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★★★★

転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート ★★★★   



【転生魔王の大誤算 4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート】  あわむら赤光/kakao GA文庫

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憤怒の魔将が挑む、絶対に怒ってはいけない侵略作戦!?

魔将たちの心を見事にまとめ上げ、魔王としての器にさらに磨きがかかるケンゴー。
次なる作戦にサ藤、マモ代、ベル原を指名、三カ国を同時に無血攻略させるゲームを立案する。
マモ代やベル原が自信ありげなのとは対照的に、難題に苦悩するサ藤。
「バカな……殺すだけで減点だと!?」
憤怒の魔将だけどキレるの禁止!
存在意義を真っ向否定されるルールに、七転八倒するサ藤を見かねて、ケンゴーが差し伸べたとある救済策とは――サ藤のことを見てるだけ!?
「はい、ありがたき幸せです!!」
わずかなきっかけで劇的な急成長をさせる嬉しい誤算が止まらない!
愛する部下を熱く育てる最強名君の爽快サクセスストーリー第4弾!!
こういう勘違いで主人公が過剰に持ち上げられるように見える作品って、その勘違いや誤解ってなかなか解消されないんですよね。場合によってはすれ違ったまま最後まで行ってしまう。
相互理解が致命的に破綻したまま、主人公の本当の気持ちや価値観、素の顔なんて知らないまま、見向きもしないまま、理想を押し付けることで主人公は他人からの理想を演じるハメになる。
或いは、主人公が成長してそうした一方的な理想に追いついていく、という展開もあるのだけれど、本質的にそういった立場に立たされている主人公って孤独なんですよね。
その点、本作においては幼馴染のルシ子がケンゴーの最大の理解者で、彼が本当はヘタレチキンだと知った上で支えてくれている、ヘタレチキンだけれど彼の一番芯の部分にある強さや勇気や、履き違えていない優しさの持ち主だというのをちゃんとわかってくれている人が側にいるだけで、最初から随分と違ってはいたんですよ。
最初から、ケンゴーは孤独ではなかったわけだ。
それどころか、前巻では嫉妬の魔将レヴィ山くんが、ケンゴーのヘタレチキンのことはよくわかっていないものの、ケンゴー自身がよくわかっていないケンゴーの良いところ、長所、優れた所、残虐な魔王らしくないけれど魔王という支配者にして統治者として相応しい要素、ある意味ケンゴーの本質的なところを、もしかしたらルシ子よりもわかってるんじゃないか、という理解者だったというのが明らかになった話でもあったんですよね。
ルシ子にしてもレヴィ山にしても、ケンゴーのこと大好きなの、上辺とか見た目とか勘違いじゃなくて、ケンゴーの本質を理解した上で大好きでいてくれるし、ケンゴーの方も七大魔将たちのこと強大な魔族としてビビってるし反逆されないかいつも恐れてるし、過剰な評価や期待を押し付けてくるのに疲れているんだけれど、それ以上にケンゴーの方も彼らのこと何だかんだと大好きなんですよね。
マモ代をはじめとした他の魔将の面々も何となくケンゴーの素の方との距離感縮まってきた感もありましたし。
すれ違ってお互いのこと見えてなくて砂上の楼閣みたいないつ崩れてもおかしくないいびつな関係に見えていた魔王ケンゴーと七大魔将たちの関係、どんどん気心の知れた身内みたいな、主君と部下というよりも遊び仲間みたいな、すごくよい関係になってきていたんですね。

ただ、そんな七大魔将の中で、サ藤君は特にケンゴーとすれ違い食い違っている人物のように見えていました。冷酷にして残虐、怒りに任せての殺戮を厭わないキレ易い若者代表、憤怒の魔将サ藤くん。その在り方や思想は誰もが思い描く悪魔そのもので、穏健路線で人間とも出来れば戦争したくないし血を見るようなことは避けてほしい、という方針のケンゴーとは全く真逆なのである。
ところが、サ藤はケンゴーの事を崇拝と言っていいほど敬愛して、ケンゴーこそは魔族の中の魔族、冷酷非情なる魔王に相応しい人と思い込んで、自分の理想を当てはめているのである。
ある意味、魔将の中で一番ケンゴーの事を慕いながら、ケンゴーを理解していない人物でもあったわけだ。理解しようとすらせず、理解する気もなく、一方的な崇拝を押し付けていたのである。
ケンゴーの方も、彼の前では従順で大人しくて健気な少年という顔しか見せないサ藤の事を可愛い弟分として甘い顔ばかり見せている一方で、サ藤の残虐で恐ろしい性格の方はなるべく見ないようにしていた節があるんですよね。
そうした二人の乖離は途方もなく広がっていて、これいつか破綻して破滅的なことになるんじゃないか、と思ってしまうほどに、相互理解が壊れていたのでした。
こういう思い込みの激しく頑なで、ある意味純粋ですらある子って、ほとんど変わることがないから、もう彼に関してはずっと勘違いさせたまま、誤解させたままで行くのだろうか、とも考えていたのですが。

そうかー、この物語はケンゴーの方だけじゃなく、部下たちの方も成長させてくれる物語なのか。幼い固定観念を打ち壊して、すくすくと健やかに伸ばす機会が訪れる物語でもあったのか。
お互いに、成長していける話だったんですねえ。

契機は、サ藤が人を殺したりとかあんまり酷いことをしないで国を征服せよ、という課題のために離島しようとした魔王軍への降伏派に属していた幼き才媛リモーネ王女との出会いだったのです。
言われてみると、サ藤もまだ魔族としては若者どころか、少年と言ってもいい歳頃だったんですねえ。
聡明なる知性と勇気と天真爛漫さを兼ね備えた小さな姫は、頑迷な古くからの魔族の固定観念に縛られていた幼き魔族の、まさに蒙を啓いていくのである。そうして、サ藤の思い込みを解きほぐし、彼とケンゴーの間にあった錯誤をすり合わせていってくれるのである。
それも、サ藤の信じるケンゴー陛下の素晴らしい魔王としての姿を全肯定したまま、ケンゴーの魔王としての事績、その統治思想や考え方を説いていくわけである。
同時に、サ藤がゴミクズとしか思っていなかった人間という存在を、リモーネ自身がひっくり返しながら。
最初はお互いになんだこいつは!? と面食らいドン引きしながら、でも衝突を繰り返していくうちにお互いの存在に惹かれ合っていく幼い少年少女の育まれていく関係がまたいいんですよ。
いけ好かない小僧だったサ藤が、リモーネに言い負かされ諭され、いつしか我慢を覚えて、ときに自分の中の固定観念を壊されて幼い年相応の顔を見せ、そんなみるみると成長していくサ藤を、リモーネが憧憬とも慈しみともつかない表情で見守るという、このボーイ・ミーツ・ガールはこれがまた微笑ましくてねえ。
ついには、自分がボロボロになりながらも、足手まといのリモーネを決して見捨てず身を挺してかばい続ける、まるで騎士のように耐え続けるサ藤の、今までの彼からするとありえない姿を見せられた時は、なんかもう感動を通り越してしまいそうでしたよ。
この弟分の成長を、ケンゴー陛下が喜ばないはずがなく、そしてその弟分がゴミクズのように痛めつけられる事を許せるはずがなく。
ヘタレチキンが怒るとほんと怖いんやでえ。
かわいいかわいい身内が痛めつけられた際の、魔王陛下の憤怒は留まる所を知らぬのである。こういう時、もう誰も文句が言えないくらいカッコいい姿見せてくれるんだから、七大魔将たちの敬愛も尊敬も、何も勘違いでも過剰評価でもないんですよね。最近は、その辺がっちり噛み合ってきてすらいるし。
ってか、ケンゴーってば最後おっさん仲人みたいになってるじゃないですか。いやもう、手をつないでギュッと握り合うサ藤とリモーネの小さなカップルが尊すぎて気持ちはわかる!





薬屋のひとりごと 9 ★★★★   



【薬屋のひとりごと 9】 日向 夏/しのとうこ ヒーロー文庫

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壬氏の一世一代の行動の結果、とんでもない秘密を共有することとなってしまった猫猫。
折しも後宮は年末年始の休暇に入る時期。実家に帰りたくない姚は、猫猫の家に泊まりたいと言い出した。とはいえお嬢様を花街に連れていくわけにもいかず、姚と燕燕は紹介された羅半の家に泊まることになる。
一方、口外できない怪我を負った壬氏のために、猫猫は秘密裏に壬氏のもとに通わなくてはならなかった。
できる範囲で治療を施していくが、
医官付き官女という曖昧な立場に悩まされる。壬氏が今後さらに怪我を負わないとも限らないが、医官にはなれない猫猫は医術を学ぶことはできない。
そこで、羅門に医術の教えを乞おうと決めるのだが――。

そう言えば、前回って結構なとんでもない引きで終わったんだった。自らに焼印を押す、という自傷行為によって自分を後継者にという陛下の思惑を引き剥がし、ついでにこの秘密を守るために同席していた猫猫しか治療出来ないようにした……ついでというか、こっちが本命?
つまるところ、猫猫を逃げられないように囲い込んだわけですが。
猫猫からすると、自分は薬師であって医師ではないし医術をちゃんと学んでいるわけじゃないのだから、いきなり自分一人で壬氏の火傷の治療を、とか言われても応急処置しか出来んがな! と、わりと真っ当なお冠状態なのである。それに、火傷に限らず今度壬氏の病気や怪我などを自分が見ないといけない、となると正式に医術を学ばないと、となってしまったわけですね。
さらに、数カ月後に壬氏が玉葉妃の故郷である西都に使節団の長として派遣されることになり、もちろん猫猫もこれについていなかくてはならなくなる。つまり、早急にとりあえずでも通り一辺倒の医術を修めないといけなくなってしまったわけだ。
ここで、知らんがな! と放り出さずに養父の羅門に頼んで女官の身でありながらも医術を教えてもらおうとするあたり、猫猫ここでもう自分が壬氏を看ないといけないと受け入れてはいるんですよね。壬氏が自傷行為に走ったことにはもう怒り心頭ですし、この一件でてんやわんやで医術を修めないといけなくなった件についても愚痴は出てくるのですけれど、不思議とこれからずっと自分が壬氏のことを診続けないといけない、という件に関してはあまり文句らしい文句は出てこなかったのです。
もう猫猫なりに、覚悟は出来たのかな。
相変わらず、猫猫には壬氏に対しての熱量とでもいうのか。恋する乙女のエネルギーみたいな迸りは皆無に等しく、好きなんですけどー好きなんですけどーと鬱陶しい感じでチラチラ構ってくる残念イケメンに対してのあの塩対応、なんだこいつ、みたいな態度は変わらないのですけれど、ついになんというか……。
……仕方ないなあ。的な受け入れ体制に入ってしまったような、そろそろ本気で絆されてきてやしませんか、猫猫さん。
いや、これまでの塩対応を通り越したナメクジ見るみたいな視線であしらってた頃と比べて、壬氏さまドM疑惑が生じてしまうほどの塩っけだったのと比べると、なんか猫猫の対応甘いですよ。壬氏さまに対してダダ甘じゃないですか?
……もちろん、一般的な視点からではなくあくまで当社比です。普通に見たら普通に塩対応に見えるかもしれませんが、当社比! 当社比的にはダダ甘!

なんかちょうど、真横にすんげえ夫婦が現れてしまったのも、これと比べると甘酸っぱい雰囲気じゃね?と感じてしまう原因かもしれませんが。
いやなんですか、あの馬良と雀の夫婦関係。愛がない夫婦というのは全然珍しくないはずなんですけど、それを通り越してなんか変ですよ、この夫婦!?
雀さんのキャラが濃すぎるというか、ぶっ飛びすぎているのが最大の原因なんですが。人妻子持ちのキャラとしてはパラッパラッパーすぎやしませんかね、雀さん!
ここまでのフリーダムファイターはシリーズ始まって以来ですよ。羅漢の変人がある意味真っ当な変人に見えてしまうくらい。だいたいの事ならスルーしてしまえる猫猫が唖然として一方的に振り回されてるくらいですからね。
この雀さんと馬良の意味不明な夫婦関係を目の当たりにさせられると、わりと壬氏と猫猫の関係ですらもまともに見えてきてしまう不思議!

しかし、壬氏さまの身の上については、全然想像していなかったんで結構マジで驚いたんですが。普通に皇弟だと思いこんでた。言われてみると、なんで皇帝陛下がそんなに弟のことを気遣うというか、跡を継がせたいみたいな事を考えるのか不思議ではあったんですよね。
ただ一方で猫猫の言う通り、この人は国のトップには向いてない雰囲気はあるんですよね。確かに苦労性ですし、何かと仕事抱え込むわ気苦労は耐えないわ、全然わがままに振る舞えない人なんだよなあ。
老若男女を問わず籠絡してしまう絶世の美貌の持ち主でそれを利用してネゴシエーション出来る才覚を持ちながら、その顔を利用して自分の都合の良いよう、自分の利益や楽するためのツールとしては全然使わないんですよね。あくまで仕事上のツール。
彼の中身はというと、ヘタレだしジメッとしてるしドMだし自分から地雷を踏みに行くタイプだし、概ね残念イケメンなんだよなあ。そんでもって、傲慢さとか自信過剰な面が全然なくて、自ら貧乏くじを引いていくタイプ。自分から苦労を背負ってしまうタイプ。そして何より、冷酷に切り捨てることが出来ないタイプ。
今回、猫猫を西都につれてきたのも、彼の我儘という体裁を取ろうとしているけれど、羅漢の身内である彼女に危険が及ぶ可能性があったから、側に置いて目に見えるところで守ろうとしていた、なんて話が出てくると、なんてこの人迂遠なんだろうと思えてくる。猫猫だけじゃなく、ほんと色々と権力闘争のとばっちりで被害があちこちに及ばないように手を回して気配りしたおして、結局自分の方にツケが回るようにしてるんですよね。
そういうのがわかってしまうのが猫猫の聡さなんですよねえ。そして、わかってしまえば彼女としても、あかんこの人は自分が見ておかないと、と感じてしまうのもなんかわかるんですよね。
猫猫が、養父の羅門を尊敬している一方で彼の自分から貧乏くじを引くところ、そうした人生を歩み続けてきた果てで今擦り切れたみたいな在り方になっている事はどうしても受け入れがたい、納得がいかないと思っていたわけで。
そんな養父によく似ている、似てしまっている壬氏を目の当たりにして、猫猫が何を思ったか。何を感じたか。
まあ最後のシーンは壬氏さまには過ぎたご褒美だった気がしますが。めっちゃ喜んでるじゃん、あのドMw

にしても、壬氏さまの火傷の肉が焼けた匂いを嗅いで、焼き肉とか食べたいなあ、とか思ってしまう猫猫は、多分医者には向いてる、うん向いてる。この娘のメンタルもやっぱり凄えよな。




サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと ★★★★   



【サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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魔力測定&恩師の赴任――最強の魔女、正体バレの危機に思わず失神!?

〈沈黙の魔女〉モニカは第二王子を狙う敵を極秘裏に“処理”。生徒会会計にも抜擢され、護衛任務は順調……かに思えた。
しかし正体バレの危機が次々襲来!? かつての恩師が赴任してきたり、七賢人になるほどの魔力量なのに魔力測定に巻き込まれたり、普通の学園生活に最強の魔女は失神寸前!
皆には簡単な社交ダンスやお茶会だって、モニカには精いっぱい。それなのに、第二王子にも次なる危機が迫り――?
無詠唱の魔女の極秘任務、メンタルが試される第二幕!

