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わたし、二番目の彼女でいいから。 ★★★★★   



【わたし、二番目の彼女でいいから。】  西 条陽/Re岳 電撃文庫

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俺たちは「二番目」同士で付き合っている――危険な三角関係の行方は?

「私も桐島くんのこと、二番目に好き」

俺と早坂さんは互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている。
それでも、確かに俺と早坂さんは恋人だ。一緒に帰って、こっそり逢って、人には言えないことをする。
だけど二番目はやっぱり二番目だから、もし一番好きな人と両想いになれたときは、この関係は解消する。そんな約束をしていた。
そのはずだったのに――

「ごめんね。私、バカだから、どんどん好きになっちゃうんだ」

お互いに一番好きな人に近づけたのに、それでも俺たちはどんどん深みにはまって、歯止めがきかなくて、どうしても、お互いを手放せなくなって……。
もう取り返しがつかない、100%危険で、不純で、不健全な、こじれた恋の結末は。

これは凄いっ、凄い作品が来たぞッ!
タイトルやあらすじから、爽やかな青春モノとは裏腹のドロドロの男女関係をねっとりと描いてくれそうなラブストーリーとして期待を募らせていたのですが……。

期待を遥かに上回る不純で倒錯的で不健全な恋物語だったっ! これは本気で凄いし、それ以上にやべえよ、やべえよ、不健全だよ、倒錯してるよ!
でも、恋物語なんです。ドロドロの泥沼のような話でありながら、予想外に青春の物語でした。恋に盲目的なほど全力な若者たちの物語でした。
でも、性癖歪んじゃってるよこれーー!!

二番目だけれど恋は恋。早坂も桐島も、二番目の恋を決して疎かにはしていない。たとえ一番ではなくても、その好きは本気の好きだから。みんなには秘密にしているとは言え、二人は彼氏彼女の関係だから。
この時点で倒錯しまくっているのだけれど、主人公の桐島くんがまた性癖歪んでるんですよ、こいつやばいよ。彼が密かに思いを寄せている橘ひかりにはもう既に彼氏がいるという。その彼氏と思しき男の人と一緒の親密そうな写真を、橘は毎日のようにSNSにあげているのだけれど、桐島はマメにそれをチェックしているのだ。好きな人が自分以外の男と仲良くしている、という胸が掻き毟られそうな写真を食い入るように見入って嫉妬に血を吐きそうになって悶えながら……この男、その狂おしいまでの嫉妬心に恍惚となっているフシがあるんですよね。
……それ、寝取られ属性だよ!!
もう趣味習慣になっていると思しき桐島のその行為を、もちろん早坂あかねは知っていて、同時に嫉妬もしている。二番目の好きな彼が自分以外の女に夢中になっている姿に、いずれもし彼がうまく言って一番目に好きな彼女と上手く行ったとしたら、喜んで送り出してあげると決めておきながら、心定めておきながら、早坂あかねは嫉妬に狂うのだ。脳髄を、焼け付くような妬心に湯だたせるのだ。
そしていずれ、橘ひかりもまた、桐島のそんな性癖を、自分のSNSを偏執的にチェックして嫉妬心を募らせている実情を知ってしまうのだが、この娘は……橘ひかりはドン引きするどころか、むしろ前のめりにその事実を利用して、彼の嫉妬心をかき乱すことになる。
彼女の過去、そして現状が徐々に明らかになっていくことによって、この娘もまた倒錯と執着に囚われまくって歪んでいる娘だとわかってくる。

早坂あかねも、橘ひかりもイラストデザインからすると小悪魔的というか自己主張の強そうな娘に見えるのですが、早坂の方は大人しくて引っ込み思案でクラスのマスコットみたいな可愛い系。橘ひかりの方は無表情で感情的にならない人形のようなクールな美少女。と、決して押しの強いタイプの少女ではないんですよね。
それは、基本的に桐島と二人きりになっても変わるわけじゃない。二人共、猫をかぶっているわけじゃなくて、それが決して器用ではない彼女たちが表で出せる顔だから。
でも、桐島相手には心許せる相手だからこそ、隙を見せてくれて緊張を解した顔を見せてくれる。でも、それ以上に恋という感情が彼女たちを急き立てるのだ。冷静さを、理性を、取り繕うべき外面を、恥ずかしさを、何もかもが引き剥がされていく。
でももし、その恋がお互いを見つめるばかりの落ち着いたものだったら、彼女たちはもっと冷静に穏やかに自分の中に芽生えてくる恋心を制御できただろう。
でも、桐島を含めて早坂あかねも橘ひかりも、その根源に在るのは好きな人が絶対に自分のものにならない、という焦燥であり、狂おしいまでの嫉妬心だ。
それでいて、その恋は届かない所にあるわけじゃない。恋する人は、触れられる近さに居てくれる。その身体を捕まえていられる、抱きしめていられる場所にいてくれる。なんなら、心だって寄せてくれている。一番目だろうと二番目だろうと恋は恋だ、好きは本当の好きなのだ。でも、独占だけはできない。その人の心は、自分だけのものじゃない。いつだって、自分と違うあの人に向けられている。それが正気を発狂させる。なまじ、触れられるだけに抱きしめられるだけに、夢中になって求めてしまう。
そうなると、容易に理性は剥がれていく。夏の外気にさらされたアイスクリームのように、とろとろと溶けていくのだ。そうなれば、現れるのは剥き出しの欲望だ。独占欲だ。この人を自分のものにしてしまいという、原初の欲望だ。
この作品が倒錯しているのは、そうした溶け切った理性の果ての感情が誰か一人の一方的なものではなく、少なくとも桐島くんと早坂あかね、そして橘ひかりの三人の間で完全に共有されてしまっているところなんですよね。そして何より、その狂おしい感情を抱え込んでいる事を三人共が認めあっている、知っている、わかっている、という所なんですよ!
そして、お互いに彼氏彼女という関係を見せつけることで、一番目に好かれているという事を見せつけることで、決して結ばれないという現実を見せつけることで、見せつけ合うことで恋敵を、恋する人を嫉妬で悶え苦しませて、悦に浸るのである。
もう、倒錯してる以外のなにものでもないよ、これ。
そしてその倒錯は、四人目の当事者。早坂あかねが一番に好きな人、橘ひかりの付き合っている人、そして桐島くんが最も信頼し信頼されている人物が、同一人物であることがわかった時に、そしてその人と橘ひかりとの本当の関係が明らかになった時に、圧倒的なまでに加速していくことになる。

改めて見ても、もうむちゃくちゃエロいんですよね、この話。あらゆる場面にエロスが充満している。でも、決して直接的なエロがあるわけじゃないんですよ。誰も裸になんてならないし、肉体的接触もせいぜいキスが一番上。
でも、死ぬほどエロい。好きという気持ちが募りすぎて、理性がポロポロと剥離していく早坂あかりのエロスが、果たしてどれほど突き抜けているか、これは見てもらわないとわからないだろう。理性が吹き飛んでしまった時の男女が、どれほど獣のようになってしまうのか。頭から冷静に考える機能がなくなってしまうのだ。目の前に好きな人が居て、その人に触れるという事実だけが体中を支配する。その甘くてとろけていくような快感が、天上にも登るような心地が、ここには余すこと無く描かれている。
そして、橘ひかりとの逢瀬はそれにも勝る官能だ。部室の奥に眠っていた恋愛ノートと呼ばれるかつてのOBが書いたという、女の子と仲良くなれるという頭の悪いゲームを、橘ひかりに請われて二人きりでプレイしはじめたときの、あの頭が茹だっていくような時間と空間。ねっとりと、理性が蛇のようなものに絡め取られ動けなくなっていく空気感。
甘く囁かれる声が吐息が、全身を痺れさせていく。触れる指先が、唇が、舌先が、理性をドロドロに溶かしていく。体温が際限なくあがっていくのが、目の前にモヤがかかって目の前にいる人のことしか見えなくなっていく様子が、目に浮かぶようだ。ただ、目の前の人を求める原始の感情。
これを、官能と言わずしてなんというのだろう。
ってかこれもう、官能小説だろう!?

そして、それだけ理性を蕩かせながら、その相手を彼も彼女も独占できないのだ。自分だけのものに出来ないのだ。三人とも、人並み以上に独占欲が高く深いにも関わらず、心も体も手に入れられるのにそれを別の人に分け与えなければならないのだ。その狂いそうな感情を、この子たちは甘く苦い飴玉のように舐り尽くしている。苦しみながら、悦んでいる。
なんて、不健全!! 不純! 倒錯的!! 

ラストシーンの橘ひかりのあの台詞は、その極地でもあり、同時にタイトルに多重層の意味を持たせる構成の凄まじい妙を見せつけるすごすぎる台詞でもあって、あれを見せつけられたときには思わず放心してしまった。全身が痺れて震えるほどに、キてしまった。完全にヤられてしまったと言ってイイ。
うわああああ! もう、うわああああ! ですよ。叫ぶしかねえ!

なんかもう脳内物質がぶっ飛んだ。ヤバいですよ、これ。やばいやばい。すげえラブストーリーが来た!! 来たぞーー!!

筺底のエルピス 7.継続の繋ぎ手 ★★★★★   



【筺底のエルピス 7.継続の繋ぎ手】  オキシ タケヒコ/ toi8 ガガガ文庫

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終わりを拒み、未来を繋げ。

殺戮因果連鎖憑依体――
古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた、殺意の媒介者を狩る三つのゲート組織が、突如陥落した。月に鎮座する異星知性体によって、三体の地上端末が一斉に掌握されてしまったのだ。彼らのネットワーク攻撃によって、ローマの祓魔師たちと全世界の不死者が瞬時に制圧されてしまうという危機の中、同様に沈黙した《門部》本部の地下聖域では、阿黍宗佑が第二心臓を埋め込まれ、無敵の刺客として復活しようとしていた。

異星知性体の目的は、悠久の時と歴史を使い捨ててまでして求め続けた宝――白鬼の奪取。
超人と化した阿黍が復活し、朋之浦結の確保に動き出せば、すべてが終わる。白鬼である彼女が星の彼方に連れ去られてしまうことになれば、三つのワームホールゲートも地上から撤去され、残された人類は鬼への対抗手段を失い、滅亡が確定するのだ。

打開のために残されたタイムリミットは、わずか数十分。すべてを託された百刈圭と、彼が率いる狩人たちは、断ち切られた希望の糸を繋ぎ直すべく、伏魔殿と化した《門部》本部の攻略戦に、いかに挑むのか――。
人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。終焉を拒絶する、反撃の第7弾。


この娘にしてこの親あり。朋之浦結という娘は、その立場上悲劇のヒロインでありあらゆる意味で守護される存在であり、薄幸のお姫様的な立ち位置にあるはずの娘なんですよね、本来なら。
でもこの娘と来たら、いざとなればポイッと生命を捨てるだけの覚悟完了キメちゃっているにも関わらず、自分の境遇に対して悲壮感を持たず、むしろどんとこいとばかりに腕組んで仁王立ちしているような娘であり、それどころか自分が関わることになった超宇宙的な現象や存在に対して好奇心を剥き出しにして目をキラキラさせている始末。現実逃避しているわけじゃないのだけれど、現実と夢を一緒に見られる娘なんですね。或いは現状現在現実を取り敢えず棚に上げておいて、自分の好きなことに夢中になれる変人のたぐいというべきか。
こんな娘を生み出してしまった両親ってのはどんな人なんだろう、という疑問に答えるのがプロローグにおける朋之浦夫妻のアメリカ珍道中である。半ば巻き込まれたとはいえ、諸手を挙げてわーいとばかりに目をキラキラさせてやべえ案件に突っ込んでいくこの夫妻、確かに結の両親以外のなにものでもない。
でもこのバイタリティの塊みたいな所といい、人並みにビビるしやべえ事に首を突っ込んだ事に怯えているのだけれど、いざ好奇心を刺激されたら大概のことはスルーして夢中になっちゃう所とか、なんかもう楽しそうでねえ。娘置き去りにして好き勝手やってるだけあるなあ、と思うんだけど、ここまで人生と仕事を心の底から楽しんでたら、もうなんも言えないですわ。
それは人の業かもしれないけれど、人間という種の幸でもあるのでしょう。人ってこういうハッピーな生き物なんだよね、と改めて教わった気がします。こうしてハッピーでいられるってのは、絶望に負けない強さなんだよなあ。なんとかなる、なんて楽観持ちようがないはずなんだけど、この夫妻の明るさというか生命力の強さは、ネガティブを吹き飛ばすものがありました。
この二人が元気なら、なんか今回は負ける気がしなかった。

というわけで、前回提示された現状は控えめに言って無理ゲーであり、詰みであったはずなんですよね。
全面核戦争が起こる核ミサイルの発射スイッチが押されてしまったのと大して変わらない状況だぞ、これ!?
と、前回の記事では自分こんな風に書いちゃってますけれど。
人類滅亡確定までの残り時間、一年とか数ヶ月とか数週間とかじゃなく、いきなりあと数時間……でしたからね。おまけに、今まで人類史を支え続けていた人類最強の男が敵に回るわ、戦力となるはずの能力者の殆どが一斉に機能停止するわ、青鬼の一本角が出現してリーゼント兄ちゃんを乗っ取るわ、いやこれどないしてもどうにもならんやん!
という意味不明なデッドラインを突きつけての幕でしたからね、前巻。

前提条件が最初から鬼畜すぎる。

ただ、この作品、その前提条件が常に鬼畜なので、登場人物たち今更動じたり絶望しないのが、安心材料というかいい加減ぶっ壊れてるなあ、と思わされるところで。
このどう考えても詰んでるしかない状況を次々にひっくり返していく百刈圭さんが、もうとんでもねーです。
今回実質、圭さん無双。作戦面でも個人戦闘でも、ほぼ全部彼の手のひらの上。むしろ状況が状況だけに、これを片っ端からひっくり返していく圭さんの意味不明さが引き立つぐらいで。
ほぼ最初から最後まで彼の思惑通りにコロコロと事が進んで転がっていったんじゃないだろうか。指し手としても理想的な筋である。さすがは太公望の孫弟子、というべきか。

問題は、にも関わらずなぜか圭さんが肉体面でも精神面でもフルボッコになっているあたりですが。
……いや、なんで無双してるのに、圭さんが一番ボコボコにされてるんだ?
奥菜パパが文字通りグロゲチョに一度死んじゃってるのを除けば、一番ボロカスにされて死にかけてたのも圭さんですし、半分以上死にかけてましたよね、これ。場合によっては後遺症がバーゲンセールなみに残りそうな塩梅ですらありそうですし。
なんでほぼ想定通りに事が進んで、死にかけてるんでしょうねこの人。想定通りに死にかけてる、というべきなんだろうけど、なんでこうそう簡単にポンポンと死にかけるの前提の作戦立てるかなあ、それしかなかったとしても。
まあ、当然怒られます、叱られます。
登場人物のほぼ全員から、片っ端から怒られて叱られて怒鳴られて正座させられて説教されてる主人公。こいつ、別の世界線の自分からすら「クソ童貞」と罵られてる始末ですもんね。自分からすら!
違う組織だろうと敵だろうと味方だろうと生命を救った相手だろうと年上だろうと年下だろうと関係なしに、片っ端から叱られてボロクソに罵られてやんの。
フルボッコである。
まあ、当然なのですが。叱られて然るべきなのですが。
人類の破滅を瀬戸際で回避せしめた英雄のはずなんですが、まあ叱られるよね。

そんなあらゆる人から詰められて正座してるところを囲まれて説教の嵐くらってるようなダメな人からすら、クソミソに貶せれてアホ呼ばわりされてるようなアホが一人いるんですけどね。
百刈燈という、世界を裏から支える三大組織の一つのボスなのですが。圭さんの妹なのですが。

別世界線の圭さん、どうやら結局、燈が本当は変わっていなくて人間だった頃と変わらない心と愛情を持っていた、と気づかずに終わってしまった、このシリーズの1巻で叶と会わなかった圭さんらしいのですが……人形に成り果てたと思っていた妹と別の世界とはいえ再会したと思ったら、こんなアホの娘だった、と知った日にはそりゃ……引きこもるわな。
ちょっとショックが大きすぎてえらいことになってしまった別世界線の圭さんこと「V」には同情を禁じえない。いやこう、突き放して見捨ててしまった妹に虚無を得て行き着くところまで行き着いてしまったのが「V」の末路だったのに、その妹の本性がこれ、だったと見せられたら、もうなんか世界の終わりみたいな絶望だよね。うん、これも絶望絶望。

と、思わず絶望探しをしてしまうほどに、今回の一連の話は何から何まで上手く行った、犠牲もなく助かるわけがないと思っていた人まで救ってしまったわけですから、白昼夢でも見ているのかと疑いたくなるほど理想的な展開だったんですよ。大丈夫なのか、と逆に心配になるのも無理ないよね。
今までのどうしようもない絶望具合を覚えていれば。
でも、そんな奈落の底のように何も見通せぬ、救われる世界が存在しない深い深い絶望の暗闇を、これまで諦めず諦めず突き抜けて突っ切ってきたからこそ、たどり着けたこの最適解とも言えるのです。
いわば、此処こそが希望の切っ先。突端。一番深い闇を突き破ったからこそ、一番明るい光の場所に到達した、と言えるのではないでしょうか。
どれだけ絶望させられたでしょう。どれだけ深淵に突き落とされたでしょう。こんなんどうしようもないじゃないか! と、何度叫ばされたことか。もうダメだ! もう無理だ。こんなの耐えられない、と何度嘆かされたか。
それを、彼らは何度も何度も諦めずに打ち破ってきました。切り裂いてきました。乗り越えてきました。落として無くして喪われたと思ったものを、全部拾い集めながら、無くさずに辿り着いてきたからこそ。
此処なのです。
終わりの見えない無明の絶望は、しかし今どれだけ遠く遥かはてにあるのだとしても、目標が生まれました。先延ばしにするしかなかった終焉に、どれだけ無理で無謀だとしても、ケリをつける可能性が芽生えました。これほどの希望はありません。無・ゼロに比べれば、どんなに僅かな可能性でも「在る」ことがどれほど救いになるか。

……在るんですよね?

盛り上がっといてなんですが、次回最終章のタイトルが「絶望時空」ってなんかもう「わははーぃ♪」て感じになりません? 1巻以来の絶望タイトル。これ希望の切っ先、ペキッって折れちゃいません? 大丈夫?
ここまで来ても不安に心ひしゃげそうなの、これまでのトラウマって感じがして引きつった笑いがこみ上げてくる感じです。 
もうギス猊下に癒してもらわないと。


継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」お互いの気持ちに向き合う文化祭編!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
水斗といさなが付き合っているという噂で校内が色めく一方、結女は水斗との距離を縮められないままで……。
そんな初秋、きょうだい揃って文化祭の実行委員に選ばれる!
衣装選びに放課後の準備作業……長くなる二人きりの時間に、夏祭りのキスの真意を確かめようとする水斗。
そして水斗に自分の好意を気付かせたい結女。
探り合いながら迎えた、文化祭当日――二人は展示の見回りを任されるが、これってもうデートでは!?
「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」
元カップルが、お互いの気持ちに向き合う文化祭編!


いさな、この子ほんと凄えわ。この物語上における怪物なんじゃないだろうか。正直、この子みたいなタイプの登場人物ってその立ち位置を含めて見たことがないんですよね。なんなんだ、この未知の怪物は。
登場した時からそうだったのですけれど、いさなって結女の恋敵、ライバルキャラ、ヒロインの一人、では一貫して無いんですよね。じゃあなんなんだ? と、言われるとこの巻を読んでるともう「親友」としか言えないわけですよ。でも、男女の仲を越えた親友、というカテゴリーでもないんですよね。だって、男女の仲越えてないんだもの。いさなの方は未だに水斗の事好き好きですしねえ。
ただ、究極的には恋人になるとかあんまり欲してるわけでもない。
普通の人が考える男女の関係の範疇にどうしても収まらない。独立独歩というべきか、いさなはいさなの価値観の中で生きている。
世間の当たり前にどうしても適合できない自分にずっと悩んでいた彼女だけれど、前巻でおおむねその辺吹っ切っちゃったんですよね。
いさなに比べると、水斗の方は常識的と言える。いや、いさなと比べるなよ、て話かもしれないけれど、水斗みたいな他人と関わることを億劫に感じる人種って、みんなでわいわいとやるのが楽しいと思う人種からはびっくりするくらい認識されないんですよね。そういう人との関わりを避ける人の事は、本当はもっと周りの人と仲良くなりたいけれど性格的に不器用だったりしてうまく出来ない人、と思っちゃう事が多いんですよね。だから、善意で関わろうとするし関わらせようとしてくる。違う価値観の存在を認めない、というんじゃなくて認識出来ないわけだ。
水斗は、接客や委員会の取りまとめなどやろうと思えばできる人間である。でも、できるからってっやりたいわけじゃない。できるからってそれが別に楽しいってわけでもない。
そういう人間なのだ。そういう自分であることに、水斗は別に悩んでいたわけではないんですよね。
この巻においての主題は、あとがきでさらっと美しいぐらいシンプルに纏められてあって、ちょっと唖然としてしまうほどでした。いや、ここまで明確な指針を以て水斗という人間を掘り下げていっていたのか、と感嘆してしまって。本作って、キャラクターを解体してバラしきった後にもう一度そのバラした要素を組み上げていく行程がメチャクチャ綺麗なんですよね。ストーリーとしてでこぼこが一切ないなめらかすぎるほどの曲線を描いている。ラブストーリーとして「美しい」としか言いようのない情景が、心情が奏でられることになる。
いさなが導き出した、「好きってなんなんだ!?」という水斗の苦悶に満ちた問いかけへの答え。その前後に描かれていく、幾つものシーンがとても綺麗なんですよ。ドラマティックで神秘的で情熱的で、答えを聞いた水斗が衝撃を受けると共に自分の中に厳然として在った「好き」という感情が色を帯びて熱くなっていく瞬間が。二人のやり取りを知らないまま、後夜祭の独特の雰囲気の中でセリフもないままその眼差しを以て答えを示していく男女たちの情景。そして、一人歩く結女の脳裏の過ぎっていく水斗の横顔。
クライマックスは、決して盛り上がるわけではなく、熱がほとばしるわけではない。むしろ地味ですらあるのでしょう。それは静かで、ざわめきもなく、落ち着いた空気の中でそっと置かれたものでした。
劇的、とは程遠かったのかもしれません。感動というような震えるものを起こされたわけでもなかったでしょう。
でも、美しかった。こんなに胸に、心にふわりと熱をおびるシーンは経験がないほどに。
綺麗でした。きっとずっと先まで、忘れられないくらいに。
これが二人の恋のリスタート。勇気を出して踏み出したもう一歩。そのままの自分を許し肯定し認められたがゆえの、君を欲する我儘。
物語においても間違いなくここが転換点。こここそが最も大事なターニングポイントでした。
なんかもう、何度も読み返したくなります。読めば読むほど、色んなものが染み込んでくる。

あと、大正時代風の書生衣装をまとった水斗を目撃した女性たちが片っ端から聖闘士星矢の車田飛びみたいにぶっ飛ばされていくのは、なんかもう笑ってしまった、面白かったよw





TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 3 ~ヘンダーソン氏の福音を~ ★★★★★   



【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 3 ~ヘンダーソン氏の福音を~】  Schuld/ランサネ オーバーラップ文庫

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妖精にまつわる悲しい事件を経て、魔導院のある帝都へとたどり着いたデータマンチ転生者エーリヒ。
魔導師(マギア)アグリッピナの丁稚として、今度は魔導院で働く生活が始まった。
危険人物に目を付けられたりもしたけれど、半妖精の妹エリザの学費のため、エーリヒは丁稚の仕事と魔導院のクエストでお金を稼ぐのだった。
そんな中、友人となった魔導院の聴講生ミカと共にアグリッピナの「お遣い」で旅に出たエーリヒ。
しかしダイスの女神の悪戯か、安全な旅のはずが命懸けのダンジョン攻略(アドベンチャー)に変貌し……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、ダイスが荒ぶる第3幕!

