徒然雑記

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書籍感想2019

ティアムーン帝国物語 2~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~ ★★★☆   



【ティアムーン帝国物語 2~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~】 餅月望/Gilse TOブックス

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「――来てますわ、波が!」
処刑台から12歳に逆転転生【タイムリープ】した元わがまま姫ミーアは、調子に乗っていた。
かつての記憶と周囲の深読みで、飢饉時の小麦確保や内戦回避に成功し、ついに前世の日記帳ごと「処刑」の二文字が消えたからだ。だが、呪縛から解き放たれて小躍りする彼女の下に、凶報が舞い込む。想い人である王子アベルの国で革命が勃発したというのだ。危険を冒して救助に向かうべきか、我が身の保身か……?変わり始める未来を前に、彼女が下す「最初の選択」とは?ポンコツ姫よ行け、 ギロチン回避のその先へ!運命に抗う一世一代の歴史改変ファンタジー第2巻!

相変わらず、天井知らずの周囲の過大評価と対象的にキレッキレにこき下ろしていく地の文とのコントラストがホント面白いミーア姫奮闘記の第二弾。
あらすじで最大の目的だった処刑回避が達成されちゃったの暴露しちゃってるけどいいんだろうか。それこそが、ミーア姫の原動力でもあったわけなのですが。
ともあれ、それを達成したことからミーアの自分ファースト主義もただ死にたくない助かりたい、という方向性からもう一つワンステップステージをあげていくことになるのである。
しかしミーア四天王なる存在が登場してしまうのか。これってまさか侍女のアンヌは入ってないですよね。ミーアが勝手に呼んでいるのではなくて、ちゃんと世間様から呼ばれるようになった名称みたいですし。あの帝国最強を名乗ってるディオンさん、どう見てもただの危険人物ですよね。考え方が尖りすぎてて、この人正史ではミーアの首切り落とした後どうなったんだろうか、とちょっと興味深くある。
どうやらミーア姫を処刑へと追い込んだ革命は、帝室や貴族階級の横暴や不見識によって起こった必然のものではなく、仕組まれたものであった以上、正史の行く末というのはミーア姫のみならず多くの人にとって決してハッピーエンドで終わらなかった歴史である、というのはシオンの辿った生涯を見ると明らかなんですよね。
てか、シオンってティオーナと結ばれるわけじゃあないのか。革命の旗手となるティオーナだけど、本編の方でもシオンとは特に何のフラグもたってないみたいだし。自分でも一連の出来事に対してあんまり役に立ってない、と悔しい想いを噛み締めてるティオーナさん、実際ほんとにあんまり出番らしい出番がなくてちょっとかわいそうですらある。
一方でシオンと行動をともにするケースが増えてきたミーアだけど、こちらはこちらでアベル王子とは揺るがぬ相思相愛なものだから、微妙に中途半端に浮いた感じになってるシオン王子。彼自身、ミーアに惹かれながらもはっきり恋愛感情を抱いているわけではない、仄かな思慕を芽生えさせながらも気づかない、或いはアベルとの仲を見てるので気づかないようにしてるのか。有能完璧超人んであるが故に便利使いされてる気もする今日このごろ。ただ、ミーア姫と行動しているおかげで一皮剥けているのも確かなので、成長の糧にはなってるんですよねえ。
まあミーア何もしてないので、勝手に成長されてるだけとも言えるのですが。
アベル王子の国元での危機もうまいこと解決されて、そこで確定された歴史は結構なハッピーエンドだったと思うのですけれど、あれで満足しないとはなかなか欲張りなミーア姫。でも、それだけアベル王子を大切にしているとも言えるので、このお調子者の根底にある優しさはやっぱり憎めない所だなあと思うのでした。しかし、この見た目に叡智の欠片もないポンコツさがにじみ出てるキャラデザインはほんと秀逸だと思いますよ、うん。

1巻感想

賭博師は祈らない 4 ★★★☆   



【賭博師は祈らない 4】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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バースでの長逗留を終え、ようやくロンドンに帰還したラザルス。リーラは徐々に感情豊かになり、観光がてらついてきたエディス達との交流も続く。賭場の馴染みからは、そんな関係を冷やかされる始末。ラザルスは賭博師として日銭を稼ぐいつもの生活へと回帰していく。だが幸福そうに見えるラザルスの心を陰らせるひとつの懸念―。リーラという守るべき大切なものを得たが故に、彼の賭博師としての冷徹さには確実に鈍りが生じていた。裏社会の大物や警察組織にも目を付けられつつも、毎日を凌いでいたラザルスだったが…。そしてかつての恋人である賭博師・フランセスとの因縁が、ラザルスに決定的な破滅をもたらすことになる。

師であり義父であった男から引き継いだ「賭博師」としての在り方に殉じて来たラザルス。そのために、これまで手に入れてきた大切な関係を切り捨ててきた。自身の賭博師としての在り方を守るために、友人を見捨て、恋人となっていたフランセスと決別してまで。
しかし、その在り方はリーラを守るために失われてしまった。賭博に対するスタンスに不純物が混じってしまった今のラザルスには、今まで通りの打ち筋はもはや制御できないほどにバランスを崩してしまっている。それでも、今まで通りを続けようとして無理を続けた結果の破綻であった。
それを決定的にしたのが、ラザルスの兄弟弟子とも言える存在であり賭博師として同じ在り方を続け、そうであるが故に決別せざるを得なかったフランセスであった、というのが皮肉なのか因果なのか。
フランセスとしては、引導を渡すつもりだったのかもしれないけど。この女性、ラザルスと同じく冷徹に見えるのはあくまでブラフで、根っこのところは情に厚い人なのよね。だからこそ、既に賭博師としておかしくなっていたラザルスが致命的な失敗を犯す前に、足を洗わせるつもりだったんじゃないかと思う。それをまあ、ラザルスは台無しにしてしまい、自分から本当に致命的な失敗にしてしまうのだけれど。
それでも、彼の生存を信じて、彼が戻ってくるのを賭場で待っている、というのはなんかこうこの女性も不器用に健気だと思うのですけど、どうなんでしょう。
場合によっては、自分の引導を渡してもらう事すらも受け入れて、ですからね。自分の身をチップに乗せるというのはラザルスの弱点をついているのですけれど、彼が賭博師として再生するのなら祖の身を犠牲にしても良い、という考えだったと思うのは考えすぎでしょうか。

甘いだけ、優しいだけではもう賭博師としては死んでいる。でも、果たして義父が残した教え通りの賭博師が、正解の終着点なのか。
ラザルスは逃亡生活でボロボロになる中で、義父が残した一文からようやく師たる彼の本当の苦悩に気づくことになる。たとえ今はやり過ごせても、いつか必ず破滅する賭博師としての生き様。それをかつて義父は体現し、しかし果たして息子たるラザルスにもそうなる果てを望んだだろうか。
こだわり殉じ続けた義父の教えを乗り越えて、今までのやり方とは全く違う新しい自分に相応しい賭博師としての在り方を掴み取ろうとするラザルスの姿は、なんというか今までにない希望を背負っていて眩しいものがあった。これまで、彼の背中には煤けた儚さがどうしてもつきまとっていたものだから。
彼を変えたのはリーラだったけれど、元々ラザルスはそういう人間だったとも言えるんですよね。しかし、そんな自分を認めて受け入れて、立ち上がるのに誰の力も借りずに、リーラも関わらせずに自分一人でやってしまうのが、ラザルスの大人な所ということなのかしら。いや、ジョン・ブロートンという損得関係なしに助けてくれる友人が居てくれて、自分が傷ついても助けてくれるようなクーリィのような人が居てこそ、ラザルス・カインドが粉々に砕け散ってもそこから立ち直る猶予が出来たのだろうけど。自分が思っている以上に、彼は孤独などではなかったわけだ。昔から、今に至るまで。
そして、自分が孤独ではない事に気づき受け入れ、それを力にする事に躊躇う事がなくなった新しい賭博師像を手に入れようとしているラザルスにとって、フランセスもまた切り捨てるべき過去じゃなくなったのか。
てっきり、フランセスの事はかつての自分の賭博師としての在り方を体現するもう一人の自分としてケリをつけ、過去に置いていくものだと想像していたんですけどね。彼のこれからの生き方は、フランセスを捨て置くようなものではなかったわけだ。正直、ラザルスを見縊っていたと言っていいだろう。ここまで器の大きい男として立ち上がるとは思っていなかった。

でもさ。

その方法は良かったの!? と、正直問い詰めたいんですけどね!! 本気で、ブワッ、と奇声を漏らしてしまいましたがな。予想外にもほどがありすぎる方法だわ、それは! いいのかよ、ほんとにいいのかよ!?
どう言い訳するの、それ!?  でも、お似合いの夫婦であることには間違いないので複雑すぎる。あらゆる意味で過去の決別の原因をまるっと乗り越えちゃったわけですし。
街の対立構造をどう捌くかも大変でしょうけど、リーラにどう言い訳するのかが想像つかなくて、ほんとえらいこっちゃやでw

シリーズ感想

継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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まだ覚えてるよ、 好きだったこと。元恋人たちが大いに悶える勉強合宿編!

いさなの告白叶わずも、すんなりと親友同士に戻った水斗といさな。相変わらず近い二人の距離感に、心がざわつく結女だったが――そんな彼ら以上に、理解できない二人がいた。
南暁月と川波小暮である。幼馴染み同士なのに、顔を見る度にいがみ合い……。
暁月たちの仲直りを望む結女、そして二人の過去を察した水斗は、いさなを巻き込んで一役買うことに!?
きたる勉強合宿。かくして暁月と川波は、黒歴史《おもいで》に向き合うことになる。
あの頃のあだ名で呼び合い、恋人ごっこをさせられて。
それはただの“罰ゲーム”なのに、どうしてもお互いを意識してしまうこの二人も――元恋人同士なのである!!

凄えな、ホント凄えな。幼馴染という関係をここまで多面的に掘り下げて解体して見せた物語が果たしてどれだけあるだろうか。幼馴染の光と闇、功罪、清濁正邪にメリット・デメリット、その精髄を極めつけたようなある幼馴染カップルの顛末である。

幼馴染とは、すなわち距離感だ。兄弟姉妹と違って他人にも関わらず、家族同然或いはそれ以上の密接な距離感。同時に、他人である以上兄弟と違って本当に何の関わり合いもない他人の関係になってしまえる儚い関係性とも言える。
川波小暮と南暁月はその幼馴染としての距離感で致命的にやらかしてしまった失敗カップルだ。その原因は概ね、暁月が生来のメンヘラ女であった事とその事実に暁月本人と小暮自身が破綻するまで無自覚であった事に求められるのだろうけれど、二人の話を見ているとそれだけじゃあないんですよね。
よくある幼馴染が恋人同士になって破綻してしまう理由として、関係の変化。恋人という関係にどうしても馴染まなかった、というものが多いけれど果たしてこの二人の場合はどうだったのだろう。少なくとも、その変化に違和感を感じていなかったのは確かなんですよね。むしろ、ドハマリしたとも言えるのでは。一方で、元々幼馴染であったが故に……最初から彼氏彼女の関係なんかよりもよほど一心同体の関係であったが故に、その距離感はより悲惨にグチャグチャになってしまったと言える。
南暁月は、カノジョなんかよりもずっと面白い、という彼の言葉に芽生えてしまった彼女は、彼氏彼女よりももっともっと濃密な幼馴染としての関係にのめり込み、生来何かを演じ続けていた小暮は何も演じず頑張らず言わずに素の自分をそのまま受け入れてくれる、幼馴染や彼氏彼女という周囲がこういうものだとレッテルを張る枠組みではないただの暁月に傾倒し、すれ違った。
ここらへんの二人の食い違いと破綻については一概にこうだとは言えなくて、読めば読むほど言葉にできる範疇よりも奥底に渦巻くものがあって、いくらでも覗き込んでいけそうなのが色々とたまらんのですよね。幼馴染という複雑にして紐解けない関係の深奥を垣間見えることに、興奮が否めないのだ。
そうして破綻してしまい、恋人でも幼馴染でも居られなかった暁月と小暮はお互いのハイスペックなコミュニケーション能力を駆使して、他人同士という関係を演じるようになる。それは周りに見せつけるための演技ではなく、そうやって人工的に距離感を製作しなくてはどうやって顔を合わせて付き合えばいいのかわからなくなってしまったからだ。人生の殆ど大半、全部と言っていい時間を費やしてきた関係だ。それが圧潰してしまったのだ。小暮のPTSDも相まって、それは修復不可能なものになってしまった。もう、元の関係にはどうやっても戻れない。今までずっと続けてきた距離感では、もう何も出来なくなってしまうまでに破綻したのだ。だから他人を演じなければ、本当に距離を置かないといけなくなる。真の意味で疎遠になってしまう。
……そうなんですよね。家が隣同士とか同じ学校でクラスメイトとか親同士は今も仲の良い幼馴染同士と思ってるとか、そういう理由で実のところ理由にはなってないんだろうな。
やろうと思えば、ホントの意味で他人同士になる事は出来たはずなのだ。スッパリと、幼馴染という過去を上書きしてなくしてしまう事は出来るのだ。人間、出来てしまうのだ。それは暁月と小暮も変わらない。実際、そう成りかけてた。多分、二人の繕っていた外面は、破綻した距離感を誤魔化して適切さを維持するためのコミュニケーションという技術によって維持されていたバランスは、時間の経過によって本物に成りかけていた。
そして自然消滅ではなく選択としても、それは出来ただろう。合宿の途中で、それは示された。
本当の他人同士になることは、出来たのだ。

それがそうならなかったのは。出来なかったのは。
出来ないのは、嫌だからだよ!!
なんでわざわざ嫌ってるはずの幼馴染の家にマメに掃除に行くのさ、小暮くん。別れて登校するのに、なんで家を出るタイミングはそんなに重なるのさ。たまに一緒に飯作って食ってるだろ!? すんげえ、抵抗してるじゃないか。自然消滅、過去が解消されちゃうだろう時間経過による摩耗にさぁ!