一学生として学園に通うようになったモニカ。オマケに生徒会会計という役員としての仕事もあり、授業に生徒会の仕事に同級生たちとの交流に、とてんてこ舞いのモニカ。慣れないどころかこれまでずっと忌避してきた人付き合いにヒーヒー言いながらも、それでも不器用なりに臆病なりにだんだんと自分に出来ることをしようと頑張りはじめる。
こうして、普通の学生として過ごすモニカを見ていると、ほんとこの娘は中身はコミュ障なだけのあまりにもメンタル弱々の普通の年頃の女の子なんですよねえ。
七賢人として特別な側面があるのか、というと……能力的には素晴らしく優れているものの、精神面では特別な所は何一つないんだよなあ。これは一巻の感想でもちょこっと触れていたけれど、別に非常時になったらカチっと人格が切り替わったり、魔法を使う時だけキリっとなったり、という事もないんですよね。
頭の回転自体は素晴らしく速いから、正体バレを防ぎつつ目の前で起こる突発的なトラブルや事故の回避なんかもなんとかこなしているけれど、決して冷静沈着に片付けているわけでもなく、かなりあたふたしながらバタバタとやっている感じで……いや、これだけ慌てながら対処出来てしまうこと自体が凄いのですけれど、完全にスペックで乗り越えてるって感じなんだよなあ。
彼女の様子が豹変するのは数字関係に向き合ったとき、そしてパズル的な要素、思考実験的なものにハマった時。そういう時は周りの事が頭から消え去り、取り組む問題にだけ意識が向いてしまう。非常に尖った集中力を発揮するのだけれど、わりと学者肌の天才には見られる傾向でもあるわけで、それ自体は特別な才能の一つだろうけれど、それを七賢人と繋げて考えるのは難しいだろう。沈黙の魔女の偉業と、モニカのこの集中力とはあんまり関連付けられないものだろうし。
ともあれ、中身は本当に普通の女の子の過ぎないモニカ。
でも、彼女は幼いときから家庭の環境によって他人と距離を起き、誰とも関わらないようにして生きてきた。でも、この学生生活ではじめて他者と密接に関わるようになり、お互いの心のウチまで踏み込むような関係を築くことになる。さらには、集団生活を送る中で生徒会役員という立場に立ち、周りの人に助けられたりしながら、自分の仕事をするようになるんですね。
そうした経験が、幼いまま閉じこもってしまっていたモニカの精神を刺激して、少しずつ顔をあげ周りを見回し、人の顔色を伺うのではなく相手の想いを察するようになっていく。他人との関わりの中で、自分の得ている立場への責任感を感じるようになっていくのだ。
七賢人としては、今まで責任感なんか感じたことがなかったモニカ。ただ無理やり押し付けられ、七賢人としての仕事もやれと言われたからイヤイヤやっている事だったのに、生徒会役員としての仕事は最初は同じように仕方なくだったのに、段々とちゃんとやらないとと自分の意思でやり遂げようとしはじめるんですね。
また、初めて出来た友達との交流は、相手から向けられる優しさや好意が初めての体験で心地よく、嬉しくて、同じものを同じように、或いはもっと多くのものを返したくなってくる。そして、この嬉しさを、感謝の気持ちを伝えようと必死に努力しはじめるんですね。
人前で喋りたくなくて、無詠唱魔法なんて人類史上初めての魔法を生み出してしまったほど、言葉を発することを恐れていた子が、ただ「ありがとう」という気持ちを伝えるために、つっかえつっかえ、どもりながらも、それでも逃げ出さずに黙ってしまわずに、彼女は沈黙を破るのである。
一番最初に友達になったラナという子も、不器用も不器用で素直に気持ちを言葉に出来なくていつもひねくれた物言いや高飛車で高慢な言葉遣いをしてしまう、彼女も言葉をうまく使えない子なのだけれど、そんな二人がお互いに本当の自分の気持ちを相手に伝えようと四苦八苦しながら、でもちゃんと伝わっていく交流の数々は、なんかもう微笑ましくて尊くて、実にイイんですよ。
ラナ以外にも、ケイシーやクローディア。グレンなどといった個性的な面々と親しくなっていくわけですが、彼女たちは一癖も二癖もある人物でモニカに対して決して優しいわけじゃないんですよ。場合によっては強烈ですらあり、それでもモニカは逃げ出してしまわずにあたふたと狼狽えながらも彼女らと接していくうちに、友達という存在が自分の中でかけがえのないものになっていく事に気づいていくのである。

なんか、ものすごくまっとうというか正統派というか、微笑ましい健やかな成長の形をモニカが見せてくれるものだから、もしかしてルイス氏はこれを見越してモニカを学生としてこの任務に派遣した、という要素もあるのかしら! と、ルイス氏株が大幅にアップしそうだったのですが。
……この男、人間的に成長しはじめているモニカを見て、彼女は人間不信極まってるからこの任務に相応しかったのに、これじゃあ任務に支障が出てしまうじゃないか、とか真顔で考えてるんですけど。
あかん、このルイス氏……鬼畜だ。ただの鬼畜だ。わかってたけど! うん、わかってたけどな!

ただの普通の女の子のように、閉じこもっていた殻から顔を覗かせて成長しようとしていたモニカ。でも、彼女には「沈黙の魔女」として成さねばならない仕事が待っていた。
どれほど中身がただの少女であろうと、彼女には力があり、任務が有り、果たさねばならぬ義務がある。何より、自らの持つ力でこそ、守れるものがあり……今の彼女には自ら守りたいと思えるものが出来ていた。
でも、その想いを引き裂く現実が彼女の前には待っていて、それでも挫けずにやり遂げられたのは、友達を助けたいという思いと、七賢人としても責任感を抱き始めていた、ということなのかもしれない。モニカにとってはつらい現実すぎたけれど、本当の最悪をモニカは自分の力と成長分で覆せたのだ、と思いたい。

しかし、第二王子の闇は深そうだなあ。彼の過去についても徐々にチラチラと見えてきたけれど、彼自身の思惑も含めて、まだ何が動いているのか見えないのがまた不気味だ。
フェリクス王子、思いの外モニカに共感というか、自分の過去の姿を垣間見ていて感情移入しているみたいだけれど、同じ生徒会メンバーでもシリルとエリオットも、何だかんだとモニカに対して情が湧き出しているみたいで。あとはブリジットだけれど、この娘も内面が窺えない謎が深いキャラなんだよなあ。
というか、今の段階だとフェリクス王子よりも、シリルの方がモニカに近い気がするんだけれど、シリルの方が物語的にはモニカの本命になっていくんだろうか。
あと、ニールは絶対裏表が激しいキャラだと思ってたんだが、なんか普通に素直でイイ子みたいだなあ。ドエス系とか邪悪系の裏の顔があるとばかり思ってたのにw
そして、イザベラ嬢が見事な悪役令嬢っぷりで。年下下級生にも関わらず、あの貫禄、あの威厳、あの立ち居振る舞いはそんじょそこらの木っ端悪役令嬢など物ともしない威風で、いやはや格好良かったです。いつまで、悪役令嬢役で遊んでるんだろう、この人w


亡びの国の征服者 4~魔王は世界を征服するようです~ ★★★★   



【亡びの国の征服者 4~魔王は世界を征服するようです~】  不手折家/toi8 オーバーラップノベルス

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安全なはずの旅路。
“戦争”が少年達に牙を剥く――

家族の愛を知らぬまま死に、二つの人類が生存競争を繰り広げる世界で新たな生を受けた少年ユーリ。
彼は騎士院で学ぶかたわらでホウ社の事業を拡大し、いずれ来たる祖国の亡びを見越して“新大陸”の発見を目指していた。
そんな中、隣国のキルヒナ王国と“もう一つの人類”であるクラ人の遠征軍――“十字軍”との戦争がついに始まろうとしていた。
そしてユーリは女王の要請により、王女キャロルをはじめとした学生からなる観戦隊を率いて、前線を視察しに行くことに。
隊長として初めて隊を率いるユーリは、単身で下見も行い、万一のことが無いよう万全を期していた。
前線とはいえ、王鷲による上空からの視察。
この旅路には本来、大きな危険など無いはずだったが……!?
のちに「魔王」と呼ばれる男が、初めて戦場を目の当たりにしようとしていた――。
「小説家になろう」で話題の超本格戦記譚、戦争の恐怖を知る第4幕!
さすがはまだ少年と言ってイイ年齢にも関わらず、事業を立ち上げ会社を率いる経営者としても辣腕を振るうだけあって、ユーリのプロジェクトの実行力って並外れてるんですよね。
観戦隊の人選から隊の組織構築のための事前準備から、現地調査に行動計画の立案から精査まで、さらに必要物資の調達から現地の拠点の設営準備など、観戦隊派遣作戦の策定は緻密さと不測の事態を見越した柔軟さを兼ね備えた、非常に弾力性のあるものに見えました。
一人の未帰還者も出さないように慎重に、極力危険を排除するように、甘い見通しを残さないように策定されたもので、もうコレ以上万端の事前準備は出来ないだろう、というものだったんですよね。

それでも、想定外の出来事が起こるのが現実なのである。
現地の拠点の一つとするつもりだった村の宿の主が、前金だけ受け取って夜逃げしていた、なんて事態はまだ序の口。
真の想定外は、予想外は、不測の事態は、戦場でこそ起こり得る。最前線とはいえ、王鷲という空を飛行する存在に攻撃を加えることの出来る武器も兵器も、敵には存在しないはずだった。そのあたりの情報収集も、中立国経由での情報や実際に密輸入なんかで実物を手に入れて、確認はしてるんですよね。火砲や鉄砲など、火器の射撃による攻撃も有効射程距離をちゃんと把握した上できちんと安全高度を保ちさえすれば、危険はほぼない。
そのはずだったのに。
さすがに、あれはユーリでも予想なんて出来んわなあ。そこまで想定しろ、というのならそもそも前線への観戦隊なんてやるべきではない、って事になるだろうし。

ともあれ、そのどうしようもない予想外、想定外によって危険性のない安全な、いやユーリがほぼ安全と保障できるまでに計画を煮詰めた観戦隊による前線視察は、他の隊員たちこそ無事に逃がすことに成功するものの、本来なら他の隊員全員を犠牲にしても護らなければならなかった王女キャロルとユーリの二人が王鷲ごと撃墜され、敵中に取り残されることになる。

決戦は味方の大敗。味方の軍勢は四散し、敵は一気呵成に追撃戦を行うなかで、ユーリたち二人は敵軍が今まさに占領と略奪のために侵略してくる大地の只中に放り出されてしまったのだ。
しかも、キャロルが脚を負傷して自力で歩くことの出来ないというハンデを背負ったままで。
助かる見込みなどどこにもない、絶望の逃避行。
相棒として長年連れ添った王鷲は、墜落の際に負った怪我で再起不能となり、ユーリは手ずから親友を送ることになる。さらに、追い詰められたキャロルを救うために彼は生まれて初めて自らの手で人を殺したのだ。
体以上に心が傷ついた状態で、しかしなおもキャロルを守るために傾いた心を立て直し、味方がいる地まで敵から隠れ潜みながら、ユーリは逃亡を開始する。
どう考えても助からない、せめてキャロルの脚さえ健常だったなら、という塗りつぶすような黒が心を覆っていくのだけれど、しかしユーリの中には一欠片もキャロルを置いていこう、という考えは芽生えないんですね。キャロル自身はそれを主張するのだけれど、ユーリは一顧だにしない。
いつもユーリって地の文でも内心を語る際は、斜に構えててネガティブというか皮肉屋というか偽悪家なところがあり、実のところユーリ本人は自分のことをそういう人間だと思ってる節があるのですが……。
本作の場合、この主人公ユーリの内心の言葉は、本心とか本音だと思わないほうがいいんだろうな、と思いながら読んでいます。いや、ユーリとしては本音のつもりなんでしょうけどね。多分、心で思ってることと彼の本当の心は乖離しているところがあるんじゃないでしょうか。ユーリ・ホウは自分で思ってるほど、ろくでもない人間じゃあない、ということで。
だからこそ、彼に信頼や親愛を預ける人間は少なくないのである。過大評価じゃないのだ、それは各々から見たユーリへの正当な評価であり、素直な感情なのである。

この逃避行は、ユーリにとっても極限状態でした。絶望は常に心を蝕み、諦めが背中に剣をついてくる。それでも諦めることを良しとしなかったのは、隣に絶対に守るべき人がいたから。
キャロルが居たから。
もし、敵勢に追いつかれれば、それはもう絶対に助からないということ。二人共その時が来たら、自らを処す、自決する覚悟をもう胸に収めてるんですね。穏やかなくらい、覚悟を決めている。
一度、偵察から戻ってきたユーリの態度に追いつかれたとキャロルが誤解したシーンがあったのですが、騒ぐことも怯えることもなく、スッと静かに終わりを受け入れる姿を見せたのでした。
それを見た時、どれほどキャロルが極限状態に居て、その極限を覚悟を持って受け止めているのかが伝わってくるシーンだったのです。
そんな極限状態だからこそ、虚飾は引き剥がされるのです。その心は剥き出しになる。
そうして、二人きりである今に向き直った時、キャロルとユーリ、お互いを見つめ直した時に、さらけ出された自分の心を知るのである。
ユーリにとっては、王族だのなんだのと関係ない、キャロルという女の、幼馴染の存在が自分にとってどういう意味を持っていたのかを、理解するのだ。
この女が居なければ、自分はもう生きる意味がない、と自然に思えるほどの感情を。
それはキャロルも同じ。彼も彼女も、自分が何のために生きて何のために死ぬのかを、理解したのだろう。彼のために彼女のために、生き。そして、アナタの為に死ぬのだ。そして今は、共に生き、それが叶わぬなら共に死ぬ。お互いが無二、それを彼らは知ったのだ。自分よりも価値があるものを。自分なんかよりももっと大切なものの存在を。

それを知ることは理解することは、自分の存在がただその人のためにあるのだと受け入れたことは、ユーリとキャロルの、二人の命運を定めた、と言えるのかも知れない。
ユーリ・ホウとキャロル・フル・シャルトル、この二人はこの時知ってしまった在り方に、文字通り殉じることとなる。
彼が魔王と呼ばれることになるその歩みは、いちばん大切なものがある事を受け入れた、きっとこの時にはじまったのだろう。


逆行の英雄 ~加護なき少年は絶技をもって女勇者の隣に立つ~ 1 ★★★★   



【逆行の英雄 ~加護なき少年は絶技をもって女勇者の隣に立つ~ 1】 虎馬チキン/山椒魚 MFブックス

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逆行した加護なき少年は、今度こそ幼馴染の女勇者を救う――!
とある田舎の村に住む少年アランは、勇者と呼ばれる少女ステラの幼馴染だった。
ステラは人々の希望として奮闘し、魔王討伐まであと一歩という所まで迫っていたが、最後の戦いに敗れ、人類は再び絶望の底へと落とされてしまう。
幼馴染を奪われたアランは加護なき無才の身でありながら、比類なき努力で格上殺しの秘剣を編み出し、遂には魔王と刺し違える事で復讐を果たすのだった。
しかし仇を討っても彼女は帰って来ない。悲しみと喪失感の中でアランは命を落とし――気づけば幼馴染が勇者となる前の時間へと逆行していた!
絶望の未来を知っているアランは誓う。
「今度こそ二人で生きて魔王を倒して、ハッピーエンドで終わってみせる」
絶技をもって大切な幼馴染を守り抜く、王道剣戟バトルファンタジー開幕!!