ライゼニッツ卿、分類がエネミーになってますよ!? エーリヒ、完全に敵認定してるのか。あれだけお世話になってるのに。どれだけ苦手なんだこの人のこと。人柄としてはアグリッピナと比べるべくもなく善良な人……死霊のはずなんだけど、生命礼賛主義者(ロリショタコン)の餌食とされた事でトラウマ化してしまったか。いい人なんだけどなあ。
というか、この場合はエーリヒを生贄に長期休暇もぎ取っていったアグリッピナ師がどう考えても邪悪でしょうに。そもそも、絶対エーリヒそのために連れてきたでしょ。ライゼニッツ卿の前に人参よろしくぶら下げるために丁稚として連れてきたでしょうw
望外にエーリヒが出来る子だったから重宝してるけど、最初は見た目容姿がライゼニッツ卿のどストライクだったから丁稚で同行するの同意したようにしか思えん、この人の邪悪さを思えば。
というか、エリザを弟子にしたのだって、フィールドワークから戻る理由付のためだったわけですし。

というわけで、やってきました帝都ですよ、帝都編。シティアドベンチャーのはじまり、とはいきなりは突入しませんけれど、ここから風景が一気に変わるんですよね。
この作品の特色は、舞台となる土地や街、場所によって漂ってくる空気感がまったく異なってくるところでしょう。特にこの「帝都」が凄いんですよね。
辺境の村から国の首都まで出てきて、その発展具合に驚く、というのは定番も定番の展開なのですけれど、この帝都の異様はひと味もふた味も違ってくる。現代の地球を知っているエーリヒをして、圧倒される帝都のスケール、凄まじい威容。それを如実に伝えてくれる左を見ても右を見ても視点を縫い留められるような圧倒的な情報量が、情景描写に込められているんですね。視覚情報のみならず、そこに建造物や土地の来歴や歴史的エピソードを挟みつつ、目の裏にすげえディティールで浮かんでこらせられる緻密な描写と、その景色の中に実際にいる登場人物たちの受けている感覚、空気感がダイレクトに伝わってくるのである。そりゃもう圧巻ですよ、なんかもうすげえ、としか言えなくなる。
ライン三重帝国と呼ばれる重厚な歴史と多様な異民族を内包する巨大国家の中枢たる帝都。いやこの帝国という国家の内実を聞いてるだけでも楽しいんですよね。これもうリアルタイムで続いている古代魔法帝国じゃねえの!? という魔法文明そのものですし、国の構造からして面白いのなんの。まだここでは帝室周辺の話はまだ持ち上がってないのか。あれは次巻になるんですか。いやでも、この国、皇帝周りの体制がちょっと面白すぎてすごすぎて。
それでなくても、多民族国家の粋みたいなところがあって、国の拡張に従って取り込まれたあらゆる種族が貴族として国家の運営に携わってる、ってなんかもうそれだけでワクワクしてきませんか? そもそも、皇族からして人間じゃねえし。いや、そう言えば現状、エーリヒの周りって妹含めて普通の人間種っていないんでしたっけ。妹は半妖精だし、アグリッピナ師は長命種で魔導院の五大閥の長たるライゼニッツ卿ときたら死霊ときた。この国、ちゃんと死人にも自我があって動いてたら財産権とか法律で認められてるんだぜ。相続権の方、ちょっとややこしい事になってるの、法律が制定されるまでに結構色々トラブルあったんだろうな、というのが伺いしれてこれはこれで面白い。

さてもそんな混沌たる国の魔法文化の核である魔導院だ。国中の多種多様な種族から魔導を志すものたちが集った魔法版虎の穴。その内実を聞いたエーリヒの、過激派とカルトしかいないんですが? というお言葉にそうだね、と満面の笑みで応じてしまえるマッドたちの巣窟にして楽園である。
学園編、と言ってもいいかもしれないけれど、エーリヒは丁稚というなの従僕であり学生……ここでは聴講生と表現されていますか、ではないのだけれど、アグリッピナ師やライゼニッツ卿のツテで学んで魔法使いから魔導師と呼ばれる存在になっていくわけですが。
この魔導院、魔法学校と言っても中学高校みたいなタイプの学校ではなく、大学に近いものと捉えるべきでしょう。なので学園編と言ってもそこから連想されるものとはだいぶ様相が異なっているし、その日常風景もある種大学的な自由さとわやくちゃさに溢れている。探求の場、としてのみならず、貧乏聴講生たちがそれぞれ四苦八苦して努力と工夫を重ねて生活と学ぶための資金や伝手を手に入れるために駆けずり回っている様子や、学校周辺にそんな聴講生や教授方を対象とした様々な店や職種が軒を連ねていて、独特の学園都市風味な風景にさらに魔法的なエッセンスが加わった光景が、エーリヒの物語の背景にごくごく自然に流れてるんですよね、これがまたいいんだ。雰囲気最高なのですよ。
たとえば、エーリヒの何気ない普段の朝の風景からして、凄まじく絵になるんですよ。
下宿で朝起きたら、家事妖精によって準備された朝餉が湯気を立てている。彼が曰く付きの下宿になぜ住まうようになったか、シルキーという妖精の在り方に触れながら、そのシルキーとの不可思議で温かいコミュニケーションを挟みつつ、仕事のために魔導院に向かえば、彼が駆ける街角では貧乏聴講生たちがバイトとして窓越しに目覚ましの魔法をかけてまわっている様子が、朝の町並みの当たり前の風景として流れていくんですね。
このワンシーンだけでも、魔法文化の結晶のような濃密な描写なんですよ。もうここだけで酩酊してしまいそうな、見たこともない異文化の、でも目の裏にありありと浮かぶように描かれていて、それがそれがさらっと章の導入として触れられるだけで、流れていくのです。

密度が濃すぎて、濃厚すぎて、ちょっともうたまんないッ!!

背景だけでもやたらと濃厚濃密にも関わらず、登場人物たちときたらさらに濃い人ばかり。個人が濃いだけではなく、人間関係そのものがやたらと濃いものになってくるわけですよ。
郷を出てはじめて得た同世代の友人。北方出身の中性的な黒髪の麗人ミカとの出会い。
このミカとエーリヒとのやり取り、というか掛け合いが最初遊びまじりだったんですけど、お互いオペラか演劇のセリフみたいな言葉遣いで会話するんですよね。大仰もいいところで、エーリヒてば絶対TRPGの演技というかロール? あれが楽しさのあまり捗りすぎて、ちょっと酔っ払ってね? という具合にノリノリでやっちゃってて、彼自身あとで恥ずかしさのあまり枕に顔を埋めてジタバタするに違いない、などと述懐しつつ、やめないんですよねえ。
エーリヒもミカもまだ13歳という、それはそううん、お年頃なんですから、この特別感ある友達関係にウカレてしまっているのも仕方ないんでしょうけれど、それにしても「ねっとり」というのがふさわしいような距離感にどんどんハマっていくんですよね、彼ら。ちなみにこれ、少年期特有の距離感、で終わらずに青年期になってもこの調子のままなので、君等結局全然恥ずかしがってないだろう、とw
ミカなんて、自分の秘密がエーリヒにバレてなお受け入れられたあとなんぞ、もうべったべたですからね。エーリヒのこと、名前で呼ばずに普通に「友よ」と呼ぶのがデフォルトになってたり。
なんかもう波長があってしまった上に、コンプレックスを解消するきっかけにもなり、距離感がズブズブになっちゃったんですよね。これにはミカの特殊なありようも大きいのでしょう。これ、ミカが単にヒロインだったらこうはならなかったでしょう。ミカだからこその、同性同士にしては妖しすぎ、異性間としては気安すぎる、中性的なミカ相手特有の特殊にして特異な関係が成り立ってしまった。「おお友よ!」と実際に口にしながら、肩を組み、髪に顔を埋め、頬を寄せ合ってクスクスと笑みを交わすような近すぎる距離で睦み合う距離感の、なんかもう凄さたるやすごいよ?

そして、エーリヒの戦闘力が手がつけられなくなってくるのがちょうどこのあたり。
いや、あの「見えざる手」が強力すぎるでしょう、これ。本来なら日常生活の補助に使うのが通常の簡単な魔法、とされているけれど、エーリヒの手にかかるとちょっとこれ尋常じゃないものになってしまってるんですよね。
これって、いわゆるところの「念動力」にあたる能力のはずなのですけれど、無形の漠然としたサイコキネシスではなく「手」という具体的なイメージを固めて使っているせいで、汎用性と応用性がわけわからんレベルになっちゃってるんですよね。使い手本人のイメージとしてもそうなんだろうけど、読んでる読者側も「手」というイメージ付をしてくれているせいで、その異常さが具体的によく認識できるんですよ。いやもう、これ強すぎませんか? 魔法を使わなくても、戦場刀法が神域にまで達しているエーリヒは剣士として尋常ならざる領域に達しているのに、ここからさらに「見えざる手」の多重同時使用をマルチタスクで運用することで、意味不明わけわからん強さを発揮することになっちゃってるんですよね。攻撃にも防御にも特殊機動にも応用が聞きすぎだろう、この「手」。あげくにアグリッピナ師に教えてもらった空間転移魔法の応用で防御の方に絶対的なアドバンテージが手に入って……。
正直、これエーリヒに正面からぶつかって勝てる方法がさっぱり思いつかないんですけど!

とか思ってたら、エーリヒに正面からぶつかって、ぶち転がしまくる敵がひょいっと出てきて、もう笑うしかねえんですけど!?
いやこれどうやっても負けるはずがないだろう、とばかりに見せた途端にこれですよ。だからといってエーリヒの方が弱体化したわけじゃなく、格が下がったわけじゃなく、それどころか描写の方もエーリヒの凄まじさが死地に突入したことでより磨かれ研がれ叩かれて、ガンガン凄み増すわ鋭さ増すわやべえくらい強者的オーラを纏っていくのですよ。
それをさらにその大上段からばっさりと叩き潰していくようなとんでもねーボスキャラのとんでもねー事とんでもねー事。つ、強すぎる、なんじゃこりゃーー! てなもんである。
いやこれ、どうやったら勝てるんだよ!? と、思わず悲鳴。ついさっき、エーリヒどうやったら負けるんだよ! と言ってた時点から秒である。
ちなみに、わりとたまたま遭遇しただけのエリアボスであるよ。因縁ある怨敵とか先々まで対決し続けることになるライバルキャラ登場、てなもんでは全然ない。

TRPGだよなーー! こういうのTRPGならではだよなーー!! わははは!!

GMの殺意さまである。それ以前のエーリヒとミカが全然準備してないのに巻き込まれるはめになった魔宮ダンジョンの、あの正統派だけど難易度ヤバすぎで、どんどん順番に強力なエネミーが出てくる展開も、あるあるなんだけど、それにしても殺意が高すぎw
13歳の子供たちが挑むには、あまりに殺意が高すぎる。それを、なんかもう拗らせ過ぎて昇華してしまった運命共同体か比翼の鳥のような一心同体親友ムーブで、死にかけながらもクリアしていくエーリヒとミカ。激闘激闘、あまりにも凄まじい激闘すぎて、密度が濃すぎるーー!!
いやほんとに、シリーズ通しても最高潮の戦闘パートだったんじゃないだろうか。熱量がほんと凄かった。熱は熱でも、これ圧縮熱だろう!? と言いたくなる濃度密度濃厚さで。
いやもう、これあらゆる方向に満足度が高すぎて、ちょっと読み終えた時いっぱいいっぱいになってしまいました。しばらくクール時間をおかなくてはならなくなった。酩酊状態よ。
ウェブ版から大量加筆されていた、というのもあるのでしょうけれど、書籍として一気に読むとほんと凄えですわ。濃密さにアテられる。
しかししかししかし、おっもしろかったー! 面白い面白い面白すぎて、もうわけわかんねえ、あははは!!
クールタイム一日置いたはずなのですが、感想書いてたらテンションがまたぞろあがってしまった。
でもだって面白いんだもの。いやあ、好きすぎですわ、これ。もう大好き。

そして、3巻のヘンダーソンスケール1.0。いわゆるIFルートの未来編は、エーリヒくんそのまま魔導院で教授になったよ編!
いやあひどい(爆笑
なにがひどいって、周りからの評価評判と本人の意識が180度異なっている件について。周りからはやりたい放題好き勝手にやりまくって魔導院全体を振り回している超問題児扱いなのに、本人は振り回されて苦労して窮屈な思いをしている側だと信じ込んでいるこのギャップw
漂泊卿とまで呼ばれて自由に世界中を飛び回って帰ってこない、と呆れ嘆かれ怒られているのに、本人気楽に冒険もいけなくて好きに遊びにもいけない、と嘆息しているあたり、こいつ本気で解き放ったらどうなるんだ? おまけに、気が向いたら同僚や派閥問わず若い連中を冒険に引っ張って連れ去っていくものだから、半ば妖精扱いされてるしw
めっちゃ冒険行きまくってるやん! ほぼほぼ冒険者やん! これで、当人不満しか無いって、彼の持つ冒険者のイメージはいったいどこまでイッてしまっているのかしら。
そして、あまりの問題児っぷりに集まって謀殺を企んだものたちが、意味不明な壊れ性能の戦闘能力に「何をどうすりゃ殺せるんだこれ?」とふと冷静になって解散してしまった、というくだりとか、ちょっと大好きすぎるんですけどw

しばらく出番のない幼馴染のマルギットがここで短いながらも登場してくれていて、ちょっとうれしい。こうしてみても、エーリヒの本命ってマルギットで揺るぎないのは間違いないんだよなあ。
ちょうとウェブ版の連載ではマルギットとミカがはじめて対面、或いは対決? しているところなので、この未来での二人の仲の良さは興味深い。
あと、名前の出てこないお弟子ちゃん。年齢的には一回りは違うんですよね。なので、本編には登場しづらいでしょうし、多分エーリヒが魔導院に残るルートでないとなかなか関わるチャンスなさそうなんだけど、いいキャラなだけにチャンスはあって欲しいなあ。
しかし、アラサーになってもライゼニッツ卿に着せかえ人形にされかけてるのか、エーリヒ。そりゃ、エネミー認定してまうわなあw

しかし、毎回毎回、IFルートがどれも面白そうすぎて、それぞれで1シリーズできそうなんですよね。もう各ヘンダーソンスケール1.0のバージョンごとに一冊ずつでも本書いてくれないかしらw



Babel III 鳥籠より出ずる妖姫 ★★★★★   



【Babel III 鳥籠より出ずる妖姫】  古宮 九時/ 森沢 晴行 電撃の新文芸

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大国キスクを訪れた雫。妖姫と謳われる王妹オルティアとの対決へ。

この大陸の在り方にまつわる秘匿された真実を、ファルサス王から知らされた雫とエリク。その情報の中から日本帰還への糸口を見いだした二人は、再び旅に出ようとしていた。
だがその時、突如現れた使者に雫は選択を突きつけられる。招かれた先はかねてよりきな臭い噂が絶えなかった大国キスク。彼女に求められた役割は、残忍で知られる王妹オルティアの遊び相手だという。

「それで? お前は何ができる? 自らの口で述べてみよ」

成り行きから雫は、流行り病とされる言語障害の対処法を確立するという大役を負うことに。失敗すれば待つのは無残なる死。旅の庇護者であったエリクのいない中、雫は一人手探りで解決策を探す。
そして孤独の姫オルティアとの対峙を重ねるうちに彼女の心根を知り、二人の間柄にも変化が生まれていくのだが……。
ああ、凄い一冊だった。
この一冊のなかで、幾人の運命が変わってしまったか。そして、雫とオルティア。二人の女性の人生の歩みは根底から変わってしまった。果たして、この巻がはじまった時の雫とオルティアと、キスクでの物語がひとまずの終わりを迎えた時の二人とでは、紛れもなく同一人物にも関わらず同じ彼女たちには見えない。別人のように、とは言うまい。彼女らの芯の部分は最初から最後まで何一つ変わっていない、それでもこれだけ変わって見えるのはそれだけ彼女らが成長した、という事なのだろう。
いや、成長というのもそぐわない。背が伸びるような、体が大きくなるような、そんな成長とはわけが違う。
これは羽化だ、
同じ存在でありながら、まったく別の存在に進化する。それは、羽化と呼ぶに相応しい。
幼さを脱ぎ捨てて、彼女たちは大人になったのだ。

ウェブ版でも、このキスク編は一番好きなお話でありました。雫を主人公とするこのシリーズにおいて、紛れもなくメインヒロインはこの妖姫オルティアだと、読んだ当時は強く思ったものですけれど、改めて一冊の本として彼女たちの物語を見た時、その思いは一層強固になったのでした。
彼女たちの関係の変化は一冊という枠組みに収められたが故により鮮やかに浮き彫りになったように見えます。初めてまみえた時の、あの暴君と玩ばれる哀れな生贄に過ぎなかった二人が、その別れの際には……あの挿絵には感極まってしまいました。尊い、尊い! 
ある時を境にして、雫もオルティアもお互いへの想いが器を越えて溢れるほどになっていて、一瞬も気を抜けない中で二人とも全力疾走していたから、読んでいるこっちも夢中になっていたのですけれど、すべてが終わってふっと落ち着いた時に、そしていつの間にか同じ道を手を握り合って進んでいた、もうこれからいつまでもずっと続くように感じられていた道が、それぞれ自分の道を歩くために別れていくのを目の当たりにした時。それを、二人が穏やかに受け入れた時。
見つめ合う二人の姿に。そっと抱き合う二人の姿に。はじまった時のあの残忍な妖姫と決然と睨み合う雫の姿が思い浮かび、この数ヶ月のあまりに濃い時間の中で無関心と敵意がこんなにもお互いを大切に、掛け替えのなく想い合えるようになっていく変遷が過ぎっていき、その果てにこの光景に辿り着いたことに。あの二人が、貴女と出会えて良かった、と心の底から思い別れを惜しむことが出来たことに、なんかもう感極まっちゃったんですよね。
泣いた。
……と、感じ入ってたのにラルスが後ろでワケワカランことしてやがるから、余韻が台無しだったけどな! このファルサス王、いくらなんでも酷すぎるw 相対的にオスカーが超真面目に思えてしまうじゃないですか!
ぴょんぴょん跳ねるオルティアがやたら可愛くもあったのですが。ラルス相手だと、オルティアも形無しだ。