幼馴染じゃ居られない、だからといって恋人にはもう慣れない、だからといってホントの他人になるのは嫌だ。絶対に嫌だ。
だからこそ、そんな地獄のような有様で口を揃えてこういうのだ。
「幼馴染みはやめておけ」


でもだからこそ、観察者たる読者の立場としてはこう叫ぶ他ないのだ。

「幼馴染って、最高じゃん!!」



いやもう、幼馴染の恋愛話としてとんでもねー位階まで掘り下げてみせた、そして繊細かつ縦横無尽に描ききってみせたラブコメでした。読めば読むほど凄えわ、これ。サブキャラの話とか、完全に忘れる。
しかしこれ、小暮くんてばまさかあそこまで酷いPTSDを患ってるとはついぞ想像もしてなかったんだけど、取り敢えず一度伊里戸兄妹のお節介によってグチャグチャになった後になんとか修復された後の関係って、生理的には受け付けないけど感情的には実のところ……って奴なんですよね、これ。暁月に関しては、険悪な態度とは裏腹に内心は最初っから昔と変わってなかった節もあるし。ってか、あの態度は適切な距離を保つためだけではなくて、小暮の症状を鑑みてのものという可能性もあるのか。
あれ、PTSDが治れば障害はなくなるとも言えるし、たとえ治らなくても……治らないなら小暮には絶対に他の虫は寄りつけないという事でもあるので、もうこの二人あの幼い頃の約束破る気ないですよ、きっと。かぁーー、もうたまんねえなあ、幼馴染って。
知っていますか? お互いベタベタ好意を寄せ合わなくても、熟練したカップルは無自覚自然にイチャイチャ出来てしまうのだ。なのでこの幼馴染ども、小暮に蕁麻疹がわかないレベルでも普通に濃密なイチャイチャをしはじめそうである。


……そんな暁月と小暮の幼馴染話の最中、基本的にずっと背景側でナイスアシストを続けていた支援組の伊里戸兄妹ですけれど。
こいつら、背景の方でずっとイチャイチャしてやがったぞ!? 
なにこの、呼吸するように自然にイチャイチャしてる水斗と結女のお二人さん。しかも、まったく無自覚に! 今回の話では、伊里戸兄妹が混迷する幼馴染カップルの間で奔走する形にはなっているんですけれど、特別なイベントなくても普通の実生活の中でこいつら当たり前のようにイチャイチャしてるんですよね。本人たち普通に生活しているつもりなのかもしれないけど、傍から見るととんでもねーレベルでイチャついてるから! 本人たちにそのつもりがないのだけれど、二人が色々と画策して暁月たちにちょっかいかけるために相談したり動き回ってる時も、ナチュラルにイチャついてるから。普通、イチャイチャするのって二人だけの世界に入っちゃっての事のはずなんだけれど、この兄妹の場合普通にしてるだけでイチャイチャしてるのと変わらない塩梅になってしまっているので、元幼馴染カップルの話が進行している背景でやたらと伊里戸兄妹のイチャイチャが目に入ってくる始末。
君ら、メインの話じゃなくても関係なしに見せつけてくるなあ、ほんとさ!

そして、伊里戸兄妹を上回る勢いで背景で暴れまわるフリーダム東頭いさな。こいつ、やりたい放題ってレベルじゃねえぞ!www
確か前巻で振られてラブコメ的には終了したはずのヒロイン。そのままフェイドアウトならずとも、存在感のオーラは減少して主軸から外れるタイプの立ち位置なキャラだったはずなのに、この作品の場合むしろ振られて繋がれた首輪から解き放たれた凶獣の如く、自由に大暴れですよ。物語の大筋が一本の横線だとしたら、この女蛇行しながら度々大筋の横線に横から突撃してきてぶちかましてはそのまま去っていき、行ったと思ったら帰ってきて横線ぶち抜いていく、という迷走する台風か上陸して暴れまわる怪獣か、の如きやりたい放題である。
凄いな、ラブコメでこんな野放しに放たれたキャラ、早々見たこと無いぞw
ちょっといさなさんが色んな意味で面白すぎて、色んな意味で目が離せない。どうするんだ、この娘!?

ともあれ、今回はメインの二人の話ではなかったとはいえ、ずっと気になっていた幼馴染の元カップルの話を期待以上に掘り下げ料理しきってくれたので、満足どころじゃない大満足の堪能具合でありました。この巻のパートからウェブ上での連載は読まずに、初見で味わうことが出来ましたし。
もうほんと好き。
シメのあとがきの最後の一文は、サブタイトルの意味合いをきっちり仕上げていてくれて、実に最高でした。


1巻感想


2巻感想

ワールドエンドの探索指南 ★★★  



【ワールドエンドの探索指南】 夏海 公司/ぼや野 電撃文庫

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ボクたちが生き延びるには『地図』が必要だ。安全な場所が記され、『ミサキ』と呼ばれる怪物たちを見つける道標となるものが。丘の上に立つ謎の“学園”で目覚めたボクは、今日も仲間たちと探索に出かける。6人でチームを組み、無人の街を調べ、力を合わせてミサキを倒す。貢献に応じて支払われるポイントで装備を新調し、更なる奥地を目指す。これがボクらの毎日。いつ終わるとも知れない冒険の中、ある時、ボクはこの世界への違和感を訴える女の子と出会い―。

そう言えば、なんであの怪物たちが「ミサキ」なんて名前つけられているのか説明ありましたっけ。なかったよな。いきなりミサキという単語が出てきて、なんだそれはと思っているうちにそれが怪物全体につけられた名前だと話の展開から理解して……という感じで。
やっぱり、7人ミサキが原典なんだろうか。だとすると、随分な皮肉が込められた命名である。
冒頭から中々に壮絶な展開。カラー口絵を見て素直に読み始めてたら、そりゃ一撃食らうだろうなこれは。それだけイラストを贅沢に使っているとも言えるわけで、ほぼレギュラークラスで出演しているにも関わらず、なかなか挿絵で描いてもらえないキャラとか羨ましいんじゃなかろうか。
同時に最初のスタッカートの面々、個々を面影までイメージできるわけですから強烈さも増すというもので、これ以上なく効果的とも言えるのでしょう。
自分の場合、ちらっとネタバレされてたからなあ。それがどういう形かは知らなかったものの、心構えだけは出来てしまっていただけに。
でもまああれ、タイキの方にも大いに問題ありなんでしょうね。正論が正論だから、正しい結論だから受け入れられるというものではない。正確な分析を導き出すのと、それが正確だ、極めて確率の高い可能性だ、と認めさせる事、物事を納得させる能力は全く別物なんですよねえ。
一概に、彼らが無理解だったとは思えません。最初の方はちゃんと意見を聞き入れていたわけですしね。当然、責の大半は情報を信じなかった面々にあるのは間違いないのですけれど、会話を聞いている限りあれは無理だろうなあ。それが正しいとわかっていてもイラッとする物言いですしw
それ以上に話を聞いてもらうための、話す内容を信じてもらうための説得力を付与する前フリ、あるいは餌撒きがないんですよね。いきなり「A」が正しい、だからそうするべきだ、と結論だけ述べて採択を迫る。これをするなら、よほど強権を有するリーダー格でないと容易にチームとしては破綻してしまうでしょう。それか、よほどリーダーにその能力を信頼されるか。
それですら、彼の言うとおりにするリーダーも含めて不満や不和が募っていくでしょうから……なるほどなあトモヤスのあのやり方というのは、タイキというピースの扱い方としては最上にして最適だったと言えるのでしょう。正直、タイキの悪評があそこまで天井に達していなかったら、もっと簡単に彼をチームに組み込めたかもしれない。あそこまで周囲から敵意を集める状態になってしまっていたタイキを、あのままチームの一員としてうまく活用できたかについては、凄まじい綱渡りを要求されそうな難易度だったと思うのだけれど、トモヤスのあの腹芸はちょっと並外れたものがあっただけに、普通に話が転がっていけばトモヤスをリーダーとするあのチームで、タイキも順調にやっていけたのかもしれないと思うんですよね。

まあ、「学園」の中で常識とされていた事が大前提から「アレ」だった時点でどう転がってもそうなる未来は無理だったのですけれど。
しかし、あの執行部の。リンのやり方は振り返っても何がしたかったのかわからない。あのやり方だと損耗が増えるだけで探索速度があがるとは思えないですもんね。無駄に腕の立つチームを消していくだけで、ノウハウも加速度的に失われていくし、どんどんジリ貧になっていくばかりでしょうに。合理的じゃないんだよなあ。一応、彼らのバックの存在とその暗躍が明らかになったけれど、基本的な目的に関しては最初からリンが言っていた通りだったのだとしたら、やっぱり無駄が多すぎて何やってんだコイツラ、と思うばかりで。結局、無理を押した所から破綻して情報が漏れて、全部おじゃんになってしまったのですから、とてもあのリンという人有能だったとは思えないなあ。サイコパスの類だったのは間違いないのでしょうけど。
トモヤスなんか見てたら、彼をうまく活用してたら劇的に探索進むようになってたんじゃないか、と思えてならない。ラストでの展開を見ても、滅茶苦茶有能だもんなあこの人。

色々とリンを通じて、この世界の仕組みについて明らかになってきたわけだけれど、まだタイキたちを含めた「子供」たちの正体。彼らの失われた記憶や世界の謎は定かではないのだけれど……少なくとも出揃った情報から鑑みるに、これって異世界ファンタジーじゃなくてやっぱりSFの部類ですよね? 夏海さんは、やはり徹底してSF者だぞ、これw

夏海公司作品感想

聖剣学院の魔剣使い 2 ★★★★   



【聖剣学院の魔剣使い 2】 志瑞祐/ 遠坂 あさぎ MF文庫J

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1000年の時を越えて転生した最強の魔王レオニス(10歳)は年上の美少女リーセリアに保護され、〈聖剣学院〉に入学した。〈第〇七戦術都市〉を襲った〈ヴォイド・ロード〉を圧倒的な力で蹂躙し、魔王群復活の狼煙を上げたレオニス。そんな矢先、帝国の第四王女が来訪するとの情報を手に入れる。世界征服の布石を打つため向かった先には、なぜか同じ寮で暮らすメイドお姉さんがいて──。「レギーナさん、どうしてここに?」「少年、お姉さんがお菓子を買ってあげますよ。それとも胸を揉みますか?」「露骨に誤魔化した!?」軍港を襲撃する〈ヴォイド〉、暗躍するテロ組織、その裏では〈魔剣使い〉の恐るべき計画が動き始めていた──!

