5 ★★★★   

ヒマワリ:unUtopial World5 (角川スニーカー文庫)

【ヒマワリ:unUtopial World 5】 林トモアキ/マニャ子 角川スニーカー文庫

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本戦進出を決め勢いに乗るヒマワリとミサキ・カグヤのペアであったが、そこに桐原士郎、木島アリスを従えた魔殺商会総帥・名護屋河鈴蘭が立ちはだかる。
「あはははははっ!!さあ野郎ども狩りの時間だぁッ!!」
隔離空間都市の債務者達を巻き込んだサバイバルゲームを仕掛けられたヒマワリは、“前大会を知る男”川村ヒデオと共闘し生き残りの道を探るのだが!?“世界を統べる権利”を賭けた闘い―第二回聖魔杯、本戦がついに開幕!
士郎、ある意味フルボッコにされて負けてしまったのだけれど、ここに至るまで一直線に走り続けながらその実、たどり着こうとしている場所が本人的にははっきりしているつもりだったのかもしれないですけれど、傍から見るとふわふわとして実体がないあやふやな代物でしかなかったんですよね。それでも、我武者羅に突き進む他なかった彼が、この敗北によって逆に自分のやりたいこと、できること、何が一番大切でありそれを叶えるべきなのか、というのを見出した、という意味では思いっきり負けたけれど初めて勝った、とも言えるんじゃないか、なんてことを思ったり。
これまでこいつ、なにやってんだろう、と半眼になって見てるしか無いようなところがあったんですよね。でも、ひまわりと真剣にぶつかり合う彼は良かった。正論、というか反論できない論拠は常にひまわりの方にあったんだけれど、共感は常に士郎のほうにあったのだし、それでも彼自身言いたい事思うこと願うことが彼の中で具体的になっていなかった間は、その言い分にももどかしさばかりが募ったし、ひまわりの言に突き放されても仕方ない部分があったのだけれど、そうやって叩きのめされ打ちのめされ、論破されて虚飾もこびりついた意地も何もかも剥がれきったあとに剥き出しになった、彼の在りようというものはなんともスッキリとしたもので、だからこそ意見も思想も一ミリたりともブレず揺るがず不動であるひまわりの中に、一滴だけでも染み渡らせ、戸惑わせることが叶ったという意味で、大したもんだと本当に良く思う。

ひまわりの方はね、あれもうむちゃくちゃ言っているのは間違いないんだけれど、無茶苦茶である上で筋は通っているし、少なくともどのような方法でもこの娘の信念は揺らぎようがないんですよね。それは価値観の違いであり、信念の強さの違いであり、育った環境の違いであり。だからこそ、彼女の主張する「暴力」によって及ぼす力、という同じステージの上に乗っちゃったら、どうやったって彼女の信念を肯定しているのとおなじになってしまう。こればっかりは、性能差をもってひまわりを上回ったとしても意味が無いんじゃないだろうか。
でも、だからこそ四年前、ヒデオによって革命を阻止されたことは、ひまわりにとって信念の崩壊でもあったわけだ。あれだけメンタルボロボロになって引きこもってしまったのは、彼女の知っているルールの埒外で徹底的に叩き潰されたから、ではないのか。
なのに、ひまわりはまた以前と同じ自己ルールに則って、それを正義として、それを真理として突き進もうとしている。
ヒデオは、これを止めることが、考えを変えさせることができるんだろうか。こうなってしまうと彼しかできない、とすら思えてしまうのだけれど。次々と役者が揃いだしているし、リップルラップルの発言からして場合によってはついにアウターすらも動き出すかもしれない。魔族や魔人、こういった連中が本格的に動き出した場合、ファンタジー方面にまったく無知なひまわりが、「暴力」で勝てるはずがないんですよね。そのステージにおいては、まったく次元が異なっている。なんでか、ひまわりたちこのシリーズのメンツは、「第三世界」というものを殆ど知らないみたいなんだけれど、それゆえに平気で一線超えかねない怖さがあるんだよなあ。
そのへんぶらついているロートルアイドルのカッコですら……【億千万の刃】としては遥か地平の彼方の領域にあるんだよなあ。
今考えても、聖魔王やってこの連中仮にも従えた鈴蘭、おかしいの一言なんですよねえ。今となっては、別の意味でおかしい人になってますけれど。
ちょっと悪の組織の総帥に長いこと偏重しすぎたんじゃなかろうか。たまには聖女とかゼルピムの機関長とか真面目にやってみるのもキャラ整える気分転換になるんじゃなかろうか。あんまりやらかしてばっかりだから、ほら、妹様が出張ってきてしまったじゃないですかー。
みこみこシスターズにはぶっちゃけわらた。

あと、久々に神殿協会の名前を聞いて忘れ去られてなかったのね、と一安心。というか、ついに勇者と神殿協会まで出張ってくるような事態になってきた、とも取れるんですよねえ。まだ、本格的にやべえ人たちはお目見えしていないですけれど。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 6 ★★★★☆  

りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 6】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「重度のロリコンですね。治療法は死ぬしかありません」
竜王防衛を果たし、史上最年少で九段に昇った八一。二人の弟子も女流棋士になれて順風満帆……と思いきや、新年早々問題発生!?
不眠症や変な夢に悩まされ、初詣で怪しげなおみくじを引き、初JS研では小学生全員に告白され、弟子の棋士室デビューは大失敗。
おまけにあいはロリコンを殺す服を着て既成事実を作ろうと迫る。殺す気か!!
そんな中、銀子は奨励会三段になるための大一番を迎えるが――

新キャラも大量に登場! 熱さ急上昇で新章突入の第6巻!!
新時代の将棋の歴史は、ここから始まる。 
何度も何度も竜に救われ助けられて、その度にその竜によって奈落の底に、絶望の縁に、煉獄へと突き落とされる。
何度も何度も何度も思い知らされるのだ。身の程を、自分が銀の妖精でも将棋人形でも鬼でもない、ただの才能なんて欠片もない中学生の女の子が居るだけだ、という事実を。将棋の神様に魅入られ、いたぶられ、翻弄されるただの小娘がいるだけだという真実を、将棋の真髄へと近づくたびに、覗き見るたびに、銀子は思い知らされていく。身も心もボロボロになりながら、深淵を覗き込み、しかし深淵はこちらをまるで見てくれない。届かない、遠く遠くへと遠ざかっていく。這いつくばって進めば進むほど、遠くへ遠くへと自分を置いて遠ざかっていく。
ならば、ただ自分の口を使って言えばいいのだ、告げればいいのだ。好きだ、こっちを見て、私を見て、私を愛して。愛してる、誰よりも愛してる。この世の何よりも、誰よりも、アナタが好きだ、と。私の全ては、あなたの為に存在しているのだと。
言葉で告げればいいのだ。ただの女の子として。突きつけられた事実を踏まえて、ただの女の子として、その手で彼を捕まえればいいのだ。
しかし、彼女は。空銀子にはそれが出来ない。たったそれだけのことができない。
彼女が語ることができるのは、将棋でだけだから。将棋の駒をもってしか、なにも告げられない、何も訴えられない、何も伝えられない。
相手も相手だ。生粋の将棋星人だ。将棋のことしか考えてなくて、将棋を通じてしか何も伝わらない男なのだ、と銀子はそう信じている。そう信仰している。そう崇めている。そう非ねばならないと、祈っている。
だから、銀子には将棋で強くなるしか無い。将棋で語りかけることができるように、彼と同じ領域にまで辿り着かなければならない。彼と同じステージに立たねばならない。彼と同じ世界に至らなければならない。
そうあれかし、と。
だから、銀子にとって生きる道はプロにしかない。プロになって、九頭竜八一と真剣勝負を、全身全霊をかけた勝負を挑まなければ、彼女の願いは絶対に叶わないのだ。

