徒然雑記

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★★★★☆

ウマ娘 シンデレラグレイ 4 ★★★★☆   



【ウマ娘 シンデレラグレイ 4】   久住 太陽/杉浦理史 ヤングジャンプコミックス

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誰もが夢として掲げ憧れる、日本ダービーがいよいよ開幕! 果たしてオグリキャップの運命は……。波乱の中央編入篇もクライマックスへ!! そして日々成長し続ける彼女に近づく、中央“最強”の白い稲妻の正体とは――…?

表紙はチヨちゃん、ダービー馬サクラチヨノオーである。目から迸る気合の欠片が炎ではなく桜の花びら、というのがまたイイなあ。
前巻で嘆願叶って日本ダービーに出走叶ったように見えたオグリキャップ。え? マジで? 歴史変わったの? 正史から違うルートに入ったの? 本来のダービーウマ娘となるチヨちゃんはどうなるの?
と心配してしまいましたが、案の定というべきかミスリードでした。オグリキャップが走っていたのはダービーと同じ東京レース場の、しかしダービーから一週間後のニュージーランドトロフィー4歳ステークス。はじめてのG2を7馬身ちぎって勝ったオグリでしたが、ダービーは規定通り出走ならず。
だが、この件をきっかけにURAはルールの改定を約束。その際に、後年このルール改定によってクラシックに参加できることになるウマ娘のシルエットを差し込んでくれるのは心憎い演出でした。
オグリたちの活動は決して無駄ではなかったのだ。

チヨノオーは、ダービーが一世一代の勝利となってしまうんでしたね。レースの描写でも、自分の限界を振り絞って掴み取った栄光のように描かれているけれど、まさにチヨノオーのすべてを振り絞り、残り滓も残らないほどに絞りきってしまったレースになってしまったのかもしれません。
チヨちゃん、勝負服も素敵なんだよなあ。
そう言えば、この回でオグリだけ勝負服ではなく、体操服というのはオグリが走っていたのはG1じゃなかったという証左だったのか。

そして、焦点は古馬戦線に。
そこは、錚々たる戦歴を誇るウマ娘たちが集った魔物の巣窟。
しかし今、その魔境を席巻する一人のウマ娘が居る。覚醒を迎え、怒涛の連勝街道をひた走りするそのウマ娘の名はタマモクロス。
強烈な個性を誇る古馬たちをなぎ倒しての圧勝劇は、今のタマモクロスがまさに現役最強であることを証明するかのようなレースなんですよね。
宝塚記念でアキツテイオーを差し切るタマちゃんの、その姿すらも映さぬ迅雷の末脚のシーンは、擬音の震え方といいイカヅチの軌跡といい、ぶっちぎりの速さを表現しまくっていて、震えた。
それはオグリキャップがはじめて遭遇する「本物」。
怪物と呼ばれ始めた彼女がはじめてぶち当たる壁であり、巡り合った最強。
この漫画のタマモクロス、カッコ良すぎる。

ついに自分の実力を試されるような相手との対決の予感に震えるオグリに、元気をくれるのが。ダービーを走れなくて目標を見失いかけていたオグリに征くべき頂点を指し示すのがカサマツのかつての戦友、というのはまたイイ演出なんですよね。マーチ、なんか故郷に残った親友みたいなポディションになっちゃって。離れても舞台は異なってしまっても、オグリにとってマーチは今でも最初のライバルのまま、というのがまたいいんですよねえ。

さて、クラシックを走れないオグリは他の同世代のウマ娘たちよりひと足早く、先輩たちのいるシニア路線へと殴り込むことになる。
待ち受ける先輩ウマ娘たちも、また個性的でカッコいいんですよね。
アキツテイオー(ニッポーテイオー)なんか、トウカイテイオーが現れるまで彼女こそが「帝王」と呼ばれた存在だったんですよね。クラシックこそ縁がなかったものの、G1三勝のマイルの帝王。デザインが、またメチャクチャカッコいいんだよなあ。
そして、こちらは正式にプリティーダービーへの参戦が表明されているシリウスシンボリ。うわー、こんな人なのかー。自由人にしてある種空気の読めない唯我独尊のお姉さん。
ダイナムヒロインは、初代お嬢様という感じでキングヘイローとかの先達という感じですなあ。その真名はダイナアクトレス。当時まだG兇任靴燭韻譴疋好廛螢鵐拭璽Sを勝っていて、G1も2着3着が幾つもある牡馬と正面から渡り合った名牝です。初仔のステージチャンプは、BNWと同期で菊花賞ではビワハヤヒデの2着。その後もG1こそ勝てなかったもののG1戦線、特にステイヤーとして活躍した馬でした。
ロングリヴフリーは「ランニングフリー」。ロードロイヤルは「レジェンドテイオー」。
マッシヴバイキングは「ボールドノースマン」が元馬の模様。
ランニングフリーは産駒に弥生賞馬のランニングゲイルがいるんですよね。この馬が弥生賞を勝った時は夢を見たんだよなあ。サンデーサイレンス旋風が吹き荒れる中での、産駒が数頭という零細血統から現れた内国産馬の星として。

しかし、そんなG1級の古馬ウマ娘たちを毎日王冠で蹴散らし、ついにオグリはG1の舞台に立つ。
天皇賞・秋 東京レース場芝2000メートル。
そこで、はじめて二人の芦毛は激突する。
意外なことに、オグリキャップはここで勝負服を初めて着るんですよね。カサマツではボロいジャージ。中央に転籍したあともずっと体操服姿だったもので馴染んじゃっていたけれど、だからこそあのセーラー服をモチーフにした勝負服は映えるなあ。
それ以上に、足元……靴がごっついくらいのブーツを履いているのがちょっと感慨深かった。最初、ボロボロで底が敗れたレース用ですらスニーカーを履いていたのにねえ。

現役最強年内無敗G1連勝中のタマモクロスとの初対決。滾って燃えてきたところで次回へ続くッ。
いや、このイイ場面で次回ですかーー! これはもどかしいっ!


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 13 ★★★★☆   



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 13】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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ネフテロス&ゴメリ救出作戦!!

キメリエスがゴメリを救うべく離脱した中、魔王シアカーンが過去の英雄たちの大軍勢を率い、ついにザガン達へと攻め込んできた。
一方で、ビフロンスの策謀により<アザゼル>化してしまったネフテロスも牙をむく。
しかし、迫るあらゆる問題は、ネフィの誕生日を盛大に祝いたいザガンにとっては振り払うべき些事に過ぎない――!!
難敵すらも嫁のためなら圧倒する、最強不器用魔王による大人気ファンタジーラブコメ、反撃の13巻!!

まさに美女と野獣なゴメリとキメリエスが表紙の13巻。シアカーンとの決戦も含めて盛り沢山な内容に加えて、物語の核心とも言うべき情報がポコポコと明らかになっていくものだから、一旦作中で情報整理してほしいな、ホント!
いや、聖剣が天使が変化したもの、とか天使って実はハイエルフ? とかかなり重要な情報がポンポン飛び交ってましたもんね。それどころじゃないとんでもない話も何個か持ち上がっていましたから、ほんとそれどころじゃなくなったのだけれど。
アルシエラとザガンの関係については先だってから匂わされていただけに、ああやっぱりそうだったのか、という納得だったのだけれど、それに意識を取られていてじゃあ「マルク」というザガンの幼い頃の兄貴分だった青年は何者だったの? という話についてはスポンと頭の中から抜け落ちてたんですよね。彼についても伏線はあったんでしたっけ? 自分は全然頭にもなかったですわ。ガチで驚いた。
というわけで、死に体ながら目的のためにあらゆる手段を尽くして、ついにザガンの城がある街に過去から復活させた英雄たちの軍勢を攻め込ませてきたシアカーン。彼の目的というか真意もついに明らかになったのだけれど……この人もまた潰えた愛にしがみついて離すことが出来なかった人だったのか。ザガンと顔を合わせた際に凄くお互いに共感を覚えていたけれど、より相似だったのはやはりキメリエスと、なんですよね。シアカーンは、ある意味ゴメリを喪ったキメリエスと言っても過言ではないくらい、その歩んだ道のりは同じだった。違うのは、シアカーンの保護者だった魔女はわりと真面目な人で、愛で力ーーッ!とか場所も空気も弁えずに興奮している変態ではなかった事くらいか。
いやもうシアカーンの過去を知って、囚われの身にも関わらず興奮しだしたときにはどうしようかと。シアカーンさんが本気で困ってたじゃないか。ガチでオロオロと狼狽えてたじゃないか。
でも、そうやって全くいつもと変わらない顔でいることで、ブチ切れてたキメリエスを一瞬でいつもの彼に戻してしまったんですよね、ゴメリおばあちゃん。囚われの身でありながら、なおもキメリエスの心を護りきったその愛情。その深さも強さも、いつもおばあちゃんが愛でている女性陣の愛で力に何一つ劣っていませんよ。
しかし、キメリエスは誰もが強いと知っていながら、そこまで凄味を感じることはなかったんですよね。彼の温厚篤実で力をひけらかさない性格もあったのでしょうけれど、それを見せる相手も居なかった、というにもあるかもしれません。ザガンとの本気のどつきあいで見せたあのタフさ、百獣の王に相応しい迫力、闘争本能の凄味に魔術の切れ味、戦闘脳の鋭さ、とザガンが片腕と呼ぶのも当然も当然の強さでした。これで性格イケメンのメチャクチャいい男なんだから、完璧だよなあ。
実際、ザガン一家の中でもフォルを除けば実力随一なのか。ガチンコになればバルバロスすらも一蹴できそう。まあ、そのガチンコにさせないあたりがバルバロスなのですけれど。
なんだかんだとこれまで、そこまで本気でガチバトルするような相手、展開がなかっただけに、今回はザガン配下の魔術師たちがどれほどやべえ連中だったか。元魔王候補というのが全然伊達じゃなかった、というのが嫌というほどわかる総力戦でした。ビフロンスのパーティーの際になんか十把一絡げみたいに配下に加わった連中だったけど、どこが十把一絡げだよ、っちゅう超一流どころばかりだったんだなあ。
それはそれとして、魔術師にしても聖騎士たちにしても、底力や火事場のクソ力をひねり出す原動力になったのが、どこもかしこもどいつもこいつも、愛の力! ですよ。みんな、愛する人のために力出しすぎ!! パワー・オブ・ラヴですかっ、それともゴメリおばあちゃん風に言うと、これこそが愛で力ですか!
あっちこっちで、ラブパワーが炸裂していて、なんかもう甘酸っぱいーーっ!

一方で、親の死によってまだ幼い間に独りで生きていかなくてはならなくなった子らが、父親の見ている前で、或いは壁として立ちふさがった父親の残影を倒すことで、父親たちに自分の立派になった姿を見せて独り立ちしていく、というイベントが一つならず、ザガンのところ、フォルのところ、そしてギニアス君のところ、と幾つも見えたのも良かったなあ。ネフィも、父親じゃないけれど母に託されたという意味で、次世代に立ったとも言えますし。
この父親超えは、最後の儀式とも言えるんですよね。ザガンは元より、フォルもギニアスも父を喪った事による挫折と迷走は、それぞれ大事な人を得ることでひとまず克服出来て、自分の意志と力で立つことがもう出来ていた。その立派になった姿を父親に見せることが出来た、というのは心残りの解消としては一番だったはず。もう、彼らに憂いは残っていないでしょう。
特にギニアスくんはまだ小さいですし、ここからぐんぐん立派なイイ男になってステラ姐のお眼鏡に適うようになってほしいものです。まだまだ姉ちゃんには弟扱いでここはカップル成立してませんもんね。
シャックスはついにラーファエルから黒花を任せる、と言ってもらえたので事実上のお義父さん越え成功である。
リチャードもようやくネフテロスに見合うだけの意思と力を手に入れましたね。ある意味彼はザガンに並ぶくらい脇目も振らずネフテロスへと一途に一心不乱に愛を捧げる騎士だったからなあ。その愛の強さ深さに見合うだけの理を、聖剣に認めてもらって聖剣使いになったのはおめでとうの一言。いや、ついにネフテロスの方から男性として凄く意識して貰えるようになった事こそをおめでとうというべきか。

対して敗れた側のシアカーンも、そしてビフロンスも最期の最期に救われ満たされて逝ってしまったんですね。
シアカーンは、正直愛する人を喪ってからやったことの殆どが徒労に終わった、とも言えるのかも知れませんけれど、今際の際に会いたい人に会えた、死に別れてもなおあちらから会いに来てくれた、自分のことを魂に刻んでくれていた、その一事にぜんぶ救われたんだよなあ、なんだか羨ましいくらいだ。
そしてビフロンスは……最期までビフロンスだった。誰にも理解できない傲慢で独り善がりの正体不明の享楽家。自分のやりたいようにやって、誰も彼もを出し抜いて、面白ければそれで良し。そうやって生きた果てが、誰にもどうしようもなかったネフテロスの末路をひっくり返すことだった、というのは……。改心したとかじゃないんですよね。救うとか助けるという気持ちがあったわけじゃない。ネフテロスにナニかを託そうなんて思いがあったわけでもない。
ただ面白そうだからやっただけ。誰もが救おうとして出来なかったネフテロスを出し抜いて自分が生かしてやることで、ザガンたちに勝ち逃げ出来るから。
そこで全部台無しにしてしまう、という詰まらない結末を引かないところも、ビフロンスらしいと思うんですよ。それじゃあただの小物だ。卑屈で器のちっちゃい卑怯者に過ぎない。
正体不明で意味不明理解不能がビフロンス。最初から最期までビフロンスはそれで一貫していた。彼の生き方在り方を貫いた。だから、凄くビフロンスらしかった、と思うんですよね。ビフロンス自身も理解しきれずにいただろうビフロンスというキャラを、一切ブレること無く最期まで書き切った、そんな感じが出ていて、彼の末路はネフテロスが見送る様子も含めて、満足でした。満了でした。
お疲れさん、ビフロンス。良き悪役でありトリックスターでした。

にしても、ザガンも作中で首捻ってましたけれど、今回いったい何人魔王が交代したんだろう。ネフィは本気で予想外でしたし、シャックスにフォルはザガンに言及されていましたけれど、他には引き継いだ人いないのだろうか。キメ君は? 魔王になる気満々だったバルバロスは?w

そして、ラストにはついにあの人が再登場。いや、再登場するの!? ふわーーっ!?


現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 3 ★★★★☆   



【現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 3】  二日市とふろう/景 オーバーラップノベルス

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ここからは、大人の仕事だ

現代社会を舞台にした乙女ゲームに転生した悪役令嬢・桂華院瑠奈。
21世紀を迎えた日本では恋住劇場が開幕し、瑠奈はその中で『小さな女王陛下』として辣腕をふるっていた。
子供の身でありながら国政だけでなく世界情勢にも関与し、事業としても新宿新幹線の開通を目指す。
そんな瑠奈の特異性を嗜め、『子供のままで居なさい』と叱る大人は、政策的には敵対する恋住総理ただ一人だけ。
それでも、瑠奈は新たな味方として赤松商事の精鋭である岡崎祐一を引き入れ、起こりうる未来の回避に全力を注いでいく。
――そして迎える2001年9月11日。
九段下桂華タワーで落成記念パーティーを催したこの日、世界が変わる。
「ゆっくり休みなさい。そしてありがとう。ここからは、大人の仕事だ」
現代悪役令嬢による日本再生譚、第3幕!