リーセリアってば、レオニスくんにダダ甘というかもうすげえ過保護というか。お姉ちゃん属性が爆発してるぜ!!
レオニスの方はリーセリアの方を将来有望な眷属だ、右腕候補だ、と上から目線で見てるつもりなんだけど、セリアさんの方は完全に弟扱いだよね。セリアの方も頭ではわかってるんだろうけど、レオニスの詳しい素性についてはまだ明かされてないんだっけか。そのお陰で年下の手のかかる可愛い男の子という認識がしつこい油汚れのようにこびりついているようで、ダダ甘お姉ちゃん全開なのである。
これでレオニスの方が度々子供らしくない魔王としての顔を見せるならともかく、内心で色々と冷徹な魔王として考え巡らせてはいるのだけれど、それを表には一切出さないでその言動は丁寧で礼儀正しい少年というスタイルは崩さないので、読んでるこっちもショタっ子なのが基本認識になってしまって、おのれ主人公のくせに可愛げがありすぎるw
何気に魔王時代からの仲間であるメイドとワンコも、今の所食いしん坊に方向音痴のコンボを決めてたり、速攻で女の子に飼われる飼い犬プレイに勤しんでたり、とポンコツ面の方が強調されていて魔王勢が愉快な人たち、になってたりw
いやしかしホントに面白いなあ。なんだろう、特別ここが凄いという特徴は見受けられないし、話の筋立てそのものもオーソドックスの部類だと思うのだけれど、とにかく読んでてすこぶる面白い。
エンタメとして盛り上げどころの緩急が実に巧妙に仕上げている上に、そこに個々のキャラのアクションとしての活躍とキャラクターそのものの掘り下げがバランス良く繰り広げられてるんですよね。今回メインとなるレギーナのみならず、咲耶やエルフィーネの方も出番自体は少ないにも関わらず、彼女らのバックグラウンドが気になって仕方なくなる展開が盛り込まれてるし。
順調にヴァンパイアクイーンとして成長する様子がダイナミックに描かれるセリアに、その素性から今回のゲストヒロインである王女さまへの複雑な思いを抱くレギーナさんといい、様々なアプローチで見せ場が用意されているし、締めるところはちゃんとレオニスが締めるしと、構成が巧いんだろうな、これ。
さらに、レオニスが魔王になった事情に絡めるように、謎の女神を崇拝する敵集団の登場にそれらが「魔剣」を有するという物語の根幹をなすストーリーもグイグイと進展させていく推進力。
第一巻でも随分驚かされましたけれど、2巻でこれはガッチリとその面白さがハマった感がありました。これは本格的に躍進しそうなシリーズになりそうですよ、期待大。

1巻感想

やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい ★★★★   



【やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい】 芝村 裕吏/ 片桐 雛太 MF文庫J

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これは無能の烙印を押された、大軍師となる少年のヒロイック・ファンタジー

人類が圧倒的な銃の力でファンタジー種族を滅ぼしゆく時代──エルフの村で育った人間の少年、ガーディは、村の掟を破ったことで追放され、金貨姫フローリンが治めるイントラシア領に身を寄せる。剣も槍もロクに扱えず、秘められし権能すらも“究極のお人好し”という戦乱の世ではどうしようもない有様のガーディ。けれど、エルフの村でバカにされながらも培った知恵と経験、そして誰もが呆れた彼の“優しさ”が、過酷な戦争の中で空前絶後の伝説を生み出していく──のちの世で大軍師として語り継がれる少年の異端の英雄譚、登場!

芝村作品として期待はしていたけれど、いやいやこれ本気で面白いぞ!?
作者の芝村裕吏さんと言えば、ガンパレード・マーチの世界観デザインで知られ、小説家としても現在【マージナル・オペレーション】シリーズで真っ向から現代戦の紛争を描いている歴戦の作家さんです。マジオペは、電書化してないので最初の方しか読んでないのだけれど、早く電書化してくれないですかね? と思いつつ待ってたら第二期にまで突入しちゃって……。
ともあれ、戦争ものを描かせたら逸品の人ではあるのですけれどその分戦争描写が本格的、という事でもあり主人公の印象もどちらかというと悲観主義的だったりネガティブだったり陰気でダウナー系なイメージが強かったので、本作の主人公もその系統だと想像してたんですよね。
でも全然違ったんだなあ、これ。知性冴え渡る切れ者というよりも、むしろぼんやりホワホワしているような感じの少年で、あんまり深く物事を考えずにインスピレーションで捉えてるような雰囲気の子なんだよなあ。でも、決して考えなしというわけじゃなく、むしろ非常に観察眼に優れていて物事や事情、人物に対する見方なんかもとても鋭く、本質を読み取る力に長けている。
金貨姫なんか、王族として態度を厳格に取り繕っていて本来ならその人柄とか読みにくいタイプのキャラだと思うのだけれど、ガーディってば容易に彼女の被った仮面の奥を読み取るのでその人となりも手に取るように伝わってくるし、ガーディを通して色んな登場人物の人物像がより鮮やかに描かれて、とても魅力的に映るようになっている。直属の上司となるナロルヴァ女史なんか、フローリン姫とは逆に表裏なく感情を垂れ流しにしちゃうタイプなのだけれど、ガーディの目を通して見るとそのあからさまな感情表現の奥にも、どうしてそんな風に感情が動くのか、という理屈が見えてくるのが面白い。
こうしてみると、ガーディがかなりロジカルに物事や人物を観て分析しているのだけれど、そうやって得られた客観的・合理的な結論をこの子は冷徹に処理するのではなく、素朴な優しさ、お人好しな考え方でクルッと包んでしまって対処するのが、凡百の軍師とは違うところなのだろう。しかも彼の場合それを無理してやっているのではなく、天然無垢にやっていて自分のお人好し加減についても悩んでないし、それは良いものだとむしろニコニコと受け入れてるんですよね。それが何とも興味深い人物造形になっている。フローリン姫を始めとして、彼と関わることになった主要人物たちはみんな善人の傾向にある人たちなので、相性もいいんだろうなあ。
一方で戦場描写の方は期待通りの硬派であり、戦国系のファンタジーらしいダイナミックさもあり読み応えもタップリ。ガーディは当初、エルフ譲りのその弓術をもってフローリン姫を助ける事になるのだけれど、同時に戦術家としての見地も戦いながら深めていくんですね。とは言え、彼のスタイルって軍師と書いて想像されるそれとちょっとズレてて……あのピクシーたちの使い方といい、近代通り越して現代戦的な考え方じゃないの、それ。戦闘支援システムを独自に構築しようとしてません? こっちの主人公も「イヌワシ」になりそうな勢いである。
当面の好敵手となりそうなグランドラ王も、曲者食わせ者でとにかく癖の強いキャラで面白いんですよね。妙に憎めないキャラにもなっているし、それでいて極めて有能な戦争屋という。尤も、戦国日本を基礎ベースにしているらしいので、乱世らしく彼ばかり相手にしている事にはならない雰囲気もありますけど。

しかしガーディくん、エルフの少女に拾われて育てられたエルフの村の異端という扱いなんだけど、そのガーディを育てたエルフのお母さんが、彼から母として慕われているのだけれどどう見ても幼女w
いや、見た目もそうなんだけど中身もあれホントに子供ですよね、それも小学生の低学年くらいじゃないのかもしかして。年齢的には60になるらしいのだけれど、エルフの中でも童女と明言されているので間違いなく……。
二人が一緒にいるシーン、殆どないのですけれど保護者完全にガーディの方だったよな、あれ。それでいてガーディは本心から彼女を母と慕っているので、妙にこう倒錯した感じがw 年上だけど年下の母! 幼女に育てられる、という新感覚!
今後、このエルフ幼女お母さんに本格的な出番があるのだろうか。わたし、気になります。

芝村裕吏作品感想

エクスタス・オンライン 08.それはまだ見ぬ、仮想と現実の彼方 ★★★☆   



【エクスタス・オンライン 08.それはまだ見ぬ、仮想と現実の彼方】 久慈 マサムネ/平つくね 角川スニーカー文庫

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必死に現実世界への帰還を模索する堂巡。その鍵を握るのは、この世界を支配する神エグゾディアだった。神と魔王の最終決戦に臨むヘルシャフト、しかし謎の黒幕は更なる罠を仕掛けてきて!?そしてついに、堂巡は2Aギルドに正体を明かすこととなり―。“堂巡=ヘルシャフト”を2Aギルドは理解してくれるのか。この世界に愛着が湧いてしまった堂巡は、現実世界と仮想世界のどちらを選ぶのか。哀川愁子と朝霧凛々子、堂巡を中心とした三角関係の行方は…。究極の選択に、最後の魔王ポエムが響き渡る!
終わってみると、2Aのクラスメイトたちがどうしてゲームの世界に閉じ込められる事になったのか、堂巡に一部記憶がない理由。朝霧の怪しさなど、真相へと至る謎の数々はちゃんと紐付けされた理由があり、よく出来てたんですよね。哀川さんはどう考えてもトバッチリな気もするのですけれど、紆余曲折の末に若いツバメをゲット出来たと思えば、これ幸いと思えばいいのでしょう。
ってか、哀川さんルートかよ!
いやでも、最初の最初から堂巡くんがヘルシャフトやっている事を知っていて、彼の弱い部分をずっと見続けていたのは哀川さんだったんだよなあ。色々とコンプレックスを抱えていた堂巡くんが、果たして誰にも頼れず誰にも自分の秘密を抱えたまま魔王とクラスの底辺の二足のわらじを両立する事に頑張ることが出来ただろうか、と考えると哀川さんの存在がなければ壊れていたんじゃないだろうか。
まあこの人、ギャーギャー不満を喚き散らしてばかりだったんですけどね、最初は。それでも事情を知ってる自分よりも大人の人が居てくれて全部さらけ出してしまえる、信じられる相手がいるというのは大きかったと思いますよ。途中からは完全に哀川さんの所が帰る家みたいな感じになっていた所ありますし。
哀川さんの方からしても、奴隷として魔王軍に囚われの身になってる状態で生殺与奪権を魔族たちに握られて、生きた心地しない中で頼れる相手はバイトくんな堂巡くんだけという状態の中で、何だかんだとずっと面倒見てくれてる彼に縋って行くのも分かる話である。でも、現実に戻れば相手は高校生の子供で、自分は成人した大人。年の差以上に、将来ある子供の彼を大人な自分がどうこうしていいのか、という罪悪感を抱えながらそれでも本気で好きになってしまいつつある葛藤に苛まれる姿は、何かと唆るものがありましたし。あの今だけ、今だけはこのゲームの中でだけはこの子の側に、という切ない思いが垣間見えてねえ、うん良かったんですよね、哀川さん。
なので、最終的に本命哀川さんルートに乗ったのは、ちょっと嬉しく思ったり。まあ朝霧も一歩も引いてないご様子なので、ガチ修羅場になりそうですが。哀川さんも朝霧も、刺すとなったら躊躇わず刺すタイプだぞ、大丈夫か堂巡くん。
クラスメイトでギルドの仲間たちである2Aの皆を助けようと駆け回りながら、一方で魔王軍として自分に従ってくれる魔物たちに愛着を覚え、彼らにも心を寄せてしまう描写はシリーズの最初の方からありましたけれど、四天王にそこまで入れ込むとは思わなかった。ほんとなら、もう少しだけでも彼ら個々の個別エピソードを重ねてくれたら最後の決断にもう少し共感を覚えたかもしれないんですけどね。もうちょい、それぞれの掘り下げが自分的には欲しかったかなあ。
その点、一番がっつり堂巡くんと噛み合わさったのは赤上壮馬だったんじゃないだろうか。最終決戦で、封印した彼を召喚する流れはなかなか燃えるものがあった。いや、必要だったの壮馬が持っていた剣だったんだけどさ。
2Aギルドのリーダーだった一之宮との、何だかんだと信頼し合った関係もそうだけど、男キャラとの関係もいい味出していたのがまた良かったんですよね。
ラストまでキレイに纏まった、振り返れば完成度も高かったシリーズでした、エロ面白かった。

魔王学園の反逆者 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜 ★★★☆   



【魔王学園の反逆者 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜】 久慈 マサムネ/kakao 角川スニーカー文庫

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魔族にとって人間は奴隷でしかない──。
次期魔王候補に選ばれた普通の男子高校生・盛岡雄斗は、転入した悪魔の学校『銀星学園』で蔑まれる。「──あなたを魔王にしてみせる。だから私を……眷属にして」魔族の美少女・姫神リゼルとの出逢いが、雄斗の人生と世界を変えていく。どんな魔法も一瞬で身に付け、眷属の少女と肌を重ねることで魔力を無限に吸収する。それは魔族にはない、人間の雄斗にだけ許された特別な力。魔王候補となった人間が、正義の魔王となるべく、最強の悪魔たちに戦いを挑む!
爽快にして妖艶。成り上がり学園魔術ファンタジー、開幕!

