書籍感想2021

2021年12月読了ライトノベル系書籍からのお勧め  

読んだ本の数:41冊 うち漫画:18冊

ついにライトノベル界隈にまで、ウマ娘ブームの余波か。まさかの競馬小説が登場でありました。オーバーラップノベルスって、何気に普通のライトノベルレーベルでは中々手を出さないようなスタイルの作品まで手を広げてくれているのでありがたいですし、そのスタンスは非常に面白いと思っているので応援していきたいですねえ。




★★★★★(五ツ星) 0冊




★★★★☆彡(四ツ星Dash) 0冊



★★★★(四ツ星) 5冊

ナイツ&マジック 11】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫(2021/11/29)
転生したらスライムだった件 19】  伏瀬/みっつばー GCノベルズ(2021/11/30)
軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。2 〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜】  冬瀬/タムラ ヨウ 一迅社ノベルス(2021/12/2)
やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 5】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫(2021/12/14)
12ハロンのチクショー道】 野井ぷら/卵の黄身 オーバーラップノベルス(2021/12/25)

【ナイツ&マジック 11】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER



【転生したらスライムだった件 19】  伏瀬/みっつばー GCノベルズ

Amazon Kindle BOOK☆WALKER



【軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。2 〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜】  冬瀬/タムラ ヨウ 一迅社ノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 5】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER



【12ハロンのチクショー道】 野井ぷら/卵の黄身 オーバーラップノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER




以下に、読書メーター読録と一言感想


続きを読む

会話もしない連れ子の妹が、長年一緒にバカやってきたネトゲのフレだった ★★★☆   



【会話もしない連れ子の妹が、長年一緒にバカやってきたネトゲのフレだった】 雲雀湯/jimmy ダッシュエックス文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
ゲームが大好きな高校2年生の倉井昴。5年前に両親が再婚し、同じ高校に通う同い年の義妹・平折と4人で暮らしている。
生活に不満はないものの、平折との間には壁があり、いまだに打ち解けられずにいた。
そんなある日、ネトゲで仲が良くなった親友と会うことになった昴だが……
「嘘、だろ……」――待ち合わせに現れた超絶美少女がなんと平折で!?
美少女と一つ屋根の下、青春真っ盛りの男子高校生がおくる、ほのぼのラブコメ!
あっ、意外と早々にタイトルで語られている通りに、妹の平折がネトゲでのパートナーだとわかっちゃうのか。
角川スニーカー文庫から【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件】シリーズを出している雲雀湯さんのもう一つのラブコメ作品であります。

平素では内向的で周りに友達もおらず、家族となった自分とも最低限のコミュニケーションしか取らない義妹の平折。でも、ネットゲームのアバターで彼女が演じるキャラは明るく社交的で言いたいことはハッキリというシャキシャキとしたキャラクターだったんですね。
尤も、それは平折の本当のキャラというわけじゃなく、作ったキャラであったんだけれど、実はちゃんとそのモデルが居る事があとになってわかるのです。もうひとりのメインヒロインとも言える立ち位置になる南條凛。クラスの中心にして、平折の憧れでもある少女。もっとも、学校での凛の振る舞いは平折のネトゲのキャラであるフィーリアさんのそれとはちょっと違っていて、もっと外面がよく品行方正で他人の見る目を意識した、或いは周りの期待や理想に応えるような振る舞いをする少女でありました。フィーリアさんはもっと親しみやすく遠慮がなくズケズケとした物言いで、ちょっと乱暴なくらい距離感が近いキャラだったのですけれど。
実は、そんなフィーリアさんのキャラの方が外面取り繕った方ではなく、南條凛という少女の本性に近かったんですね。
ひょんなことから、そんな凛の素顔の方と接するようになった昴。気楽に本性を晒せる相手として、凛と昴は急速に仲がよくなっていきます。何より、長年の相棒であるフィーリアさんによく似たキャラの凛は、昴にとっても親しみやすく長年連れ添ったような気安い距離感で居られることが大きかったのでしょう。
そして、面白いことに凛の方も平折のことを特に気にしていて、仮面の自分に良い顔する取り巻きたちのオモテウラの激しすぎる態度に若干人間不信気味になってる凛にとって、言葉数は少ないものの決して他人の悪口を言わず誠実に対する平折のことを、凄く意識していて仲良くなりたいと思っていたわけです。
そんな二人のキューピットに、はからずもなってしまう昴。凛の本性も、平折の素顔も知っていて、お互いに仲良くなりたいと思っていることもわかっていて、そんな二人にダイレクトに言葉を伝えられる昴は、まさに縁結びに最高のポディションだったわけである。
おまけに、凛に勧めたネトゲで凛も平折もお互い知らずにネトゲのキャラ同士で意気投合し、現実での悩みを相談し合うような仲になってしまう。ネトゲでも現実でも順調に仲良くなっていく二人を暖かく見守るポディションのこの主人公ってば……。ついでに、両方からアドバイス求められたりしてねえ。
ただ、そうやって相談に乗ったり自分の本当の気持ちや素顔をさらけ出せる相手、というのは自然と惹かれていくもので。以前から義兄が気になる相手だった平折はもとより、凛の方もどんどんと昴に惹かれていくのがよく分かるんですよね。
なによりこの主人公、今まで平折と仲良くなれないまま燻っていた男のくせに、クラスメイトの一部から嫌がらせを受けだしたり、と本格的に平折が困ったり辛い思いをしだすようになると、日和るような真似をしなくなるんですよね。取り繕うような、本音を隠すような心を押し殺した言葉を鵜呑みにせず、ここぞという時に勇気を出して踏み込むようになるのである。曖昧な言葉でごまかさずにストレートに、自分を頼れ、思ってることを言ってくれ、と憎からず思っている男性に真摯に情熱的に迫られて、あんなに格好良く顔を近づけられて、果たして平静で居られるだろうか。腰抜けてませんか、平折さん。

図らずも、知らずネトゲのキャラのロールプレイをお互いと似たキャラにしてしまう平折と凛。そうしてネトゲでもリアルでも無二の親友となっていく。そんな二人の仲を支える昴と不可思議な三角関係を徐々に築きながら。
学校での姿もプライベートで見せてくれる姿もどんどんと変わっていく平折、友達となった平折のために昴のために、どんどんと本当の自分の姿を見せていく凛。そしてそれは昴自身も。そうして、お互いに良い影響を与えながら絆をつながりを深めていく三人だけれど、凛にも平折にも昴との本当の関係を秘密にしているという隠し事があるんですよね。それは昴も同じことで、平折が義妹だということ。そして凛と隠れて会っている事をそれぞれに隠している。はたしてその隠し事が三人の関係にどんな影響を与えていくのか。
三角関係のはじまりと絆の深まりを描いたのがこの一巻だとすれば、本当に動き出すのは次の巻からになるという事かもしれない。ラブコメとして本格的にはじまるのは、だから次からなのかもと思えば、楽しみばかりであります。

現実主義勇者の王国再建記 XVI ★★★☆   



【現実主義勇者の王国再建記 XVI】 どぜう丸/冬ゆき オーバーラップ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
この「終焉」は避けられない――

全世界を揺るがした「精霊王の呪い」騒動から二年。
ソーマが統治するフリードニア王国は来たる争乱に備えて着実に国力を高めていた。
一方でフウガ率いるハーン大虎王国は勢力拡大を進め、ルナリア正教皇国に加えて傭兵国家ゼムをも支配下に置く。
かくして強力な戦力を手に入れたフウガは、人類最大国家であるグラン・ケイオス帝国に宣戦を布告する。
この事態に介入すべきか悩むハクヤ。
王国の利を図るならフウガとの敵対を避け、帝国の盟友を見捨てるべきであった。
そして決戦の火蓋が無情にも切られ――。
革新的な異世界内政ファンタジー、第16巻!
うわー、これ一番難易度高そうなルート行ったぞ!? 普通に考えると、世界征服的なことを考えて急拡大を続けるハーン大虎王国は、他国と協力して当たらないといけないと思うんですよね。グラン・ケイオス帝国との戦いを座して見守る、というのはみすみすフウガに帝国の国力を与えることになってしまう。そうなると、フリードニアを超える大陸随一の巨大国家が誕生してしまって、もう太刀打ちできなくなってしまう。と、思ったのですが、どうやらそう簡単にはいかないようで。武力で帝国を打倒しても、マリアのカリスマによって帝室への支持率の高い帝国をハーン国が取り込むことは、内乱の芽を抱え込む上に急拡大によって国家を支える人材が追いついておらず屋台骨がスカスカのために、まともな統治が進まず拡大の勢いは失われ、フウガの武力に基づくカリスマは減じ、ハーン国は張子の虎となるだろう、というのが、ハクヤの見立て。情勢の分析結果だったわけですね。
フリードニアとしては、帝国が喰われるのをただ見ている事が理に適う、という判断だったわけだ。いやあ、これって予測のとおりに行かなかったら取り返しがつかない、という意味でリスク高い判断だったんじゃないだろうか。帝国と同盟してハーン国包囲網を敷き、全面戦争へ、という方針はそれはそれで大変危険ではあったんでしょうけれど。帝国内部の情勢からして素直にフリードニアと同盟、というわけにはいかなかったでしょうし。総力戦は国を問わずとてつもない被害を各国に負わせていたでしょうし、下手をすれば何年も続く戦争になっていたかもしれません。
それでも国家の判断としては間違っていなかったのでしょうけれど。
女帝マリアは一番困難な道を選んだんですな。それが最良だと信じて。
肥大化し、組織として機能不全を起こすほどに硬直化していたグラン・ケイオス帝国。マリアはフリードニアで行われた政策の中でも幾つかを取り入れて、ゆるやかに改革を進めていました。彼女の手腕ならば、時間さえかければそれは成功していたかもしれません。しかし、ハーン国の急拡大と謀略戦によってマリアからその時間の余裕が失われてしまったのでした。
これ、もう無理だと考えたんでしょうね。実質、被害を抑えて帝国を維持できる可能性はなくなった、と。マリアの政治的手腕をしてこの巨大化した帝国を制御しきることは不可能になっていた、と。
だからといって、それを制御できるまでにスリム化しよう、とはなかなか考えられないですよ。言わば、国家の損切り。本来ならそんなこと、周りが許すはずがないんですよね。既得権益の維持、そうでなくても現状の維持は上は貴族から下は一般庶民まで望む所で、概ね誰もが良好と考えていたマリアの統治下でそんなことをしようとしたら、あらゆる階層から反発と抵抗の旗があがったでしょう。たとえカリスマ聖女帝マリアであっても、その地位から引きずり落として阻止しようという勢力がわんさかと産まれ、それは市民からも指示されたでしょう。
しかし、マリアは帝国そのものの解体と再構成を、帝国の権力を握る貴族や軍部、そして民意の抵抗や反対を受けずに、結果的にではあっても皆が享受する形で、仕方ないと諦める形で、皆が賛意を示す形で成功させてしまったんですね。
化け物か、この人。
それもソーマ、つまりフリードニアの協力を得ていたとはいえ、実質フウガ率いるハーン国の侵略を逆に利用して、である。ソフトランディングの極みなんですよね、これ。
さすがにこの難局に、しかも地位を投げ捨てるという行為に、権力の重さに疲弊しきって一杯一杯になっていたマリアは、企みとしては順調にいっているにも関わらずかなり追い詰められていたのも確かで。その意味ではソーマが支えになり続けた、というのは間違いではなく、物理的にも精神的にも国家的にもソーマがマリアの救世主だったんですよねえ。
なんか、見事にメインヒロインしてたなあ、マリア陛下。いや、凄いのは結局国としての救済と共に自分自身、個人としての自分をも幸せにしてみせたことでしょう。自己犠牲で何もかもを救ってしまう聖女なら掃いて捨てるほどいるでしょうけれど、こうも自分ごと周りも大事な妹もみんな助けてみせたのですから。
そしてある意味切り捨ててしまった側の人達も、打ち捨てるのではなく新たな天地で生きることを押し付けではなく、自ら選ばせたわけですからねえ。そりゃあ、終わった後その切り捨てられた側の人たちが全部陛下の手のひらの上だったのか、と呆然とするのも無理ないですよ。
正直、マリアとジャンヌが個人的な幸せを手に入れるシナリオって想像できていなかったのですが、その出来ない想像を遥かに上回る形で見事にソフトランディングさせてみせたことには、感服の至りでありました。
でも、マリアが側妃というのは旧帝国の人たちはちょっと不満を募らせるんじゃないだろうか。本人の希望とは言え。
あと、ユリガがフウガの妹という身分である以上、政略結婚となれば相手はソーマしかいない、というのは理解できるのだけれど、できればいつもつるんでいたイチハくんと結ばれて欲しかったなあ。いや、今となってはユリガとソーマって年齢差もあるし、あんまり夫婦関係とか想像できないんですよねえ。ユリガちゃんは、ソーマだろうとイチハだろうと特に恋愛感情無くてビジネスライクなので、フリードニアに残れればどちらでもいいのかもしれないけれど。

しかしこれ、終わった結果としてハーン国の判定勝ち、とか言ってるけれど、傍から見てもフリードニアを中心とする海洋同盟の全土の戦力展開によるプレッシャーで、そのハーン国の侵攻が彼らの意思ではなく止められて(しかも実際戦闘行われてないからフリードニアは無傷で)、帝国を征服することは叶わずに解体されて、帝国の領土と過激派の人材は手に入れたものの、帝国の中軸となっていた国はジャンヌが女王となって海洋同盟に加わり、カリスマだった女帝マリアはフリードニア国王に嫁ぎ、となると帝国を吸収したのってむしろフリードニアに見えますし、圧倒的判定勝ちでフリードニア、にしか見えないけどなあ。

一応、このままハーン国との全面対決、ではなく今後はハーン国、魔族領への侵攻に舵を切るらしく人間同士の総力戦はなくなったようなのですけれど、さてついにこれまで謎とされてきた「魔王」が現れるのか。作品としてもクライマックス近づいてきたんでしょうかね。


12ハロンのチクショー道 ★★★★   



【12ハロンのチクショー道】 野井ぷら/卵の黄身 オーバーラップノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

日本ダービーを制覇せよ!

12ハロン――競馬で数々の歴史を作り、人々を魅了してきた2,400mの道のり。
ある男は転生した――地方零細牧場の競走馬に。
その名はサタンマルッコ。
栗毛で額に位置する真ん丸の白い星がトレードマークのサラブレッド。
地方競馬を連戦連勝し、調教師小箕灘はオーナーの中川を説得して中央競馬へ参戦させることに。
「マルッコはダービーを獲る馬です」
さらに賞金を積み重ねたマルッコは日本ダービーへの切符を手に入れる。
騎乗するは数多のGIに優勝歴を残すベテランジョッキー、縦川友則。
だが彼は、日本ダービーで一度も優勝したことのないジンクスを抱えた騎手だった――。
「それでは日本ダービー、本馬場入場です」
かくしてファンファーレが鳴り響き、世代頂点の馬を決める優駿の門が開く。
金と見栄と名誉と意地が渦巻く熱狂の世界へようこそ。
これは競走馬にされてしまった男と、そんなでたらめな馬に魅了された人々の熱き競馬物語。
豆知識。競馬場のコース上に建ててある数字の書かれた標識は、ゴール板からの距離が記されたもので、1ハロンごとに建てられています。ハロンとはメートル換算で200メートル。
つまり、タイトルの12ハロンというのは2400メートル。現行のG1レースにおいては東京競馬場の日本ダービー。オークス、そしてジャパンカップで採用されています。
あんまり12ハロンとかは言わないんですけどね。電撃の6ハロン戦とか、1200メートル戦では使われたりしますけれど。
本作は競走馬として生まれ変わってしまった男の馬生を描く、と言っても当のサタンマルッコの視点では物語は描かれません。あくまで、かの競走馬と関わる人間たち、関係者の目線から描かれる物語となっています。勿論、人間たちはマルッコの活躍をただ見守っているわけではありません。調教師の先生も、馬の世話をする厩務員も、マルッコの生産者にして馬主となった牧場主も、そして当の馬に跨ってともにレースを走ることになる騎手も、直接関わることのない競馬記者も競馬ファンも、マルッコの競走馬としての走りに一喜一憂し、それぞれに各々の人生の一端を賭けて捧げていくことになるのです。
それを、きっと「夢を見る」というのでしょう。これは、一頭のとんでもない問題児となる競走馬に夢を見た、人々の悲喜交交の人間ドラマなのでした。
競馬というジャンルはギャンブルです。お金を賭けて、その回収に執心するどうしたって人の欲望をむき出しにするイベントです。でも、それだけならこんなにも過去の馬が、過去のレースが、過去の勝負が語られ続けることはないでしょう。人々は、馬たちの走りに心打たれ、感動し、魅入られ、記憶に焼き付け、いつまでもいつまでも熱を込めて、あの時垣間見たドラマを、伝説を、神話を語ってしまうのです。あの馬たちの名前を叫んでしまう。
忘れないんですよ、忘れられないんですよ。いつまでも、心に残り続ける。

これは、そんな競馬の一幕を描いたドラマです。夢を追い、夢を賭け、夢に挑んだ人間たちの、そして自身走ることに、勝つことに執念を燃やした馬と騎手との一心同体となって戦う闘争の物語。
彼らに夢を託した人々の願いの物語。

最初、サタンマルッコは一頭で走っていました。みすぼらしい見た目で、セリで売れもせず牧場主がブリーダーズオーナーとなって、走らせることになった誰も期待していなかった馬でした。だから、彼は一人で走っていた。上に乗せている騎手なんて信頼するどころじゃない、ただの斤量調整の重石に過ぎず、その指示はガン無視。自分で考え自分で仕掛け自分で走り抜く。
しかし、走る当人であり視野がどうしても限定されてしまい、駆け引きも十分に出来ない身の上としてどうしても限界があり、ある時増長と油断の末に自身の判断ミスでライバルの馬に敗北を喫してしまうのです。その時、鞍上の騎手……ベテランの縦川がマルッコの耳に囁いたのでした
。「マルッコ、俺にやらせろ。お前が描いた最適解を、俺がレースで見せてやる。ペースは任せろ。だからお前は走ることだけに集中するんだ」