まさに9.11のテロの発生とそれに起因するアフガン紛争の勃発が主軸となるだろうこの3巻が発売する直前に、当のアフガニスタンが米軍撤退に先んじて政府崩壊、タリバン全土制圧などという事態が起ころうとは、誰が想像できただろう。
この作品、ウェブ連載中もちょうど書いてる内容に付随関連する、というか根底からひっくり返すような出来事がリアルで殴りかかってくるもんで、なにしてくれるリアルパイセン、と作者の人が良く嘆いていらっしゃるのですが、これはその最たるものでしょう。ちゃぶ台ごと全部ひっくり返されたようなものだもんなあ。
まさか18年を経て、またぞろマスード将軍の名前を聞くとは思わんかったよ。マスードJrが英国士官学校を出て地元パンジシールに戻ってるとか全然知らんかった。

かのマスード将軍に関しては、作中では北部同盟の将軍という形で登場している。最初にテロ勢力による核テロの情報をもたらしたキーパーソンとしてだ。
9.11の悲劇を知る瑠奈としては、もちろんあのテロを防ぐために動き出す。
彼女がエコノミックアニマルであり金の亡者なら、その情報を元手にというかもうインサイダーですよね、激動する世界経済を手球に取ることも可能だったのでしょうけれど、そもそも瑠奈が小さな女王と呼ばれるまでに立ち上がったのは、世界の理不尽に抗うため、弱きものを食いつぶすこの世界の理と戦うため、時代そのものに逆らうためでした。
でも、あまりにも巨額な金を握り、経済を動かし、世界に手を伸ばす彼女を、金の亡者たちは自分と同じ価値観のフィルターを通してしか見ないんですよね。
彼らは瑠奈を、自分たちの同類としてしか見ない。同志とすら考えている。賤しくも賢しくも、その価値観で善意を持って手を差し伸べてくる。その醜さに、彼女を貶めようとする。
彼女の本意を知るものは少なく、彼女の悲痛な想いを理解するものは更に少ない。誰もが、彼女を自分の都合の良い偶像としてしか見ない。彼女の言葉は、彼女の願いは、殆どが伝わらないのだ。
ゆえにこそ、カサンドラの慟哭。
だが、このカサンドラは決して無力な王女ではない。無尽蔵の経済力と、天より俯瞰する目と、張り巡らされた人脈をもって、世界そのものと渡り合う小さくも偉大なる女王陛下だ。
しかし、その彼女をして運命の日9.11は防げなかった。
瑠奈ほどの影響力と情報資源があれば、容易にアメリカを始めとする対テロ機関の働きで事前にテロの予防が叶うのも難しくはないと思ったのですが、まさかそこに被さる形でもたらされた数発の核がテロ組織の手に落ちたという情報が舞い込んでくるとは。
いつ、世界のどこかの都市で核弾頭が、或いはダーティーボムが炸裂するかもしれない、という危機感に世界中が厳戒態勢に突入し、アメリカや欧州をはじめとする情報機関が血相を変えて消えた核弾頭の行方を追う。
もし核テロが本当に起こるなら、ゆうに数万を超える被害者が出ること必至。対テロ機関の持つリソースのすべてが核テロ追跡に費やされ、陽動と思しき数々のテロ情報は後回しにされることになる。
この際の核弾頭追跡劇と、世界中が張り詰めた緊迫感はヒリヒリするものがありました。これだけで映画一本作れるんじゃないだろうか。
ついつい国際情勢ってのは一国と一国の対で見てしまうのですけれど、世界で何かが起こったときには国の大小を問わず様々な国が様々な形で関与し関連しクビを突っ込んでるんですよね。
この核弾頭追跡劇は、それをもうわかりやすいくらいロジカルに描いていて、パキスタンの国内情勢がどれだけアフガン情勢に関与していたのか。インド・パキスタン間の緊張がどれだけ周辺各国に波及していたか、がいろんな側面から照らされて良くわかるんですよね。
ここで核弾頭の行方の経路にリビアとイラクが登場してきてしまったが故に、のちのイラク戦争への強烈な後押しがなされてしまうんですなあ。
そして、核テロの予防へと各国情報機関治安維持組織は全力を投入し、結果……アンジェラは核テロの阻止を確約することで瑠奈を安心させようとして、こんな台詞をこぼすんですね。
「陽動テロについては『コラテラル・ダメージ』として割り切る事もまた必要なのです」
それがアメリカの、世界の見解だった。
ズーンと重く響くような衝撃が読んでる側のこちらまで伝わってくるのだから、テロ阻止に動き続けた瑠奈が受けたショックはどのようなものだったのだろう。
そして運命の日が訪れる。

そう言えば、前巻で雇用したアンジェラ・サリバンだけれど、これ以降ほぼ瑠奈の片腕として働きだすんですよね。ウォール街で辣腕のトレーダーとして暴れまわり、また元カンパニーとして今も合衆国の様々な地層にラインを繋げているくせ者中の曲者。合衆国の表と裏、政治と経済と謀略の世界と深く関わる彼女が側近として働き出すことで、瑠奈は今までとは桁違いの規模で世界とコミットしはじめるのである。
そういう意味ではスリルジャンキーの岡崎も、瑠奈のもう片方の腕としてアンジェラとは違うラインから世界の裏側表側と繋がり影響力を及ぼしていくんですよね。忠臣である橘や一条や藤堂が瑠奈傘下の桂華院グループの主要ポストにつくことである意味手足となって働いてくれる距離から離れちゃったのも大きいのでしょうけれど。
ってか、お誕生日パーティーに普通にアメリカの国務副大臣とか来て、イン・パ問題や共産中国も絡んだ地域情勢についてチャンネル繋いでくれ、と相談持ち込んでくるとか、どういうレベルなんだよって話で。
それでトラブってるネパールに PMC送り込むお嬢様もお嬢様ですが。こうしてみると、自前で赤松商事という総合商社という名の諜報機関と、北日本崩れの軍人を取り込んだ PMCという私設軍隊まがいの戦力抱えてるんですよね、お嬢様ってw
そりゃ危険視もされるわなあ。おまけに、ロシアで神輿として担がれかねない血筋まで抱え込んでいるのですから。
一方で国内でも恋住政権が猛威を振るう中でも堂々と手を尽くしていくわけで。大々的なパーティーじゃない方の内輪の友達身内だけで開いた誕生会で、さらっと新宿新幹線建設してしまおうかと、なんて言っちゃう小学生w
四国新幹線の方も作っちゃってるし、それ以外にも国内各地で路線立て直してるんですよね、このお嬢。そのうち海外でもえらいところに鉄道走らせちゃうからなあ。平成の鉄道王じゃないのか、これ。
彼女が獅子奮迅の勢いで進めた不良債権処理のお陰で、この日本って正史よりもまだだいぶマシな状態できてるんですよね。ただ、本来の日本と違ってこの作品の日本はWW2で分断国家となってしまい、近年樺太の北日本共和国を取り込む形で統一したわけだけれど、その際の北と南の経済格差や負債が重くのしかかってるっぽいんですよね。さらに、北日本の人間が二級市民としてあからさまに低く扱われていて、それが治安悪化に拍車をかけている。
普通の国として、自衛隊も軍隊扱い、海外派兵も普通に行っていることから軍事も正史ほどアメリカに任せっぱなしで、というわけでもないでしょうから。
それら諸々の負債を鑑みると、瑠奈が救済してなんとか取り戻した「正史よりもマシになった不良債権」部分を含めて、ようやく正史とおんなじレベルになってる、なんてことないでしょうかね、これ。
財閥も不自然に残っちゃってるみたいですし。それが、恋住総理の財閥解体論へと繋がっているのでしょうし。これ、郵政改革よりも覿面にわかりやすくクリティカルヒットしますよねえ。華族絡みで不逮捕特権なんて理不尽までまかり通ってしまっている以上。

今の所、まだ恋住総理とのゴングは鳴る前。お互いに様子見段階と言ったところで鳴りを潜めていますけれど、総理の瑠奈へのスタンスは既にここで明らかになってるんですよね。

あとは大人に任せなさい。

子供がこんな事を頑張らなくてもいい。子供が、こんなことで傷つかなくていい。
小さな女王様の恩恵に、大人たちが群がる中で彼のスタンスは、瑠奈に子供のままでいる事を許してくれる優しさであり、大人の責任を果たそうという姿勢でもあると思うのだけれど。
それは、瑠奈がまだ子供なのに世界を相手に、時代を相手に立ち上がらざるを得なかった。その理不尽に戦いを挑まざるを得なかったことへの救いにはならないんですよね。
総理は、彼女の絶望を、彼女の怒りを、彼女の悲壮を、果たして理解しているんだろうか。
それでも、まだ桂華院瑠奈はあどけない子供なのだ、という事実に彼女の義父や義兄などは家族だからこそ苦悩する事にもなるのだけれど。
そうした彼女の心情を端から理解しようともしない、ただ瑠奈の金儲けのセンスだけしか見ない亡者どもが、地獄のような善意で群がりだすのもこの頃。
勝ち抜けさせてあげよう。もっともっと、儲けさせあげよう。その対価に、私達も多大な利益をわけてもらうけれど、弱き者たち力ないもの達、時代に流されるしかない者たちを生贄に、踏み台にして、自分たちだけ幸せを謳歌するために。彼らにとってはWin−Winの提案なんですよね。本心からの善意なんですよね。彼女を過酷な競争から救ってあげようという、瑠奈の意思を徹底して無視した。
桂華院瑠奈は金儲けに狂喜しているわけじゃない、世界政治に関与して権力に酔いしれているわけでもない。彼女は、戦士だ。いや、騎士と言えるのかもしれない。彼女はずっと、護るために戦っている。それを、余りにも多くの人が知らない、理解しようとすらしていない。
護られる王女ではなく、女王として彼女は自らが破滅するその日まで戦い続けるつもりなのだ。
だからこそ、桂華院瑠奈は彼女の幸せを願う善意に怒り狂った。激怒した。
ゼネラル・モーターズ・オンラインの経営破綻。史実においてはエイロン事件と呼ばれるこの多国籍企業の断末魔を機に、彼女はもう一度時代に逆らう闘争を再開することになる。

しかし、同時に桂華院瑠奈という少女の真の幸せを願う人々の苦悩は深まってもいくのだ。どうすれば、彼女は幸せになってくれるのか。
自らを滅ぼすことも厭わないように身命をなげうって行く少女の姿に、彼女の意思を、魂を尊重し守った上でどうやって彼女を護ることができるのか。そもそも、まだ子供でしか無い彼女がこんな風に立ち上がらなければならなかったのは、戦い続けるハメになったのは。
大人たちが不甲斐ないからだったのに。この時代を作ってしまったのは、今いる自分たちの責任なのに。
故に、大人たちは、大人であるからこそ悩み藻掻くことになる。

四巻発売決定、おめでとうございます。これでやきもきせずに、続きを待てる♪



転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? 2 ★★★★☆  



【転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? 2】 紙城 境介/木鈴カケル MF文庫J

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――今はあなただけが知っている。あの妹の存在を。

俺がジャック・リーバーとして転生し、同じく転生していた妹との死闘から8年。ヴィッキー率いる『真紅の猫』との事件後も、俺はラケルの指導の下で精霊術に磨きをかけていた。
そして遂に、リーバー家に一人の使者がやってくる。王立精霊術学院――才能・努力・天運、己の全てを賭けて同世代の神童たちと鎬を削る、弱肉強食の世界への招待状を携えて。
いいだろう、やってやるさ。最高の環境でさらなる力を身につけ、もう何も失うことのないように。転生しただけの凡才が、それでも最強だってことを、本物の天才どもに証明してやる!
神童が集う待望の第2巻! ――戦え。ただ一つのために、他全てを捨てることになっても。

ライトノベル史上最恐最悪と言っていい妹の恐怖から一年五ヶ月ぶりとなる第2巻。
いや、長いこと続き音沙汰ないから心配していたのですが、どうやらこのまま続いてくれるご様子で。作者の紙城さんは【継母の連れ子が元カノだった】の方が順調な上にアニメ化の企画も進んでいるようなのでてんやわんやだったと思われるので、兎にも角にも出てくれてありがたいところ。
おまけに、ちゃんと前回のあらすじを丁寧に書いてくれたことで物語への没入もすんなりと……って、あらすじでめっちゃ語ってる人ーー!!
ウェブ版既読なのでこの人誰なのかわかるし、こういう場面で口挟んでくる立ち位置にいる人だというのは知ってるんだけれど、それでもえらいところで顔だしてきたなあ。普通はいや誰だよ!? となるところであるんだけれど、そもそもラスボスである「妹」からして正体不明所在不明存在不明すぎるので、そういう得体のしれない「領域(ステージ)」が存在していると認識しておいた方がいいかも知れない。
それに、一巻で描かれた中で不自然な描写だった場面や疑問点をちゃんと項目にしてあげてくれているのは物語を理解する上で非常に親切な仕様になっている。まあ一連の最重要な疑問点は、この時点では絶対にわからないんですけどね。おいおい、物語が進んでいった上であれがそうだったのか! と、なるわけですけれど。
それでなくても、この2巻も伏線のオンパレードだったのですが。ちなみに、このあらすじで喋っている人に関しても、この2巻の作中でちゃんと?触れられていたりします。

さて、9つになったジャックとフィルは、スカウトを受けて国中から天才たちが集まる王立精霊術学院を受験することになる。そこで出会ったのは四人の同級生たち。
アゼレア・オースティン。
ルビー・バーグソン。
ガウェイン・マクドネル。
エルヴィス=クンツ・ウィンザー。
血と涙と魂で結ばれる、ジャック・リーバー生涯の友となる者たち。
この物語はジャック・リーバーと彼を陵辱する妹との悪夢のような戦いの、絶望を終わらせる戦いの物語であると同時に、ジャックとこの四人の青春の物語であり、果てしない闘争の物語でもある。
彼ら四人との出会い、そして友情の始まりこそがこの物語の本番のスタートだと断じてもいいくらいに、重要な四人なのである。
しかし彼らの関係は最初から、手に手をとってのお友達ごっこ、ではないんですよね。端から真剣勝負、あらゆる手段を講じて相手を蹴落とし、自分を有利に立ち回らせる、ほんとうの意味での全力の戦い。
これ学園モノではあるんだけれど、精霊術学院の入学から卒業までのシステムを見ていると、教え学び成長するための学舎ではなく、常に上を目指し届かなかった者から脱落し追い落とされるシステムになってるんですね。厳然とした勝敗数がものをいうシステムになっている。
これウェブ版読んでいる時は全然気づかなかったんだけれど、改めて書籍版を読んでるとまんま「将棋」の「奨励会」がモチーフになってるんじゃないかと思うようになったんですね。
毎期、総当たりの勝敗で負けが込んだら脱落退学。もし卒業できたとしても、あくまで段位を取得する資格を得ただけで、本番はプロの精霊術士になってから。という過酷極まるシステム。
【りゅうおうのおしごと!】なんかを読んでたら、奨励会という場所が天才ばかりが集まり蠱毒のようにお互いを食い合いながら、その上澄みとなるほんの数人だけが上に抜けられるという、現代の魔窟さながらの場所であり、何人もの人間の人生そのものが食い潰されていく壮絶という言葉では表現しきれない場所だ、というのがおわかりになるでしょう。
この精霊術学院もまたそれと同じく、まず天才である事は前提条件。その上で生き残ることの出来るだけの餓狼のような意欲が、闘争心が、何としてでも勝ち抜くという本気が必要になってくる場所。
その上で、この物語では本気でぶつかることこそ、本気で潰し合うことによってこそ、本当の友情が芽生えるのだという理(ことわり)が描かれている。相手の強さに敬意を抱くならなおさらに、相手の強さを認めるのならなおさらに、全力で潰せ、全力で戦え。
そうして初めて、真の友情が生まれるのだ。

相手の戦い方を研究し、対抗策を練り上げ、罠を仕掛け、妨害し、相手に不利を自分に有利をもたらす環境を整える。この手練手管の応酬が面白いのなんの。
フィルが入った諜報科、というのが大手を振って学院の看板の一つとして機能しているのがとびっきりに奮っている。まず前提として、戦闘科の生徒は諜報科・支援科の生徒と組んで実際に戦う前に情報戦に勝利しろ、というクレバーきわまる学校の方針なんですよね。
んでもって、この策略謀略環境調整こそがジャック・リーバーの真骨頂、と言ってしまいたくなるほど、ジャックのケレン味とズルさを極めた立ち回りがイカしてるんですよね。すべての仕掛けを御覧じろ、とばかりのジャックとフィルのコンビの食わせ者っぷりは最高でした。
院長先生がもうずっと楽しそうに「ウヒヒヒヒヒ」と爆笑してた気持ち、よくわかるわー。

しかし今回のこれはあくまでご挨拶。本気の戦いではあっても死命を左右する殺し合いではない。国や世界の命運をかけた負けられない戦いではない。
そうした戦いを前にした時、この子たちはただの神童ではない、掛け値なしのとびっきりだという事が証明されるだろう。
その時こそ、もう一度彼らは突きつけられることになる。
相手の強さに敬意を抱くならなおさらに、相手の強さを認めるのならなおさらに、全力で潰せ、全力で戦え。真の友であるからこそ、死力を振り絞って戦わなければならない時が来る。
だが今は、今だけはこの黄金の時間を穏やかに過ごして欲しい。青春という名のかけがえのないひとときを、宝物のような世界を、今はただ心ゆくまで楽しんで欲しい。溌剌とした、ワクワクを隠せない子供達の輝くような笑顔を前に、そう願うばかりだ。
「どうか悔やまないで。出会ったことは、きっと罪じゃない」

その存在の悪意は、未だ一瞬たりとて途切れずに纏わり続けているがゆえに。

それはまだ始まってすらいないはずなのに、とっくの昔にはじまっていて、もう取り返しがつかないほどに手遅れで。
でも、すべてはまだこれからなのだ。

頑張れ、負けるな。君たちは出会った。だからもう、独りじゃないんだから。


そう言えば、2巻は表紙フィルでもラケルでもなく、アゼレアなんですね。この順番には意味があるんだろうか。
アゼレアは改めて見ると、こう気の強さ以上に言動の端々に人の良さ、善良さ、優しさが滲み出ていて、もうツンツンしているのを見ているだけで微笑ましくてたまらなくなる。イイ子なんだよなあ。
めちゃくちゃイイ子なんだよなあ。
折角仲良くなった同級生、クラスメイトがお互い腹の探り合い騙し合い暗闘が日常になってしまうことに落ち込んで、元気なくしてしまうところとか、もういい子すぎて甘やかしたくなってしまいます。
フィルはジャックとイチャイチャしすぎー! いや、アゼレアが怒るのもしょうがないぞ、あれだけチューチューしてたら。9歳でおませすぎるだろう、この子は。でもポワポワしているのに、作中でこの子が随一のくせ者なんだよなあ。今回もそのくせ者っぷりをこれでもかと見せつけてくれましたし。
まだまだ萌芽ですけれど、こうニヨニヨしてしまうライバル関係がはじまっているのが、ルビーとガウェインで。不倶戴天の関係であるからこそ、意識しまくってるこのスラムの野良猫と正々堂々とした騎士の二人の関係も要注目なのである。
エルヴィスは、もうめっちゃ王子様然とした王子様なんだけどね。この子もイイやつなんだよなあ、それでいて頼もしいし、聡明だし、茶目っ気もあるし愛嬌もあって可愛げもあるしで完璧か、と。でも、完璧である以上に弱いところもあり不足もあり抱えているものもあり、だからこそジャックと無二の親友となっていくんですねえ。
ほんと、この新しいクラスメイトであり友人となる四人は大好きなキャラなので、彼らが揃ってようやく本番スタートという気持ちであります。
トゥーラ先生も、このロリババアも、好きなんだよなあ。あのババアっぽい笑い方とかホント好き。この人が笑ってるときってめちゃくちゃ楽しそうなんですよねえ。
好きなキャラが多いって、本当ならとてもイイ事なんですけどね……。

さて、次回霊王決戦編は、なるべく早めに出してきてほしいものです。このワクワクドキドキは、はやめに次の段階に進めたい。



継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで ★★★★☆   



【継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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生徒会は、恋ざかり!? 新たな日常と体育祭――二人の誕生日ももうすぐ。

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
文化祭の一件から、元カップルだった記憶もいい思い出になりつつある秋のこの頃……結女が生徒会書記を務める、新たな日常も始まっていた!
緊張の面持ちで踏み入れた生徒会室に集うのは――意外と恋に多感な高校生たちで!?
水斗と散々嫌みを言い合った手前、いまさら好きだと言いにくい結女は、会長・紅鈴理はじめ女子メンバーの恋バナをヒントに、水斗から告白させるための“小悪魔ムーブ”を思いつき!?
「――私たちの、誕生日。予定、空けておいてね」
そしてきょうだいとして迎えるその日に、二人の想いは向かい合う――?