久慈さんの描く主人公は相変わらず、等身大に女の子にドキドキする男の子だ。ハーレムもの、特にエッチ度が高いものだと主人公はやたらと達観して淡々としてる系かむやみに肉食系でガツガツしてるか、というタイプのが多いのだけれど、本作の主人公は程よく年頃の男の子らしい初心なところと女性に興味津々なところが合わさってる子なんですよね。こういう子はヒロインのえっちい場面に良い反応を示してくれるので、個人的にはその手の場面の盛り上がりによく寄与すると思うんですよね。
ただこのユート、突然魔王候補なんて立場に立たされ、人間の身にも関わらず悪魔の学校なんかに通う事になって、実に小市民らしくワタワタと落ち着かない素振りに終始していたし、大事にならないよう巻き込まれないように無難な対応にかまけてるあたり、庶民感たっぷりなんですよね。けど、何気に適応能力があるのか肝が据わっているのか、それとも開き直ったのかあれこれと慌てながらも、根本の所で鷹揚になるようになるさ、みたいな感じで受け止めてる節があるんですよね。また、土壇場に追い詰められるとむしろあっけらかんとした感じになるあたり、わりと「なるようになるさ」なタイプなのかもしれない。最初に絡んできて、両親まで侮辱してきて相当に怒り心頭になっていた相手のゲルドくんへのその後の対応を見ていると、ねちっこさのないさっぱりした性格な所もあるみたいだし。
ヒロインの三人娘は、最初からえらい好感度高めではあるんですけれど、その好意の質も最初はただの期待感のようなものだったのが、ユートの姿勢から中身が伴っていく感じになっていましたね。まあチョロい事には変わりないのではありますが。
それにしても、三人ともそれぞれの方向性を煮詰めたような濃い属性の持ち主で、ハーレムものとしてはヒロインには相応以上の色気みたいなものがあって然るべきだとは思うのですけれど、これはまた極めてきたなあ、と。イラストのkakaoさんのデザインがさらにエロさに拍車を掛けまくってるというかなんというか。れいなとか、まだ中学生で未成熟な貧乳タイプにも関わらず未成熟ゆえのエロスというものをあれだけぶっこんでしまって、大丈夫なのかと心配になるレベル。いや本気で大丈夫かあれ。一方で雅なんかは見るからにエロいギャル系の陽キャラをベースにしながら、どこかリゼル先輩を上回る上品さを秘めているような素振りを垣間見せるのが、ポテンシャルの高さを感じさせてヤバいです、ヤバい。

しかし、そんなヒロイン衆に匹敵する勢いでチョロさを見せてくれるのが、初っ端に突っかかってきて速攻主人公の力を見せるための噛ませ犬として派手にぶち倒されてくれたゲルトくんですよ。典型的なチンピラ雑魚キャラだったにも関わらず、無様に負けた責任を負ってリンチされ粛清されそうになってた所をユートに助けられた事をきっかけに、まさかのツンデレ系親友キャラに変身ですがな。あっさりと鞍替えして媚びてくるのではなく、助けられた後に友だちになろうぜと言われたのをド直球に受け止めて、ユートがヤバい状況に追い込まれた時に自分の立場を顧みずにしかしつんつんした態度のまま何気に重要な手助けをしてくれるんですよね。
「ダチ……なんだろ? 俺たちはよ」
チョロい! チョロすぎるよ、ゲルトちゃん!! なんだよそのデレ方、完全にツンデレヒロインの王道そのままじゃないですか。それのそのまま男の友情バージョンになってしまってますよ。このハーレムヒロインに負けず劣らずの筋金入りのチョロさ。このまま親友キャラとして、ヒロイン三人に追随してくるつもりなんだろうか。レギュラーキャラとして出世していくつもりなんだろうか。そうなったらなったで、ちょっと楽しいぞw
そんなゲルトくんに比べて、第一巻の記念すべき中ボスは、というとこれこそが噛ませ犬本命というような見事なやられ役で。高貴さを気取っているような俺様王様キャラな魔王候補でしたけれど、部下連中がみんなチンピラというかヒャッハー系の品性乏しい輩ばっかりの時点でお里が知れるんですよねえ。というか、その王様スタイルでなんで部下連中こんなのばっかり揃えようと思ったのか。
能力自体は一巻のボスとしては破格に近い強力なものだったようにも見えたのですが。これってわりとラスボス、もしくは裏ボス級あたりが使ってきてもおかしくなさそうな能力に見えるんですけどねえw

聖なる騎士の暗黒道 2 ★★★★   



【聖なる騎士の暗黒道 2】 坂石遊作 /へいろー HJ文庫

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学園に入学して一月、闇魔法を使いこなせないまま「暗黒騎士になる」と繰り返すセインは、周りから『暗黒馬鹿』と呼ばれ、教師にも見放される。
そんな折、闇魔法を得意とするダークエルフの美少女・マーニと出会ったセイン。
「どうか俺を弟子にしてくれないだろうか!?」と、教えを乞うが、人嫌いなマーニに冷たく断られてしまう。
それでも、諦める気のないセイン。その本気で暗黒騎士を目指す姿に次第にマーニも絆されていき……
コミカライズ開始で絶好調なアクションコメディ、第2弾!!

前巻でも散々褒め称えたけれど、主人公のセインくんが素敵な男の子すぎてもうキュンキュンしてしまう。
誠実さ、とは彼のような在り方をいうんでしょうね。ダークエルフのマーニに対して師匠になってくれ、と何度もお願いしにいくのですけれど、つきまとうような真似はしていないのですよ。自分の都合を押し付けて強要するような真似は決してせず、あくまで常識の範囲内でのアプローチであったのでマーニが心変わりしたのは、押し切られたのではなくセインの普段からの直向きさを度々目にしたからなのである。
どうしてもうまく使えない闇魔法を使いこなすために、不断の努力を続けて汗に塗れる姿からは彼がどれだけ闇魔法に対して本気で取り組んでいるのか、どれだけ真剣にそれを習得したいと考えているかが伝わってくる。信頼というものは簡単に得られるものではなく、だからこそセインから見えてくる日々欠かさない積み重ねが、滲み出てくる誠実さがマーニを動かしたのでありましょう。
そうやって培われた信頼というものは、簡単に揺らぐものではないんですよね。耳障りの良い言葉やちょっとした行動で動かされてしまった心は、ちょっとした不信であっさりと揺らいでしまう。
あれだけダークエルフに対する人種差別に傷つき、自分と親しくする事で敵意や害意が周りにも及ぶことを恐れて他人を遠ざける優しさを兼ね備えていたマーニが、他者を受け入れるというのは決して生半可な意志ではなかったはず。それだけの決断を促させるだけのものがセインにはあった、ということなんですよね。
またセインの正体がマーニにバレて、一瞬疑われかけた時も、すぐにセインの説明をちゃんと聞いてそれを信じてくれたのも、それだけしっかりとした信頼があったからこそ。彼の普段からの言動にはそれだけの重みと説得力があるのだ。
まだ12,3歳の若人にも関わらずこれだけの人間力を備えているのだから、ほんと大したものである。それだけ、聖騎士として働いてきた時に酸いも甘いも噛み分けなければならない修羅場をくぐり続けてきたという事なんだろうけど、面白いことにそれだけ実戦経験豊富で実際対応力は非常に優れているにも関わらず、聖騎士としての力が関係ない部分だと確かに戦闘の「技術」に関しては基礎的な所が培われていなくて、力任せな部分が垣間見えるんですよね。聖騎士の力を借り物だ、と常々セインくんが力説していた理由がようやくわかってきた。
でも、彼の努力家な一面はその基礎的な未熟さなどあっという間に克服してしまいそうな勢いでもあるんですよね。聖騎士としての力を封印し、一から修行しなおしているような状態の現在、もしかしたら聖騎士としても今、大幅な底上げが行われている真っ最中なのかもしれない。素の状態で歴代聖騎士でも最強と謳われてるのに、ね。
そんな努力は決して彼を裏切らず、聖騎士としての力が使えない場面でしっかりと彼を助けることになるのである。
しかし、ようやく彼が聖騎士をやめて暗黒騎士になろうとしている理由が明かされたのだけれど……うん、凄くセインくんらしい理由ではあるんだけれど、それって何気に従者となった娘さんたちに対してはなかなか厳しい選択になってしまうんじゃないだろうか。アリシアとか地味に告白までしているのに、納得しているんだろうか。それとも、セインくんの目的が叶えられるのって暗黒騎士になって年季が明けて寿命を迎えてから、みたいな時間の猶予あり、なんだろうか。まだ、細かい部分は定かではないので、なんとも言えないけど。
それに、セインくんのあの性格からして、断罪者的な役割を与えられている暗黒騎士が果たして務まるのだろうか、とちょっと心配になってしまう。現役暗黒騎士さんのコメントからすると、相当に汚れ仕事みたいだし。まあセインくん、なってしまえば自分なりに業務改革してしまえばいいのかもしれないけど。



2019年11月読了ライトノベル系書籍からのお勧め  

読んだ本の数:25冊 うち漫画:3冊

11月は完全に燃料切れ。仕事から帰ってバタンキューとなる日が続いてしまい、休日も大して読めなかったんですよね。先月から激減という形で読了数が出てしまいました。
年末に向けて一気に積ん読本片付けていきたかったのにーー。
今月はほんと余裕なかったなあ。

さて、そんな中でも良きシリーズ完結編を手に取ることが出来ました。ロード・エルメロイII世の事件簿は何とか12月までに読み終えたかったので読めてよかった。内容的にも大満足の逸品でした。そして【戦うパン屋と機械じかけの看板娘】。機械らしからぬ感情豊かなロボット娘と厳ついパン屋の店主の冒険譚でありロマンスも無事完結。読み終わって時間が経ってから余計に余韻が染み渡る良作でした。
新作では【疎遠な幼馴染と異世界で結婚した夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?】がこぢんまりとした所に収まらない意欲作かつ良質の幼馴染ラブコメで、今後にも期待大ですよ。


★★★★★(五ツ星) 0冊



★★★★☆彡(四ツ星Dash) 3冊

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫(2019/11/1)
戦うパン屋と機械じかけの看板娘 10】 SOW/ザザ HJ文庫(2019/10/31)
ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」】 三田 誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS(2019/5/17)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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帰ってきたヴィレムの状態が残酷すぎて、地獄風味この上なし。それでも、帰ってきてくれたこと自体が救いになる子が多すぎて、それがなんだか泣けてくる。アイセアも、ネフレンも、もうとっくに幼い妖精ではなくなっているのだけれど、それでもヴィレムの前では彼女たちはもう一度あの頃に帰れるのだ。


【戦うパン屋と機械じかけの看板娘 10】 SOW/ザザ HJ文庫

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改めて振り返って見ると、ほんとに良い終幕だったので星評価一つ増やしてこちらに。世界の危機の渦中にありながら、あくまでパン屋の店主と看板娘の物語として駆け抜けた本作。やるべきことやりたい事をしっかりやり通して、登場人物たちの人生を描ききった物語の結末はただただ感慨深さに浸るものでありました。よいお話でした、それに尽きます。


【ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」】 三田 誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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ずっとずっと、ウェイバー・ベルベットのその言葉が聞きたかった。イスカンダルへと告げたるそれを聞きたかった。だから、それが聞けただけで満ち足りている。
少年が大人になったその後の物語、それをこれほど奥深く世界と人とを掘り下げる形で現出させてみせた三田誠先生の手腕には敬服の念を抱くしかありません。

★★★★(四ツ星) 3冊

疎遠な幼馴染と異世界で結婚した夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?】 語部 マサユキ/胡麻乃 りお 角川スニーカー文庫(2019/11/1)
落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) 17】 海空りく/をん GA文庫(2019/11/14)
友人キャラは大変ですか? 8】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫(2019/11/19)

【疎遠な幼馴染と異世界で結婚した夢を見たが、それから幼馴染の様子がおかしいんだが?】 語部 マサユキ/胡麻乃 りお 角川スニーカー文庫

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【落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) 17】 海空りく/をん GA文庫

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【友人キャラは大変ですか? 8】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫

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以下に、読書メーター読録と一言感想続きを読む

学園最強の異能ハッカー、異世界魔術をも支配する ★★★☆  



【学園最強の異能ハッカー、異世界魔術をも支配する】 真野真央/ファルまろ MF文庫J

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「私を──殺してください!」
異世界からやってきたという儚げな少女は出会って早々、俺にそんな言葉を吐きやがった。
なんでも、異世界とこちらをつなぐための大規模魔術の“生贄”から逃げてきたらしい。
その儀式を止めるために、こちらの世界で死にたいのだとか……。
「改竄」という力を使い、異能力を開発するこの学園都市で消化試合のような生活をしていた俺だが、「異世界転生」への手掛かりとなるコイツは何としても助けなくてはならない。
「世界の命運なんて知ったこちゃないが、俺の目的のためにお前のことを守ってやるよ」
電子と魔術、二つの力の邂逅が紡ぐ、運命を改竄する学園バトルファンタジー開幕!