修羅の道以外のなにものでもない。

ただ告白するためだけに、これほどの修羅道を歩もうという女が果たして他にいるだろうか。この時点で、既に自分には無理だと、どうやったって天外魔境であろうプロの棋界どころか、その前段階である悪鬼羅刹の巣窟である奨励会ですらも、自分の無才では、自分の弱いメンタルではとてもじゃないけれど生き残れないと思い知らされ、打ちのめされ、叩き潰される寸前であるはずなのに。息も絶え絶えに、泣きじゃくりながら、子供のように、幼子のように、八一の名前を呼んで悶え苦しんでいたくらいなのに。
その八一が前に現れれば、彼女は立ち上がる。空っぽの心身にいったいその時、何を満たして起立させたのか、きっと彼女自身にもわからないだろう。それは愛か、執着か。
辛い。辛い。辛くて苦しくて仕方ない。
生き残れるとは思えないこの先を、果たして彼女はどう進んでいくのだろう。誰も彼女を助けられない。将棋に囚われた彼女に、言葉は通じない。想いも繋がれない。気持ちも伝わらない。
むしろ、将棋によって隔離されているのは、将棋星人である八一たちよりも銀子なのだ。そんな彼女に、誰が何を与えられるだろう。八一は、他の星に住まうあまりにステージの違うところに存在してしまった竜王では、銀子に何も伝えられないのだろうか。銀子が、同じプロの棋界に来なければ、あの熱い舞台の上で戦わなければ、想いは伝わらないのだろうか。
だったら、今の銀子にはどうやったって手を差し伸べることはできないじゃないか。
空銀子は、最後まで一人で戦え、ということなのか。助けられるのは自分だけ、なのだろうか。
こうなってはもう、何もわからない。誰か助けてあげてくれ、と懇願するのも躊躇われる。
見守るしか無いのだろうか。
いずれにしても、これほど一途で狂的なまでの想いを、献身を、他の誰にも邪魔してほしくはないものだ。竜は、彼女のものなのだ、誰も触れるな、誰も奪うな、誰も盗ってくれるな。そう思ってしまっても、仕方ないじゃないか。

他にも今回は色々あったのだけれど、兎にも角にも銀子でした。
いや、それともう一つ。天衣に対する八一の師匠としての愛情と指南は素晴らしいものだった。八一だって大人とはまだ全然言えない未成年なのに、ものすごく立派に師匠してるじゃないですか。天衣、一生忘れないですよ、これ。棋士としての、指針ともなり根幹ともなり得る素晴らしい教えでした。
そして、あとがき。どこか淡々とした語であったからこそ、胸に来るものがありました。このシリーズの熱さの根源を感じ取った気がします。

シリーズ感想

戦闘員、派遣します! ★★★★   

戦闘員、派遣します! (角川スニーカー文庫)

【戦闘員、派遣します!】 暁なつめ/カカオ・ランタン 角川スニーカー文庫

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世界征服を目前にし、更なる侵略地の先兵として派遣された戦闘員六号の行動に『秘密結社キサラギ』の幹部たちは頭を悩ませていた。侵略先の神事の言葉を『おちんち○祭』と変更するなど、数々のクズ発言。さらには自らの評価が低いと主張、賃上げを要求する始末。しかし、人類と思しき種族が今まさに魔王軍を名乗る同業に滅ぼされると伝えられ――。
「世界に悪の組織は二つもいらねぇんだよ!」
現代兵器を駆使し、新世界進撃がはじまる!!
カズマさん、カズマさんじゃないっすか、ちーーっす!
と、思わず挨拶してしまいたくなるほどにはクズっぷりがそっくりな戦闘員六号。多分、カズマさんがちゃんと就職、というかちゃんと引きこもりから脱してバイトするようになってたら、こうなってたんだろうな、こうなってしまったんだろうな、という感じではある。でも、カズマさんだと手取り17万のままで黙って引っ込んでいるとはとても思わないので、六号と若干キャラが違うと言ったら違うかもしれない。
そう考えると、六号って若干女性に甘いんですよね、あくまで若干、若干ですが比較対象がカズマさんだとわりと組織の女性幹部たちに良いように使われることを良しとしている六号は甘いと言いたくなるわけです。
一般的に見ると、こいつも十分ゲス野郎ですが。悪の組織の一員らしく、容赦ないところは徹底して容赦ない側面も見受けられますし、悪の組織だろうとバイトだろうと社会に出ると心が乾いてしまうものなんですなあ。
まあ、それでも幹部連中から十分可愛がられているようですし、ってか組織内では最古参で実質最高幹部扱い(給料除く)というのは、なんとも普段どう扱ってるんだ、と思ってしまう塩梅なのですが、これだけ「やる」男がなんで平の戦闘員のままなのかと思ったら、ちゃんと「悪の組織」らしい昇給基準があって、それを全く満たしてなかったのか。
悪いことをすると溜まる評価点「悪徳ポイント」なるものが、キラサギではまかり通っていたようだけれど、まっとうな悪事はしなくても、あれだけこまめに小悪党な行いとかゲスっぽい行為とかアウトな悪戯しまくってたら、何気に結構累積でポイント溜まりそうなものなんだけれど、ラストバトルのあの乱行とか見ると後先考えずに溜まった端からポイント使っちゃう浪費家の側面もあるんだろうなあ、こいつ。
でも、六号以外の最高幹部たちも、ぶっちゃけそんなに悪いこと出来なさそうなメンツなだけに、彼女たちはどうやって出世したのやら、と思わないでもない。世界征服が完了しそうになった段階でちゃんとまっとうな秩序に基づいた統治を行う予定が組まれているみたいだし、そこまで無茶苦茶な組織ではなさそうなんだよなあ。

テンポと良い、コメディの切れ味といい、掛け合いのハッチャケっぷりといい、【このすば】に負けず劣らずにキレキレっぷりで、ひたすら楽しかった。六号も、クズでゲスが極まっていたけれど、決めるところではちゃんとキメてくれるカタルシスの体現者でしたし。
惜しむらくは、まだヒロインとなるメンツが個性的ではあっても存在感を出し切っているとはいえないところがあるんですよね。これは書けば書くほどくっきりしてくるだろうものですから、さほど不安にも思っていないのですが、はやいところダクネスやめぐみんばりのキャラの濃さをみせてくれてほしいものである。
そう考えると、端っからぶっ飛んでたアクアさまは、さすがの存在感(無駄に)でありましたなあ。