生徒会は恋の花咲く春爛漫、とばかりに結女が入った生徒会の役員たちは青春の真っ只中でありました。前巻で登場した生徒会長の紅鈴理はそのカリスマ性を見せつけてくれると同時に恋に悩む一人の乙女である事も発覚していたのですが……。
もう一人の副会長の亜霜愛紗という娘も、前生徒会長の星辺先輩に小悪魔ムーヴをかまして気を引こうと一生懸命。まさに恋真っ盛りの生徒会は、水斗にどうやってもう一度恋させるかに悩む結女にとっては相談相手に事欠かない頼もしい先輩達の園、になるはずだったのですが……。
いやうん、だめだこりゃ。
今まさに恋に夢中、と言った女性陣。年上の先輩たちと来たら、もう恋愛模様については練達、経験も豊富で相手を意識させるスキルにも事欠かない恋愛強者だと思うじゃないですか。
ちょっと相談したら含蓄ある台詞が帰ってくると思うじゃないですか。今恋している女の子特有の、価値ある言葉を送ってくれると思うじゃないですか。
……鈴理会長も、愛紗副会長も、ひでえポンコツだったぁ。
今まさに恋真っ盛りって、思いっきり空振りまくってる真っ最中じゃないですか! 相手を振り向かせるために、金属バットで殴りかかるような暴走娘たちじゃないですか。
恋愛弱者にも程があるじゃないですか。いや、もうちょっと男を振り迎えるにもやり方ってもんがあるんじゃないですか? 恋愛雑魚か! ゴブリンか何かなにか、この先輩たちは。
ラブコメ漫画読んだほうがまだ参考になるんじゃないだろうか。やり方を完全に間違えてません?
なんかもう目を覆わんばかりの惨状が繰り広げられてて、むしろもっとこの人達の恋模様一部始終見てみたい気がムクムク湧いてきてしまうんですが。ラブコメとして面白すぎるサンプルだぞ、この二組。
愛紗は小悪魔ムーヴかますにしても、もうちょっとやり方があるだろう、とかもうちょっと上手くやれよ、空気読めよ、タイミング見計らえよ、とツッコミが絶えないありさまで。
いやあ、作者の紙城さんといえば、別作品ですた最強のサークルの姫「アルティメット・オタサー・プリンセス」の暴れさせっぷりからも小悪魔ムーヴに関しては達人もいいところなんですけれど、あれをポンコツ方向にぶん投げるとこんな残念キャラになるのかー、すごいなー、わはははは(爆笑
それよりも酷いのが鈴理会長なんですが。この人は……ほんとになにやってんだ? 物理か? 取り敢えずメーター貯まりきったら襲いかかるのは、女の子としてどうなの!? どうなの!?

彼女たちを見ていると、中学時代に凄く真っ当に男女のお付き合いをしていた結女の方が恋愛経験値では遥かにベテランの風格が感じられてしまうのですが。暁月の方ですら、大失敗をしたとは言え川波とそれはディープな付き合い方をしていたのですから、同じ小悪魔ムーヴでも恋愛雑魚どもとは格が違うんですよねえ。
暁月の場合、やり方がエグすぎてどんな瀬戸際狙ってるんだよ、となってしまいますが。この娘、色んな意味で業が深すぎるw
ともあれ、恋愛雑魚どもの頓珍漢なアドバイスを真面目に聞いてしまう結女でありますけれど、生徒会の先輩たちの旋風脚並の空振りっぷりに比べると、結女がそのアドバイスどおりに動くと多少から回っててもちゃんと水斗に刺さるように着弾してるのを見て、流石結女さん恋愛経験値が高い! となってしまう不思議。
いや、最初の時のバスタオル事件と比べると、結女の肝の据わり方も違いますからねえ。腰引けたまま勢いだけでツンツン突き回そうとした頃と比べたら、攻める気満々の今は度胸が違う。
それはそれとして水斗の息子さんを思いっきりガン見してしまった後の、あの喜悦っぷりは普通にキモい、キモいぞ結女さん。いさな並にキモいw いや、生々しい反応というべきなんだろうけど、あんた喜びすぎだw

そんな裸のお付き合い、に限らないんだけれど、結女と水斗の距離感が凄く安定してきたのがわかるんですよね。かつての恋人だった時の頃のお互いに気を遣い、相手のことを慮りだからこそ距離が一定置かれてしまっている状況と違って、家族になったが故の遠慮のなさ。
それでいて、結女が生徒会に入って学校の中でも水斗と違う時間と空間の中で過ごすようになった事で、それぞれ離れた所で時間が進むようになったんですよね。それぞれに自分の世界を作って、別の道を歩きはじめた、とも言えるわけで、その意味では距離は開いた、とも言えるんですよね。
でも、恋人だった頃よりもその距離感は柔軟と言えるのかもしれない。近くも遠くも自由で、でも望めばすぐ手が届く。望めば、いつもそこにいる。
距離感というなら、今水斗とべったり近くにひっついているのはいざなの方でしょう。いやそりゃ、付き合ってると思わないほうがおかしい、という距離感でくっついている二人だけれど、結女はさほどその二人の距離感に焦りとか嫉妬とか感じている様子見えないんですよね。
それは、二人の関係をちゃんと理解しているという以上に、今の自分と水斗の距離感に確信を抱いているから、なのかもしれない。
あの体育祭の借り物競争の時の、いざなに対しての「貸して」じゃなくて「返して」。は結女の揺るぎない立場を指し示しているように思えます。いざなはほんと、無双状態エンドレスなんですけど、この結女に対しては完全に立場わからせられてますよねー。完全にひっくり返ってお腹見せてる状態。そんな無条件降伏状態にも関わらず、隙あらば水斗の美味しそうなところ齧ろうとしているところが卑しいw いざな卑しいw それを愛嬌として水斗にも結女にも見事に認めさせてしまっているところがなおさら御卑しいw
いやあ、この娘ほんと好きだわ。


もう少しだけこのままで
誕生日の、あのプレゼントを渡すエピソードは良かったなあ。今の兄妹という家族の関係と、元恋人という過去の想いと、今新たに好きになった人への想い、それらがゆっくりとかき混ぜられていく心地よさ。それが穏やかながらしっとりとした熱の籠もった深夜の部屋の中で交わされる会話の中に詰まってて、なんか胸が暖かくなるやらキュンキュンするやら、ぶわーっと読んでるこっちの感情というか気持ちというか、噴き上がってる感覚がたまらんでした。こういう「ぶわーーっ」ってなる作品は、やっぱりイイですわ。充足感というか、この胸一杯になる感覚を味わわせてくれる作品は、物語は、最高です。


ただ制服を着てるだけ ★★★★☆  



【ただ制服を着てるだけ】  神田暁一郎/40原 GA文庫

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同居相手は19歳 彼女が着てる制服は、ニセモノ。
若手のエース管理職として働く社畜 堂本広巳。日々に疲れていた広巳は、偶然から関係を持った少女 明莉が働く、ある店にハマってしまう――
「今日も……抜いてあげるね――」
そんな毎日の中、休日の職場トラブルで呼び出された広巳を待っていたのは、巻き込まれていた明莉だった!?
「私行くとこないんだよね―― お願い、一緒に住ませて! ! 」
突如始まった同居生活の中、広巳と明莉は問題を乗り越え、二人で新たな道へと歩み始める。
社畜×19歳の合法JK!?
いびつな二人の心温まる同居ラブストーリー、開幕。
JKリフレって良く知らなかったんだけど、リフレクソロジーというのは簡単なマッサージの意。それにJKになりきった女の子にマッサージしてもらったりお喋りしたりという演技型のお店の事を言うそうだ。
一応、明莉が所属している店は健全の範疇にあり、いかがわしい行為はしていない。しかし、JKリフレ自体はJKビジネスと呼ばれる未成年を性風俗の働き手として搾取する社会構造のコンテンツの一つとして利用されてきた一面を持つという。そのへん、詳しく作中でも説明されている。
明莉は今は純粋に癒やしを提供する健全なタイプのお店に勤めているけれど、以前はガッツリとこのJKビジネスに関わっていたという。
ハマり込んでいたと言ってもいい。
現役の女子高生という売りを利用して、自分の身体で春を鬻いでいたのだ。
同じJKビジネスの沼にハマりこんで抜け出せなくなった同輩たちが、本当にどうしようもない悲惨な形で人生を失っていく様子を目の当たりにしていく事で、明莉はこのまま行けば自分も彼女たちのように破滅する、という自覚を持つに至り辛うじてビジネスに関わる人間たちの悪意や欲望が、しがらみが彼女を捉える前に自力で抜け出すことが出来たのだという。
でも、ドップリとそうした日本社会の陰の部分にはまり込み、そこから徒手空拳で放り出された時、明莉は何も出来なかった。何にも成れなかった。現役女子高生という肩書から脱却し、しかしまだ成人にもなっていない19歳の彼女は何にもしがみつけないまま、またJKビジネスという陰の軒下に舞い戻ってしまう。たとえ健全な業務内容だとしても、彼女は自分を切り売りするコンテンツから抜け出すことが出来なかったのだ。
今はまだいい。ギリギリ瀬戸際で踏ん張っている。でも、彼女自身予感している。遠くないいつか、自分もまたズルズルとかつての同輩たちと同じ沼に沈んでいくと。

また、明莉は今、男と同棲している。
友人の紹介から知り合い、そのまま何となく付き合う事になり男の家に転がり込んだのだという。だが、果たしてそこに恋愛が介在するかというと、微妙な所だ。
ラブコメなお話に慣れた身からすると忘れがちになってしまう事だけど、現代の男女交際はそこに恋愛感情がなくても成立することが少なくない。彼氏彼女の関係というのは、思いの外ハードルが低いのだ。ただ彼氏が欲しい彼女が欲しいという考えが先に来て、関係が成立する。そこから関係が本物になっていくかは二人次第。合わなければ別れるし、場合によっては合わなくても別れない。別に好きじゃなくても、一緒に居るという距離感にこそ縋ってズルズルと関係を続けてしまう事も多いのだという。
藤村明莉は恋をしたことがあるのだろうか。
少なくとも、この作中では彼女はそんな感情を抱いた様子は一切見せない。この物語のもう片方の主役である堂本広巳に対してもそうだ。彼の人となりへの好意や感謝はあるだろうが、そこに恋愛感情という淡いものはまるで見えない。
彼女にあるのは独りで生きてきた、という自負心か誇りか矜持か。そこには人を利用することはあっても、頼り切ったり甘え切ったり、誰かに依存する事を良しとしない強烈なまでの自立心がある。それが薄っぺらなハリボテにすぎないという自覚をどこかで持ちながら、それでも彼女には矜持があった。
だからだろう、一方的に搾取されることも逆に一方的に対価もなく養われる事も明莉は受け入れられなかった。
同棲相手の部屋を飛び出したのも、ただでさえギスギスしてきていた所に自分が都合の良い女にされそうになったからだ。愛想が尽きた、というのだろう。自分の要求ばかりを押し付けてきて、搾取してこようとするダメ男にのめり込んでしまうほど、対処に困る男の趣味をしていなかったのは幸い、というべきなのだろう。
でも、彼女の場合は逆の立場でも許容できなかったんですよね。
リフレの常連客で友人の上司、という間柄の堂本広巳と縁あって、上手いこと彼の部屋に転がり込んだ明莉だけれど、ただでさえ思っていたのと違って対価を求めず無償で部屋に住むことを(しぶしぶだけれど)許してくれただけでも彼女にとっては想定外だったのに、それ以上の返しきれない借りを明莉は広巳に負ってしまう。
あるいは、広巳が居なかったらこの一件が明莉をもう一度身体を売って金を稼ぐ二度と逃れられない沼に沈むきっかけになっていたのかもしれない。それは間違いなく、彼女にとっての人生の分岐点だったはずだ。
それほど大きな借りを、広巳は僅かなりとも返させてはくれなかった。
その事実は、明莉をどうしようもないほどに動揺させ、怒りすら抱かせ、揺らがせてしまう。
彼女がどうしても、堂本広巳から与えられるばかりで何も受け取って貰えない状況に耐えられなかったのは、きっと対等ではないと思ってしまったからじゃないだろうか。対等の同じ人として見てもらえていないと感じてしまったからじゃないだろうか。
惨めさを、感じてしまったんじゃないか。

堂本広巳が過去の心の傷から、保護者たらんとしなければ耐えられない、与え受け入れ守り続けなければ心が持たない、そんな今も血が止まらない心の傷口をそんな風にしか押さえられない彼のあり方と、明莉の自らを辛うじて奮い立たせている心の芯は合わなかったのだ。
広巳にとって、明莉を保護するというのは明確な代償行為だった。それは独り善がりと言われても仕方ないものだったのだろう。でも、彼女から対価として肉体関係を提供してもらうことは、明莉が庇護しなければならない弱者であるという認識がある以上、彼の心傷には耐えがたいことだったのだ。
明莉にとって、対価を受け取らない無償の……野放図ですらある厚意は不安でしか無く、一方的に与えられ庇護される状態というのは自分の力で生きてきた彼女にとって居たたまれなさと惨めさと共に拠り所をなくしてしまうような恐怖ですらあったのだろう。
二人共お互いに、孤独に寂しさに途方に暮れていたというのに。ようやくそれを埋めあえるだろう可能性と出会えたのに。
広巳にとって明莉は突然現れた迷惑な居候だった。同時に、自分の喪失感と虚無感を埋めてくれる代償行為の相手でもあった。ずっと空っぽだった彼の心の隙間を、代替えとはいえ確かに埋めてくれていたのだ、彼女は。
結局、広巳は自分の過去を明莉に語ることはなかった。それでも、彼の心の空隙は明莉にも伝わったのだろう。それを、自分が確かに一部でも埋められていたことも、感じ取れたのだろう。
ただ与えられるだけではなく、微かにでも自分も彼に与えられていたのだという実感は、彼女のプライドを、寄って立つ柱を立て直すに足りているかはわからないが、それでも足しにはなったのだろう。
詳しく話を聞かなかったのは双方にとっても良かったのだろう。もし詳しい広巳の心の傷を知ってしまえば、明莉はそこに付け込まずにはいられなかっただろうから。それが彼女の処世術であったから、多分彼女自身が好きになれない自分のあり方の一つだっただろうから。

彼らは改めて同じ部屋で暮らし始める。
そこに恋愛感情はない。肉体関係もない。心も繋がっていない。信頼もあるだろうか、疑問だ。
それでも、二人はしばし一緒にいることを選んだ。そこに二人は確かにささやかでも「幸せ」を見出したのだ。
二人にとって縁遠かった、その手に掴むことがないと思われた、その手に届くことがないと思われた、当たり前の幸福感が。
それが本物になるのかは、まだわからない。愛は、まだきっと目覚めていない。

ついに、というべきなんだろうか。ライトノベルというジャンルでここまで直球で、社会構造の搾取と収奪の最下層に位置するだろうアングラ界隈の実像と、その際で足掻いている人間たちの生々しいまでの息遣いを描く作品が出てくるとは。
ぶっちゃけ、一般文芸で出ててもまったくおかしくないんだけれど、ライトノベルだからこそのインパクトか。最近流行りの同居モノの範疇ではあるんだろうけれど、土台となる部分の毛色がまったく違っている。似たような構図として某髭を剃るが思い浮かぶかもしれないけれど、男のあり方も女側のスタンスも彼らが立っている土台もだいぶ違っているように見える。
人の生き辛さ、当たり前の幸せというものの意味、現代社会の虚、心を蝕む寂しさ、そういったものを苦味とともにじっくりと味わえてしまう、刺さるものが多い一作だった。
是非、続きを、彼らの行く末を、顛末を見届けたい。

転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 2 ★★★★☆   



【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 2】  雲雀湯/シソ 角川スニーカー文庫

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少しずつ熱くなる、君への「特別」な気持ち。 大人気青春ラブコメ第2弾!