その時から、一人と一頭は一心同体の一騎となったのです。
次は勝つぞ

時として、名馬は騎手とセットで語られます。唯一無二のコンビとして、かの騎手こそがかの名馬の全力を引き出したとして。あの騎手こそが、あの馬を勝利へと導いたとして。
この物語においても、サタンマルッコと縦川騎手はまさに最良のコンビでした。勝つために、一番先にゴール板を駆け抜けるために。夢を預けあった関係でした。
そして縦川騎手は、これまで勝てなかったダービーを、日本ダービーを。日本競馬の最高峰にして、誰もが目指さざるを得ない頂点を掴むための、最後の希望として、自分の夢をマルッコに託したのでした。

縦川騎手、モデルは横山典弘騎手ですね。職人にして、馬の気持ちを導く手腕に優れていて、あの気まぐれゴールドシップが全然走る気を見せず、ゴルシは相手との勝負で勝てるかどうかじゃない彼自身が走る気になるかどうかだ、と語られてた時期に、彼ならば走る気を起こさせてくれると鞍上を託された騎手でもありました。そうして走った2015年天皇賞(春)の当時の競馬の常識をひっくり返すレースっぷりは今なお語り継がれています。
レース前に自分が乗ることになった有力馬について多弁に語ってしまうと、そのレースで大コケしてしまう、なんてジンクスがあるのですが、縦川騎手もまさにそんな話があるので、モデルなんでしょうね。
ちなみに、ノリさんは既にダービーは二勝していて戴冠済です。今、ダービーだけが縁がない、というベテラン騎手っているんですかね。善臣さんはダービーというかクラシック全般縁ないし。

普段は人懐っこくてイタズラ好きでお惚け者でお調子者の問題児。でもレースとなると闘争心むき出しの闘士となる。そして今や縦川と人馬一体。
誰にも見向きもされなかった見すぼらしい貧相なクズ馬が、地方競馬から駆け上がり、今7000頭を超える同世代の馬たちの頂点たる日本ダービーの勝利の栄冠を。どれだけ足掻いても届かなかった一人の騎手の魂を売り渡しても手にしたかった栄冠を。
人々の夢を背に、一頭の畜生が一人の漢を背に乗せて、東京府中は2400メートルのターフを駆け抜ける。
これぞ12ハロンのチクショー道。

熱い夢が、熱いドラマが込められた、競馬という競技の魅力、サラブレッドという愛すべきものたちの魅力を描き出した、手に汗握る物語でありました。
イラストは馬は実にこうムキムキで愛嬌あって良く描けたと思うんですけれど、この絵師の人って前の戦記モノでも思ってたのですけれど、おっさん描けないのかなあ。調教師も騎手ももういい年したおっさんのはずなんだけど、貫禄もなにもない童顔の若者か子供かくらいにしか見えないんだよなあ。それだけがちょっと残念でした。


魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 9 ★★★☆   



【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア) 9】 川口 士/美弥月 いつか ダッシュエックス文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
バシュラルを戦場で討ち、残す敵はガヌロン公爵だけとなったティグルたち。
だが、ガヌロンはファーロン王と、リュディの父であるベルジュラック公爵をさらって己の領地であるルテティアに逃亡した。
国王たちを救出すべく軍を編成するティグルたちの前に、ひとりの男が現れる。男はシャルルと名のった。
三百年前にブリューヌ王国を興した始祖であると。そして、「この国を奪う」と告げた。
『黒騎士』ロランを軽くあしらって逃げ去ったシャルルはさっそく行動を開始し、ブリューヌに戦風を巻き起こす。
彼の背後には、遠くキュレネーからやってきたひとならざる者たちの姿があった。
国を興した一代の英雄に、ティグルとミラはどう立ち向かうのか。
おいおい、既成事実という言葉が出始めましたよ!?
ティグルの活躍は功績として認められ、ブリューヌ王国としても無視できない重さを得ていく。何よりレギン王女が重用していますからね。かつてのような無名の田舎貴族の子息ではなくなったわけだ。
それは、ミラの伴侶として相応しい格を手に入れる、ミラと釣り合いが取れるだけの人間になる、という目的に叶うものではあったんだけれど……。そりゃ、ティグルがブリューヌ王国の重要人物になっていったら、他国の公国の戦姫であるミラとの婚姻なんて今までとは別のベクトルで難しくなりますよね。ミラも迂闊というか、そこまで深く考えてなかったよな、これ。ある意味、ティグルの事しか見ていなかった、とも言える。ミラにとって、ティグルは自分だけのもの、という意識があったんじゃなかろうか。アルザス伯領については考えることはあっても、ティグルがブリューヌ王国の者であるという点や、自分が所属するジスタートとブリューヌ王国の国際関係が障害になってくると果たしてどこまで頭にあったか。
そう考えると、リュディは凄まじく狡猾な立ち回りをしてるんですよね。ティグルとミラが相思相愛の仲であるという前提を踏まえた上で、そこにどう自分をいっちょかみさせるかを、今のティグルの微妙な立ち位置と自分がブリューヌでも大貴族である公爵家を継ぐ立場であることを逆に利用し、さらにレギンという強大な恋敵の存在をミラにチラつかせる事で、ミラに自分はティグルを奪う敵ではなくミラの味方ですよ、と刷り込ませる。外交的にもブリューヌ国内の調整的にもミラはティグルと結ばれるためにはリュディに一口噛ませないといけないと思っちゃうよなあ、これ。
ティグル本人も積極的にアピールして自分が彼の初恋の人だというのを思い出させつつ、今も憎からず思う可愛い女性だと刷り込み、強烈に意識させる。
強か、というほかない立ち回りである。リュディ自身、父である公爵の死が確定して悲しむ暇もなく自分が公爵家を継がなくてはならない現実が目の前に迫った事で、悠長にしていられなくなったというのもあるのだろうけれど、追い詰められるほど冴え渡るキレッキレのリュディの動きが目立つ回でもありました。

まあ本編の方はシャルル復活!! がほぼすべてを持っていっているわけですけれど。
いやあ……これは想像していた以上にカリスマだわー。それもこんなに陽性で前向きで人を惹きつける魅力の持ち主だったとは。生き返ったことに対してもう少し悩んだり恨んだり、生前の負の感情を持て余していたり、となんらかの陰の要素がこびりついているのかな、と思ったらなんかもう凄く明るいんですよね。復活したからには戦前の未練を果たすぜー、と前向きに世界征服目指しているし。
もっとも、それは彼自身の未練もさることながら、ずっと置き去りにしてしまっていたガヌロンの期待に応えてあげるため、という理由も大きそう。
そう、ガヌロンがまた別人か、というくらい生き生きしてるんですよね。いや、あんたそんな明るいキャラだったか、と。世の全てを嫉み、人を蔑みきっていたような人物だったガヌロンが、皮肉交じりとはいえ軽口をたたき、シャルルの無鉄砲にため息を付きながらもどこか楽しそうに尻拭いをしたり、とああシャルルの生前はこんなふうな良いコンビだったんだなあ、というのが伝わってくるようなやり取りに、二人の友情の深さが垣間見えるのです。
どうして、ガヌロンがあれほどまでにシャルルの復活に固執したのか。どれほど優れた人物を目の前にしてもシャルルと比べて、大したこと無いと断じてしまっていたのか。ガヌロン、ほんとにシャルルのこと好きだったんだなあ。
そんなガヌロンの気持ちを、妄執にまで落ち、魔物同然に歪んでしまうほどに自分を待っていたガヌロンの執着を、シャルルがほぼ正確に把握してるっぽいのも。そんな彼を置き去りにしてしまったことをシャルルが後悔しているらしいところも、また二人の絆の深さを感じさせるんですよね。決してすれ違いではない、ちゃんと繋がりあった主従だったのだ。
このコンビは強いぞ。多分、それぞれ一人ひとりならどれほど強大ではあっても、倒しようは幾らでもありそうなのだけれど、シャルルとガヌロンが二人揃っていたらなんかもう無敵感があって、これ勝てるんだろうかほんとに。あんまり負ける姿が思い浮かばないのだけれど。
でも、前言を翻すけれど二人が負けた時の末路というか、二人がどういう結末をたどるかというのは逆に容易に思い浮かぶんですよね。二人の繋がりの深さが、シャルルの後悔が、それを思い描かさせくれる。
さてもティグル、頑張らないとなんだかんだで主役取られちゃうぞ、これ。
そして、地味に頑張り続けているザイアンくん。こいつ、根本的に小物チンピラ魂は失わないのに、なんでか一線を越えないままギリギリで大事な部分を守って、なんか成長しているように見えてしまう不思議。ちゃんとビビりながらも親父に言うべきことを言えるだけの根性というか勇気も持てるようになりましたしね。そのせいか、ティナルディエ公とザイアンが不器用ながら真っ当な親子としての情愛を交わし始めて、凄く健全な父子になりはじめてるのが微笑ましい。ティナルディエ親子を微笑ましいと思う日が来るとは思わなかった。わりと堅実に一軍を率いられているのもポイント高い。下手に貴族意識高いだけの指揮官より、ザイアンの方が普通に頼もしい指揮官に見えるし、実際ちゃんとやってるもんなあ。
あの物怖じしない無表情キャラな竜の世話係の侍女と、果たしてどうなるんでしょうね。身分はある意味ミラとティグル以上に差がありそうだけど。普通なら愛妾枠なんだろうが。





異世界転移、地雷付き。3 ★★★   



【異世界転移、地雷付き。3】 いつきみずほ/猫猫 猫 ドラゴンノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

ついに家を建てます! 痛快・のんびり異世界開拓ライフ、第3弾!

ついにラファンの街に家を持つことにしたトーヤたち。とはいえ今日も金策に奔走していた。そんな中、ギルドで割のいい薬草採取の依頼を受けることに。併せて、これまた高額な対価がもらえる売れるマジックキノコ採取や、グレートサラマンダー捕獲も目指す。しかし、もちろんそんなに都合よくいくはずもなく……。開拓ライフをのんびり過ごす夢の実現は、まだ当分先のようで……。
家、まだ建ちません!
希望に叶う建売住宅が見つからなかったので、土地を購入して注文して家を建ててもらうことにしたトーヤたちでしたが、当初は売り家を探していたものですから、家を建てて貰うとなるとさすがに持ち金が足りずに、土地の売買交渉をギルドの受付お姉さんに依頼し、自分たちは金策に励むことに。
こういう売買交渉もやってくれる、となるとギルドの組織としての大きさが伺い知れるというものです。
ちょっとこの世界、冒険者が採取や狩猟で獲ってきた獲物の売値がどうにも高い気がするんですよね。食料品なのに、めちゃくちゃ高いんですよ。高級品として処理するにしても、トーヤたちは毎日のように供給してくるわけですから、はたして消費出来るんだろうかと思うほど。かと言って、庶民の手にワタルまでに卸すには売値高い気がするんですよね。はたして、需要と供給のバランス取れているんだろうか。
と、疑問に思っていたのですが、ギルドにこれだけ組織としての体力や権威があるとなると、或いはギルドから補助金みたいなのが出てるんでしょうかね。冒険者がどんどん狩って間引きしてもらわないと、魔物系統なんか危険、という事もあるみたいですし。
トーヤたちは効率的に狩っているから、やたら金溜まっていっていますけれど、普通の冒険者のペースだと、これ以上売買価格が低下したらそもそもやってけなさそうなだけに、ギルドが下支えしてるのかなあ、と。
というか、普通に考えたら冒険者なんて職業なんて成り立たない、って事なんだろうなあ。
しかして、稼げる人たちなら一攫千金じゃないのこれ、という勢いでお金が貯まっていくのがこのレートなわけで。土地付き一戸建てを、この僅かな期間で買えるだけの稼ぎってびっくりしますよね。
さらに、トーヤたちは空間拡張と重量軽減のマジックバックの自作に成功したことで、沢山狩ったわ採取したわ、でも持ち帰れなくて廃棄、というガッカリを味わわなくてよくなり、狩れば狩るほどに儲けることの出来る態勢が整ったのですから、もう無敵じゃないですか。
このタイミングで、ナツキとユキという友人たちが仲間として加わったのも良かったんでしょう。仲間が増えるということは食い扶持が増えるということで、今まで以上に稼がないと、これまでと同じ収入だと頭割りする数が増えたことで、個々の収入が減ってしまうところでしたもんね。
しかし、マジックバックが手に入ってイクラでも獲物を持ち帰って換金できるようになったことで、むしろ沢山狩れるように戦力が増えるのはもってこいでしたし、単純に人数が増えたことでやれる事の選択肢が増えましたしね。

というところで、オークの大量発生が起こり、五人は金策のためにもオーク狩りに勤しむことになりました。って、オーク食べるのかー……。かりにも人型の生物を解体して食料にして、というのはさすがに抵抗がある。いや、この世界はゴブリンですらも、解体対象だしなあ。人気無いとはいえ。
ナツキが戦闘面で非常に頼りになる一方で、意外とナオの方が魔法も槍も使えるけれどちょっと戦力として中途半端になってきたような気がする。オークリーダー戦は、けっこう綱渡りのところがあって危なかった。もしなにかミスやらかしてたら、と当人たちも危ない橋を渡ったことは認識していたみたいですし。生活のためである以上、必要以上の危険は回避しなくてはならないけれど、オークの大量発生という非常時でもありますし、行くか戻るかの判断は難しいところだなあ。いずれにしても、ここはもう一度足場を固めて戦力の強化と習熟に努める時期なのかもしれない。

さて、トミーの方も実直に日雇いのバイトで働いて何とか最低限の生活基盤を整えたところで、トーヤの伝手で鍛冶屋で見習いとして働けるようになったわけですが、こうしてみるとやっぱりスキルってズルいくらい便利ですよねえ。今まで鍛冶した事がなかったのに、いざやったら出来るわけですから。勿論、勉強が必要ですしだからこそ武器屋のおっちゃんに弟子入りしたわけですけれど、出発点が違いますし教えてもらう、の意味もこれ違ってくるでしょうしね。
スキルの中には地雷付きで酷い目に合う転生者も多くいるのですけれど、そもそもスキル一つも貰えなかったら殆ど誰も生き残れなかったんじゃないか、というくらいですし、やっぱり邪神さんトータルで見ると親切ですよねえ、これ。

しかしこれ、ナツキってけっこうガッツリとナオに思慕を抱いてるのかー。ナオ当人はともかくとして、ハルカとしてはどういうスタンス取っていくんでしょうね。今の所目立った反応見せていないけれど。



SPY×FAMILY 3 ★★★★   



【SPY×FAMILY 3】  遠藤 達哉 ジャンプコミックス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

フォージャー家にヨルの弟・ユーリが来訪!! 互いがスパイと秘密警察であることを隠しながら、黄昏とユーリは腹を探り合う。姉を偏愛するユーリは黄昏に本物の夫婦であることを証明しろと迫り…!?

なんで結婚したこと知らせていなかったのか、弟に問い詰められて
「忘れていたからです!」
で押し通すヨルさん。
いいのか、それで!? 弟的にはそれで納得らしい。マジか!
これ、弟が姉に対して盲目、というのもあるんだろうけれど、元々大事な報告をするのを忘れていました、でも通ってしまうような人として弟からも認知されてしまっている、という事なんじゃないだろうか。過去回想見ても、昔からこうなんか抜けた感じの人だったみたいだし。
しかし随分と昔から殺し屋やってたんですね。まだ少女と言っていいくらいの年からバリバリ殺し屋やってたみたいですし。しかし、一体どうやってスカウトされたんだ? 元々普通の一般家庭の子だったみたいなのに。
弟のユーリは姉が何していたのかまったく知らないようですしね。
そのユーリの今の職業、国家保安局…秘密警察の局員だというのを姉が知らないのは、そりゃ身内にも知らせない機密だからだろうけれど。
そのユーリの正体をあっさりと見破ってしまったロイドは、やはり世界でも有数のエージェントというのは伊達じゃないのでしょう。てっきり、三人が三人ともお互いの正体を知らないまま話が進んでいくと思ったので、ここで即座にロイドが見抜くとはちょっと意外なほどでした。
まだまだ、ロイドと弟くんでは役者が違うなあ。
しかし、ユーリとヨルの揺るぎない姉弟の家族の絆を見せつけられて、心惹かれてしまうところに今のロイドが家族という関係に思い入れが出来始めてしまっているのがよくわかるところでした。
そして、イチャイチャしてるのを見せろー、と弟に迫られてラブラブっぷりを見せつけようとして恥ずかしがるヨルさんが可愛すぎる。これこのひと、今人妻なんだぜ?
まだ慣れない男性に恥ずかしがっているだけで、ロイド個人に対して想いが生じている、というわけではまだまだないのだろうけれど、さていつか萌芽が芽生えてくるのでしょうか。ロイドというその人に対してドキドキしはじめるときがくるのでしょうか。今も既に自分の都合のためというだけでなく、ロイドのために妻らしくしたいと強く思いはじめているわけですし、楽しみだなあ。

一方のロイドは、今更ながら身内に保安局員を抱えていたヨルに僅かな疑念が生じてしまい、その疑いを晴らすためにも彼女を尾行し調べることにする。その行為自体に罪悪感を、忌避感を感じながらも。まだロイドの方も、ヨルの事を信じきれているわけじゃないんですよね。でも、疑う行為そのものに嫌気を感じているということは、それだけ彼女に思い入れが生じ始めているということでもある。家族という関係そのものへの思い入れかもしれないけれど。
アーニャが人を助けて表彰された際、任務のために娘が星を獲得することを喜ぶのではなく、純粋に娘が人を助ける行いをしたことに誇らしさを感じているあたりに、ロイドの家族への想いがより重いものになってきている事が伝わってきています。
それこそ、スパイとしての任務と段々と比べられるようになってきたほどに。
オマケのヨルさんのファッションショー、一週間のコーディネイトがまたいいですねえ、これ。けっこうパンツスタイルがよく似合うと思うなあ、かわいいです。