異世界魔術と現代科学をベースにした異能力とのバトルもの。異世界側が一方的に侵攻してくる側になっているので、戦う理由には事欠かないようになっている。その戦端を開く鍵となるのがサクリファイスと呼ばれる生贄の少女なわけだけれど、彼女が生贄として正規に機能するまでは異世界側から同時に送り込まれる人数が限定されている、というのがバトルものとしての舞台設定がうまいこと整えられているんですよね。
なぜ、異世界側がこちらに侵攻してくるのか、という理由にもどうやらちゃんとしたこの物語の根幹に関わるものがあるようですし、何気に設定周りはしっかりしてるんですよね。
ただその分、魔術と異能力の区分について全く異なるルールによって成り立つもの、となり得なかったのは正直惜しいな、と思う部分なのだけれど、異世界側が異能力についてまったく無知であり、完全に未知の力として捉えているので異種格闘技戦的なアプローチとしては十分とも言える。
やっぱり文化圏文明圏から異なる、戦闘法や魔法魔術による異種戦闘ものは燃えるものがありますからねえ。
ただ主人公の能力である「改竄」がタイトルにあるようなハッカー的な要素を存分に発揮できていたかというとかなり微妙ではあるんですよね。彼の能力的にはほんと、何でも出来る予想もできない方向からの絡め手とか、相手に何もさせない完封劇も色んな形で出来たと思うのですが、なぜ同じ方法が何度も通じると思ったしか。そのへん工夫がなさすぎて、学園都市で勇名を成したにしては老練さが足りないなあ、と思ったり。ほんと、その能力に関しては自由度がやたら高いだけに使い方が実に勿体ない。
一方で、決死の思いで異世界から逃れてきたサクリファイスというヒロインに対してのアプローチは満点に近いんですよね、この男。
諦観と絶望と一片の希望を胸にようやくたどり着いたこの世界で、初めて見る科学文明の光景に目をキラキラさせて生気を取り戻して、キャッキャとはしゃぐサクリファイスの姿の尊いことと言ったら。
妹を亡くした一件ですっかりやる気を失ってた在真がようやく手に入れた妹に繋がる異世界という情報源に発奮するのは当然なのですが、向こうから生贄を連れ戻すために現れるだろう異世界の刺客たちの囮としてサクリファイスをぞんざいに扱うのではなく、かと言ってただの庇護対象として守るだけの存在にせず、彼女の生きる意思を沸き立たせ、自ら戦う意志を尊重してあれこれと手を尽くす姿は、ただ優しいだけではない甲斐性が見えてくるんですよね。最後、サクリファイスに対して追手として現れた兄貴に言いたいことを言ってやれ、とお膳立てするあたりとかねえ。
サクリファイスのお陰で、彼自身立ち上がる気力が湧いてきたというのもあるのでしょうけれど、お互いに良い影響を与え合うという意味で、実に良い主人公ヒロインカップルなんですよね。
しかし、サクリファイス以外の女性陣が色んな意味で病んでる、病んでるw
幼馴染もヤバいけど、何気にうまいこと扱ってる在真くん。ヤンデレの操縦法がよくわかってると言えるのかもしれないけど、でも幼馴染への気遣いもちゃんとしているのが大した人物なんだよなあ。
まあ、それ以上にヤバかった妹のおかげで鍛えられたのかもしれないが。いやもう、あれはあかんやろう、というレベルだよね、妹ちゃん。普通、目の前で自殺とかされたらお兄ちゃんトラウマになって当然ですから。
そしてサクリファイスの兄ですよ、こいつ。サクリファイスことリファが自分でも罵ってますけど、生贄で死んじゃう妹に将来のこと嬉しそうに語るとか、自分好きな人が出来て両思いになれたから、そいつと幸せになるんでお前は使命に準じて立派に死ねよな、とか言われ続けたら、レイプ目にもなりますがな、どんな鬼畜やねん。本人、妹を揶揄したり見下したりしてるのではなく、真剣真面目に言ってるあたりがまた救いがないというのが。
在真くんが、こいつ殴る、と物理に偏ってしまったのもわかってしまいますがな。
次はもう少し、改竄という能力をうまいこと使った展開を持ってきてほしくあります。キャラ同士の関係の情勢は丁寧ですらあるので、このままメインを掘り下げていってくれたらなあ、と。

真野真央作品感想

アキトはカードを引くようです ★★★   



【アキトはカードを引くようです】 川田 両悟/よう太 MF文庫J

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女神が人類に与えたカードの力で全てが決まる時代―労働者・高槻アキトは、いつの日か世界の覇権を争うカードマスターの一人として、世界中の強力なバトルカードを手に戦う途方もない野望を抱いていた。そして迎えた人生を賭けた運命の“重労働ガチャ”―大量のガチャチケットと共に人生の夢も希望も溶けていく極限の運試しの末、アキトは一枚のカードを引き当てる。「いやっほう、マスター!私こそは、金銭特化秘書にして、秘書カードの中の秘書カード!キャロルちゃんでーす☆」ここに、世界中の強者達を震撼させる、とあるカードジャンキーと強欲な秘書による最強のバトルアクションが幕を開ける!
原作は「やる夫はカードを引くようです」というAA(アスキーアート)を駆使して描かれた「やる夫スレ」の一作。これを小説という形に組み直したのが本作なのであります。
このアスキーアートというのが色んなアニメとか漫画とかゲームとかライトノベル作品のキャラクターを引っ張ってきて、使っているのですが勿論書籍化にあたっては元キャラをそのまま使えるわけがなく、まったく新規のキャラとして仕立て直さなくてはいけないのです。
そうなると、元のキャラであるがゆえに使えていたネタやキャラクターの特性も使えなくなったりおとなしくさせたりしなくちゃいけないんですよね。そして、元ネタを知っているが故に読者が共有できていたキャラへの共通認識が失われてしまう。登場した瞬間から、このキャラはこんなんだから、という前提がなくなっちゃうんですよね。
これらが、単に掲示板でのAAを使った形式の話を小説に仕立て直す、というだけでは済まない大幅な改変を必要としてしまう所なのである。殆ど、一から作り直し、と言っていいのではないだろうか。
先人たるゴブリンスレイヤーがどれだけ秀逸なのか、改めて実感させられてしまう。

私自身はこの原作である「やる夫はカードを引くようです」は読んでいないのだけれど、一からキャラを生み出してキャラ立ちさせないといけないという部分で、冒頭からかなり試行錯誤している感触はなんとなく伝わってくるんですよね。特に主人公であるアキトは元がやる夫ですからねえ。相棒であるキャロルが登場してくるまでは非常に手探り感が強い。
このガチャに支配された世界観の説明にも多くの手間を取らされて、やはり本番のカードバトルが始まるまではテンポがどうしても悪い感じが残る。まだまだ出会ったばかりのアキトと秘書カードのキャロルもお互いをよくわかっていなくて、相棒感も薄いですしね。
だからこそ、本番となるのはキャロルがツッコミキャラとして大いに機能し始めるナイト・ロメオが現れてから、になるのでしょう。
やたらと個性の強いナイト・ロメオのしっちゃかめっちゃかな言動にキャロルが我慢できずにツッコミを入れる、という形式の完成によって段々と元がAAスレだった時らしいノリとテンポが戻ってくるんですね。カードバトルシーンも本格化する事によってここらへんから、感触も掴んだのか作品全体的に地に足がついた軽快さが増してくるのである。
とはいえ今の所、まだ新たにチームを組んだメリッサとナツメもキャラがよく掴めないし、他の連中が使うカード類もイマイチ印象に残らなくて、どういうカードなのか伝わってこないのが辛いところ。原作を知ってたら、あのカードは元キャラがあれだから、という風にわかるんだろうか。
一応、読み終わってから原作のウィキなどを見て、元ネタ調べたりしているのだけれどやはりちゃんとスレ見ないと頭に入ってこないものですねえ。
元キャラに基づくネタなんかも、随分とスポイルせざるを得なかったのでしょうし、なかなか手探りの難しい構築となるでしょうけれど、段々と熟れていく感触は伝わってくるので次の巻ではもっと面白さが加速していけばよいのですが。


王女殿下はお怒りのようです 3.暗躍せし影 ★★★☆   



【王女殿下はお怒りのようです 3.暗躍せし影】 八ツ橋皓/凪白みと オーバーラップ文庫

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フィリアレギス公爵家との縁を切り、自由を謳歌するレティシエルの元に、公爵家の長女・サリーニャが訪れる。
公爵家の忌み子である『ドロッセル』を嫌っていたサリーニャの思惑が読めず困惑するレティシエル。
その裏では、クリスタがレティシエルの学友・ジークへと近づいており……?
違和感を拭えないまま始まった学園の課外授業の真っ最中、人々を誘拐する謎の集団にジークとヒルメスが捕まってしまう。
友人を狙われ怒るレティシエルは集団を制圧するも、敵の未知の力は不穏な匂いを感じさせ……?
レティシエルを取り巻き暗躍する影と、蘇り始める『ドロッセル』の記憶。転生した王女殿下を待ち受ける新たな謎とは――!

レティシエルが取り憑く事になったドロッセルという少女は、いったい何者だったのか。どういう人生を歩み、どういう考えを胸に秘めて、そして壊れていったのか。
生まれ変わって「ドロッセル」になった時、自分の新たな家族関係も含めてまったく周囲に対して無関心のまま新たな人生を歩みだしたレティシエル。でも、今にして、今更にして彼女は自分が成り代わったドロッセルという少女に興味以上の関心を抱きだしている。
魔力を持たず、魔法を使えず無能で役立たずとされていた公爵家令嬢。性格的にも荒れ果てて厄介者として家の者たちからも突き放され、だからこそレティシエルへと中身が入れ替わっても誰にも気づかれず関心も持たれなかった、そんなこの世界から見捨てられたようなどうでもいい存在。最初はそんな風な風聞だったにも関わらず。
徐々に徐々に、ドロッセルにまつわる不可思議な話が漏れ聞こえてくるようになったのである。それは最初、彼女に使えていた執事のルヴィクから。やがて、交友が広まっていくにつれてドロッセルがある時期まで魔法が使えないまでも非常に聡明で理知的な少女として知られていた事がわかってくる。だからこそ、中身がレティシエルに変わっても昔に戻ったのでは、と勝手に勘違いされる程度で済んでいたのだけれど。そんな話を聞きつつも、レティはさほどドロッセルに関心を持っていなかったのだけれど、やがて彼女の記憶と思しきものが徐々に蘇ってくると同時に、ドロッセル自身に何やらただならぬ秘密があったらしいこと。何より、ドロッセルという少女が掻き毟るように残した強い想いの残滓が垣間見えてくることによって、あれだけ無関心であったレティシエルが新たな自分ドロッセルという存在自体に惹きつけられていくのである。
ここらへんの、レティシエルの心の変化がなかなかに興味深い。
そもそも、実家であるフィリアレギス公爵家がただのクズどもの集まり、というだけでない胡散臭さというか後ろ暗さを醸し出してきて、こいつらホントに国の癌だったんじゃないのか、と思えてきた。辣腕の悪役令嬢です、とばかりに登場してレティシエルにプレッシャー掛けてきて彼女の友人たちにちょっかいかけてきた公爵家長女のサリーニャも、なんか蓋を開けてみると上っ面ばかりやり手で謀に長けた悪辣な才女というのはガワだけで、さすがはフィリアレギス公爵家と言わんばかりの噛ませ犬でしたし。そのくせ、後ろ暗いところがありすぎてこいつら突かれたらホントやばいんじゃないだろうか。
一方、第2王子のロシュフォールが目も当てられないろくでなしだった王家だけれど、国王陛下がレティの真価を見抜いて公爵家から引き抜いたのみならず、どうやら第2王子を除く第一、第三王子は辣腕以上に食わせ者のようで、特に第三王子とかこいつ王族の枠に留まらない曲者じゃないですか。
てっきり、ジークがレティにとってのヒロインかと思ったら、第三王子の方もこれ見過ごせなくなってきたなあ。
しかし、レティが転生したように前世の彼女の連れ合いだった男性も、身近な登場人物の誰か、特にジークあたりに転生していて、今はまだ記憶を取り戻していない、みたいな想像をしていたのだけれど、一概にそうとは言えなくなってきたのか、これ。
敵側も王家側も背後で暗躍し何事かの企みを図る中で、その中心はドロッセル、そしてレティシエルが要になってきているわけで。ドロッセルの真実とレティシエルという正体バレが物語の核心へと組み込まれた感じになって、大きく話が動き出してきた感がある。続きが楽しみな展開だ。