隼人と再会してから猫かぶりが剥がれつつある春希。クラスの女友達も増えて賑やかになる一方で隼人との時間が減ってしまって……。「親友」のはずなのに、もっと相手の「特別」になりたくなる。青春ラブコメ第2弾!

隼人と姫子の霧島兄妹との再会は、春希の凍結していた時間を解凍してくれた。本来、春希は小器用な方ではない。隼人たちに男の子と認識されていたように、大雑把な面が多分にある娘だ。これまで被っていた猫を場に応じて使い分ける、なんて真似はあれで難易度が高いものなのだ。ふと気を緩めると、素が出てしまう。隼人や姫子がいるところでこの娘が気を緩めずに引き締め続ける、なんて事まあ出来るわけないじゃないですか。
というわけで、隼人にとって「変わっていない」春希の溌剌とした素顔が、徐々にクラスメイト達にも知れ渡るようになる。今までのどこか人を寄せ付けない凛とした姿しか知らない彼らからしてみると、それは春希の大きな変化だ。人懐っこさすら感じさせる春希の素顔は、当然好意的に受け止められて瞬く間に春希の交友関係が広がっていく。
隼人にとってだけの特別だった、ありのままの春希は、みんなの春希へと変わっていってしまう。

一方で、転校生の隼人の方も学校に馴染んできた事によって普通の友人、男友達も増えてくるのだが……それだけなら、春希と隼人の間にある特別な関係はこゆるぎもしなかっただろう。しかし、そこに割って入ってくる一人の少年がいたのだ。
それは、どこか春希と境遇が似ていて、学校内での立ち位置も良く似通っていた学校一のイケメン男子・海童一輝。彼は春希と同じように仮面を被っていた。周りから期待されそうあれと望まれる好青年という仮面を、だ。だから、同じような立場にある春希の猫かぶりにも気づいていたし、そんな彼女の仮面を容易に引き剥がしてしまった隼人に多大な感心をもって近づいてくる。
そんな一輝に対して、春希に好意を抱いているとの噂もあって警戒心バリバリだった隼人だけれど、この主人公、どうにも孤独や寂しさを宿している相手には随分と絆されやすいらしい。捨て犬みたいに懐いてくる一輝を突き放せずに、何だかんだとかまってあげて何くれとなく世話を焼くようになってしまう。
それは、かつての小さなハルキにしてくれたように。
そんな二人を目の当たりにして、嫉妬心を募らせる春希。その二人の姿は、春希とっては権利の侵害のように思えたのだろう。ただの男友達、ただの男同士の親友なら独占欲を掻き立てられなかったかもしれない。でも、この隼人と一輝の関係は、かつての自分たちの関係の鏡写しのようだった。それは、隼人と春希の二人にとっての特別な関係が……別に相手がハルキでなくても構わなかったんじゃないか、と不安を抱かせるものだったからだ。

唯一無二だった隼人と春希の特別な関係。変わらないままだった二人の関係は、周りとの関係の変化によって徐々に希釈されていく。二人の間に割って入るものはないのかもしれないが、ただ二人だけの「特別」は紛れ薄れて希釈され、濃度を失っていくようだった。
それが、隼人と春希を刺激する。薄らいでいく特別に執着が湧き、自分の元から持っていかれたような感覚に独占欲が募っていく。
何よりも、特別でありたいのだ。隼人にとって春希の存在は。春希にとって隼人の存在は。唯一無二であってほしい。自分のことを、特別な存在だと思っていてほしい。
でもそれは、いつしか幼馴染という関係のままではその濃度を維持できないのだと、理解し始めていた。いくら希釈されても薄れることのない、もっともっと特別な関係であることを欲するという事が、異性同士で何を意味するのか頭じゃなく心で、胸で感じ始めていた。
それは紛れもなく、幼馴染という関係性に恋が生まれ育まれていく、そのプロセスである。その細やかで繊細な一部始終が描かれようとしている。
素晴らしい。
これぞ、青春であり幼馴染同士のラブストーリー、その極めつけじゃないですか。
これまで相手を大切に思うからこそ踏み込まなかった、家庭の事情。それを自分からそっと曝け出し、相手に知って貰うことで今までになかった領域に踏み込んでいく。
幼い頃から時が流れ多くのことが変わってしまった中で、再会した二人は「変わっていない」部分を見つけ合い、今のお互いを受け止めあって支え合い変わらない新しい関係を築き直すことが出来た。
でもここにきて、隼人と春希は変わらないお互いをとても大切にし、好きに想いながら、だからこそ変わろうとしている。
変わったけれど変わってない関係は、変わらないまま変わった関係へと進もうとしている。

それは考え得る限り、もっとも素敵な幼馴染関係の変化のプロセスなんじゃないかな、と思うのでした。
ああ、甘酸っぺえ。







Landreaall 37 ★★★★☆   



【Landreaall 37】  おがき ちか ZERO-SUMコミックス

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騎士団の大哨戒中、地下ダンジョンで遭難したDXたち。
危険種モンスターの夜嵐蟻を利用して上層を目指すが…
兄を救出すべくダンジョンへ入ったイオンが女王蟻に襲われているところに遭遇――!?

大人気王道ファンタジー『Landreaall』、奮戦の37巻!

これ、37巻の表紙のDXって特装版の表紙のイオンと対になってるんですよね。



36巻の巻末でイオンが女王蟻に襲われるところに遭遇したDX。だけど、イオンを知る者としてはあのイオンが易易と女王蟻に捕まっているというのは違和感ありありではありました。まず六甲もついているだろうし、DXたちみたいに消耗もしていないはずのあの走っこいイオンが、てねえ。
案の定、この巻のはじまりは時間を少し巻き戻してイオンたちが水中階層を突破して蟻たちがいるフィールドに到達するシーンからはじまるわけですが……。
ほんと、おがきさんって人ではない存在が持つその種独特の、それでいて生きとし生けるものに共通する「情」の描き方が図抜けているよなあ。
特に今回の夜嵐蟻は昆虫種のモンスター。昆虫ってのはどうしても異質感がつきまとって生物の持つ感情とか心とかを感じない種なんですよね。
実際、ここまで夜嵐蟻のコロニーと遭遇したDXたちのシーンでは、蟻たちからは無機質さを多分に感じるばかりで意思の疎通とか端から考えもしなかったのに。
イオンと遭遇した女王蟻が示したものは、異質かもしれないけれど確かに心でした。生きるものなら共感せずにはいられない、生命を繋ぐという行為であり、それを見ず知らずの異種であるイオンに託送という必死さ、懸命さ。
あのシーン、イオンを捕まえていたんじゃなかったんですね。昆虫種にあんな切なる心を感じたのは風の谷のナウシカの王蟲以来かもしれない。

そんなイオンを見て、襲われていると誤解したDXの……暴走。
うわー、いつも客観的な視点を忘れずに感情的になっても冷静な部分を喪わないDXが唯一、プッツンしちゃうのは妹のイオンが絡んだ時だけど、いやはやここまで致命的な場面で致命的なやらかしをしてしまったのは初めてじゃなかろうか。ぶっちゃけ、今までプッツン来てもリカバリーできる範囲でトドメてたしなあ。流石に、イオンの生命が掛かってるような場面に遭遇したのは初めてだったわけだし、長きにわたるダンジョン遭難で疲弊していた、というのもあるんだろうけれど。
DXが自分で「やっちまった」というくらいだもんなあ。

やっと合流か、というところで再びダンジョンの奥に飛ばされてしまったDX。一方、六甲の尽力で脱出できたイオンだけど……この二人がここまでボロボロになってるのは初めて見た。ほんとギリギリだったのが良く分かる。イオンも流石にここまでの修羅場くぐったのはなかったもんなあ。スピンドル事件の時はイオン個人はまだ余裕あったし。
しかし、イオンと六甲が崩落から逃げ込んだジェム鉱……下半身の装備が遺されてるって、これ!! なんか朧気に覚えがあるなあ、と思って他の方の感想見て回ったら……10巻の巻末漫画プチリオールでライナスがえらいことになった所だったのかー!!ww
ちょっ、イオンたち持ち帰ったのかめっちゃ気になるんですけど、下半身装備とライナスのベイビーたちw
今ならまだ無料期間中なんで、件のプチリオール読めるので、よろしければライナスくんの恥ずかしい過去をご覧いただければ、と。10巻ですよー。


そして、DXたちはここまで登ってきたにも関わらず、一転ダンジョンの底へ。って、絶望的じゃないかー。そこで待っていたのは、転移に巻き込まれた将軍蟻と……ダンジョンの最初の種(オリジンモンスター)。
最初、意識を取り戻したところでお互いボロボロながら激突していたDXと将軍蟻が、強烈な気配に咄嗟に交錯するお互いの攻撃を止めて、バッと一人と一匹で振り返るシーン、かっこよかったー。
命をつなぐためにまさに生命を賭けた女王蟻とはまた別に、戦士として戦う将軍蟻がまたこれカッコいいのよ。オリジンモンスターの出現に、DXと共闘するところも含めて意思疎通できないのに戦うモノとして相通じるものがあった所とか、いいんですよねえ。こういうの、ただの昆虫種では決して見られない反応だし。この世界観のモンスターってほんと好きだわ。
そしてオリジンモンスター。いわゆるダンジョンボス、に当るのだろうか。なんか、不定形とまでは言わないけれど、どこか輪郭が曖昧で定まっていない、それでいて竜のようにも見えて頭が三つある多頭にも見え、得体のしれなさが半端ない。
こんな強敵を前に、DXたちは長きにわたる遭難で本当に限界をもう超えそうになってるのが、戦闘シーンの端々から伺えて、ハラハラなんてもんじゃないのですが、スピード感あふれるアクションの連続にじっくり絶望感に浸っている暇もなく、怒涛の展開のまま次回へ……って、次回へぇぇ!! ここで次回へ持ち越しですかー!? いやーッ、なんて焦らしプレイッ。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典 19 ★★★★☆   



【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 19】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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幾年の時を超えーー伝説の時代に、グレンが駆ける

ついに姿を現した魔王から逃れ、導かれたのは超魔法文明時代。失踪したセリカを取り戻すため、伝説の時代を駆け回るグレンとシスティ。圧倒的な実力差戦いに巻き込まれる2人は、この時代で新たな力を手に入れる!?

5853年という途方も無い時間を隔てた巡り会い。それは運命の出会いであり、きっと世界を救う出会いだった。でもそれ以上に、ただ一組の家族が生まれた出会いだった。
グレンにとって、セリカは大切な家族と呼んで憚らない相手だった。実際、グレンもセリカもお互いに公言して止まなかったし、お互いがどれだけ大事で掛け替えのない人なのかを、どんな深い想いを抱いているかを彼らはその言葉で、その態度で、その熱量で表し続けていた。
でも、その関係性をはっきりとした言葉で語ることはなかったんですよね。家族といいつつも、どんな家族なのかは言わなかった。もちろん、語らずとも言葉にせずとも、グレンがセリカをどう思っているのかは伝わってきていたんですけどね。グレンをセリカがどんな風に愛しているか、あからさまなくらいでした。
でも、それを言葉にはしてこなかった。
ずっと、この瞬間のためだったんでしょうね。これだけ長くシリーズ続いたにも関わらず、この瞬間のためにずっと温めてきていたのか。

そんな風にグレンが、セリカを呼ぶときは。その関係が終わるときだと考えていたのだろうか。
母さんと、グレンがセリカを呼んだ瞬間、様々なものが決壊した。それはわかりきっていながら、決して二人共表に出さなかったもの。図らずも、セリカを母と呼ぶことでグレンは巣立つ事になったのだろう。親離れで、子離れだ。いつも、最後の最後のラインでグレンのことを見守り続けてくれていたセリカ。時々、最後の最後どころか過保護なモンスターペアレント並にラインオーバーしまくって前に出てきたときもあった気がするが、それはそれとして、本当に最後のところでセーフティーネットとして、グレンの庇護者で居てくれてたんですよね。グレンが心を壊したときも、セリカが守り続けてくれた。
すでに自立し独り立ちしたグレンだけれど、帰る所はずっと在り続けていたのだ。安らかな気持ちで眠ることのできる場所を、セリカはずっと守り続けてくれていた。
そこから、彼はついに巣立つことになる。その胸に、本物の正義の魔法使いの姿を宿して。誰よりもカッコよく憧れた、あの女性の姿を焼き付けて。
グレンにとっての、生涯の命題であるのだろう「正義の魔法使い」としての在り方についても、この超古代文明時代を駆け抜ける中で、一つの答えにたどり着くための道筋を見つけたみたいだし。

グレンにとって、大きな区切りであり、リスタートとなる回だったんじゃないだろうか。
過去の世界に実際訪れることで、これまで謎とされていた部分、様々な伏線がぐるりと円環を描いて繋がった部分もたくさんありますし。だいぶ、ストーリーラインの設定周りもスッキリしたんじゃないでしょうか。ナムルスの正体はもとより、その態度についてもその発端がこの時代に起因していた事がよくわかりましたし。
しかし、イグナイト家はちょっと長く続きすぎじゃないですか!? 実質6000年近く連綿と続いたことになるぞ、あの一族。

そしてもうひとり、ついに魔将星の領域にまで至ることになったシスティ。成長物語として見たら、間違いなくこの娘がこのシリーズの主人公なんですよね。あの、初めての実戦でべそかいて心折れまくって泣きじゃくって何も出来なかった娘が。才能としても、おそらく一般的な秀才の域を出なかった娘が。挫折を繰り返し、努力を重ねて、実戦をくぐり抜け一つ一つ、一段一段着実に堅実に階段を登り続けてきたんですよね。決して一足飛びに段を飛ばさず、本当に一段一段丁寧に。システィがここに至るまで描いた成長曲線は、掛け値なしに美しいと思います。名実ともに、作中でも最強ランクにたどり着いたんだよなあ、この娘。もうすでに特務分室でも十分やってける実力になってましたけれど、ここでガチに次のステージに駆け上がったもんなあ。さながらそれは、星が天に昇るようにして。

ちなみにセリカ、まだワンチャンあると思ってるんですよね。どうにもそれらしい伏線が、この19巻の中にありましたし。
さて、舞台は現代に戻ってついに復活した魔王との決戦に。着々とラストに近づいてきたのが実感されます。


ロード・エルメロイII世の冒険 1.神を喰らった男 ★★★★☆   



【ロード・エルメロイII世の冒険 1.神を喰らった男】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「これより、私は、神を問う」魔術と伝説、幻想と神話が交錯する『ロード・エルメロイII世の冒険』、いざ開幕。
「これより、私は、神を問う」

 時計塔支部での講義のため、夏のシンガポールを訪れたエルメロイII世とグレイ。
 様々な文化が混淆するこの国で、ふたりはエルゴという名の若者と出逢うことになる。謎多き若者を追って現れる、アトラスの六源。かのアトラス院と彷徨海バルトアンデルス、そしてもうひとりの魔術師が行ったという太古の実験とは? そして、II世が問うことになる神の名とは?