後宮の百花輪 1 ★★★☆   



【後宮の百花輪 1】  瀬那和章 双葉文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
百花輪の儀。それは華信国の五つの領地よりそれぞれの代表となる貴妃を後宮に迎え、もっとも皇帝の寵愛を受けた一人が次期皇后に選ばれる一大儀式だ。後宮に憧れる武術家の娘・明羽は、道具の声が聞こえる不思議な力と拳法を駆使し、北狼州代表の來梨姫の侍女として後宮で働き始める。美貌や知略、財力を賭した貴妃五人の戦いで、明羽は引き籠り気味の「負け皇妃」來梨を皇后の座につかせることができるのか!? 心躍る絢爛豪華な中華後宮譚、開幕!
個人的にだいぶ久々となる瀬那和章さんの作品。一般文芸の方に行かれてから、読めてなかったんですよねえ。ちょくちょく買ってはいたものの、積んだままになっていました。おっさん二人と娘が暮らす話、あれ読みたいと思ってて忘れてたなあ。
ともあれ、久々の瀬那さんの作品は後宮小説。それもこれ、かなりガッツリと本格的な後宮小説なんじゃないだろうか。陰惨な女同士の策謀が繰り広げられるのが、女の園である後宮の戦いなんだけれど、この物語の主題となる百花輪の儀は、むしろその女同士の争いを推奨するような儀式になってるんですよね。それも、皇帝陛下の寵愛を受けるために陛下の気を引くのが主目的ではなく、対立候補となる他の貴妃を蹴落とし陥れあらゆる意味で脱落させる、それを大々的に行なう儀式と言ってもいい。
暗黙の了解の中で行われるバトルロイヤルなのである。
勿論、貴種である五大貴族の縁者となる貴妃たちが直接危害を加えられることはないのですが、その代わり貴妃に従う三人だけと指定された侍女たち。これが、貴妃たちが持ち得る駒になるんですね。この三人の侍女が全員居なくなれば、貴妃は事実上この次期皇后争いから脱落することになる。
貴種ではないただの侍女なら、直接害されようが陥れられて罪人になろうが、責任を負わされて追放されようが問題はなし。そう、狙われるのはそれぞれが侍らせる三人の侍女たち。貴妃が抱える三人の侍女という駒を削り合う、ドロドロの陰惨な陰謀劇がこの百花輪の儀では行われることになるのである。

もう初っ端から相手を踏みにじるようなやり取りが当たり前のように繰り広げられ、悍けを感じさせる悪意と血みどろの殺伐とした暗闘が当たり前のようにはじまってしまうのである。
そんな中、主人公の明羽が仕えることになった主人の來梨、彼女を送り出してきた家は内輪の権力争いによって有力候補を出せずに、若いだけの彼女を数合わせで充てがっただけで、なんの後ろ盾にもならず、來梨当人もやる気もなく勇気もなく意気地もなく才能もなく、辛いことは引きこもってやり過ごそうとする気質の持ち主で、他のライバルたちからも見下されて憐れまれ「負け皇妃」と呼ばれる始末。
皇后となる教育も一切受けていなくて、事前の詰め込み教育も逃げ回って消化できず。何より根性も気力もなく、ハズレと言われても仕方ない少女だったんですよね。
なので、明羽も半ば呆れながら彼女が皇后になるなぞ、最初から諦め気味だったのですが……百花輪の儀がただの皇后選びの場ではなく、貴妃同士が陥れ合う後宮という舞台の戦争だと……明羽たちだけがそれを理解しておらず、完全に後手を踏んだ挙げ句に、最初の標的にされてしまうんですね。
そして、明羽ともう一人の新人侍女である小夏に侍女としてのイロハを教え、來梨をたった一人で支え導いていた侍女長の慈宇が陰謀の標的にされた時、明羽は自分たちが戦い勝ちぬかねば生き残れない断崖絶壁に立たされているのだと、遅ればせながら理解するのである。

情報も何もなく、後宮に伝手を持っていた慈宇を無力化され、周回遅れで徒手空拳で百花輪の儀を生き残らなければならなくなった明羽は、慈宇に代わって來梨を叱咤し必死の大車輪の働きを見せ始めるのである。
幼少から鍛え続けた武術の技と、生まれながらに備わっていた古い器具の声を聞く才能、そして歴史に残る大人物の所有物としてその文武を目にしてきた「翡翠の佩玉」白眉の知恵と経験を借りて、なんとかこの後宮での争いに挑んでいくのでありました。
いやこれ、白眉の知識と助言がなかったらなんにも出来ないまま頓死してたんじゃないか、と思うところですけれど、主人の來梨が引きこもっちゃって役にも立たないなかでよくまあ孤軍奮闘したものです、明羽。
彼女自身、悲惨な貧困生活から逃れられたらいい、というくらいのモチベーションだったので最初は
動きも低調だったのですけれど、恩師の危機に自身の平穏な生活の危機という二重のピンチにほんとに必死に頑張ったんですよね。
そんな中で唯一下心無く純粋にこの百花輪の儀で余計な血を流したくない、被害を最少に抑えたいとする李鷗の助けは、明羽にとっても救いだったのでしょう。
これまでろくな男性と巡り合わず、男性不信で男嫌いというのも相まって後宮で働くのを望んだ、というのもあって、李鷗に対しても最初は辛辣な態度だったのですが……度々助けられるうちにだんだんと心開いていくのでありました……わりとチョロいよなあ、とか思ったり。
いやあ、今ままで出会ってきた男性はひとり残らずろくな相手じゃなかったんですねえ。父や兄に対しても思う所あったわけですし。そんな中で、あたりはキツイものの常に誠実で嘘をつかず、根底には気遣いがあり、とまとも以上の対応をしてくれる李鷗は、そんな男性初めてだ……ってなるわけで、それでほだされていくのはさてチョロいというべきか。
もっとも、李鷗の方も美形の自分に色目使うどころか邪険に対応してくる明羽が気になって、というとエム気質みたいに見えてしまいますけれど、李鷗も孤軍奮闘しながら後宮の平和を守ろうとしている中で同じく孤軍奮闘しながら頑張る明羽に共感を抱いてしまったのかもしれません。やたらと明羽のことを心配するようになっていくのである。この人もチョロいんじゃなかろうか、これ。

実はお父さんポディションだった白眉が、李鷗を信頼できる人物と認めながらも明羽と親しくなっていく事に大変不快な思いを抱いていらっしゃるのも、まあなんというか苦笑してしまうところであります。知恵も経験も足りず、田舎育ち故に悪意には敏感でも悪辣な陰謀などにはついていけない明羽は、見ていても危なっかしいし、罠にも引っかかりそうな迂闊な所もあって気が気じゃないところなのですが、果たしてようやく覚悟を決めた主の來梨をもり立てていけるのか。他の貴妃たちがみんな傑物といっていい人達なだけに、三段四段劣ってるだろう來梨はどうやっても物足りなくて、明羽も小夏も田舎の平民出の新米侍女、というどうやっても勝てなさそうな一瞬で踏み潰されそうな布陣で、果たして生き残っていけるのでしょうか。無理じゃね?と言いたくなるような差があるだけに、これをどう覆していくのか気になるところであります。

瀬那和章・作品感想


賢者の弟子を名乗る賢者 4 ★★★☆   



【賢者の弟子を名乗る賢者 4】  りゅうせんひろつぐ/藤ちょこ GCノベルズ

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
九賢者の1人ソウルハウルの足取りを追うミラが次に向かった先は、深緑に眠る『天魔迷宮プライマルフォレスト』。
だがミラがそう素直に目的地にたどり着くはずもなかった。実はその森で不可思議な現象が起きていた。決してその場所では現れるハズがない、強力なモンスターが出没しているというのだ。
そのため、森で生活を営む狩人たちが、拠点から出られずに死を待つばかりという状態に陥っていた。
事件はそれだけではなかった。
精霊誘拐事件の犯人である「キメラクローゼン」が姿を現わしたのだ。そして対抗組織である「五十鈴連盟」との戦闘に巻き込まれるミラ。あっちこっちにと大忙しのミラは、本来の目的であるソウルハウルにたどり着くことはできるのか!?

アルフェイルくん、ミラのパンツ見すぎ!
ともあれ、少女の姿になって心の方もかなり女の子っぽくなってきているミラですけれど、人を教え導くということに関しては根っから好きなんでしょうね。ダンブルフという老人の賢者故のロールプレイではなく。惜しみなく知識を教え、良い所を見つければそれを伸ばし、折れそうになっている人を見かければ自分が前に出るのではなく、後ろから支えて自身の力で踏ん張らせる。
アルフェイルくんに術を見せてくれるように乞われ、さらにミラの実力を見抜いて戦って貰えないかと頼まれた際も、言われた以上にアルフェイルの戦いへの餓えを見抜き、停滞しかけていた彼をより伸びるように戦ってあげたのは、あれは教導者ならではの対応ですよねえ。
強力な魔物に襲われて破れ、砦に籠城する他なくなり、それも毎夜の襲来についに陥落させられそうになり、心折れかけていたハンターたちに対しても、自分が代わりに魔物を倒してしまうのではなく、召喚獣でタンク役と回復薬を引き受けて支援を万全にし、その上で彼らハンター自身の手で自分たちをボロボロにした相手を倒させることで、自信を取り戻させようという気遣いは、なかなか出来るもんじゃありません。
ダンブルフがその強さに畏怖される以上に、彼を知るものからは尊敬を受けていたのもこういう所だったんでしょうなあ。
それはそれとして、長時間ペガサスに乗って移動してたら股擦れして痛くなって、色々と姿勢を変えて我慢しながら苦しむミラさん、なんかもうかわいいです。
新たに仲間というかペットになったピュアラビットに煩さでは一番だろう召喚獣にケット・シーと小動物が揃うとこれまた絵面が可愛い、しかなくなるんですがどうしてくれる。
段々とミラ自身も自身の「可愛い」に余念がなくなってきて、衣装についても可愛い服に対して色々と興味を持つようになってきましたし、さらには身だしなみや美容に関しても女性冒険者から応用で使える魔術なんかを教えてもらったり、とかなり重要視するようになってきてるんですよね。
ここらへん、完全に心のほうが見た目相応の女の子の方へとガンガン傾いてきているんじゃないでしょうか。もう「わし、かわいい」に違和感がなくなってきたぞ。

それはさておき、ここしばらく精霊の消失案件で名前が取りざたされるようになってきたキメラクローゼンに、ミラもついに本格的に接触することに。
さらに、精霊が奪われ消えることで起こる悪影響が、目に見える形で現れはじめるのである。と、同時にキメラクローゼンと対立する組織も現れ、とここに来てガタガタと物語が動き出した感じがあります。ほぼ災害と言っても過言ではない形で精霊の消失によって悪影響が出だしたら、ソロモンも国王として黙っていられないですしね。さらにキメラクローゼンが目論む企みもだんだんと形が見えてきましたし。まあそれもわかってきたら、放っておけない対処が必要になってくるわなあ。
とはいえ、ミラとしては引き続き行方のわからない九賢者を見つけるためのおつかいクエストはしばらく続きそう。

しかし、本作は登場人物で特に悪いやつでない人たちはみんな好人物ばかりで、気持ちいいですねえ。別にみんながみんな善人、ってわけでもないんでしょうけれど、善人でも面倒くさかったり鬱陶しかったり独りよがりだったり言動が鼻についたり、と善であることと好人物だったり快男児だったりする事とはイコールじゃない。でも、本作でミラと出会う多くの人は、変態だったり変人だったりすっとぼけてたりもしますけれど、話していても心根に淀みを感じないですし、思わず笑顔がこぼれてしまうような気持ちの良い、さっぱりした人ばかりなので、その意味でもストレスフリーなんですなあ。

さて、次回は見た目も映える大陸鉄道編。なかなか見た目もインパクト強いド迫力の列車が出てくるみたいなので、鉄道の旅の醍醐味もあって楽しみ楽しみ。


パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。1 ★★★☆   



【パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。】  持崎湯葉/れい亜 ガガガ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
お隣JKと繰り広げる匂いフェチ系ラブコメ

残業帰りの会社員・梶野了は、女子高生がパパ活をしている決定的瞬間を目撃する。
彼女には見覚えがあった。同じマンションに住むお隣の娘さん、香月乃亜である。
「親には言わないでください、なんでもしますから」そう懇願する彼女に梶野は、一つの要求をする。
「じゃあ、犬の散歩よろしく」
奇妙なきっかけから始まった二人の関係は、次第に親密になっていき--。
「カジさん、匂い……嗅いでもいいっすか?」
「なんで!?」
匂いフェチのパパ活JKと、お疲れサラリーマンが贈る、新感覚ドタバタラブコメディ堂々開幕!
まさかのおじさん加齢臭をターゲットにした匂いフェチJKである。業が、業が深い!
しかもただのフェチじゃなく、若干中毒症入ってませんか!? 加齢臭ジャンキーじゃないですか? 加齢臭吸ってるトキ、キメてる感がバリバリに出てしまっているんですが。
お隣さんの娘さんの乃亜が、見知らぬ大人の男性に車で送ってもらって帰ってくるのを目撃してしまった梶野さん。疲れ果ててメンタルやばくなっていた彼は、彼女に大人の男性の怖さを教えるためとしばらく散歩に連れて行ってあげられていなかった愛犬のために、とっさに彼女を部屋に連れ込んで黙っている代わりに犬の散歩をして、と要求してしまう。
これはこれで、わりとアウトである。
その御蔭で、むしろ逆に乃亜に軽く脅迫されて付きまとわれるはめになってしまうのですが。疲れ切っていると、頭回らなくなるんですよねえ。
あまり犬には興味なく、仕方なく何度かわんこのタクトを散歩させてそれでおしまい、にするつもりだった乃亜。梶野の方も頭回って無くて無茶したなあと思っていたので、数回散歩シてもらえればそれで終わりのつもりだったんですよね。ところが、まず乃亜がタクトを連れての散歩にハマってしまう。無邪気なわんことの戯れと、犬を連れて散歩すると何の意図もなく気軽に声をかけてきてくれる同じ散歩中の人や犬好きの人との交流が、心休まらない日々を送っていた彼女にとって癒やしになっていくのである。
母親と折り合い悪く、学校でも中学の頃に揉めてトラブった際に同級生の大人気なさ子供っぽさに幻滅しきっていた乃亜は、学友との交流を一切絶って孤立を良しとしていました。でも、周りを全部拒絶する生き方はやっぱりしんどかったのか、拠り所として頼れる年上の大人の男性を求めるようになっていったんですね。家庭環境、母一人娘一人で父親いないみたいですし。さらに加齢臭フェチというのもあいまっていたわけで。
そんなこんなで、寂しい時はパパ活で紛らわせていたのである。性的な接触は一切なく、一緒にご飯食べて、という塩梅にとどめてはいたものの、そんな出会い系で女子高生と会おうとしている男が欲望抜きにそんな事をしているわけがなく、彼女の行動は考えなしの軽率と言われても仕方のないものでした。
だからこそ、梶野さんはそれを実感させようと冒頭の行動にうって出たわけですけれど。
幸い、乃亜は心底アホの子ではなく、梶野の意図もちゃんと察する聡さはありましたし、タクトとの散歩や年齢はいささか好みからは下がるけれども、頼りがいありつつ可愛げのある大人である梶野の部屋に入り浸ることで、寂しさや孤独感が解消されたことでパパ活からは遠ざかって行くのでした。
ちなみに29歳はおじさんじゃないですからね! アラサーってのは青年の範疇なんですよ。三十路だってまだ若い、若い、若いんですから。
でも若い若いと言っても大人は大人なんですよね。大人なんて中身は全然大人じゃないのも事実なんですけれど、それでももう子供でもないのは確かなんですよ。その意味では、乃亜はまだまだ社会の悪意も知らない、子供に過ぎないとも言えるのでしょう。生きづらさにあえいで呼吸困難になるのに、大人も子供もないのもまた確かなんですけどね。それでも、乃亜はその息継ぎのために危なっかしい事をしてしまい、今梶野に寄りかかっている。拠り所として頼りにしている。
それが悪いって訳でもないんでしょうけれど、そうしている間は梶野もこの子の事を子供扱いしてしまうんでしょうね。
そんな梶野だって、完璧な大人じゃないし頼られてもうまく対応できない事もある。乃亜が思い描くような大人の男性とは裏腹の、弱い部分だってたくさん抱えている。
そんな頼りない梶野に直面した時、乃亜がうろたえてしまったのは無理もないのですけれど、彼に幻想を抱いている間は梶野に対して依存しているとも逃げ場にしているとも言えなくもない間柄ではあったんですよね。
そんないびつさを、相談されたとは言え恋敵である乃亜にビシッと指摘しちゃう日菜子さんはちょっとお人好しが過ぎますよ。塩を送るどころじゃない、殆ど致命的と言っていいクリティカルな痛恨の支援じゃないですか。引き換えにとてつもない尊敬と信頼を乃亜から受けてしまう日菜子ですが、梶野と乃亜の関係に決定的な一撃を入れてしまったわけですから、よくまあやってしまったなあ、と。
イイ人過ぎて、これ絶対に報われないタイプだ。
いやもう、内心この女めんどくせー、と罵倒しくさりながら、ついつい的確なアドバイス送っちゃう日菜子さん、ものすごい好きです。報われなさそうだけどなー。そしてそれが似合う女w
とはいえ、自分の恋に自信を持てた、浮かれに浮かれてでも照れまくりデレまくる乃亜もまた、それはそれで残念臭が漂うのですが、梶野さんからの大切にされっぷりがまた半端なくなってきて、うんどこか社会から足を踏み外しかけてた少女が、明るく楽しくテンポよくただただ恋にときめく女の子になっていく様子はとても良きものでした。



悪役令嬢の兄に転生しました 2 ★★★☆   



【悪役令嬢の兄に転生しました 2】  内河弘児/キャナリーヌ TOブックス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
悪役令嬢(になるはずの)妹ディアーナを破滅エンドから守るため、攻略本作りに乗り出す公爵家嫡男・カイン。そんな彼に届いたのは、父からの留学命令だった。『妹の成長を一瞬でも見逃すなんて、耐えられない! 』という訴えも虚しく、隣国の地を踏むことに。だが、寮で同室になったのは乙女ゲームシナリオの分岐で妹を側姫にして苦しめる、女たらしの第一王子! ? カインは迷わず、破滅フラグをへし折るために動いていく。一方、ディアーナも兄に会おうと、ある計画へと勝手に動き出し......?「どんなに離れようとも、君の未来は俺が守る! 」「ディは、お兄さまが大好きですのよ! 」移ろいゆく季節のなか、約束を胸に兄妹が挑む! 破滅回避のフルラブ・ファンタジー!