暁なつめ作品感想

2017年10月読了ライトノベル系書籍からのお勧め  

読んだ本の数:42冊 うち漫画:8冊

ついに本年度No.1作品と出くわしたかもしれない【俺、ツインテールになります。】。シリーズ最燃えと呼んで過言ではないだろう、誰もが望み誰もが惜しんだであろう夢の現出でありました。
今月はできるだけ毎日一冊はよむように心がけていたせいか、一日一冊ペースを久々に越す結果に。せめてこれくらいのペースは維持できたらいいのだけれど。
高評価を掲げる常連な作家さんの中で、ひと際目だったのが佐伯さんが強烈すぎた【佐伯さんと、ひとつ屋根の下】。そして、【フラッグ オブ レガリア 青天剣麗の姫と銀雷の機士】の二作が初めて読んだ作家さんの作品としては非常に面白くて印象に残りました。以降も注目。


★★★★★(五ツ星) 1冊

【俺、ツインテールになります。13】 水沢夢/春日歩 ガガガ文庫

【俺、ツインテールになります。13】 水沢夢/春日歩 ガガガ文庫

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私は「神話」を読んだ。


★★★★☆彡(四ツ星Dash) 4冊

【叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士】 杉原智則/魔太郎 電撃文庫
【ミリオン・クラウン 1】 竜ノ湖太郎/焦茶 角川スニーカー文庫
【佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1】 九曜/フライ ファミ通文庫
【異世界拷問姫 5】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

【叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士】 杉原智則/魔太郎 電撃文庫

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ただ目の前の理不尽を見過ごせなかった、その素朴な善心が英雄だった男に選択と苦悩を強いてくる。かつての敵国の民だからと見ないふりをすればよかったのか。それが出来ない男だったからこそ英雄となったのに、それが今度は彼の立場を百八十度反転させていく皮肉と悲哀の物語。


【ミリオン・クラウン 1】 竜ノ湖太郎/焦茶 角川スニーカー文庫

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【問題児たち〜】の竜ノ湖太郎さんの新シリーズは文明が崩壊しながらもしぶとく人類が生き残り続ける近未来を舞台とした冒険サバイバル。新世界のワクワクがこれでもかと詰め込まれたトイ・ボックスである。


【佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1】 九曜/フライ ファミ通文庫

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男の理想と妄想をこれでもかと詰め込んでみると、こういう女の子がもれなくついてきまする、とでも言いたくなるほどの佐伯さんというエッチな女の子との共同生活、否、同棲生活物語なのである、これ。


【異世界拷問姫 5】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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ラストシーンのカイトの睥睨に痺れまくった上で、エリザベートがある意味ちゃんと伝統的な「姫」してる!


★★★★(四ツ星) 10冊

【ナイツ&マジック 8】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫
【異世界食堂 4】 犬塚惇平/エナミカツミ ヒーロー文庫
【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 5】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫
【最果てのパラディン IV 灯火の港の群像】 柳野かなた/輪くすさが オーバーラップ文庫
【デート・ア・ライブ 17.狂三ラグナロク】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫
【フラッグ オブ レガリア 青天剣麗の姫と銀雷の機士】 星散花燃/ kylin 電撃文庫
【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?3】 手島史詞/COMTA HJ文庫
【最強聖騎士のチート無し現代生活 1.姫君はイタズラな副会長】 小幡京人/ぐれーともす オーバーラップ文庫
【霊感少女は箱の中 2】 甲田学人/ふゆの春秋 電撃文庫
【魔法塾 生涯777連敗の魔術師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。】 壱日千次/リン☆ユウ MF文庫J


【ナイツ&マジック 8】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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【異世界食堂 4】 犬塚惇平/エナミカツミ ヒーロー文庫

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【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 5】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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【最果てのパラディン IV 灯火の港の群像】 柳野かなた/輪くすさが オーバーラップ文庫

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【デート・ア・ライブ 17.狂三ラグナロク】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

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【フラッグ オブ レガリア 青天剣麗の姫と銀雷の機士】 星散花燃/ kylin 電撃文庫

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【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?3】 手島史詞/COMTA HJ文庫

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【最強聖騎士のチート無し現代生活 1.姫君はイタズラな副会長】 小幡京人/ぐれーともす オーバーラップ文庫

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【霊感少女は箱の中 2】 甲田学人/ふゆの春秋 電撃文庫

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【魔法塾 生涯777連敗の魔術師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。】 壱日千次/リン☆ユウ MF文庫J

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今月のピックアップ・キャラクター

エルネスティ・エチュバルリア (ナイツ&マジック)
ギュネイ (叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士)
グレイスフィール (最果てのパラディン)
時崎狂三 (デート・ア・ライブ)
イナヅチ (フラッグ オブ レガリア )
日南葵 (弱キャラ友崎くん!)
ザガン (魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?)
東雲一真 (ミリオン・クラウン)
茅原那姫 (ミリオン・クラウン)
ユウキ (最強聖騎士のチート無し現代生活)
佐伯貴理華 (佐伯さんと、ひとつ屋根の下)
弓月恭嗣 (佐伯さんと、ひとつ屋根の下)
ドラグギルディ (俺、ツインテールになります。)
ティラノギルディ (俺、ツインテールになります。)
ジャンヌ・ド・レ (異世界拷問姫)
櫂人 (異世界拷問姫)




以下に、読書メーター読録と一言感想。

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勇者のセガレ 2 ★★★☆   

勇者のセガレ2 (電撃文庫)