くわーーっ、こいつはカッコいいなあ。願いに向かって脇目も振らず一心不乱。前世というべきか一周目というべきか、かつての人生で勇者として覚醒し旅立っていった幼馴染を無為に見送り、ただその惨死を伝え聞くしかなかった全身を掻き毟るような後悔や無念を糧に、もう一度幼い頃から送ることになった二度目の人生を、今度こそ幼馴染のステラを守るために費やさんと努力し続けるアラン。
まさに王道で、正道の地べたから這いずり上がる英雄譚なんだけれど、アランの心根心意気が本当に真っ直ぐで、ステラを守る!で一貫してブレがないから、ほんと気持ちいいんですよね。
その一途な想いも、悲痛なまでの後悔や絶望を背景に打ち立てたものだから決して軽々しいものではなく、二度とあんな思いを味わいたくないという必死さ以上に、かつて孤独だっただろう前世のステラの寂しさや痛み孤独絶望感なんかを思いやりながら、自分以上にステラにそんな想いを二度と味わわせるものか、という懸命さに彩られたものだから、もうまっすぐというか健やかなんですよ。
自分のことだけに内向きになっていたら、かつて復讐鬼として無才にも関わらず魔王を倒すまでに至った狂気、或いは負の感情みたいなものに引っ張られて、もっと危ういピーキーな感じになっていたんじゃないだろうか、とも思うのだけれど、とにかくステラのために一途だからその真っ直ぐさに危うさは感じられず、むしろ分厚い柱を感じさせるどっしりとした目的意識で安定感すら感じさせてくれるんですよね。
ステラを守るということに一途なわりに、ステラに盲目的というわけじゃなく、勇者としてハチャメチャに強くなっていくステラに対して上から目線になれるはずもなく、必死に対等な立場として隣に立ってやる、という負けん気を発揮し続けていたのも良かったのでしょう。ステラは守るべき存在じゃなく、追いかける存在だったから。
それでも、前世の記憶を元に自分を鍛え上げまくって、幼いときからステラに対して勝ち越しし続けてきた、というのは男の子だなあ、と微笑ましくなる向こう意気じゃないですか。お互い、負けるかこらーと切磋琢磨し合う幼馴染関係というのも、お互いへの信頼感が振り切っててニマニマしてしまうんですよねえ。
ステラからすれば、ちっちゃいときからメチャクチャ一途な気持ちぶつけられ続けて、オマケに宣言通りどんどん強くなって、カッコよくなっていくアランにはもうひゃわわわわ〜、てなもんですよ。
それで大人しく護られるお姫様にはならずに、彼が追いかけてくるに相応しい勇者になろうとするの、この娘はこの娘で実に勇者らしいカッコいい娘なんですよね。一方で内心いつかもっと強くなって隣に立ってくれるのを、守りにきてくれるのを信じ切って待っている、というのもまた実に乙女らしい恋する少女してるのも可愛かったなあ。
本来なら加護を持つ人間と、それを与えられなかった人間とでは身体能力から何から別次元の差が生まれてしまう。それを敢えて乗り越えようとせず、弱い自分を認めた上で弱いまま格上を倒す技法を復讐の果てに編み出し、ついに幼馴染を殺した魔王を相打ちで倒すまでに至ったアランの格上殺しの殺法。
ステラが勇者として目覚め王都へと旅立つ日、加護を持つ聖騎士の頂点たる老剣聖と戦って敗れた日、アランはもう一度自分を追い詰めるだけ追い詰めボロボロになるまで努力と鍛錬を積み重ね、かつて習得した格上殺しの技法殺法をマスターするため、彼もまた一人冒険者として旅立つのである。
あのイラストの、二本差しにズタボロの羽織を羽織った流離いの浪人みたいなスタイルが、雰囲気でそんな格好してたわけじゃなく、ちゃんと強くなるために積み上げ手に入れていったものの果てに出来上がった彼の生き様で形作られたスタイル、というのが彼の成長譚の中でしっかり描かれていたのは嬉しい所。
無才の少年が、ただ幼馴染を守るために加護持ちたちすら圧倒し、最強の剣豪すらも打ち破ってその強さを証明する、という誰にも文句言わせないどころか、きっと世間受けするだろう物語を、勇者ステラの出陣式に現れて、公衆の面前でやってのける、というのはかっこよかったなあ。
英雄譚というよりも完全にロマンスの類ですもの。おまけに、実質公開告白でしたし、一世一代のラブロマンス、そりゃあ周りも世論も盛り上がりますわ。
戦闘シーンも柔よく剛を制すを念頭に、ケレン味のあるスピード感を感じさせるアクションであり、剣戟であり、読み応えある面白いものでした。
まずもって、勇者ステラと並び立つ資格を、パーティーの一員として戦うことの出来る立場を手に入れたアラン。とはいえ、勇者の旅はまだこれから。今度はステラと、もう二人いる勇者パーティーの面々と一緒に旅になるわけで。
……いやこれ、実質ラブラブ幼馴染夫婦な二人についていくことになる、あとの二人色んな意味で大変なんじゃなかろうかw
まあどんな旅になるのか、是非想い叶い想い遂げるだろうアランとステラの旅の続きを見てみたいです。

見える子ちゃん 1 ★★★★   



【見える子ちゃん 1】 泉 朝樹 MFC

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異形な“ヤバいやつ”との遭遇を全てシカトで凌ぐ。新感覚ホラーコメディ!

ある日突然、普通の人には見えない異形な存在が見えるようになってしまった「みこ」。彼女は彼らから逃げるでもなく、立ち向かうでもなく…精一杯シカトしつづける事に。怖いようで怖くない、新感覚ホラーコメディ!

こちらから見えるということは、向こうからも見えるということ。
見えていると気づかれたら、果たしてどうなってしまうのか。
以前からウェブ連載の方は読んでいたのだけれど、アニメ化ということで改めて単行本を手にとってみました。
あらすじにある通り、ある時から他の人には見えていない異形、霊の姿が見えるようになってしまった「みこ」。その異形たちは、亡霊なのか何なのか。人に気づかれないまま、でも人にまとわりつくように彷徨っているのである。中にはなんか全然違うのもいるけれど。
でもその多くが、見えていると気づくと近寄ってくるんですね。見えてる?見えてる?とつぶやきながら。

本作のとびきり素晴らしいところは、やはりその亡霊たちのデザインでしょう。もう見るからにヤバい。グロテスクでおどろおどろしく、たとえ人の形をしていても人の理性を欠片も残していないのがひと目で見て取れるヤバさ。気色悪いし怖いし人を冒涜してるような有様だし。とにかく、とてもじゃないけど意思の疎通が図れるわけがない見てくれなんですね。コミュニケーションなんて以ての外。
そんな見ただけで絶対に悲鳴を上げるか白目剥きそうな化け物が目の前に突然現れても、声一つあげないのがこの子「みこ」なのである。
怖がっていないわけじゃない。そりゃもう、漏らしそうなほどビビり倒して内心半泣きになっているにも関わらず、そうした心のパニックを押し殺して見えてないふり、素知らぬふりを貫き通すのである。思わず反応してしまったときも、まるで別のことに反応したかのように独り言をつぶやいてみたり、目にゴミが入ったかのような仕草でごまかしたり、とたゆまぬ努力でスルーしつづける。
そんな少女の必死な、必死過ぎる……ある意味、一つ間違えれば死ぬよりヤバいことになりそうなシチュエーションなだけに、必死を通り越してもう決死の思いでのシカトっぷりを堪能するのが、本作なのである。なるほどホラーコメディだ。
いやもう絶対怖いって。まだ遠くから見えていて心構えが出来てるならマシだけれど、ロッカーあけたらいきなり中に居たり、振り返ったら鼻触れ合いそうなところにそびえ立ってたりとか、相手が亡霊とか怨霊じゃなくても声上げるわ! ビビるわ! それをこの子は、声一つあげずに耐えきるのだから、すげえメンタルである。
外で歩いている時だけならまだしも、学校の中や風呂入っている途中、挙げ句に自分の部屋の中にまで脈絡なく現れるのだから、頭おかしくなりそうなのに。
耐える、耐える、耐える。耐えてスルー、耐えてシカト。誤魔化し下手な演技も交えながらなんとかやり過ごす。ほんま、ようやっとる!

いや、あまりにも見事に耐えきるものだから、てっきり幼い頃からこういう異形が見えていて、耐性が出来ているのだと最初読みだしたときは思ってたんですよ。ところが、実際は見えるようになったのはごく最近。霊感があるわけじゃなく、こんな化け物なんて今まで見たことも気配を感じたこともなかったにも関わらず、よくまあ見ないふり、知らんぷりなんて、何気に難易度高い対処法を選んで貫き通しているものである。
考えても見てくださいよ。夜寝ている時に、なにか変な気配がしたら……見るじゃん。確認するでしょう。なにか居るのに、見ないふりなんて出来ない。絶対見る。見ても怖いけど、見ないほうがもっと怖いもの。
そう考えると、怖がりながらビビリながらもなお意思を貫き通せるこの子は繰り返しになりますが、メンタルすげえです。

アニメの方はまだ見ていないのですが、これはもうあの化け物たちのデザイン次第だろうなあ。ちょっとでもマイルドになってしまってたら、全然面白さも違ってきてしまうんじゃないだろうか。

猫の話や、お父さんの話などちょっとほんわかしたり、切なさを抱いたりという話もあって、普段の当たり前の生活の中にも死というのはいろんな形で寄り添っているんだなあ、というのがふわりと伝わるエピソードでありました。
でも、亡霊同士共食いしてたりとか、あれ死んだ霊にとってはこの世相当ヤバいところなんじゃないだろうか。早く成仏してあの世にいった方がいいんじゃないだろうか。あの世とかあるのか、成仏なんて概念あるのかすら定かではないけれど。

駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。2 ★★★★   



【駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。2】  書店ゾンビ/ユズハ オーバーラップ文庫

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芽生えた想いは抑えきれない――

独身リーマン・陽史、女子大生・詩織、女子高生・彩乃。
ひょんなことから始まった同居生活にも慣れ、3人はいつもと同じ日常を過ごしていた。
いつまでもこの生活が続きますように――
そんな思いとは裏腹に、とある出来事をきっかけに動き始めた3人の関係。
さらに、弁護士で陽史の元彼女でもある千里が現れたことで、いよいよ同居生活は崩壊の危機に見舞われることになり……?
「好きな人に好きになってほしい。それは……イケナイことなの? 」
「待ってくれた、話を聞いてくれた。そんな陽史さんが大好きだから」
サラリーマンとJD、JKが1DKから始めるホームラブコメディ、第2幕。
色んな同居モノのシリーズがあって、その中には甘酸っぱいもの、ドタバタと騒がしくていつも明るい雰囲気なもの、様々な形の家族の肖像があったけれど、本作の陽史と詩織、そして彩乃の三人の生活空間は他と比べても一番、リラックスして安らげる場所だったように感じている。
もうずっと何年もそうだったように、自然に三人は同じ部屋でくつろいでいる。誰かがテレビを見ていて、誰かが台所に立ってご飯を作っている。でかけていた誰かがただいまーと帰ってきて、それを他の二人が一瞥して、でもそれまで続けていたことの手を止めないまま、おかえりー、と声をかける。
彩乃がバイトをはじめたときも、日曜日の朝に彼女がいってきま〜す、とでかけていくのを、まだちょっと眠そうにしつつ、並んでソファーに座ったまま朝の特撮番組を見ていた陽史と詩織が、何気ないやり取りの末に二人していってらっしゃい、と送り出すシーン。
あそこはホントに何気ないシーンなんですけれど、特にこの三人の間の空気感、距離感、日常を感じさせてくれるシーンで好きだったんですよね。
彩乃のバイト終わりに、彼女の勤める喫茶店に陽史が顔を出して、雨に降られてずぶ濡れになってじ彩乃にじゃれつかれながら帰ってきたのを、呆れ混じりに詩織が迎え入れるまでを含めて。
このとき、彩乃は陽史がバイト先まで来てくれたら喜びますよ、って送り出してくれたの、詩織なんですよね。一方で彩乃もここぞというタイミングで詩織と陽史が二人きりになれるように取り計らってる。それは、恋敵に塩を送る、みたいな大げさなものでもなく……。
彩乃も詩織も、もしこの時陽史が来てくれたら、一緒に居てくれたら、/彩乃ちゃんは/しぃちゃんは/嬉しいだろうなあ、喜ぶだろうな。そう、考えて自然に陽史の背中を押してるんですよね、二人とも。
無心で、ただただ本来なら恋敵にあたるだろう相手を想ってる。多分、陽史のことと同じくらい大切な人だと感じながら。
二人の関係は、家族のようで姉妹のようで、でも事情に踏み込みすぎない遠慮があって、でもそんな遠回りの気遣い以上の親愛を以て触れ合っている。元々他人だからこそなれる家族みたいな関係って、あるんですねえ。それはきっと親友という関係でもあるのだろう。歳に差がある同性特有の、不思議な親友関係。
彩乃と詩織の想い合う関係は、もしかしたら陽史という要の存在がなかったとしても、女性二人の同居生活という形で一つ、物語ができたかもしれない密接で温かいつながりだ。そしてその温かさは、陽史を間に挟んでも断ち切られない。
陽史が学生時代に撮った映像サークルの映画作品。そこに、当時彼が付き合っていた元カノが映っていて、映像からは陽史が彼女に夢中な様子が伝わってきた時、二人は無言で両側から陽史の腕にしがみついて、無言のままギューギューと両側から陽史のことを押し込んでくるシーン。あくまで何も言わず、でもあからさまに抗議を示しながらギューギューと圧してくる様子は、ほんと可愛らしくて微笑ましいシーンだったんだけれど、コレは同時に彩乃と詩織の共同作業でもあるんですよね。二人からの抗議なのだ。それが、どうしようもなく微笑ましくて、彼女たちの関係に癒やしを感じてしまうのでした。

その元カノである海野千里と、陽史は別れて以来久々に再会するのだけれど……。
大人な関係だよなあ。
あくまで、終わった関係なんですよね、もう。そのへん、二人共割り切っていて、だからこそ友達として気安く付き合いなおせたわけだ。陽史が詩織と彩乃との生活を経てある種心の余裕みたいなものを得ていた事も大きいのでしょう。千里と別れざるを得なかった原因は、陽史の方にあるようだったのですが、彼が迎えた良い変化は彼らが別れる原因となる部分を解消していたんですねえ。
彼の危うさ、というのは彩乃の家庭の事情を巡る話の中で一瞬垣間見えているのですが……こうしてみると詩織が彼のそうした一面を押し留め、彩乃が吐き出させているんですよね。
二人が居てこそ、陽史のともすれば凝り固まってしまいそうな部分が解きほぐされ明るい光に灯されている、というのがよくわかったお話でもありました。
ほんとこの生活空間、優しくてほんわかと明るくてリラックスできてあんまりにも居心地良いものだからか、千里がなんとなく入り浸りだしてしまったのも、なんとなくわかるなー。
いまさら陽史にちょっかいかける気は毛頭ないんだろうけれど、思わずここでゴロゴロしたくなる。普段弁護士として休む暇なく働いて、結構疲れている様子も伺えるので、リラクゼーション空間というか癒やし空間、欲しくなるよねえ。美味しいご飯も食べさせてくれるし。

いつまでもこのままでは居られない。学生である彼女たちはいずれ、卒業してそれぞれの道に進まなくてはいけないし、そうでなくても他人同士の三人が一緒に暮らしている今の状況は無理を重ねている。変化の訪れは、必然だ。
でも今の幸せが変わってしまってなくなってしまう事を恐れる彩乃を、陽史は自分自身も迷走しながら、でも彩乃と詩織こそが教えてくれた変化もまた愛しい日常になっていくことを、改めてこの寂しがり屋の女子高生に伝えるのである。
どれだけ変化してしまっても、陽史も詩織も彩乃と一緒にいると、寂しがらせることだけはしないとと約束するのである。
いつか、どちらかの恋が実っても、それが残る一人を孤独にはしないと、信じることが出来そうです。


僕が答える君の謎解き 2.その肩を抱く覚悟 ★★★★   



【僕が答える君の謎解き 2.その肩を抱く覚悟】  紙城 境介/羽織 イオ 星海社FICTIONS

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明神さんの推理が間違ってるかもって、少しも思ってないでしょ?

生徒相談室の引きこもり少女・明神凛音は真実しか解らない。
どんな事件の犯人でも神様の啓示を受けたかのように解ってしまう彼女は、無意識下で推理を行うため、真実に至る論理が解らないのだった。
臨海学校に参加する凛音の世話を焼く伊呂波透矢だったが、ふたりは深夜に密会していた疑惑をかけられてしまう。
立ちはだかるのは35人の嘘つきたち。
誰も信じてくれない凛音の推理を、透矢は証明することができるのか。

本格ラブコメ×本格ミステリ、恋も論理も大激突の第2弾!