ド魔学と略称される魔法学園がゲームの舞台のはずなのに、何故か国外の学校に留学させられることになったカイン。隣国とはいえ長期休暇でも往復考えると帰って来られない場所に6年もの間留学することになる。いやこれ、客観的に見たら実質追放みたいなもんじゃないのかしら。大貴族の後継として、子供時代に人脈を作っておく事はむしろ貴族としての仕事と言っても過言ではないのに、その大事な時期を外国で特に目的を与えられる事無く過ごせ、というのはねえ。
しかも、たった一人で。仕送りも勝手に帰って来られないようにとだいぶ抑えられているみたいですし。おかげで、カインてば異国の地で大貴族の子息なのにバイトするはめに。いや、帰る事を考えなかったら別にお金貯める必要ないくらいには送ってくれているのですけれど。父上もまさか息子がバイトまでするとは思わんかったんだろうなあ。
てっきり側仕えであるイルは連れて行くのかと思ったら、彼すらも置いていかざるを得なかったですしね。ただ、彼をディアーナの元に置いていけたのはむしろ良かったのかも。
明らかに兄の影響を排して、ディアーナの再教育を目論んでいる節がありましたしね。その意味ではディアーナとカインの同志でもあるイルが傍で守ってくれているのは大きかったのではないでしょうか。ディアーナの専属メイドとなったサッシャはいい子なのだけれどまだ頭固いですからね。ディアーナが貴族令嬢らしくない振る舞いを見せる事にまだ耐えられない様子ですし。
しかし、父公爵があれほどディアーナの変化に嫌悪感を示すとは思わなかった。カインがディアーナに仕込んでいる価値観は貴族のものではなく、前世に基づいた倫理観であるのでこの世界の貴族のそれにはそぐわないにしても、理屈じゃなくああも生理的に嫌悪感を抱かれてしまうと歩み寄るのはかなり難しいのではないだろうか。
決して柔軟性に欠ける人ではなく、辣腕の執事長が元平民でそれを貴族の養子に押し込んで自分のもとで働けるようにした、などのエピソードを見ると決して固定観念に囚われた人ではないとわかるんですけどね。イルくんをカインの側仕えにするのを許してくれたのもそうですし。
そんな人でも、貴族としての常識は魂の底から根付いている。まだディアーナがゲーム原作のような他者の心を理解しようとしない悪役令嬢になってしまう、そのように育てられ仕立て上げられてしまう余地というのが残っていそうで怖いんですよね。その意味でもイルが残ってくれていたのは幸いだったように思います。

一方で異国の地に辿り着いたカインは、そこで一組の兄弟と出会うことになります。カインってホント女っ気ないよな!!
地元ではみんなのお兄ちゃん! となってしまっていたカインですけれど、第一王子のジュリアンはカインと同い年でさらにジャンルーカというゲームでの攻略対象となる第二王子の兄、というわけで、イルヴァレーノとはまた別の対等の友人であり兄仲間、になるんですよね。ジャンルーカには既に兄がいるのですから、こっちの国ではそんなにお兄さんせずに済んでいるわけですが、国に早く帰国するために飛び級するため、あと飛竜便で一時帰国するつもりでその資金稼ぎにバイト三昧、となんか苦学生みたいな日々を送っているカイン。女性が寄り付く島もなし。ほんと女っ気ないな!
いずれ絶対に婚約者とか必要になるはずなのに、お相手どうするんだろう。少なくとも地元に戻るまでは縁なしで終わってしまいそう。




やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 5 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 5】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
照れ隠しに毒舌が飛び出してしまうクール(?)美少女との
すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第5弾!

許嫁騒動を乗り越えた小雪と直哉は、徐々に二人の将来について深く考えるようになり始めていた。
余命のあるうちに孫娘の晴れ姿を見たいと騒ぐ小雪の祖父もやってきたことで、ますます具体的な未来について意識してしまうようになる。
お互いにもやもやしながら行くことになった修学旅行の京都で、交友関係の広がった小雪の姿を微笑ましく眺める直哉。訪れた縁結びの神社で二人の目の前に現れたのは、“やたらと察しのいい"“銀色の髪"の女の子だった――。
天邪鬼な美少女と、人の心が読める少年の、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第5弾。
お祖父さん、プロローグのそれも冒頭で既に直哉に陥落させられちゃってるw 小雪パパのハワード氏も速攻!って感じで好感度MAXにさせられてたけれど、直哉って白金家特攻入りすぎじゃなかろうか。具体的にはノーランド家の方か。
というわけでアーサーの件は祖父の先走りということで正座反省させられて、改めて今お付き合いしている直哉と小雪の間での許嫁問題が持ち上がるのでありました。その前に、二人きりでお泊りさせられつつ直哉は小雪に手を出してはいけません、というお預け禁欲お泊り会という色々な意味でお試しされるイベントが開催されることに。
いやもう予想以上というか想像以上にガチの新婚夫婦なんですけど、この二人の雰囲気。恋人に成り立ての初々しさというかお互い距離感を探り合うという過程がもうとっくの昔に通り過ぎちゃってるので、二人きりで家で過ごしている時間がもう家庭的な雰囲気で満たされてるんですよね。イチャイチャしてるし甘酸っぱいんだけれど、それがしつこくなくベタベタしすぎずさらりとして自然で馴染んじゃってるんだなあ、これ。
むしろ、いつもなら余裕綽々の直哉の方が、やたら無防備な小雪の脇の甘さに、つんつんしながら甘えてくるという高級テクニックを天然でやらかしてくる彼女に、もうこれ誘ってるよね、と言わんばかりに鼻先で人参ぶら下げられて、おうおう、と耐えている様子が何とも微笑ましく。いやもうこれ、襲ってもいいんじゃないかね?
何にしろ、もうこの様子を見せられると明日から結婚しても何の支障もないんじゃね? というくらい違和感のない二人なのでありました。この体験が直哉の歯止めをふっとばしたんだろうなあ。
彼の読心能力と言って過言ではない、読心どころか未来予知と言っていいくらいの察しの良さ。というかこれ、読心に未来予知に鑑定スキルをあわせたようなもうアカシックレコードリーディングじゃないの? と言わんばかりの超常の能力(これより父親の方が現状能力が高いという恐怖)を有した直哉は、まあ今更なんだけれど何でもかんでも心の内から相手の見ていない所での行動など全部お見通しのバレバレという、非常に付き合いづらい相手なんですよね。もうプライベートなんて皆無になってしまう。そんな相手に未だに無駄な抵抗としりながらツンツン憎まれ口を叩き、でも本心をさらけ出すことを厭わず、何もかも知られてしまっている事にうきゃーとなりつつでも丸ごと受け入れてて毛ほども嫌がっていなくて、むしろ最近では全部知られてしまっている前提で物事を考えちゃってる小雪のあの適応能力というか鈍感さというか包容力は、直哉にとって唯一無二。これを逃すともう二度と出会えない運命の人なんですよね。直哉に全部知られているのに、というか本人の目の前でサプライズサプライズと連呼しながらサプライズプレゼントを選ぶための相談をし、渡すためのパーティーを強行するこの開き直った大胆さというか大雑把さw(サプライズとはw
二人共お互いに、相手のことが好きで好きでたまらない、というのが伝わってくる、今までで一番ダイレクトに伝わってくる、それを書き殴るための幸福な一冊でありました。もう伝わってくる幸せオーラがたまんないんですよね。こっちまで幸せな気分になってくる多幸感がもうすごい。
ただ気持ちがすれ違わない、イチャイチャしてるだけのラブコメだったら、こんなに幸せには見えないでしょう。尊く感じないでしょう。楽しく愉快に、ちゃんと噛み合って信頼しきってお互いの特異性を受け入れきって、その上で好きな人を幸せにすることに二人で全力だったからこその、多幸感だったように思います。また、二人だけで先走らず、周りを一緒に巻き込んで、周りからも祝福してもらえる、そういう空気だからこそ、というのもありますよね。
これだけ分厚く下地をガンガン積み重ねたからこそ、結婚しよう!となる超高速展開もまったく違和感なく、むしろよし結婚しろ! となるのはこの作品ならではだったんじゃないでしょうか。他の作品のラブコメなら、学生の段階で結婚だなんだ、という話になったら尚早すぎて現実感薄かったり空々しかったり、という風になってしまうのが、本作だとほんともう早く結婚しちゃえよ、でしたもんね。家族友人含めて周りの空気も、容認どころか後押しするものでしたし、直哉と小雪はもう今すぐ家庭を持っても違和感のない貫禄も出来上がっていましたしねえ。
満を持しての大団円でありました。完膚なきまでのハッピーエンド。と、思ったのですが、いやハッピーエンドはハッピーエンドだったのですけれど、甘いものならいくらでも入るよ! とばかりに、延長戦の番外編、短編集とは明言されていないですけれど、ひたすらイチャイチャする話が六巻として続くらしく、いやはやまだまだこの二人を中心としたみんなの面白おかしいラブコメ、ずっと読んでいたい見ていたいと思う希望願望を叶えてくれるご様子で、ありがたやありがたや。


ルーン帝国中興記~平民の商人が皇帝になり、皇帝は将軍に、将軍は商人に入れ替わりて天下を回す ★★★☆   



【ルーン帝国中興記~平民の商人が皇帝になり、皇帝は将軍に、将軍は商人に入れ替わりて天下を回す】  あわむら赤光/ Noy GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
それは、奇跡の一夜の物語。
商人、皇帝、将軍が一つの酒席で議論を交え、互いの立場を批難し、最後に声を揃えてこう言った。
――だったら、おまえが代わってみろ!
売り言葉に買い言葉で、立場を入れ替える三人。
帝室に伝わる秘伝の魔法を使い、その夢物語を現実のものとしたのだ。
そしてその夜をきっかけに、滅びかけの帝国で終わらない復活劇が始まった!
「じゃあ俺、今日から皇帝やりまーす! 」
商人セイは皇帝となり民が富む善政を敷き。
皇帝ユーリは帝室魔術を戦場に持ち込み。
将軍グレンはその剣で市井の平和を守る。
そう。彼らは今、ここでこそ輝けるのだ!
己の真価を発揮させ、適材適所に響き合う三英雄共鳴のシャッフル戦記、開幕!!
これ、後世から歴史として語られる視点があるからには、三人の入れ替わりって表沙汰になっているんだ。
最初は、セイとユーリ、グレンの三人が顔が一緒のそっくりさんでも何でも無く、見た目完全に別人にも関わらず入れ替わり出来ているし、歴史書にも入れ替わりが記述されている事から最初から周知の上で立場入れ替えたのかな、と思わされたんですよね。
いや、そんなの周辺が認めるのか? どうやって認めさせたんだ? とか思いながら。あくまでセイが皇帝やるのも代理として押し通したのかな、とか考えながら。
そっかー、魔術魔法ありってそういう事だったのかー。
前作が完全に魔法などのファンタジー要素なし(動物使役はあれファンタジーだよね)の戦記物だったのが、今回は魔法有りと宣言していらっしゃったので、てっきり戦場で火の球が飛び交ったり矢避けの風魔法とか、土木の土魔法とか派手な魔法が飛び交うそういう魔法ありの世界観なのかな、と思い込んでいたのですが、魔法ありとは言ってもかなり存在自体が限定的だったんですねえ。それも、わりと特殊な扱われ方で。
……いや、これ皇帝陛下の魔法って滅茶苦茶やばいんじゃないですか? ユーリ陛下はそれを戦場で使うことでデタラメな戦果をあげることに成功するわけですけれど、この魔法の効果ならむしろ政治無双出来るんじゃないだろうか。相手の弱みとか情報全部丸裸ですよ?
そういう政争方面に全く魔法を活かす発想がなかったあたりに、この皇帝陛下の政治センスのなさ、というか寝技下手が伺えます。別に正々堂々ってタイプじゃないんですけどね。戦場でグレンと入れ替わって将軍やる際には卑怯も卑怯、これぞ本来のズルって意味のチートじゃね? というやり方で勝利をもぎ取っているわけですし、それで悪びれるわけでもない。
ただ、面と向かってだと嘘や騙しでひねくり倒すことができず、どうしても正論正論で強引に押し通そうとしてしまう性格が、政治方面に不向きなんだろうなあ。若さ故の荒さであり産まれたときから一番偉かった人間であるが故に相手の立場に立ってみるという経験や想像力を働かす場がなかった故の弊害というべきか。
今はうまくいっているけれど、一番いざというときの経験が少ないのがユーリ陛下なだけにいつまでも順風満帆とはいかなさそうなのが彼な気がするんだよなあ。そもそも、ぐだぐだと机上で理論こねくり回しているばかりの政治の場よりも、変転する現実に直面している最前線の方が正論が押し通し易い、とは言っても程度の問題で、最前線の現場だって交渉力や政治力は必要となってくるし人間関係や感情を拗らせた場合一番酷いことになるのも最前線でもあるんですよね。さてどうなることやら。

一方で一番土壇場に強そうなのが、皇帝の座についたセイなのでしょう。商人が皇帝という専制君主をやる、って相当に危ういんじゃないか。利益追求、金を儲けることが至上である商人が、儲けるという視座を踏み台にしてより高所から遠望して、時に損も背負いながら物事を進めていくのが公共であり、それを仕切る政治家の長になる、というのは適性が微妙にズレている上にそうそううまく行くとは思えない部分もあったのですが……いやこれ、セイって人物的にむしろ商人よりも政治家タイプなんじゃないかしら。
商人特有のガツガツした妄念があんまり見えないタイプなんですよね。初登場時も、友人と遊び歩いていたように享楽的で、儲け話に目がない、という感じでもなかったですし。兄弟蹴落として三代目として継いだ大商会も、それ以上大きくする野望とか市場を独占してやろうとかいう我欲も見えず、放っといたら出来た部下たちが勝手に利益あげてくれる、と放任してしまっているようだし。まあ何もしなくても順当に儲けることの出来る構造を作り上げちゃっている、という事なんだろうけれど。
大まかに見て、セイって働き者じゃなくて怠け者タイプなんですよね。身代潰しそうなボンボンの三代目に見えてしまうような。
こういう自分が自分が、ではなくゆったり構えて自分の利益にあまり頓着することなく、必要なことを成せる、求められるというタイプは国政を指導するのにピッタリな人物に見えるんですよね。
実際、セイは皇帝の座についたあと、バリバリと働きまくって改革を進めていく……という風にはせず、凄まじい寝技で国政にはびこる病巣を一網打尽に一掃する方法に打って出ることになる。実に性格の悪さと享楽的な部分がにじみ出るやり方で。

さて、残るもうひとりの元将軍グレンさんはというと、セイの代わりに大商会の運営を……なんて出来るはずもなく。いや、将軍が簡単に大商人になんてなれないですよね。商売なんてやったことないでしょうし、その手に噛むだろう知将謀将タイプでもなく……ってか将軍としてもこの人って一騎当千タイプで組織まとめるのあんまり出来ないタイプだったでしょうこれ!?
いやでも、人望は厚かったみたいだし部下は鍛え上げられて精鋭として前線の軍勢の中でも練度を保ってたみたいなので統率が出来ないタイプではなかったんだろうけれど。
いずれにしても、グレンだけ商人に入れ替わったのに商人してないんですけど!?
この人の場合は商人になる、というよりも平民となり庶民となり市井の側に立つことが重要だったのかもしれない。
でもやってることはこれ、必殺仕事人ですよね!?
さながら時代劇の主人公である。世直しですか?
いやでも、昼間は商家の若旦那、しかし夜になれば凄腕の暗殺者で権力によって守られている表の秩序では仕留めることの出来ない巨悪を、闇から討ち果たし弱きものを助けて回るダークヒーロー。って感じで、ジャンルがなんか違いませんか!?w
いやでも、一番まっとうに格好良くてまっとうにモテてますなあ、グレンさん。モテるべくしてモテている風情、そりゃ女性陣もあんなふうに助けられたり、普段はぼんやりしている中でいざという時あんなに研ぎ澄まされた強さ頼もしさを見せられたら、惚れますよねえ。
それに比べて、エルフ姉妹のチョロいことチョロいこと。ユーリに仕えているエファも、セイのお目付け役として残された秘書官のミレニアも、懐柔のされ方ほだされ方がチョロいチョロい。エルフって種族的にチョロいのか、と思ってしまうくらいチョロいんですが。種族の特性と思われるとエルフも不本意だよな、これ。この姉妹限定だと思われます。

まだ始まったばかりですが、主にセイを主人公としていきなり宗教勢力との主導権争いという聖域に首突っ込んで、盛大に立ちふさがった壁を爆砕してのける結果となりましたが、果たして順風満帆に行くのはどこまでか。いずれどこかで、本職でない立場を適性とセンスだけでぶん回している弊害が出てくるとは思うのですが。
ともあれまだ始まったばかりで舞台は整いきっておらず、多分役者も舞台にはあがりきっていないはず。物語の本番はここからと心得たい。三者のシャッフル入れ替わりという構想がそもそも面白いだけに、ここからどう転がっていくのか期待しています。


百花宮のお掃除係 4 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。★★★☆  



【百花宮のお掃除係 4 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。】  黒辺 あゆみ/しのとうこ カドカワBOOKS