【勇者のセガレ 2】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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高校3年生になって一発目のテストで、まさかの赤点を3つもとってしまった剣崎康雄。原因は異世界の危機を救うための勇者修行とあって、康雄を指導する魔導機士ディアナは責任を感じ家を出ると主張。剣崎家ではまたしても緊迫の家族会議が開催されることに。
そんな康雄たちの前に、異世界からの新たな使者、ハリーヤが現れる。ディアナの上司だという銀髪美女は康雄の勇者修行に反対で、学校にまで追いかけてくる始末。追試の勉強もままならない中、ディアナとの関係を誤解した同級生の翔子ともギクシャクしたままで……。
異世界を救う前に康雄の追試が大ピンチ!? 一体どうなる庶民派ファンタジー!
あ、そうかー。そういうことだったのか。勇者の子供でしかも男の子で、そんでもって親父の代わりになる、て宣言したからヤスくんも剣と魔法で戦う二代目勇者になるものだと思い込んでたんだけれど。いや、これに関してはヤスくん当人や周りも基本その路線で考えていたからそれにつられてたのもあるんだろうけれど、彼の能力って客観的に見ると勇者じゃなくて「聖女」系統なんだ、これ。しかも、自分で戦うタイプじゃない戦闘能力が皆無なタイプの。
でも、ハリーヤさんに真っ向からダメ出しくらったように、伝説の勇者の代わりとして異世界に赴くにはヤスくんはあまりにも力不足であり、政治的にも無力すぎて向こうに行っても当人にとってもあちら側の世界にとっても不幸な結果にしかならない、というのは至極まっとうな意見で否定のしようがなかったのですけれど、もしヤスくんの持ってた能力が件の通りなら、伝説の勇者の代理ではなく、まさしくヤスくんの力が求められる事態であるんですよね。ぶっちゃけ、あの「シィ」という存在の異質さは往年の勇者の力であっても圧倒は出来たとしても果たして「噛み合う」のか、と疑問符が浮かぶところでありますし。
でも、歌で死霊を浄化する聖女さまが男、というのはちょっとビジュアル的にどうなのよ、という状況でもあるのですが。ヤスくんがカリスマ歌手とかロックバンドのボーカルとか演歌の若手ホープとかだったら、それはそれで、なのだけれど。
それから、ちょっと勉強が疎かになってたからって、三年生にもなっていてテストで3つも赤点、っていくらなんでも普段から授業に身が入ってなかったとしか思えないなあ、あかんぞヤスくん。いくら使い回しとはいえ、追試で90点以上取れてるんだから、出来ないってわけじゃないんだし。
と、ここで翔子がこんな形で深く絡んでくるとは思わんかったなあ。ぶっちゃけ、彼女クラスメイトでもないし、中学時代の同級生ってだけですごい縁が薄いんですよね。そこに昔お互いちょっと気になってた、みたいな関係があったとしても、そもそも友人とすら言えなかった関係だったというのはやはり弱い。もうちょっと以前からの交流が深くないと、なんかぽっと出の印象が拭い去れないままなんですよねえ。ここから巻き返せるのか、というところなんだけれど、それならもうちょっとディアナとの関係の方を踏み込んでいった方がちとどこもかしこもが中途半端になりかねないんじゃ、といささか心配でもあるわけです。
普通にディアナ、スポットがあたると世間知らずなところも含めて非常に可愛い反応が多いだけに、もっと彼女に重点あてて攻めていってくれた方が好みではあるのですけれど。
ともあれ、向こうに行く行かないもはっきりしないし、シィの正体や黒幕も匂わされつつも、こっちの日本でどれだけ真相に踏み込んでいけるのか、これからどう転がしていくのやら。
いい加減、剣崎家のマイホームが破壊されると、世間的にもやばいんですけど。家の修復って、簡単じゃないんですからね! 次の巻になったら直ってる、ってなわけにはいかないでしょうし、ドアくらいならともかく。
あと、出費!!

1巻感想

異世界拷問姫 5 ★★★★☆   

異世界拷問姫5 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 5】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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もう一人の『拷問姫』ジャンヌ・ド・レに誘われ、地下墓所で世界の真実に直面した櫂人たちは、彼女が語る救世に協力することを決める。
「余の積んだ屍を犬死と嗤う者は生かしておかぬ。全て殺す。それこそ『拷問姫』の名にふさわしき方法で、だ」
「称賛しましょう。それでこそ、です。初代の『拷問姫』。自ら罪人に堕ちた女よ」
十四の悲劇で始まり終結を迎えるはずだった物語はここにきて残酷さを増し、全ての者に苛烈な選択を迫り出す――――。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る今最も熱いダークファンタジー第五弾。悲劇を糧に進み続ける世界の中で、櫂人はエリザベートはヒナはジャンヌはイザベラは――――そして肉屋はいかなる道を選び取るのか

お……おお…おおおお。
このラストシーンよ!! ラストシーンよ!!
世界の敵となった男が、世界を統べるのか!
世界よりも一人の少女を選んだ青年が、世界を救うのか!!
狂王にして皇帝たるを、彼は掴み取りテーブルに叩きつけ踏みにじり、見下ろすのだ、見下すのだ、見回し見渡し一望して睥睨するのだ。愚鈍なる従者であった彼よりも愚かなる高貴なるものどもを、統率者どもを、その全世界の痛みを以って跪かせるのだ。

ふわぁぁぁぁ。

やばい、これはやばい。もうなんつーかやばい!!
3巻のラストの、エリザベートを死なせないために覚悟完了したカイトも格好良かったのだけれど、そういう次元を通り越してもうこれ、至った、とでも言うべきか。
無意味に生かされ無意味に殺されたなんの価値もない魂として打ち捨てられた青年が、ただ独りの少女に憧れ追い続け、その果てに彼女を追い越してついにここまで至ったか、と。
そうなんだよなあ。まだ届いていないのだけれど、ついにエリザベートと追いつ追われつが逆転したというか、ついにカイトの方から捕まえにいく、エリザベートが待っているという構図になったことこそを感慨深いと感じているのだろう、これは。
そうするために、エリザベートを救うために、エリザベートを迎えに行くために、そのためにその為だけに彼は王へと至ったのだ、と考えるならこれほど胸震わすものはないんじゃないか?

またエリザベートの方もね、ついに彼に捕まえられるのを赦した、迎えに来ることを赦して、あれを託したあのシーン。認め赦し受け入れた。あの表情を思うと、胸がいっぱいになるのです。

なんか、今回は特に胸を突かれるシーンが多かった、と今振り返ると思うのです。リュートが見つめていた、忘れてはならないと思い定めながらカイトを見つめているシーン。ジャンヌが、イザベラを思い口ずさむ幾つかのシーン。どれもが、フッと胸を突かれるような深く淡く切ない情感が込められていて、なんだか感傷的になってしまっている自分がいる。
特にジャンヌがねえ。四巻から突如あらわれた二人目の拷問姫、という立ち位置ながら、この巻におけるイザベラに対して見せるあの一途で訥々とした想いがジャンヌというイレギュラーに物凄い勢いで強烈な存在感を吹き込んでいくのです。エリザベートと対象的な白黒相反するもう一人の拷問姫、なんて分かりやすくも品のないキャラクターなんぞではなく、独自の唯一人の、エリザベートと関係なく高らかに自らを唄うジャンヌ・ド・レという生者を、威風堂々と掲げて振りかざし、ふわりと舞って見せるこの美しくも清廉な存在感。
これをして、エリザベートと並び立つに相応しいと受け入れてしまったんですよね。拷問姫が二人いて、何がおかしいものやらか。
イザベラの顛末は衝撃的ではありましたけれど、このイザベラこそがあのジャンヌという存在をここまで確立してみせたと思えば、むしろイザベラってここから躍進していくんじゃないだろうか、あれほどの有様となりはてながら、むしろここからが本番なんじゃ、と期待してしまう。ここまで見事に自分を貫ききってみせた彼女に、その先を果たさせんとする残酷にして優しい顛末は、これでもかと悪意の地獄を現出させながらも常にその中に優しい愛情を込め続ける綾里けいしという作家の作風の髄だわなあ、と深く深く感じ入るのでした。

さあ、盛り上がってきたを通り越して、極まってきましたぞクライマックス!!