いい子だなあ、紅ヶ峰。この2巻は、彼女こそが華だった。
華と言ってもまっさきに目を引く咲き誇る華ではなく、ひっそりとでも深い存在感を示す一輪の花のような咲き方だったけれど。
いい加減に生きてるようなキャラのようで、紅ヶ峰は誰よりも誠実であろうとしている。それは、このシリーズ冒頭で凛音を貶めた悪戯を、彼女自身が痛く後悔しているからだとしても。それは心改めたというよりも、自分のやったことの醜さ、惨めさに打ちひしがれたからなのだろう。こんな自分は嫌だ、という思いが彼女を駆り立てているように見える。
だからだろう、2巻後半で自分がやってしまった致命的な行為に落ち込む透矢を慰めるのではなく、叱咤激励した彼女の選択は気高くすらあった。
それはきっと、透矢につけこむチャンスであったはずだ。でも、この娘にとって透矢を好きという気持ちと同じくらい、凛音が自分を認めてくれたこと。友達という関係になったことを大事に思っているようでした。
紅ヶ峰が普段からつるんでいる二人のギャルに対して、友達と言えば友達だけどそんな大した関係じゃないと明言しているのに比べて、明神凛音と友達になったという事実はお互いぶつかりあった結果なんですよね。踏み込まず上辺だけの薄っぺらい関係でなあなあで済ましているのではない、自分の力で自分の言葉で、今まで自分のことなんか名前も覚えてなくて認識すらしていなかった凛音に、自分のことを否応なく思い知らせた。認めさせた。そんな初めての、本気でぶつかった相手だったのだ。
最初から、恋敵だとわかっている。それでも、凛音に認識されたのは嬉しかったし、お互い意識し合う関係は気恥ずかしくも楽しかった。友達だと、思っている。
そんな相手だから、この娘は正々堂々ぶつかりあう事を選んだのだ。逃げることなく、卑怯な真似をしてかすめ取るのでもなく。
そんな紅ヶ峰亜衣という娘の踏み出した姿は、気高くすら感じるものでした。カッコよくすらあったのでした。
一歩進み、一歩踏み込んだ凛音と透矢の関係ですけれど、それを後押ししたのは間違いなく紅ヶ峰でした。彼女の葛藤、懊悩、勇気、すべてが誠実で眩しかった。それは、確かに「華」だったのです。
和花暮は、完全に紅ヶ峰のこと見縊って見損なっている。和花暮は人にレッテルを貼り付けるのは上手いのかもしれないけれど、そのレッテルを貼り付けた相手の中身に何が詰まっているのかを、まるで見る気もないのだ。理解する気も、とっくの昔になくしている。
その意味では、和花暮が透矢を自分と同類と分類していたのも間違いではないと思うんですよね。彼は他人にレッテルを貼り付けるような人間ではないけれど、逆に言うと何も貼り付けない人間のようにも見える。自分の中の推定無罪という絶対善の定義にこだわり、その枠に他人を押し込める。型にはめ込んで判断する、というタイプだったように思える。彼もまた、本質的に他人の中身なんか理解する必要がないと考える側の人間だったんじゃないだろうか。事実さえあればいい、客観的な事実さえ積み重ねていけば、答えは導き出される。
でも、そのこだわりは凛音と深く関わっていくことで段々とズレを生じさせていく。いつの間にかもう、彼は彼女の苦しみに共感して、踏み込んでしまっていた。彼女への情が生まれ、彼女のことを信じていた。信じていたからこそ、彼女の言葉を信じなかった。凛音の正しさを客観的な事実ではなく彼女の人間性の方を信じて、否定してしまった。
凛音が、透矢に信じてほしかったものは、違ったのにね。いや、違っていたんだろうか。少なくとも、お互いもう出会う前の二人ではなくなってしまっていたのに、以前と変わらないままのつもりで続けようとしたからこその、致命的な錯誤であったように見える。
それでも、以前のように諦めて逃げずに、自分の力で自分の言葉を証明しようとした凛音は、確かに前に進んでいて。紅ヶ峰に発破をかけれた透矢もまた、変わってしまった自分を認めることで、ある意味現実から目を背けた和花暮の停滞を踏み越えられたんじゃないでしょうか。
和花暮がレッテルを貼って書割の駒のようにしか扱わなかったクラスメイトたち。その一人ひとりを生きた人間として、一人ひとりが違った事を考え思って動いている人として捉えたことで、透矢は彼らがついていた嘘を紐解いていく。
肩肘張ってついた嘘じゃなく、普段の生活の中でふとしたきっかけ、タイミングでつく小さな嘘の積み重ね。それは、クラスメイトたち一人ひとりのその日の行動を紐解いて、その性格を、その日の何気ない気分の移り変わりを、感情の様子を、彼らが置かれた状況や事情を、きちんと見つめなければ気が付かない嘘たちだ。一人ひとりを、ちゃんと見なければ紐解けない連鎖であり、行動の積み重なりだ。
「嘘つきはクラスメイト全員」というアオリ文に相応しい、その日起こった事の解体であり、明神凛音の証言の正しさを、唯一嘘をつかなかった彼女の言葉の正しさを証明する、推理劇でありました。

前半の、紅ヶ峰のカンニング疑惑事件も、まさかの事件発生前の犯人指摘にもびっくりさせられましたけれどね。いや、むしろ納得か。凛音の能力からすると、たとえ事件が起こる前でもその材料が揃っていたら、自明の理で犯人が導き出されてしまってもおかしくないんですよね。
ただ、この場合だと起こってしまった結果から、その際に起こっていた状況を鑑みて当てはめ逆算していくことで凛音の推理を推理していく透矢の手法は適用できないんですよね、これ。
まだ事件が起こっていない何が起こるのかわかっていない段階だと、透矢は推理しようがないのですから。推定無罪、以前の問題だこれ。
透矢の信念からしても、まだ起こっていない事件の犯人捕まえて事前に防犯、というのもできないだろうしなあ。いやこれ、犯人に今から何するかわからんけれど、とにかく止めろ! という風に止める事は出来ると言えば出来るのかもしれないけれど。知らんぷりされたらどうしようもないなあ。でも、まだ何もしてない段階から、でも準備を整えて行動に移る用意が完了している段階でそんな指摘を受けたら、抑止効果は発揮できると言えなくもないのか。
でも、今回凛音の能力では、教唆犯まで推理は届かない可能性が高い、という話も出てきて、彼女の能力にも大きな陥穽があるとわかったのは大きいかも。

しかし、今回の話を見ていると実質ラスボスになるのは、明神先生になるのだろうか。ある意味、凛音に閉じこもる鳥かごを用意していたのは彼女なわけですし。


王様のプロポーズ 極彩の魔女 ★★★★   



【王様のプロポーズ 極彩の魔女】  橘 公司/ つなこ 富士見ファンタジア文庫

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世界を統べる魔女の身体と力を手にした少年の、最強の初恋!

久遠崎彩禍。三○○時間に一度、滅亡の危機を迎える世界を救い続けてきた最強の魔女にして、魔術師が通う学園の長。

「――――君に、わたしの世界を託す――」

そして――玖珂無色に身体と力を引き継ぎ、死んでしまった初恋の少女。無色は彩禍の従者、烏丸黒衣から彩禍として誰にもバレないよう学園に通うことを指示されるのだが……。クラスメイトや教師にさえも恐れられ、再会した妹からは兄のことを好きという相談を受ける波瀾の生活が待ち受けていた!

「お静かに。手元が狂います。――いえ、口元が、でしょうか」
さらには油断すると男性に戻ってしまうため、女性からのキスが必要不可欠で!?

「デート・ア・ライブ」のコンビが放つ新世代最強の初恋!
大長編となった人気シリーズ【デート・ア・ライブ】を完結させた橘先生が、新たに送り出してきた新シリーズがこれ。おなじみ、イラストはつなこさん。
新しいシリーズはじめるのは久々なだけに、どうなるかとも思ったのですがそこはさすがベテランというべきか。盛り上げどころというのを把握しきっていて、この一巻の中に見所がどれだけあるか。その上でクライマックスには幾つもの予想外の展開を襲いかからせて、盛り上がる盛り上がる。
まさに怒涛の勢い。
これぞシリーズ開幕のお手本というくらい、理想的な第一巻だったんじゃないだろうか。正直、引き込まれました。現状で既にめちゃくちゃ面白く、これから広がっていくだろう物語はメチャクチャ面白そう、なのですから。
肝心要の主人公・玖珂無色は真面目にぶっ飛んでいますなあ。いや、変態とか異常者の類じゃないと思うんですよ、多少頭おかしいだけで。
デート・ア・ライブの士道はあれで基本無味無臭タイプだったんですが、それと比べると明らかに頭おかしいです。まあ橘さんの作品の主人公は基本頭おかしいので、それらと比べると大人しい部類なのでしょうけれど。ましてや、橘作品のガチの変態たちはガチの変態なので、それこそ比べるまでもありません。それと比べてしまうと大概のキャラは常識人になってしまうので、相対的に見ると無色も常識人に違いありません。
いきなり死にかけている女の人を見て一目惚れしてしまっている時点でどうかとも思いますが。
そして、自分も殺されかけた上で意識を取り戻したらその一目惚れした女性・彩禍に自分がなってしまっている、というとんでもない状況に驚く前に彩禍さんとお近づきになれた(融合してます)わーい♪ となっている時点でどうかしていると思いますが。
それだけでもとんでもない状況なのに、そこから久遠崎彩禍に成り代わり、周囲にバレないように魔術の学園の理事長になったり平均300時間に一回世界滅亡の危機が訪れているこの世界を救ったりしなければならない、という立場に追い込まれてしまった無色。
まるで知らなかった世界の現状に魔術という要素、そして突然世界守護の要として彩禍の代わりを勤めなければならない、という状況はかなり追い詰められたもののはずなんですが、無色ってわりとこれを卒なくこなしていくんですよね。普通ならパニックになって焦って周囲からどうしたんだろうと変な目で見られながら、自分の無力さに打ちひしがれて、なんていうイベントをこなしていくのがテンプレートだと思うのですが。
無色の場合、彩禍さんの代わりを見事務めたら彩禍さん喜んでくれますっ!というウキウキ感でサクサクっとこの辺軽くこなしていくの、彩禍しか眼中になくて、うんヤバいやつですね。
これで、自分のものになってしまった彩禍の身体とか自分で弄って喜んでたりしたら変態なのですが、そういう変態性は全然ないんですよね。無色くん、紳士である。究極的にお近づきになれたのに、彩禍を自分のものにしたという認識だけは絶無なわけだ。
後々、彩禍が戻ってきた時に良い印象を持ってもらえれば、くらいの控えめな立ち居振る舞いですし。その意味では、わりと傍観勢というか推しは積極的に絡まず距離をおいて愛でるべし、派なのかもしれない。その上で、よければお近づきになりたい、という気持ちもある、という体で。
そう考えると、妹の瑠璃と趣向はそっくりという事なんですよね。彩禍信者の瑠璃の、あの彩禍萌えで彩禍のことになると頭おかしくなるのに、ちょっと関われただけで大満足してるってな感じの瑠璃のあの彩禍への距離感というか態度みたいなの、まんま無色にも当てはまるんじゃないだろうか。
無色の場合はもっと達観しているというか、彩禍や黒衣が若干引いてしまったり置いてけぼりにされるほど、彩禍推し、彩禍ラブで突き抜けているのですけれど。
いずれにしても、頭おかしい方向性で無色と瑠璃って、確かに兄妹だわな。そっくりだわ!

この自分ではどうしようもない状況に放り込まれながら、振り回されるどころかわりと周囲を振り回しまくる無色。そんなマイペースにガンガン突き進む無色=彩禍の行状に魔術師養成機関<空隙の庭園>は大混乱、という学園コメディでありつつ。
世界は平均300時間に一回滅びの危機に襲われている、という「週刊世界の危機」を上回るペースでえらいことになっている世界の裏事情。それを陰ながら防いでいる魔術師という存在。
なにより、世界最強の魔女、誰も敵うことがない無敵の存在を殺したのは一体誰なのか。様々な謎が、その驚愕の真相と新たな謎を伴って怒涛の勢いで襲い来るクライマックス。
登場人物も主人公の無色をはじめ、見事に最初から個性的で色づいていてキャラ立ちしていました。
あのヤンキーみたいなやさぐれてガラ悪い兄ちゃんなのに授業内容めっちゃ真面目で堅実なアンヴィエット先生とか大好きですw と、現状唯一無色以外の男キャラだけどイイキャラしてますわー、アンヴィエット。うん、とそれ以外のヒロインたちも色んな意味で出揃ってますし……瑠璃は単純なコメディからラブコメから兄バカに彩禍信者という頭おかしいキてるキャラな上にシリアスなバトルまで全部一線級でこなしてしまうので、ちょっと万能すぎやしませんかね!?
そして、唯一彩禍=無色という秘密を知り、その傍らで彩禍の身代わりをする無色のサポートをしてくれる烏丸黒衣の見事なツッコミの数々w
うん、本当の面白かった。一巻から見事に掴んでくれました。物語の行く先として特大の爆弾を置いていってくれた一話の黒幕に、ラブコメとしては常に爆弾の導火線に着火しつづける無色くん。
これは続きが楽しみです。またぞろ、でっかいシリーズになりそうだ。


『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで ★★★★   



【『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで】  岩柄イズカ/maruma(まるま) GA文庫

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男だと思っていたゲーム友達が、実は白い髪がコンプレックスの内気な女の子だった!?
引っ込み思案な少女と織りなす、もどかし青春ラブコメディ!

「シュヴァルツって、女子……だったの……?」
オンラインゲームで相棒としてやってきたユーマとシュヴァルツ。男同士、気のおけない仲間だと思っていたが……リアルで対面した“彼”は、引っ込み思案な女の子だった!?
生まれつきの白髪がコンプレックスで友達もできたことがないという彼女のために、友達づくりの練習をすることにした二人。“友達として”信頼してくれる彼女を裏切るまいと自制するが、無自覚で距離の近いスキンシップに、徐々に異性として意識してしまい……。
内気な白髪美少女と織りなす、甘くてもどかしい青春グラフィティ。
ふぁーー。これはイイなあ、主人公とヒロインの初々しさに心洗われてしまいそう。
杉崎優真と上城ゆいがはじめて出会ったのは、リアルではなくオンラインゲームの中でした。その頃はまだ中学生の年代だった二人ですけれど、現実でうまく人付き合いできずウチに籠もって自然と他人を拒絶して生きていました。それはゲーム上でも同じで、なるべく人と関わらないようにしながら遊んでいたのです。そんな中で偶々一緒に行動するようになった二人は意気投合、ゲームの中で相棒として一緒に遊ぶようになったのです。
それまで他人を遠ざけるようにして生きてきた優真にとって、相棒…シュバルツと過ごす時間は自分の価値観を塗り替えてしまうほど楽しく、彼と遊ぶことをきっかけにして現実での自分の在り方も変えてみようと思い、努力を重ねることになります。以降、優真のリアルは見違えるように彩りを変えていきました。上手く行っていなかった家族関係も良い形で回るようになり、優真は自分の人生を変えるきっかけになってくれたシュバルツをリアルでは会った事もないけれど親友と思うようになったのです。
このように、二人はお互い本名も本当の顔も知らないネット越しの関係だけれど、そんな事は関係ないくらい信頼を寄せ合う友達同士だったのです。でも、そんな二人だからこそ、もっと相手の事を知りたい、もっと仲良くなりたい、と思うことは必定だったのでしょう。
高校への進学を機に、お互いのリアルの情報を話し合った時偶然、自分たちが同じ学校に通うことになっていて、家も思いの外近所だとわかったとき、リアルで会おうとなったのもまた当然のことでした。
でも、それはシュバルツ……ゆいにとっては途方も無い勇気がいる事でもありました。
白い髪という他人にない特徴のせいで、幼い頃からいじめられていたせいで、酷いトラウマとコンプレックスで他人とまともに目を合わせる事も喋ることもできない、対人恐怖症に近いものを抱えているゆいにとって、人と会うために外出するということは本当に勇気のいることでした。
その相手が、自分を受け入れてくれるのか。この白い髪に変な顔をしないか、今まで女の子だというのを黙っていた事を怒らないか。不安や恐怖でどれほど胸を締め付けられていたでしょう。足が震えていたでしょう。
でも、その勇気を振り絞るだけの絆を、優真に会ってみたいという願いを抱くほどに、出会う前の段階で二人の仲は深まっていたんですね。
そうして出会った男の子は、彼女の想像を超えるほどに優しく、自分の怯えや痛みを理解してくれる人でした。
他人とうまくコミュニケーションを取れない時期が長かった優真にとって、ゆいの焦ってうまくしゃべれない様子やそんな自分に嫌悪を覚えて余計にパニックを加速させていく姿は、身に覚えのあることで、だからこそどうすれば彼女の緊張を紐解いていけるか、よく理解できていたんですよね。
上から保護する形ではなく、寄り添って傍らから支える形でゆいと交流していく優真のそれは、もうパーフェクトコミュニケーション以外のなにものでもありませんでした。これから高校に通うというくらいの年齢なのに、ほんとよく出来た子だわー。
でも、同時にみたこともないきれいな女の子にドキドキしてしまう思春期の男の子であることも間違いではなく、相手が女の子だとわかった途端に初めて友達と会うというそれとは違った浮ついた気持ちになってしまう自分に、下心をどうしても抱いてしまう自分に嫌な思いを抱いてしまうところなど、誠実でもあり可愛くもあり、いい子なんですよね。
そんな男の子に対して、ゆいがどんどん心を開いていくのも当たり前で、高校に進学する前にゆいの人と接することへの忌避感を弱める練習として、いろんな所に連れ出して一緒に遊んでくれる優真への信頼が加速していくのである。しばらくしたら、もうべったりと懐いて無防備なくらいにくっついて離れなくなってしまった所なんぞ、ワンコみたいな所もあり、可愛らしくて仕方ないんですよね。
そりゃもう、優真も困る。
優真の義姉がまた破天荒な人物で、自分でブティックなんかも経営している才媛なんだけれど、このお姉さんがまた良い相談相手になってくれるんですね。
お姉さんの手で、それまで人前に出る事がなかったので髪の手入れや服装など野暮ったい格好しかしていなかったゆいが、見違えるように身だしなみを整えられて、素材だけでも傑出していたのに、それを磨ききった形でとてつもない美少女として完成されて出てきた彼女を、ただでさえ全力でしっぽを振りながら懐いてきてくれるゆいにグラグラしていた優真がノックアウトされないはずがなく、完全に女の子として意識するようになってしまうのである。
最初に、恋をしたのは優真の方だったんですね。でも、友達として慕ってきてくれるゆいにこんな気持を抱いてしまうのは不誠実なんじゃないか、こんな下心を抱いて接してしまうのはダメなんじゃないのか、と悩む少年に率直な助言を与えてくれるのがネネお姉さんなのである。
まあ、傍から見ていてお互いを深く信頼していてピトッと引っ付きながら恋にもまだ至らずにふわふわと寄り添ってる二人は、初々しいやら尊いやら、見ていてたまらなくなる関係なだけに、ネネさんが悶絶するのもよくわかるんですよねえ。
下手に手を出さなくても、意識するかしないかの境目で甘酸っぱい雰囲気をたたえている二人は、応援せずには居られないでしょう。悩める少年に細やかなアドバイスを与えるのは、ほんと良いアシストでした。
この時点では、まだゆいは恋に至ってはいなかったんですよね。優真のことが大好きで大好きでたまらなくて、彼のことを信頼しきって頼りにしきって彼の喜ぶことなら何でもしてあげたい、と思うまでになっている彼女ですけれど、それはまだ恋じゃなかったのである。
それは、どうにも自分を異性として意識しはじめているらしい優真の様子に気づいて、優真は自分が彼女として付き合ってくださいと言ったら喜んでくれるかしら? なんて悩み始める姿からも明らかでした。
彼女のそれが恋ならば、そんな風に優真のためだけに、彼が喜んでくれるから、という理由で彼女になろうとなんてしなかったでしょう。
でも、そうした些細な機微に気づくのが、ネネの助言で腹を決めてゆいと一緒にいると決めた優真だったんですね。彼女が自分のことを好きになってくれたら嬉しいし、好きになって貰うために頑張るし努力するつもりだったけれど、これはちょっと違うんじゃないか、と。
ちゃんと察してあげられる。無分別にがっつかずに、しかし安易に拒絶せずに、彼女の心の動きをしっかりと理解してあげられる優真少年のそれは、本当に良く出来ていたと思います。
ゆいへの友情と愛情と優しさが、気遣いが、心配りが、行き届いているんですよね。こんなイイ男の子はいないですよ。
そして、そんな彼の良さを、素晴らしさを一番理解しているのもまたゆいなんですよね。彼がどれだけ自分のことを大切にしてくれているか、想っていてくれているか。これまでも十分伝わっていたけれど、それがオーバーフローするくらい自分の器を満たして溢れ出して、そうして彼女はついに自分の中のドキドキを発見するのである。
彼のことを考える時、思う時、自分でも制御できないくらい心が弾むことを、押さえきれないくらい胸がドキドキしはじめる瞬間を、彼女は自覚するのである。
恋が、そうしてはじまるのだ。