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
潘公主をみんなが見惚れる良い女にしようと、食事改善に運動指南にと奔走する雨妹。しかし不調の原因の根本は、黄一族のお家騒動であり、都から嫁いできた潘公主に排他的な屋敷にも問題があった。不器用ゆえにすれ違っている潘公主と利民が心を通わせられるよう、恋のキューピットとしても雨妹は大活躍! しかしついに、利民が統治する佳の地を奪おうと黄県主が動き出す。海賊の襲撃で、雨妹は救急箱片手に戦場を駆け回り、さらには黄県主と直接対決へ――!?
雨妹を同じ国内とはいえ皇帝家の権威が通じにくい(通じないとは言っていない)黄家の領地に一人置いて帰る、という事に関しては立勇がついているから別に不安視していなかった、というか何とも思っていなかったのですが。何しろ、雨妹は公式にはただの女官で掃除係ですからね。むしろ立勇がついているだけでも大盤振る舞い。少なくとも黄家の使用人たちの嫌がらせからは立勇がいれば守ってもらえる、精神的なイビリはそもそも雨妹には通じない、という訳で護衛だなんだという件については特になんにも考えていなかったのですが。
父である陛下からするとそうも言ってられなかったのかもしれない。
まさかの虎の子である直属の隠密集団を雨妹の護衛のために派遣していたという過保護っぷり。それも立勇が驚くくらいの大物、恐らく隠密の長か一番の腕利き、或いはその両方をリーダーとしたガチの最優部隊っぽいんですよね、これ。それをわざわざ自分の元から離して、雨妹の護衛のために派遣してくるという……本来なら別に危険な土地というわけでもなかったのに。
とは言え、海賊退治などで荒事に巻き込まれるはめに……正確には首を突っ込む事になったので陰の護衛が居てくれたのは大変助かったのですが。それに、彼らが居てくれたおかげで立勇が安心して雨妹の元を離れて、ある意味雨妹を一見無防備に一人にすることで囮代わりにすることも出来たので大変に役にたったので陛下の先見の明が光るのでありました。さすへいか。
陛下、元は反乱を平定したりと超やり手の皇帝として名を馳せていたのが近年では随分と燻ってしまっていたようなのですが、最近とみに気力精力を取り戻して往時の名君としての顔を再び見せるようになってきたという話なのですが、さていったい何があったんでしょうねえ。

さても、黄家…それも黄県主という家の癌みたいな女性とその影響下にある使用人たちによって影に日向に嫌がらせを受けながら、図太くスルーしたりそもそもイビリと感じなかったり、しつこく絡んでくる相手には口八丁で追い詰め、皇家の権威も利用してぶちかましてやったり、とまったくダメージを負うこと無く、潘公主のダイエット管理をしながら夏のバカンスを満喫する雨妹。
うん、これ完全にバカンスですよね。海の幸を堪能し、交易の港町特有の賑わいや異国の風情を満喫したり、現地の発明家が作っていた自転車の原型と遭遇して大はしゃぎしたり。
いやこれ、後宮に自転車が普及する流れじゃないですかー。立勇も気に入ってしまったので、軍の方にも導入されてしまいそうな勢いですが。ゴムなしチェーンなしだとまだまだ乗り心地はしんどそうですが、移動手段が馬車と馬しかない中で狭い都市内や広い後宮みたいな屋内では利用価値もあるんだろうか。
しかし、相変わらず立勇とはいいコンビである。いざというときお互い言わずとも何をやりたいのか察して合わしてくれるところなんか、以心伝心と言ってもいいくらいかも。皇家の権威を利用して突っかかってきた連中をやり込めるときなんかの、打ち合わせもしていないのにポンポンと掛け合いで相手を追い詰めていく様子は痛快ですらありました。全然ベタベタした様子のない二人ですけれど、気心はしれあっていると見てもわかるんですかねえ。潘公主からは恋人同士だと勘違いされる始末で。
まあ雨妹からすると、今更恋愛ってもんでもないですし、頼りにはしているけれど立勇に特別な感情は抱いていない……と、思っていたのですが、しばらく立勇が自分から離れて海賊退治に同行していたときは結構本気で心配していましたし、いや死んじゃったらちゃんと弔ってあげないと、とかその時はその時で微妙に割り切っていたというかサッパリしちゃっていたのは苦笑ものでしたが。
でも立勇には一緒に居てほしいな、と思う瞬間があったのは確かなので、なるほど乙女的な情動もちゃんと彼女の中では働く余地は残っているのかもしれませんなあ。

逆に乙女回路全開なのが、本当は雨妹の異母姉にあたる潘公主。現状では結婚した黄家の利民とはすれ違ってしまっているのですけれど、お互いなんだかんだと両思いなんですよね。勝手な思い込みでお互いにあんまり好かれていないと勘違いしているのを、雨妹がダイエット管理や美容指導などで後押しして改めての縁結びをすることに。
わりと高貴な身分の女性に対してのものとしては常識外の提案をする事の多い雨妹なのですけれど、固定観念などで反射的に拒絶せず、何でも好奇心たっぷりに興味を示して話を聞いてくれて、論理的に受け入れてくれる潘公主はやりやすい人ではあったんですよね。
イビリによってストレス障害、精神的に追い詰められていた潘公主ですけれど、だいぶ文化の違う黄家に嫁いできたようにむしろ図太いくらいの人なんですよね。根っこの部分であっけらかんとして前向きだったり好奇心の固まりだったり、とこうしてみると案外雨妹と似ている部分が多くて、なんだかんだと姉妹なんだなあ、と思わせてくれる所でありました。
明賢太子もその辺似てる感じがあるので、血の繋がりなんですかねえ。皇帝陛下の好みって派手めよりも普通な感じの人だったり、前向きで明るい感じの人だったりするので、子供達の中にもそういう部分が引き継がれている子たちがそこそこ居るのかもしれません。

結局、ひと夏まるまる海で過ごしていたのか、雨妹は。後宮に帰ってきた時に、おかえりと迎えてくれる人たちがいて、心からただいま、と言えることに気づいた雨妹。ただ趣味が高じて後宮ウォッチングだー、と入り込んだ百花宮ですが、今や雨妹にとってそここそが帰るべきホームになっていたんですねえ。それに気づけただけでも、良き出張編でありました。




魔剣の弟子は無能で最強! ~英雄流の修行で万能になれたので、最強を目指します~ 1 ★★★   



【魔剣の弟子は無能で最強! ~英雄流の修行で万能になれたので、最強を目指します~ 1】  ふか田さめたろう/植田亮 SQEXノベル

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
人生大逆転で成り上がり!?
落ちこぼれは努力で無双する!!
英雄に憧れる少年、シオン。 彼は誰もが持つ才能の証『神紋』を持たず落ちこぼれ扱いされていたが腐らずに頑張り続け冒険者となった。そんなある日、彼はパーティの仲間に裏切られ絶体絶命の窮地に!だが、死を覚悟する彼の前に憧れの英雄『ダリオ』を名乗るガイコツが現れて!?助けてもらったシオンが話を聞くとダリオは『神紋』を持たない弟子を探していたという。尊敬する英雄に弟子入りすることになり、秘密の修行場に籠るのだがーー【才能がないだと? ならば天才どもの百万倍努力するのみだ!】「はい! 師匠!」数百年にも及ぶメチャクチャな修行をした結果、いつのまにかシオンはS級の魔物さえ余裕で倒せるようになっていた!!元無能、今万能の少年(と師匠)が贈る痛快無双劇、開幕…!

いや努力するにしても年月掛けすぎじゃないですか? 伝説の賢者ダリオの幽霊だか思念体だか魂の憑依体だかに見込まれて、修行を受けることになったシオン。秘密の修行場って精神と時の部屋みたいなもんですよね、これ。
……実質、地獄じゃないここ? だって、娯楽も何もなくひたすらに修行だけですよ? 衣食住も全然完備してないんじゃないですか? ひたすらに修行ですよ? 一年も経たずに頭おかしくなるんじゃないだろうか。ドラゴンボールの精神と時の部屋だって、あれ飯はちゃんと食ってたし期間も一年限定だったはず。違うバージョンとかあったかな?
それを、この少年シオンはガイコツ相手にひたすら修行修行。面白い工夫ある修行じゃなくて、いきなり基礎体力トレーニングと魔法習得に1万年。次に素振り10万年である。
あらすじでは数百年ってなってるけど、単位全然違いますからね。
いやいやいや、頭おかしくなるって。人類の文明が発祥してまだ一万年経ってないんですけどね、地球さんでは。
娯楽ががいこつ師匠の英雄譚だけって、どんだけ自慢話のストックあるんだよ師匠。
そして最終的に億年単位、場合によってはその上の単位まで修行していたシオンくん。弥勒菩薩も降臨しそうなほどの時間が経過したらもう何らかの謎の上位次元の精神生命体にでも進化するか、別の宇宙に旅立つか、邪神化でもしそうなものだけど、人間の枠から一歩も逸脱しないまま変化せずに終わったシオンはそれはそれで凄いんじゃないだろうか。シーラカンスレベルである。
というか、それだけのわけのわからない時間ひたすら修行だけしていて、メンタルも通常の人間のまま、というのも凄いは凄いんだけれど、逆に見るとこれだけ修行しておきながらこれだけしか強くなっていない、というのは実際シオンって人類でも稀に見る数億人に一人の無能だったんじゃないだろうか。神紋のあるなし関係なくフィジカル無能だったんじゃないだろうか。いやそれだけの年月メンタル変わらないまま修行完遂できたという意味では精神面でコズミックホラー並みの偉人かもしれないんだが。

まあそれはそれとして、師匠がかわいいのである。ひたすら師匠かわいいのである。わりと雑な性格した居丈高美少女師匠はかわいいですよね。この師匠が実はかわいい美少女師匠だというのが発覚するのは修行終わってからというのが、やっぱりシオン頭おかしいのですが。師匠のことオッサンと思い込んでおきながら、よくまあ修行続けられたもんである。幾ら憧れの英雄だからといっておっさんと顔つきあわせて億年単位って、もはや女性という異性の存在を認識できなくなる期間なんじゃないだろうか。いやまあ美少女だと知ってたとしてもこのときの師匠はガイコツだったので、しゃべこうべ相手だったらオッサンも美少女も関係ないかもしれないが。
ともあれ、シオンの素直で前向きで楽天的という善良で気持ちの良い性格をしたキャラクターというのは、偉そうで我儘で居丈高ででも弟子のことを猫可愛がりしてくれる可愛い師匠とは性格もマッチしていて良いコンビなんですよね。
普通ならいらんちょっかい掛けて破滅しそうな、堕落していたハーレム冒険者の青年と女性たちが、シオンの人柄の良さに感化されて本来の冒険者になった当時の夢を取り戻して出直す展開なんか、人が本来持っている良い部分を引き出してくれる主人公というのが伝わってきて、なんとも嬉しかったです。師匠もあれ結構拗らせているはずなんだけど、シオンの明るさと懐っこさにだいぶ掬い上げられてるよなあ。
というか、ずっとイチャイチャしてなかったか、この師弟。さすがにあれだけの年月一緒に過ごしていると遠慮なんてなくなりますし、以心伝心でもあるんですよね。
レティシアをはじめとして女性キャラクターはヒロインとして登場するんだけれど、実質割り込む余地ないよなあ、これ。まあ無鉄砲師弟コンビは放っておくと常識投げ捨てちゃっているので、レティシアがうまいことストッパーとして機能してくれているみたいだけど。それはそれとして師匠、美少女なのに美少女好きで女性メインで食い散らかしてきた女癖の悪い美少女だったみたいだけれど、美少女なので無罪。


2021年12月下半期 新刊ライトノベル注目作品ピックアップ  


前回の記事です。

年末はどうお過ごしになる予定でしょうか。29日まで仕事なんですがね、こちとら。そして土日も休みじゃないんですよね。くわー。
色々と本年度のまとめ記事など年末企画的なものを書くつもりだったのですが、例年やってるのもさて出来るだろうか。頑張ろう、がんばります。


【公務員、中田忍の悪徳 2】 立川浦々(ガガガ文庫)

Amazon Kindle B☆W
異世界エルフとの衝撃の邂逅からその先へ。
区役所福祉生活課支援第一係長中田忍は、ある一つの悪徳を犯している。
穏和な生態と柔和な笑顔がかわいい、言葉の通じぬ異世界エルフ“アリエル”を秘密裏に保護し、生かし続けていることだ。

「オカエリナサイ、シノブ!」
アリエルと過ごす、慎ましくも穏やかな日々は、むしろ忍の罪悪感を苛み。
「変わらないでください。忍センパイ」
「僕は忍に、変わって欲しいと思う」
支えてくれる理解者たちは、それぞれの思惑から、忍の信義を惑わせる。
折しも季節は冬、十二月。
クリスマスの足音が、アクアリウムの外側へ響き始めている。
そんなある日、区役所福祉生活課支援第一係を訪れた、謎の幼女。
「はじめまして、ぱぱ!!」
元気いっぱいに抱き付いてきた見知らぬ幼女を、忍は迷わず警察へ突き出すが――
衝撃の邂逅からその先へ、コメディ? シリアス? よもや……ラブ? 分類不能の話題作、待望の第二幕!
落ち物ヒロイン系ラブコメ、或いは異世界文化コミュニケーションを思いっきり違う方向にはき違えた大怪作だった作品の続編。取り敢えず幼女を警察に突き出すな、保護と言いなさい保護とw


【魔弾の王と天誓の鷲矢】 瀬尾つかさ(ダッシュエックス文庫)

Amazon
リムの友人である商人の少女エリッサが誘拐された。
ティグルとリムは、エリッサの手がかりを追って南国カル=ハダシュトに赴く。
現地では国を統べる双王が亡くなり、七部族間の抗争が激しくなっていた。
運良くエリッサと再会を果たすティグルたちだったが、彼女は現地の騎馬部族の指導者――弓巫女となっていた。カル=ハダシュトに住まう神から授けられる七本の矢の一本をその身に宿し、己の運命も受け入れたエリッサは、ティグルとリムに共に戦ってくれるよう懇願する。
しかしこの地では、かつて弓の王と名乗りティグルたちと戦った女、ネリーの影も見え隠れしていて……新たな地で紡がれる誰も知らない魔弾の王の伝説、開幕!!
これタイトル変わっているけれど【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン)】の新章なんですね。引き続きリムがメインヒロインということで、彼女優遇されてるなあ。


【全力回避フラグちゃん!】 壱日千次(MF文庫J)

Amazon Kindle B☆W
「(死亡フラグが)立ちました!」 YouTube発の大注目ラブコメ!

「立ちました!」何の変哲もない男・モブ男(お)の前に現れた死亡フラグちゃんこと「死神No.269」。実はモブ男がいるのは失敗続きのフラグちゃんを見かねた神様が彼女の練習用に用意した仮想世界。だが、フラグちゃんはモブ男の命を奪うどころか、あろうことかモブ男に惹かれてしまった! それでも彼女を温かく応援する神様やドSだけど実は優しくなりたい生存フラグさん、イタズラ大好きの恋愛フラグがフラグちゃんの周囲に集ってきて、事態はいつも思いがけない方向に。はたしてモブ男への想いで揺れるフラグちゃんは、立派な死神になることができるのか!? そしてモブ男は生き残ることができるのか――!?
壱日千次さんの新作だー! と、思ったらオリジナルじゃなくて原作が他にあるのか。ノベライズは初めてなんじゃないだろうか。ってかこれノベライズ? 元はYouTubeの動画。それも漫画動画というやつらしい。今どきそういうのがあるのかー。わざわざライトノベル化されるぐらいだから人気あるんだろうか。
ってか壱日千次さん、かなり癖がある作家さんなだけに果たしてどんなものになるんだろう。


【12ハロンのチクショー道】 野井ぷら(オーバーラップノベルス)

Amazon Kindle B☆W
日本ダービーを制覇せよ!

12ハロン――競馬で数々の歴史を作り、人々を魅了してきた2,400mの道のり。
ある男は転生した――地方零細牧場の競走馬に。
その名はサタンマルッコ。栗毛で額に位置する真ん丸の白い星がトレードマークのサラブレッド。
地方競馬を連戦連勝し、調教師小箕灘はオーナーの中川を説得して中央競馬へ参戦させることに。
「マルッコはダービーを獲る馬です」
さらに賞金を積み重ねたマルッコは日本ダービーへの切符を手に入れる。騎乗するは数多のG気僕ゾ[鬚鮖弔好戰謄薀鵐献腑奪ー、縦川友則。だが彼は、日本ダービーで一度も優勝したことのないジンクスを抱えた騎手だった――。
「それでは日本ダービー、本馬場入場です」
かくしてファンファーレが鳴り響き、世代頂点の馬を決める優駿の門が開く。
金と見栄と名誉と意地が渦巻く熱狂の世界へようこそ。
これは競走馬にされてしまった男と、そんなでたらめな馬に魅了された人々の熱き競馬物語。
最近ウマ娘プリティーダービーの影響もあってか微妙に増えてきた競走馬転生物語。その先駆的な作品が本作である。いや、自分読んだことなかったんだけど、こんな作品あったんですなあ。書籍化されるそうですよ、という情報を聞くまで知りませんでした。折角なので本で読もうとウェブ版は読んでいないので、主人公の馬がはたしてどれほど楽しいやつなのか、ちょっとワクワクして待っています。




真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 8 ★★★☆  



【真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 8】  ざっぽん/やすも 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
新たなる『勇者』誕生!? 英雄達は再び辺境の地へと集う!