シリーズ感想


魔法塾 生涯777連敗の魔術師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。 ★★★★   

魔法塾 生涯777連敗の魔術師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。 (MF文庫J)

【魔法塾 生涯777連敗の魔術師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。】 壱日千次/リン☆ユウ MF文庫J

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落ちこぼれや変態でもきっと居場所がみつかる、はみだし魔法塾コメディ。

魔法大国・日本のトップ魔術師に史上最年少で成り上がった天才・鳴神皇一郎。だが、仲間の裏切りに遭い、ニートに転落。そこへ亡き恩師の娘・結が「私が経営する魔法塾・黎明館の講師になって」と頼んできた。承諾した皇一郎だったが、やって来る塾生は、生涯全敗の魔法騎士・ベアトリクス、禁忌の術で死霊軍団の結成を夢見るお嬢様・芙蓉、ヤンキー魔法高校で屋根裏登校をする謎の少女・つぼみ……と落ちこぼれや変態ばかり。「安心しろ。俺がこの塾を『母校より母校』と思える場所にしてみせるから!」。天才と呼ばれた元ニートによる、カリスマ講師としての破天荒な指導が始まった……笑いと感動を巻き起こす、はみだし魔術師たちの痛快魔法塾コメディ!

先月に出た【バブみネーター】がもう筆舌に尽くしがたい狂気に犯された作品だったので、ついに壱日千次先生は分水嶺を超えてしまったのか、と呆然としていたのだけれど、良かった本作はまともだ……、とこれがまともに見える時点で相当おかしくなっている自覚もあるものの、実際あれと比べれば、という形になってしまうのでまともなのである、壱日千次作品内における相対的に。
というわけで、いつものノリの壱日千次作品でありました。相変わらず、というべきかこの人の作品って全編すっ飛んだギャグ調にも関わらず、主人公含めた登場人物の置かれた境遇というのが極めて過酷だったり悲惨だったりするんですよね。特に、社会的な立場において。
深刻かつシリアスに話を転がしていくならとことん暗く鬱々としたブラックでダークな物語にできそう、というか自然となってしまいそうな境遇や立場に置かれた登場人物たちが、そんな暗さを吹き飛ばすかのような明るさとノリで困難を乗り越え、世間の白い目を覆していく姿は、お腹の底から笑わせてくれるのと同時に凄く救われる気分にしてくれるのである。
理不尽な目にあっている人たちが、たとえ変態であろうとまっとうに頑張って、まっとうに報われる、というストーリーは何だかんだとカタルシスがあるんですよね。
本作もまた、決死の思いで頑張った末に仲間に裏切られ、社会的に抹殺された挙句にネット上で自作自演の自分の擁護スレに張り付く日々を送る主人公・鳴神皇一郎。ニートになりたくてなったわけじゃないけれど、ネット廃人と化しているのは紛れもなく自業自得です、はい。
そんな彼ですけれど、一番悔しい思いを抱え後悔に苛まれているのは自分の零落よりも、自分を育ててくれた魔法塾が自分の不名誉の煽りをくって潰れてしまったことなんですよね。学校の教育方針に馴染めずにいた自分を超一流の魔法使いに育ててくれた恩師に、報いるどころか仇で返してしまったこと。それを悔み続けていた鳴神皇一郎は、自分の名誉回復などよりも何よりも、恩師の娘が頼ってきてくれた時にまず恩返しだ、と勇んで協力するのである。良い男っぷりじゃあないですか。無職から抜け出せなかったのが就職させてもらえそうだから飛びついた、というわけではないのである。いやほんとに。
実際、叩き上げて一度は魔法使いの頂点にまでのし上がり、一人で魔王討伐を成し遂げたほどの男なので、力が封印された今でもあれこれ有能ではあるんですよね。むしろ、第一塾生として入ってくるベアトリクスが見事なくらいポンコツなので、ダメっ子要員はほぼ彼女一人で賄います、パーフェクトダメっ子です。呪いのせいで勝てない、というベアトリクスですけれど、呪い関係ないところでもおバカなのでほぼポンコツなんだよなあ。唯一剣才のみが前人未到の才能を秘めている、にも関わらずそれが呪いで封印されているお陰で、オールラウンダー・ポンコツなのである、素晴らしい。表紙絵のあのビキニ鎧かと思われた装備も、貧困極まってお腹のところ売っちゃった、と聞くと露出度の高さが切なくなってくるのでありますよ。
しかし、彼女もまた諦めず頑張り続けた娘なのです。生涯一度も勝つことができないにも関わらず、心折れずに頑張り続けたベアトリクス。そんな娘が、報われなくてどうするのか。社会的に良く見られないから、世間的に受け入れられないから、そういった理由で排斥される落ちこぼれや変態や外側の人間が、努力も実績も認められず報われない。そんな閉塞を吹き飛ばすギャグと燃えのカタルシス。重たいテーマだからこそ、笑ってぶん殴れ、とばかりの力強さと切れ味は、まさにこの作者さんの持ち味であり魅力なのでしょう。笑いネタのキレキレさは、他の追随を許さないものがあるだけに、あまり狂気に走らないでほしいです、いやもう。

壱日千次作品感想

やりなおし英雄の教育日誌 ★★★☆  

やりなおし英雄の教育日誌 (HJ文庫)

【やりなおし英雄の教育日誌】 涼暮皐/桑島黎音 HJ文庫

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魔界からの侵略を受けている世界。主人公・アキは仲間たちと共に魔族との決戦に挑むが、力及ばず敗北し、世界は滅んでしまった。
魔女の協力を得て過去へ戻ったアキは、バッドエンドを迎えてしまった未来を変えるため、過去の自分たちの教師となり、より良い方向へと導くことを決意する。
かつての仲間を救うため、再び世界を救うためのアキの戦いが今始まる!!。
「――かかって来やがれ三流。教師<オレ>に勝てると思うなら!」

過去に戻ってやり直し、というのは時々見かけるシチュエーションだけれど、生身で戻ると年相応の肉体年齢になっちゃうし、同一人物としてニューゲームというわけには行かないんですよね。しかも、その場合だと大体において過去の自分がいるわけだ。過去の自分を見てしまうと、往々にして恥ずかしいし情けないし自分の至らなさ無様さアホさを見せつけられるようで、平静ではいられないものなのか、過去の自分と仲良くしているケースというのは見たことなかったのだけれど……そうかー、過去に戻ったら自分が女の子になってた、というか女の子の自分らしき存在が自分のポディションに収まっていた、ってそれ何気に悪夢じゃない?
そこまで来ると、完全に自分とは別人という認識になってしまうのか、過去の自分(女)のアミがあまりにアホっ子すぎてアキと全然キャラ違うからか、普通に兄妹みたいな間柄になってるんですよね。
ただ、このアミの存在こそがアキにとって舞い戻ってきた過去が自分の世界と地続きではなく、殆ど別の世界という認識を強くしてしまっている要員なのだろう。
やり直し、とタイトルついているけれど、過去において喪った仲間たちと、今自分が教えている生徒たちが同一人物である、という思いはもうアキ自身持ててないんだろうなあ、という描写が所々に垣間見えていて、それがなんとも切ない。
掛け替えのない親友という認識と、可愛い教え子たちという認識のブレが絶え間なく彼を揺さぶり、教えられる生徒たちにも戸惑いを与えている。この微妙に関係性の定まりきれない不安定さが、また興味深くあるのだけれど、この作者さん、相変わらずキャラ立てるのは上手いし掛け合いなんかも絶妙なのに、キャラを動かすことに関しては結構行き足が進まない印象が本作でも拭い去れないところがあるなあ。ストーリーの流れになかなか乗っかって動いてくれない感じがする。或いは、キャラが乗っかれるほどストーリーの流れが強くないのか。
ともあれ、これらはもっと情報が開示されてきたら。アキがどうやって過去にもどってきたのか、イフリアの秘密、アミがどうして女の子として存在しているのか、過去の戦争の全貌、行方不明の五人目の存在、など明らかになってきたら、もっとガンガン動いてきそうなだけに、勿体ぶらずにどんどんネタ投入していってくれた方が楽しそう。
まあ、この子らがワイワイと好き勝手やってるだけで存外面白さは満たされている気もするのだけれど。