この物語は、二人の男の子と女の子がかけがえのない親友になり、そこから恋がはじまるまでの過程をとても丁寧に柔らかく描き出してくれたとても素敵な作品でした。
作中時間としては結構短いんですよね。学校が始まるまでの春休みの期間。でも、そんな短い時間だけれどとても密度の濃い、人生が書き換えられていく、人の心が、想いがページをめくるように進展していく様子が描かれたものでした。色づく季節、とでも言うんでしょうか。ああ、春なんだなあ。
まさにこれ、タイトル通りのお話でした。

ここからは、恋しはじめた二人のお話。高校という新しい生活に、二人で踏み出すお話であり、意識せずには居られなくなった初々しく可愛らしいカップルのお話。
ぜひ、ここからの二人のお話、読んでみたいです。もう、二人共めちゃくちゃ可愛かったッ。

岩柄イズカ・作品感想

異世界迷宮の最深部を目指そう 16 ★★★★   



【異世界迷宮の最深部を目指そう 16】  割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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――祝福の産声。

――HP0。
相川渦波は死んだ(・・・)。
世界の『一番』は『星の理を盗むもの』ラグネ・カイクヲラ。カナミの肉体はラグネが所持し、彼女に付き従うは『血の理を盗むもの』ファフナー。
……それでも。
『光の理を盗むもの』ノスフィーはそれでも誓う。
人生の全てを『代償』として本当の『魔法』に至り、『お父様(カナミ)』を生き返らせるために。
ノスフィーはカナミの肉体を奪還するべく、ラスティアラたちとフーズヤーズ城突入作戦を開始する――。
全てはこの光満ちる『頂上』で、産声をあげるために。

相変わらず登場人物の殆どが躁か鬱のどちらかに極振りしてるなー。どん底まで落ち込んで病み憑かれるか、真実に目覚めてテンションマックスではっちゃけるか。シーソーみたいにどちらかに極振っていずれにしてもメンタル目一杯になっている。毎回誰かに、落ち着けッオチツケッ、と思ってしまうんですよね。
ほんと、いつも冷静なライナーと精神的にリソースの余裕を抱えているリーパーは重要な要という以上に読んでる方としても癒やしですわ。これも毎回言ってるような気がするなあ。
でも、まさかついに裏切り本性を見せてこれまでの謀の主、黒幕として立ち上がったラグネちゃんが、やってやったぜーー!! ついにカミナを殺してやったぜー! というヒャッハー状態からいきなり速攻で鬱モードに入るとは思わんじゃないですか。
なんでラスボス格として立ち上がった敵キャラが、突然情緒不安定になってネガまっしぐらになっちゃうんですか!w
いやそれも「理を盗むもの」になってしまった弊害、というのもあるのでしょうけれど。ラグネちゃん自身、自己制御出来ないほどに情緒不安定になっていく自分の有様に、これまでの「理を盗むもの」たちと同根のものを感じていたようですけれど。
それでも、「理を盗むもの」になる資格がラグネちゃんにあったということなんでしょうけれど。未練、というよりも自覚だよなあ。
自分の本当に求めるものを見つけよ。
その意味では、敵として立ってはじめて、ラグネちゃんはその中身を解体されたのだ。一つ一つ丁寧に腑分けして、その内側をさらけ出された。選り分けて取り出して裏返して、それらすべてに光を当てて、自己で偽っていたものも騙していたものも無視していた矛盾も、照らし出されてしまった。
今回のノスフィーの光は、彼女がなろうとした魔法は、ノスフィー自身を照らし出し、彼女が本当に求めていた父親を、カナミを照らし出し、その鏡写しとなるくらい似通った存在であったラグネちゃんのすべてを照らし出してしまった。
本当に、全部照らし出してしまった。
カナミも、ラグネちゃんも、もう自分を誤魔化すことも騙すことも出来なくなってしまった。自分のどうしようもなさを、情けなさを、愚かさを、これでもかと突きつけられ、目の前にいるのはそんな憎むべき自分の鏡写し。八つ当たりとしてぶん殴るには、最適最上に一品だ。
その発散の大小をノスフィーに支払わせる、というところまで込みで最高の自己嫌悪をもたらしてくれる。近親憎悪をもたらしてくれる。
それを、お前のせいだ、とぶつけられる事はきっと、彼らが前に進むためには必要……かどうかはわからないけれど、効果的なものだったのだろう。決闘だったのだろう。ノスフィーにとっては大満足で、カナミとラグネちゃんとしては最悪最低のこととして。
いずれにしても、ケリはつけなきゃいけなかった。清算だ。

一方でノスフィーは、自分が成すべきを見つけ、在るべき形を見つけ、あとは光のようにまっしぐらに進むだけ。カナミの妻を名乗って現れたノスフィーだったけれど、そうあらんと振る舞い続けた彼女だけれど、ようやくカナミに対して自分が欲したあるべき形を見つけられたんですよね。
本質的に、ノスフィーはどうやったってカナミの妻ではなく、娘だった。娘として父を慕い愛しながら、しかし立場として妻となりその在り方に殉じようとしたが故の矛盾であり迷走であり苦悩であった。それが解消され、迷いが晴れ、自分の想いの方向性が定まった時、ようやく彼女の光は彼女自身をも照らし出すことが出来たのだろう。
彼女の光の本質は刺し貫くことではなく、優しく包み込むものだったのだろう。淡く暖かな光の雨、今回の表紙がそのようにノスフィーの光を表現しているかのようだった。
その光はラグネちゃんをも受け入れて、ラグネは確かにノスフィーの光に救われたのだ。
しかし優しくも厳しいノスフィーの光は、すべての偽りをさらけ出してしまった。光は、闇のように包み込んだまま眠らせてはくれない。それは朝の目覚めの光であり、指し示し進むを促す導べであった。
ラグネの過去を暴き立て、その野望と信念の欺瞞を浮き彫りにし、彼女の心を解体した。本当の想いを照らし出した。その対面として、親和としてカナミの過去もまたラグネという第三者の目からもう一度映されたのだけれど、まさかここまで無造作にカナミの過去に巣食った違和を引っ張り出すとは思わなかった。
ここまで率直に、大胆に、その現況を指し示すとは思わなかった。
本当のラスボスの存在を、ノスフィーの光は照らし出したのだ。それを、カナミに直視させたのだ。
この認めざる存在を、果たしてどうやってカナミに認めさせるのか、長く疑問に思っていたのだけれど、ノスフィーとラグネという二人の「家族」のお陰というのがまた……辛辣なのか心強いというべきなのか。いずれにしても、相応しい理由であり原動力と成り得るものだったように思います。

そして物語は、ついに核心へ。


婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~ 2 ★★★★  



【婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~ 2】  ふか田 さめたろう/みわべ さくら PASH! ブックス

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魔法使いアレンとお尋ね者の令嬢シャーロットは今日も健全にイケナイことに邁進中!
だけどふとしたシャーロットの仕草に、言動に、アレンは心臓のドキドキが止まらない。
やはり俺は、シャーロットのことを好いているのか……?
それは本当にいけないことだ——

そんななか一行はアレンの古巣・アテナ魔法学院に向かう。シャーロットの妹・ナタリアが密かに留学中らしいのだが、なにやら問題が発生しているようで?

想いが爆発寸前なアレンと、輝く笑顔を見せるようになったシャーロットのめくるめくイケナイ毎日、第2巻!

判断がはやーーいっ!! ふとしたきっかけで、シャーロットへの温かい気持ちが保護者のものではなく、彼女への恋だと自覚したアレン。ここでグダグダとくだらないことで悩まないのがこの大魔王のいいところ。
即断即決、即行動の男である。
ここで自分には資格がないとか彼女の幸せを考えると、などとうだうだする男も多い中で、彼は自分の気持ちに一切嘘をつかない。色んな意味で正直すぎて偽らずにガンガンやりまくった挙げ句が、魔王呼ばわり。むしろ、誇らしげに魔王では物足りないから大魔王と呼ぶがいいッ、と言い放つ男である。そんな無駄で無意味な回り道などで貴重な時間を浪費しないのである。
ここまで自分に正直で居られる、というのはむしろ凄い精神力であると思うんですけどね。
シャーロットには幸せになってほしい。でも、願わくば彼女を幸せにするのは自分でありたい、そんな我欲を清々しいまでに真摯に思える彼は、実にカッコいいですよ。
それに、考えなしに行動するわけじゃなく、ちゃんと周囲に相談もして準備を整える理性も備えているあたり、隙はなし。なんで、シャーロット・ファンクラブとも言うべき街の輩なおにーさんたちにわざわざ相談に行くのか、相談相手間違えてないか? と思わないでもないけど。いや、ある意味義理を通しにいったとも言えるので、それもまた男前なんだよなあ。
おにーさん方と同じく、いつまでもはっきりしない関係のままイチャイチャし続けるんじゃないか、と思ってたんですけどねえ。その辺はっきりした主人公を描くのは、この作者さんとしては慣れたものなのでしょう。
GA文庫の【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく】の作者さんでもありますしねえ。

しかし、恋を自覚してしまうということはシャーロットの外見的性格的な究極的可愛さを保護者目線なんていうフィルターを通さず、ダイレクトに受領するということ。
毎秒更新でシャーロットの可愛さに貫かれてのたうち回るアレンの姿をご愁傷さまというべきか、ごちそうさまというべきか。仕方ないよね、シャーロットかわいいもんね。
うちの娘がかわいい、からうちの彼女が可愛いにバージョンアップしてしまった以上、常に致死量の可愛さ成分で血を吐く大魔王は、毎秒爆発しろ。
シャーロットとお付き合いをはじめて浮かれっぱなしのアレン、ひたすらデレデレしてたな、この男。

と、これだけシャーロットの身辺も安定して、メンタルの方もアレンが全面的に引き受けることで最初の頃のような虚無や諦観も消え去り、本当に幸せそうに笑うようになってくれた。
あとは、残る懸念を解消していくばかり。幸いにしてシャーロットにかけられた指名手配の方は、アレンと住むこの街ではもうシャーロットの人となりが知れ渡り、むしろ街中がファンクラブみたいになっているのでもうコソコソと変装したり隠れたりする必要もなくなってきた。
とはいえ、彼女を苦しめ貶めた実家や故郷の国の問題はまだまだ解消されず、放置されたままなんですよね。なにやら、あちらはより闇を深めているというか泥沼に陥っている様子が、アレンの情報網に引っかかってくるのだけれど。
それよりも、まずシャーロットが実家で唯一好意をもって接してくれていた妹のナタリアが今どうしているのか、というのがシャーロットの心残りだったんですね。
ナタリア、妹なんだけれどまだ7歳……って、結構年離れてたんだ。それだけ幼い娘が周りの空気に流されずに、シャーロットを慕って彼女を庇う姿勢すら見えていた、というのはそれだけ意思の強い娘でもあったのだろう。
それがシャーロットの失踪と指名手配である。どんな想いでいなくなった姉の事を思っているのかと思ったら……グレてたw
わずか7歳でひとりアレンの古巣である魔法学院に留学という形で放り出されて、寂しい想いをしているどころかそこではぐれものたちの希望の星になり、派閥を立ち上げて女親分として姉御肌全開でカリスマになってるの、年齢設定間違えてないですか?
やたらと周りの人に慕われ好かれる、というのはシャーロットの妹らしい人徳とカリスマ性なんだけれど、その方向性が親分肌姉御肌というのはお姉さまとかなり傾向違いますよねw
むしろ、大魔王アレンの系譜なんじゃないだろうか。シャーロットが出奔するまではそこまで我が強い様子はなかったそうなのだけれど……グレたのか。
ヒロインの妹登場、なんてなると恋のライバルにもなりかねないのですが、さすがに7歳というのは範囲外でしょうし、それも考慮しての7歳という年齢だったのかもしれません。
ラブコメとしては、アレンとシャーロットは不動のカップルとして揺るぎなく君臨しそうですしね。

滞りなく恋人関係にまで行き着いてしまった本作のメインのお二人ですけれど、甘酸っぱくもテンポのよいストーリー展開の勢いは、甘ったるさよりもピチピチと弾けるような活きの良さを感じさせてくれるラブコメで、このスピード感は心地よいものがありました。
次はシャーロットの実家へと乗り込んでくれるのでしょうか。アレンの言動はいちいちスカッとさせてくれるので、素直に楽しみです。



シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 ★★★★   



【シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱】  高殿円/雪広うたこ ハヤカワ文庫JA

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2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!
登場人物全員女性! 高殿さんの作品はもっとガンガン読みたいんだけれど、なかなかタイミングがなかったんだけれど、いざ読み出すとめちゃくちゃ面白くてサクサク読めてしまうので、まずページさえ開けばいいんだよなあ。