しかし本当にこの巻における雫は別格でした。最初にオルティア相手に堂々と自分の使いみちを主張するくそ度胸! くそ度胸!!
そして殺されるかもしれないという状況にも関わらず、オルティア相手に一歩も引かず、不退転の覚悟で詰め寄った姿。自分の無実を証明するためにファルサスで塔から飛び降りた時もまー、むちゃくちゃでしたけれど、今度のそれはあの時を上回るある意味イッちゃってる様子で怖いくらいの迫力だったんですよね。激高しながら頭の芯が完全に冷めきってるような、勢いに任せているようで思考の方はフル回転しているような。目が据わっていて、あれはヤバかった。
このときのオルティアは、まだ暴君そのものだった時でしたし触れれば切れる剥き出しの刃のような状態と言っても良かったのに、まったく気にせずに掴みかかったようなもので。
命知らず、と言われても仕方ないですよね。でも、こういう時の雫って別に自分の命を捨ててでも、というふうには考えているわけではないように見える。そもそも、そういうの頭からすっ飛んでいて、兎に角退かない譲らないという所に自分の全リソースを注ぎ込んじゃっているように見える。だからこそ、あんまり危機意識を持ち得ないし、あとで後悔してるようにも見えない。
でも、ここらへんまでは以前までの雫でも見られた部分だと思うのだけれど、言語習得実験が終わってオルティアの元で働くようになって以降から徐々に変わってくるんですよね。
自分が容易に殺されない立場にある、という事情を利用して、オルティアに言いたいこと言うべきことを率直に諫言するようになってから、雫は暴君オルティアの内側にある歪みに、孤独に気づき、また側近のファニートやニケを通じてどうして彼女が今のようになったのか、その過去の一旦を知ることになります。
オルティアの心に近づき始めたときから、そしてオルティアが徐々に心を許してその内側を見せてくれるようになった時から、雫の在り方が劇的に変わっていくのである。
端的に言うと、オルティアにめちゃくちゃ入れ込んでいくんですよね。いつしか、オルティアのために全身全霊を注いで彼女の未来を切り開こうとしはじめるのである。
エリクがピンチに陥った時など、雫のバイタリティはほんと凄まじい勢いでアップしてもう尋常でない働きを見せたりしましたけれど、あれって実は瞬間的な強化加速ではなかったという事なんでしょうね。
いざ、オルティアのためにやったるぞー、となって以降の雫のあのポテンシャルの爆発的な増大は、上がりに上がり切ったところから一切落ちることなく、いつの間にかオルティアの側近中の側近として、腹心として、股肱の臣として、十年来ずっと使えてきた重臣としてオルティアを支え、ついには現王を追い落としてオルティアを女王として即位させるクーデターの牽引役として主君を叱咤激励し、支持を取り付けるために貴族たちを口説き落とす切り込み役となり、ひいては戦場に立つオルティアに全権を預けられその命運を託される代理人にまでなりおおせるのである。
その堂々としたオルティアの片腕としての姿には、貫禄すら伺えて……暴君だった姫を多くの貴族が国を託すだけの忠誠を捧げ、軍の将兵が喝采をあげて支持する偉大なる名君へと変えた名臣以外の何者でもありませんでした。
もうどこにも普通の目立たない女子大生の皮なんて残ってないですよ。
あと、普通の女子大生はスライディング土下座とかしませんから!
折角の感動の再会シーンにも関わらず、この娘さんときたらなんでこうドラマティックに出来ないんだ!? ほんと、そういうとこだよ!?
あのどうしようもない絵面から、わりとじんわりと染み入る再会シーンまで持ち直させるエリクさん、マジ尊敬します。この人、色んな意味で顔に出さなさすぎますよ。彼が雫のためにどれだけの事をしてきたか。雫さん、キュンとしましたか? しましたよね?
ある意味、ニケの奇襲は一番効果的なタイミングだったのかもしれませんね。彼にとっての失恋は、でも最後に一矢報いた、というべきなのでしょう。エリクじゃなくて、雫の方に全ダメージが入ってしまったようですがw

生得言語の問題については、子供の失語症の回復実験がなんとか成功を収めたあと、雫とオルティアの二人の物語、キスクの国内問題とファルサスとの紛争へと深く進行してしまったために、一旦脇に置かれる形になりましたけど、さらっと一文、重要な伏線が敷かれてたんですよね。
雫が一から言葉を教えた幼子リオ。この子の雫の呼び方を、なぜかニケはちょっとおかしな認識の仕方をしているのである。この違和が大事になってくる。それに、なぜか本来雫が知らないはずの、喪われた記録や情報がまるで最初から備わっていたように雫の知識、記憶の中に存在していた不可解さ。
【Babel】の本当の意味が問われる最終巻、今からすごく楽しみです。
でも今は、蛹から蝶になるように羽化した雫とオルティアの間で育まれた友情の尊さを、しばし噛み締めて反芻していたいと思います。


探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる ★★★★★  



【探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理なゆた  MF文庫J

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可愛くて鋭い山田さんの学園ミステリー、第二幕!

山田姉妹と戸村に今日も奇妙な事件(相談事)が寄せられる。我が校の卒業生でもある副担任のさぁや先生の依頼は、彼女が高校生のときに起きた「原稿消失事件」。文芸部の部誌に載るはずだった直前に消えた状況は、確かに不可解で……?あいかわらず平常運転で絡んでくる雨恵と雪音の山田姉妹につつかれながら、またも俺は矢面に立たされるのだった。
だんだん雨恵と雪音の性格も把握してきた2人の距離感は……やっぱ、近すぎるよね!? そして赤面してるよね!? 可愛くて鋭い2人の山田さんと俺とで解き明かす、ちょっと甘めの学園ミステリーラブコメ、第二幕!「よし! プールで推理しよう!」ええっ!?

この作者さんって、ほんと女の子の「素足」好きですよねえ。玩具堂さんの描く作品の歴代ヒロイン、みんな学校でも靴下脱いで素足で足ブラブラさせてるんですから。この二巻ではカラー口絵で机の上に素足で腰掛ける雨恵のイラストが。戸村くん、結構がっつり生足見てるのですけど、たしかにこれは思わず目が言ってしまう脚線美。
さて、今回探偵三人組に持ち込まれてきた3件の事件。ネットゲームの中の人を特定して欲しいという依頼。先生が高校生の文学部時代に消えてしまった小説原稿消失事件の真相を探れという依頼。そして、SNS上での素性も知らない友人を現実で見つけてくれ、という依頼。
どれも、手がかりらしい手がかりもない所から、僅かな情報を頼りに山田姉妹と戸村くんとで顔を突き合わせてワイワイガヤガヤと大騒ぎしながら真相を解き明かしていく、これがまた面白い。いや本当に面白い。
どれもこれも、あるのは断片的な情報だけなんですよね。
ネットゲームの中の人当てなんか、オフ会で実際に顔を合わしているものの、そのオフ会の様子も依頼者からの又聞きな上に大した情報なんて全然ないように見えるんですよね。
先生の原稿探しも、事件自体はもう何年も前に終わってしまっていて、原稿がなくなった状況とその失われた短編小説について書かれた先輩方の評論しか手がかりがない。
最後のSNSの依頼に至っては、SNSにアップされた風景写真くらいが手がかりだ。
これを三人協力して、というよりも役割分担なんですよね。雨恵、雪音、戸村と三人ともこなす役割が違っていて、それが謎をとき、説いた謎をもとに事件を解決して、大団円という所まで持っていく形になっている。ろくに情報もない所からジグソーパズルを組み上げるみたいに真実を見出すこと自体は天才肌の雨恵が拾い上げるのだけれど、その説いた謎をもとにちゃんと関係者みんなが納得する形で事件を解決する、或いは着地させるのって戸村くんであり、その筋道を準備するのが雪音なんですよね。これ、1人でも欠けると事件が解決しました、ってことにはならないんだよなあ。
うん、この三人というのがいいんですよね。
山田姉妹が両隣の席にいて、戸村くんは挟まれた二人の間の席にいる。ただそれだけなら、仲の良い姉妹はどちらかの席まで回って移動しておしゃべりしてればいいのです。でも、この双子は間に戸村くんを挟んだまま喧々諤々喧嘩したり仲良く会話したり、と戸村くんの頭越しに、或いはその目の前でコミュニケーションを取って、その中に自然と戸村くんを巻き込んでいくのである。
間に挟まれて喧嘩されて、困り顔で仰け反る戸村くんの顔が容易に思い浮かぶほどに毎度のごとく。
ついでに、この二人、わりと遠慮なしに戸村くんと距離詰めるんですよね。近い近い、と言いたくなるほど。特に顕著なのが雨恵の方で、靴下脱いだ素足で戸村くんの膝をグリグリと踏んでみたり、肩の上にぽんと顎を乗っけてみたり、人が喋ってる間に顔を突っ込んできて間近で覗き込んできたり。距離が、近い!
一方の雪音こと雪さんも雨恵ほど露骨でないけれど、むしろ余計無自覚な所があって無防備にグイグイと顔を近づけてきたり、雨恵と掴み合い取っ組み合いしてる最中に身体押し付けてきたり、とだから距離近いってw
年頃の男の子からすると、この二人の物理的距離感の近さはなんかもう仰け反ってしまうものがあると思うんですよね。片方は言うと余計に面白がりそうだし、もう片方は言ってしまうと赤面してでもしばらくするとさっぱり忘れて同じことを繰り返しそうな無防備さだし。悩ましい、嬉しいけど悩ましい、という感じになっている戸村くんが何とも微笑ましいばかりなのです。
決して明確な台詞で語られることはないのだけれど、うんこれ毎回玩具堂さんの作品では語ってしまうのだけれど、言葉ではなくて仕草で心の動き、心理描写、その時の感情が伝わってくるんですよね。一話目なんかでも、PC画面を見るのにこの双子、同じ椅子に仲良くちょこんと二人で座ったりするのですけれど、話が進んでいく過程で会話内容とは別に最初は仲良く寄り添ってたのが、途中からお互い尻を押し合って相手押しのけようと押し合ってたり、とほんと落ち着かないわけですよ。特に雨恵なんかいつもグデーっとしてるのだけれど、一瞬たりとも落ち着いていなくて、いろんな動きを会話とは別の所でしているわけです。それは同時に、その瞬間瞬間の彼女の気分も示していて、それが雪音たち他の人たちも同様に細かく仕草とか態度が描写されているものだから、台詞なくても掛け合いがなくても、その場の空気感の変化がリアルタイムで感じ取れる。
まさに、目に浮かぶように彼らの姿が見えるんですよね。
これだけ細かく、ただのおしゃべりのシーンで個々の人物の仕草とか表情の変化とか些細な動き、目線なんかを描写する作品というのは決して多くはないのではないでしょうか。少なくない作品が、会話は会話だけでそのシーンを描写しきろうとしてしまう。情景描写は舞台というだけで、登場人物の内面まで表現するものではないからでしょう。
でも、本作はまさに細部に神が宿っている。ほんの小さな表情の変化や、雨恵の突拍子もない動きや、雪さんの何気ない仕草が、キャラに生気を帯びさせるのである。その場の空気に風を感じさせてくれるのである。そうして伝わる心の動きが、この子たちをより生き生きとさせてくれて、そこから伝わってくる彼ら自身言葉にし切れない感情の弾みが、たまらなく彼らを可愛らしくみせてくれる。
ほんと、瞬間瞬間にたまんねー、と悶絶してしまうシーンがあるんですよねえ。
そうして浮かび上がってくるのは、山田姉妹が戸村くんに抱く彼女ら自身がまだ理解していない特別な気持ちである。それは姉妹への対抗心も相まって、複雑怪奇に入り組んで、思わぬ仕草となって発露するのである。それを実に細かく鮮やかに、でも囁かにさり気なく描いてくれるから、すぅっと空気感として染み込んでくるんですよねえ。
いや、ほんと好きだなあ、この作品は。
雪さん、たけのこを戸村くんの口に押し込んだ雨恵に対抗心燃やすのはいいけど、手ずからキノコチョコをあーんと彼の口に放り込むのは、相当に大胆だと思いますよ。
プールで三人、熱い夏に頭を冷やして推理するためと称して水被せ合いながら遊んでるのなんて、そりゃまあ三人でイチャイチャしてるようにしか見えんわなあ。山田姉妹、水着にシャツという凶悪装備でしたし。
でも、そんな山田姉妹にもそれぞれ抱えているコンプレックスみたいなものがあり、周りと馴染めないものを抱えている。そういう自覚しているウィークポイントを、この戸村くんはさり気なく包み込んでくれるわけですから、双子ともこの隣の席の男の子に対してなんかこう言いようのない特別感を抱いてしまうのも無理ないわなあ。
雪さんの方はこれ、わりとストレートに男の子として意識しだしているようにも見えるけれど、雨恵の方だって特殊な性癖……と言ってしまうとあれだけれど、お気に入りと言って憚らないようですし。
その戸村くんも、探偵というお仕事に対して思う所ありながら、いや嫌悪に近いものを感じていたものの、山田姉妹と探偵をやっているうちにそれを楽しいと思い始めていたことへのもやもやをずっと抱えていたわけですけれど、三件目の事件、あれはだいぶセンシティブ、繊細な心の機微に踏み込む事件であったけれど、それを通じて仕事としての誰かの秘密を暴き出す探偵業ではなく、知恵を出し合い人の複雑な関係が織りなす謎を楽しむ、さぁや先生が保障してくれた言葉をもとに、そしてこれまでの探偵してきた体験を胸に、彼なりに探偵するということへの答えが出たことは、さて、さて、うん、うん。

さても、偶然席替えによって成立した双子と戸村の奇妙な共有空間、共有時間。でもそれは次の席替えによって必然的に終わってしまうもの。偶然は続かない。
もし、それでもその席が、この構図が続くのなら、それは必然だ。みんなが望み、本人たちが望んだものだから。
皆が探偵を欲し、本人たちも探偵を楽しむことを選んだから。
三人一緒に、三人で。双子と彼で探偵だから。



エリスの聖杯 3 ★★★★★   



【エリスの聖杯 3】 常磐くじら/ 夕薙 GAノベル

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「ごめんね、スカーレット。本当に、ごめん」

希代の悪女の亡霊スカーレットと、その復讐につきあうことになった地味令嬢のコンスタンス。
奇縁で結ばれた令嬢コンビはついに、十年前の処刑の真相へと辿りつく。
あとは順に復讐相手を見つけ出していくだけ、と気炎をあげるスカーレット。だが、王国内で
暗躍を続ける組織【暁の鶏】は、コニーやランドルフを『エリスの聖杯』の邪魔者であると認識し、
その排除のために動き出していた。
敵の意図を看破したコニーは、あえて冤罪を被って収監されることで、ランドルフの行動の自由を
確保する。しかし、そんな彼女に下された王命は『十年ぶりの公開処刑』だった――!
十年前のサン・マルクス広場、処刑場での邂逅から始まった二人の少女の物語。その果てに待つ
運命とは!? 感動の第三弾!!

はぁぁーーーー…………。素晴らしかった。うん、これを傑作、これを名作と言わずして何という、というレベルのお話でした。感動した。泣いた(語彙力
スカーレットを処刑した犯人、と言ってしまうのは語弊なのだけれど、彼女を死なせる決断をした当事者があまりにも衝撃的だった2巻のそれを引き摺りつつのこの三巻、この完結編。
スカーレットの処刑にまつわる真相はほぼ明らかになった以上、待っているのは解決編であり決着であったのだけれど、スカーレットの処刑の真相がああであった以上悲劇は既に起こってしまっている。これをどうスッキリ終わらせるのか。スカーレットの望む復讐をどう成し遂げるのか。
ちょっと途方に暮れてすらいたのだけれど、冒頭からそのまず最大の壁をスカーレットとコニーはひょいっと越えていってくれたんですよね。ランドルフ閣下が口ごもり躊躇するほどにその真相は残酷だったのに、この娘二人と来たら……強いなあ。
あれ、スカーレットパパを引っ叩いたのはスカーレットじゃなくて、コニーの方なんですよね。引っ叩いておきながら、あれだけビビってるのはこの娘らしいんだけど、あれだけ叩いたあとにビビるくせに衝動的にぶっ叩いたんじゃなくて、ちゃんと考えた上でぶっ叩くのがコニーらしいというべきかなんというか。
スカーレットの処刑を、果たしてアドルファスはどのように受け止めたのか。それをスカーレットの母と出会い、愛を育む所から描いてからあのスカーレット処刑後の様子を克明に描いた上での、あのボロボロに崩れ去った慟哭ですよ、あの遺骨を胸に抱いて咽び泣く挿絵ですよ。
彼の後悔が、絶望がどれほどのものだったのか、有無を言わさず刷り込んでくる。だからこそ、だからこその救いである。
この時点で、いつのまにかスカーレットの復讐って意味が変わってしまっているんですね。まだコニーとスカーレットの中では捉えきれていないけれど、物語上では見事に意味合いが変転している。
それは、コニーがハメられてスカーレットの処刑の再現に当てはめられた時を境に、スカーレットの中でも彼女の復讐、つまり執着、現世にしがみつく祈りは実際の形へと疾走して追いついていく。
自分が何のために、この世に幽霊として顕在しているのか。どうして、コニーなんて小娘にくっついているのか。
彼女にとって、幽霊となってコニーに復讐の手伝いをさせていたのは、過去の精算とはまた少し違っていたのだと、最後まで読むとわかるんですよね。
心残りを晴らすためではなく、過去の後始末をつけるわけでもなく、かつて自分を陥れたものたちに思い知らせてやる……つもりは勿論多分あるけれど、まあそれは落とし前というやつだ。きっちりしっかりミッチリとやっておかなきゃならないことだけれど、それだけを目的にそれだけに執着して現世にしがみつく、というのはツマラナイし、みっともない。スカーレットの名が廃るってなもんである。
ならば、スカーレットらしい幽霊になろうとも現世に降臨し続ける理由とは。君臨し続けるに足る動機とは。そう考えると、彼女のホントのラストシーンは全くもって「らしい」と思うんですよね。
未練、心残りを晴らしてキレイに成仏、なんてらしくないし、そもそも幽霊になった理由とは食い違っている。
スカーレットの記憶に残っていなかった処刑直線からその時の瞬間。それが明らかになる回想、いや時間が戻ってのスカーレット処刑のその時に、彼女が何を思っていたかが明らかになるあのシーンが全部物語ってるんですね。
それは悲劇ではあったけれど、スカーレット・カスティエルがその瞬間抱いていたのは絶望でも恐怖でも怒りでも憎しみでもなく、ああそうだ。
彼女の中にあったのは希望だったのだ。彼女は自分が勝利する事を知っていた。スカーレット・カスティエルが望むべき「未来」を手に入れることを。
そして幽霊になったスカーレットにとって、コニーと共に歩む時間はリミットのある猶予でも、過去の残り香としてこびりついているのでもなく、「今」だったのだろう。「現在」だったのだ。それを、彼女は「過去」で知った。自分が死ぬそのときに理解した。
彼女は、コニーに出会いに来たのだ。つまりは、そういう事だったのだ。
スカーレットがとっておきの秘密をコニーに明かしたシーン、あれこそが最高の本音で、本当の気持ちだったのだから。

ならばこそ、最後のスカーレットの選択は必然なんですよね。殊勝に身を引くなんて、あったもんじゃない。何しろ彼女は強欲傲慢なる悪の令嬢スカーレット・カスティエルなのだから。

そして、一身にその煽りを食らうランドルフ閣下であったw
いやほんとに、一番の被害者になってるじゃないか、ランドルフ。
そりゃね、ずっと闇の中を歩むはずだった人生を光の下に引っ張り出してくれた少女に本当の愛を捧げる事が出来て、ましてやお嫁さんになって貰えるし、一生一緒にいるという約束も交わしたし、万々歳のハッピーエンド!
だったのに、一生離れないにプラス1ですからね。いや、一生を共に、という約束を交わしたのはプラス1発覚後ですから覚悟の上かー。
朝起きたときから夜寝るときまでずっと一緒という状況に既に疑問を感じていないコニーさんが色んな意味で幸せすぎるw

この3巻は文句なしにスカーレットとコニーの物語だったわけですけれど、同時に他の幾人もの登場人物が己の人生の主人公たるを全うする話でもあったように思います。
パメラの方に完全に破滅へと突き進んだ者もあり、セリシア王太子妃のように闇の中を歩き続けた末に最期に自分の人生を取り戻した人も居た。ショシャンナのように一からやり直すためにもう一度歩き始めた子もいれば、ルチアのように絶体絶命の死地をその魂の輝きを以て突破して、ユリシーズ王子というヒロインゲットしてヒーロー道へと突き進みだすもう貴女もう一人の主人公だろう!?という勇躍を示す子もいる。
スカーレットの処刑という大事を境に終わり、はじまった様々な人たちの人生の迷い路。かの陰謀に関わった人も、コニーと共に新たに関わることになった新しい世代の子たちも、それぞれに一区切り、登場人物全員に一つの決着を迎えさせた、という意味でも凄い作品であり、凄い物語であったように思います。
個人的に、国王陛下やアドルファスパパの歩んだ十年も凄惨だったんだろうけど、エンリケ王子の歩んだ人生こそ壮絶の一言だったと思うんですよね。彼のセリシアへの想いの複雑さは、途方に暮れるほどに言葉にし得ないもののように感じるのです。彼のこれから歩むだろう静かな人生の中に、小さくとも心慰められる幸いがあらんことを。
そして、アドルファスパパが、心から笑うシーンが見られただけで、なんかもう万感でした。

あとは、ほんとルチアは次回主人公狙ってます、と言わんばかりの大活躍というか凄えカリスマで。
同じく囚われの身となったコニーが、これまでのエリスの聖杯をめぐる人との関わりから、その人柄でコニーを助けようという大きな動きがうねりとなって世間を動かしていく展開もなかなか胸に来るものがあったのですが、ルチアの方も同じ囚われの身になりながら、片っ端から顔を合わせる人をその魅力で落としていって、同じ囚われの身だったユリシーズ王子を守って大活躍、とか完全にヒーローでしたからね。早々に、自分が彼女を守るのではなくてヒロインの方だと受け入れて大人しくなるユリシーズ王子、なんかもう流石ですw

しかし、ほんと章の間に挟まれる登場人物紹介という名の尖すぎるツッコミと煽り文が面白すぎました。ここでわけの分からんけど的を射すぎてるキャラ付けされてしまった登場人物も多いんでなかろうか。というか、ほとんどの登場人物ここで変な固定印象つけられちゃってるぞw
黒幕のクリシュナへの、実はこいつ失敗ばかりでうまくいった試しがないみたいな煽りは、ちょっと笑いすぎてお腹痛くなりましたがな。

ともあれ、これ以上なく見事に物語にもそれぞれの登場人物にも決着を付けた上で、文句の言いようのないハッピーエンド。超本格サスペンス・ミステリーというジャンルを縦横無尽に走り尽くしてみせたあの緊張感、謎が解けていく時の驚愕、真相への衝撃、話自体のとてつもない凝縮された面白さ、何もかもが素晴らしかった。
これぞ傑作、不朽の名作でありました。