 魔術と伝説、幻想と神話が交錯する『ロード・エルメロイII世の冒険』、いざ開幕。

凛さん、あんた何してんすか!?
事件簿シリーズから数年が経ち、日本は冬木の地では第五次聖杯戦争が執り行われ、そして終結した時間軸。聖杯戦争に生き残った遠坂凛は、あの赤毛の少年を引き連れて時計塔への入学を果たしていた。どうやら、士郎はこのルートでもルヴィアの執事になっちゃっているらしいけれど。
どうやら、ゲーム上におけるどのルートでもないらしく、のちに聖杯解体戦争へと至るルートらしい。本来、凛が士郎を連れて時計塔に留学してくるのは凛ルートのグッドエンドなのですけれど、連れてきている割に恋人関係にはなってないんですよね。大丈夫か? 中途半端だとあの麗しのハイエナに持ってかれるぞ? こっちのルヴィアはギャグ大系の彼女と違って色んな意味でガチだからなあ。
ともあれ、長期休暇に入った時計塔の学院で、暇になった凛が何をしているかと言うと……宝探しの挙げ句、地元のガキどもをまとめ上げて海賊団立ち上げてました……って、ほんとになにやってんだこの女w

舞台はロンドンはおろかヨーロッパを離れて遠く東はシンガポールに。東南アジアの中でも特に地理的に東西を結ぶ海上交易路の中枢という所にある国なせいか、特に東西の混合が目立つ土地柄なんですよね。総人口の七割近くを華人が締めているように中華系の特色も強いし、古くからイスラム商人の足場となっていたために中東の影響も強い。大英帝国の東方支配の要衝であったために勿論、英国の影響も色濃く残っている。まさに斑色のお国柄なんですよね。勿論、魔術サイドにもその特色は焼き付いているわけで……いや、それにしてもいきなり時計塔などの魔術協会などが扱う西洋魔術とはまるで別物である大陸東方に根ざしている「思想魔術」関連の話が放り込まれてくるとは。
それも、匂わすとかいうレベルじゃなく、これでもかとばかりに山程わんさか放り込まれてきたんですけど!?
「螺旋館」とか「山嶺法廷」とか、いきなり時計塔レベルの大組織の名前がポンポン飛んできて、目を白黒、アワアワ、ですよ。
ほんと、世界観の根底に近いような設定群を、それもこんな今まで情報が殆どなかった系統の設定をこんな贅沢にばら撒かれたら小躍りしてしまうじゃないですかー。

とまあ、目移りしてしまうような設定群の大盤振る舞いとはまた別に、ストーリーの方はストーリーの方でしっかりと地に足を付ける形で進んでいくんですね。エルメロイ二世がずっと執着していた聖杯戦争は、結局彼が駆けつけることが出来ないまま冬木の地で終わり、新たなシリーズであるこの「ロード・エルメロイII世の冒険」は、このシリーズとしての話の核が必要になってくるであろう事は考えられていたんですが、何を目的にして話は進んでいくのかなあ、と思っていたら……そうかー、いよいよ「グレイ」の話になってくるのか。
グレイの置かれている状況、そういえば最終巻で第五次聖杯戦争がはじまってアーサー王が召喚されてしまった際に、同期が進んでしまっていたのか。
これについては、聖杯戦争が終わってセイバーが帰還すればその時点で進行みたいなものは止まるだろうし、グレイ自身の能力は強化されるにしても当面問題らしい問題は起こらないんじゃないか、と特に深刻には考えていなかったのだけれど……。
そうか、セイバーと同じように肉体年齢が止まってしまう、なんて状態になっていたとは。
これまで普通に成長していただけに、これは予想外だった。これで、本格的にグレイの中のアーサー王の因子を取り除く必要が出てきたのか。
エルメロイ二世が本気になって動くには十分な理由じゃないですか。
同時に、魔術師としてのエルメロイ二世の至らなさを彼自身が痛感させられる自体、とも言えるのかもしれない。だからこそ、講師を辞めてグレイの件に力を注ぐ、などと考えだしたのかもしれないけれど……。
シンガポールの地で出会ったエルドという記憶喪失の青年。神の手をその身に宿し、それ故に自分自身の存在を食われようとしているエルドの姿は、まさにグレイと同等で。
素直で聡明なところもどこかグレイににてるんですよね。そんな彼をいっときの生徒としたことで、エルメロイ二世一行はエルドを巡る事件に巻き込まれることになるわけだけれど、ここでエルメロイ二世の教え導く者としての在り方がより色濃く描かれていく事になるんですね。
講師から退こうとしている今だからこそ、彼の教える者としての在り方、姿勢、存在意義が浮き彫りになっていくのは非常に興味深かった。
グレイが、師の講師引退を考えている告白に激しく動揺したのも、彼と教え導くという事がイコールで強く結び付けられていたからなのでしょう。グレイにとって、師と講師という在り方は不可分であったからこそ。エルメロイ二世自身、教える事が好きだというのがこの巻からは様々な場面で垣間見えるんですよね。そして、生徒となった者への愛情や責任感も。
征服王の背中を追いかける人生。しかし、その夢を諦めずも一区切りついた今、ロード・エルメロイ二世には今一度、自分のこれからの在り方を見つめ直すときが来ているのかもしれない。
グレイを救う物語であると同時に、エルメロイ二世の未来を決めるシリーズでもあるわけだ。

しかし、今回ほんとに大冒険してるよなあ。ただの冒険じゃない、大冒険ですよ、これ。海賊になってはるか昔に沈んだ沈没船を探し当てて、お宝ゲットとか普通に海洋アドベンチャーじゃないですか。
その上アトラス院の六源の一人の登場に、さらにとんでもない存在の出現である。
いやこれ、魔眼列車編のフェイカーよりもヤベえんじゃねえの? 下手なサーヴァントどころじゃないじゃないですか!?
いきなりナマの「酒呑童子」と遭遇しました、レベルの相手じゃないの? それどころか、年代の古さから言っても酒呑どころじゃないとすら言えますし。
シリーズ初っ端にして、とんでもねースケールの話をさらっと繰り広げてるんですけどねえ!?
びっくり仰天ですよ!
逆に言うと、この段階の敵を相手にして、相手になっているという時点でエルメロイ二世って施行しているルールが普通の魔術師と全然違うんですよねえ。
魔術どころか、神をすら解体しようというのかこの男。
そりゃ、魔術師としては二流三流かもしれないけれど、ほんとやってる事は頭おかしいし、首突っ込んでいる事件は、エルメロイ二世が羨む一流超一流の魔術師でも現代の魔術師である以上は十把一絡げ扱いに蹴散らされるような案件ばかりなんですよね。つまるところ、三流だろうが二流だろうが一流だろうが、相手からしたら大差ないような。
にも関わらず、この男はなんとかしてしまう。対抗手段をひねり出す。絶体絶命をひっくり返す。
いやほんとになんなんだこいつは!? 
今更ながら、ロード・エルメロイII世という存在の異質さ、凄まじさを思い知った気がします。
やっぱり、このシリーズ面白いですわー。

にしても、ライナスの方年相応に18,19の美少女になってるのかー。今回イラストなかったけれど、彼女の成長した姿は是非に見てみたいところである。
それに、ライナスとグレイの両思いっぷりがもう、深い深い。お互い気持ち通じ合っているし、思いやり合う心の尊いこと。グレイが年取らないことを気にしている理由の大半が、ライナスとどんどん見た目の姿がズレていってしまっていることで。彼女に置いていかれているような気がして、となっているのライナスの事好きすぎやしませんかねえ。ライナスの方もそんなグレイの気持ちにちゃんと気づいていて、凄く思いやってるわけですよ。なにこの尊い関係。この二人の型月世界屈指の女性同士の親友っぷりをこうしてまた見られただけでも大いなる価値を感じる次第でありました。


って、エピローグぅぅ!!
最後の最後でとんでもない人物が出てきたんですけどー!? そっち!? そっちのキャラが出てくるの!?

三田誠・作品感想

昔勇者で今は骨EX 小骨集 ★★★★☆   



【昔勇者で今は骨EX 小骨集】 佐伯 庸介/白狼 電撃文庫

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WEB限定!! 骨になっても心は勇者な冒険者(※ただし骨)の珠玉の短編集が登場!
大人気お気楽異世界ファンタジー『昔勇者で今は骨』の短編集が電子書籍で登場!
電撃文庫MAGAZINEや小説投稿サイト「カクヨム」にて掲載された短編などを大収録!!
さらに新規書き下ろしの短編『心の師匠のためならば』も収録!

電子書籍限定ながら、【昔勇者で今は骨】の短編集が登場。こうして電書限定でも続きが出てくれると嬉しいですねえ。しかも、短編集ということで色んなキャラにスポットが当って結構贅沢ですよ、これ。
今まで存在だけが示されていた勇者アルヴァスの婚約者だったお姫様たちも、在りし日のアルヴィスと共に描かれていますし。このお姫様方もなかなかに濃いキャラだったんだなあ。濃い以上に王族としても一人の女性としてもイイ女であり、人類危急の時に在るべき王族であり、と人物たる人たちで。
アルヴィスも政略としての婚約であったというから、建前の付き合いだったのかなー、と思ったらちゃんと公私の私の部分でも仲良かったんだ。帝国のパンデー皇女なんか姉御呼ばわりですもんね。
エイン王国のエルデスタルテ王女の方はだいぶ年少さんで当時まだちっちゃい幼女だったのだけれど……アルヴィスってフーチ相手でもそうだったけど、子供相手でも適当に子供扱いせずしっかりと相手を見て相手を立ててちゃんと話してくれるので、子供の方は凄く慕っちゃうんですよね。本当の意味でちゃんと話を聞いてくれる大人、というのを子供というのは求めてやまないものですし。
おかげさまで、王女様の方は勇者オタクを拗らせてしまうのですが。姉御の方はすでに大人だったから変な屈折は……いや、アルヴィス戦死をきっかけに帝位目指しちゃったらしいのでこれはこれで拗らせたのか? いずれにしても、二人共勇者の死ではなくアルヴィスという個人的に親しい人の死を嘆きショック受けただろうことは想像に難しくない。政治的立場故に、アルヴィス死んだけどまだ健在、というのを知らされていない、というのはちょっと可哀想だなあ。特に王女は未だに……ねえ。

知っててなお、苦しんだのがフブルさんとイザナなんだろうけれど。
フブルさん、こうして過去編見ると魔法の師匠であるという以上にまだ子供だったアルヴィスを預けられて育てた親代わりでもあったんだなあ。フブルさんもこれ、弟子という以上に我が子のように思っている様子が伺えるんですよね。そんな子を、天賦の才に魅せられて魔法の粋を授けてしまった。何より、勇者にしてしまった。人類の危機を救う切り札としてしまった。結果として、彼は運命のまま人類の決戦兵器としてその役目を果たしてしまった。果たさせてしまった。果てさせてしまった。
死なせてしまった。
フブルさん、毎夜魘されのたうち回るほどに苦しんでたのか。そりゃそうだよね。息子に等しい子を自分の手で死する運命へと叩き込んでしまったのですから。
ただでさえ、頼まれたから、そうしなければ全滅していたからとはいえアルヴィスを死霊に変えてしまったイザナが、フブルさんが苦しむ様子を見せられて思う所なかったわけがないんだよなあ。思いつめた結果が、本編でのあれだったわけですけれど。
いや、アンデットになって太平楽決め込んでたアルヴィスは、ほんとそういう所ですよ、てなもんで。


とは言え、アンデットになってまで現世にしがみつき続けることにアルヴィスもこれ結構深刻に悩んでたんだなあ。そんな彼の心を救ったのが、プーチであり、この幼女をアルヴィスが心の師匠と呼んで憚らない理由なのだけれど……書き下ろしで久々にプーチ登場しましたけれど、マジでアルヴィス、この娘への接し方というか対応というか態度が特別ですよね!
いや、特別というとイザナへの接し方も他の女性陣と比べるとちょっとした違いと特別感があってちょっとした正妻感漂ってるんですけど(子供?もいるし)、プーチへのそれはまたさらに特別で、そりゃハルベルとミクトラが最大のライバル出現?!と顔色変えるのもわかりますわー。


元堕竜王ディスパテのダイスも、なんか転生して人間に生まれ変わってから順調に主人公かよ、という道を歩んじゃって……結構真面目に学生してるのがなんともはや。ハルベルの学友だったペリネたちパーティーと一緒に行動するようになってるわけですけど、これダイスくんルートのヒロインってペリネなの? いや、あんまりラブコメ臭は漂ってこないのですが。ダイス、中身竜王でも一応実年齢四歳だしなあw

書き下ろしは、プーチも含めてこれまでの主だった登場人物が登場しての大騒動。骨になっても勇者しているのは相変わらずですけれど、いい意味で任せられる仲間が増えたもんですわ。
時系列的にも最新5巻のその後になってて、なんか6巻の伏線らしきものも匂わされてるんですけどー!? ってか、完全に話続いてるんですけどー!?
あとがき見ても、6巻続く可能性あり、ってなもんで、これはぜひ続いてほしいなあ。まだまだ、この飄々とした骨と元気いっぱいのキャラクターたちの和気藹々とした世界を見ていたいものですから。
短編集、一話一話があんまり短いという気がしないくらい密度濃いしテンポ良いしキャラが生き生きしていて、実に読んでて楽しかった。満足感、かなりのもんでしたよ。面白かった!
印象的な話も多かったのですけれど、冒頭にあのお伽噺を持ってきたのは掴みとしては強烈でしたよね。この世界に伝わるお伽噺とも言うべき掌編。ほんと短いお話なのですけれど、凄く雰囲気が深くて沁みるようで、なんか心に残りました。魔王オルデンとの繋がりは否定されてるみたいですけれど……さてこうしてみると倒された魔王についてはほとんど知らないんだよなあ。

シリーズ感想

恋は双子で割り切れない ★★★★☆   



【恋は双子で割り切れない】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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いつまでも、ただの幼なじみじゃ居られない。初恋こじらせ系双子ラブコメ!

我が家が神宮寺家の隣に引っ越してきたのは僕が六歳の頃。それから高校一年の現在に至るまで両家両親共々仲が良く、そこの双子姉妹とは家族同然で一緒に育った親友だった。
見た目ボーイッシュで中身乙女な姉・琉実と、外面カワイイ本性地雷なサブカルオタの妹・那織。そして性格対照の美人姉妹に挟まれてまんざらでもない、僕こと白崎純。いつからか芽生えた恋心を抱えてはいても、特定の関係を持つでもなく交流は続いていたのだけれど――。
「わたしと付き合ってみない? お試しみたいな感じでどう?」
――琉実が発したこの一言が、やがて僕達を妙な三角関係へと導いていく。
初恋こじらせ系双子ラブコメ開幕!

これ、あらすじだと琉実の一言から波乱のラブコメがはじまるかのような語りになっていますけれど、実はこの一幕があったのは中学の時。この物語がはじまる高校一年の時点では、なんと琉実と純はすでに別れているのである! そして、純は那織と付き合っているのである! それも、琉実のたってのお願いで。冒頭からこの双子と純の三人の独白から物語ははじまるのですが、このはじまった時点で三人の関係が絡みに絡まった沼に首まで浸かった状態、というのはちょっと凄まじくないですか?
端からここまで拗れた関係ではじまったラブコメは覚えがありませんわ。
試し読みして、初っ端からのあまりの濃さに躊躇なく予約してしまいましたが、このビリビリくるような感触は間違いありませんでした。むちゃくちゃ密度濃くて想いが深さゆえに拗れまくった面白いラブコメだ!