冒頭からアフガン紛争帰りの軍医ジョー・ワトソンの登場で引き込まれてしまう。本来のワトソン君もアフガン戦争帰りの軍医だったのに、舞台が現代になっても変わらずアフガンに首突っ込んでるイギリスになんだかなあ、という気持ちになる。まあ、現代のアフガン紛争は9.11を端緒にはじまった対テロ戦争の一貫でアメリカ主導だったんだけれど。でも、巡り巡ってそもそもこの地域の紛争がはじまった原因はイギリスだからな!
というわけで、時代背景はがっつり現代。2012年のロンドンオリンピックが開催されている真っ盛りの頃。それでももう10年前になるのだが。
高殿先生、めっちゃロンドンに取材にいっている上に短期だけれど実際に旅行じゃなくて住んだりもしてたんじゃなかったっけか。それだけに、ロンドンの情景描写にはリアルな色彩と息遣い、そして生活感を感じさせるものがあって、眼に心地よい。
とはいえ、ワトソンちゃん、戦地から帰って早々就活に失敗して引きこもるわ、金なくて住む所もなくて、モルグ……病院の死体置き場に勝手に潜り込んで、死体袋を寝袋代わりにして宿代わりにする、というすげえことを平然とやらかしてくれるのだが、そこで図らずも同じく死体袋に入って仮眠を取っていたシャーリー・ホームズと運命の出会いをかますのでありました。
出会いの絵面が酷いなんてもんじゃないんですがw
ホームズシリーズのワトソン君と言えば、凡人の聞き役として頭脳明晰なるホームズ氏の推理に実にわかりやすい反駁と疑問を呈してくれる狂言回しの王様みたいな存在で、この作品におけるワトソン女史も普段のホームズの奇行に苦言をていして常識を諭したり、事件の推理パートに際してはわかりやすい答えにとびついて、と実にワトソンしているワトソンなのである。見事なワトソンっぷり、と言っていいでしょう。
しかし、彼女が平凡か、凡人か、というと……実際の所シャーリー・ホームズに勝るとも劣らない奇人なんじゃ、と疑ってしまうんですよね。ダメンズ趣味なのを除いても。
いや、その前に物語の主役であるシャーリー・ホームズを語らねばなるまい。
自分には心がない、と語る彼女は、胸に人工の心臓が埋め込まれた半機械化人間である……いや、マジで。ただ心臓疾患で人工心臓を胸に埋め込んでいる、というだけならアンドロイド呼ばわりはしないのだけれど、彼女の場合その心臓がどうにも特別性である上に、ネットワークと繋がりミセス・ハドソンというAIと連携していたりするんですね。
ハドソン夫人が人間じゃないんですけど! というのもアレなんですが、シャーリーの電脳との繋がりっぷりが、2012年が舞台なのに一人だけ攻殻機動隊!
ハドソン夫人も「Hey Siri!」とかでは済まない異様に高度なAIですし。ちゃんと元のハドソン夫人という人間は居たらしく、亡くなった彼女の人格モデルを用いているAIらしいのですが、いずれにしてもシャーリーってばホログラムとか普通に使ってるし、技術レベルがひとりだけ100年単位でおかしくないですか? という様相なんですよね。
ワトソン、なんで気にしてないんだ? なんかもうそういうものなんだ、とさらっと受け流しているのですが、彼女の受容力ってちょっと異様なんですよね。
シャーリーのどこかロボットじみた非人間的な挙動、停滞した感情、絶世の美貌が余計に人形めいた雰囲気を増しましているところなど、最初の頃こそシャーリーの異様さがワトソンの目を通じて浮き彫りになるのですけれど。
ワトソンとのシェアハウス生活の中で、一見してわかりにくい中でシャーリーは実は結構表情が動いていたり、感情的な部分が見え隠れしてくるんですね。家族……姉の突拍子のなさに振り回され、自分に与えられた役割に頑ななほどに拘る意地の張り方、そして自分の存在意義、生きる価値についての苦悩など、シャーリーの人間性、人間臭い部分は後半に行くほど顕著に見えてくるのである。
んで、面白いことに逆に平凡な人間に見えたワトソンの異様さがチラチラと見えてくるんですね。その人生の岐路に、いつも男の影がある、男運の悪い要領も悪いお人好しのハーレクイン好きの医者崩れ、というわりとダメっぽい女性という姿の奥底に、シャーリーと普通に友人として付き合えている、シャーリーを取り巻く異常な環境を特に気にせず受け入れて何の隔たりもなく一緒に暮らしている、という所からなにやらワトソンという女性の得体のしれなさが垣間見えてくるんですね。
それは、彼女のアフガン紛争での戦地での経歴が明らかになった時に、はっきりと突きつけられるのである。
いや、ジョー・ワトソンのアフガン時代のプロフィールがちらっと開示された時の、あのゾッとするような感覚は忘れられない。アフガンでなにやってたんだ、このワトソン女史!? そして、なんで平然とした顔でロンドンに戻ってきてるんだ?
巻末の中編で、シャーリーの姉がワトソンの人となりを危惧して個人的に喚び出して面談したその気持も、その危惧も、ワトソンという女性の中にある異様さを見せられると、わからなくもないんですよね。
そんな姉に呼び出されたワトソンを、めっちゃ心配するシャーリーが可愛いのですが。あの姉のちょっとやべえくらいの変態っぷり、人間として明らかに踏み外している人格を身内としてこれ以上無く思い知っていたら、そりゃ心配だわなあ。ジョー・ワトソンが喰われちゃうッ!(性的に)と焦りまくるシャーリーは十分以上に人間らしくて、可愛かったです。
個人的に、シャーリーって妹属性強いし、ワトソンからも普段からよくお世話されているのを見ると、妹属性強い感じがして、イメージとしてはチンマイ容姿を連想してしまうのですが、実際はワトソンよりも背が高い女性としては長身のスラリとしたスタイルなんですよね(ブラはしなさい)。
イメージはメチャクチャ綺麗だけれどちびっ子、なんだけどなあ。

っと、事件の方はシャーロック・ホームズ最初の事件である「緋色の研究」のシナリオとはだいぶ異なっていると思われる。主要人物が全員女性になっている、という事もあってかもちろん、刑事であるレストレード警部や被害者、犯人も全員女性となっている。てか、レストレード警部、ママさんデカなんですが。シングルマザーで、子供もいる中国系の切れ者刑事で、仕事が忙しい時はなんでか子供をシャーリーとジョーのアパートメントに預けていく、という最初からの親密さ。
まあそれはそれとして、事件の方は殺害方法がわからない、被害者たちの共通点がわからない、という謎の連続殺人事件。そもそも殺人なのか、それも連続殺人なのかすらわからない状況で、にも関わらず連続殺人事件じゃないかと想定して動いていたスコットランドヤードは素直に優秀なんじゃないか、と思う。被害者の全員が女性ということもあるのだけれど、様々な意味で女性的な事件であり真相であったと言える。これ、解決側が男だったらなかなか平静な顔して推理とかしにくかったんじゃないだろうか。
と、本作の注目点はこの連続殺人事件が単発の事件ではなく、最初から某教授が絡んでいた、という所なんですよね。宿命の敵は、既にシャーリー・ホームズと運命の糸によって結ばれているのである。そして、その運命に対して、シャーリーは決して超然としていられない。彼女は真実に怯え、IFに苦悩し、正義を果たすことが正しいのか迷い果てている。
そんな彼女を、ジョー・ワトソンは傍らで見守ることになる。果たしてジョーは、シャーリーの友人で居られるのか。その異様な受容性は、彼女たちを救うのか突き落とすのか。
いずれにしてもこの物語において、ライヘンバッハは既に約束された未来なのだ。

そこに至るまでに起こるだろう様々な物語が、シャーリーとジョーの冒険は想像するだに楽しみなんですけれど、まだ続刊一冊しか出てないんですよね。コロナが収まらないとロンドンを訪れることも難しいでしょうし、首を長くして待ちたいところです。その前にバスカヴィルを読まねばですが。


高殿円・作品感想

七つの魔剣が支配する ★★★★   



【七つの魔剣が支配する 察曄 ̄野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第7弾!

キンバリーの今後を左右する一大イベント、決闘リーグの開幕が迫る。三年生に進級し成長を見せるオリバーたちは、そのために三人一組のチームを組むことになった。同学年の中でも実力上位と目されるナナオらは、他チームから徹底的にマークされて厳しい戦いを強いられる。
一方で、例年以上に豪華な報酬と特殊なルールは、教師殺しの犯人を探すための教師陣の罠でもあった。さらに次期学生統括の座を巡る選挙戦もその影響を受け、駆け引きは激しさを増す。
そんな中、ユーリィが追いかけていた「骨抜き事件」の犯人、サイラス=リヴァーモアが動き出す。激動のキンバリーで、屍漁りの魔人は何を企むのか――。

決闘リーグというか、なんかアスレチック競争みたいな……そう、これってなんか大昔の大人気ゲーム「熱血硬派くにおくん」シリーズの「熱血大運動会」をちょっと思い出してしまったんだがw
それはともかくとして、キンバリーの生徒たちが一年生を除いて各学年が全部参加する決闘リーグというイベントが開幕。図らずも次回生徒会選挙の行く先を占う代理戦争、派閥戦の様相をも内包するイベントになってきたのだけれど、それはそれとしてオリバーたちもそれぞれ三人一組のパーティーを作って参加することに。いつもなら、剣花団の6人が3人ずつに別れてパーティーを編成するんだろうけれど、ミシェーラが家の事情もあってステイシーとフェイと組むことに。家の事情とか関係なく、かつて揉めてた従姉妹とこうして仲良く組めるようになったというのは素直に嬉しくなりますなあ。
また、カティとガイ、ピートが3人で組むことになったので、自然オリバーとナナオが前回登場したあの「探偵」ユーリィと組むことに。
剣花団では特に戦闘面ではまだまだ未熟のカティたちが、3人で頑張る、となったのは相変わらず向上心が高くて微笑ましくなる。未熟といっても最初の頃から成長著しく、それぞれの得意分野を順調に伸ばしているだけに、優勝候補のアンドリュー組といい勝負になっていて見ごたえある対戦でした。
アンドリュー、ロッシ、オルブライトの同年代ではオリバー、ナナオ、ミシェーラと並ぶ最強格の三人がチームを組んだのは面白いなあ、と。彼らも最初の頃は色々と能力的よりもむしろ人格的に甘いところや隙や油断、傲慢さが見られたものですけれど、そういった余計なものが削ぎ落とされてホントに強いキャラになりましたよね。アンドリューなんて話の転び方によっては噛ませ犬のまま小物落ちしそうな危ういポディションだったのに、見事に立て直して風格すらある強キャラになりましたし。
なんて、感慨深く思ってたらオリバーたちが戦うことになったバトルロイヤルの他の三組を率いるリーダー格含めた面々が、これまたモブとはとても思えない凄味を見せてくれることに。
いやマジでミストラル、リーベルト、それにメカクレ剣豪ことエイムズの三人にリーベルトチームの狙撃手カミラはこれまで名前を聞かなかったのが不思議というかありえないくらいの強キャラで、特にカミラの狙撃は戦闘中も神業の連発で背筋がゾクゾクするほど研ぎ澄まされたプロのお仕事だったんですよね。
そしてまさかのオリバーやナナオに比肩するほどの剣士だったジャスミン・エイムズ。あとがき読んでびっくりしたんですけれど、ミストラルやエイムズって前に読者から募集していた投稿キャラだったんですね。そうとはまるで想像できないくらい作り込まれたキャラクターに、主人公たちと対等に渡り合う能力以上にその個性と存在感が作者の手の内にあって、まさか投稿キャラとは思いませんよ。
オリバーやナナオの実力はこれまでに嫌というほど知らしめられているにも関わらず、静かに剣でなら渡り合えると自負する、おとなしそうに見えて結構強気でメンタルも動じない不動感があるキャラクターはまさに強キャラでしたよ。ナナオとは違うタイプの静の型の剣客という風格で。
実際、同年代ではまじで最強の一角に入るみたいですし、出番がここだけ、というにはあまりにももったいないので、せめてロッシくん並には今後も登場して活躍してほしいですね。

他の3チームが結託してオリバーのパーティーが集中的に狙われることになったバトルロイヤル。カマセ役とは程遠い練達の技、急造とは思えない巧みな連携、そして得意の分野では他の追随を許さない魔術の粋を見せてくる怒涛の攻勢を、ギリギリの瀬戸際でしのいで3チーム相手に渡り合うオリバーたち。躍動感あり、頭脳戦あり、詰将棋さながらの指し合いあり、と思っていた以上に読んでる側をぶん回してくる楽しさ満載の攻防で、いや満足の面白さでした。
これは観客も盛り上がっただろうなあ。見た目も派手でしたし、見応えたっぷりでしたよ。

まだまだ決闘リーグは開幕したばかり、とこんなガッツリと続く、になるとは思っていなかったのですが、ラストでイベントとは無関係の、以前から起こっていた骨抜き事件がイベントの最中に発生、その被害者があの人、ということでイベントの裏の意義でもある生徒会選挙にも影響が出そうな勢いなんですよね。
それよりも、犯人であるリヴァーモア先輩の目的がなんかヤバそうなのですが。またぞろ魔術の闇を覗き見る展開になりそう。

それはそれとして、先生がちょっと大暴れしすぎである。最上級生含むあの大多数相手でも無双するのか。お互い、殺し合いじゃないので切り札は切らないにしても、化け物しか残っていない上級生相手に、手も足も出させない、というのはさすがキンバリーの教師ということか。
ってか、これらを殺さなきゃならない、以前に二人すでに殺ってるのよねえ。
こんなん相手にしてたら、あと何人犠牲者が出るものやら。その犠牲者候補であるあの子を、成長譚のなかに組み込んでいるの、結果次第では邪悪極まるやりくちですよねえw

あと、今回オリバーたちと同じパーティーで戦ったユーリィ。今まで得体のしれないというか掴みどころのないキャラでいまいちどういうキャラなのかわからなかった所に、前巻の最後でその正体が明らかにされた事で、どういう取り扱いのキャラになるのかと思っていましたけれど。
結構、がっつりとオリバーとナナオのコンビにからめて一緒に戦うことになって、掘り下げたみたいな感じになってるんですよね。正体わかっているにも関わらず、なんか仲間感が出てきてしまったのとか、それこのやり口よw
こうなってくると、ユーリィは正体が明らかにされて底が知れた、のではなく与えられた役割に留まらない可能性を持ってるんじゃないか、と思いたくなってくるんですよね。無知の知であり真理に届くための存在だからこそ、本来の役割を越えた彼だけの発見、到達があって欲しいなあ、と。

なんにせよ、ストーリーとしては続く、になったので早い目に次巻が来てくれることを願うばかりです。6巻と7巻の間そこそこ空きましたしね。まあ、私自身7巻発売されてから読むまでちょっと間あいてしまいましたけど。って、9月にもう出るんだ。ありがたや。


やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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お互いの気持ちを確かめ合い、晴れて恋人同士となった小雪と直哉だが、恋人としての関係を意識して小雪は逆に固くなってしまう。
そんな折、小雪の許嫁として、イギリスからの留学生アーサーがやってくる。しかし彼は一緒にやってきた義妹のクレアと相思相愛だと見抜いた直哉。小雪との両想いぶりを見せつけることで許嫁として諦めさせ、クレアとの恋を成就させるべく立ち回ることに。
なかなか素直になれない二人をたきつけ見守りながら、自分たちの関係を省みる小雪と直哉は――
天邪鬼な美少女と、人の心が読める少年の、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第4弾。

ラブコメってラブコメディというだけあって、甘酸っぱい恋愛模様が描かれると同時に、それを明るく楽しくテンポよく、のコメディチックに描くジャンル、と言えます。
そのラブの部分に比重を置くのか、コメディの部分に重きを置くのはそれは作品それぞれで違ってくるのでしょうけれど、本作は特にこの「コメディ」としてのテンポの良さ、リズム感みたいなものが数あるラブコメ作品の中でももう突出してるんですよね。ある種、ラブコメの究極系として一つの完成を見たんじゃないか、と思ってしまうくらい、最初から最後まで見事なほど息切れの一切ない畳み掛けるような勢いと、展開の連なりの調和が取れた話の転がりかたになってるんですよね。
キャラクターの個性と押し出し、ストーリーラインのスムーズさも相まって、交響曲かという重奏さと軽妙さが合わさってる。
一言でいって、めちゃくちゃおもしろかった。
正直、小雪と直哉が両思いになることで、こんな以心伝心二人一組で物語そのものを牽引するユニットになるとは思ってなかったんですよね。読心能力かという能力持ちの直哉が、素直になれず本心を口にできないのにあっさり本心をぶっちゃけられて右往左往振り回される小雪、というのがこのシリーズのパターンでしたけれど、両思いになってもう開き直っちゃった小雪は、本心全部バレバレなのが当たり前という前提で直哉と付き合うようになってます。
じゃあ本心を素直に口にするようになったか、というとそうとも言えないあたりがまた小雪の可愛らしさなのですけれど、本心を読まれることを前提に物事を考え動くようになったものですから、もうこのカップル、完全に以心伝心になってしまって、二人して動く時一旦立ち止まって相談したり考えをすり合わせたり、というラグが全然なくなっちゃったんですよね。
なので、一切この二人の行動に淀みや停滞がなくなってしまったものですから、話の展開まで全く停滞がなくなって、直哉と小雪の邁進に合わせて話がどんどん進む進む。展開もどんどん転がる転がる。オマケに小雪もなんだか旦那に影響を受け始めたのか、やたらと察しがよくなってきている傾向があり、他の人の言動や思考を先読みするようになりはじめているんですよね。
それどころか、なんか直哉以外と会話する時一から十まで全部話す内容を口に出して話しながら話さないといけないので、なんか最近直哉以外との会話に面倒臭さを感じ始めている、という危険な兆候がw いやそれ、もう完全に直哉専用に調律されはじめてやしませんか? 大丈夫か? そのうち、他人とまともに会話できなくならないか?w