継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人 ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
結女が気持ちを決めたあの夏祭り以降、余計にお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも終盤、いつも通り水斗の部屋に入り浸っていたいさなは、水斗とのじゃれ合いを結女の母に見られてしまい、
「東頭さんが、水斗の彼女になっちゃった」
いさな=水斗の元カノという勘違いが、『今カノ』へとランクアップし!?
さらに、いさなの母には結婚しろとまで言われ、結女が攻めあぐねるなか着々と外堀は埋まっていく!
そして、いさなと水斗の噂は、新学期の高校にも伝わって……。
純真健気な片想いと、再び萌ゆる初恋の行方は――!?
こ、このヘタレがーー!! あの女、あそこまでキメ顔でキスして宣戦布告しておきながら、速攻で日和りやがったw ヘタレすぎる、根性なしすぎる、ポンコツすぎる!
普通、あそこまで心に確信を得て、二度目の恋をして、覚悟を決めて、キスという行動にまで打って出ておきながら、そこまで行っておきながらどうして腰砕けになるんだよっ!
おかげで水斗くんが訳わからなくなって混乱してるじゃないですか。当て逃げか! そりゃ、当たりも厳しくなりますわな。それでダメージ受けてるんだから世話ないよなあ、結女さんは。この娘さんは本当に、本当にダメだなあ……(しみじみ)。
うん、忘れてた。伊理戸結女という娘はこういう娘だったのでした。あんまりにも覚醒したみたいな言動してるから、見違えたのかと思っちゃったじゃないですか。
むしろ、義理の兄妹という関係で一旦落ち着いて意地はってた時の方が体裁を保てていた気がするぞ。今は、情緒不安定そのもので浮き沈みが激しいことになってて、それが余計に水斗を振り回す羽目になってるのがなんともはや。妙に小悪魔ちっくにいたずら仕掛けてきてマウント取るかと思ったら、自爆して自分から沈んでいったり。これを水斗くん、結構場面場面で真面目に受け止めているので傍目にはわかりにくいんだろうけど、結女の浮き沈みに思いっきり引きずられてるんですよね。イタズラにはかなりダメージ食らってるし。結女が意図しないところで、熱で臥せった時の結女の何の思惑もなく心配して看病する様子にもそれ以前の態度との違いに訳わからなくなって、動揺してるんですよね。
ここに来て、水斗くん結女が何考えてるのかさっぱり読めなくなって、結構パニックになっている。そりゃそうだ、結女自身がメンタルのコントロールミスって暴れ馬よろしく振り幅の大きい態度になってしまっているわけで、結女本人も自分が何やってるかよくわからなくなってるわけだし。それをちゃんとした意図の元に結女がなにかしようとしている、と見ている水斗くんである。訳わからなくなるのもしょうがない面がある。
そのお陰で警戒心でガチガチになって表面上、固い殻をかぶって様子を窺うモードに入ってしまったものだから、その水斗のそっけない当たりの強さに結女がさらにダメージ受けてさらに情緒不安定になって、とスパイラル入ってるし。
いやほんとに、前回の宣戦布告したときはカッコよかったのになあ、結女は。決意に実体がまったく付いてこなかったんだなあ、なんて残念な。

そんな義理の兄妹で妙な攻防をしているうちに、いさながスルッと入ってくるんですね。いや、以前と変わらぬスタンスではあったはずなのですが、警戒心を募らせている水斗にとってはフラットに接する事のできるいさなは癒やしになったのかもしれない。
お互い気を許しすぎるほどに許しあったじゃれ合いを、結女の母に見られてしまった事からトントン拍子で二人が付き合っている、という話が広まっていってしまう。
それで二人が改めて意識しあって、なんて単純な展開にならないのが本作なんですよね。水斗といさなの二人はお互い変わらないし、結女なんかも不安になって穿ったりもしつつも、二人のことを良く知っているから、川波・暁月の幼馴染組と二人に近しい人間はその関係を勘違いはしないものの、周りの環境が二人の関係を付き合っていると思いこむことで、徐々に変化してくるのである。
その環境の変化が、東雲いさなという少女の本質を浮かび上がらせてくる。
改めて思うのだけれど、今、紙城 境介さんという人ほど登場人物の内面を徹底的に掘り下げて掘り下げて、細部に至るまで解体してバラして隅から隅まで暴き立てるライトノベル作家は数少ないのではないだろうか。作者自身にも把握しきれていない人物像を、書いて描いて書き出していくことで鮮明にしていく、形にしていく、言葉にしていく、そうやってキャラクターを一から再構築していく作業ってのは、いわば深い深い海の底に息継ぎなしで潜り続けていくようなものだ。
自分が生み出したはずのキャラクター。でも、それがどんな人物なのか、というのは実のところ完全な未知なのである。作者の押し付けや決めつけ思い込みを拝していき、脳内でシミュレーションを繰り返し、何度も何度も問いかけて、違和感を吟味し、しっくり来る言動を見出していく。彼ら彼女らの言葉を、思いを、考えを、感情を聞き取り汲み取り捉えて捕まえて、それを言葉に、文章に再変換していく作業というのは、永遠のように途方もなく、脳髄が煮えるような熱が頭をフラフラにさせていく。
ゲロを吐きながら振り絞るように書いていた、とかつて言っていたのは冲方丁さんだったか。
でも、そうやって掘り下げて積もっていたチリを払って「見つけた」キャラクターは、本物だ。
東雲いさなというキャラクターは、作中でも怪人と言っていいほどの変人だった。誰も予想のつかない掴み所のない言動で、作中の登場人物たちの度肝を抜いていく。作者本人ですら、わからないと言わしめる未知の存在でした。
それを丁寧に丁寧に、偏執的なほどしつこく探求し覗き込み、裏までひっくり返してバタバタ暴れるこいつを踏みつけておらおら吐けぇ、と誰も知らなかった本人ですらもよくわかってなかっただろう本音を、心の奥底にあったものを形にして引っ張り出してみせたのが、この5巻でありました。
いやもう、すげえよ。
特別になりたい、或いは普通になりたい。どこかしらで見聞きするテーマでもあります。いさなの母は、まさに特別のスペシャルであり、いさなの変人さを全肯定してくれる人でした。でも、いさなにとっては決して救いにはなってなかったんだなあ。いさなという人物を徹底的に解体していったとき、そこに現れたのは普通になりたかったただの女の子……なんて安易な事にはならないんですよね。水斗がいさなに見ていたのは、ある種の決めつけによる幻想でもあったわけですけれど、だからと言って結女たちが見ていたようなただの女の子でもなかった。あそこで、いさなへの幻想を諦めない水斗はやっぱりすごいと思いますよ。果たしてどれだけの人間が、東雲いさなという少女の本質にあそこまでたどり着けただろうか。とても普通でとても特別、その結論は決して珍しいものでもないのでしょうけれど、そこにたどり着くまでの東雲いさなという少女の徹底的な解体が、尋常ならざる説得力を、凄まじいまでの浸透力を、その結論へと与えるのである。これほどわかりにくい、意味不明な人物像を、そこまで詳らかにしてしまうだけの描写が、ここにはあったのだ。
そして、その普通であり特別である、という答えは誰もが普通であり特別である、という事へも繋がっていく。水斗という少年は、はっきり言って特別、と言っていいだけのキャラクターの持ち主だ。でも、いさなと再接続したときの彼は特別なんかじゃない普通のこっ恥ずかしい青臭い下手くそな男の子に過ぎなくて、でもそれが本当に素晴らしいんですよね。
特別な部分というのは誰にでもあって、前巻の水斗の従弟である幼い少年だった竹真くんの初恋の物語が背後で繰り広げられていたように、本巻でも結女のクラスメイトである二人の女子高生、坂井麻希と金井奈須華というそんな娘居たっけ? というキャラが登場した途端にとんでもねー濃いエピソードぶっこんできて、本作には背景キャラなんていなくて本当に一人ひとり自分の物語をそれぞれに繰り広げているんだな、というのが伝わってくるのだ。奈須華と先輩の話とか、これ結構色々とイメージあるんじゃあないかしら。
こういう子らが、周りに当たり前に散らばっていることで、作品そのものへの厚みが増していく。そしてメインのキャラをこれでもかと解体していくことで、深度もまた深まっていく。
東雲いさなの解体と再構築、そして周囲の人間関係の再設定は、一度義兄弟として固まってた水斗と結女の恋物語をリスタートするためには必要な事業だったのだろう。なにしろ、結女さんと来たら作者が「結女さんはなんで一人で勝手に負けヒロインになろうとするの?」と、わりとガチ目と思われるトーンで嘆くほどのポンコツであるからして、環境の後押しがないとドツボにハマったまま出てこなさそうだしなあ。
何気に、結女が水斗に恋をしているという事は暁月に伝わり、水斗もまたいさなと川波の協力を得て自分から動き出そうとしはじめているわけで、もう伊理戸兄妹の二人の間だけで収まる話じゃなくなってるんですね。
しかしこれ、冷静に考えるとお互いにもうすでに相手に惚れ直しているのに、もう一度惚れさせてやると入れ込んで、周りの支援を受けつつ真正面から衝突しようとしている三秒前、みたいな事になってやしませんかね。色んな意味で大惨事になりそうだなあ、うんうん。

しかし、同じシチュエーションでのお色気攻め、バスタオル一枚で男心を翻弄する、という行動に打ってでながら、結女と暁月でこれほど差が出てしまうのは、なんか結女さんに対して目を覆う他ないというか、逆に暁月と川波の幼馴染組は関係性がディープすぎてめまいしてきそうなんですけど。暁月ちゃん、小暮のこと好きすぎだろうこれ。そして、このままだと特殊なプレイに目覚めそうw

そして、本作読み終わって一番すげえな、と思わされた所が、あれだけ東雲いさなというキャラを解体し切ったにも関わらず、終わってなお「いさな」が予想のつかない想像の上を行く人物であり続けた事だろう。どれほど掘り下げ暴ききっても、キャラクターは駒にはならない。物語の登場人物に、実のところ底なんてものない。彼らは本来は誰からも自由な存在なのだ。東雲いさなは、それを一番先頭で体現し続けている。アホみたいに、すごいなあ、と口をぽかんと開くしか無い。
それがまた、痛快で楽しくて仕方ないのだ。うん、たまんないねェ♪


探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる ★★★★★   



【探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理 なゆた MF文庫J

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私ならその事件・疑問・憂鬱、秒で解決だね——。可愛くて、どこか抜けていて、無邪気でキレッキレな山田さんと、思考フル回転 《本格派》学園ミステリーラブコメ!
新学期——俺は失敗した。
親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺だったが−−

「それさ、そもそも事件じゃないね〜」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村君」

何があっても山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬の対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけど、これ完全に狙ってるよね!?
山田さんたちと俺の少し甘めな、本格派学園ミステリー。

もう好きーーーッ!!

やだなあもう、やっぱり自分て玩具堂さんのお話大好きですわ。もう好きすぎて、途中から心がピョンピョンしだして終盤読みながらゴロゴロ転がりまわってしまった。
相変わらずこの作者さんは情景描写が神がかっている。戸村くんを挟んで両隣に座った山田雨恵と山田雪音。この三人が並んで色んなやり取りをしている光景が、もうありありと目に浮かんでくるのです。ただ話しているだけじゃなくて、特に雨恵なんだけどフリーダムな性格のせいか動きも多いんですよね。机の上に寝転がるわ、靴下脱いで素足でブラブラしてるわ。足の指をくにくにと動かしながらあれこれ考えている様子がまた、なんか好きなんですよねえ。戸村くん、めっちゃ見てるし。爪が小さくて真珠みたいだ、とか思っちゃってるのって相当ガン見してますよね。
こんな風に細かい仕草まで自然な流れで丁寧に描写されるので、ただおしゃべりしているシーンでも誰かしらが情景の中で動いていて、言葉として発せられる以外の部分もそんな仕草や表情から雄弁に語られるのだ。誰かの発した台詞で、聞いていた人の反応から様々な心情が物語られる。
情景描写が、そのまま心理描写へと連結されているのだ。キャラクターの心の動きが、言葉で語られる以上にその人の仕草や表情、声の調子は僅かな反応などからさらに積み重ねられていく。其上で、言葉でもちゃんと心の動きをとても繊細に描いてくれるんですね。

ただ席が隣だった、いや何だかんだ仲の良い双子に挟まれて居心地の悪い思いをしていた大人しそうな戸村くんに、果たしてあの性格正反対の双子がどんな風に興味を持ち、彼といっしょに「探偵」をするのを楽しく感じるようになっていったのか。
このクラスになって初めて会って、話すのも初めてだった男の子、どんな風に仲良くなっていき、段々と彼の存在が自分たち双子の間で無視できないものになっていき、ちょっとした「特別」になっていくのか。
この過程がまた一つ一つ些細な積み重ねなんだけれど、その些細な影響、変化が双子の間で反復していくうちに大きくなっていくんですね。二人一緒、ではなく片方片方にそれぞれちょっとした揺らぎが起こることで相手の様子が気になり、無視できなくなり、段々と揺れ幅が広がっていく。これがほんと素晴らしくてねえ。
この双子、性格が正反対なのです。片や雨恵は天才肌の自由人。博識で真面目だけど人付き合いが不器用な雪音。仲の良い二人だけれど、同時にいつも喧嘩ばかりしていて雪の方は姉にコンプレックスめいたものを抱いているし、雨も不器用な妹のことを気にかけて、同時に何だかんだと自分に内向きだけど充実した高校生活を送っている雪のことを羨んでいる。
そんな二人の間に文字通り割って入ってきた戸村くん。いや、彼に構い出したのは雨であり、それに引っ張られる形で間にいる戸村くんに戸惑いながらも関わりだした雪であって、戸村くんは困ってばかりだったのだけれど、無理やり押し付けられた探偵仕事を推理という形だけれど助けて貰った事もあって、無視するでも拒絶するでもなく、二人の間になんとなくすっぽりと収まる事になる。
単に、席が二人の間、というだけではない本当の意味で二人に挟まれた関係になっていくんですね。それは二人の間に割って入るということでもあり、二人の姉妹の間を繋ぐということにもなるのである。
この戸村くん、お父さんが探偵で、それも名探偵とかじゃなく本当にただの興信所の運営者という意味での現実的な探偵であって、彼自身別に推理好きとか頭がいいとかじゃなく、傍目に見てるとほんとにただの何の特技もない普通の少年、に見えるんですよね。
でも実は……というわけでもなく、いやもう本当に普通、普通の子、のはずなんだけれど……うん、ちょっとおもしろいなあ。雨は、悪意に対する悪意の持ち主、なんて表現をしていたけれど、観察眼が特に人間関係での相手に対する心情、の部分で聡いというか察しがいいんですよね。マリーの彼氏への気持ち然り。美術部での友人関係の複雑な感情の在処然り。そして、実はなかなか難しいところのある山田姉妹のお互いに対する感情然り。
そういう察しの良さは、相手への気遣いにも向いていて、踏み込むべき所と無造作に手を突っ込んでは行けない所をちゃんとわかっているんですね。双子が喧嘩した時、雪の所に話しに行った時。美術部の人間関係に不用意に言及しようとした雪をとっさに止めた時、などにそれが伺えるのだけれど。
その理由というか根源に、上の姉が父親と喧嘩して家を飛び出し、家庭が軽い家庭崩壊になってしまった時の後悔があるようなのだけれど
決してコミュ力が高い、という風には見えないのだけれど、一番肝心な時に間違えずに相手を慮れる本当の優しさがある。山田姉妹って、方向は違うけどかなり難しい性格していて、自分たち二人のテリトリーに余人を踏み込ませる事をしないように見えるんですよね。雪はまずもって他人を寄せ付けられないし、雨は雨で軽く広く付き合いは気安く誰とでも仲良く出来るけど、本当の意味で踏み込んだ関係は煩わしがるタイプ。そんな二人の間に、わずか数週間でスルスルと入り込んでしまった。いや、戸村くん当人からすると入り込んだなんてもんじゃなく、二人に絡まれたくらいの感覚なんだろうけど、終わってみれば二人のこと、名字じゃなく名前で呼ぶ関係になってるんですもんね。
それに、最後のエピソード。姉妹が彼にパンダのアクセをプレゼントしようという話になったの、あれ双子が自分たちの「守護獣」を二人で揃える事が幼い頃からのエピソードからして、本当に特別なんですよね。これに関しては親すら踏み込ませない、二人の特別だったと思うんですよ。
それが、戸村くんの「守護獣」を選んで二人でプレゼントすることにした。これ、双子本人たちも気づいているとは思わないのだけれど、明確な特別なんですよね。双子を挟んで間に戸村くん。これが単なる教室の席順、では収まらなくなった象徴のようにも思うんですよねえ。

さて、本筋である日常ミステリー。作中では3つの事件、いや事件は最後の一つだけで前の2つは「探偵」に対する調査依頼というべき内容だったのですけれど、これがまた3つともべらぼうに面白かった。親が探偵やってます、と初クラスでの自己紹介で口走ってしまったが故に、無理やり頼まれてしまった依頼であり、以降の二人は最初の一件の評判によって持ち込まれた案件だったのですが。
実際の探偵業の後ろ暗さと後味の悪さを知っている戸村くんの心情として、謎を解くことで誰かに不幸になってほしくない、という思いがあり、それが彼に探偵をすることに気が進まないという思いを抱かせていたのですけれど、この3つの案件はどれも……2つ目はちょっと違うか、でもどれも謎を解くことによって誰かの不幸せを遠ざけられ、誰もが笑顔になれる、というエピソードだったんですよね。
なので、推理し謎を解く、という結果がどれも清々しくて、素直にああ良かったなあ、と思える形で終わっているのです。それが、双子と戸村くんに、探偵も悪くない、楽しいね、という共通の思いを抱かせ、より三人のつながりを深めていく所以にもなっていくのです。
発想の面白さとしては、やはり二番目の事件でしょう。表紙カバーだけ残された既に絶版となったライトノベルのミステリー作品。シリーズものの第五巻。それを中身を読まずに(何しろ中身の本がない)、カバーの登場人物紹介と作者の執筆傾向という情報だけでこの巻の事件の犯人とその動機を推理しろ、という内容。いかにも無茶振りなんだけれど、三人寄れば文殊の知恵、のごとく三人でああだこうだ話しているうちに推理が繋がっていく、この展開は面白かった。
この三人、戸村くんが方向性を見出し、雪が知識を駆使して情報を引き出し整理し、揃った材料から雨が閃く、という結構ちゃんとした分担になっているのがまた興味深い。
3つ目の事件は、彼ら三人の前の席の三原さんが依頼してくるのだけれど、前の席に座っている、ということで三原さん、この三人の会話をよく聞いていたから、美術部の事件の解決を彼らに依頼してきたそうなんだけれど、この娘が戸村くんと山田姉妹のこと、ファンなんだ、と微笑むシーン、すっごく分かり味だったんですよね。そうだよね、この三人の会話聞いてたら、好きになっちゃうよねえ。
ちなみに、この三原さんもえらい属性過多というか個性的な娘で、最後のエピソードだけの登場だったにも関わらず、存在感やたらパなかったです。最初にチラッと、自己紹介の時にこのクラス個性的なやつが想像以上に多かった、と印象が語られてたけれど、三原さんみたいなのがわんさかといるのか、もしかしてw

まあそんなクラスの中でも、この戸村くんと山田姉妹はトップクラスに個性的なトリオになっちゃってると思いますけど。あれ、三人の間では雑談してたらなんか真相が見えた、という感じで最初の事件も二番目の事件もあんまり当人たちは深く考えてないかもしれないけど、依頼した側からすると相談した次の日に、あっさりと真相を掴んでくるわ、本の中身のないミステリーの犯人と動機まで僅かな情報から探り当ててくるわ、なにこの人たちガチの名探偵じゃね!? と仰天しますわなあ。
実際、マリーにしても図書館の彼にしても度肝抜かれてましたし。客観的に見ても、訳解んないですよこの三人w

さて、かつて幼い頃に親から貰ったパンダのぬいぐるみは、双子ふたりの取り合いでついにはボロボロになって壊れてしまったそうで。さあ、新しいパンダは、もし双子ふたりの取り合いになったら耐えられるのか。
「ま……ぬいぐるみよりは丈夫でしょ」

なかなか不穏なことをおっしゃいますなあ、雨恵さんw

この三人の顛末、まだはじまったばかりで関係もまた本当の意味で「三人」になったばかり。これがどんな風に転がっていくのか、もう見たくて見たくて仕方ない。
名前で呼べと命令しながら、実際呼ばれると擽ったさに悶てしまう雨恵に、あとになって姉に対抗しようとして挫折して、「雪さん」と呼ばれるようになってやっぱり悶てる雪音。
このあたりの名前呼び関係の話はもうほんと甘酸っぱいというか擽ったいというか、たまらんかった! 名前で呼ぶだけでこれですよ、これ以降どうなるかもうたまらんじゃないですか。

あとがきでは、二巻以降はまだ決まっていないそうですが、絶対見たいです、読みたいですヨ!
そう叫びたくるくらい、素晴らしく面白く最高に素敵なお話でした。これくらい心がピョンピョンしてしまう物語は、滅多ないんですよぅ!

玩具堂・作品感想

TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜 ★★★★★  



【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1 〜ヘンダーソン氏の福音を〜】 Schuld/ランサネ  オーバーラップ文庫

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データ廃人(マンチ)、異世界を命がけで遊び尽くす!