「新たな勇者が現れました。彼はゾルタンに向かっています」
唯一にして世界最大の宗教である聖方教会が擁立した新たなる『勇者』ヴァン。
無垢さと危うさをはらむその少年は、かの大英雄であるテオドラさえも戦慄させる程の力を示していた。
一方、レッド達は聖方教会がゾルタンに座礁している魔王の船を回収しようと接近している事を知り警戒を厳にする。
「ねぇ……たまにはゾルタンを離れてゆっくりしない? 勇者ヴァンがいなくなるまで遠くでのんびりしようよ」
新たなる勇者との衝突を避ける為、レッド、リット、ルーティはゾルタンから離れた村で一時バカンスを楽しむことにするのだが!?
うわぁ、この新しい勇者のヴァン。サイコパスっていうんだろうか。それとも順当に狂信者? 狂信者と言っても大概、信仰こそが最優先であってもそれ以外の事も信仰よりは価値基準は低いなりに必要性は認識しているものなんだけれど、ヴァンの場合は信仰以外の事はすべて無価値と考えているように見える。正義だとか悪だとか、民の為とか世界の平和の為、という理由ですら彼の中には存在しない。女神への信仰、それが絶対であり、この世の全てはそのために存在している、と。だから人の感情だとか愛だとか、日常生活とか社会活動、経済活動、人が生きていくための諸々も、社会が成り立つための諸々も、国を運営するためのあれこれも、彼の中では信仰に殉じる以外のことは不必要で無意味なのだ。その結果として国が崩壊しようと民が生活していけないほどボロボロになろうと関係ないんですよね。
世界に平和を取り戻すために魔王軍と戦う、なんてお題目すら彼の中にはない。ただ信仰を成すために。結果がどうなろうと、それは女神の思し召し。人間は喜んでそれを受け入れなければならない。それが彼の解釈なのである。
いやこれ、もう無理でしょう。
レッドたちは、このヴァンとあるべき人のために働く勇者へと教導しよう、と考えているみたいですけれど、彼の考え方が変わるとはどうしても思えない。彼の絶対的な自己肯定の拠り所は強さとか自分にあるのではなく、女神への信仰という外側にあるので、戦って打ちのめしても彼の勇者としての未熟さを示すことにはなっても彼の信仰を否定することには繋がらないんですよね。敗北ですら、彼の中では信仰の結末として受け入れているのですから。
とにかく、人の話は聞かない。全部自分なりの解釈で理解するから、他人の意図とか関係ない。
図らずも冒頭で、デミス神が死して転生していくレオノールに語りかけるシーンでその在り方を見せるのですけれど、この神も同じように人の話は聞かないし相手の発言を勝手に解釈してその意図を無視し、自分のことを押し付けてくる。そこに尊重というものは欠片もなく、あの「加護」というもののように一方的な押し付けなんですよね。
その意味ではヴァンは勇者として、女神の使徒として、正しく女神の意思を体現しているとも言える。
ある意味、人間じゃないんですよ。女神の意思を世界に顕わすためのAIプログラムみたいなものじゃないですか。そんなモノの考え方を変えることなんて出来るのだろうか。外部入力によるプログラムの変更は不可能です、ってなもんじゃなかろうか。
彼に比べれば、往時の勇者ルーティーだってよほど人間的で人格者だったのがよくわかる。エスタさん、よく根気強く彼のお目付け役やってるよなあ。何言っても通じないし、暖簾に腕押しなのに。
徒労感に相当メンタル参っているようですけれど。もしかしてそれでか? 精神的に疲れ果てている時に誠実でひたむきな若者に純粋に慕われてしまったから、乙女回路が反応してしまったのか!?
人間、滅入ってる時に優しくされたらコロッといっちゃうもんなあ。相手がアルベール、というのがもう笑ってしまうのですけれど。アルベールくん、ちょっと違うかも知れないけれどこれって逆玉? 辺境も辺境で英雄に憧れながら燻って、拗らせてグレちゃった若者が更生して本物の英雄の一人と一緒に行動するようになって、さらにその英雄と恋に落ちるとか、ある意味逆玉ですよね。
ってかアルベールくんがキレイなアルベールくんに成りすぎてて、誰だよこれ、と思わず言いたくなります。いや、変わりすぎじゃね?
あの悪堕ちしたアルベールですら、ここまでキレイになるほど変わることが出来たのだから、勇者ヴァンも、と言いたいところなのですけれど、この親勇者はもう根底から違うっぽいからなあ、変わる姿が想像できない。
よっぽど信仰心をへし折るようなこと、それも他人に折られるのではなく、自分自身で信仰心に反する事をやらせて自ら折ったという形にでもしないと、絶対に変わりそうに見えないんだよなあ。
ヴァンの言動はもう見ているだけで心荒んでくるというか、気持ち悪さに気分が悪くなるので、うげうげさんの素晴らしさで心癒したいと思います。なんだろう、人の心に勇気と希望と笑顔を与えてくれる、という意味においてはむしろ本作でもっとも勇者してるのってうげうげさんじゃないだろうか。もう勇者うげうげさんでいいんじゃないだろうか。蜘蛛ですがなにか?

何も理解しないし受け入れない、自分の中の価値観こそが絶対。というヴァンに対して、同じく戦いの権化でレッドたちが志向する「スローライフ」というものを一切理解できないダナンが、それでもレッドたちのその生き方を受け入れ祝福してくれている姿とは、すごく対照的なんですよね。
変化しない自分を置いていかれたように思いながら、勇者パーティーとして一緒に戦っていた頃とまるで変わってしまったレッドやルーティーの仲間たちを、彼らの変化を喜んでくれるダナンはホントいいヤツである。ルーティーに強さを認め褒められて素直に嬉しそうにしてるのとかかわいいくらいで。

ある意味魔王軍よりも余程スローライフを脅かす「敵」の出現に、わかりやすくぶち倒すのではなく、自分たちがのんびりとスローライフを送るために人の世の平和を守ってもらうため、勇者ヴァンの在り方そのものを変える、という難易度超高そうなクエストに挑むことにしたレッドたち。むしろ魔王倒すよりも難しそうなこれ、果たしてどう成し遂げるのか。いや、これもうぶち倒しちゃった方が早くないだろうか、とダナンみたいなこと考えちゃいますよね。




お気楽領主の楽しい領地防衛 1 ~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に ★★★   



【お気楽領主の楽しい領地防衛 1 ~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に】  赤池 宗/ 転 オーバーラップノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
ハズレ適性の生産魔術で辺境を最強の都市に!?

2歳のある時、転生者であることを思い出した侯爵家の四男・ヴァン。周囲に神童と期待されて成長したヴァンが、8歳の時に授かったのは『生産魔術』。それは、攻撃魔術が優れているとされる世界で、“役立たず”のハズレ適性だった。
貴族には相応しくないと父親に失望されたヴァンは、専属メイドのティルをはじめ、僅か数名で名もなき辺境の村の領主として追放されてしまう。
そこは、人口百人ほどで特産品もない、存亡の危機に瀕した寂れた村だった――。
現状を目の当たりにしたヴァンは、前世の知識と“役立たず”とされる生産魔術で村を発展させ、楽しく暮らしていくことを決意する。
冒険者の装備を整え、家を建てるだけに留まらず、巨大な城壁を造り、さらには防衛用バリスタを配備!? 名もなき辺境の村は、やがて巨大都市へと変貌していく――!
追放された幼い転生貴族による、お気楽領地運営ファンタジー、開幕!
ああ、なるほどー。後書きで本作がタワーディフェンスゲームをテーマにしていると書かれていて、確かにまさにタワーディフェンスゲームだったなあ、と納得した次第。
タワーディフェンスゲームってちょろっと触りだけ、何かのゲームでやっただけなんですけどね。タワーディフェンスっていうのは、自分の陣地に色々と防衛施設を配備して、そこに敵のユニットが何体も攻撃してくるのを迎撃する、というゲームで基本的にプレイヤーがすることは防衛施設を作成してフィールドに配置するだけ。あとは迎撃は自動で行われてプレイヤーは敵が全滅するか防衛施設を突破してくるかを見ている、という感じのゲームだったと思います。
肝はどんな防衛施設を作成するか。そして作成した防衛施設を、フィールドのどこに配置するか。敵の攻め込んでくる進撃ルートや攻撃方法を鑑みて配置しなければならない。そのあたりの戦術眼が問われるという感じですね。

ヴァンくんは持ち前の生産魔術を使い、自分が赴任した辺境の寂れた村をガンガンと強化、様々な施設を作ったり立てたりして、盗賊団や魔物の群れに襲われて息も絶え絶え滅びる寸前だった村落を、あっという間に要塞のような強固な防衛力を備えた村へと変貌させてしまうのである。
本当にあっという間に村をぐるりと囲う城壁を建ててしまったり、バリスタを作って城壁の上に設置したり、住む家がなかったので屋敷を建て、ボロボロだった住居は建て直し、村を守ってくれる冒険者達には武器を作り、といつもこの村に通ってくれる行商人が訪れた際には元の村の原型がまったくなくて、これなに?と呆気にとられるほどであったから、凄まじい変貌具合だったのでしょう。
ゲーム画面で建物やらがにょきにょきと生えてきてあっという間に発展して最初の様子が思い出せなくなるタワーディフェンスのそれが、全くピッタリとイメージにあったんですよねえ、なるほどなあ。
そういう意味では、ゲームのあれこれをうまいこと小説に落とし込んでいて上手いなあ、と頷いてしまいました。
しかし現実問題、村の生産を全部一手に領主となったヴァンくんが担っちゃってるので、これ鍛冶師とか大工とか職人系の人仕事なくなっちゃうんじゃないだろうか。この規模の村に、本職の職人が居るのかは疑わしいかもしれませんけれど、村がどんどん発展する過程で生産系は全部領主がやります、となったら結構面倒なことになりそう。あと、絶対近隣との価格破壊による経済的な軋轢が発生しますよね、これ。まあ真面目な内政系じゃなくあくまでタワーディフェンスゲームなのでその辺は考えなくてもいいのかもしれませんが。

元々は天才、神童として期待され、街に出て庶民とも身近に接していたせいか、領民にも人気の高かったヴァンくん。でも、貴族としては攻撃魔術の使い手としか認められていなくて、彼の適正が生産魔術だった事で親からは一気に見放されて要らない子になってしまったのでした。
幸いにも、次期当主である嫡男の兄ちゃんが苦労人でもあった事から貴族としての近視眼的な考え方をしておらず、なにより情が厚くてヴァン君のことをちゃんと弟として愛情を持ってくれていたので、本来なら監禁飼い殺しになりそうなところを、辺境の領地に追放するという形で逃してくれたんですよね。それも、ヴァン君の才能ならむしろ辺境の方が存分に力を振るえるだろう、と見込んでもくれながら。
追放を食らった身ですけれど、こうして実家に味方してくれる人がいる、というのは大きいと思いますよ。根っからの楽天家であるヴァンくんでも、家族全員が自分を見放していたら辛いものがあったでしょう。まあでも、ヴァンくんを見放していたのは本当に貴族の身内だけで、領民のみならず使用人からも人望厚かったみたいで、左遷追放扱いなのにみんなが着いて行きたがったという。ヴァンの教育係で侯爵家の内向きのこと一切を引き受けていた執事のエスパーダや、侯爵家で一番の武人だった副騎士団長のディー、といやそれ侯爵家の家臣の文武の最優ユニットじゃない? という二人がついてきた、というだけでまあ……父親の侯爵がよく許したなあ、これ。扱いが難しい二人だったので、これ幸いと行くに任せた、という可能性もありますが。
ともあれ、この家臣二人に専属メイドのティルと奴隷から買い上げた側用人のカムシン、この四人をお供に僅かな支給金のみで村に乗り込んだヴァンくん。あ、護衛の冒険者パーティーのオルトたちもそのままヴァン君にくっついて村に居着いたので、実質もう少し人数多めではあったのですけれど。
こうしてみると、味方ユニットも数少ないながら質高めのが揃っていたのが何となくわかろうというものです。
ヒロインはあとあと、婚約者としてねじ込まれてくる貴族のお姫様、ヴァンと同じく適性が攻撃魔術じゃなかったために扱いの酷かった子が現れるのですが、基本これメインは専属メイドのティルですよねえ。ただ、年齢が十歳上という……ティルの側が厳しい年齢差。いやこれ、ヴァン君が適齢期になるのを待ってたら相当に行き遅れてしまうんじゃないだろうか。ヴァン君、ティルが行き遅れちゃったら自分が貰ってあげないと、とか思ってるみたいだけれど、だいぶこれ早いうちに判断してあげないと可哀想ですよ?w



虚ろなるレガリア 2.龍と蒼く深い海の間で ★★★☆   



【虚ろなるレガリア 2.龍と蒼く深い海の間で】  三雲 岳斗/深遊 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

武器商人ギャルリー・ベリトと龍を殺す契約を結んだヤヒロは、民間軍事会社ギルドが統治する街、横浜要塞を訪れる。そこでヤヒロを待ち受けていたのは“沼の龍の巫女”姫川丹奈と、三人目の“不死者”湊久樹だった。
 そのころ彩葉の元には、欧州の大企業ギベアー社から企業コラボのオファーが届いていた。初めての企業案件に舞い上がる彩葉。だがギベアー社は日本人生存者による亡命政府“日本独立評議会”の支援者であり、彼らの目的は彩葉を日本再独立の象徴として担ぎ上げることだった。そして日本独立評議会の背後には、新たな龍の巫女と不死者の影が――!
 廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語、待望の第二巻!

龍の巫女ってみんな配信者にならんといかんのかー!? いや、珠依と最後に現れた雷龍の巫女はさすがに配信には手を出していないみたいだけれど、今の所5人現れた龍の巫女のうち3人が、と過半数越えてるもんなあ。あと三人は居るだろう巫女が配信者やってたら、リアル配信者バトルロイヤルという様相にもなるのかもしれないのか。というか、ダークでヤンデレたラスボス黒幕系ヒロインをやってる珠依が配信とかはじめたら、絵面だけでちょっと面白いんだけれど。
とまあ、浮かれてもいられない。彩葉は企業からオファー来て浮かれているようだけれど、彼女のような底辺配信者に企業案件きた理由には思いっきり政治的な理由が絡んでいたわけですからね。
無邪気に喜ぶ彩葉の警戒心の薄さを危ぶむべきか。イマイチこの娘、まだ自分の立場とか龍の巫女であるという意味を理解しきれていないところがあるんだよなあ。それだけ、この国家と企業が暗闘を繰り広げて利益と主導権を奪い合っているダーティーな世界観に馴染んでいない善良な少女、という事なんだろうけれど。
でも、その善良さは無防備ですらあるんですよね。今までの三雲さんの作品のヒロインって結構しっかりした……いやポンコツなのは多かったけれど、この手の無防備で子供っぽいヒロインはあんまり見たことがなかったので結構新鮮でもある。
ただ、今回は珠依以外にも山の龍の巫女、沼の龍の巫女、雷龍の巫女と一気に三人もの龍の巫女とその不死者(ラザルス)が登場したんですけれど、珠依も含めて全員こうある種の妄執に取り憑かれているような子たちに見えるんですよね。沼の龍の巫女姫川丹奈もクレバーで強かな食わせ者だけれどその根底に執拗さみたいなものが垣間見えるんですよね。
こういう娘たちは恐ろしいけれど、同時に危うくもある。山の龍の巫女であった三崎知流花とその不死者アマハの強いつながりと裏腹のあの儚さを目の当たりにしてしまうと、ね。
こうして龍の巫女と不死者のコンビが多く登場したことで、まだ良く分かっていなかった巫女と不死者の関係がどのように成り立っているのか、その深奥が知れた話でもあったんじゃないだろうか。
あれほどの絆と信頼、友情以上の命の共有者であった知流花とアマハですら、あんな事になってしまうほどの巫女と不死者のそれはアンバランスなんですよね。
ならば、妄執は強いほどの力となるのか。それとも、壊れやすい危うさに繋がるのか。
そんな中で彩葉のあの浮ついた善良さは、もろくもみえるんだけれど同時に揺るぎなさにも見えるんですよね。絶対の信頼、他に類を見ない妄執と比べて、彩葉とヤヒロの関係ってふわふわとして確かなものがなく、あやふやなものですらあるじゃないですか。願いはあっても信頼と呼べるほどの強固な繋がりが果たしてあるのか。
でも、不思議と二人の間の繋がりは途切れない。復讐に駆られどこへともなく走り去ってしまいそうなヤヒロの事を、彩葉が必死にしがみついて離そうとしていないかのように。それはヤヒロにとっても救いなのか。
知流花とアマハは遠くを見よう見ようとして足元を見ていられなかったのか。知流花自身が自分の求めるものに対してあやふや過ぎたのかもしれない。そしてこちらを顧みずにただただ突き進むアマハを離すまいとして、彼女は手を離してしまった結果があの形だったのか。
ストブラが何だかんだと多くの人が、メインキャラの多くが救われる話であったけれど、このレガリアはその意味では容赦がない作品になっているんじゃなかろうか。てっきり、敵味方別れていくにしろ巫女と不死者のコンビはレギュラーになっていくと思ってたのに、結構な衝撃でした。容赦なく、巫女も不死者も消えていく文字通りの龍殺しの物語。その結末は儚くも美しいものでした。
しかし、ベリト姉妹のラストの発言、こうしてみると不穏だなあ。味方だけど何を目論んでいるか分からないキャラでしたけれど、あれは最終的には彩葉も、という意味にも聞こえますしねえ。
何気に、ベリトの双子のうち明るく人懐っこいジュリエッタよりも、無表情で冷徹に見えるロゼッタの方がヒロイン度高いんだ。もしかしたらこれ、珠依よりも強力な彩葉の対抗ヒロインになっていくんじゃないの?




不死王の息子 1 ★★★☆   



【不死王の息子 1】  日向夏/大地幹 ヒーロー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「薬屋のひとりごと」日向夏の新境地、カニバリズム・コメディ。
人外×不死身少女×死亡フラグ。
ある日、クラスに転校生が…?