涼暮皐作品感想

霊感少女は箱の中 2 ★★★★   

霊感少女は箱の中2 (電撃文庫)

【霊感少女は箱の中 2】 甲田学人/ふゆの春秋 電撃文庫

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少女失踪の心霊事件以降、ロザリア・サークルの代表・守屋真央のもとで「交霊会」の手伝いをすることになった柳瞳佳。
そんな中、守屋の前に同じ学校に通うテニス部所属の的場茜から心霊相談が舞い込む――それは「一人交霊会」を機に、人が全く変わってしまった親友・吉野美南海の調査だった。
美南海の横顔に写る無数の目鼻が浮かび上がった写真。彼女を取り巻く友人たちに次々と起こる不可解な現象。そして辿り着いてきた美南海に取り憑く首つりの霊。
全ての謎を追っていくうちに、やがて明らかになっていく哀しい真実とは――。
とりあえず、死人が出なかったら、凄く穏当に終わったなあ、と思わずホッとしてしまったんだけれど、いやいやいやいや、よく考えると全然良くないですからね、これ。死人出なかったら、って一応死者出てますし、再起不能に近い状態になっている人もいるわけで、全然穏当なんかじゃないですからね!
ただ、それでも前回よりよっぽどマシな結果に終わった、と思ってしまうのはそれだけ一巻の事件が凄惨で救いがなかったから、なのでしょう。
だからと言って、今回救いがあったかというと、てっきりあった……ちょっといい話で終わったかも、と思った瞬間に虫でも踏み潰すかのように「グシャ」っと、当の救いがあったと思われた娘の心のうちからえげつないまでの本音が見えてしまっただけに、もうなんかねー、なんかねー。
ただ、独りよがりではあるんだけれど、うーんうーーん。一概に攻められんとも思うし、もう一人の娘なんかはまだもっとシンプルに二人の親友のことを思って行動していたので、救いが全くないというわけではないとは言えるんじゃないだろうか。
なんか、学校の環境が酷い状況を酷いと生徒たち自身が思うことがないくらいに歪みきっているんだけれど、前回にしても今回にしてもちゃんと女の子同士、イビツでは在っても友情というまっとうな感情が機能しているのは間違いなく、ちゃんと友達のこと心配していることは確かなので、それは救いなのかなあ。
でも……思いっきり泥をかけられた気分でもあり。なんともすっきりしないわけですよ、うん。
しかし、そう言えばその友情を拗らせきっていた瞳佳についていたアレ。てっきりレギュラーのごとく、或いは【断章のグリム】の風乃姉さんのろくでもないバージョンとして、常につきまとってくるのかと思ったら今回は音沙汰なしでしたね。本作って、かなり実録に沿った形で「霊障」というものを取り扱っているだけに、風乃さんみたいなファンタジーな存在は扱わない、ってことなんだろうか。
それでも、真央や瞳佳が置かれている状況というものが絶望を享受しているのは確かな話で、この子らは根本的な部分で、現状を改善しようとかは思ってないんですよね。だからこそ、利用されることもまた享受しているのか。
まさか、あの「箱」を利用しようなんて考えている連中が居て、学校を舞台にその勢力争いというかちょっかい掛け合っている、なんてことになっているとは想像だにしていなかった。だってあれ、どう考えても人間にどうこうできるもんじゃないでしょう。いや、しかし真央はそれを「交霊会」に道具として利用しているわけで、使うものとして捉えられていても仕方ないのか。ぶっちゃけ、真央の側からそれを止めようという意思もあるのかどうか、ってなところだし。
触れてはならない領域に手を突っ込んでしまったものの末路、という顛末は見てみたい気もするけれど。
ところで芙美さん、なんか一巻では評価が微妙というか、ポンコツ巫女っぽい言い方をされてたような記憶があるんですが、普通に活躍してますよねえ。今回もあっちこっちに出張ってお祓いやら調査やらで大車輪でしたし。ちょっと調子乗りなところはあるかもしれませんけれど、何があかんのだろう。そのうち、やらかしそうではあるけれど。

一巻感想

建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 ★★★  

建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 (宝島社文庫)

【建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。】 逢上央士

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産後クライシス(?)で妻子に出て行かれた男性、サモエドと暮らす老夫婦、自宅カフェ開業を考える二人の主婦……
音無建築事務所には、今日もさまざまなワケありクライアントが訪れる。
天才的な観察眼を持つ音無薫子(おとなし・かおるこ)は、彼ら自身も気付いていない真の問題に、建築士として切り込んでいく。

「あなたに必要なのはリフォームではなく、リノベーションです」。

個性的な面々が織りなす、大人気“建築" ミステリー、第2弾!
人生リノベーションします、ってなかなか大仰な文句だとも思うのだけれど、住む家にしても働く場所にしてもその人の人生を担う場所なのですから、それをリノベーションするというのは人生そのものをリノベーションすると言ってもいいんだろうなあ。
そう、建築物。特に住居なんていうのは人が住む場所なんですよね。生活して、毎日を過ごす場所。インテリアなんかだと思いきれば変えられるけれど、家はそう簡単にはいかない。自動車などよりも遥かに高価なものであり、持ち家、マンションともなれば生涯に一度買えればいい、というくらいの買い物となるわけです。まあ、中には引っ越ししまくる人もいるのですけれど、それは置いておいて。
古くなってきたから修復する、という意味の大きいリフォームと違って、リノベーションは建物そのものをアップデートしたり改造したりする、という意味があるらしく、つまるところ住む人の変化に合わせて、アップデートしていくことが建築物にも求められる、ということなんでしょうな。人間の人生なんて、ずっと同じというわけにはいきません。結婚してからも子供が生まれて生活スタイルが変わっていったり、ペットを飼うことで価値観そのものが変わっていったりもする。職場でもそうで、会社を立ち上げた時と順調に事業が拡大していったときではやはり場所に求められる役割というものは、細かいところで様々な変化が訪れ、しかし場が変わらなければ様々な食い違いや歪みが出てきてしまう。
今回は、そんな住んでいる人も気づかないまま淀み軋んでいた建築物を、その住人と幾度も話し合いながら建築士たちも手探りで、一番良い形でのリノベーションを掴んでいく、そんな話ばかりでした。
改造する、アップデートすると言っても過去を消し去ってしまうわけじゃあないんですよね。むしろ、過去に立ち返ってそこで何を大事にしていたのか、何が大切だったのかをいつしか忘れてしまっていたこと、凝り固まった観念にとらわれていたことに気がついて、改めてそれを取り上げて新しい形へと進化させていく。これもまた、成長というものなのかもしれません。
主人公、なのかは今回ちょっと微妙な気もしましたけれど、インターンの今西くんはもうすっかり自立して、頼りにできる一端の建築士の端くれになったのを、まあまだまだな部分は多々あれど、見せてくれたのは良かったです。なんだかんだと、元カノの怜さんとよりを戻しそうだな、これ。
カップリングとしては、実は薫子さんって月見里さんの方が組み合わせとしてはしっくり来るのだ、ということをエピローグになってようやく気がついたり。これまでずっとふたりでやってきたんですしねえ。何気に元ライバルみたいな間柄だったみたいですし、穿ってみるとあれやこれやと美味しいシチュエーションが詰まっている気がします、この二人。
ただ、話としてはラストのフルールの再生なんてものをやってしまったので、今西くんの成長物語としても月見里さんの再始動の物語としてもキレイに決着ついてしまっているので、だいたい片がついちゃってるんですよね。シリーズとしてはこれでおしまい、となっても全然不思議じゃない終わり方だったんですけど、どうなんだろう。