「データマンチ」――それは、データ上可能であれば神殺しにさえ興じる変人。
そんな「データマンチ」だった前世を持つ少年・エーリヒは、異世界への転生時に授かったキャラビルドの権能を活用して理想の強キャラにならんと画策する。
妙に蠱惑的な幼馴染との遊戯やブラコンな妹のお世話をする中、頭を捻ってデータを隅まで舐め回し、熟練度をやりくりしながら極悪コンボを模索していくエーリヒ。
しかし彼が思うよりも早く物語(セッション)が動き出し、エーリヒは大切な者を守るため戦いに身を投じる(サイコロをふる)ことになり……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、ここに開幕!
うははは、これ相当に加筆とかしてますよね。
それでなくても、一気に読むとこの作品の凄まじい「濃厚さ」に酔っ払いそうになる。読んでても、文章内の情報密度が半端なくてそれでいて目が滑る事無くグイグイと読み込ませてくれるだけに、読み応え歯応えが尋常ではないんですわ。
お陰で満腹感満足感がまたとんでもねー事になってます。

事前に書いたピックアップの記事でも書きましたけれど、キャラビルド、ステータスやスキルの数値を貯めた熟練度から好きに振り分けられるという展開は転生モノでは珍しくもないけれど、それを生粋にして屈指のTRPGプレイヤー。人生の趣味の時間の大半をTRPGに捧げた粋人、それも和マンチなどと言われるシナリオとルールとデータ傾向を舐め尽くすように吟味して、常識にとらわれずにやらかす人種が異世界転生して自分のキャラビルドをはじめてしまったら、というTRPGを嗜む人には垂涎の作品なんですよね。
サブタイトルの「ヘンダーソン氏の福音を」とかTRPGを嗜んでる人でなかったら意味わかんないんじゃないだろうか。ちなみに私はこの作品読むまで知りませんでした。あいにくとTRPGはやった事ないもので。でも、リプレイなんかは読んでても腹抱えて笑い転げたり手に汗握ったりとメチャクチャ面白く楽しめるものが多々あるだけに、色々と追いかけたものですのでどういうモノかというのはわかっているつもりなんですけど。
ヘンダーソンというのは作中の人物でなく、TRPGというジャンルにおける、プレイヤーを全殺しするつもりしかなかったGMのシナリオに参加して、その物語を見事にきれいな形で完結させた伝説のプレイヤーであり、彼の名を元にした「ヘンダーソン・スケール」というストーリーがシナリオの本筋からどれだけ離れてしまったかを示す指標のもとになった人物だそうです。
このヘンダーソンスケールは作中でも幕間でたびたび登場し、サブストーリーの展開やシナリオの展開が完全に本来のエンディングから逸脱してしまったいわゆる「IFストーリー」を示すものとして登場します。
本巻でも「ヘンダーソンスケール 1.0」という「IFストーリー」が描かれていて、これ今後もストーリーがもしこんな風に転んだら、こんなエンディングが待っている、という風に描かれるので続刊出たらお楽しみに♪

さて、この1巻ではデータマンチであるエーリヒ、データマンチってのがどういう輩なのかはあらすじ以上に本編で熱く語られているのでそれを参照してもらうとして、そんなビルダーな彼の幼少期から少年期の田舎の農村での生活が描かれることになります。
実のところ、派手な立ち回りが要求されるイベントはラストの一幕だけだったりするのですけれど、ただ辺境の農民の四男坊であるエーリヒの日々の生活、これがまたメチャクチャ濃厚なんですよ。
というのも、世界観の設定がとてつもなく緻密なのである。ライン三重帝国というエーリヒが暮らす国において、農村部の人々がどんな風に暮らしているのかというのが風俗風習からわりとシステマティックな社会体制、統治の仕組み、子供の育ち方や教育方針など様々な観点から緻密かつ非常に面白おかしく描かれていて、エーリヒを含めた子どもたちが成長していく様子を見ているだけでもこれめちゃくちゃ面白くて読み応えあるんですよね。
エーリヒたち家族のヒト種のみならず、この三重帝国は様々な種族が混在して当たり前に共存している、というごった煮感も素晴らしく、幼馴染でこの巻のメインヒロインともなるマルギットなんか、アラクネだったりしますからね。その蜘蛛人であるアラクネですら幾つかの人種があって、マルギットは蝿取り蜘蛛のアラクネという事で小柄で俊敏に飛び回る天性の狩人、という側面があり、ある意味凄まじい観点での種族あげての合法ロリだったりします。合法? もう尋常じゃなく色っぺーんですよね、この幼女風幼馴染。二歳年上の姉さんではあるんだけれど、見た目は幼く、しかし幼い容姿とは裏腹の妖艶さと一途さの持ち主で、幼女にして既に男の狩り方を母君から教授されており、エーリヒとの関係はもう小さい頃からたまらん状態だったりします。
「ヘンダーソンスケール 1.0」でああなってしまうのも、まあ仕方ないかなあ、と思わざるを得ない!
とは言え、マルギットがエーリヒに夢中なのもよくわかるんですよ。この主人公、可愛げの塊みたいな所がありますし。まさに人生を謳歌しているというか、周りを巻き込んで楽しそうに遊んでいるわけですよ。決してこの人生をゲームだと想っているわけではなく、家族を含めて知人友人への愛情タップリですし、最強ビルドを目指すぜーと人生の目標を立てているわけですけれど決して効率厨になっていなくて、ついついその場のノリで余計なスキルやらに熟練度を消費してしまって、素敵な笑顔を浮かべながら無駄な言い訳を自分に繰り返しちゃってるところなんぞ、まあ愛嬌たっぷりなんですよ。あるある、わかるわかる、と思わず頷いちゃう欲望に流されちゃうスタイルは共感すら覚えますし。でも、子供同士の隠れんぼで隠蔽系スキルをあれこれとっちゃったりするのは大人げないぞw

今はまだ辺境の田舎から見た世界という視点からの世界観描写ですけど、その時点でこれだけ密度濃く社会の仕組みの重厚さ、巧みさ、歴史の奥深さを感じさせてくれるのですが、これが先々またエーリヒが置かれる立場から、三重帝国の国家構造や民族、都市部の社会体制や人々の暮らし、娯楽風俗なんぞがまたたっぷりと描かれていくので、もう堪能し甲斐があるのなんの。
また世界観の解説として挟まれる「TIPS」と呼称される解説文章も、これ単なる説明文じゃなくてその場面に応じた諧謔、ウィットに富んだ詞になっていて、作中の雰囲気をより弾ませ撹拌し、匂い立たせることに一役買ってるんですよね。物語を綴る上での「間」を取る作用にもなっていて、読むテンポを調節する上でも重要な役割を負っているようにも見えます。この「TIPS」の使い方も何気にセンスの塊に思えるんだよなあ。思わず、ニヤリとさせられることも度々ですし。

いやあ、面白かった。この濃厚さは物語の世界の中に首まで浸かって思う存分スイミングしているような満足感を与えてくれます。掘れば掘るほど、掘っても掘っても宝がザクザク出てくるような、それがいつまでも終わらないような濃密さ。まだ村から旅立ちすらしていないにも関わらず、並のシリーズなら第一部完、までやっとこ読み切ったような読み応えでありました。うん、ウェブ版既読済みで、書籍化なる前からイチオシの作品だったのですけれど、こうして一気に読むとまた密度の濃さを改めて思い知らされた感があります。読んでるあいだじゅう、楽しい楽しい時間だった。
まだまだ、この世界を、エーリヒの愉快な旅路を堪能し続けたいと思わせてくれる作品でした。
まさに、至福の時間でしたよ〜。最高♪

継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する ★★★★★  



【継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する】 紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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そういうところが、好きだったから。終わった初恋と“今”が交差する帰省編

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
“家族”らしさも板についてきた二人だが、ときおりあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも半ば、伊理戸一家は父方の実家に帰省する。
「水斗くんじゃ~ん!! ひっさしぶりぃーっ!!」
水斗をハグで出迎えたのは、親戚の清楚風陽キャお姉さん・種里円香。
なぜか彼女には従順な水斗に、結女は察する――この人、水斗の初恋相手!?
昔の恋は振り切って、今の関係――“きょうだい”を受け入れたはずの元カレと元カノに、未練が渦巻く三度目の夏祭りが訪れる。
結女の決断に元カップルが大いに揺れ動く、夏休み帰省編!

はぁーーー。いやもう凄かった。元カップル同士が義理の兄妹になってしまって、未練を引きずりながらどうしようもない距離感で甘酸っぱいラブコメを繰り広げる、そんな作品だった本作だけれど、この巻に至ってラブコメという段階を突破してしまったのではないだろうか。
ほぼ結女の視点から描かれる未練の終わりと二度目の恋のはじまり。繊細に一つ一つ丁寧に紡がれていく心理描写。行きつ戻りつしながら整理されては迷走し、やがてひとつの答えへと辿り着いていく心の内。これはもう、真っ向純正の恋愛小説ではないか。
伊理戸家の実家に帰省し、父方の親戚の歓迎を受けて、知らなかった水斗の姿を垣間見る結女。これまでも家族となってはじめて恋人の頃と違い、お互いを慮らず気を遣わずただ一緒にいるという時間と空間を共にすることで、かつて知らなかった相手の姿を見る機会を得てきた二人だけれど、今回の帰省は改めて結女の知らない、過去の水斗が彼女の目の前に現れてくる。
それは言わば、水斗という青年の今へと繋がるルーツだ。彼という人間がどのように作られ、どのように育っていったのか。その内側に何を抱えているのかを知ることになる旅路だった。過去を知ることで、ようやく結女は今の水斗という青年の本当の姿を知ることになる。
それは恋人であり続けたなら多分知ることのなかっただろう姿。家族になってはじめて触れることの出来た成り立ち。
そして、彼の初恋の人と思われる親戚の女性円香の登場によって、彼女の未練は大いに揺さぶられることになる。
自分の中の未練の姿を、かつて自分が失ったものの大きさを、どれだけ自分が成すべきを成さなかったのかを、足りなかったのかを、知ることになる。円香さんの存在はまさに触媒だった。年上の女性、という経験値の豊富な彼女のアドバイスは結女の迷走に一つの方向性を与え、自分の心の内側を照らしだす灯火となる。
家族になってはじめて辿り着いた場所。義理の兄妹になってこそ。それこそが、この物語がただ元カップルがよりを戻すだけのお話にならなかった要なのだろう。
彼らが幾度も過去の関係を「若気の至り」と強調するのはごまかしでもなんでもない。彼らにとっても物語にとっても、それはまさに事実だったのだ。初恋は実らない、これもまた事実。だから、ここからはじまるのは、恋に恋する幼い初恋の物語でも青春の勢い任せの恋愛でもない。未練に引きづられて終わってしまったものをもう一度再開する昔の恋の続きでもない。
痛みを知り苦味を噛み締め傷跡を抱えながら、今度こそ本当にその人の人生そのものを掴み取る大人の恋の物語だ。
昔の恋が終わってくれない? それこそ未練だ。終わっている、それはもうとっくに終わっているのだ。それを認めなくてははじまらない。受け入れなければはじまらない。
だからこそ、伊里戸結女の宣戦布告。一足先にケリをつけてみせた女の宣言だ。
【ファースト・キスが布告する】。最高のサブタイトルだろう、これ。

しかし、このシーンをもうひとつの初恋の終焉に絡めているのって、心憎い演出だよなあ。恋破れた男の子にとっては、彼と彼女の間に繰り広げられている恋模様の内実は何も知らず、ただ目の前で起こった出来事でしかない。男の子の視点から見た光景を思うと、彼の千々に乱れているだろう心情と、結女と水斗の間で起こっている物語との断絶に感慨みたいなものが湧いてくるんですよね。
ああ今、結女と水斗と全く関係ない所でこの子だけの物語が繰り広げられているんだなあ、と。
この世界は、決して結女と水斗だけで出来ているわけじゃない。この子、竹真にとっての初恋の物語があり、やがて彼が成長するにつれてあのシーンは彼の心の育ち方に、恋愛観に多大な影響を及ぼすだろうことが想像できる。水斗の父と結女の母の結婚にも、親族たちの歓迎っぷりを見るととても大きな人生のドラマがあったのだろう。水斗の内面を作り出すきっかけとなり、今また結女に水斗の在りようを伝えるきっかけになってくれた曽祖父の自伝「シベリアの舞姫」もまた、かつてあり今結女たちに繋がっている人生の物語だ。とある壊れた幼馴染たち、あのどうしようもなく続いていくだろう川波と南の二人も独自の物語を構築しながら、この作品の世界観を形作る要素となっている。
登場人物の内面描写、心理描写を深く深く掘り下げて浮き彫りにしながら、人間関係を描き出していく作品は、ともすればメインの登場人物、主人公とヒロインのみに焦点を合わせて二人を描くためだめにすべてが用意されているような閉じた世界になるケースが幾つも見受けられるけれど、本作はちょっと違う気がする。
主人公とヒロインとは関わりがあるようで遠いところに幾つもの独自のドラマを見つけ、或いは目の端に映すことで、世界を広げ、そうすることでより深く一人ひとりのキャラの奥底を掘り出すための助走にしているかのようだ。広く浅くでも狭く深くではなく、広げることでより深く掘り起こし、成長させ、今までになかったものを構築していくかのような。心のあり方を見つけ、芽生えさせていくような。
この巻は、その一つの昇華の形である。
今までの三巻でばら撒いてきたものを、一気に集約して綴りあげてみせた段階を一つ上げるステップだ。そんでもって、こっからがリスタート。終わらない恋を終わらせて、はじまりはここからなのだ。
此処からなのよ!?
ほんとにもう、こいつは物凄い作品を送り出してきやがった!


数字で救う! 弱小国家 5.勝利する者を描け。ただし敵は自軍より精鋭と大軍であるものとする。 ★★★★★   



【数字で救う! 弱小国家 5.勝利する者を描け。ただし敵は自軍より精鋭と大軍であるものとする。】  長田 信織/紅緒 電撃文庫

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『この手紙を読んでいるということは、僕は死んでいるだろう』

同盟軍本隊の敗北により、ファヴェール王国軍は泥沼の戦争に突入した。
なんとか打開策を見つけようとする女王ソアラと宰相ナオキの二人だったが、武勇と知略に長けた、過去最高の強敵たちがその行く手を阻む。
不利に不運が重なって、
そして、ついにその時は訪れた。

――宰相ナオキ、凶弾に倒れる。

過去最大級のピンチを前に、女王ソアラの決断は……? そしてファヴェール王国の未来は……!?
異世界数学ファンタジー戦記、急展開のシリーズ第5弾!

大戦争だーー!!
ピエルフシュ王国との決戦で、敵有翼騎士団フサリアを見事に粉砕して大勝利をせしめたファヴェール王国。これで戦争は勝利、と思ったところで同盟の本隊がマイセンブルグ帝国との戦いで大惨敗を喫して、勝利の算段がひっくり返ってしまう、というのが前巻までの展開だったのでした。
じゃあ次はマイセンブルグ帝国と直接の戦いに? と、なると思ったらならないのが並の戦記物じゃないんですよね。
マ帝国と同盟本軍との戦線がマイセンブルグ帝国側に傾いたことで、ピエルフシュ王国側に援軍が来る……という体で王国の継戦の意志が復活してしまうわけですな。これ、面白いのは本当に援軍が来る、来たというわけではないところ。戦力バランスと観測の問題なんですなー。
これで、ピエルフシュ王国が継戦の意志をなくすまでさらに叩かなければならなくなった上に、同盟のフリを覆すためにオルデンボー戦線に戦力を追加投入しなければならなくなった。いや、したくないんだけれど同盟諸国、特にその本陣であるワルテリア帝国側の意志を無視するわけにはいかないのでテコ入れは絶対必要、ということなので、ファヴェール自体は勝ったのに戦争自体は大劣勢になってしまうんですな。さらに、マイセンブルグ帝国もここにきて直接近づいてきて殴る、というわかりやすい戦争ではなく、戦わずして戦局をひっくり返してしまう、というロジックの元にあれこれと仕掛けてくるのである。
これ、ナオキとまったく同じ思考パターンなのですね。つまり、ナオキのライバルとも言うべき人物がマイセンブルグ帝国に現れたのだ。
さらに、ピエルフシュ王国も南方戦線を担っていた英雄がぼんくら気味な国王から軍権を引っさらって、北方戦線へと指揮官として踊りかかってきた。
ここにきて、ナオキはまったくベクトルの異なる怪物二人を相手取ることに。
しかし、ナオキも今や「魔術師」として各国に恐れられ畏怖される名うての戦略家。いや、今回の縦横無尽の戦争指揮っぷりと来たら、これはもう「魔術師」の異名がピッタリという凄まじい転がし方なんですよね。これ、よっぽど視点が高い軍人武将でも、なにやられてるかわからんでしょう。まじで魔術みたいに思えてしまうんじゃないだろうか。
なにしろ、将棋で言うところの一手損角換わりに例えていたけれど、普通に戦えば敗北して撤退して占領される、という行程をすっ飛ばして、とっとと戦闘せずに撤退して相手に街を占領させることで、相手にあったはずの主導権を逆にファヴェール側が奪っちゃったんですよね。相手が先手で後手に回ってしまったのを、一手わざと損することで先手となり、こっちの思うように戦争そのものを動かせる余裕を手に入れる。これ、ほんと相手からしたらわけわからんですよ。これをリアルの戦場でこれほど読んでるこっちがわかりやすく理解しやすい形でスパッとやらかしてしまうとか、そりゃ相手の傭兵将軍あたま掻きむしって悔しがりますがな。自分が今まで積み上げてきていた勝利手順全部ぶち壊されたんだから。しかも、多分味方でそれを理解してくれる人ってかなり少なかったんじゃないだろうか。勝った勝ったで喜んでばかりで。
恐ろしいのは、これに似たことをピエルフシュ王国側にも仕掛けてて、英雄との戦争との後半戦なんか英雄さん連戦連勝の負けなしという圧倒的勝利の連続という状態に入ったのに、戦争そのものを俯瞰してみると、勝てば勝つほどピエルフシュ王国側が負けていく、という状態になってたんですよね。まさに、戦場での勝利が戦争の勝利に繋がらない状態にさせられてしまっていた。どころか、勝つほどにやばくなる、という陥穽を作り出してしまってるところに、ナオキの魔術師っぷりが際立つのである。
今回ばかりは、ナオキの戦争指導手腕にはゾクゾク肌が泡立ってしまった。ここまで鮮やかに「戦争」を作り上げるだけの、いわば戦争芸術と呼ぶに値するそれを戦記物で目の当たりにする機会は決して多くないですからね。
しかし、それでナオキがこの戦争を好き勝手できたか、というとそんな事はなく、今回は彼の計算を上回る出来事が幾度も起こり、ナオキも絶体絶命のピンチに追い込まれるという展開が度々。いや、マジで死ぬんじゃないか、という瀬戸際が何度も何度も繰り返されて、ハラハラしっぱなしでしたよ。今回、本気で余裕なかったし。それだけ、ピエルフシュ王国の英雄とマイセンブルグ帝国の傭兵将軍の辣腕と気迫が凄まじく、その将器が伝説の域に達していたからなのでしょう。それと真っ向から渡り合っていた、という時点でもうナオキも立派に歴史上の偉人の名を連ねるに何の不足もないやべえ領域の人になっちゃってたわけですけれど。
いやでも、今回本気でナオキ死ぬんじゃないかと思ったさ。傭兵将軍が評していたけれど、何気にナオキと同じスペックを有している人がファヴェールに居るんですよね。ソアラ女王というのですが。
この嫁さん、奥さん、ほぼほぼナオキと同じ戦略眼の持ち主で、戦場勘もあり、大戦争を指導できる視点もあり、ってかほぼ同スペックなんですよ。多分、ナオキが出来ることは彼女も出来るんじゃないだろうか。
既に物語としても、ソアラと結婚して子供も出来て、と主人公としてのナオキが退場しても物語として成立する土壌は出来ていたのである。まあその場合、ソアラさんが復讐鬼と化してそれはそれは楽しいさらなる大戦争になってた未来予想図も多分にあるのですが。
あのナオキが遺した遺書がなかったら、戦争自体かなりひでえことになってたんじゃないだろうか。ソアラ女王って、王女時代孤立してて今も何気に友達いない、と揶揄されるように人心掌握には微妙な所がありますし、結構感情で暴走する傾向もありますし、その暴走を統制された狂気へと昇華するだけの訳のわからんレベルのスペックもありますし、とこのお嫁さんやっぱりヤバいよなあ。彼女の旦那をやれている時点で、魔術師の異名を冠にしていいかもしれない。

ともあれ、今回は前回の戦争を三倍ほど上回る形で大盛りあがりでありました。やはり、戦争は強敵が相手に居ると否応なく盛り上がります。そりゃそうですよね、死闘激闘となってお互いの人外の才能を披露しまくるわけになるのですから。
マイセンブルグ帝国皇帝軍総司令官ワルター・フォン・グラフディール。これは、地球の史実におけるアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインに相当する人物でしょう。ドイツ三十年戦争における花形の一人、映えある傭兵将軍ヴァレンシュタイン。
そしてピエルフシュ王国の英雄ヴァツワフ・ジェヴスキーはスウェーデンの北方の獅子と呼ばれたグスタフ2世アドルフに戦場で圧勝しつづけたというポーランドの名将スタニスワフ・コニェツポルスキに相当すると思われる。
なるほど、今回ナオキが死にかけまくったのは、彼とソアラがグスタフ2世アドルフに相当する立場だから、というのもあったのか。グスタフ2世、戦場でボロクソにやられまくったみたいだし。ってか、ソアラの異名は北方の雌獅子なんですよねえ。

また、ナオキの元で活躍する若き世代も台頭してきて、傭兵将軍なレオンの息子ドグにナオキの数学の直弟子でもあるトゥーナ、そしてドクと同じ直属大隊長としてエアハルドという青年が躍進してきてこの三人トリオがまた活躍するんですねえ。そして、若者特有の甘酸っぱい展開に……なりそうで、ならない! というか、ドクがあれは可哀想過ぎるw 真っ白を通りこして悟りを開いたような状態になってしまうのも仕方なし。ってか、ある意味ドロドロじゃねえか。どうするんですか、ナオキさんこれw
でも、これだけ若い連中が台頭してきたから、最後の展開みたいになった、とも言えるんですよね。ソアラが闇落ちしかけていた時、復調するきっかけになったのもあれでしたし。思えば、ソアラを除けば本当からナオキのこの世界での人生に付き合ってきてくれたんだよなあ。一緒のものを見て、ナオキにこの世界の現実を教えてくれて、くだらなくも楽しいことを色々と教えてくれた。ナオキがソアラとともに二人きりの世界に閉じこもらずに済んだのも、ナオキの頭から湧き出してくるこの世界にはまだ見当たらなかったロジックを、気にも止めずに聞き流し、でも一緒に遊んでくれたあの人が居たからだ。恩人で、共犯で、悪友で、右腕で、親父さんだった。
楽しい、愉快な人だった。
だからだろう、ラストシーン、凄く好きだ。ナオキの胸にいっぱいに満ちたものを、わずかにでも共有できた気がする。
シリーズ最高の一作であり、屈指の戦記でありました。