『これ、何の肉?』 ----現代日本、でもけっこう普通に人狼や吸血鬼など人外たちが暮らしている世界。中学受験を控えた小学六年生の少女・由紀子のクラスに転校生がやってくる。
山田不死男と名乗るその少年は、「不死王の息子」だった。
ある日、由紀子は同級生を助けるために食人鬼に襲われるが、不死男によって命を救われる。
しかし、代償として由紀子は人間ではなく人外である不死者になってしまう。こうして由紀子は人外の中でも孤高とされる不死王の同族となり、彼らと接していくことになる。
食材扱いされる不死王こと山田父。
天然すぎて浮世離れした山田母。
ぶっ飛んだ両親と弟のために日夜周囲の人々に土下座をしまくる山田姉兄。
歩くだけでひたすら死と隣り合わせになる山田不死男。
どこをどう突っ込めばいけばいいかわからない不死者たち。
-----人外の中でも孤高とされる不死王の一族.彼らと接することで、小学六年生の日高由紀子のメンタルは鋼のように鍛えられていく。
食らえば不死身になれるという不死者の血肉を狙う食人鬼たちが、由紀子に近づいてくる。
明るく元気に死にまくる不死男との不条理かつスプラッタな日々。そして、無駄に明るい不死男にはとある秘密があるようで――。
真面目な普通の女の子に再び平穏な日常は戻ってくるのだろうか?
これは不死身になった女の子と不死王の息子が様々な死亡フラグにぶちあたるお話である。

【薬屋のひとりごと】の日向夏の新作、と言ってもかなり前にウェブ連載していて、既に完結している作品なんですよね。新境地って言っていいんだろうか。でも、この人の作品の中でもかなり好きな物語なんですよね。
まだ小学校6年生の砌で不死者になってしまった由紀子。不死者と言ってもこの時点で成長が止まってしまうタイプじゃなくて、本人の最適な肉体年齢までは普通に成長していくタイプなので永遠に幼女、というわけではないので悪しからず。
もっとも、この由紀子はとても幼女というメンタルじゃないんですけどね。確かにまだ子供っぽいところはあるけれど、常に冷めていてどこか達観したような大人びた目線で周りを見ているお子様である。表紙絵のあのクールな表情は伊達ではないんですよね。
なので、目の前で18禁なスプラッターな光景が巻き起こっても動じない。いや感情がないわけじゃなく、結構慌てたりもするのだけれど、それでもその辺の大人なんかよりもよっぽど冷静で頼もしい少女なのである。小学校6年生なのに将来を鑑みて中学受験にも真剣に向き合ってるし。
そんな彼女が色々あって不死者の仲間入りをしてしまった現状を、すんなりと受け入れてしまっているのは面白いというべきか。いや、これはまだ実感がないというべきか。
不死者となった弊害で、やたらとお腹が空いて不死男と二人バキュームみたいにご飯を食べるのに忙しい日々ですし。
そう、色々あって成り行きか自分を助けてくれた不死男の面倒というか介護、お世話をするはめになった由紀子。故あって頭の中がお花畑になっている不死男は、それこそ幼児が転ぶような頻度で簡単に死んでしまうし、トラブルを引き起こすのでどうしても誰かがつきっきりで面倒を見ておかないと、わりと酷いことになってしまうのだ。まあ由紀子が見ていてもたいてい酷いことになるのだけれど、それでも不死男の兄姉に土下座で頼まれたからといって、何だかんだと世話を焼く由紀子はクール系だけど情の厚い面倒見の良いタイプなんですよね。怪物に襲われて死ぬはめになった際も、アホなクラスメイトをとっさに助けてしまったからですし。

この世界は、人外の怪物たちが普通に人権を持ち戸籍を持ち、人の世界の中で暮らしている世界。不死王と呼ばれた偉大なる不死者の王も、今は一般家庭の主として田舎の一軒家、由紀子の隣の家(といっても田舎なので広い田んぼを隔てた向こう)に越してきた身。その子供たちも、今は社会人やニートとして人の社会の中に馴染んでいる。でも、結構兄姉は立場ある身ですし、人外社会の中でも企業人や研究者として一定以上の身分なんですがね。それでも、父や母、そして不死男が巻き起こす惨事のために土下座して回る日々である。世が世なら王族なのに、土下座姿に美しさすら感じるほどしまくっている、というのはご苦労さまとしか言いようがない。まあ実際、苦労性ですよね、兄アヒムと姉オリガは相当の苦労人である。めっちゃイイ人なんですけどねえ。
この二人がいなかったら、いくら不死男が捨て犬みたいな目でまとわりついてきても、由紀子ももうちょっとは邪険にしてたかもしれない。
と、人外と人間が平和な社会を築いている、ように見える世界だけれど、由紀子が死ぬ羽目になったようにその平和から逸脱してしまった人外も存在する。人食いと呼ばれる化け物たち。
由紀子は、不死者となってしまった以上、不死王の眷属となってしまった以上、人を食らうもの……そして不死王の肉を食い本物の不死者になろうとするモノたちとのトラブルに必然的に巻き込まれることになる。
それ以上に、不死男と当たり前に学校に通いながら今まで通り家族と過ごし、友達と遊び、中学受験のために勉強する由紀子は、徐々に自分が人間ではなくなってしまった事実と本当の意味で向き合うことになっていく。
いずれ、母や兄と、同い年の友達たちと、流れていく時間がすれ違っていく現実との対面。その時、彼女を支えるものが何になるか。既に、お母さんは娘の命が助かった代償を察していて、覚悟を決めてるんですよねえ。それでいて、表向きには何も変わらず娘を慈しみ、不死王の一家と家族ぐるみで心からお隣さんとして付き合うあのお母さんの肝っ玉というか、冷静さと面倒見の良さはさすが由紀子の母親だなあ、と思わせてくれる人柄なんですよね。

ある理由から頭がお花畑になってしまって、年齢よりも幼い無邪気な顔を晒しながら小動物のように懐く不死男を、仕方無しに世話しながらも何だかんだと絆されていく由紀子。無邪気で頭がパッパラしているけれど無神経ではなく、常に由紀子を気遣い、どこか大きな視座から人という種を慈しむかのような瞬間を垣間見せる謎多き少年を、少女はとても近くから見守ることになる。
それが、長い永い終わりのない日々の始まりであったと、知らないままに。いや、聡明な彼女は薄っすらと承知していたのかもしれないけれど。
でも、彼が自分にとってどういう存在になっていくのかは、察するにはまだ彼女は幾ら大人びていたとしても12歳の少女に過ぎないのだ。
これはそんな少女が、永く生きている大人を横目に見ながら、不死の少年の手を引っ張りながら、或いは引かれながら、自身も大人になっていく物語でもあるのだろう。

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 3 ★★★☆   



【時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 3】  燦々SUN/ももこ 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

アーリャさんとお家デート!?ロシアンJKとの青春ラブコメ、第3弾!

討論会で勝利したことで一躍、クラスメート達からの称賛を浴びるアーリャ&政近ペア。
沙也加の思いを背負い、二人は会長選に向け決意を新たにする!
まずは目の前の期末試験に向け勉強に励む政近であったが、消し去れぬ周防家との因縁が思わぬ形で現れ、政近は体調を崩してしまって――
「有希さんに頼まれたの。あなたを看病してあげて欲しいって」「……」【嘘だけど】(うぐふっ!)
心配でいてもたってもいられなくなったアーリャさんが政近の自宅に押しかけてきて!?
不器用で献身的な"孤高のお姫様"の介抱はニヤニヤ必至!
大人気ロシアンJKとの青春ラブコメディ第3弾。
あれ? これってもしかして有希の方で爆弾の導火線に火がついてません?
冒頭で祖父から家を出た兄に負けないようにと叱咤される有希の様子が描かれていたのだけれど、うーむ。そりゃ、有希だって周防家の次期後継としての責任を一身に負わせられてしんどくないわけがないんですよね。いや、彼女の性格からして責任を負うだけなら動じずにむしろやる気見せてやってやらい、と奮起するくらいなんでしょうけれど、そこに兄を罵倒しながら負けることは許さん、とかメンツだかプライドだから余計でつまらないこと言われたら鬱々とした気分にもなるでしょう。
有希としては、敬愛する兄と真っ向から勝負することそのものは楽しいくらいの事だと思うんですけどね、正々堂々の勝負なら胸張って戦えるのにあんな事言われたんじゃあ、生ゴミぶちまけられるような感じじゃないですか。
そんでもって、母の微妙な態度。
政近ってあれ祖父よりもむしろ母親の方に負の感情を抱いてるんですね。怒り、失望、憎しみ、ちょっと意外なほど激しいネガティブな感情を母親に向けている姿は、むしろ政近の母親への執着が伺える。何の期待もしていない相手にそんな強い感情を抱くタイプには見えないんですよね、この主人公。母親の方はなにやら政近に対して、えらく罪悪感と言うか物言いたげな様子なのが余計にこの親子が拗れきっている様子が窺えてしまう。
そんでもって、有希の方もこの母親に全然心許している様子がないんですよね。祖父に対するのと同じ外面の仮面を被って接している。母親の方は兄と今も仲良く一緒に過ごしていることを知っているのに、だ。
有希にとって心許せる相手は兄と幼馴染にして側近である綾乃だけなのだろう。兄に関しては一応今は生徒会長選挙での敵陣営だ。祖父のお達しがどれほど馬鹿らしいと思っていようと、それに逆らうことが出来ない以上、兄とはどこかで線を引かなくてはならない。まあプライベートでは今も一緒に遊んでるんだけれど、やっぱり弱みは見せられないんですよね、今の関係だと。
どれほど勝負が楽しくても、兄が絶対的な味方じゃないというのはどこかでしんどさはあるものさ。
有希のメンタルはとてつもなく強い、それこそ兄よりもよっぽど強靭だろう。耐えて我慢する耐久型じゃなくて、物事を楽しみ難局にワクワクできるしなやかなタイプの強靭さだ。
そんな彼女でも、今の実家と親と兄との板挟みの状況が全然辛くともなんともないってわけじゃない、しんどいと感じているのは冒頭のシーンで明かされてしまったんですよねえ。
これ、いつかは限界が来るぞ。
政近からすると、有希への信頼は絶大なんですよね。妹の優秀さ柔軟さタフネスさを誰よりも理解し評価し認めている。だからこそ、実家の後継を彼女に投げたし、その判断は間違っていないのでしょう。有希はまず完璧に兄から継いだ役割を果たすに違いない。
それはほぼ真実であり事実であり、だからこそ兄は妹には限界なんてないと思ってるんじゃないだろうか。その信頼がいつか致命的な破綻をもたらしそうで、なんだかちょっと怖い。
今はアーニャに掛かりっきりで、ロシア語でポロポロと本心を暴露して政近のハートにクリティカルを与え続けてるアーニャに夢中になるのは、彼女には真に手助けが必要であると同時に助けたくなる少女であるから、当然でしょう。彼女に味方して妹と相対するのは妹の望みでもある。妹は兄と戦いたがっているし、兄の本気を味わいたいとも思っている。アーニャの事も応援しているし、二人のイチャイチャを妹としても楽しんでも居る。
それでも、どこかで兄は妹の事をもう少し、ほんのもう少しでも気にかけておいた方がいいんじゃないだろうか。
今回のアーニャへの有希の仕掛けは、ちょっと有希にしては強引だった気がする。ダーティーに攻めるにしても、若干その手法やら詰めに雑さが見えたのは気にせいだろうか。ちょっとずつ、妹から余裕が削り取られているように見えるのは、気のせいだろうか。

今回は一人暮らしのところに風邪引いて寝込んでしまった政近を、アーニャが看護するというアーニャに助けられる展開があるけれど、でも概ねまだアーニャは政近に支えられる側なんですよね。アーニャは忸怩たる思いを抱いているけれど、アーニャの側から政近を支えることはまだまだ出来かねている現状だ。今はそれでいいと思う。でも、いずれ政近の側が崩れた場合、アーニャが支えられるのか。周防家の内部で起こっている軋みは徐々にその大きさを増しているようにも見える中、いざその時が来たときこそアーニャの真価が問われるのだろう。それまでに、もっとイチャイチャしてラブラブ度をあげておくべきなんでしょう。つまり、もっと遠慮なくイチャイチャするのよ?
なんか生徒会長と副会長の方が積極的にイチャイチャしてますが、二人もアテられるがいいのさ。
しかし、あれだけロシア語では甘えきったセリフ吐きまくってるんだから、アーニャの方はちゃんと自覚して政近意識してるんですよねえ。これで自覚ないのにあれだけ甘えまくった本国語つぶやいてたとしたら驚きますよ?

しかし、有希は妹だから本当の意味で恋敵にはならないですけれど、綾乃はどうなんだ? こっちは本物の幼馴染なんだが、このプロの従者はそのあたり本音ではどう思ってるんでしょうね。気になる所ではある。







転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します! 〜私の日本刀、女神に祝福されて大変なことになってませんか!?〜 ★★★☆   



【転生令嬢カテナは異世界で憧れの刀匠を目指します! 〜私の日本刀、女神に祝福されて大変なことになってませんか!?〜】  鴉ぴえろ/JUNA オーバーラップノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

日本人だった前世の記憶を取り戻した男爵令嬢カテナ・アイアンウィル。
彼女は自分が「大好きな日本刀を作りたい」という未練を残して命を落としたことを思い出す。
そこで、アイアンウィル家が代々鍛冶師を育んできたと知ったカテナは、悲願だった日本刀づくりができる! と刀匠になる道へ進むことに。
さっそく工房に弟子入りして鍛冶を学び、地道に刀づくりに励むこと数年――ついに日本刀が完成。
その瞬間カテナの前に“女神様”が降臨して!?
異世界に存在しない日本刀が女神様に気に入られまさかの神器に認定。
さらに、神子として膨大な魔力を授かり、この世界を脅かす“魔神”に対抗するお役目も受けてしまい……?
「私、ただ日本刀が作りたかっただけなのに!」
平穏な刀匠ライフを守るため――邪魔する敵や降りかかる理不尽は、最強の魔力&日本刀で斬り伏せます!!
  刀匠令嬢のチートな異世界ファンタジー、開幕!
人間、やりたい事だけをやっていられる、なんてなかなか出来ないんですよねえ。
念願の日本刀を作り上げたカテナは、でもその日本刀が現代の地上では誕生しないはずだった神器となってしまったために女神によって神子に選ばれてしまう羽目に。
これ女神様が面倒を運んできたようにも見えるんだけれど、実際は戦略武器を創り出せるウーマンになってしまったカテナを庇護するためだったんですよね。国家権力に対しては神の権威による庇護を、そして自分たちを脅かす武器を作る存在として命を狙ってくるだろう魔族に対しては、自己防衛のための武力を備えさせるために。女神様によって神子に任じられていなかったら、国の管理下に置かれるか、魔族によって家族ともども命を脅かされるか、いずれにしても自由に刀を打つなんてどころじゃなかったのでしょう。
尤も、その思うがままに刀を打つための「自由」を手に入れるために、カテナは相当の努力を求められることになるのですが。王家相手の政治的な立ち回りに、身を守るための鍛錬、刀を工芸品としてではなく武器として広めるため、つまり商材として認知させるための経営や商売方面のアプローチ、量産品作成のための研究、開発、工場や人員の確保などなど。
自由を掴むために、とてつもない不自由を得ることになってしまう。でも、それらを全部クリアしないと自由に刀を打つための環境を得られないというジレンマ。
「私、ただ日本刀が作りたかっただけなのに!」
というのは、カテナの魂の叫びと言えるでしょう。
めちゃめちゃ努力家なんですけどね、カテナ。日本刀の製作だって魔法を補助に使っての錬鉄など手探りで何年も掛けて成し遂げたように一足飛びには出来ていない。実際に刀を使う方の修練だって女神様の端末にそれこそ地獄の鍛錬を年単位で受け続けて、それこそ叩き上げで鍛え上げてきたが故の腕前ですからね。でも、その分刀作りに打ち込める時間は削られているわけですから、もどかしいでしょうなあ。他の煩わしいことは別にやりたくてやっているわけじゃないんですから。でもやりたくないことをやらないとやりたいことが出来ない、というのは現実の世界でも常に付き纏う世知辛さなんですよねえ。
尤も、カテナの場合全部彼女がやる羽目になっているから大変な労力が必要となってしまっているわけで、やりたい事以外は全部他人に投げてしまう、というやり方もあるんでしょうけどね。丸投げしてしまうのとは違って、自分のやりたい事だけをひたすらやれる環境を整える能力を持っている人ってのが稀に居るんだよなあ。
そういう意味ではカテナは決して器用な方ではないのでしょう。女神様に与えられた神子としての権威、というのは使いようによったらもっと絶大な効果を発揮したと思うんですよね。この辺、お母さんが穏便ながら結構上手いこと娘が得た権威を利用して彼女の自由を確保するためにあれこれやってくれていたのですけれど、まああまりどこにも角が立たないような立ち回りでしたから穏便穏当であったのは間違いなく。
やろうと思えば、あの王子……社会的に潰す事すら女神様の物言いからして出来る権威があったっぽいような言い方でしたし。関わらない、という方向性は穏当な方でありましょう。でも、国に留まる以上は関わらないなんて事は出来ないんだよなあ、カテナの持つ有用性からしたら。絶対に、王家は彼女を無視出来ない。統治者である以上、それは絶対に。
でも、カテナが得た権威を一番威として感じていないのはカテナ自身なんだろうなあ。彼女にとって神というのは決して崇め奉るものではないんですよね。それは自分の刀に宿った女神様の端末ミニリル様との気安い関係からも明らかで、凄い存在としての敬意はあっても信仰はなく、端末とは言え顔を見ながら話せて意思の疎通が出来る。だから、上に見るのではなくカテナは女神であろうとどこか対等の友人のように接する部分があるんですよね。手の届かない距離の在る関係ではなく、側にいて笑いあえてしまう存在だからこそ、カテナは女神のために刀を打ち、刀を振るう理由ができた。
ただ好きだから、夢だったからという理由だけじゃない、刀を打つための強い動機が。

それにしても、別の作品の主人公の弟もそうでしたけれど、主人公の女の子に反発敵対する側の男の子、ただの我儘だったり傲慢、無知無能というわけじゃなく、ちゃんと彼らなりの理由があり信念あっての態度でもあるんですよね。ただ何も考えていないアホの類、頭空っぽのボンボンではなく。
もっとも、理由や信念があったからといって態度が褒められるわけじゃないのだけれど。彼なりの必要性があったとしても、頭の悪いやり方だなあとは思ってしまいますよね。あるいは考え違いをしているとも、浅慮だったり思考の硬直化だったり視野狭窄だったり。救いようがないわけじゃない分、余計にたちが悪い、とも言えなくもないんじゃないでしょうか。
まあこの王子はバカであっても聞く耳持たないほど愚かではないんだけれど、聞くための耳が遠いんだよなあw まあ一度届けば物分りは悪くないとは思うのだけれど、やっぱり相手するのは面倒ですよね。ただでさえ他でリソース喰われているのにw







百花宮のお掃除係 3 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。 ★★★☆   



【百花宮のお掃除係 3 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。】  黒辺 あゆみ/しのとうこ カドカワBOOKS

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

お忍び旅行で後宮脱出! 食の大切さを説き回る!