物語はこの三人が交互に一人称視点で語ることで進んでいくのですが、さらに面白いのは状況だけじゃなくてキャラ描写そのものにもあるんですよね。一人称ってのは、その対象となる人物の心象と語りによって表現されていくものなんですけれど、これびっくりするくらい三人が三人ともその語り口が全然違うんですよね。頭の中身がまったく違うというか、思考の成り立ち方というか色彩というか、とにかく考え方の質がそれぞれ三人とも全く違うのである。これ、ここまで一人称を毛色違うようにそれぞれの特色持たせて描いてる作品ってなかなかないんじゃないだろうか。
特に異質なのが、妹の方、神宮寺那織でこの娘、頭の中身がほんと並と違うんですよね。根本的にメチャクチャ頭いいんだろうなあ、というのがひと目でわかるし、思考の密度が異様に濃いのである。その知性の大半をサブカル方面に費やしているとはいえ、根っこの部分の思考の速さ、広がり方は天才と呼ばれる人種のそれなんだろう。サブカル方面とはいえ、教養の深さは尋常じゃないし、なんだろう、気取ってるわけじゃなくナチュラルにシェークスピアの引用を使いこなしてる人種と同じ類なんじゃないだろうか。
ただ、頭がよい人特有の自分は全部わかっている、という万能感に若干なりと彼女自身、那織自身が振り回されてる感があるんですよね。三人の関係を俯瞰し、姉である琉実の想い、幼馴染である純の抱いている想いを見通した上で、主導権を握って状況を整えてコントロールしようと目論んでいるのが彼女なのだけれど、案の定というべきか、自分がどう見られていたか、どう思われていたかについては自分で勝手に合点してしまっている所があって、それが彼女を若干迷走させることになるのである。
いやこれ、最後に至る前に教授から、純の初恋は自分である、と知らされたから良かったけれど、知らないまま動いていたら、彼女が導き出していた結論は違ったんじゃないだろうか。
最初から最後まで全部自分はお見通して思い通りに引っ張り回しましたよー、みたいなしたり顔してましたけれど、結構な方向転換したんじゃないだろうか、これ。
終わってみると、このタイトルってほんと秀逸なんですよね。
琉実は、妹に初恋している幼馴染をいきなりの告白で横から掻っ攫った事への罪悪感から、一年で別れを告げて、今なお純に恋している妹の那織と付き合って貰うことで罪を精算し、無理やり恋を割り切ろうとしたものの、未練を引きずりに引きずることになる。
純は、那織を掴まえられず初恋を諦めようとした所で琉実に告白され、付き合っているうちに本当に好きになったのに突然別れを告げられて、初恋がまだくすぶっている那織と付き合うことになって彼女のコトも今改めて好きだと自覚して、どんどん割り切れなくなっていき苦しむことになる。
那織の動向はなかなか謎なんですよね。この娘、地の文でも現実の方でも実に雄弁多弁で怒涛のようにいろんなことを喋っているし、考えているのだけれど、その多量さで本当に何を考えているかについては微妙に迷彩かけている印象があるんだよなあ。姉の気持ちには気づいていて、純が今も琉実に未練があることにも気づいてた。ただ、幼い頃から中学の頃まで純が自分に恋していた事は知らなくて、自分のことを一生懸命追いかけていることにも気づいていなかった。自分がずっと好きだった人が、自分のことをずっと好きで、その独特さ故に他人ともちょっとした距離感を感じていた自分をずっと追いかけてくれていた、と知った時の那織の様子と来たらもうメロメロじゃないですか。
でも、この娘がそれからしようとした事は、その恋を独占することじゃなかったんですよね。こいつ、お姉ちゃんの事も好きすぎるだろう。そして、根っからの享楽主義者なのか、これ?
この娘だけ、割り切れないなら割り切らなきゃいいじゃん! というスタンスなんですよね。そのために、企み謀ってみせたわけだ。一旦関係をリセット、するんじゃなくて。三人が抱いている「好き」という気持ちを詳らかにして、お互いの中にあった誤解や思い込みを解消してみせたのだ。その上で、引けない所までお互いの関係を踏み込ませてしまわせた。
割り切れないからこそ、一旦双子両方と別れて距離を置こうとした純の退く根拠を雲散霧消させてしまい、自分たち双子の事がどうしようもなく好きだという気持ちだけを引っ張り出してみせた。
琉実についても、純が義理で自分と付き合っていたという誤解を解き、燻ぶらせている未練を後ろめたさを消し去って、姉ゆえに妹たる自分に感じていた責任感や引け目も感じないように状況を整えた。まあ、姉妹関係については琉実は一歩退こうとする気持ちはなくなったものの、余計に妹への愛情を拗らせてしまった感があるようにも見えるのだけれど。
ともあれ、那織は割り切れない恋を苦しいもの、辛いものじゃなくて、割り切れなくていいじゃん! 三人ともお互い胸の内をさらけ出しあった、好きという気持ちも全部ぶちまけた。機会は平等、チャンスも同等、ならばあとは楽しくラブコメしよう。恋を楽しめ、好きにときめけ、駆け引きは後ろ暗さなく、誘惑は正々堂々と。牽制は笑ってつつき合え。てなもんで、こう泥沼でネガティブに陥りそうな要素を見事なくらいにふっ飛ばしちゃったんですよね。
いやあ、すげえわ。琉実も純も苦笑いしながら、こいつには敵わねえ、と誇らしく思うのもよくわかる。色んな意味でとんでもねーヒロインでした。エロいし、エロいし。エロすぎじゃねえかい、この天才巨乳w

生中のオタクを軽々と突破した、深層の趣味人とも言うべき那織の語りは元より、その影響を濃く受けている純も、普通の体育会系JKであるはずの琉実も、微妙にサブカルの沼にハマっているところがあって、会話や地の文の各所にサブカル系の引用やネタが散りばめられていて、普通に読んでてもやたらと濃厚で読み応えある文章でありました。
その上で、さらに濃いキャラたちの生々しいような躍動感のあるような、息遣いを感じる学生生活に、溌剌としたデートなど外で遊ぶ様子に、趣味に生きるじっとりとした日常感。
読み終えたときには、もう久々に「読んだわー」と満腹感を感じさせてくれる、満足度マックスとなる作品でした。いやー、読んでて楽しい作品は多々アレど、こんな濃厚さで楽しさを味わわせてくれる作品は滅多ないですわー。色んな意味で最高でした。良かった良かった。
そして、ぜひ続きが読みたい。ある意味、制限解除されたこの三人の然るべきラブコメ、読んでみたいです。

駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。1 ★★★★☆   



【駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。1】  書店ゾンビ/ユズハ オーバーラップ文庫

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面倒な家事も、些細なイベントも、女子大生と女子高生が一緒だとちょっと楽しい。

「泊めてくれたっていいじゃん。そっちのエッチな人も泊まるんでしょ? 」
「ええっ! あっ、その、私は……エッチな人では……」
谷川陽史26歳、黙々と激務をこなす独身リーマン。
ひょんなことから幼なじみの女子大生・詩織を自宅で預かることになったのだが、とある行き違いで女子高生・彩乃も転がり込んできて――。
「お風呂、先にしますか? それとも、お食事に……」
「あたしが寝付くまででいいからさ、添い寝してくんない? 」
そして始まった奇妙な同居生活。
それは、想像以上に楽しくて、刺激的で……?
サラリーマンとJD、JK。
そんな3人が1DKから始める、ホームラブコメディ。

息が詰まる、一緒に居ると気が休まらない。そんな窮屈な人間関係は家族間にだって存在する。でも、彩乃の家族はそんな窮屈という範疇にも留まらないものだったのだろう。
彼女の家の事情は詳しくは語られない。彼女がそれについては触れようとしない。ただ断片的に漏れ聞こえる様子を見れば、彼女が家族と同じ空間に存在することすら耐えられなかっただろう事が伺える。夜は街を徘徊して時間を潰し、学校で寝ることで辛うじて体を休める。そんな破綻した生活はあっさりと限界を迎えていた。肉体的にも精神的にも摩耗していた彼女は定期を落とした若いサラリーマンに声をかけたことで。正確には、定期に記されていた名前を呼んだことで、彼女の運命は変転する。
丁度、田舎から出てくる十何年ぶりかに会う幼馴染。と言っても一回りも年齢が違う年の差があり、幼い頃に毎日遊びに来ていたものの長らく顔も見ていなかった女性だ。母親からの依頼で、大学進学のために上京してきたものの、住む所が見つからずにしばらく一緒に住まわせてあげて欲しい、という話を了承し、その彼女・詩織と会うのがその日だったのだ。
たまさか自分の名前を呼んで声をかけてきた彩乃を、件の幼馴染と勘違いした結果、彼・陽史は家まで連れ帰ってしまう。預かった合鍵を使って部屋で待っていた詩織とばったり鉢合わせるまでがプロローグである。
かくの如く、この三人には深いつながりなどなにもない。詩織と陽史は幼馴染ではあるけれど、随分と年の差もあり、詩織が大きくなるにつれて疎遠になってしまいこれが久々の再会だった。彩乃に至っては二人と面識すらなかった。

でも、この三人が家族になるのに、時間なんて殆ど必要なかったのだ。
共同生活をはじめたこの三人の間に流れる時間は、読んでいるこっちまでリラックスしてしまいそうになるほど穏やかで、心地いい。自然体で気負わずあるがままに。
家主である陽史が、いい意味で大雑把であるのがいいのだろう。飛び入りで居候させてもらうことになった彩乃も、必要以上に気を使わずかしこまらず、ようやく呼吸できる場所を得たように陽史と詩織の横でゴロゴロとくつろいでいる。
気配りは、詩織の担当だ。おっとりとした物静かそうな彼女は、細かい所に気が付き世話好きで彩乃の不調に気が付き、彼女を泊めてあげられないかと陽史に頼んだのも彼女だった。
世代も性別も趣味も性格も違う三人は、だけれどまるで凹凸を埋め合うように収まるところに収まって、日々を過ごしていく。朝起きて、ご飯を食べて、それぞれ仕事や学校に向かい、帰りに買い物なんかして、休みの日には一緒に遊んだりして。それぞれに好きな事を教え合ったり、教えてもらったり。二人がゴロゴロしている横で、残る一人が干した布団を叩いていたり、なんて光景が十年前からずっと繰り返してきたかのように、流れていく。
一つ一つのエピソードは派手でもなんでもない。本当にただの日常の一コマだ。どこでも見かけるような風景だ。騒がしかったり、逆に誰も喋らず静かだったり。そのどちらでも、そこに窮屈な空気はない。穏やかに流れる時間は、息が詰まることがない。
当たり前に息が吸える。ただいま、いってきますを自然に口にできる。じんわりと、今幸せだなあ、なんか楽しいなあ、と染み入る空気がたゆたっている。

こうしたじわりと染み込んでくるような生活感を描き出すのは、派手ではないからこそ難しいでしょう。空気感、流れる時間の速さというものをこんなに穏やかに、心地よく描き出すのは、ただドタバタとラブコメさせているだけでは決して引き出せない、絶妙さなんですよね。

この手の同居モノも増えてきましたけれど、本作の空気感はそれらの中でも自分の好みとしては頭一つ二つ図抜けている、と思わせてくれる自然なリラクゼーションの粋でした。
そして、そんな穏やかな時間の積み重ねだからこそ、ふわりふわりと「好き」が降り積もっていくのも伝わってくるのである。今が幸せだからこそ、それを壊したくない、ずっとこのままで居たいと思いながら、幸せだからこそ好きが降り積もっていく。それはもう、溶けない雪だ。
姉のような詩織と、妹のような彩乃。他人だった女二人が、家族同然、姉妹同然になっていき、お互いがかけがえのないモノになっていく、これ以上なく大切な存在になっていってしまうことが、より三人の関係を複雑に、離れがたいものにしていってしまう。
幸せに満ちてしまったからこその想いの決壊、行き着く先の切なさが、ラブストーリーとしての速度を早めていく。果たして、三人の今が続くことを願いながらその先をも望んでしまった矛盾の結果がどうなるのか。不安と期待に、心拍数があがってしまいます。

ほんと、素晴らしい一作でした。ちょっともう大好きかもしらん!


Unnamed Memory VI 名も無き物語に終焉を ★★★★☆   



【Unnamed Memory VI 名も無き物語に終焉を】  古宮 九時/chibi 電撃の新文芸

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これは王と魔女の、終わりであり始まりの物語。

「私、貴方のところに辿り着けて幸せです」
ティナーシャの退位と結婚の日が迫るなか、周囲で怪しげな事件が頻発し始める。歴史を改竄する呪具エルテリアを奪取するため、ヴァルトにより巧妙に仕掛けられる罠。無数の歴史の記憶を持つ彼は、ついに自分と世界にまつわる真実を語り出す。
消えては再構築される時間の果てに、オスカーが下す決断とは――。王と魔女の物語の終わりであり始まり。人の尊厳をかけた選択に向き合う完結巻!

ずっとモヤッとしていたものがあったんですよね、この世界のオスカーには。それをヴァルトがズバッと指摘してくれて、ああそうだったのか、と深く深く首肯したのでした。
そうなんですよ、この世界のオスカーはティナーシャと結婚するのにさほどの苦労していないんですよ。なにしろ、むしろティナーシャの方からアプローチ掛けてきたくらいで、グイグイ来られて困惑しながらも彼女の不思議な人となりに惹かれていって、立場の柵がなくなった所でようやく求婚して、それも大した問題なくスッと受け入れられて。
そう、すんなり……本当にすんなり収まる所に収まってしまった。
前のオスカーは、そりゃもう毎日のように口説いてプロポーズして塔まで会いに行って、と大変な情熱を傾け続けたにも関わらず、徹底して拒絶され断られ逃げ回られ、それでも段々と触らせてくれるようになって口では断られながらも距離感をグイグイと潰していって、ついには彼女の生きる意味の消失を全霊をかけて埋めることでようやく一年掛けてティナーシャを口説き落としたわけです。
相手は数百年を生きる最強の魔女。経験も知識も力も違う相手でした、何をしでかすか分からないびっくり箱でした。それでも構わず、相手の巨大な存在感も恐れることなく、情熱をもって一人の女としてティナーシャを口説き落としたわけです。
そして、国を、世界を、自分自身をも失う選択を前にしても、迷わず彼女を救う道を選んでしまうほどに、ティナーシャを愛した。それが、前の世界のオスカーでした。
この世界のオスカーに愛が足りない、とは言いませんよ。でも、暗黒時代の女王の様相に戻ってしまったティナーシャを前に、不安をいだいてしまうオスカーというのはどうにも「シャキッとせいや!」という感想を否めなかったわけです。だってオスカーが不安って、違うだろう、そうじゃないだろう、と思いませんか? ティナーシャとの未来に影を感じてしまうって、そういう所に引っかかってるのはオスカーらしくない、と思いませんか。
そうかー、追っかけが足りなかったのかー。ティナーシャの何もかもを覚悟して受け入れていた前のオスカーと違って、強く求める前に得られてしまったこのオスカーは、愛する人を求める希求心が足りなかったのか。飢餓感が足りなかったのか。ふとした瞬間に彼女が消えてしまうのではないかという危機感が足りなかったのか。ティナーシャという異質を掴み取る覚悟が足りなかったのか。
だからこそ、すべての歴史を見てきたヴァルトが前までの世界のオスカーと比較して、彼を叱咤してケツ叩いてくれた時には、よくぞ言ってくれた! という感覚だったのです。
敵対しているはずなのに、ヴァルトは。
相容れない関係になってしまったはずなのに、言わずには居られなかったんだろうなあ。オスカーとティナーシャのあの尊いまでの関係を覚えていたら、どうしようもなく言わずには居れなかったんだろうなあ。
ティナーシャとオスカーの臣下だった事もある、と数ある歴史の中の一幕のように語っていたヴァルトだけれど、彼にとって彼らの臣下だった時間は実はこの上なく特別な時間だったんじゃないか、と思うんですよね。
あとで、彼らの臣下だった頃の話が挟まれるのだけど、ラザルやアルス、シルヴィアやドアンといった股肱の腹心たちと全く違和感なくメンバーの中に混ざってたんですよね。
そうやって二人のもとで働く時間は、本来の目的を忘れないまでも充実していて、ミラリスと過ごす日々も発見と幸せに満ちていて、ヴァルトにとってこの時間軸がどういうものだったのかが伝わってくるようでした。
道は分たれた。ヴァルトは一切を振り切って愛する人のために成さねばならないことがある。そのためには、ティナーシャとオスカーは敵として相対さねばならない。
それでも、敵対しながらもヴァルトにとって過去形じゃなく二人の臣下であり続けていた。それが、あのオスカーへの叱咤に垣間見えた気がしたんですよね。

そうして、泡沫のようにすべては消えていく。
ヴァルトが改めて「エルテリア」の効果について説明してくれましたけれど、これは本当にえげつない。何がえげつないって使用者当人には記憶残らず、時読の当主に選ばれた人間にだけ記憶が残ってしまうというところか。自分で使うならまだしも、誰かがどこかでエルテリアを使った途端にいきなり世界が巻き戻りって改変点まで戻されちゃうんですからね、記憶が残ったまま。最悪の巻き込まれじゃないですか。
それでも、自分だけの事ならずっといつか改変が通り過ぎていくのを耐え続ければよかったのかもしれない。でも、それが愛する人に引き継がれてしまったとしたら。
本来、ヴァルトは裏で暗躍して世界を動かす、なんてタイプの人間ではないのでしょう。誠実に、当たり前に、表の世界で当たり前のように穏やかに生きていく人間だったのでしょう。そんな彼が人として壊れもせずにやり遂げようとした事は、愛する人を救うためにそれ以外のすべてを裏切ること。
それもまた、名前の残らない記憶であり物語だったのでしょう。
でも、その名無しの記憶は紆余曲折を経て、彼らに引き継がれてしまった。

そこにあった世界が、消えてしまう哀しみを、喪失の痛みを、引き継いでしまった。
歴史が一つまっさらに消えてしまう瞬間は、劇的でもなく本当にただ泡が消えるように唐突に何もかもなくなってしまった。
あそこに生きていた人たちは、長き歴史を紡いでそこに在ったものたちは、全部綺麗サッパリ消えてしまった。ただ、巻き戻しを認識する人の記憶にだけ残って。
レジスとティナーシャが二人でトゥルダールのためにやっていたこと、やろうとしてきたこと。描いてきた未来図が、全部泡のように消えてしまった。想いも、情熱も、親愛も、感傷も、何もかもが記憶の中にしか残っていない。

そして、オスカーが選んだ選択は。ティナーシャが受け入れた決断は、そんな記憶にしか残らない思いすらも消し去るものだったのか。
すべての改竄を初期化して、最初からやり直す。きっと、改竄を経なければ生まれなかった生命もあるだろう、助からずに歴史の闇に埋もれてしまった者もいただろう。オスカーですら、そもそも生きて成人しなかったかもしれない。ティナーシャは魔女にならず、数百年の時を経てオスカーに会う事はなかったかもしれない。
それでも、彼らは行き詰まりつつあった世界をまっさらにやり直すことを選んだ。外部からの干渉を排し、ティナーシャ一人が背負うことになる消えゆく歴史と時間の重さを取り払うために。
運命を信じて。もう一度会えると信じて。そのとき、恋に落ちるのは確定済みだ。それだけは、疑う余地はない。
「歴史が変わっても、全てが元に戻っても。どこにも誰にも記憶が残らず、たとえ私が生まれなくても……愛しています。貴方が私の、最初で最後のただ一人です」


きっとこの瞬間に、数百年を生きた魔女と一人の王様の恋物語は、ただ幸せになって結末を迎えるお伽噺の枠を逸脱してしまったのだ。悠久の時の流れに、二人は溶け落ちていく。
きっと二人はそれでも幸せなのだろう。ただ少しだけ、置き去りにされていく人たちの想いを想像すると胸の奥に寂寞とした風が吹く。
最初にこの作品をウェブ上で読み耽って以来、ずっと忘れられない、心のなかで吹き続ける風だ。
その寂しさを、もう一度じわりと噛みしめる。
これが【Unnamed Memory】が迎える終幕の実感なのだと、思い出しながら。

続編もやるんですよねえ。やるのかー。それならそれで、こっちも覚悟が必要だなあ。



魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12 ★★★★☆  



【魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 12】  手島史詞/COMTA HJ文庫

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ザガンとネフィ、お互いの誕生日が判明!?