1巻 2巻感想

信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 3.冷血なる氷の彫刻姫 ★★★☆  



【信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 3.冷血なる氷の彫刻姫】 大崎アイル/Tam-U オーバーラップ文庫

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クラスメイトと共に“忌まわしき竜"を討伐したゲーム中毒者(ジャンキー)の高校生・高月マコト。
討伐の功績で水の国(ローゼス)の王都に招かれたマコトは、かつてマコトを利用価値なしと切り捨てた王女ソフィアと再会する。
王都滞在中もソフィアに冷遇されるが、その折に突如無数の魔物が強襲。
王都滅亡の瀬戸際で危機に瀕したマコトに、女神ノアより思わぬ神託が下される――
「マコト……ソフィア王女を使いなさい」
窮地を切り抜けるには確執を超えたソフィアの助力が必要で……!?
クラスメイト最弱がマイナー女神と最強へ至る異世界攻略ファンタジー、第3巻!
――そして、ノアが囚われし『海底神殿』への道が開く。
イラストのローゼスの第一王子のレオナートが見た目完全に女の子なんですがw
衣装もそれ、ドレスじゃないの? 絵師への指示をお姫様と間違えたんじゃないか、というくらい女の子な見た目なのですが、性格も素直で純粋に慕ってきてくれて実に可愛い男の子なのである。うん、こういう性格が可愛い子は女の子よりも男の子の方がいいよね、だって可愛いんだもの。
まあこれだけ可愛い弟が将来継ぐだろう国を守るためには、姉姫さまとしては肩肘張らなきゃならないよなあ、と理解できなくもない。実際、彼女が使っていた精神系スキル。マコトの明鏡止水に似たものだったんだけれど、それは普通に使っていたらそりゃ誤解もされるだろうし人望も無くしちゃうだろうなあ。そのスキルのマイナスを補うだけのカリスマ性がどうしても足りていないのだから。
前回、マコトを侮辱してきてえらい顰蹙をかってしまった騎士のおっさんも、腰を据えてちゃんと付き合ってみると裏表のないいいおっさんだったんですよね。わりと酷い降格のされ方をしたにも関わらず、忠誠心なんかも全然落ちてなかったしねえ。愚直さと頑なさの悪い面を見てしまうとろくでもなく見えてしまったけれど、偏見や誤解をお互いに解いて付き合ってみると相手の真っ直ぐさが実に気持ちいい人物なのでした。マコト、あれ騎士のおっちゃんの事なんだかんだと好きになってるよね。
こうしてみると、水の国の人たちが何だかんだと性格が純粋で善良な人が多いことがわかってくる。世界的にも人種差別が少なくいろんなものを受け入れる器がある、というのもそういうお国柄というものなんだろう。ただ、それを国同士の付き合いとしてみるとお人好しなのはやっぱり不利なんですよね。そんな弊害をなんとかしようと規律を必要以上に正し、それぞれが無理をしてきたひずみが、あの上層部のギスギス感に出てしまっていたのではないでしょうか。
それも、マコトとふじやんが水の国に定着した事で何とか余裕が出てきた、と思いたい所。一息つけて周りを見渡す余裕が出てくれば、結構全然違ってくるものですし。少なくとも、ソフィア姫に関しては覿面に効果があったみたいですし。
しかし、親友たるふじやんがまた頼もしいったらありゃしないなあ、これ。商人系、あるいは生産型の物語の主人公を間違いなく張れるだけのポテンシャルの持ち主であるだけに、表の商売のみならず、裏で他国が伸ばしてきている謀略のたぐいをこっそり片っ端から叩き潰している様子とか、やり手にも程があるんですが。これで気遣いも上手ですし女性への優しさの質も紳士的で、そりゃモテるって。
まさかの、マコトよりも早くの女性陣の合従軍によって年貢を納めることになるとは思いませんでしたが。そのあたり、ルーシーとアヤの方が積極的だったし、まさか仲の悪かったニナとクリスがあそこまで意気投合してしまうとは。
マコトと言えば、なぜかレオナート王子と同衾してるしw 8歳くらいの可愛い男の子と朝チュンw

さて、ここで一足早く最終目的である女神ノアが封印されている深海神殿への初挑戦に。ってか、ダンジョンのスケールがまたとんでもないことに。そもそも、肝心の神殿にたどり着くまでが難易度高すぎません、これ?
でも、先に一度最終目的地を偵察という形ではあっても一見させてくれる、というのは面白いアプローチだなあ。難易度がたしかにこれだとひと目でわかる。果たして、どうやってこれを攻略するのか、マコトが悩むのを追うのにも楽しみが増すというものであります。


1巻 2巻感想

探偵はもう、死んでいる。 ★★★   



【探偵はもう、死んでいる。】 二語十/うみぼうず MF文庫J

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君、私の助手になってよ」
四年前、地上一万メートルの空の上で聞いた台詞から、俺と彼女の物語は始まり――終わった。

俺・君塚君彦は完全無欠に巻き込まれ体質で、謎の黒服に謎のアタッシュケースを持たされたあげく、ハイジャックされた飛行機の中で、天使のように美しい探偵・シエスタの助手となった。
それから――
「いい? 助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」
「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」
俺たちは、世界中を旅しながら秘密組織と戦う、目も眩むような冒険劇を繰り広げ――

やがて死に別れた。

一人生き残った俺は高校生になり、再び日常というぬるま湯に浸っている。
なに、それでいいのかって?
いいさ、誰に迷惑をかけているわけでもない。
だってそうだろ?
探偵はもう、死んでいる。

これ、タイトルに凄く惹かれたんですよね。
「探偵は、もう死んでいる」ではなく「探偵はもう、死んでいる」。このニュアンスの違いですよ。
そこに句読点を打つことで、探偵の死をすでに過去のものとして処理してしまえているのではなく、今もまだ探偵の死に心引きずられ、振り返ったまま懐旧にむせんでいる。そんな感情が伝わってくるタイトルなのだ。
君くんの心は、遠くに去ってしまったかの探偵についていってしまって帰ってこない。迷子の子犬のように本体から転げ落ちて、くっついていてしまった君くんの心を前にシエスタはずいぶん困り果てたのではないだろうか。
いや、彼女は探偵だ。なにしろ名探偵だ。そんな事は死ぬ前から全部まるっとお見通しだったに違いない。そんな風に彼を仕立て上げてしまったのも彼女自身だ。マッチポンプも良い所だろう。
だから彼女は帰ってきたのだ。死してなお、迷子の君くんの心を元の宿主の元に連れて帰るために無理を押して帰ってきたのである。
助手にしかなれないように仕立て上げたあの少年に、新たな名探偵と出会わせるために。
だから、これはそういう話なのだ。出会いと、再会と、ちゃんとした別れの物語なのである。
そういう眩いばかりの素材によって彩られた物語、のはずなんですよね……。
うーん。
折角の素材に対する調理と味付けが、個人的には薄味だし出汁が抜けてるしとっ散らかっててどうにも食べた気がしない、というのが正直な所でありました。
冒頭からの名探偵とその助手の冒険に、人造人間を有する謎の組織との攻防とか、懐かしくも西尾維新さんを想起させてくれるようなメフィスト系の新伝奇ミステリーっぽさを感じさせてくれてワクワクしてたのですけれど、そこから広がっていかないというか踏み込んでいかないというか。
最初の心臓の話からして、えっそこで話決着しちゃうの? 登場人物たち、それであっさり納得しちゃうの? とえらく簡単に話が纏まってしまって、次のエピソードにという展開にふわふわと地に足がつかないままベルトコンベアーで次章に流されていくような感覚だったんですよね。
キャラ同士の軽快な丁々発止の掛け合いはそれ事態は普通におもしろいと思ったのですけれど、うーん、彼らの言葉の力強さや行動に込められたものに、物語そのものを推し進めるような、或いは登場人物の心を動かしたり熱を帯びさせるだけの「中身」をどうしても実感として感じ取れなかったものですから、そこで戸惑い、物語そのものから距離感を感じたまま、流れていくそれを見送るしかなかったのです。他の読者の評判は良いようなので、どうにも「合わない」作品だったのかなあ、といささか残念に思う所でありました。

ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」 ★★★★☆   



【ロード・エルメロイII世の事件簿 10「case.冠位決議(下)」】 三田 誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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衝撃の真実と向き合う覚悟を決めて、エルメロイII世は仲間たちとともに霊墓アルビオンへと乗り込む。ロンドン地下に広がる大迷宮は、
神秘を操る魔術師ですら想像を絶する、もうひとつの世界であった。
同時に、ライネスもまた、II世の代わりに冠位決議(グランド・ロール)へ出席することとなる。
複雑に絡み合う、迷宮探索と陰謀劇。
そして、迷宮の最奥にて儀式を進めるハートレスの謎とは。

幾多の神秘に彩られた『ロード・エルメロイII世の事件簿』、その結末を今ここに。
ああ……私はきっと、ウェイバー・ベルベットのその言葉をこそ聞きたかったのだ。
第四次聖杯戦争の際、Fate/zeroで描かれたウェイバーとイスカンダルの別れのシーンで二人の関係の集大成として少年が征服王に投げかけたのは臣下の誓いであった。でもね、私はどうしてもそれに納得がいってなかったんですよね。あそこで、ウェイバーに臣下にしてほしいと願われて果たしてイスカンダルは嬉しく思ったのだろうか、と。そこに至るまでに少年と征服王が二人で過ごした時間は、果たしてそこに帰結するものだったのだろうか、と。
あの自分に食って掛かる未熟な少年を可愛がりながら、腹の底から笑っていたあの巨漢の王が彼との間に感じていた心地よさは、主従の関係に収束してしまうようなものだったのだろうかと。
私は、あの王がウェイバー・ベルベットとの対等な関係をこそ楽しんでいたのではないかと、思っている。
でも、ウェイバーはどう思っていたのだろう。あの時、彼にとってイスカンダルに付き従いたいと願った事こそ魂から欲した願いだったのかもしれない。彼が得た強烈な体験は、目の当たりにした本物の英雄は、彼の魂を揺さぶりに揺さぶり、その後の少年の人生を一変させるに至る。少年は青年となり、身の程を超えた役割をその身に背負い、しかし膝を屈することなく走り続けることになる。
どうやって、あの背中に追いつくべきかわからないまま、右往左往しながらも、霧中をゆくが如き不安を抱えながらも。
そうやって大人になって、それでも物分りよく諦めたりせず足掻きながら、彼はずっとイスカンダルを追い求め、彼のことを考え続けた。
そんなロード・エルメロイII世となったウェイバー・ベルベットは、考えなかったのだろうか。あの時、あの王にかけるべき言葉が果たしてあれだけで良かったのだろうか、と。
あの聖杯戦争で過ごした時間が自分たちの間に育んだものがあったのではないか、と。誰よりも王の事を考え、王の心中を思い描く時間があった彼だからこそ、そう思い巡らす可能性はあったんじゃないだろうか。
思えば、フェイカーの登場に伴いイスカンダルを語ることも増えた。直接征服王を知る本物の臣下を前に、王への悪態をつくこともあった。そこにあったのは忠誠でも尊崇でも憧憬だけでもない、一緒にゲーム機を前に大騒ぎしていた大男への親愛だったじゃないか。
10年掛かって、あの時ウェイバーが言えなかった言葉が言えた。それを聞けた。それで満足である。