本来なら、徐々に明らかになってくるだろう新キャラクターである小雪の婚約者にして海外からの留学生、アーサーとクレアの事情も、空港で出迎えた初対面の時点で全部明らかになってしまったので、とにかく話が早い。直哉のみならず小雪まで加わって、ガンガンと話を進めていくものだから、余計なエピソードを挟む余地なく最大効率でアーサーとクレアの本心が暴かれていった上に、この兄妹完全に勢いのまま引きずり回されて、気がつけばお互い思いを秘めた両片思いだったのが想い通じ合っている、という怒涛の展開。いや、怒涛すぎるでしょう、RTA(リアルタイムアタック)かよ!
それでいて、直哉と小雪当人たちはというとよそのカップルにかまけて自分たちはどうなんだと言えば、僅かな暇さえあればひたすらイチャイチャ甘酸っぱい雰囲気を出してるのですから、余裕すら感じるダダ甘カップルっぷりでした。
いやー、ここまでしてくれるともうひたすら楽しいばかりでした。この直哉と小雪のカップルは延々見ていられそうですわ。

ちなみに、毎度巻末で繰り広げられる、直哉パパと小雪パパの世界を股にかけたトラブルバスターズも、これスピンオフで見てみたいくらいハッチャケてて面白いんですよねえ。

さて、次は直哉と小雪のカップル反対勢力の本命となる小雪のお祖父様が登場するのか。既に会ったら直哉相手に即陥落だよね、と皆の意見が一致しているあたり、まったく障害になりそうにないけれどw




ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七 ★★★★  



【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七】 秋田 みやび/しの とうこ 富士見L文庫

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芹が呪いを受けていた!? 原因を除くため、形代の式神・青竜が目覚める。

“北御門”が呪詛で狙われた廃遊園地の一件を切り抜け、大学でも新年度を迎えるころ――ところが芹は、どうにも体調が優れない。
その様子に呪いの兆候を感じた皇臥は、芹に北御門への呪詛が効かなかったのは、すでに彼女が別の呪いを受けていたからだという可能性に思い至る。皇臥は事態を重く見て、災いを受け流す役割を持った式神・青竜を呼び覚ますのだが……なんとその姿は、若い頃の皇臥そっくりで!?
呪いも旦那も増殖中? 受難の仮嫁とぼんくら旦那は、呪いの源に迫れるか!?
ああもう、この旦那ホントにかわいいなあ!!
往々にしてこの手の下げる評価を受けてる主人公って、実は有能だったり天才だったりするのですけれど、皇臥って掛け値なしにぼんくらなんですよね。陰陽師としての腕前は最大限評価して普通。苦手分野多すぎるし、得意の式神製作も今回の青竜の如月も出来栄えはともかくとして、面倒がってアップデートしてなかったとか、何をやってるんだと。
本当の本当にやや駄目よりの凡庸な陰陽師で、覚醒の余地とか完全にないんだよなあ。
かといって頭のほうが冴えているかというと、こっちもぼんくらと言われても仕方ない右往左往っぷりで、オマケに芹に秘密に事を進めようとして、史緒佳お義母さんにこっぴどく叱られる羽目になってるし。
嫁さんの前で母親にガチで叱られるって、恥ずかしいなんてもんじゃないですよ。でも、それとなく皇臥を庇ってフォローする芹が実に良い嫁してて、史緒佳お義母さんもあとで感謝して褒めてましたけれど、あれは良いシーンでした。
という風にやることなすことぼんくらで、芹がかけられた呪詛に関してもあれ正体を見抜いたのって偶然の産物に近くて、皇臥が鋭く見抜いたってわけじゃ全然ないんですよね。それどころか、予想がことごとく外れるわ、芹を護るための防衛策が片っ端から効かないわで、文字通り右往左往してましたもんね。
ただ、芹のために必死で一生懸命頑張ってるのだけはこれ以上無く伝わってくるんですよ。余裕ない分、必死さが焦りが懸命さが余計に伝わってくる。芹に黙って対処しようとしていたのも、芹を不安がらせないためですし、芹の事が心配で心配でたまらないというのがヒシヒシと伝わってきて、もうそれが可愛いというほかなく。
形代という身代わりの生贄役である青竜を使いたがらなかったのも、皇臥が式神たちを使役する道具ではなく家族として愛情を注いでいるのが良く分かるエピソードでもありますし、彼の優しさというのは随所に見られるんですよね。そういうところが陰陽師として甘いところだと言われたとしても。
かっこ悪いところもたくさんあった、でもそういう時って自分のメンツ度外視して、芹の気持ちを組んで彼女の心身だけじゃなく芹の友人たちや置かれた環境ごと守ろうとしてくれている時で、それを叶えるためならどれだけ自分の無能をさらけ出してもいい、自身が格好悪いことになっても構わない、という姿勢って……カッコいいんですよ。
かっこ悪いのが、カッコいい。
いやほんと、あの兄貴に頼み込むシーンはダサダサで恥ずかしいしみっともなくてかっこ悪い事この上なかったんだけれど、それが本当にかっこよかった。
芹がそれを見ていて、もうなんかアテられちゃったの、凄くわかりますわー。
女の人が男のことを可愛くてたまらない、と思う場面ってこういう形もあるんだなあ。

その芹の方も、今までの生き方のせいか不安や辛いことがあっても、表に出さずに誰にも弱みを見せず大丈夫大丈夫と流してしまっていた自分に、友達からわりと厳し目に指摘受けてようやく気づくことになるんですね。自覚が全然なかった分、きっとたちも悪かったんだろうけれど。
目に見えて不調なのに、病院行ったらという心配に、全然大丈夫だから、と返すのって相手からすると何も安心できることはないんですよね。心配をさせてもらえない、気遣いを受けてもらえない、というのは心の壁になるんだろうなあ、これ。
そういうのを取っ払って、ようやく「家族」になるわけだ。芹としては、もう気持ちは北御門家の一員のつもりだったと思うんですよ。でも、家族という関係に今まで慣れ親しんでいなかった彼女にとって、意識しない所でこういう隔たりが生じていたんですなあ。まあ、皇臥たちもそんな壁とか気にするほどのものでもなかったんでしょうけれど、それでも芹が意識して皇臥たちからの心配を受け取ろうとしたことで、今まで以上に芹の中で心理的な隔たりが取っ払われたような気がします。
なんか皇臥との距離感も、元から全然近かったけれど、もっと深い所でしっかりと繋がった感があって、今まで以上に夫婦然として見えるようになった気がしますもんねえ。

あと、護里ちゃんと祈里ちゃんの可愛さが相変わらず天元突破なんですけど! この幼女バージョンも、蛇と亀の式神モードになっても変わらない可愛らしさといったら、なんなんですかね!?
仕草から台詞から、あのきゅーっと抱きついてくるところとか、もう何から何まで可愛いんですけど。かわいいなー、かわいいなーー!! 

さあ問題もすっきり解決して、平和な家庭の団らんが戻ってきた……と、思うんだけれど、なんだこの不穏な空気は。なんかまた怪しい人が暗躍してるっぽいし。できればこの家庭はほんとに平和で居て欲しいんだけれど。


天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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ウルベスでの独断専行が家臣達の反感を買い、しばらく国内で大人しくすることにしたウェイン。
その矢先、大陸西部のデルーニオ王国より式典への招待が届き、妹のフラーニャを派遣することに。
しかしそこでフラーニャを待ち受けていたのは、数多の思惑が絡み合う国家間のパワーゲーム。一方で国内に残ったウェインの下に、大陸東部にて皇子達の内乱が再燃という報せが届く。
「どうやら、東西で両面作戦になりそうだな」
グリュエール王の失脚。皇子達の陰謀。東レベティア教の進出。野心と野望が渦巻く大陸全土を舞台に、北方の竜の兄妹がその器量を発揮する、弱小国家運営譚第十弾!

うわーーっ、今回はウェインは完全に盤外にあって、一から十まで主役はフラーニャだ!!
マジかー。これまでも一部の局面でフラーニャ主体となって状況を動かす事もあったし、物語としてもフラーニャ主役で動く場面もありましたけれど、一冊丸々フラーニャ主人公として描くとは。
それだけ、王女フラーニャの役割がこの作品の中で重要も重要、最重要になってきたという事を意味しているんだろうけれど、それにしてもフラーニャの活躍が予想を遥かに上回るもので、まだまだこの娘の事を見縊っていた事を思い知らされた。
今までも既に政治の表舞台に立ち、戦火の最前線に立たされた都市で演説をふるって市民の指示を取り付けたり、意外なカリスマや政治センスを見せてくれていたし、お飾りを脱して自分で考える事が出来る王族として、ウェインの代理で外国に使節として派遣されるなど、大きな仕事をこなせるようになってきたフラーニャでしたが、それでも今までは兄ウェインの指示を受けていたり、突発的なことに襲われても受動的に対処する、という方向に徹していたんですよね。
でも今回は……間違いなく、自分で考え自分で介入し政略謀略が渦巻く国同士のパワーゲームのという盤上で自ら局面を動かす「プレイヤー」の一人として動いていたんですよね。
それはウェイン王子やロワ皇女、グリューエル王といった世界を動かしせめぎ合うプレイヤーたちと同じ土俵の上に立ったということ。
それどころか、同じようにシジリスの後を継いだデルーニオ王国の宰相や、王女という立場から国を動かし世界情勢に関与するウェインたちと同じ立場に立とうとしたトルチェイラ王女といった野心家どもと同じ盤面で指しあった結果、役者が違うとすら言っていいかもしれない手練手管を見せつけてくれたのですから、もう刮目して瞠目ですよ。
まさか、ウェインのプレゼントという決め手があったとはいえ、トルチェイラを手玉にとって見せるとは。トルチェイラにとっては敵として相対したいのはウェイン王子であって、フラーニャなんて眼中にもない、と思いたがっていたのに、完全にしてやられたわけですからね。実際は、色々と着実に実績を上げていたフラーニャのことめっちゃ意識していたくせに、取るに足らない相手と無視するから。油断であり傲慢であり、プライドの高さが足を引っ張ってしまったか。
その点、フラーニャは素直で人の話も良く聞きますし、一方で自分の意見をちゃんと持っているし、兄ウェインを尊敬している分、自分の能力を過信しませんし。
何より、その善良さが悪い嘘をつかない姿勢が、騙そうとしないあり方が、人から信頼を寄せられ、味方を増やすカリスマになっていて、こればかりはウェインを含めて他のプレイヤーにはないフラーニャ独自の武器なんだよなあ。
ロワも表看板では似たような路線で評判上げてますけれど、中身がウェインと思いっきり同類なだけにフラーニャと比べるとすげえパチモン感がw
いや、ちゃんとロワはウェインと同レベルの大陸屈指の謀略家であり政治家なのですけれど、あの中身のポンコツさを見てるとなあ……パチモン感あるよなあw
今回もウェインの謀略の片棒担いで悪巧みしまくって、他の皇子たちの勢力を削ぎまくった挙げ句帝国の実権をほぼ握るという躍進を見せているのに、「だるーん」とか言ってるユルユルの姿を見せられるとねえ……ロウェルミナってもしかしてこの作品のマスコットじゃないのかと思えてくる。
……かわいい。

今回の一件でシリジスの心からの忠誠を勝ち取ったフラーニャですけれど、実際にプレイヤーとして動いたことで、遠く離れた土地で事の推移をすべて見通していた兄の凄味を本当の意味で思い知る。同時に、彼女の知見が高くなり鋭くなるほどに、ウェインという兄の真の姿が見えてくる。
果たして、あの愛する兄にナトラという国を預けていて、本当に大丈夫なのか。そんなフラーニャの心のなかに芽生えた僅かな疑念に、シリジスの野心や復讐心からではない心からの忠信ゆえの指摘が突き刺さる。
プレイヤーとして立ったがゆえに、フラーニャ自身自分が歩むべき道、その岐路に立たされるという凄まじい回でありました。
でも、そのフラーニャの選択ですら、ウェインの思惑の上っぽいんだよなあ。いったいどの段階からフラーニャのことをここまで成長すると見込んでいたんだろう。当初は政治の何も知らないお兄ちゃん大好きなふわふわとした王女様だったのに。そんなフラーニャをただ猫可愛がりしているだけに見えたのに。
まあ、猫可愛がりしているのは今も変わらないのですが。

ついに毒蛇にニニムの正体がばれ、彼女がウェインの心臓というのみでなくこの大陸の行く末を握る心臓であることが発覚し、表舞台に引きずり出されそうな気配が漂ってきたことで、さて事態はどう動いていくのか。
いやー、先が読めないしドライブ感のとどまらない政治劇、謀略劇に、ワクワクが止まらんですわー。


浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。 ★★★★  



【浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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『――絶対に、連れ戻す。地獄の果てまで、お前を探しに行ってくるから。』

「茨木真紀は、まだ、助けられるぞ」ライの凶刃に真紀が倒れ、絶望に暮れる馨。そこへ助言を与えたのは、宿敵・安倍晴明の生まれ変わりである叶だった。
彼女は前世“茨木童子”の重ねた罪で、地獄に魂が囚われている。閻魔大王の判決を覆し、連れ戻せれば目覚める可能性はある、と。
一縷の望みに、馨は迷わず地獄へ向かう。そこでは姿が前世“酒呑童子”に変わり、鬼の獄卒として出世していくことになり……!?
彼岸花の咲く地獄の果て。朽ちゆく大魔縁・茨木童子――真紀が待つ、その場所へ辿り着くために。

おおっ、大魔縁・茨木童子モードの真紀ちゃん、見た目カッコいい!
前回、ライによって死んでしまった真紀ちゃん。いや、肉体的にはまだ死んでなかったものの、魂の方が地獄へと堕ちてしまったんですね。その真紀ちゃんを復活させるためには、直接地獄へと赴いて彼女の魂を連れ戻さないといけない。
こういうパターンだと日本の場合は黄泉の国へと赴くことが多いのですけれど、地獄まで行ってというのは結構珍しいんじゃないだろうか。地獄から戻る話って、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」くらいしかパッと思いつきませんしね。
つまるところ、地獄ってそれだけしっかりと組織だった「監獄」なんですよね。そこに落とされた死者は、裁判によって罪人と定められた囚人たちである以上、安易簡単にその罪を許して地獄から出してやるわけにもいかないし、勝手に抜け出したり連れ出したりしたら脱獄になってしまう。
そら簡単に地獄から現世に戻る話がないのも理解できようというもの。蜘蛛の糸の話は、仏様による恩赦あってのことでしたしね。
てっきり、真紀ちゃんは地獄に落ちようとあの真紀ちゃんなのですから、いつものごとく大暴れして地獄の鬼どもを屈服させるか心酔させて、お山の大将かみんなの姐御みたいになって地獄に君臨しててもおかしくはないなあ、と楽観的に考えていたのですが。
地獄というのは上記したようにしっかりとした組織によって運営されているもので、ならず者や無法者たちが好き勝手して暴れている場所じゃあないんですよね。ヤクザかチンピラ相手なら、真紀ちゃんが一発暴れて改心させて、という展開もあるのかもしれないけれど、地獄の鬼たちは鬼であっても獄卒というちゃんとした社会人であり、当人たち曰く社会保障制度によって守られた公務員という安定した職についている勤め人たちなのである。
いやそりゃ、真紀ちゃんと相性悪いわ。弱者を虐げている乱暴者相手に一暴れするのならともかく、真面目に働いている人相手に暴れたら、ただの悪い人だわ。
なればこそ、こういう時こそ馨くんの出番なんですよね。真面目で細かい所によく気がつくマメで責任感の強い馨くんが。まだ高校生にも関わらずバイト掛け持ちでよく働き、勤務先の評判もよく、社畜の気質もあるんじゃないだろうか、という勤め人気質の馨くんは、この公務員組織な地獄にもよく肌が合うんじゃないだろうか。というか、天職なんじゃないですか、これ?
実際、叶先生の手引で獄卒の採用面接を受けることになり、新卒として下っ端から採用された上に、その真面目な勤務態度と勤務成績から若手のホープとして順調に獄卒として出世していく馨くん。
……こいつ、前世酒呑童子で反秩序の旗頭みたいな存在だったくせに、なんでこんな組織の歯車として働く勤め人が似合う男になってるんだ?
いやこれで、ちゃんと家庭を大事にする所はしっかりしているので、家庭的だし家計を担う大黒柱としても頼もしいし、結婚する相手としては優良以外のなにものでもないんだよなあw
真紀ちゃんとしても、そのへん不満を覚えたこと一切ありませんし。