アルシエラからザガンの誕生日を聞き、来週と差し迫っていることに気づくネフィ。
その一方、ザガンもオリアスからネフィの誕生日の情報を得る。
姉妹であるネフテロスの誕生日も同じ日に設定し、祝う準備を進めるザガンだが、彼女のホムンクルスとしての寿命が差し迫っていることにも気づいており、解決方法を模索していた。
その頃シアカーンとビフロンスの暗躍組も動き始め……魔王同士の思惑が交差していく――!!
大人気ファンタジーラブコメディ激動の第12巻!

世界の謎やアザゼル、ザガンの過去に銀眼の王たちの話など結構深刻な話も同時進行しているのだけれど、それはそれこれはこれ、という感じでザガンたちが自分の大事な人や家族たち、ザガンファミリーの日常の方をもっと大事な事として最優先にするの、やっぱりいいなあ。
ネフテロスの寿命の件だって、義理の妹がそんな事になってたんじゃ、みんなオチオチ誕生日祝えない、てのが頭にあるんですからね。まあ彼女に関しては、ネフィが悲しむからというのが建前で、ザガンももう本気でこの娘の事を義理の妹として大事にしているから、というのもあるのでしょうけれど。でなかったら、ネフテロス自身の意見や希望はきかないでなんとかしようとしちゃってたかもしれませんし。
差し当たって誕生日である。誕生日は祝うもの、という当たり前の行事、人間的習慣について知らなかったり経験がない人たちが多すぎる、このファミリーw
案の定というべきか、ザガンとネフィ、お互いの誕生日の話に留まらず、ファミリー全体に誕生日お祝いブームが波及していくのである。カップルたくさん成立しているにも関わらず、誕生日というイベントをスルーしている子たちが大半だったのか、なんというこれまでの人生の殺伐具合。
ほんと、みんな幸せになってほしい。
この世界に生まれた事を祝う日、というのが刺さる人が居すぎるんですよね。そういう生まれた事を祝われなかった人たちが、今こうして家族や友人と集まって一緒にこうやって生まれた日を祝いあえるということだけでも尊いんですけどね。その中でも愛する人と、というのは特別なのだ、やっぱり。
しかし、こうしてみるとザガンとネフィ以外のカップルで一番安定して甘酸っぱいイチャイチャを繰り広げてるのって、シャステルとバルバトスなんだよなあ。
リリスとシャステルがポンコツ繋がりでいきなりこんな仲良くなるとは思わなかったけど、同じレベルのポンコツだからか、シンパシーが通じたのか、シャステルがこんなに恋バナを吐露する事は滅多なかったのでちょっとワクワクしてしまいましたが、ほんとに惚気けるなあ!
最初ザガンのことちょっと好きだったシャステルが、失恋したあとバルバトスといい雰囲気になったこと、シャステル自身もちょっと気にしてたのかー。とはいえ、それを引きずるわけでもなく今はバルバトスに一途なのは可愛らしいというかなんというか。あとでお互い辿々しく誕生日教え合うところなんぞ、ほんと可愛らしいカップルになってしまって。
この完全に両思いが成立しちゃってるカップルと比べると、他の連中はまだイチャイチャしながらもハッキリしない所があるんですよね。大概、一方が日和っているのですが。
いい加減しびれを切らせて積極の鬼になってるのが黒花さんなのですが、この子ついに18歳になったのか! いや、マジでそんな歳だったの!? もっと小さいかと思ってた。もう普通に大人じゃない。そりゃ、シャックスも相手が子供だからなんて言い訳できんわ。

なかなかおもしろいことになっているのが、前回登場したフルカスで。記憶喪失のはてにリリスに恋して積極的にアプローチはじめて、リリスの方もまんざらでもなさそうだからこれでカップル成立かと思ったら……まさかのリリスの幼馴染のセルフィのガチ百合恋愛参入である。
真面目に恋愛相談されたザガンの混乱ぶりが笑えたのなんの。それでいて、ちゃんとごまかしたり曖昧に濁したりせず、真剣に向き合ってセルフィの迷いを吹き飛ばすようなしっかりとした応答してみせるザガン様、超偉いです。恋愛相談なのに、ちゃんと応えられてるじゃないですか、この人。頼もしすぎるぞ、この魔王様。
おかげで、リリスを間に挟んでの三角関係な修羅場が実現してしまうという。リリスってば、どっちにも満更でもなさそうでドキドキしてるので、いやこれどうするんだ!? フルカス君の方はまだ良くわかってないみたいだけど、セルフィは完全に恋敵として敵意漲らせているし。
ちょっとどうなるかわからなさすぎて、ここの人間関係は面白すぎる。

と、あちらこちらで甘酸っぱい誕生日模様が繰り広げられている一方で、またぞろビフロンスが暗躍して酷い事に。なんでそんなにネフテロス虐めに走るのか。こいつ、ほんとに好きな子には意地悪したくてたまらないガキなんだよなあ。やってることはそんな甘い話ではないエゲツない事ばかりなのだけど。
今回はリチャードが良く頑張った。これまではひっそりとネフテロスの側に侍るばかりで、あまり目立たないし存在感もないし、モブっぽかったのだけれど、ついにネフテロスが切羽詰まった状況になったことで前に出てきてくれました。こいつ、はじめてデザイン明らかになりましたけど、作中でも屈指の美形イケメンじゃないか! 王子様かよ!
他のキャラに比べてバックグラウンドもないただの騎士なんですけど、そんなモブっぽいからこそこの青年には頑張ってほしいんですよね。ネフテロスがえらいことになってしまったことも相まって、リチャードには再度男を見せてほしいところ。ビフロンスなんぞからちゃんと奪い取ってやってくれ。

そして、何気にザガンファミリーの中で王子様度が高いのって、キメリエスだと密かに思っていたのですが、まさかのゴメリお婆ちゃんが囚われのお姫様という展開の急襲に、盛り上がってきましたよ。いや、もうお姫様扱いが一番似合わない変態お婆ちゃんが、と思うところですけど、キメリくんにとってはお姉さんでお母さんでお姫様だもんなあ。それこそ乙女ゲームの王子様並のイケメン度
を見せて欲しいところである。顔、ライオンだけどさ。心は作中屈指の好青年なんだから!










現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 2 ★★★★☆   



【現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 2】  二日市とふろう/景 オーバーラップノベルス

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私は、この立憲政友党をぶっ壊します!!

現代社会を舞台にした乙女ゲームに転生した悪役令嬢・桂華院瑠奈。
瑠奈は持てる知力・財力・権力を総動員し、執事の橘や極東銀行の一条支店長を味方へ引き込んだ上で、バブル崩壊後の金融機関連鎖破綻を見事乗り切った。
『小さな女王様』として表舞台に躍り出た瑠奈は、新たに発足した渕上政権の下でさらなる手を打ち続ける。
そのさなか、泉川副総裁と桂華グループに黒い疑惑があると取り沙汰されてしまい――。
騒動の終着点が東京都知事選だとにらんだ瑠奈は、『首都奪還』のスローガンを旗印に候補を立て、東京都知事選へ臨むことに。
未来を知る者としてあがき、やがて来る悲劇に目を背けながら、瑠奈は突き進む。
そして21世紀を迎えた日本で、ついにあの男が動き出し――!?
現代悪役令嬢による日本再生譚、第2幕!

よくドラマなんかで政官に金をばら撒いてやりたい放題する金持ち、みたいなのが登場する事があるんですけれど、正直鼻で笑ってしまうんですよね。金持ちのスケールがショボすぎる。金持ちという存在に対してのイメージがその程度、想像できる範疇がそのレベルなのでしょう。政治家、官僚個人を札束でひっぱたいたからといって、政界、官界、財界といった業界を、国家の意思決定中枢を動かすには至らない。
それを成すには、それこそ国の経済の行方を左右するほどの影響力を及ぼさなければ、箸にも棒にもかからない。数百億単位など端金、数千億で最低限。まずは兆を動かせるようになってから出直すがいいさ。
そうなってやっと、国家を動かす意思たちはその存在を無視できなくなる。相手が小学生であろうとなんであろうと、その言葉に耳を傾けなくてはならなくなる。彼女の一挙手一投足が、国の進む方向に影響を及ぼそうというのだ、無視できるはずがない。
桂華院瑠奈という存在は、否応なく注目の的になっていく。もっとも、この小さな女王陛下の本当の姿を知るモノは少ない。未だ小学生に過ぎない少女が、数兆円を稼ぎ出し、惜しみなく資産を投入して金融破綻を救済し、今なお凄まじい勢いで資産を増やしながらこの国の経済を叩き起こしながら暴れまわっているなど、常識的に考えてありえないだろう。
故に、桂華グループの動向は多くの錯誤を交えながら捉えられ、混迷を深めていく。
そんな中で彼女の真価、精髄を見抜いた傑物たちは、桂華院瑠奈を見くびること無く彼女の能力を存分に活かすことで、キャスティングボートを握ることに成功する。
もっとも、傍から見ればキャスティングボートを握っているのは、瑠奈の方に見えるかも知れない。
東京都知事選や与党総裁選で、瑠奈は紛うことなき「キングメーカー」として政治中枢に意見を通すことでこの国の行く末に深く噛むことになるのだ。
1巻での総選挙の際、泉川議員の選挙事務所で渕上次期総理から泉川議員に電話がかかってきて欲しいポストを尋ねられたとき、そこに居た瑠奈がメモ用紙にさらさらと「副総裁か副総理」と書いて泉川議員に見せたのを、しばし沈黙した彼がその通りに渕上さんに要求を伝えたシーン。
あれもまさに「キングメーカー」といった感じでゾクゾクしたものですけれど、都知事選で立候補が出揃っていくなかで世論や議員団の動向を読み切った上で最後にあの大物作家政治家と直談判して引っ張り出すところや、渕上政権がトんだとき泉川副総理を説得して中継ぎの選挙管理内閣として成立させたり、とか。もう完全に「平成のフィクサー」を地で行ってるんですよね。
挙げ句には、アメリカ大統領選挙へのアプローチである。2000年大統領選挙は、あのブッシュVSゴアの大激戦。僅か300票差で勝敗が決定した、と言われる最終局面で大問題となったフロリダに会社買っての選挙応援活動である。
この一件で小さな女王の名はアメリカ政界にも轟くことになり、ITバブルから資源関係に河岸を移していくと同時に、サウジと日本との鉄道建設契約に大投資して大いに噛むことで中東にも大きな足がかりを作ることで、アメリカの大統領府の意思決定にも意見を挟む立場になっていくのだ。

それが出来るほどの凄まじい財力、その財力を的確にクリティカルな場所タイミングで放り込んでいく才覚、そして彼女のその才覚を正当に評価し協力を惜しまない各界の傑物たちとの間に結ばれた人脈。
それが、小学生・桂華院瑠奈が世界を動かすに足る根拠と説得力を与えているのだ。
そんな彼女が稀有足り得るのは、これほど絶大な儲けを得て、国家を左右するだけの権力、発言力を持ち得ながら、本質的に彼女自身は個人の利益に何の興味も持っていないところなのだろう。
もはや、彼女は桂華財閥の中でも独自の勢力として一連の企業群を率いることになっているけれど、瑠奈には「野心」はないんですよね。儲けというものを全く考えていない。それどころか、将来的に自分自身は破滅して表舞台から追いやられて消えていくことを覚悟している、受け入れている。
彼女の望みは、この国を破綻から救うこと。運命なんて理不尽に勝利すること。でも、そこに彼女自身が幸せになる、という未来があることを度外視してるんですよね。
これを多くの人は理解できず、桂華院瑠奈という少女の行動原理を誤解することになるし、瑠奈の存在に辿り着けない程度の人たちは桂華グループの動向を的はずれな方向に解釈して合点してしまうことになるのである。
企業家や投資家といった存在は儲けること利益をあげること会社を成長させることを当然のこととして考えている。だから、絶対に桂華院瑠奈の思考を理解はできないんですよね。
いずれにしても、桂華院瑠奈というファクターは野党、財閥、マスコミその他もろもろから邪魔者として認識され始める。自分達の手の届かないところで好き勝手する、イニシアチブを握ろうとする、コントロールが及ばない未知の存在、それでいて異常な影響力干渉力を持つナニモノか、となったらそりゃ排除対象として認識するのも当然か。
その中でも出来物たるものたちはその正体を見極めて首輪をつけて利用しよう、飼おうとするのだけれど、おとなしく首輪をつけられるようなタマではないんですよね、この小さな女王様は。スケールが、モノが違いすぎる。

一方で瑠奈という人物を正確に理解する人たちが現れても、そういった国家の重鎮たちは国の未来を守るために、この娘の崇高な自己犠牲を受け入れてしまう。正しく、この娘がこの国を救うだろうと認識するが故に。
瑠奈の絶対的な味方である橘や一条、藤堂といった面々も瑠奈の個人的な味方であるからこそ、根本的に自分の幸せを度外視している瑠奈の在り方は認めていないんですよね。瑠奈に忠実でありながら、彼女の見えない所で瑠奈の思惑や考えを飛び越えて彼女の幸せのために彼女の人生そのものを守るために暗躍している。

だから、本当の意味で桂華院瑠奈の在り方を全肯定してくれる存在というのは今の所いないんですよね。だから、瑠奈は本質的に孤独であり続けている。そして彼女は孤独であることを粛々と受け入れている。いつかその時が来たら、独りでひっそりと消えていくのだと思い定めているのだ、この女王様は。小学生のくせに、なんて寂しく誇り高い生き方をしているのだろう。
そんな自分という人間の終わりを常に見つめている瑠奈にとって、小学生である自分、子供である自分というのはもうモラトリアムに見えるのだ。
今回比較的、1巻のときよりも同級生のイケメン三人組、帝亜栄一、後藤光也、泉川裕次郎の三人との日常風景が多いんですよね。当たり前の小学生、というには三人も含めて特殊すぎるのだけど、彼らとの何気ない時間、一緒に遊び一緒に学び同じ目線から一緒にこの世界を見つめる時間を凄く大切に扱っている。でも、それらは現段階でもう想い出作りをしているようにも見えるんですよね。いつか独り寂しく消えていく時に唯一抱くことを許された財産として。懐かしく振り返る過去として、アルバムの中に仕舞い込むようにして、彼女はこの小学生としての時間を過ごしている。
それがどうにも物悲しく、切ない。

こうしてみると、桂華院瑠奈という存在をしっかりと理解した上で、だからこそ敢然と敵に回ることになるあのライオン宰相は、彼女のその在り方を全否定しようとする恋住さんは、瑠奈にとっても唯一無二の存在に思えるんですよね。
まあでも瑠奈さんてば、その行く道を止められるとそのまま破滅する所まで踏み入っちゃってる、ポイント・オブ・ノーリターンをとっくに通り過ぎてるとも言えるので、あの人は悪意はないはずなんだけど、瑠奈さまの破滅トリガーぽんぽん引いちゃう形になってるように見えるんだよなあ。
まあそれはまだもう少しだけ先の話。

小泉政権誕生の熱量、あれは当時を実際に体験していないと実感できないでしょうね。政治を取り巻く環境というのは、あの人を境に完全に変わってしまった、と言っていいでしょう。あの熱狂は忘れられない。
しかし、こうして振り返られると森政権のあのどうしようもなさは、本当にどうしようもなかったんだなあ。あれだけ酷いのもちょっと今となっては想像できないかもしれない。

あと、この世界線では渕上総理助かってるんですよね。小渕さんが急死したのは凄まじい衝撃だったもんなあ。療養のため政権は維持できなかったものの、早期に症状を発見できたことで生命が助かったのはほんと良かった。瑠奈にとっても泉川議員に並ぶ政界での味方ですしね。

この日本、四国に新幹線が通るぞ!! 鉄道事業って、信用そのものでもあるのか。なるほどなあ。
にしても各地の不採算路線を買いまくる鉄道女王・桂華院瑠奈! いや鉄道関係詳しくないのですけど、知ってる人からすると、あの鉄道が救済される! とか、あの路線が延びる! とか大興奮なんだろうな。

そして、金融破綻の次はサティ、そごう、ダイエーといったスーパーマーケット大手の大崩壊である。このあと、ゼネコンの大壊乱が待ち受けているとか、前巻のときもしみじみ呟きましたけど、これ全部吹っ飛んだ史実の日本、よく滅びなかったよなあ。

そして、最後の章のサブタイトルが「カサンドラのあがき」。
2001年、運命の日。9月11日へのカウントダウンが開始される。





武装メイドに魔法は要らない ★★★★☆  



【武装メイドに魔法は要らない】  忍野 佐輔/大熊 まい 富士見ファンタジア文庫

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銃の存在しない異世界で、そのメイドはあまりに最強。

元・民兵の仲村マリナは転生した異世界で辺境公女のメイドとなる。異世界に存在しないハズの銃火器を繰り出し、遍く刺客を圧倒するマリナ――公女に仕えるただのメイドは、現代兵器で魔導士の軍勢をも凌駕していく!
全然最強じゃない、最強じゃないよ武装メイド!
いや、彼女マリナに与えられた能力は規格外と言っていいものなんだけど、それ以上にこの異世界側の戦闘に携わる人種が意味わからん強さすぎ。その中でもとびっきりなのが「騎士」たちである。
こいつら、もう人間じゃないだろう。「超生物」という他ない意味不明さである。
いや、意味不明ではないんですよね。理屈のわからない強さというわけじゃないんですよ。ただ単純に純粋に硬い、速い、強い。なんですよね。
……騎士全員「アイアンマン」じゃないのか、これ?