一巻感想

俺、ツインテールになります。13 ★★★★★  

俺、ツインテールになります。 13 (ガガガ文庫)

【俺、ツインテールになります。13】 水沢夢/春日歩 ガガガ文庫

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宿敵ドラグギルディ、完全復活――!!

神の一剣の幹部・戦女神ヴァルキリアギルディの能力“死して尚変態(ヴァルハラ)”で、これまでに倒したエレメリアンたちが完全再生! 積み重ねてきた全ての戦いをリセットされたツインテイルズ。彼らの終わりなき悪夢が始まった――。 だが、この重大な局面で、愛香にある異変が起きていた。ヴァルキリアギルディとの戦いのなか、自分が誇れる唯一のもの――ツインテールを失う危機に直面した彼女は、激しい恐怖心に支配されてしまったのだ。エレメリアンに絶望を与えてきたテイルブルーの弱体化。総二の優しささえ、今の愛香には不安でしかなかった。その間、再生エレメリアンたちは複数同時侵攻を開始する。圧倒的な数を前に、トゥアールが導き出した作戦とは――。一方、アルティメギルの女科学者マーメイドギルディは、エレメリアンの復活の先に、更なる恐るべき計画を企てていた!

愛香が、慧理那が、イースナが……次々に危機に瀕していく、ツインテイルズ! 果たして、彼女たちの運命は!? そして、宿敵と相見える総二! 究極のツインテール・テイルレッドと、最強のツインテール・ドラグギルディ――今再び、ツインテール頂上決戦の幕が上がる!!

もうボロ泣き。いやマジで。いい歳したおっさんが、マジ泣きですよ。それも感動で。
ああ、今まで【俺、ツインテールになります。】を読んできて良かった、と心底思わせてくれる、シリーズの集大成にして到達点とも言える決戦でした。そう、ずっとこの光景を望んでいた。愛すべきエレメリアンたち。お互い相容れぬ存在でありながら、ずっと互いをリスペクトしあい、全力を尽くし全身全霊をかけてお互いの信念をぶつけ合い、最後には溢れんばかりの敬意と友情を分かち合いながら、倒れていったエレメリアンたち。
彼らは敵でした。しかし、誰もが尊敬できる敵だった。その属性に対する信念と愛情は敬服に値するものばかりだった。どれほど変態であろうと、美しく格好良い生き様ばかりだった。そして、何より優しい益荒男ばかりだった。力と思いの限りを絞り尽くしてぶつかり合う果てに、間違いなく友情が、親愛が芽生えていた。
「強敵」と書いて「とも」と読む。そう語るに相応しい変態ばかりだった。
だから、そんな彼らが前巻において再生怪人として復活した時、抱いた思いは「またか」ではなく、「また会えた」というどこか喜びにも似た感情だったのです。
そして、復活した彼らがそんじょそこらの特撮モノの再生怪人と根本から違ったのは、作中でも彼ら自身が語ってるように、自分たちを倒したツインテールズへの恩讐極まる亡者たちなどではなく、第二の生を謳歌する粋人ばかりだったんですよね。まるで、かつての賑わいがまとめて戻ってきたような活気がアルティメギルに戻ってきていて、いずれ終わる祭りであってもその光景は心温まるものでした。
でも、どれほど満足して散っていったとしても、エレメリアンたちそれぞれに未練や思い残すことがあったのは確か。そこには、ツインテールズの面々とのまだ果たされない因縁だったり、思いを告げられぬまま先に散ってしまったが故に届かなかった気持ちを、再会なったことでついに繋げられたり、となんかねー、みんなが一斉に戻ってきたことで叶ったこともあり、思い残したことが次々と果たされていくんですよね。読んでいるこっちもどこか胸の片隅にこびりついていたものが、キレイに丁寧に引き剥がされていくようでした。
これはツインテールズもおんなじなんですよね。かつて出来なかったこと、届かなかったもの、悔しい思いをしたまま果たせずに終わったこと。それを、こうして成長した段階で再び向こうから現れてくれて、後悔や心残りを再戦によって吹き飛ばしていってくれたのです。受けて立つエレメリアンたちも、リベンジを! というよりも、まだ未熟だった頃のツインテールズたちの成長を見届けることが叶って喜び満足したようにまた去っていき、全力を発揮できないままなんか適当にやっつけられてしまった連中も、やっと自分の本領を発揮することが叶って満足して逝ったり、とこれまで残されてきた小さな隙間を丹念に埋めるようにして再戦は続いていくのである。
そこで確かめられたのは、ツインテールズの成長であり進化であり、その糧としてエレメリアンたちが間違いなく彼女たちを押し上げ、育て、伸ばしていったのだという事実でありました。相容れぬ敵であろうと、矛を交えるしかない関係だったとしても、彼らは間違いなく戦友だったのだ、と……。