ハートレスの正体についてはライナスが会議にて言及した所までは想像できていて、それはほぼ確信に近いものがあっただけに、真っ向から否定されてしまった時には正直マジで驚いてしまった。
その正体についてはまさかまさかの一言で、だからこそ彼が負っていた絶望の深さを思い知る。どちらか一方だけでも立ち上がれない裏切りだ、それを2度も二重に渡って味わわされた時の喪失感はいったい如何許のものだったか。
彼にとって青春そのものであり人生そのものであった、過去であり現在であり未来ですらあったものからの裏切り。まさに全否定であり、絶対的な孤独であったからこそ、彼が最期に求めたのはずっと自分に寄り添い続けてくれたフェイカーだったのだろう。
惜しむらくは、ハートレスにとってフェイカーでなければならなかった理由、フェイカーにとってハートレスでなければならなかった理由がなかったところか。でも、そんな理由がなくても二人は出会い、通じ会えた。それで十分なのかもしれない。
……フリューの師匠であるあの老人もまた、すべてに裏切られたという意味では同じなのかもしれないけれど、彼の場合大切にしていたものには裏切られはしなかったんですよね。弟子たちは皆殺しにされたとはいえ、彼を慕い続けたわけだし。そしてフリューに至っては汚名を背負っても師を救い守ってくれた。そして、ロード・エルメロイII世によって彼の怨念は報われた。対比というのも違うかも知れないけれど、余計にハートレスの孤独が浮き彫りになったような気がするのです。
いや、本当に対比すべきはやはりウェイバーの方なのでしょうね。ハートレスの正体からしても、妹がいるなんて話も出てきちゃったわけですし。あらゆる意味で対称的、になる。

……ウェイバーは、幸せものなんだろうな。弟子が居て、生徒たちが居て、義妹が居て、友もいる。困難を前に、彼に手を差し伸べてくれる人がこんなにも居た。
イスカンダルの背中を追い続けたウェイバー・ベルベットの人生は、だが孤独などではなくその歩みにはこうしてこんなにも多くの人たちが寄り添ってくれている。図らずもそれは、彼が追う征服王とその同志達の姿と重なる、というと言いすぎだろうか。先頭を突っ走る征服王と違って、この男の場合は息を切らせながら後ろをヨタヨタついていくのを、皆がワイワイと騒ぎながら周りで急き立てていたり背中を押したりしているのが関の山なんだろうけれど。
でも、孤独ではない。それだけは確かだ。

これはFateシリーズの中でも屈指の「魔術師」の在り方を描き出した物語だろう。でも人でなしと言われる魔術師という在り方に、こんなにも「人間」そのものを見出したのがこのシリーズでした。

一旦、このシリーズはここで幕引きとなりますけれど……いや、絶対これ装いを新たにしてもう一度再会するよなあ、するよね、してよね!!
グレイのアーサー王との同調に関してもまだ解決していないどころか、侵食が酷くなっているわけだし。ってかこれ、フェイト・ステイナイトのルート次第ではアーサー王本人が来ちゃうんですけど、その場合グレイ大変どころじゃないじゃないかw
ともあれ、次あるとすれば聖杯解体にまつわるエピソード。聖杯解体戦争になるのだろうか。でも、あれって第五次聖杯戦争のさらに十年後らしいので、グレイもライネスもみんな妙齢の女性になっちゃってるんですよね。それはそれで見てみたくもありますが。

シリーズ感想

このライトノベルがすごい!2020  



【このライトノベルがすごい!2020】 


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今年はちょーっとびっくりでしたよ。各所ですでにランキングの内容については明らかになっているようですが、文庫部門では宇野朴人さんの【七つの魔剣が支配する】が。単行本部門では古宮九時さんの【Unnamed Memory】が一位に。
【七つの魔剣が支配する】は十位圏内には食い込んできて然るべきとは思っていたものの、まさか堂々一位を飾るまでに確固とした人気を獲得していたとは、ちょっと予想外でした。
単行本部門の方も【本好きの下剋上】がしばらくは不動なんじゃないか、と予想していたのでこれを【UM】が上回っての一位というのは、昔からのファンからするとちとテンションあがってしまいましたよ。

本年度も協力者枠で参加させていただいたわけですが、新作として特に推しだった【七つの魔剣が支配する】、【Unnamed Memory】に加えて文庫部門7位、新作部門では3位に【継母の連れ子が元カノだった】が入ってくれて、何とも嬉しい限り。例年、あまりランキング上位に寄与しない投票が多かったのですけれど、今年は妙に噛み合ってたなあ。

しかしこれ【Unnamed Memory】ですけど、投票時点では三巻は対象外でしたからね、これ! ランキングの発表ページではさらっと3巻の表紙で紹介してますけど。一応3巻の発売が9月17日で投票期間は9月3日から9月23日の午後6時までだったので6日だけ被ってはいるのですけど、どれほど影響あったんでしょうね。3巻が対象外と言いつつ、あれ読んじゃうとなあ、絶対無視できないですよ。
ちなみに、自分は3巻読んだのが10月に入ってからだったので3巻は考慮外でした。もし範疇に入ってたらもっと上位で投票せざるを得なかったでしょうね。
……まあ、来年分に回せるのですけどっ! 3巻のあの怒涛の展開の分を来年に持ち越せるのですけど!



ちなみに、私の投票内容はこんなでした。リンク先は私の感想記事となっております。

1位【筺底のエルピス 6.四百億の昼と夜】 オキシ タケヒコ/toi8  ガガガ文庫(総合57位)
2位【嘘つき戦姫、迷宮をゆく 5】 佐藤 真登/ 霜月えいと  ヒーロー文庫(ランキング外)
3位【継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって】 紙城 境介/たかやKi  角川スニーカー文庫(総合9位)
4位【りゅうおうのおしごと! 11】 白鳥士郎/ しらび  GA文庫(総合2位)
5位【七つの魔剣が支配する 3】 宇野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫(総合1位)
6位【東京レイヴンズ 16.[RE]incarnation】あざの耕平/すみ兵 富士見ファンタジア文庫(総合40位)
7位【Unnamed Memory II 玉座に無き女王】 古宮 九時/chibi  電撃の新文芸(総合7位)
8位【昔勇者で今は骨 4.わたしからあなたへ】  佐伯 庸介/白狼  電撃文庫(総合60位)
9位【幼なじみが絶対に負けないラブコメ】 二丸 修一/しぐれうい  電撃文庫(総合5位)
10位【天才王子の赤字国家再生術 4~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ファルまろ  GA文庫(総合68位)

【筺底のエルピス】、こんなに低いのかー。ランキング外でないだけ良いのかもしれませんけど、自分的には人生観ぶん殴られるほどのすさまじい傑作だったのですよ。
個人的に【天才王子の赤字国家再生術】は去年よりあがってくるかと思っていたので、去年の14位から急落するとは予想外でした。ぶっちゃけ、内容の面白さに関しては落ちるどころかヒートアップしているだけに、尚更に。



女性キャラ
エリザベート・レ・ファニュ (異世界拷問姫)
ネフィ(魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?)
綾井結女 (継母の連れ子が元カノだった)

男性キャラ
クルック・ルーパー (嘘つき戦姫)
姫宮春一 (お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。)
ウェイン (天才王子の赤字国家再生術)

イラストレーター
COMTA (魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?)
しらび (りゅうおうのおしごと!)
ue (終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?)


キャラクター部門の投票についてはお察し。
今年の結果ですけれど、文庫部門の10位以内はトップの【七つの魔剣が支配する】を除いて全部現代劇なんですよね、ですよね? いわゆる異世界転生モノの系統はなく、一位の「ななつま」ですら純正ファンタジーなんですよね。これ40位まで広げてみてもいわゆる「なろう系」に類別される転生モノは【この素晴らしい世界に祝福を】と【Re:ゼロから始める異世界生活】という大作2つしか見当たらないという結果に。
その代わり、単行本部門ではランキングに乗った15作品中10作品がそっち系統なのですよね。
むしろ単行本の方にこそ「転生モノ」の比重が傾いているという事なのだろうか。

前年まで文庫部門5作品、単行本部門5作品という投票だったのが今年から区別なく10作品に投票できる形になり、正直助かりました。どうしても単行本の方は読んでいる点数が少なくて限定されてしまい、投票したかった文庫部門のほうを削らないといけなかったですからね。5作はあまりに少なかった。なので、今年は存分に好きな作品に投票できたと思います。それでも、悩みに悩んで削って削って、とせざるを得なかったのですけれど。
まだ読んでない作品も上位に散見されるので、これを機会に手にとっていきたいとも思っております。

クラスメイトが使い魔になりまして 2 ★★★☆   



【クラスメイトが使い魔になりまして 2】 鶴城 東/なたーしゃ ガガガ文庫

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スキなんて嘘――キライも、たぶん嘘。

落ちこぼれの俺、芦屋想太には藤原千影という分不相応な使い魔がいる。紆余曲折はあったが一応主従関係は継続中。そんななか、藤原本家に呼び出された俺は、売り言葉に買い言葉で千影との婚約を認めることに。おまけに俺たちが婚前交渉しないか、監視役まで付くときた。いや、全裸で懇願されたってしねーよ……一方で、『新魔術』を狙う連中に対抗するため、俺は師匠に特訓を申し込む。
だけどまずは千影と信頼関係を結べ?
なんでこのゴリラ女と、ってうそ暴力はやめ――ごふっ。
喧嘩ップル好きに贈る、険悪主従ラブコメ第2弾!

前回まではソフィアという強烈な魔神が千影に憑依していたが故にその存在感に振り回されて落ち着く暇がなかったのだが、改めて改まって想太と千影、向き合うとなるとここまですれ違っていたのか。
二人とも頑なで意固地なくせに繊細すぎる。
この二人で居てもどうにも落ち着かない空気感って、千影の方じゃなくて想太が原因だったのでしょう。本気で千景に対して心を許していなかったんですよね、これ。彼女に対してだけ他の女性と比べても態度が辛辣でキツイ、というのは決して千影の思い込みではなかったように思う。いや、藤原分家の麗のアプローチに対しても完全拒絶してたけど、あれは藤原家という強圧的な存在そのものへの拒否感みたいなものであったのに対して、千影に対しては彼女本人に思う所あってきつく当たっていた、という感じでしたし。
紐解いて見ると、彼の千影への不信感もわからなくはないんですよ。前回で初めて知った、自分の記憶の封印。それ以前の想太と今の想太は完全に断絶していて、今の想太からすると別人、他人の話にしか思えない。しかし千影が傾倒しているのはその自分の知らない他人の想太なのである。これを果たして面白くない、と思っていたのかどうか。そこまで行くと嫉妬まじり、になるのだけれどそこまで行っているのかどうかはちと微妙に感じられるわけですが、それでも今の自分の方を一顧だにせず自分を消して過去の想太を取り戻そうとしている千影にある種の不信感を抱くのもシチュエーションとしてはわからなくもないんですよね。だからといって、ああいう態度をとってしまうのは意固地もいい所だと思うのですが。
一方の千影は、実のところ今の想太に対しても決してちゃんと見ていないわけではなくて、今の想太と過ごしてきた最近の時間に対しても素直に楽しかったと思うこともあったし、今の想太を気にしている部分もあったわけですけれど、肝心の彼がどんどん自分に対してだけ突き放したような冷たい態度をとってくるわけで、彼女も頑なな性格ですからやっぱり前の優しかった想太が良かった、とどんどん前の想太の方に傾倒していってしまうのも無理からぬこと。
そりゃ、信頼関係なんか結べませんよね、こんな状態じゃ。
お互いに素直になれない、なんて表層のすれ違いではなく、わりと深刻な悪循環だったわけです。ラブコメってる状態じゃないよな、これ。
おまけに、千影の実家の藤原本家への印象は最悪も良い所だし。夢では過去の記憶封印前の幼い頃の自分なんていうどう見ても別人な子が出てきてしまって、余計に過去と今との自身の断絶を実感してしまう、という状況ですし。
そんな今の状態を二人とも自覚さえ出来ていれば解決の緒はあったのかもしれませんけれど、二人ともまるで自覚がなかった。それどころか、信頼関係が結べていないという事実ですら認識していなかったのですから、お師匠の言う通り話にならない段階だったんだなあ。

あの師匠の試練によってようやく二人が現場を認識した上で、本音を突きつけあえたわけですけれど、今回は千影の方が勇気出してて想太の方はずっと受け身で燻っていた気がするなあ。本音ぶつけ合えたのも千影がちゃんと自分の有様に気づいて、踏み込んできたからだし。なので千影えらい。
それでも、ようやくマイナスが解消されてスタート地点じゃないの?という段階に思えるわけだけれど、千影からすると今までずっとスカスカだった手応えがちゃんとした感触として戻ってくるようになったわけだから、大きな進展になるのかな。
しかし、今回は二人の関係をスタート地点に戻すという一歩下がって一歩半進むみたいな話に終始していて、結局前回のソフィア憑依に至った工作の黒幕の話も殆ど進展しなかったんだよなあ。あのまつろわぬ者たちの背後で誰かが動いているというのが明らかになったくらいで。
それどころじゃないくらい、ソフィア再び、のインパクトが大きかったわけですし。あそこまで激烈に酷い振り方をしてヤリ捨てたみたいな形になったソフィアさんですよ。戻ってきたら八つ裂き上等じゃないですか、想太は覚悟したらいいと思うよ。
麗の方もなんか中途半端というか、彼女のポディションが良くわからん。どういう立ち位置を意識しているのだ、この娘。