異世界拷問姫 9 ★★★★★   



【異世界拷問姫 9】  綾里 けいし/ 鵜飼 沙樹 MF文庫J

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「どうか、皆、みーんな、一緒に死んでください」
最愛の父・ルイスを失い、【異世界拷問姫】アリスは世界を壊し始める。
かつて最愛の従者・瀬名櫂人を失った【拷問姫】エリザベートは世界を守り続ける。
それは鏡映し、共にあり得た可能性。
それ故に決定的に交わらない二つの道。
だから二人の拷問姫は“彼ら”の遺志を継ぎ、各々に世界へと立ち向かう。
「どうして、私だけお父様を失うの? 『瀬名櫂人』のエリザベートは生きているのに!」
「この【拷問姫】が全てを賭けるのだ──【異世界拷問姫】が受けずして、どうする?」
これが神話に至る物語。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー、最終巻。


……冒頭の、見開きのカラー口絵。表紙絵がその一部分なのだけれど、これがもう美しすぎて、呆然と見とれてしまう。どこぞの美術館に飾ってあってもおかしくないと思えてしまう。初っ端から魂を鷲掴みにされて、そうして始まるのは生命の讃歌だ。

不思議だ。皆が皆、死んでいく。片っ端から、消えていく。惨たらしく、残酷に、血塗れになりながら、ろくな死体も残さず死んでいく。
なのに、これほど皆の「生」を、生きたという実感をどうして感じるのだろう。彼らは死んだ。だが、生きたのだ。生きて生きて、生き抜いた先での死だったのだ。それは惨劇ではない、悲劇ではない、そう思えてならない。そして、彼らの死は終わりではなかった。結末ではなかった。終わるためではなく、終わらないための、その繋ぐための彼らの生き抜いた証だったのだ。だから、彼らの死は犬死であっても無為ではなかった。その先へと続いていくための、橋渡し。不要ではあっても、証明だったのだ。世界は、人は、生きるということは、美しいモノだという事実を証立てる証明だったのだ。
瀬名櫂人とヒナが去ってからずっとエリザベートが自問し続けた問いかけ。果たして、世界は守るに値すべきものなのか。この人々の愚かさと醜さで彩られる世界は、瀬名櫂人が命を掛けるに値するべきものだったのか。救われるべきものだったのか。滅びてしまえばよかったのではないのか。愛するに、値しないものだったのではないか。
どうしようもない争いを目の当たりにしながら、何度も彼女が問いかけた疑問。そんな彼女を支え続けたのは櫂人の世界を愛し守ると願いであり意志であったけれど、この醜い世界で幾度も彼女が目にした美しい人の心がエリザベートを進ませ続けた。そんな美しい光そのものだった人たちが、キラキラと輝きながら散っていく。醜いと、愚かだと思えてならなかった人々すらも、この滅びの最果てで答えを得たかのように光り輝いていく。
そう、みんなこの世界の滅びゆく最果てで、各々に自分にとっての答えを得ていくんですね。迷いは払われ、それぞれが未来を思い描く。果たして、そこに自分がたどり着けないのだとわかっていても、思い描く未来が実現するのなら、それはきっと素晴らしいことなのだと。
だから、皆が胸を張り、ほほえみながら自分の成すべきことを見出して、成し遂げていくのだ。
聖女もまた、ついに自分の腕からこぼれ落ちていたあの「肉屋」を思い出し、彼の献身に思いを馳せ、愛おしさを胸に宿して、彼の愛に応えるように胸を張ってかつての自分の思いを取り戻し、貫き通していった。
神に身も心も捧げたはずの聖人たちも、兵器と成り果てていたはずの彼らもまた、一人一人が神と別れ自ら立ち、それぞれが思い描いた未来のために戦ってくれた。教会の人たちもそうだ。誰かに言われたからでも命じられたからでもない。その信仰は己の心のうちにあり。神の意志ではなく、彼ら自身の意志でその信仰を貫いた。
エリザベートを隊長と仰いだ治安維持の隊員たち。彼らこそが、いわばエリザベートを拷問姫というくびきから救い出した張本人たちだと言えよう。櫂人とヒナのいない世界で、エリザベートを人の子へと変えていき、解き放ったのは間違いなく彼らだ。
亜人たち。間違いだと知りながら敢えて間違いを貫いた者たち。綾里さんがちらっと某所で長い後書きを書いていてそこで触れているのだけれど、行き着く果に先のない亜人の彼らの絶望のなかで、あの父子は対局の立場に立ちながらそれぞれ同じ方向を向いて、先のない未来に立ち向かったんですね。そこには、確かに愛があった。同族への、家族への深い深い愛情が。

そして、愛があったのはアリスとルイスの疑似親子にもまた確かに。
愛があったからこそ、アリスはルイスの最期の願いに答えざるを得なかった。もう、それしかなかったから。ああ、なるほど。確かに、アリスはエリザベートと対極だ。世界を呪った者と世界を愛した者に遺されたもの同士、その遺志に寄り添う以外にその存在に意味はない。でも、ジャンヌとイザベラの愛しあう二人の姿にアリスは心打ち砕かれ、一方でエリザベートの世界への愛情は櫂人からの預かりものだけではなく、彼女自身が多く関わった人たちから貰ったもの。彼女自身が抱いた想い。彼女自身の意志でもあり、願いともなっていた。その違いだろう。それだけの、違いなのだろう。

アリスにはもうなにもない。でも、確かに彼女は愛されていて、父を愛した。その事実と過去だけを胸に、もう何もない彼女はそれからどうやって生きていくのか。残酷な結末でもあり、小さな希望の結末なのかもしれない。

皇帝は、ほんとね、こいつ悪魔だったはずなのに。契約者があのヴラドと櫂人であったのが災いしてしまったのか。もういつの間にか、悪魔であるという存在すら突破して違うものになっていた気がする。彼は彼で証明したのかもしれない。悪魔もまた、悪魔でなくなり自ら選んだ存在になれるのだと。誰よりも誇り高く、共に駆けてくれた戦友だった。

リュートはもう、なんというか、ほんと登場当初から彼はこの物語の救いそのものだった気がします。だからこそ、彼はいつでもどこでも無残に無為に死んでしまいそうだった。他の誰よりもただリュートであるというだけで死亡フラグそのものみたいな存在だった気すらする。
故に、彼が生きている限り。エリザベートを支えてくれている限り、この物語は希望を失っていないのだと信じることができた。実際、そのとおりであったことに、深い深い感謝を。

そして、ジャンヌとイザベラのカップル。多分、この物語で一番幸せだった二人。もっとも幸福だった二人。世界を愛し祝福し、だからこそ愛され祝福された二人。結婚おめでとう。最後まで、最期まで二人は二人でいることが目一杯幸せそうで、良かったね、という言葉を送ることができる。
でも、同時に泣いてしまうのは仕方ないですよね。泣いて泣いて、目が痛くなるほど泣けてしまって、でもやっぱり祝うのだ。おめでとう。ずっとずっとお幸せに、と。

そうやって、みんなやるべきを見出し、己の中の答えを得て、生きて生きて生き抜いて、やり尽くして去って逝く。
そんな彼らに問いかけたい。満足だったか? 満ち足りたか? 救われたか? 幸せだったか? 想いを果たせたか?
潰えることに無念はあるだろう、でも後悔はないに違いない。だから皆が皆、起立して胸を張って悠然と、笑顔すら浮かべて、去っていく。その胸に、目いっぱいの愛を宿し抱きしめて。
だからだろう、世界はこんなにも惨たらしく血塗れで死と破壊に侵されていたのに、切ないほどに美しい。
こんなにも、優しい。
だからこれは人間讃歌の物語。綺麗な夢のおとぎ話。

生きて生きて生き抜いて、途中で進めなくなった人たちに背中を押され、多くのものを預けられ、辛くでも苦しくても寂しくても悲しくても、背負いきれない罪を背負いながら、それでも進み続けたエリザベートの辿り着いた結末は。皆が思い描き、託したそのさき、その未来に辿り着いたエリザベートは。
拷問姫でなくなった、ただのエリザベートは。ようやく、ようやく、焦がれ焦がれた幸いをその手にとり戻す。
小さな小さな、幸せの夢を。

これは、ヒトが小さな幸せを手にする物語だ。



りゅうおうのおしごと! 12 ★★★★★   



【りゅうおうのおしごと! 12】 白鳥 士郎/しらび GA文庫

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奨励会三段リーグ。
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる
奨励会編堂々のフィナーレ!

すげえモノを読んだ。
よく身寄りのない子供たちを集めてきて暗殺者とか工作員を養成する学校とか隠れ里みたいなの、あるじゃないですか。ああいうのって、厳しい訓練にどんどん櫛の歯が欠けたように同じ境遇の子たちが消えていき、最終的に残った優秀な子供たちが卒業試験で試験官からこう告げられるのですよ。
「今、目の前にいる相手と殺し合え。生き残ったほうが合格だ」
そうして、生き残るために共に手を携えて育ってきた兄弟にも等しい大切な相手を、自らの手で殺すのです。最も大切で掛け替えのない相手を自分の手で殺すことで、彼らの育成は完成する。

この奨励会というシステムは、まさにこれなのである。これなのだ。まさに、これそのままなのだ!
ガチの殺し合いである。
一緒に育ってきた家族も同然の仲間たち、先輩後輩であり兄弟であり親友であり恩人ある人達と、総当たりで殺し尽くしていく。自らの手で葬り去っていく。引導を渡す。その将棋人生を終わらせていく。
殺し合いなのだ。殺戮なのだ。作中、ぶち殺す、という台詞が少なからず飛び交う。それは本当に比喩ではない、本気の言葉だ。本心からの叫びだ。己の手で大切な人を殺さなくてはいけない事への、悲鳴そのものなのだ。
これが現代の日本で行われているという事実に、今更ながら戦慄させられる。これほどの修羅の戦場が、現実に存在しているのだ。実在しているのだ。これは、小説であってもノンフィクションではない厳然とした真実なのである。死闘という言葉はなんらの比喩ではない、本物なのだ。
彼らは、本当に命を賭けている。人生そのものを賭けて捧げて費やして、喪っていくのだ。いって、いるのだ。
そんな光景を、情景を、この物語はあますことなく描き出している。
「命懸け」という言葉の本物を、この巻を読んだときに思い知るだろう。思い知らされるだろう。その恐ろしさを、重さを、激しさを、鮮烈さを、知るだろう。
人は、ここまで一つの物事に本気になれるのだ。それは感動であり、恐怖である。
人間は、ここまで化け物になれるのだ。能力ではなく、その在り方をもって怪物に成り果てられるのだ。
そうして、怪物は完成する。将棋の棋士とはそんな完成した人外の怪物の巣窟なのだ、と棋士の登竜門である奨励会三段リーグの凄まじさを前にして改めて魂に打ち込まれる。
そんな化け物共の、さらに上澄み。その頂点に彼は居る。
「人間じゃねえ」
その慨嘆は、これももう比喩に見えない。本当に、人間じゃないんじゃないのか、この主人公は。
恐るべき事に。実に恐るべき事に現実の将棋界はこれよりすらも魔界であるという。マジで人間なのか、棋士たちって?

前巻においてついについに想い結実し、通じ合った銀子と八一。その結果として描かれたのが今回の表紙絵なのでしょう。もう、見ただけで悶絶させられる素敵で素晴らしい二人の手を繋ぐ姿でした。
でも、覚醒した銀子がそのまま一気に頂点に駆け上る、なんて展開が待っているはずなかったのです。壁を突破しようやく将棋星人たちの見ている景色を理解できるようになった銀子は、でもようやくそこに至って棋士への挑戦権を得たようなものだったのです。棋力が激増して、ようやく舞台に立てたようなものだったのです。才能がないと唄われるのは、何も変わっていなかった。
ここからが、彼女にとっての本当の死闘、本物の死闘。命懸けの戦いのはじまりに過ぎなかったのです。
正直、本気で今回銀子、死ぬんじゃないかと不安にかられ続けました。銀子の残す言葉全部、遺言に見えて仕方なかった。実際、間違っていないんじゃないかと今でも疑っている。
この娘は、このあとも生きていけるんだろうか。生きて、幸せに成りえる娘なんだろうか。本質的に将棋を持ってしか繋がりあえない、だからこそ誰よりも深く深く余人が入り込めないほど混じりいるほどに寄り添い重なり合った八一との関係も、その将棋を以て焼き尽くされてしまうのではないか、と思えてならない。白雪姫と竜の魔王の寓話は、この上なくありのままを現しているように見えて仕方ない。でも、白雪姫は絶対に離れることはないだろう。竜の爪が彼女を引き裂き、その炎が身を焼こうとも彼女は離れないだろう。そうして、炎の中で燃え尽きていく光景が浮かんでやまない。それが、相応しいとすら思えてならない。
前巻で、あんなに素敵なハッピーエンドが見えた気がしたのに、銀子は超えられない壁を超えたのに。絶対に不可能だった世界へと、飛び込んでみせたのに。ああ、何もかもが遠すぎる。九頭竜八一はあまりにも、強大すぎる。
これ、本当にどうするんだろう。どこが着地点なのか、どうすればどうなればハッピーエンドなのか方向性すらわからなくなってしまった。
銀子が、八一に勝つしかないのか?

今回の奨励会編は、本当に誰が勝ち抜けるのかわからなかっただけに、最後の最後まで拳を握ったまま力が抜けない展開でした。感情移入してしまう、という意味では銀子だけじゃなく、ようやくその内面を垣間見せてくれた創多や、年齢制限によってこれが本当に最後の挑戦となる鏡洲さん、ヒールに徹しながらなぜ一度離れた奨励会を、アマの立場から這い上がってもう一度挑もうとしたのかが明らかになった辛香さん。誰も彼もが苦しみもがき、血反吐を吐くように戦う姿に心奪われ、感情移入しまくりました。
坂梨さんのくだりで決壊。泣いたよ。
これは本物の殺し合いでした。同じ棋士を目指して切磋琢磨した奨励会員同士、ライバルであり仲間であり、家族であった人たちとの殺し合いは、だからこそ殺し愛でもありました。これほど愛情を、親愛を、尊敬を込めて殺し合う戦いがあるのだろうか。相手の息の根を止める一指しに、血の涙を流しそうなほど苦しみもがく。生きて苦しみ死んで苦しみ、殺して苦しみ殺されて苦しむ。そうして苦しみあいながら、この最終局面に残った四人の間にあったのは、確かに大切な人への温かい想いであったのです。
だからこそ、辛すぎる。喜びと悲しみを、これほど一緒に味わう局面がこの現代にどれほどあるんだろう。
凄まじすぎる。

天ちゃん、君はこんなこの世の地獄みたいな場所を這い上がった、八一と指すためだけに這い上がった白雪姫と戦わなきゃいけないんだぜ。個人的には、あいよりもずっとこの子を応援している。この娘の心映えは誇り高く、果敢でカッコよく、女の子として健気で勇ましいその在り方が本当に好きだ。この娘はきっと、この作品に出ている女性の中で誰よりもイイ女になるだろう。間違いない。
あの奇襲は天晴極まる痛快なクリティカルだった。
それでもなお、あの血塗れで傷だらけのボロくずみたいな白雪姫の姿はあまりにも鮮烈で。
八一は魔王に例えられていたけれど、あらゆる本作のヒロインにとって銀子こそ魔王のように聳え立つ存在なのではないだろうか。まったく、勝てるヴィジョンが想像できない。本当にかろうじて、天ちゃんなんだよなあ。

鏡洲さんと創多のくだりでまた泣く。受け継がれる想いと夢、そして年相応の創多の満面の笑み。天才少年の、将棋を選んで良かった、という言葉。
戦いの後、殺し合いの後、そこに悔いはなく憂いはなく、先へと向かう者と見送る者の間に結ばれ託された思いの尊さに、ああ胸が熱い。この熱さが、たまらなく愛おしい。



七つの魔剣が支配する V ★★★★★   



【七つの魔剣が支配する V 】 宇野 朴人/ミユキ ルリア 電撃文庫

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勉強と鍛錬を重ねて己を高めつつ、時には後輩たちを相手に頼れる先達としての一面も見せ始めるナナオたち。困難を増す魔法生物学の課題でグリフォンと格闘し、新たに加わった天文学の授業では、『異界』と『異端』についての過酷な現実を教わる。そんな中、迷宮に連れていかれたピートを追ってエンリコの研究所に辿り着いたオリバーとナナオ。彼らはそこで恐るべき魔道の深淵と、長きに亘る魔法使いと『異端』の対立の一築を垣間見る。一方で、次の仇討ちの相手をエンリコに定め、オリバーは同志たちと共に戦いの段取りを詰めていく。刻々と迫る決戦の時。彼のふたつ目の復讐の行方は―。

なぜこんな事になってしまったのだろう。それは誰よりもオリバー自身が抱いている思いなのだろう。なぜ、なぜ、なぜ。
彼の中で再演される母の記憶の中で、後に彼女を責殺する事になる裏切り者たちは決して鼻持ちならない相手などではなかった。もちろん、一巻で討ったダリウスのような人間もいるのだろう。でもエンリコやエスメラルダはそうじゃなかった。そこには友情があり、愛情があった。確かな絆があった。
はたして、それを容易に覆してしまうのが魔法使いの業なのだろうか。いや、そうであってもそれだけではあるまい。魔法使いとしての業は逃れられないものかもしれないが、人としての愛もまた逃れられない業である。今なお、鮮烈だったクロエの残光は彼女の復讐を企む者たちのみでなく、復讐の対象である裏切り者たちの中にも、生前の彼女を知る大人の世代の中にも色濃く焼き付いて、魂を奪い続けているのがエスメラルダやセオドールの姿からも垣間見える。
それほど強烈な光を、なぜあんな形で殺さなくてはいけなかったのか。否、そんな彼女だったからこそそうやって殺さなければならなかったのだろうか。その理由はどうやら個人個人によって異なるらしい。その理解に辿り着くにはあまりに遠い距離がある。
その断絶が、オリバーを苦しめ続ける。
彼らの栄光と末路が、今オリバーと掛け替えのない友誼を繋ぐ剣花団の行く末にどうしても重なってしまうのだ。あれほどの友情を交わしている相手と殺し合うことになるのだろうか、と疑問は絶えないが現に、オリバーはすでに彼らを裏切っている。彼らと歩む道にすでに背を向けている。
今はまだ対立にも敵対にも至っていないけれど、オリバーたちの歩む道がキンバリーそのものとの対決に至る以上、いずれ本当に道は分かたれる。後戻りするには、もうオリバーは進みすぎてしまった。標的を二人殺しただけじゃない、同志たちが命を捨てて切り拓いた道である以上、そこを進まぬ選択肢はなく、同志たちはオリバーをそんな道を歩ませてしまった罪からもう逃れられない。
オリバーの従兄弟であるシャーウッド兄妹は家族愛を持ちつつももうちょっと組織寄りの考え方をしているのかと思っていたんだけれど、今回の姿を見るともう本当にオリバー個人のために身も心も捧げ尽くしているのがよくわかった。愛して慈しんで、だからこそオリバーに、オリバーという優しく復讐なんて似合わない少年に君主の役割を与えてしまった事に狂死しかねないほど血涙を流していることもよくわかった。
彼らはオリバーのためならなんでもするだろう。同志たちは目的を達するためには本当に命すら惜しまない。そんな彼らのためにも、オリバーは突き進むだろう。もうそうするしかないのだ。
そのオリバーたちの後戻りできない在り方は、どうなのだろう……七人の裏切り者たちがクロエをあんな風に殺すしかなかった在り方と、どこか重なってきてしまうのではないか、とそんな想像が脳裏をよぎる。
復讐の連鎖などよりももっと始末に負えない、救いのない連環じゃないのか、これは。
だからこそ、オリバーの魂の奥底に大切に残されていた素朴な願いに、心奪われる。それは叶わぬ願いだ。こうなってしまった以上、手遅れ過ぎてもうどうにもならない未練にすぎない。
でも、本当に。そうであったら、どんなに良かっただろう。そうであったら、本当に少しだけでも誰もがそうであったなら、こんな誰も救われないありさまになんかならなかったんじゃないのか。
未練である。でも、まだそこに至っていない剣花団にとっては、希望であってほしい。か細くも叶い得る望みであってほしい。切に、切にそう願う。でなければ、あまりにも辛い。
それに、ナナオの着目のされ方が不穏どころじゃないんですよね。ナナオをこの学院につれてきたセオドールの意図がどこにあるのか。どうやら、エスメラルダの頭痛の理由を彼が知っている以上、あの夜の真相もまたセオドールは知っているはずなんですよね。それでいて、エスメラルダの側にいる。そして、そんな彼がクロエを幻視するようにナナオの在り方に執着している。そして、誰よりもクロエに執着していただろうエスメラルダの、ナナオに見せた顔。
純粋な感情こそが狂気に密接につながっていく。その在り方が狂っている魔法使いならば、尚更に。
エンリコの最後の忠告。教師として生徒を思う真摯な言葉が心に沁みる。そう、もう出会っているはずなのだ。オリバーとしての、掛け替えのない出会いを。
それが、果たして救いへと繋がるのか。そうであってほしい。それもまた、願いだ。祈りですらあるかもしれない。

シリーズ感想

最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある ★★★★★   



【最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある】 紙城 境介/きただ りょうま ダッシュエックス文庫

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孤高のゲーマー、古霧坂里央。
学校一の完璧美少女、真理峰桜。
現実世界では何の関わりもない2人だったが──VRゲーム《マギックエイジ・オンライン》では最強コンビとして名を馳せていた。
そんなある日、二人は秘境の温泉クエストの攻略へ。しかし見つけた旅館は廃墟と化しており――「どうしたんですかぁ、先輩? もしかして怖いんですかぁ~?」「はっ……はなれちゃだめって、言ったじゃないですかぁ……!」「人前で裸になるのって……思ったより、ずっと恥ずかしいですね」お化け屋敷気分の廃墟探索。混浴イベントに超大型ボスとの激戦。最強カップルの日常はすべてがデート! ……なのにこの二人、付き合っているつもりはないらしい。

ぎゃあああああ! もうめっちゃ面白れぇぇ! もう好きぃぃ!!