鬼が暮らす環境として、地獄は思いの外仕事環境のみならず、生活環境の方も公共福祉に至るまで完備されてて、実に暮らしやすそうなので、いざとなったら地獄の方に生活基盤持ってもいいんじゃないだろうか。獄卒の鬼のみなさん、みんなイイ人ばかりでしたしw
とはいえ、今の馨くんたちの故郷は現世であり、細かく言うと浅草こそがホームであり、待っている人たちも沢山いるのだから、夫婦で幸せになるのならやはりそこで、なんですよね。
これまで馨が知ることのなかった、大魔縁・茨木童子としての真紀の姿を目の当たりにすることで、彼女が千年以上に渡って抱えていた苦しみ、悲しみ、彼女が背負った罪と業を彼はようやく夫として受け止める機会を得ることになる。
きっと、それを知らなくても二人なら幸せになることは出来たかもしれないけれど、真紀ちゃんだけが罪の意識を背負い続けるのではなく、夫婦で分け合って背負っていけるというのはまた全然違ってくるものがあるでしょう。
叶先生、本当にこの二人には何の憂いも蟠りもなく、幸せになって欲しかったんだなあ。そのために、随分と胡乱で面倒くさい手順を踏むことをしていますけれど、いちいち説明しないのって変に言っちゃうとシナリオ通りに進まないから、というのもあるんだろうけれど、この人説明するのが面倒くさいと思ってる節があるように見えるんだけどなあw
おかげでやたらと胡散臭く見えてしまうけれど、仕方ないよね、胡散臭いし。まさか、こんなに裏表なく真摯に二人のことを思い遣っていたとは思わないじゃないですか。胡散臭いし。性格悪そうだし。いや、性格歪んでいるのは間違いじゃないでしょう、この人の場合w
ともあれ、ミクズの本当の目的もわかり、どうして彼女が裏切ったかの理由も理解できたので、だいぶ全体すっきり晴れた気がします。叶先生の正体の方もはっきりしましたしね。

なんか、次の展開浅草を離れて京都の陰陽師の学校での学園編開始! みたいなネタフリもあったのですけれど、シリーズとしては次回が最終巻なのか。学園編、真紀ちゃんが悪役令嬢ばりに暴れてくれそうで、結構読んでみたいんだけどなあ。


恋は双子で割り切れない 2 ★★★★   



【恋は双子で割り切れない 2】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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割り切れないからこそラブコメは続く? 双子姉妹の誕生日、どうする!

わたしの妹は昔から賢くて、変わり者で、自由だった。
純と付き合うよう仕向けたわたしの狙いにも容易く勘付き、結果、那織の策略によって三人のこじれた関係がリセットされるに至ったのが先日のこと。
那織曰く、「単純明快な三角関係でしょ? 私はもう手加減しないからね」
だからこれからは正々堂々の勝負……なはずだけど、やっぱりこじれてばかり。
友達の慈衣菜は純に勉強教えて欲しいとか言い出すし、那織は機嫌が悪いみたいだし、純は恋愛そのものから距離を置こうとするし。わたしはと言えば、まだこの状況を素直に飲み込めなくて。
そんな中、わたしたち姉妹の誕生日が近づいてくる。……だからちょっとだけわがままを言ってみたい。昔みたいに、キスをして、って。
くわー、どちゃくそ面白いなあ。
1巻はほぼほぼ那織の手のひらの上、という感じで彼女の頭の回転の速さと突出した感性に振り回されたものですけれど、2巻はそんな彼女も思うがままに学校生活すいすいと泳いでいるわけじゃない、大きな弱点もあれば逆に振り回される展開もあり、ままならなさに頭抱えているのは彼女も変わらず、というのがよく見えてくる回でした。
というか、一旦視点をちょいと俯瞰的にした感じですよね。というより焦点を純と双子姉妹からちょっと後ろにさげて、琉実と那織、そして純の三人の交友関係にまで広げて改めて三人を取り巻いている環境を描いた、というべきか。
意外と三人はそれぞれのグループで離れて過ごしているんだけれど、同時にその3グループ間の交友もあって……いや、那織は人見知りもあってか琉実のバレー部の部活仲間とは接点持たないようにしてるわけだけれど。運動部で活発なバレー部の面々をやたら罵倒しまくってたくせに、いざそのグループに囲まれたら途端に寡黙になって表情閉ざしちゃうの、申告よりも酷い人見知りの内弁慶だなおい! どうせその際も内心ではめっちゃ早口に複雑でサブカル知識満載した罵詈雑言をつぶやいていたに違いないの容易に想像してしまえるのが、なんか笑える。
そんな彼女の頭の回転の速さについていける、というか対等に面突き合わせる相手っているのかねえ、とその役割を担っているらしい「部長」をどこか胡乱に見ていたんだけれど……いやあ、この娘はこの娘でとんでもねえなあ! むしろ対人能力ある分、那織より物事への柔軟度高いんじゃないだろうか。
まさか前回の那織に匹敵する人間関係を巡る謀略を見せられるとは思わなかった。関係者の殆ど、知らず識らずに手玉に取られてたって事じゃないですか。いや、前回の那織みたいに結論がひねくれているわけではなく、友人のあの子と仲良くなりたいという要望を叶えてあげただけ、ではあるんですけれど、やり方の迂遠さが! もって回っているうえに悪戯心満載なやり方が、那織曰くの邪悪!というの、わかっちゃうわー。
いやー、この歳でその悪魔的な蜘蛛の糸的なシナリオの描き方、エグくない!?
本質的な意味で那織と対等なのがよくわかった。
それでいて嫌がらせではないんですよね。那織にとって最適でスムーズな交友関係の広がり方をしたわけですし。散々、引っ掻き回されて悩まされて地団駄を踏むはめになったのは兎も角としても。
いやー、邪悪だw
でもほんとに那織みたいな子は「友達」足り得ると自認できる相手が、本当に少ないだろうから、もし友達になったとしたら一生モノなんですよね、それを見繕えるんだからなあ。
まあ、相手側からは友情ではない、というカードを伏せちゃっているあたりが実に邪悪ですがw 
最初、部長と那織の出会った当初が不倶戴天の敵同士だった、というのもこうなるとよくわかりますねえ。こんなん、最初から息が合うわけないじゃないですか。元々敵を作りやすい那織ですけれど、その敵というのは那織という存在を理解しきれず未知であるからこそ、その尖りっぷりばかりが突き刺さって敵意を抱いてしまうと思うのですけれど、部長の場合は同じステージに立ってしまったからこそぶん殴り合う以外なかった関係とも言えるので、ある意味本物の敵だったんだよなあ。
最後の那織の独白で引用されてた詩の作者であるテニスンの言葉を借りれば、He makes no friend who never made a foe(一人の敵も作らぬものは一人の友も作れない)という感じですか。
那織は敵を作ってしまうところもあるけれど、意図的に相手を敵認定していくところもあるんですよね。慈衣菜は元より、純を巡っての恋模様に関しても姉の琉実をしきりに敵としようとしている。
まあ、琉実相手はどれだけ那織が敵扱いしようとしていても、実際那織がやってることは琉実に助け舟出してばかりで、口で言う敵だ敵だという台詞は狼が来たぞにしか聞こえなくなってきているのだけれど。
それを一番わかってるの、琉実ですしねえ。この姉妹、仲が良すぎる。
実際問題、那織が仕掛けをして一旦拗れてしまった純との関係を三人でリセットしたの、今回の安定した琉実と純の様子を見ていると、あれ本当に正解だったんだなあ、というのがよくわかるんですよね。
ああやってリセットしていなかったら、元の幼馴染の気安い関係にも戻ること出来なかったでしょう。気軽にお互いの家を行き来することも、普通に学校で会話することもなく、疎遠になっていってしまったのが容易に想像してしまえる。
リセットしたからこそ、幼馴染以上恋人未満という淡い関係でもう一度、リトライする環境が整えられた。あんな、ハグしてとか甘えられること出来なかったでしょうし。
結局、早すぎたんですよね、付き合うの。幼馴染という関係を喪失して恋人になってしまった以上、その恋人という関係が終わってしまった時に日々激しい変化を迎えている高校生じゃ元に戻ることも出来ない、はずだった。
まああのままズルズルと幼馴染という関係を続けていった結果、関係そのものが腐ってしまう可能性もあったので、三人の関係に大きな刺激を与えるという意味で琉実が純と付き合ったこと自体は否定されるべきじゃないのでしょうけれど。ことを姉が起こすことで起動に成功し、その後始末というかリカバーを妹がして、というのはよく出来た手順じゃないですか。
一方で、純が何も出来ていない、というのもまあ確かな話なんですよね。わりと卒なく、姉妹の機嫌とって対処もスマートにこなしているのは結構凄いとは思うのですけれど(誕生日プレゼントの渡す順番とか、かなり気を遣ってるのが見受けられましたし)、それでも受け身のままなあなあで過ごしちゃってる。自分でどうこうしようとせず放棄してしまっている、という指摘は彼にとっては痛いものだったんじゃないだろうか。
まあでも、だからといってどちらかを選べ、というのもナンセンスな話だとは思うのですけどね。姉妹側もそういうのを求めてるんじゃないでしょうし。いや、最終的に自分の方を選んで欲しい、とは思ってるんだろうけれど、でも選んで欲しいと思ってるんだろうか。
那織は自分では好戦的に行動を起こそうとしているつもりみたいだけれど……あれで、琉実に純となにかやってるのかを秘密、というか特に言う必要も感じずに後回しにしてたというくらいなのですけれど、やたらと拗ねてましたしねえ。あそこで拗ねるのって、出し抜かれる云々というよりも除け者にされたという感覚の方が強いみたいで、それって三人一緒という意識が強くないと生じにくい感覚でしょうしね。那織ってそういう所、自分で思ってるよりも相当に現状維持派に見えるんだよなあ。

いやー、ほんとこの作品、登場人物見ているのがやたら楽しいですわ。人間関係が多角的な分、いろんな方向からキャラの側面が見えてくるし、掘り下げ方も深さから方向から多種多様でそのキャラを覗き込むのがほんと面白い。1巻のようなインパクトは、あの展開のひっくり返し方を何度もやられたらたまらんという所もあって、ありませんでしたけれど、その分縦横に世界が広がり奥行きもさらに覗けるようになって、噛めば噛むほど味が滲み出てくる感じでどちゃくそ面白かった!
これは先々も楽しみだなあ。


時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 2 ★★★★   



【時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 2】  燦々SUN/ももこ 角川スニーカー文庫

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動き始める二人の恋と会長選。話題騒然の青春ラブコメディ、第2弾!

「す、好き? 好きって、え? 違うのよ。ちがうぅぅぅ~!」
「なぁ~にが『支える』だよ。あ゛ぁ~俺マジでキモイ痛い!」
黄昏時の校庭での密事。
互いに煩悶するアーリャと政近であったが、二人はコンビを組んで会長選を戦い抜くことを約束する。
圧倒的なカリスマを誇る次期会長候補筆頭・周防有希との対決に向け、アーリャと政近は対策会議をはじめるのだが――
「さて・・・・・・じゃあ、会長選の話だが」「・・・・・・Круто」(ぬぐぅっ!)
ロシア語の甘い囁きにドキマギしてしまって!?
罵倒してきたかと思えばデレてくる、美少女ロシアンJKとのニヤニヤ必至な青春ラブコメディ第2弾!

いやこれ、妹様の存在感が半端ないじゃないですか。1巻の段階でもワイルドカード的な存在ではありましたけれど、物語における立ち位置といいキャラクターの個性といい、他に類を見ない強度なんですよね。
政近がアーリャの生徒会長選挙のパートナーとして表舞台に立ち、選挙戦を戦うというのは中学の時に意識が高すぎるせいか明確な目的意識無く高みに上ってしまった事への後悔から、本気でナニかをすることからドロップアウトしていた現状をひっくり返す一歩だったわけです。
いわば、政近の再デビューと言っていい状況。それを促したのはアーリャなんですけど、本気になった二人の前に立ちふさがる最大の壁が、カリスマの塊であり全校生徒からヒロインの中のヒロインであり主人公的な存在として一目置かれている周防有希なのです。
同時に、政近の幼馴染という体であり中学時代はまるで双子のよう(!)に息ピッタリの名コンビとして生徒会長副会長を担った二人であり、彼らを知る人達からは比翼の鳥のように思われていたカップルだったわけです。さらに、有希は明確にアーリャに対して政近の事を愛していると宣言して煽りに掛かっている。政近とアーリャの恋愛模様という側面からしても、周防有希こそが特大の刺激物として鎮座しているわけである。特にアーリャからすれば公私に渡って最大のライバルとなっているわけだ。
まさか、その周防有希が政近の実の妹であるとはほとんどの人が知らないまま。
この状況を一番面白がって一番引っ掻き回す気満々なのが妹様なんですよね。まさに黒幕であり、物語そのもののキャスティングボートを握っているのが彼女と言っていいわけです。彼女自身それを自覚的に振り回していて、陰でこっそり黒幕ムーヴして遊んでいるくらいですし。
同時に、遊びではあってもこれ以上無いくらい本気でもある。選挙でも真っ向から叩き潰す気満々だし、恋愛模様でも応援する気はあっても自分程度のちょっかいで日和ったら速攻潰す、くらいの気持ちはあるんじゃないだろうか。この子めちゃくちゃブラコンでもあるみたいだし、ドロップアウトしてしまった兄に本気を取り戻させたのが自分じゃなくてアーリャである事を本気で悔しがってる節もありましたし。
遊びとガチを同時並列的に励起できちゃう才媛なんだろうなあ。
そもそも、日々を思いっきり面白がって楽しそうに過ごしているのって、兄へのアピールも混じってると思うんですよね。跡継ぎの座を妹に押し付けてしまった事に少なからぬ罪悪感を抱いているだろう兄に対して、それを幾分でも薄めるために。まあ本気で面白がっている、というのも本当なのでしょうけれど。あの家での余人に見せることのないダダ甘っぷりも自堕落極まるぐだぐだ妹っぷりも、それが素だし本気だしあれこそが楽な姿というのもあるんだろうけれど、ああやってベタベタすることで兄へのメンタルケアも同時にやってるっぽいんですよねえ。そういうの両方を全力で出来るのって才能だし器用だよなあ、と思うわけです。
いずれにしても、お兄ちゃんめちゃくちゃ大好きですよね、この妹様。あのアーリャへの宣戦布告とも取れる誰よりも愛してる宣言は一切虚偽のない本気であることも間違いないんだろうなあ。

さても、アーリャと政近はそんな妹様に翻弄されながらも、生徒会の一員に加わって業務を手伝ったり、次期生徒会選挙に向けて有希以外の対抗馬と対決したり、と順調に二人で一緒に戦う準備を整えていく。そうなると、気になってくるのがなぜ、相手は自分なんかと組んでくれたんだろう、という疑問。特に政近の方は常に有希とセットだっただけに、唯一無二のコンビを解消してどうして自分なんかを助けてくれるのか、という疑問がアーリャに生まれるのも無理ないんですよね。
でも、そこで立ち止まって悩まずに、政近は私のものだから離さない、と明確に宣言し、さらに彼にふさわしい存在になってみせる、と前に進み続けるアーリャのそれは、間違いなく心の強さ。
そういう気高さ、ひたむきさにこそ彼は惹かれたのか。
いずれにしても、お互いに理由はただひとつ「あなただから」なんですよね。突き詰めればシンプルで、だからこそゆるぎようがない。成長一途の良いコンビだというのを、じっくり見せてくれた二巻でした。


 
10月22日

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10月21日

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10月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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10月19日

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10月18日

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10月16日

(電撃の新文芸)
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10月15日

(ハルタコミックス)
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10月14日

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10月9日

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(TOブックス)
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10月8日

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10月7日

(SQEXノベル)
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(シリウスKC)
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(ガンガンコミックスUP!)
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10月6日

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10月5日

(フロース コミック)
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10月4日

(角川コミックス・エース)
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10月1日

(角川スニーカー文庫)
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9月30日

(バンブーコミックス)
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9月28日

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9月27日

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(バンブーコミックス)
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9月25日

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(オーバーラップ文庫)
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9月24日

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9月22日

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