明賢のお忍び旅行の供に任命された雨妹。容体の悪い妹の見舞いということで向かうのは、海辺の街! 今世初めての海に期待を募らせ出立するも、道中見過ごせない事態に次々と遭遇し……雨妹の回診劇が始まる!?

表紙絵の雨妹の格好、てっきりノースリーブで中華風の世界では珍しいなあ、しかも脇が甘くて随分とセクシーな衣装になっているけれど大丈夫なのか、と思ったら単に肌の色に見えただけでちゃんと長袖の服でした。まあオシャレはするにしても、そんな大胆な格好はお兄ちゃんが許しませんか。
明賢太子のご指名で、お忍びの旅行のお供に付き従うことになった雨妹であるけれど、その旅路というとお付きの女官じゃなくてむしろ主賓か、というくらい雨妹メインで観光なんですよね。彼女が興味持ったところに連れて行ってあげて、食べ物もあれこれと片っ端から露店などで買って食べさせてあげて、と。
いやこれ、太子さま、かわいい妹ちゃんを遊びに連れて行ってあげたかっただけじゃないの?
いいんだろうかこれ、と思いながら食の魅力にあっさり負けて餌付けされてまわっている雨妹も雨妹だけど。この娘、美味しいもの甘いものを食べさせていたら実にいい顔になるから、太子さまってそれを楽しみにしてる節もあるんだよなあ。
こうして見ていると二人は兄妹ではあっても年の近いそれじゃなくて、大人の兄と子供の妹という年の離れた兄妹感が凄くあるんですよねえ。それも兄の方は社会人で奥さんもいるような年嵩って感じで。実際に妃も幾人もいるのだから、奥さん居るというのも間違っていないのですけど。
しかし太子さまはいつまで雨妹にもう妹だと知っていると告げずにいるつもりなんだろう。雨妹の方もこれもう気づかれてるよなあ、と薄々察しているけれど太子側が何も言わないから触れないようにしているくらいですからねえ。
まあ、雨妹が実は公主だと公式に明言すると皇太后含めて面倒なことになるので真実を伏せているのは良くわかるんですが、もう本人にはお兄ちゃんだよー、と言ってもいいんじゃないかなと思うくらいなんですけどねえ。とはいえ、雨妹も太子にお兄ちゃんだよー、とか告白されても困るっちゃ困るのか。だとしたら、今みたいに暗黙の了解にしておくのが一番いいのかもしれないけれど。

さても、一応太子様も雨妹とただただ遊びに連れてきたわけではなく、一応その医療への知識を頼りにして、別家に嫁いだ妹へのお見舞いに連れてきたんですね。
これまで雨妹が関わってきた医療案件は、難病や大病など本物の医者でないと取り組めないものではなく、元看護師として関わるには基礎的でもあるだろう生活に根ざした健康障害が多かったんですよね。今回は熱中症に、件の嫁いだ妹の播玉さまが罹っていたのは過度のダイエットに端を発した味覚障害。
というわけで、雨妹は現地に居残って一ヶ月くらいを目処に播玉に無理のないダイエット方法を指導することに。勿論、お付きは宦官の立彬改め、武官の立勇が務めることに。
いや、結構あっさりと立彬が実は宦官じゃないってバラしちゃうんですね。もう最近は太子の側近というよりも雨妹のお目付け役になっちゃってる立くんですが、もうあんまり不満とかはなさそうなんですよね。今回なんぞ宮廷に戻る太子と離れて雨妹を守ることになったのですけれど、当たり前みたいに付き添ってくれてますし。ほんと最近、いいコンビになっちゃってますし。いちゃもんつけてきた黄家の副料理長を口八町で追い詰めるときの二人のコンビネーションと来たら、息ピッタリじゃないですか。
玉さまのダイエット指導でも、運動面では色々と助言もくれてますし。無くてはならない人になっちゃってるなあ。
しかし、後宮ウォッチャーなのについに後宮出たまんまになっちゃったなあ、雨妹ってば。
そして、玉さまが過度のダイエットに走る原因となってしまったプレッシャーの要因、黄家の内部の問題は未だ解決せずそのまま話は次巻へ。おお、初めての上下巻構成だ。






軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。2 〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜 ★★★★   



【軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。2 〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜】  冬瀬/タムラ ヨウ 一迅社ノベルス

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

エリート軍人ラゼがセントリオール皇立魔法学園に潜入してから4ヵ月。全生徒の能力を披露するトーナメント戦『バトルフェスタ』の開催が近づく中、乙女ゲームのメインキャラである1年生は害獣を観察する特別授業を受けていた。
この友人カーナの破滅イベントを回避するために、ラゼは暴走する彼女のフォローや、暴れ出す予定の害獣を密かに無力化してきた。対策は完璧だった! でも、より危険な魔物が現れて、攻略対象のアディス目掛けて襲いかかる!
しかも、シナリオの強制力に苦戦するラゼのもとに、帝国から刺客が送られて――!?

前世知識と軍人としての技能をフル活用しても、このミッションは難しすぎませんか?
軍人ラゼの異世界転生ラブコメティ第二弾♪
大事件や甚大なトラブルとなりそうな出来事を、見事に未然に防いでいくラゼ。もうプロのお仕事としかいいようがない。
平和な生活から程遠い非日常の中に居た軍人が、学生生活なんて送れば慣れない環境にむしろトラブルの発端になる、トラブルメーカーとなっていくのが当たり前だし、こういう非日常に生きる人間が学生に、という作品では概ね騒ぎを起こすものなんだけれど、ラゼは本当に優秀。
生きた害獣が学内に持ち込まれた件といい、カーナの作ったお菓子に毒が仕込まれていた件といい、表に出たら大騒ぎじゃ済まないところを、ラゼは周囲の一般学生達に殆ど知られないうちに処理してしまっていますからねえ。潜入しての護衛官としてはほぼパーフェクトな働きなんじゃないだろうか。
これ、理事長たちが頼りにしてしまうのも仕方ないですよ。
幼少の頃から軍の一員として戦っていたラゼは、本来なら戦場しか知らない少年兵のたぐいと言っても過言ではありませんし、その戦いようは自らが傷つくのも厭わない激しいもので、大人たちがその将来を危惧したのも当然なんですよね。それこそ、戦闘マシーンとなっていてもおかしくない、精神の均衡を崩しても不思議ではない、そんな環境でずっと過ごしてきた彼女に平和な世界を体験させることで、同世代の少年少女たちと過ごさせることで、在る種のリハビリ効果を勘案したにも関わらず、ラゼと来たら平和に戸惑うどころか誰から見ても優等生で学習意欲も高く素直に学生生活を楽しんでいて、同世代の友人たちもキチンと作っている。一方で、軍人としての任務も忘れておらずいくつものトラブルを未然に防ぎ、防諜任務も見事にこなして国家の将来を担う子供達の安全を守ってくれている。公私の切り替えもしっかりしていて暴走もせず痒い所に手が届く仕事っぷりで精神的に危ういどころか非常に高いバランスを誇っているのである。そりゃ、便利にも思いますよ。道具ではないと戒めようとも、彼女がとてつもなく使い勝手が良いことは事実ですし、彼女自身がそう心がけてもいるわけですから。
しかし、ラゼは軍人であるけれど今は生徒でもある。理事長や先生方からすると悩みどころでもあるんでしょうね。大人と変わらない頼もしさだけれど、事実として彼女はまだ子供。本来なら大人たちが庇護する側の一人なのですから。少なくとも、ラゼをこの学校に通わせることを命じた大人たちは彼女に真っ当な子供であって欲しいと願ってそうしたわけですしねえ。
なまじ、ラゼはちゃんと子供として生徒としても振る舞えているから、いざというとき先生たちはラゼをどちらで扱うか、迷ってしまうんじゃないだろうか。まあ宰相閣下や王弟陛下はそのへん本当にいざとなったら迷わないだろう傑物なんだろうけれど。それに、ラゼ自身がそのへんの切り替え一番ちゃんとしてそうでもあるんですよね。
長期休暇で本当に休むわけなく、原隊復帰……元いた部隊に戻って一時的ではあるけれど隊長として復帰した際の、ラゼの切り替わりっぷりはまた見事でありました。スイッチが入る、みたいな明確な変化じゃなくて、自然にスッと少女としての柔さが抜けて軍人としてのキリッとした背筋から指先まで芯の入った振る舞いになってるんですよね。自分よりも年上の兵士たち、それも歴戦の魔獣殺したちを率いる隊長としての凛々しい姿に戻るのである。これがまた格好良いんだ。宰相閣下に毒物混入事件の詳細と調査、対処対策について報告するラゼはまさに出来る仕事人という感じで、軍服姿の彼女はもう眼福でありました。
結局、どうしたってラゼはもう大人として生きている、とも言えるんですよね。そんな彼女と比べると学園の子供達は優秀なんだけれどその優秀さを糧として実際の社会で生きた経験をまだ持っていない。アディスくんもその生まれから非常に過酷な人生を送ってきたといえるんだけれど、その過酷な人生は誰かに常に守られ続けた人生であって、自分の力で生き抜いてこれたわけじゃない。だからこそ、彼は強さを求めているんだろうけれどいまだ育っている最中、手に入れようとしている強さをどう振るうべきなのか、どう使えば良いのか、本当にわかっているとは言えないのだろう。それを知るのはやはり学生という身分を卒業してからに事になるのだろう。
その立ち位置の差が、アディスをしてラゼの正体を知らないまま彼女への……なんていうんだろう、劣等感敗北感、とはまた違う、相手を絶対上位と認めた上で負けたくないという意識を抱いているように見える。それはライバル意識なのか、それとも彼女を無意識に目標に見立てているのか。
若干空回りしている、というかまだまだラゼにライバル的存在として眼中にない状態なのが可哀想というか、かわいいというか。ラゼからすると学生相手に対抗意識を燃やすのは無いわーって話だろうし、彼女がそういう対象として見るのは正規の騎士からでしょうし。いずれにしても、学生であるうちはなかなか難しいだろうなあ、頑張れ男の子。いや、壁ドンはなかなか良かったぞw ああいう状況になると、色々差っ引いてただの男と女になってしまいますからね。まあ口説くためにやったわけじゃないし、ラゼの好感度があがるシチュエーションでもなかったわけですけれど。
印象は残りますからねえw
どうにも謀略を仕掛けてきている相手側にも転生者がいるような状況が垣間見え、他の生徒たちが気づかない陰で暗闘が繰り広げられる。結構苛烈な攻撃をラゼは防いではいるけれど予想以上に怪我を負うことが多くて、心配ですよね。戦場でも結構負傷前提で戦ってるスタイルみたいだけれど、それでいつまでバレずにやれるのか。いずれバレるにしても友人たちをあまり心配させないでほしいなあ。


転生したらスライムだった件 19 ★★★★   



【転生したらスライムだった件 19】  伏瀬/みっつばー GCノベルズ

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

勇者、胎動――

ミカエルの野望を阻止するため、
各所で激闘を繰り広げるリムルたちだったが、
フェルドウェイの策略により魔王レオンを奪われてしまう。
ミカエルの次の狙いは、宿主であったルドラの魂を持つ転移者の勇者マサユキ。
迎え撃つは、その場に居合わせた聖騎士ヒナタと原初のブラン、そして灼熱竜のヴェルグリンド。
そしてミカエルも自ら動き出し、状況はさらに混迷を深めていく……。
久々のヒナタ登場。面白いことに、リムルってヒナタ相手だけ妙に助平根性丸出しにするんですよね。助平根性とまで言ってしまうのは可哀想か。でも、スライムになって中性となり前世の男としての欲望なんかかなり削られてしまって、まあキャバクラで女の人達に囲まれてウハウハしてるくらいのアレはあるんだけれど、特定の個人に対しては殆どそういった男性的な側面を見せなくなっているのに、ヒナタに関してだけは妙に男っ気出すんですよね。
わりと真面目にリムルってヒナタのこと好きなんだろうか。シオンとシュナ相手だと大切にはしているんだけれど、ヒナタ相手みたいな態度は見せないんですよね。ヒナタも最近はけっこう満更じゃない様子も見せているのだけれど、生憎と仲が進展するようなゆっくりと話をするような余裕もないのが残念です。今回も、ミカエル陣営との戦いで折角のチャンスが不意になっちゃいましたからねえ。
しかしそれでも、ヒナタとあとクロエの二人は魔国の外の人間では段違いにヒロイン度高いですなあ。
とか思ってたら、ヒナタさんがマサユキのラッキースケベの餌食に。リムル居なくてよかったんじゃないだろうか。リムル居たらこれ結構マジにご立腹しそう。

これまで魔王に覚醒して以降、おおよそ危なげなく勝ってきたリムルだけれど、このミカエル陣営との戦いではついに今のリムルでは太刀打ち出来ない相手がミカエルとフェルドウェイと二人も登場して緊迫感が募ることに。
フェルドウェイってそんなに強かったんだ。相手がどんなスキルを持っていようと即座に解析してくれるシエルさんがいつも付いていてくれたので、リムルの戦いには危なげというものが殆どなかったのだけれど、フェルドウェイ戦ではそのシエルさんがすぐに答えを出せなくて一体フェルドウェイが何をシているのか分からなかったんですよね。相手の強さの要因が未知、というのはなるほど怖い。それだけ、シエルさんが今までどれだけ頼りになっていたか、という証左でもあるのでしょうけれど。
リムルの強さというのはイコール、シエルさん、とも言えるんですよね。これは誰よりもリムルが自認している所だとも思うのだけれど。それこそ大賢者の時代からずっと一緒に一心同体でやってきたわけですからねえ。シエルさんがどうにもならないなら、リムルだってどうにもならない、と。

でも、そういう絶体絶命のピンチ、リムルの力が及ばなかった、届かなかった、ステージが違った、という立ち位置だからこそ映える展開もあるわけで。
ミカエル戦ではまさにそれが見られたんですよね。クロエに助けて貰いつつも完全にミカエルに圧倒されていたリムルが、シエルさんの解析によっていつの間にか、それこそスライムみたいに音もなくぬるっと、ミカエルが気が付かないうちに相手の立っているステージにまで這い上がっていた。ずっと格下と見積もっていたリムルが、気がつけばあっという間に自分と同等のステージに立っていたと気づいたときのミカエルの愕然とした姿は、なかなかのカタルシスでありました。
さすシエルさん、である。
そう、それこそスキル「大賢者」のときからリムルと二人三脚でやってきたんですよ。スキル単体のミカエルに負けるわけにはいかないじゃないですか。
当然ラスボスだと思っていたミカエルがこの段階で脱落するとは思っていなかったので流石に予想外ではあったのですけれど、リムルとシエルさんのコンビ相手にミカエル一体という組み合わせなら、それこそ勝って然るべきだったのかもしれません。
でもそうするとラスボスは誰になるんだろう、順当に行くとフェルドウェイなんだけれどそれはそれで順当すぎる気もするし。

リムルがミカエルと戦う一方で、フェルドウェイたちに狙われたマサユキがこちらはこちらで輝く輝く。と言っても、これ見せ場は全部ルドラが持っていきましたよね。ルドラに関しては転生による摩耗とミカエルに喰われてしまった状態しか今まで見せていなかったので、勇者ルドラの真のかっこよさを見せてやるぜ、とばかりの見せ場でしたからねえ。これマサユキくん、ヴェルグリンドはこのルドラに惚れているのだからハードル高いよなあ。ただ、自己評価は高くないと言うか客観的なんだけれど、かといって劣等感抱いたりしないあたりがマサユキのいいところなんでしょうね。相当にご都合主義のスキルの所有者にも関わらず、それに振り回されず、効果を発揮しない状態でも身体張れるんだから、十分格好良いです。

しかし、カガリとティアが生き残っていたのはびっくりした。ユウキとラプラス、頑張ったのかー。



 
1月27日

(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


電撃コミックスNEXT
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W

1月26日

(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


角川コミックス・エース
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W
1月25日

(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス
Amazon Kindle B☆W


(オーバーラップノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MF文庫J)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Amazon Kindle B☆W


(MFブックス)
Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ダッシュエックス文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon KindleB☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガルドコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月21日

(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスJOKER)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFC)
Amazon Kindle B☆W


(MFコミックス アライブシリーズ)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(イブニングKC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


(モーニング KC)
Amazon Kindle B☆W


Amazon KindleB☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月20日

(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見ファンタジア文庫)
Amazon Kindle B☆W


(チャンピオンREDコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングチャンピオン烈コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(単行本コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングマガジン サード)
Amazon Kindle B☆W

1月19日

(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(サンデーGXコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(裏少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

1月18日

(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ガガガブックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


1月17日

(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(電撃の新文芸)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(KCデラックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(講談社コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月15日

(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スターノベル)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(富士見L文庫)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(コロナ・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


1月14日

(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GA文庫)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W


(GAノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月12日

(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ゲッサン少年サンデーコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(アース・スター コミックス) Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Kindle B☆W


(アクションコミックス(月刊アクション))
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

1月10日

Amazon Kindle B☆W

1月8日

(BLADEコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(電撃文庫)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(カドカワBOOKS)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(TOブックス)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(ドラゴンコミックスエイジ)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(電撃コミックスNEXT)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス)
Amazon Kindle B☆W

1月7日

(少年チャンピオン・コミックス)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(good!アフタヌーン)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(マガジンポケット)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(シリウスKC)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


(ガンガンコミックスUP!)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W


(SQEXノベル)
Amazon Kindle B☆W

1月6日

(KCデラックス)
Amazon


(KCデラックス)
Amazon


(ヤンマガKCスペシャル)
Amazon Kindle B☆W

1月5日

(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヒーローズコミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W


Kindle B☆W

1月4日

(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(ヤングジャンプコミックス)
Amazon Kindle B☆W

12月28日

(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(GCノベルズ)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(HJ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(講談社ラノベ文庫)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(一迅社ノベルス)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(角川コミックス・エース)
Amazon Kindle B☆W


(ビッグ コミックス)
Amazon Kindle B☆W


Amazon Kindle B☆W

12月27日

(ヒーロー文庫)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(YKコミックス)
Amazon Kindle B☆W


(B's-LOG COMICS)
Amazon Kindle B☆W

Categories
最新コメント

Archives
記事検索
タグ絞り込み検索