今一躍ラブコメ界の旗手の一角に名乗りを上げた【継母の連れ子が元カノだった】の紙城境介さんの新シリーズ。小説家になろうで発表してきた作品の中では代表作と言ってもいいのがこれ、【最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ】である。自分もこれ、めちゃくちゃ好きでねえ。いやだってもう面白いもん。
これはゲームであって、遊びである。そう語られたのは、本作の前身でもある【遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG】でありましたが、本作でもこの目一杯全力で遊ぼうという精神が進化しつつ体現されています。
本作の主人公であるケージとチェリーの最強カップル。ひたすらイチャコラしている二人ですけれど、その根底にあるのは心から楽しく遊びたい、という思い。それを一緒に成し遂げられる相棒であり相方であるのが、お互いであるという認識、或いは誓約。それこそが、二人をこの上なく結びつけているのです。
そして、それこそが。余りにもお互いを特別だと思っているが故に、カップルだとか彼氏彼女という目に見える、形のある枠組みに自分たちを当てはめたくない、という暗黙の了解につなげている節もあるのですけれど。
ケージもチェリーも、人付き合いにおいて脛に傷持つ身。彼と彼女はあまりにも周りから突出していたが故に孤独に追い込まれ、傷ついてきた子供たちでした。そんな二人にとって、この先輩は、この後輩は自分の全部を全力を全開を微塵の取り零しもなく受け止めてくれる唯一の相手。自分についてこれる、なんてレベルじゃない。常に自分の傍らに寄り添ってくれる、それどころかふと気を抜けば置いていかれてしまうような、全身全霊を尽くしてなお余りある無二の人。
古霧坂里央にとって真理峰桜は、真理峰桜にとって古霧坂里央は、唯一無二の連理比翼な特別な人なのだ。
だから、彼らが付き合っていないのは現状維持で満足しているとか関係をはっきりさせる勇気がない、という停滞した想いゆえではないのだろう。それよりももっと特殊で重たいものなのだ。
……そう、重たいんですよ、この子らの人間関係に対するスタンスって。愛が重たい者同士なんだ。
自分が相手のことを好きという自覚もある。相手が自分を好きという確信もある。でも、お互い約束しあったようにその関係を既存の枠組みに当てはめる事をシャットダウンしている。カップルじゃない、と周りからの指摘を否定しながら二人の間にあるものは絶対に否定しようとしないのだから。
なので、この二人の間に割って入ろうとするには、とても軽々な感情では無理なんですよね。その点、たびたびこの1巻でも名前だけ出ていたUO姫はチェリーに負けず劣らず、というか結構似たもの同士なんじゃね? という中身は面倒で重たい女性なのでかなりの勢いで切り込んでくる事になるのですが。
ともあれ、関係性だけははっきりさせていないけれども、お互いに好き同士だからケージとチェリーのやり取りは傍から見てて呼吸するようにイチャイチャしているのである。ちなみに、本人たちは普通にしているだけのつもりなので、まったく無意識である。無意識でこれである。
場合によっては、意識し合って本気でイチャイチャしだす時があるので、その時は当人たちも本気なのでイチャコラ糖度がさらに跳ね上がるという、イチャイチャの基準がバグってる仕様w
いやもうね、【継母の連れ子が元カノだった】も読んでくれればわかるだろうけど、作者の紙城さんのラブコメ手腕、特に自然にカップルがイチャイチャする描写力に関してははっきり言って化け物級である。正直、尋常ではない。果たして読んでてここまで切れ目なくニヤニヤさせられ続けて顔面の筋肉が痙攣しそうになるレベルのラブコメ描写は、今まで読んできたものの中でもどれだけの数あったか。
ヤバいです、ほんとに。
お化け屋敷編とか、あれもうズルいですよ。最強ですよ。お化け屋敷なんかでカップルで入ると急接近できる、みたいなネタってあくまでネタであって実際にライトノベルでもマンガでもそのシチュエーションをやると大概、余計な邪魔が入ったりカップルの片方が居なくなっちゃったりと本来の趣旨通りに展開する試しがないものですけれど、今回のケージとチェリーのそれとかもう完璧にお化け屋敷ネタをコンプリートしてるんですよね。ってか、ここのケージ君が可愛すぎてたまらん! なにこのビビリまくる男の子の可愛さ。チェリーが調子乗るのもめちゃ分かりますもん。それはそれとして、チェリー主導で最後までいかないあたりが素晴らしすぎて。同時に、コメディとしても最高領域に達していてお互い生贄にしだす所なんか笑い倒しましたがな。それでいて、傍からみたらひたすらイチャイチャしてるわけですから、色んな意味でたまんねー。
チェリーってやたら攻めるくせに防御力は紙仕様なんですよね。あまりに防御力が低すぎて、ケージの事イジろうとして自分にもダメージ食らって自爆攻撃となることも度々ですからねえ。
可愛いなあ、もうほんとチェリー可愛い。これでイイ女・カッコいい女要素も目一杯詰まっているのだから、たまらんヒロインであります。自分の後輩属性って、このチェリーに大いに発掘された感すらあるのです。
ケージ視点だけじゃなく、チェリー視点も並行して描かれているあたりで、イチャイチャっぷりが一方向からではなく双方向から眺められるのもお得感満載なんですってば。

と、本作がこうしてケージとチェリーがイチャコラしているだけの物語だったらただのラブコメになってしまうのですが、これは同時にこの上なく「ゲームで遊ぶ」作品なのでした。
彼らが遊んでいる舞台であるVRゲーム《マギックエイジ・オンライン》。これがまた、本当に素晴らしく面白いのです。ただのVRゲームではない、運営が用意したシナリオをクリアしていくだけのものではない、プレイヤーたちが本当に世界の歴史を作っていく、紡いでいくゲームなのである。
そして、プレイヤー同士の一体感。自分たちが歴史を作っていっているという一体感が本当に凄い。あのやり直しのきかない、ゲーム上で起こった事は決して覆らない、NPCが死んでも生き返らないし地形や気候の変化も戻らない、という設定なんかは他のゲームを舞台にした小説でも決して珍しいものではないのですけれど……本作はなんかそこに凄い特別感があり緊迫感があり迫真性があるんですよね。この実感は、巻を重ね話が進むごとにより確かなものになっていくと思う。プレイヤーたちが抱いている感覚に追いついていくと思う。
これはゲームであって遊びではあっても、みんな本気で真剣で全力なのだ。それはケージとチェリーだけではなく、多くのプレイヤーたちが共通して宿している認識でもある。
VS.神造炭成獣フェンコール戦なんかは、導入から本当に素晴らしかったもんなあ。あの配信者プレイヤーのセツナやろねりあたちが配信している映像を共有して、万を越える視聴者たちが同じ戦いを、同じ歴史が作られる瞬間を共有する、あの熱狂、一体感。そこに、読んでいる此方まで飲み込まれる。自分もまた、一視聴者となり、共有している感覚に引きずり込まれる。
ああ、みんな無茶苦茶楽しそうだ! という傍観者的な感覚を超えた、自分も今この瞬間、めちゃくちゃ楽しい! という感覚。この盛り上がり。テンション上がりっぱなしになりましたよ、フェンコール戦は。
ってか、ウェブ版でも既に読んでいるはずなんですけどね。そういう関係なしに、テンションあがってしまった。楽しかったッ!
とはいえ、これでまだまだフェンコール戦は序の口。このあとに繰り広げられるだろうさらなる大規模レイド戦なんぞ、ちょっとやべえレベルの大会戦になるのでほんと楽しみ。チェリーのクロニクルでもちらっと描かれていた指揮官としての力量も見られますし。
それ以上に、日常でのイチャコラとはまた別の形での戦闘シーンでのケージとチェリーの息のあった以心伝心、を通り越したもう二人で一人なんじゃないか、という神業コンビネーションは見どころたっぷりすぎて、いやもうたまらん。そりゃ、ゲーム内でこの二人が最強カップルなどと呼ばれるのも当然で仕方ないですよ。あんなシーン、万単位の視聴者の前でやらかしまくってたらなあ。
章タイトルのひとつ「カップルの人間離れ」にはワラタ。

この世界はゲームだけれど、本物である。
章間に記載されているこの《マギックエイジ・オンライン》の解説でちらっと書かれているのだけれど、AI搭載のNPCの中にはこの世界がゲームである事に気づき理解する人も出てきていてそういうNPCは電子人類と呼ばれ、明らかにただのプログラムを逸脱しだすんですよね。はたして、このゲームって本当にただのゲームなの? というバックグラウンドまで見えてきて、物語のスケールも途方も無い事になってきて、ワクワク感が止まらないのです。
この楽しさをぜひ共有してほしい。メインのケージとチェリーのみならず、脇を固める無数の登場人物たちも個性的でイキイキと躍動していて、カップルの小さな閉じた世界の話ではないこのぐんぐん広がっていく世界の痛快さを。そのうえで、もう顔がにやけて仕方ない最強カップルの糖度致死量のイチャイチャを、存分に堪能されたし。そして、これからももっともっと堪能したい。がんがん、続き出てほしいヨ。

ああ、楽しかったッ!!

紙城 境介作品感想

継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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まだ覚えてるよ、 好きだったこと。元恋人たちが大いに悶える勉強合宿編!

いさなの告白叶わずも、すんなりと親友同士に戻った水斗といさな。相変わらず近い二人の距離感に、心がざわつく結女だったが――そんな彼ら以上に、理解できない二人がいた。
南暁月と川波小暮である。幼馴染み同士なのに、顔を見る度にいがみ合い……。
暁月たちの仲直りを望む結女、そして二人の過去を察した水斗は、いさなを巻き込んで一役買うことに!?
きたる勉強合宿。かくして暁月と川波は、黒歴史《おもいで》に向き合うことになる。
あの頃のあだ名で呼び合い、恋人ごっこをさせられて。
それはただの“罰ゲーム”なのに、どうしてもお互いを意識してしまうこの二人も――元恋人同士なのである!!

凄えな、ホント凄えな。幼馴染という関係をここまで多面的に掘り下げて解体して見せた物語が果たしてどれだけあるだろうか。幼馴染の光と闇、功罪、清濁正邪にメリット・デメリット、その精髄を極めつけたようなある幼馴染カップルの顛末である。

幼馴染とは、すなわち距離感だ。兄弟姉妹と違って他人にも関わらず、家族同然或いはそれ以上の密接な距離感。同時に、他人である以上兄弟と違って本当に何の関わり合いもない他人の関係になってしまえる儚い関係性とも言える。
川波小暮と南暁月はその幼馴染としての距離感で致命的にやらかしてしまった失敗カップルだ。その原因は概ね、暁月が生来のメンヘラ女であった事とその事実に暁月本人と小暮自身が破綻するまで無自覚であった事に求められるのだろうけれど、二人の話を見ているとそれだけじゃあないんですよね。
よくある幼馴染が恋人同士になって破綻してしまう理由として、関係の変化。恋人という関係にどうしても馴染まなかった、というものが多いけれど果たしてこの二人の場合はどうだったのだろう。少なくとも、その変化に違和感を感じていなかったのは確かなんですよね。むしろ、ドハマリしたとも言えるのでは。一方で、元々幼馴染であったが故に……最初から彼氏彼女の関係なんかよりもよほど一心同体の関係であったが故に、その距離感はより悲惨にグチャグチャになってしまったと言える。
南暁月は、カノジョなんかよりもずっと面白い、という彼の言葉に芽生えてしまった彼女は、彼氏彼女よりももっともっと濃密な幼馴染としての関係にのめり込み、生来何かを演じ続けていた小暮は何も演じず頑張らず言わずに素の自分をそのまま受け入れてくれる、幼馴染や彼氏彼女という周囲がこういうものだとレッテルを張る枠組みではないただの暁月に傾倒し、すれ違った。
ここらへんの二人の食い違いと破綻については一概にこうだとは言えなくて、読めば読むほど言葉にできる範疇よりも奥底に渦巻くものがあって、いくらでも覗き込んでいけそうなのが色々とたまらんのですよね。幼馴染という複雑にして紐解けない関係の深奥を垣間見えることに、興奮が否めないのだ。
そうして破綻してしまい、恋人でも幼馴染でも居られなかった暁月と小暮はお互いのハイスペックなコミュニケーション能力を駆使して、他人同士という関係を演じるようになる。それは周りに見せつけるための演技ではなく、そうやって人工的に距離感を製作しなくてはどうやって顔を合わせて付き合えばいいのかわからなくなってしまったからだ。人生の殆ど大半、全部と言っていい時間を費やしてきた関係だ。それが圧潰してしまったのだ。小暮のPTSDも相まって、それは修復不可能なものになってしまった。もう、元の関係にはどうやっても戻れない。今までずっと続けてきた距離感では、もう何も出来なくなってしまうまでに破綻したのだ。だから他人を演じなければ、本当に距離を置かないといけなくなる。真の意味で疎遠になってしまう。
……そうなんですよね。家が隣同士とか同じ学校でクラスメイトとか親同士は今も仲の良い幼馴染同士と思ってるとか、そういう理由で実のところ理由にはなってないんだろうな。
やろうと思えば、ホントの意味で他人同士になる事は出来たはずなのだ。スッパリと、幼馴染という過去を上書きしてなくしてしまう事は出来るのだ。人間、出来てしまうのだ。それは暁月と小暮も変わらない。実際、そう成りかけてた。多分、二人の繕っていた外面は、破綻した距離感を誤魔化して適切さを維持するためのコミュニケーションという技術によって維持されていたバランスは、時間の経過によって本物に成りかけていた。
そして自然消滅ではなく選択としても、それは出来ただろう。合宿の途中で、それは示された。
本当の他人同士になることは、出来たのだ。

それがそうならなかったのは。出来なかったのは。
出来ないのは、嫌だからだよ!!
なんでわざわざ嫌ってるはずの幼馴染の家にマメに掃除に行くのさ、小暮くん。別れて登校するのに、なんで家を出るタイミングはそんなに重なるのさ。たまに一緒に飯作って食ってるだろ!? すんげえ、抵抗してるじゃないか。自然消滅、過去が解消されちゃうだろう時間経過による摩耗にさぁ!

幼馴染じゃ居られない、だからといって恋人にはもう慣れない、だからといってホントの他人になるのは嫌だ。絶対に嫌だ。
だからこそ、そんな地獄のような有様で口を揃えてこういうのだ。
「幼馴染みはやめておけ」


でもだからこそ、観察者たる読者の立場としてはこう叫ぶ他ないのだ。

「幼馴染って、最高じゃん!!」



いやもう、幼馴染の恋愛話としてとんでもねー位階まで掘り下げてみせた、そして繊細かつ縦横無尽に描ききってみせたラブコメでした。読めば読むほど凄えわ、これ。サブキャラの話とか、完全に忘れる。
しかしこれ、小暮くんてばまさかあそこまで酷いPTSDを患ってるとはついぞ想像もしてなかったんだけど、取り敢えず一度伊里戸兄妹のお節介によってグチャグチャになった後になんとか修復された後の関係って、生理的には受け付けないけど感情的には実のところ……って奴なんですよね、これ。暁月に関しては、険悪な態度とは裏腹に内心は最初っから昔と変わってなかった節もあるし。ってか、あの態度は適切な距離を保つためだけではなくて、小暮の症状を鑑みてのものという可能性もあるのか。
あれ、PTSDが治れば障害はなくなるとも言えるし、たとえ治らなくても……治らないなら小暮には絶対に他の虫は寄りつけないという事でもあるので、もうこの二人あの幼い頃の約束破る気ないですよ、きっと。かぁーー、もうたまんねえなあ、幼馴染って。
知っていますか? お互いベタベタ好意を寄せ合わなくても、熟練したカップルは無自覚自然にイチャイチャ出来てしまうのだ。なのでこの幼馴染ども、小暮に蕁麻疹がわかないレベルでも普通に濃密なイチャイチャをしはじめそうである。


……そんな暁月と小暮の幼馴染話の最中、基本的にずっと背景側でナイスアシストを続けていた支援組の伊里戸兄妹ですけれど。
こいつら、背景の方でずっとイチャイチャしてやがったぞ!? 
なにこの、呼吸するように自然にイチャイチャしてる水斗と結女のお二人さん。しかも、まったく無自覚に! 今回の話では、伊里戸兄妹が混迷する幼馴染カップルの間で奔走する形にはなっているんですけれど、特別なイベントなくても普通の実生活の中でこいつら当たり前のようにイチャイチャしてるんですよね。本人たち普通に生活しているつもりなのかもしれないけど、傍から見るととんでもねーレベルでイチャついてるから! 本人たちにそのつもりがないのだけれど、二人が色々と画策して暁月たちにちょっかいかけるために相談したり動き回ってる時も、ナチュラルにイチャついてるから。普通、イチャイチャするのって二人だけの世界に入っちゃっての事のはずなんだけれど、この兄妹の場合普通にしてるだけでイチャイチャしてるのと変わらない塩梅になってしまっているので、元幼馴染カップルの話が進行している背景でやたらと伊里戸兄妹のイチャイチャが目に入ってくる始末。
君ら、メインの話じゃなくても関係なしに見せつけてくるなあ、ほんとさ!

そして、伊里戸兄妹を上回る勢いで背景で暴れまわるフリーダム東頭いさな。こいつ、やりたい放題ってレベルじゃねえぞ!www
確か前巻で振られてラブコメ的には終了したはずのヒロイン。そのままフェイドアウトならずとも、存在感のオーラは減少して主軸から外れるタイプの立ち位置なキャラだったはずなのに、この作品の場合むしろ振られて繋がれた首輪から解き放たれた凶獣の如く、自由に大暴れですよ。物語の大筋が一本の横線だとしたら、この女蛇行しながら度々大筋の横線に横から突撃してきてぶちかましてはそのまま去っていき、行ったと思ったら帰ってきて横線ぶち抜いていく、という迷走する台風か上陸して暴れまわる怪獣か、の如きやりたい放題である。
凄いな、ラブコメでこんな野放しに放たれたキャラ、早々見たこと無いぞw
ちょっといさなさんが色んな意味で面白すぎて、色んな意味で目が離せない。どうするんだ、この娘!?