1巻感想

ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~ ★★★☆   



【ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~】 餅月望 /Gilse TOブックス

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崩壊したティアムーン帝国で、わがまま姫と蔑まれた皇女ミーアは処刑された――はずが、目覚めた彼女は12歳に逆戻り?? 第二の人生でギロチンを回避するため、帝政の建て直しを決意する。手始めに忠義に厚い下っ端メイドと、左遷されたが優秀な文官を味方につけ、失敗した過去をやり直す日々が始まった。けれど、ミーアの本音は「我が身の安全第一」。仇敵を遠ざけ、人脈作りに励むうちに、なぜか周囲の忖度で次々と奇跡が実現! やがて、身勝手なはずの行動は大陸全土の未来を大きく変えていくのだった……。「こ、これぐらいわたくしにかかれば簡単ですわ! 」​保身上等! 自己中最強! 小心者の元(?)ポンコツ姫が前世の記憶を使って運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!
いや、ほんとにポンコツで性根が小物なお姫様だな! 
帝国の崩壊に伴い逃亡したものの敢え無く捕まり、三年以上を地下牢で過ごした挙げ句にギロチンにて処刑されてしまったミーア姫。ところが何がどうしてか、首が切り落とされた瞬間に子供時代に逆戻り。地下牢での悲惨な体験、処刑というあの恐怖の最期を回避するために色々と頑張ろうとする姫様なのだけれど、根が小物なものだからヤることなすことみみっちいんですよね。大胆な改革とか全然出来ないし思いつかないし、基本自分ファースト最優先なので世のため人のためとか自分を犠牲にして、とかは出来ない娘なのである。
でもダメな娘ではあっても嫌な子でも悪い子でもないんですよね、ミーア姫。それどころか、根本的な所でとても素朴な善良さを備えている娘なのである。小物すぎて、悪いこと出来ない暴君として振る舞えない、というのもあるのだけれど、人間性がとても素直で善良なのですよ。だからミーア姫が自分ファーストー!と吠えながらあれこれ自分に都合の良い事をしようとしても、どうしても自分だけが得をする、という方法は取れないんですよね、小物だし。
あんまり考えなしにあれこれやってしまった事も、良いように受け止められ勘違いされ誤解され、挙げ句に帝国の叡智なんて呼ばれるようになってしまうわけですけれど、そういう風に捉えられてしまうのってみんなが想像しているような深慮遠謀では全然ないのだけれど、でも彼女の善良さから転がりでたものだからこそ、良いように捉える事ができるとも言えるんですよね。
それにこのミーア姫、アホの娘だし頭もあまり良くないのは確かなんだけれど……何気にすごく勤勉なんですよね。前世で最後まで彼女の味方として働いてくれていた文官のルードヴィッヒに散々叱られて教え込まれた、というのもあるんだけれど、わからないことややりたいと思った事があるとそのままにしないで自分からすごく勉強するんですよ。理解力に長けているわけじゃないから、なかなか身につかないしそこから新しい発想が出たり、という冴えがあるわけじゃないのだけれど、基本的なところはしっかりと押さえて間違えないので、ボロが出ないのである。下地、ほんとしっかりしているのである。それに、言われた事は素直にちゃんとマメにやるんですよね。
そして、自分の立場に胡座をかかない。自分が帝国の一番エライ姫様だからといって、調子には乗るのだけれどそこで周りを見下したりとかも元々あんまりしない娘だったんだよなあ。あんまり偏見もないんですよね。地位の低い相手に対しても、フラットな対応をしてるのである。あれ、打算じゃないくて素っぽいんですよね。
酷い滅び方をした前世の帝国でも、なかなかうまく行かなかったけれどミーア姫、ルードヴィッヒと一緒にあれこれ何とかしようとちゃんと動いてもいるのです。決して、生まれ変わってから心いれかえた、というわけではなくて元々あった資質だったのでしょう。彼女に与えられていたずさんな教育が、無知をもたらし彼女を悪女にしてしまった。
まあ堪え性ない所も多分にあったようなのですけれど、数年に渡る地下牢生活が、今世では姫様に王族とは思えないバイタリティを付与してしまったようですが。貧民ですら味わわないような最下層の生活を何年も続けりゃ、そりゃ価値観もある程度変わっちゃいますわなあ。
とはいえ、トントンと姫様の都合の良いように展開していくのも事実なのですが、それを語る地の文がえらい辛辣というかキレキレのツッコミを入れてくれるわ、毒舌で姫様や勝手に勘違いする面々を斬って捨ててくれるので、読んだ時の感触としてバランスが取れてるんですよね。姫様のアホさと小物っぷりがより強調されるというか印象づけられるというか。
でも、それをバカにする気持ちにはならなくて、ひたすら微笑ましいんですよ。ミーア姫のアホさはただただ可愛らしい。その善良さと愛嬌が彼女を愚か者ではなく、愛おしい人にしてくれるのである。
彼女のことを叡智ともてはやす面々もね、ほんとに仲良くなっていく過程で知らず知らず彼女の英邁さや凄さではなく、そのアホ可愛い人となりに惹かれていってるのがなんとなく伝わるんですよね。
侍女のアンヌやルードヴィッヒが前世で結局最後まで彼女を見捨てられなかったのも、そういう所だったんでしょうし。
愛され系ポンコツ小物姫の奮闘記、是非にご笑覧あれ。

友人キャラは大変ですか? 8 ★★★★  



【友人キャラは大変ですか? 8】 伊達 康/紅緒 ガガガ文庫

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最後の【四凶】キュウキを討ち果たし、ついに名実ともに「歴代最高の主人公」になった火乃森龍牙。

俺こと小林一郎が友人キャラを務めるこの異能バトルストーリーも、いよいよグランドフィナーレか……なんて感慨深く思っていたのだが、そうは問屋がおろさなかった。

キュウキの器・天涼院阿義斗が、謎の軍勢を率いて異界へと攻め込んできたのだ!
【ソロモンの後継者】などというよく分からない設定をひっさげて。

なにより問題なのは、四神ヒロインズのひとり、黒亀さんがなぜか敵将のひとりとなっていることだ。元気で陽気な拳法少女は、裏切りなんて言葉からは一番遠そうなのだが……。

なんだかなし崩し的に新章がはじまっちまったが、俺の役割りは変わらねぇ。
主人公・龍牙を友人として支えるだけだ!

――最強助演ラブコメ、新展開の第8弾!
亀さん亀さん黒亀さん、表紙まで飾っているのに今までと遜色ないくらい……出番ないじゃないですかー! これまで能天気で何も考えていないアーパーにしか見えなかった黒亀里菜という少女が誰にも、幼馴染のリュウガにも語ることが出来ずにずっと抱え込み、そして仲間を裏切りソロモンの使徒とならざるを得なかった深遠なる事情が明らかになって、里菜をメインにした物語がはじまるのだ、と思っていた頃の純粋な私に謝って!
いやまじでこいつ、何も考えてないじゃん! なんの事情も背景もないじゃん! ただ名字に黒がついてたから巻き込まれで操られてるだけじゃん! このカメはーっ。そして何気に宮本千鶴さんの方が出番も活躍もある、という始末。
しかし、ソロモンの72柱の悪魔たちって全員名字に黒がついてるみたいなんだけど、72種類も黒がつく名前あるの!? というかなんで白望義塾という学校にはそんな黒がついてる名前の人ばっかり集まってたの!?
そして全員の名前考えるのめんどい、とばかりに雑に片付けられていくソロモンの悪魔憑きたち。ほんとに第二期スタートのはずなのに、新たな敵勢力が雑魚すぎる件についてw
前シーズンの敵だった奈落の使徒たちにまるで太刀打ち出来てないし。ってか奈落の使徒たちってこうしてみるとちゃんと強いのね。あっちもこれまで結構雑にやっつけていたフシがあったのだけれどちゃんとやると強いのねー。そしていつの間にか奈落の使徒たちを率いてソロモンの悪魔たちをぶちのめしている雪宮さん。なんかナチュラルに我が軍とか言ってるぞこの娘。異界の城の玉座にナチュラルに座ってふんぞり返ってるぞこの娘。その身にトッコこと魔神トウコツを宿しているので資格はある、と言えばあるんだろうけどノリノリなの雪宮さん自身でトッコ全然表出てきてないじゃんw
まあ異界の奈落の使徒たちの城が攻められたと聞いた時に、激高してテンションあげあげで異界に戻っていった奈落の使徒たちと全く同じテンションで異界に乗り込んでいく蒼ヶ崎、雪宮、エルミーラの四神のお三方がおかしいんですけどね。あんたら直接関係ないのに、なんで奈落の使徒たちと一緒になって突撃していくんですかw

まあお陰で、というのもなんですがわりと久々に現世側では一郎と龍牙が二人きりに。と思ったらまさかのキュウキ復活、ってかこいつまで一郎くんの中の人になっちゃうんですか!? あれだけがっつり敵役悪役ムーブカマして派手に散った、という状況だったのでさすがに他のアホ魔神たちよろしく一郎の中に棲み着くのはあわないだろうな、と思ったらまさかのマスコットポジを確保するという。しかも、同じ裏で画策するストーリープランナー同士でなんだかんだと馬が合うというか性が合うというか、意気投合してますよこいつら? 兄弟めいたテッちゃんとはまた別の意味でようやく意見と価値観があう相棒が出来たような、小動物的な可愛さを全面に出したマスコットキャラが登場してしまったというか、何気に侮れない存在感だぞキュウキたん。こいつ、男だからショタなんだよなあ。でも確かに可愛い。

しかし、同じストーリープランナーなキュウキと話が盛り上がったお陰で、というのもなんだけどソロモンの後継者たちとの戦いという第二シーズンがはじまってしまって、一郎の新たなストーリープランが語られてたけど……やっぱり一郎の目指すヒーロー物の脚本ってどうも古臭いというか目新しさがないというか展開に新鮮さがないというか、お約束を踏襲しすぎててそれだと読者だか視聴者飽き飽きしちゃうんじゃないか、という手堅さなんですよね。水戸黄門ばりにかっちりしているというか。
だからうまく行かないんじゃないの?
ともあれ、現実は一郎くんの立てたプランのようにはいかず、ことごとくうまく行かないわけですけれど、一郎プランはいわゆるテンプレに沿った流れなだけにそれがうまく行かなくて破綻した、となるとことごとくテンプレから外れた、というか吹っ飛んだ展開になってしまう、というのがこのシリーズの特徴でもあり……。
ヴァッサーゴ戦の酷さ(いい意味で)は近年でも極まってましたよこれw いやヴァッサーゴ黒村くんが敵幹部クラスのくせに小物極めすぎてたのも悪いんですけどね! 一郎くんを上回る膀胱のゆるさ! でも一般人な宮本さんにこてんぱんにされてしまうまではまだあれだけど、あそこまでガチに人質放置な展開は初めて見たよw

どれだけ一郎が頑張っても真面目な雰囲気にならない中で、ひとりだけひたすらシリアスを貫いている第二期のラスボスとなったアギト。まあどれだけ格好つけていても龍牙にまったく相手にされていない、という点では一貫してるんだけどなあ。
とか敵側、ソロモンサイドとかもうどうでもよくなるくらいなラストのびっくりどっきり展開である。いや出てない奈落の使徒大幹部な八傑の二人。ほんとにただ忘れられてたのかと思ってたら、これはさすがに驚いたよ。ついに一郎自身の秘密が明らかになってしまうのか。なんも背景も事情もなかった黒亀さんじゃなくて、一郎の背景が明らかになってしまうのか。もうどうやったって友人キャラとか無理になってきたじゃないかw

そんな一郎が友人キャラを目指すようになった幼い頃の体験が、BOOK☆WALKERの電子書籍版購入特典な書き下ろしで描かれてたんですが、よくある2,3ページのSSと違って結構がっつり分量あったぞこれ。シズマも幼児のくせにやたらと大人びてるけれど、一郎も幼児だった頃おまえ何歳やねんとツッコミ入れたくなる七歳児だったんだな。あながちシズマとその辺似ているのも、ラストの展開からすると意味があるのかも知れないが。

さらっと語られてた、夜這いに来ようとして勇気でなくて毎回部屋の前で引き返しちゃう魅怨が可愛らしくて、やっぱり正妻ポジなヒロインがっつり掴んでますよねえ、これ。

シリーズ感想
 
12月2日

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