正直もうね、こんだけ丁寧にリスペクトを充実させてくれたから、彼らともう一度再戦という形だけでもかなり満足感はあったんですよね。
でも、それだけでは終わらなかった。終わってくれなかった。
あのクライマックスの、望んでやまなかった光景が叶ったことへの感動が、どれほどのものだったか。思わず泣けてきてしまうほどの、素晴らしい、素晴らしいシーンの連続。
スワンギルディの、ドラグギルディへの崇敬。洗脳され自由意志を失っていた状態から、自力で復活して皆のピンチを覆してみせたオトコの意地。もうね、カッコイイなんてもんじゃなかったですよ。そこからはじまるオールキャストの大騒ぎ。
並び立つドラグギルディとティラノギルディの二大エレメリアン・ツインテールズの勇姿。
貴の三葉のレディース軍団とブルーという喧嘩友達の共闘。死の二菱の左右両牙将プテラギルディとトリケラトップギルディのタッグ戦。ビートルギルディとスタッグギルディの兄弟が合体したヘラクレスギルディがイエローを乗せ、敵軍を蹂躙していくその光景。相争っていた巨乳派リヴァイアギルディと貧乳派クラーケギルディによる、今度こそ手を取り合い、お互いを認めあった肩を並べあっての闘争。
そして、ティラノギルディのまさに「帝王」を名乗るに相応しい揺るがぬ巨大な背中をもって少女の涙を止めるために守り抜いた最期の戦い。
そしてそして、誰よりも通じ合いわかり合い理解し合った者同士。戦友同士。親友同士。或いは、ツインテールの二房であったテイルレッドとドラグギルディの、ずっと思い描いていた二大ツインテール戦士の共闘。
クライマックスにおける、エレメリアンたちから注がれた、託された属性力により成るこの場この時限りの究極進化エレメリアン・チェイン。
熱い、熱い、熱い。そして優しく激しくカッコよいシーンの連続は、もうありえないほどの盛り上がりで、テンションの上がり方で、まぶたの裏にはありありとこの激烈で素晴らしいシーンの光景が思い浮かぶようでした。
そして、あまりに美しいラストシーン。友との別れのシーンを描いた挿絵は、もう言葉にすることもおこがましい心を震わす傑作でした。あれはもう反則だよー。泣くよーー!! ボロ泣きだよっ!!
ティラノギルディ、復活してからひたすらかっこよいドラグギルディとは裏腹に、その見事までの小物っぽさを、もう見ていられないっ! と思うほどに随所に見せつけてくれて、色んな意味で目立ちまくって、もうなんだか愛おしくすらなってきていたんですが、最期の戦いに見せた勇姿は筆舌に尽くしがたいほどにカッコよくて、ドラグギルディに並び立つに相応しい勇姿でした。かつて泣かせてしまった少女の涙を止めるために戦うって、どんなヒーローだよ。かっこよすぎるんだよ、小物のくせに。帝王のくせに。
んで、ドラグギルディですよ。もうこんなカッコイイ敵キャラ、こんなライバルキャラ、出てこないんじゃないかというくらい、あまりにもあまりにもすごすぎた。
ライトノベル史上に残る、最高の好敵手でありました。

これ、作品としてこれ以上登れないというくらい頂点を極めてしまった展開で、あとどうするんだろうと心配になってしまうんですけれど、それくらいこれまでのシリーズのすべてを費やし燃やしきったような、全力全開の物語でした。文句なしに最高傑作。【俺、ツインテールになります。】という作品は、この話を描くためにあったんだ、と言ってもおかしくないくらいの集大成でありました。
ただただ、感動の涙が湧き出してとまらない。

シリーズ感想

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 ★★★★☆  

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

【佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1】 九曜/フライ ファミ通文庫

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ちょっとHな女の子と同棲してみませんか?

高校二年生の春、ひとり暮らしを始めるはずだった僕こと弓月恭嗣は、何の冗談か不動産屋の手違いで、ひとつ年下の佐伯貴理華さんなる女の子と同居するはめになってしまった。やたらと距離を縮めてきたがる彼女に、ささやかな抵抗を続ける僕だったが、なんと彼女も同じ高校!学校でも家でも彼女に振り回される日々が始まって――。常に冷静な弓月くんと、とびきりの美少女なのにちょっとHな佐伯さんが繰り広げる同棲&学園ラブ・コメディ、開幕です。
ごめん、こんなん男の都合の良い妄想じゃん、と言われようがなんだろうが、あまりにもどストライクすぎて撃墜されざるをえない。轟沈されざるをえない。可愛いなんてもんじゃない、恋をしてしまいそうなほどキュートでコケティッシュな彼女、佐伯さん。これあかんわー、マジあかんわー。一挙手一投足にキュンキュンしてもうて、もうあかんわー。
自分の読んだ範囲において、本年度最強ヒロインの冠を捧げても宜しかろうと言って過言ではないほど、どうしようもなくかわいい。
チョロいと言うなかれ。男は女の子にちょっと「好き!」みたいな素振りをされたら、簡単にときめいてしまう生き物なのだ。
しかし、この主人公たる弓月くんは、そんな男子の大半に属さない極少数の側の人間なのである。ぶっちゃけ、この主人公が年相応の思春期を迸らせる、女の子に振り回されるだけの受け身な男子なら、或いは容赦呵責のない肉食系なら、これほど佐伯さんなる小悪魔は引き立たなかったでしょう。ぶっちゃけていうと、弓月くんは非常に面倒くさいタイプの人間である。歳不相応に枯れていて、しかし周囲に対して無関心ではなく、それでいてどこか徹底してロジカルに物事を捉えようとしている。そのわりに偏屈で、こうと思い込んだらなかなか自分の意見を譲らない。頑固者で、しかし傷ついた少女を無視できない程度には紳士だ。とても懐に抱き入れるように優しくて、突き放すように辛辣な、温厚で物静かでどこか虚無を好んでいるかのような彼は、透明で消えてしまいそうに儚くもある。
その内面に踏み込むにはあまりにも複雑で難解で糸をクシャクシャに絡めたような彼に近づくは生半なことではないだろう。それを、佐伯さんは遙々と無造作に踏みしだいていくのだ。揺れないはずの青年の心を、彼女の小悪魔的な言動は的確に揺さぶり、色のない彼の心象に風を送り込んでいく。
それは爽快であり、痛快ですらある。
どれほど理由を鎧のように重装備しようと、弓月くんは年頃の男の子だというあまりに普遍的な事実を浮き彫りにしていくことが、なんともむず痒く心地よい。
時折挟まれる佐伯さんパートから、彼女が無意識なんて無作法ではなく、意図的に頑張って、加えてわりと一杯一杯になりながら、弓月くんを揺さぶろうとしてることが伺えて、その恋する乙女の一生懸命さに微笑ましさを抱くのだ。
なんとも可愛らしい頑張りじゃあないですか。
なんでも見透かしたような弓月くんの予想をいつも上回るように、距離感を詰めてくる彼女。ライバル出現に動揺し、ふてくされ、反攻の炎を滾らせる彼女。そっけない弓月くんに、硬軟織り交ぜた攻勢を繰り返し、してやったりとドヤ顔をする彼女。思わぬ弓月くんの切り返しに直撃喰らって逆にノックダウンされてしまう彼女。
学校と自宅ではキャラを変えていて、弓月くんの前でだけ素の無防備な顔をこれでもかと見せてくる彼女。
そのどれもがとても素敵で可愛らしくて、抗いがたい魅力を迸らせている。漲らせている。噴火させている。大噴火だ。
そんな活力を吹き出させている佐伯さんとは裏腹に、物語は弓月くんの静止したような性質に寄り添うように淡々としている。頻繁に挟まれる沈黙の描写。それは、明るい佐伯さんと一緒の場面においても現れる。しかし、弓月くん独りの時に現れる時間が止まったようなそれとは違い、佐伯さんとの静謐はどこか温かい。何も言わずとも、何も喋らずとも、彼女が傍にいるだけで静かでじんわりと温かい時間が流れていく。その差を、その変化を噛みしめ、浸るのもまた味わい深い作品なのである。
何はともあれ、凄まじくキュンキュンさせられた、という意味で凶悪極まる作品でもあった。罪深し。

 

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