ともあれ、今回はメインの二人の話ではなかったとはいえ、ずっと気になっていた幼馴染の元カップルの話を期待以上に掘り下げ料理しきってくれたので、満足どころじゃない大満足の堪能具合でありました。この巻のパートからウェブ上での連載は読まずに、初見で味わうことが出来ましたし。
もうほんと好き。
シメのあとがきの最後の一文は、サブタイトルの意味合いをきっちり仕上げていてくれて、実に最高でした。


1巻感想


2巻感想

Unnamed Memory III 永遠を誓いし果て ★★★★★  



【Unnamed Memory III 永遠を誓いし果て】 古宮 九時/chibi  電撃の新文芸

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魔女の一人と、ある王族の運命に纏わる長い御伽噺。
オスカーの呪いも解かれ、契約終了まであと三ヶ月。自分の心に迷うティナーシャの前に、新たな魔女の刺客が現れる。「呼ばれぬ魔女」レオノーラの狙いは、契約者であるオスカーの方で——。国を巻き込んでの魔女と魔女の苛烈な衝突、一つの時代が終わる激動の第三巻。

どうして多数決取ろうと思ったし!
いやうん、どうしてそこまで無自覚というか無頓着なのか。みんなすでにティナーシャがオスカーのこと好きだと分かっている中で当のティナーシャだけが全然自覚なかったんですよね。あれだけイチャイチャしながら、スキンシップ取りながらここまでさっぱり自覚なかったとは誰も思わんよなあ。
ハッキリと自覚はなくても、薄っすらともしかして、くらいは考えてると思うよなあ。それが、本気でその認識がなかったものだから、自分がオスカーの事好きと、側近から指摘されてパニクるティナーシャに、そりゃみんな呆れますわ。まるでわかっていない彼女に、一つ一つ実例をあげながら論破して論理的にもティナーシャがオスカーの事を好きである、と指摘してみせたレナートくん、グッドジョブ。
そこで、みんなに「私ってオスカーのこと好きだと思う人ー!」と多数決取り始めるティナーシャさんがホント好きです、だからどうしてそうなるw

でも、そんな自明なことを認められないくらい、400年以上生き続けるに至った妄執は彼女をいびつに固定し続けていたんですよね。だからこそ、その妄執が晴らされ贖罪が果たされたとき彼女の中で「魔女」を構成していたものはほとんどが霧散してしまった。残されたのは剥き出しのティナーシャ、幼いあの頃の小さな王女さま。それは脆く儚く幼く弱く、結構ポンコツで優しく世話好きで、やっぱり執着しがちな一人の少女。
これまで生きてきた目的を失って、どうして自分はまだ生きてるんだろう、なんて想いを抱いてしまうほどの虚ろになった彼女を圧倒的に埋め尽くしていったのは、この一年に満たない間に育まれたオスカーとの関係だったのです。オスカーがピンチになる前、ティナーシャがついにオスカーに落ちそうになったのって、決して気の迷いでも弱っていたときにつけ込む形になったわけでもないと思うんですよね。あれは、あるべき形に収まろうとしただけ。そのあるべき形はもうこの時点では出来上がっていたのでしょう。そして、ティナーシャの根源の一つであろう「執着」に消えない圧倒的な火勢を与えてしまったのが、オスカーが喪われてしまうという絶対的な危機感。自分の命を賭けても、命を引き換えにしても失ってはならないものを、すでに自分は新しく見つけていた。

普通は、そこでちゃんと気づくのに、この魔女さんはなぜか「多数決」とってるんだよなあw
そして、ルクレツィアにまでも何を今更言ってるのか、と呆れられ、どこをどう振り返っても認めざるを得なくなって、ティナーシャさんの一言。
「……もう殺すしかない」
「何でそうなるのよ! 阿呆か、あんたは!」

この魔女、この巻でも冒頭で最終手段です、と自分で戒めてた物騒な手段を事がはじまって挨拶を交わした段階で秒で「もう最終手段を使うしかないですかね」とか言い出すとか、昔の思い出話でも呪歌の話でそうとうやらかしてたことがバレてしまったり、と結構脊髄反射でやらかそうとするんだよなあ。
ほんと、この突拍子もなくなにかあるとすっ飛んでいく猫を、オスカーは良く捕まえたものです。
この魔女に、幸せ一杯の笑顔を浮かべさせるなんて、尊敬に値します。それでもなんだかんだと、自分が魔女であることを気にして、結婚してファルサスの王妃になることは避けようとするティナーシャに、自分の居場所が今どこにあるのかを受け入れさせたのは、オスカーのちからだけではなかったんですよね。彼女が自分の力を引き継いだ子供を生むことを受け入れさせたのは、オスカーの真摯な説得ももちろん要だったのでしょうけれど、それだけではなかったはずなんですよね。
パメラやラザルや、ドアンなど親しい臣下たちのみならず、城に詰める多くの兵士や女官たち。サイエのような市井の子供たち。街を散策するオスカーとティナーシャを見守っていた街の人たち。
彼らが魔女を受け入れ祝福してくれたからこそ、ファルサスという国はティナーシャの新しい故郷となれたのでしょう。でも、彼らがティナーシャを祝福してくれたのは、この一年という時間の間にティナーシャが魔女ではない人としての素顔をずっと見せ続けていたからなんですよね。
ティナーシャに親の形見を取り戻してもらった女官の、心からこぼれ出た一言。「わたし、あの方がお妃さまでいいかなあ」という言葉が多くを象徴しているように思うのです。魔女への嫌悪、畏怖をいつしか薄らがせ、ティナーシャという人をいつしか慈しみ愛おしみ共にあってもらいたい、と皆が想い願うようになったのは、彼女自身が知らず識らずに勝ち取っていた成果なんじゃないでしょうか。
それは、もうひとりの魔女「呼ばれずの魔女」たるレオノーラとは対称的ですらありました。
誰よりも想像し得る魔女らしく、だからこそ現世への執着を喪いつつあったレオノーラ。ある意味もう、ティナーシャには敵し得ない相手となっていたのかもしれません。新たに登場した重要なプレイヤーの一人である上級魔族のトラヴィスもそういう意味ではティナーシャと同じサイドなんですよね。彼もまた、オーレリアという掛け替えのない存在を一人の男として手に入れてしまってたわけで。レオノーラは、とうとう生き続けていく上で自分にとっての美しいものを見つけられなかったのか。きっとそれは、とても近くにあったかもしれないのに。
ティナーシャには、それを指摘してくれる人が周りにたくさん居てくれた。たくさん居てくれる生き方を、この一年間ファルサスでしていたんですよね。

「ほ、本当に気が変わってしまった……」

結婚式を前に、花嫁衣装をまとった自分の姿を鏡の中に見て、愕然とするティナーシャさん。そりゃあ、あれだけ結婚しようぜと求婚されるたびに、しないよ! 結婚しないよ! するか! と返していたのが、果てにこれですもんね。ほんと、どうしてこうなった、である。その一部始終はこの全三巻に余すことなく描かれているのですが。

「ならちょうどいいから結婚するか」
「してるよ!?」
結婚してからも、こんなやり取りしてるお二人さんの幸せそうなことと言ったら……もう胸いっぱいになりそうでした。

そして魔女の時代が終る。そうして、青き月の魔女は王様と結ばれ、みなに祝福され、幸せになりました。めでたしめでたし。

で、終わったのなら、これは【Unnamed Memory】というタイトルにはならなかったんですよねえ。
そう、物語はまだ続くのです。ずっとずっと、続くのです。そのはじまりはきっともっと昔からはじまっていて、それが決定的になってしまうのが、このラストエピソード。
男は根源の部分で、王ではなく国のためではなく民ですらなく、一人の愛しい女を選ぶ。彼女を守ることを選ぶ。
こうして、運命は書き換えられる。
長いとても長いお伽噺の、開幕である。

1巻 2巻感想

りゅうおうのおしごと! 11 ★★★★★  



【りゅうおうのおしごと! 11】 白鳥士郎/ しらび  GA文庫

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「私を殺して…」
奨励会三段リーグで三連敗を喫し心が折れた銀子は、八一に懇願する。
「俺が連れて行ってあげますよ。絶対に死ねる場所へ」
こうして二人は将棋から逃げた。それは同時に、なぜ将棋を指すのか問い直す旅でもあり―なぜ、八一は銀子を『姉弟子』と呼ぶようになったのか?なぜ、銀子は女流タイトルを求めたのか?八一と銀子の出会いと修業時代の日々、そして“浪速の白雪姫”に隠された最大の秘密が遂に明かされる告白の第11巻!将棋の神が定めし残酷な運命は、誰に微笑むのか?

八一と銀子が二人で映っている表紙絵は、そうかこれがはじめてなのか。満を持して描かれた二人は、幼い二人。原点であるこの光景は多くを物語っている。
思えば、八一と銀子の二人には手を繋いでいる場面が不思議なほど多かった。ただひととき繋ぐだけのものではなく、ずっと離さずそれこそ新幹線で移動している間中ずっと、というものまで繋いだままというケースが見受けられた。それを自分は二人の関係の甘酸っぱいものだと捉えていたのだけれど、二人の手を繋ぐ、繋いで離さないという行為にはそれだけで収まらない、本当に深い深い理由があり意味があり、想いがあり、寄す処であった事がこの物語によって語られる。
銀子と八一の出会いの物語であり、二人が将棋の沼へと真に足を踏み入れ抜け出せなくなる物語であり、一緒に二人で堕ちることこそが絆であったと知る物語だ。
そうして、いつしか放してしまった手を、お互いにもう一度繋ぐために足掻いて足掻いて血反吐を吐きながらのたうち回り続けたのが、この【りゅうおうのおしごと!】という物語だったのだろう。究極的に、二人が求めていたのはただ、放してしまった手をもう一度つなぎたい、とそんな願いだったのだ。そのために、将棋に強くならなくてはならない。誰にも負けないくらいに強くならなくてはならない。先へ先へと行ってしまう八一/銀子を追いかけて、いつか隣に立てるくらいに追いつくまでに。滑稽だろう、お互いに相手こそが先に進んでしまっていると、自分が必死に死にものぐるいになって勝ち続けないと辿り着けない所に行ってしまった、と思い込んで走り続けていたのだから。

銀子が走り続けていた道は、凄まじい過酷さが渦巻いていたことを八一は知らない。八一が知り得ない所で、この子は本当に死にものぐるいで生死の狭間を歩いていたのだ。桂香さんが、銀子に特に目をかけ慈しんでいるのも、理由なきものではなく二人の間にもそうなるまでの過程があり、歴史があったのだろう。ほんと、桂香さんは愛情深すぎて確かに棋士には向いていないんだろうなあ。それでも、向いていなくても才能がなくても、女流棋士になれるだけ頑張れたことこそが桂香さんの凄さなんだろうけど。

そもそも、銀子が清滝 鋼介の元に弟子入りした経緯からして、様々な人の銀子への愛情が介在してるんですよね。将棋界のアイドルに祭り上げられ、否応なく孤高の只中に放り込まれた彼女、孤独感に苛まれながら必死で一人で八一の後を追いかけ続けていた彼女だけれど、今将棋を指せている、ただそのことが彼女が多くの人たちに支えられ、愛され、導かれている証明だったことを、銀子は八一に連れられようやく八一とすれ違っていた想いが合わさったとき、気付かされることになるのです。
どれだけ多くの人たちが彼女のことを見守っていてくれたのか。将棋の神様である名人の一言が、銀子の軌跡をずっと追ってくれていた名人の言葉が、釈迦堂里奈の教えが、生石先生の導きが、桂香さんの慈しみが、清滝師匠の愛情が、明石先生の庇護が、鏡州先輩の叱咤が、空銀子に届いた時、この娘に火を灯す、この娘を空へと羽ばたかせる。
ずっと振り返ってくれずに置いていってしまったと思っていた八一が、ずっとずっと自分を見ていてくれたと理解したとき、彼女は星に手が届く。空の輝きに、手が届く。

空銀子、覚醒のときである。

……もうさ、二桁巻数になるまでずっとずっと、銀子ちゃん苦しみ続けてましたやん。どんだけ追い詰めるんだ、というくらい追い詰めて追い詰めて崖から蹴落として、這い上がってきたらゲシゲシ踏み詰めて、グリグリ踵と爪先で踏みにじって、そこまでするかってくらいに地獄を味わわせて、もうやめて銀子のHPはとっくに0よ! という有様だったのが、ついに前巻のラストでしらびさん渾身の銀子でトドメさしたところまで辿り着いちゃって。
誰よりも心弱かったこの娘。いつ折れるか、いつ粉々に砕けてしまうか気が気でなかったこの娘。でも、この娘こそ折れない心の持ち主だった。明石先生の言う通りだ、空銀子こそ九頭竜八一という未曾有の才能を一番そばで目の当たりにしつづけ、一番たくさん対局し一番たくさん負け続け思い知り続けながら、ずっと諦めずにそれを追いかけて居続けられた根性の持ち主だったのだから。
長かった、長かったよ。銀子、よかった、良かったよぉ。最初からずっと銀子党だった身としては、感無量を通り越してちと放心すらしております。
ラブラブパワー注入! くははは。

こう言っちゃなんだけど、八一はあまりにも一途であってあいちゃんじゃまだ勝負にもなってなかったんだなあ、と思ってしまう。その点天衣の方がヤバい、という誰かさんの台詞には納得なんですけどね。この娘の恋は、魂からの本気の恋なんですよね。なんだろう、将棋でも恋でも銀子と本当の意味で噛合そうなのって天衣の方に見えるんだよなあ。
そういう意味では、八一のお母さんの銀子にあてたあの言葉は息子を持つ母として至言ではないでしょうか。

しかし、こうしてみると八一と銀子の仲が拗れるというかややこしくなる楔となる部分に尽く絡んでる供御飯万智さんが本当にヤバいんですけど! 

シリーズ感想

筺底のエルピス 6.四百億の昼と夜 ★★★★★   



【筺底のエルピス 6.四百億の昼と夜】 オキシ タケヒコ/toi8  ガガガ文庫

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ゲート組織の過去に広がる、巨大な真相――

殺戮因果連鎖憑依体――
古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきたその存在は、感染する殺意であり、次元の裏側から送り込まれた人類絶滅のプログラム。未来を閉ざすその脅威に立ち向かうためには、衝突や非干渉を続けてきた鬼狩りの派閥――三つのゲート組織を和解させる必要があった。

バチカンの《ゲオルギウス会》との同盟が締結された今、日本の《門部》と敵対するゲート組織は不死者の軍勢《I》のみ。組織の裁定権を握る式務の一員となった百刈圭は、和解交渉の特使として、世界を牛耳る巨大な秘密結社のもとに赴くこととなる。
一方その頃、鬼狩りの訓練生となった若者たちも、各ゲート組織に君臨する異星知性体の目的を独自に考察しようとしていた。海を隔てた二つの場所で、真実に肉薄していく彼らが目の当たりにする、星界の影に覆われた、この世の真の様相とは。

不死者の首魁《プロフェッサー》と対峙し、夜空を見上げ、すべての真相にたどり着いたその先で、若き狩人たちが足を踏み出すことになる標なき道は、果たして、いかなる荒野へと続くのか――。
人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。終わりが始まる、継続の第6弾。

…………(白目
ヤベえわ、やっべえわこれ。なんちゅうもうを書いてくれなんさるんじゃ。
前回の感想で
これまでも十分壮大な話だったのですが、これからはもっと途方もなく、しかし地に足の着いた「ヒト」の話になりそうだなあ。
なんて書いたんですけどね。
それどころじゃなかったよ。途方も無いどころじゃなかったよ。想像を絶するレベルで想像以上に壮大すぎで、途方もなさすぎで、あまりにも「ヒト」の物語りすぎて、そうか筆舌に尽くし難いというのはこういうのを言うのか。
叶が二人になったあの絶望的な捨環戦でもうとてつもないスケールに圧倒されてたというのに、ここで明かされた真実はあの捨環戦ですら、砂漠の砂の一粒に過ぎなかったのだと思い知らされるこの世界の置かれた状況だった。
捨環戦というものがどれほど悲惨なものなのかは、叶のあの捨環戦で十分味わったはずなのに、あれと同じことが、或いはそれ以上に悲劇的な結末が、凄まじい数繰り返され世界が切り捨てられてきたという事実には立ち尽くすしかない。
もうこれ以上の絶望はないだろうという奈落の底を、毎度毎度なんでこんな簡単に更新していけるんだろう。
同時に、こんな絶望どうやったってもうどうしようもないじゃないか、という諦めを蹴飛ばしてみせる希望をどうやったらこんな風に繋げていけるんだろう。
絶望と希望が斑に押し寄せてくるのに、濁流の中の木の葉のように押し流されていくばかりだ。
でもこんな、3つのゲート組織の間に生じてしまっていた組織間抗争の根源的に理由がまさかあんな理由だったなんて、想像だに出来るはずがないじゃないですか。色々とな前提となっていただろう世界や組織の在り方とか状況が、次々とドミノ倒しのようにひっくり返っていき、その結果として全く違う世界の姿が現れだしていくのは、ただただ呆然と見ているしかなくて、こんな真実を抱えて今までずっと動いていたのかと思うと、阿黍師匠にはもう言葉もない。
そう、この人こそが根幹だったんですね。元々謎の多い人ではあったけれど、まさかここまで真実の根幹に食い込んでいる人だとは思わなかった。まさか、こんな風に生きてきた人だとは想像もしていなかった。
すごい人だ凄い人だとは思っていたけれど、どこか遠い人ではあったんですよね。あまりに遠くの境地にある人で、圭たちと同じただの人の地平に立っている人には思えない部分があった。でもそれは、結局この人のことを知らなかったからだったのだ。シリーズはじまった当初に、当主になってしまった妹の燈のことを、大切に思いながらも別人になってしまったように感じて心の距離が遠くなってしまっていたように、その人の内面がわからないとやっぱりどこか突き放して捉えてしまうんですよね。
しかし、ここで語られた阿黍宗佑という男の人生は……やっぱり常人離れしたとてつもないものだったんだけれど、その根幹に横たわり続けたのは常に人としての意志であり、愛した人たちとの約束であり、どうしようもないくらい人間という存在の体現者であり守護者そのものだったんですね。
ただ、彼はあまりにも突き抜けすぎて、大切な約束を守るために孤独になりすぎてしまった。
空虚の中身を叶をはじめとした周りの人たちによって埋め尽くした圭とは、そこで食い違ったのですね。覚悟の質が異なってしまった。彼の兄や姉が可愛い弟に願ったことは、その約束の本当の意味はもうちょっとだけ、違うものだったんじゃないかと思えてならないのです。彼の終着駅が、本当にここだったのか。まだちょっと信じきれないところがあるのですが、もしこれで終わりだとすると辛いよなあ。報われたとは、言えないよなあ。

そして、「i」の本拠地で行われる和睦会談。って、いきなりあのエンブリオが、3巻における絶望の権化そのものだったあの狂人がちょっかい掛けてきた時には本気で青くなったのですけど……花さん、貴治崎花女医がもうなんだこれなんだこれ!?
なにこの人、なんなのこの人!? ポカーンですよ、口開きっぱなしですよ。もしかしなくても、門部で一番ヤベえのって、花さんなんじゃないのか!?
別に力とかステータスとか能力がインフレしたわけじゃないのに、三巻で登場人物たちも読んでる読者の方も根こそぎ虐殺して心へし折ってくれたあのアクマが、エンブリオが……あばばばば。

ちょっと茫然自失になりながらも、なんとかはじまった不死者のプロフェッサー、百刈圭、そしてゲオルギス会の休眠者ギスラン猊下の三者による和解鼎談。その中で次々と明かされていくゲート組織誕生の秘密と人類史を横断する真実。
これまで疑問点として浮き上がっていた部分、そもそも疑問にも思っていなかったところに至るまで、キレイにパタパタとピースがハマり、伏線が明かされ、情報が一新されていく。そうして見えてくる世界のありようはこれまでとまったく一変していて、言葉が本当に出てこない。
でも集約するなら、これは愛の物語だ。
そう、この世界は真実、人の意志と愛によって成立していた世界だったのです。各ゲート組織の頂点に立つ異性知性体と人間の関係は、本当にまさかまさかのものでした。まさか過ぎるんだよぉ!!
もうこれ、紛れもなく人間讃歌じゃないですか。人の愛の素晴らしさと尊さを説く物語じゃないですか。
ギスラン猊下、人類愛を心の底から信じている生粋の平和主義者なんだけれど、その過去の重さも相まって愛という在りようへの狂信者めいた所があるんですよね。でも、彼の在りようはこの物語においては徹底して否定されない。彼の愛も善良さも狂うほどに極まっていても壊れてはいない。少なくともこの巻の間においては、彼はもっとも人らしい人で在り続けてくれて、愛とは素晴らしいものだと体現してくれ続けてくれた。彼の在り方こそ、この世界が人の意志と愛情によって成り立っていることの証明だった。彼がずっと人間そのもので居てくれたことで、どれだけ救われたことか。
もし、この会談がプロフェッサーと圭の二人きりのものだったら、圭はもっと深みにハマってしまっていたかもしれない。少なくとも、この現場においてギスさんの存在は圭にとってもアンカーになり続けてくれたんですよね。
この三者会談がはじまったとき、プロフェッサーとギスラン猊下という何百年もの時代をまたに掛けて戦い続けている化け物たちと果たして自分みたいな木っ端が肩を並べて対等に話し合えるのか、と圭は緊張を通り越してビビってすらいましたけれど、いざ会談がプロフェッサーが知る真実を伝える場になって佳境に入った頃には、この場における真の化け物はプロフェッサーと圭の方であって、ギスラン猊下こそがマトモな人間の側であったという、立場立ち位置の逆転には息を呑む形となりましたけれど、猊下が二人に置いてけぼりにされながら必死に圭がハズレ切らないように食い下がってくれた姿には、この猊下のファンになった人も多かったんじゃないでしょうか。
だいたい、この猊下いい年したおっさんなのに、色んな意味で可愛すぎるんですよ。なんだよ、この作品屈指の愛されキャラは! まさしくゲオルギス会の秘密兵器じゃないか。こんなの隠し持ってたのかよ、ゲオルギス会、色んな意味で侮れない、侮れなさ過ぎる。

プロフェッサーの正体も、想像を遥かに上回るものでした。確かにこの人、黒幕然として色々と暗躍しているんだろうな、と思ってはいたんですけれど所詮は3つあるゲート組織の一つを掌握する人物として出来る範囲の暗躍だと思ってたんですよね。
人類史そのものの黒幕じゃねえか!!
いやそれ以上だ。彼は反逆者であり、紛れもない人類の守護者であり志士であったのだ。そして、彼もまた人を愛して人のために戦い続けていた人だったのだ。その正体にはほんと度肝を抜かれたけれど。彼の素性というか、歴史上における本名ってこれまで伏線というか、推察できるヒントとか出てましたかね!?
でも、これほどの人が、プロフェッサーが本当の意味で味方であり、猊下がやっぱり味方になってくれるというのは、もう万軍の味方を得たような頼もしさなんだけど。なんだけど。
本当の意味で和解以上の同志、運命共同体めいた共感と結束を得た途端に、さらなる絶望のどん底が、地獄の釜の蓋が開くはめに。
だから、絶望と希望の波状攻撃が毎回毎回凄まじすぎるんですよぉ。しかも、波が来るたんびにそのスケールがわけわからん規模で大きくなってるし。これいったいどうするんだよ、という有様になってるし。
それでも、それでも叶とカナエがついにその日が来たと覚悟とあきらめを得た瞬間に戻ってくるとか、圭さんちょっとヒーローすぎやしませんかね!? くそう、格好いいぞお兄ちゃん。
だいたい、叶とカナエ、二人の置かれた状況が過酷すぎるんですよね。同一存在である二人が同じ場所にいる以上、常に一本角の鬼がどちらかの叶を抹殺することで正常化をはかろうとするために、いずれどちらかが鬼に殺される日が来ることを受け入れている。生きたいと願いながら、いつかその日が来ることを受け入れて、生き残った方が圭と幸せになるんだ、と叶とカナエの二人で決めている、とか。そんなの、圭さん受け入れていいんですか? 許していいんですか? 

異性知性体の目的はついに明らかになったのですけれど、「なぜ」そんなことをしているのか、については未だ明かされていないんですよね。そして、鬼の本当の正体についても。絶対に存在しないハッピーエンドに辿り着く、鍵はやはりそこなのか。
その前に、目の前の窮地をなんとかしないとどうにもならないんですけれど、正直コレどうにかなるのか!? 全面核戦争が起こる核ミサイルの発射スイッチが押されてしまったのと大して変わらない状況だぞ、これ!?


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9月21日

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