なので、マリナが引っ張り出してくる現代兵器、勿論この異世界では未知の武器であり相手の想像の埒外にあるものではあるのだけれど、ファンタジー世界に近代兵器を持ち込んでくるような作品と違って全く無双とか出来ないんですよ。拳銃とかアサルトライフルとか程度は、鼻で笑う豆鉄砲。そもそも、小火器類は最初から出番すらありませんからね。
初手『ブローニングM2重機関銃』である。12.7ミリ徹甲弾。最初からもう対人兵器の範疇はみ出してるんですが。いや、最初は人間相手じゃなくて魔獣相手というのもあったのですが。
これがいきなり通じない! 初っ端重機関銃持ち出して速攻効かないって、なんぞそれ!?
と、このこの時点で現代兵器無双とは程遠い、ある意味ガチの戦争ものだという事を実感させられたのですが……。
マリナさん、その火力もうロアナプラの婦長じゃなくてヘルシングの婦警の方じゃありませんか!?

ともあれ、この異世界での「騎士」階級ってほんとにヤバいんですよ。この世界の戦争って下手すると現代戦よりも地獄じゃないのか。
理不尽な意味不明な理屈で攻撃が通じない、というのと違って純粋に「硬い・速い・強い」というヤバさは、シンプルであるが故に余計に強さを実感できるので、ただただ怖いんですよね。
なんというか、地べたから戦闘ヘリを見上げているような、対地攻撃機に追い回されるような圧倒的な力によって蹂躙されるような怖さというべきか。
しかし、戦争映画なんかでは兵士たちはその地べたを駆け回り、建物の間を行き来し、ビルの屋上に駆け上がったり、路地を車で突っ走ったりしながら、その圧倒的な力の権化に対して抗い反撃していくのである。
硝煙のたなびく中を潜り抜け、地面を匍匐で這いずり、崩れ落ちるビルの瓦礫を乗り越えて、降り注ぐガラスで血まみれになりながら、泥水の中に身を隠し、反撃の機会を伺うのである。
工夫を重ね、罠を張り、策を仕掛け、敵を自分のフィールドへと引きずり込んで、叩き潰す。
それこそ正しく都市戦闘であり、ゲリラ戦術であり、弱きが圧倒的強者を地面へと引きずり下ろすジャイアントキリングだ。
その意味でも、本作はファンタジー世界を現代兵器で無双するたぐいの物語ではなく、武装メイドに憧れた民兵崩れの少女が、誇り高く意地汚い「戦争の猟犬」と呼ぶに相応しい戦いを繰り広げる、戦争小説なのである。

同時に、本作こそ崇高なる少女と少女の物語。ガール・ミーツ・ガールの粋である。
主人公のマリナは日本人として生まれるものの、彼女の生きた時代の日本は内乱によって分断され、軍閥とイデオロギーに支配された戦闘集団が日々理由らしい理由もなく、血で血を洗う戦争を繰り広げる地獄のような世界だ。彼女はそこで生きるために民兵となり、ひたすらに殺し殺しおのが心を絶望によって殺され、ついに体もボロくずのようになって殺された、という境遇の娘だ。
そんな彼女の憧れは、拾った漫画で見かけたキャラクター。武装戦闘メイド。確たる志も理由もなく殺し殺されを続ける日々に精神を擦り切らせた彼女にとって、武装メイドとは心より敬愛する主人の為に戦うという、胸を張って生きることの出来る、誇りを持って戦うことの出来る、そんな職業だったのだ。今の糞みたいな生き方をしている自分にとって、手の届かない夢。
そんな世界と自分に絶望しきった彼女の魂を、引き寄せ形の体に定着させたのがエリザベートという没落した貴族家の娘であった。
マリナは少年兵として気がつけば兵士として戦っていた娘だ。メイドの経験なんて漫画で呼んだ程度の知識しかない。
エリザベートは、貴族家の娘だけれど今は人一人雇うことの出来ない没落した身の上だ。
二人共、メイドとしても主人としても初心者以前の問題。はじめましてのはじめて同士。生まれ変わっても野良犬だったマリナにとって、エリザは落ちぶれたにも関わらず理想にしがみつく頭お花畑の気に食わない偽善者に過ぎなかった。
そう、見えたのだ。最初は。
これはそんな最初からすれ違った少女たちが、お互いの本当の姿を見つけるお話。
この巨大な理不尽が当たり前のようにまかり通る地獄のような世界で、折れず曲がらず気合い入りまくり、根性据わりまくり、覚悟も矜持も信念も極まりきったイカレてイカした少女たちの心がこれ以上無く共鳴するお話。
エゴとエゴがぶつかって衝突して、混ざり合って溶け合って、そうやって出来上がるのは無二の親友としてのあり方だ。命を捧げあってお互いの全てを与え合う比翼の主従というあり方だ。
少女たちの尊くも微笑ましく美しくも輝かしい、この上ないガール・ミーツ・ガール。
端的に言おう。ぶっちぎりに面白かった!
熱く、痺れて、震えるほどにカッコいい。これぞ、誇り高き少女たちの戦争である。

ホラー女優が天才子役に転生しました 2 〜今度こそハリウッドを目指します!〜 ★★★★☆   



【ホラー女優が天才子役に転生しました 2 〜今度こそハリウッドを目指します!〜】  鉄箱/きのこ姫 ガガガ文庫

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ホラー女優が転生した天才子役、無双す!

貧乏育ちの苦労人ホラー女優の鶫(30歳。努力の甲斐あって演技力はピカイチ)が、自動車事故で即死。
転生した先は碧眼ハーフの超美少女つぐみ(5歳)で、ドのつくお金持ち令嬢だった!!つぐみの両親はつぐみに「注入された」演技の才能をすぐさま見抜き、テレビドラマの子役オーディションへ飛び入り参加させる。
天使そのもののつぐみの身体を得た実力派ホラー女優鶫は、その奇跡に感謝し、誓った。「今度こそハリウッドを目指します!」。
3人の仲良し子役美少女、凛、珠里阿、美海とはぐくむ幼い友情。行き違いから、深く落ち込んでしまったその親友を救うためにつぐみにできること、それは、度肝を抜く演技!
ドラマ、バラエティ、CMに演技無双する天才子役つぐみ(5歳)の進撃が止まらない!!

鶫さん、あなたが死んだおかげで人生ネジ曲がっちゃった人がえらいたくさんいるんですけど!? ホラー女優というその道では第一人者であっても、ある種ニッチなポディションの女優で、決して芸能界の大御所とか業界の売れっ子トップ女優というわけではなかったはずなのだけれど、それだけ影響力が強かった、個々の心の奥まで食い込む何かがあったという事なのか。
なんか、人によっては人格まで歪んでいる節があるんですよね。桜架さん、ちょっと鶫という女優に対して美化が進みすぎて狂信入ってませんか!?
幼い頃の憧れが高まりすぎて、桐王鶫という女優を神格化してしまっているようじゃないですか。
なんだよ、微笑むだけで相手の役者を信者にしてしまうとか。鶫さんならCGなんて使わなくても空だって飛べただろう、って。いやいやいや、空は飛べないから。どんなすごい役者でも、空は飛べないから! 
……飛べないよね?
ちょ、ちょっと待って、さすがに妄想ですよね、これ。鶫でも、そりゃ空は飛べないだろうし。でも、空を飛んでいるように見える演技技法とかならやりかねないんじゃないだろうか、という可能性が。
なんかつぐみって時々素で意味不明な人外魔境のアクションができるような素振りを見せるだけに、ちょっともしかして、と思ってしまうんですけど!? いやだってさ、普通に何の器具も使わずに天井に貼り付いたりとかできるみたいな事言ってるし、逆ブリッチで階段移動とかしやがったし、歩法でまったく足を動かしているように見せずにすすーっと滑るように移動してみせたり、とかしちゃってるんですよね。
……マジに空を飛べる、とは言わないけれど、カメラ越しだと幽霊みたいにふわふわと浮遊して移動してるように見える、みたいな技持っててもおかしくないんだよなあ!
実際、鶫が死んで壊れてしまった人たちは慕っていたを通り越して信者みたいになっていたとも言えるかもしれませんし。珠里阿のお母さんの早月も、鶫を慕っていたからこそその拠り所を失ってしまった事で転落してしまったようにも見えますし。
現在進行系で桜架さんよりもヤンデレ拗らせていると思しき人も現れてしまいましたし、桐王鶫の死は演劇界の損失という以上の被害をこの業界に与えてしまっていたんじゃないだろうか。
その鶫の復活が、果たしてそれら歪んでしまった人々の救済と成り得るのか。
まず旧世代の人たちよりも先に、同世代の子役たちが友人としてライバルとして、「つぐみ」の洗礼を浴びることになってしまうのですが。
1巻で登場した時点では、夜旗凛という子以外は、珠里阿も夕顔美海も親が役者の二世というだけで確かに技術として上手いものはあったかもしれませんけど、色んな意味で普通の子だったんですよね。
しかし、彼女たちは幼くして「本物の演技」を、「本物の女優」を目の当たりにしてしまった。その世界に飲み込まれ、味わってしまった。まだ5歳6歳の幼子が、役者とは、演技とは、という哲学に本気で向き合うことになってしまったのです。
その時点で既にこの子たちは本物の役者としての道をこの年齢にして、自分の意思で歩みはじめているのですけれど、それだけでは済まずに「人生の壁」にぶち当たってしまうんですね。
いや、早いよ! 幼稚園とか小学生になったばかりのちびっこだぞ!? まだ理性とか知性も普通なら育ちきっていない自分の感情を制御できずに振り回されるばかりの「動物」に近い生物なのが、この年代の子たちのはずなのに。
早くても思春期、或いは青年期にぶち当たるだろう人生の壁、行き詰まりに、彼女たちは行き合うのである。それはコンプレックスだったり家庭環境だったり人間関係の歪みだったり。
まだ向き合うにはあまりに早いそれに、この子たちはもう一廉の役者として生きる意思を持ってしまったが故に、壁として認識してしまうんですね。いや、立ち向かわなければならないもの、として認識したというべきか。
つぐみの手助けがあったとはいえ、珠里阿も美海もそれらに真っ向から立ち向かい、克服してみせるのである。超克、と言っていいくらいに乗り越えてみせたのだ。それは役者としての成長という以上に、人としての一皮剥けたなんてレベルじゃない成長であり覚醒であったのでした。
……いや待って、あのね、まだ6歳の時点でこんな人生の壁超えちゃったら、人間として出来上がって立派になってしまったら、思春期とかどうなるんですか? まだ10歳にもなってないのよ? 超人か? 完璧超人の誕生か? まだ小学校一年生になったか、というくらいでこの人格面での仕上がりだと、小学校の高学年とか中学生とか高校生とか、どうなっちゃうんでしょう。
想像するだけで、なんか変な笑いが浮かんできてしまうのですけどw

……つぐみ、確かに他者への影響力がヤバいわ。これ、また鶫のようにつぐみが途中でどうにかなってしまったら、この子役の子たちの精神面、えらいことになってしまいそう。

そんな「つぐみ」の本質を本当の意味で見抜いているのは、どうやら夜旗兄妹だけっぽいんですよね。感覚で捉えている、というべきか。面白いことに、「つぐみ」が抱えている違和を、つぐみ本人も自覚していないということ。それを、この兄妹はどうにもはっきりと感じとっているようなんですよね。
この二人こそが本物の天才、ということなのか。つぐみは自分でも語っているように、あくまで努力型であり、前世の鶫の遺産を受け継いでいるからこその現在の天才性、でもあるわけですしね。
虹が感じているつぐみのチグハグさ、というのを読者の側である自分も未だによくわからないのだけれど、どうにもつぐみの中で「つぐみ」と「鶫」が完全に同化していない、ということなのか。ふとした瞬間に一人ではなく二人を感じる場面が、ちらほらと見受けられるのも確かな話。
もっとも、その微かな分裂がどうなれば正解なのかもわからないのだけれど。完全に同化してしまえばいいのか、或いはどちらかが主導権を握れば良いのか。片方を消し去ってしまえばいいのか。
いずれにしても、まだつぐみ自身自覚がないだけに彼女自身がそのあたり把握しないとどうにもならないか。どうやら虹との演技勝負で「引き出された」そうなんだけど……何が引っ張り出されたのか。
「鶫」に執着する人たちの不穏な影が見えてきて、展開も面白くなってきましたけれど、やはり同じ演者や撮影班みんなを魅了し引き込み「世界」を創り上げてしまう空星つぐみのこのゾッとするような演技空間、やはりインパクトがすごい。読んでるこっちまで引き込まれそうで、ゾクゾクさせられました。くぅぅ、おもしろい、面白かったぞ!!







異世界迷宮の最深部を目指そう 15 ★★★★☆  



【異世界迷宮の最深部を目指そう 15】  割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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立ち上る火柱を視認し、ラスティアラたちの安否を確認するべく地下街に向かったカナミ。
そこで目にしたのは、捕縛から抜け出したノスフィーによって『素直』にさせられ、仲間内で争うラスティアラたちの姿だった。
すぐに加勢しようとするが、ラスティアラに制止され……!?
ノスフィーとの決着をつけるため、ラグネが持ち込んだ触媒で過去視を行ったカナミは、いかにして彼女の在り方が形成されたかを知る。
さらに未来視でフーズヤーズ城を支配したカナミは、ついにノスフィーと対峙し――。
そして、『彼女』とどこまでも落ちていく。

今もパーティーの中核をなすこのヒロインたちが一堂に会したのは7巻でしたか。あの時はリヴィングレジェンド号でカナミが常に死を感じるくらいヒロイン同士がギスギスして火花が飛び散り、ちょっとでも燃料が投下されたら即座に爆発炎上して地獄が現出してしまうような修羅場でした。
そうかこれが常在戦場! と悟りを開いてしまうくらいの殺伐とした空気でした。カナミ、わりとすぐに刺されるだろうなー、血みどろの惨劇はいつ起きるかなー? という雰囲気だったのも今は昔、なんですよね。
いや、実際カナミってば結構ザクザクと切り刻まれて血みどろになりましたけれど、厳密には女性関係を拗らせて刺されたのではなくて、千年前の所業がもとになって攻撃されるパターンが大半だったはずなので、自業自得ではありますけれどヒロイン衆が妄念を拗らせて殺しにかかったケースには結局行き当たらなかったんですよね。
あの極めつけのヤンデレが揃いも揃ってしまった地獄のパーティーが、よくぞまあ。
そして今回、ノスフィの能力によって強制的に各々の奥底に秘めていた病んだ部分を引き出されてしまったにも関わらず、ラスティアラの邁進によって全部彼女たちヒロイン同士でしっかり話し合って気持ちを通じあわせて病んだ部分を解消、もしくはそのまま受け入れる形で地上最強の絆で結ばれてしまうのである。
むしろ、カナミは居るだけ邪魔、やることなすこと邪魔! 邪魔してばっかり! になってしまっていた有様だったのである。感慨深いじゃないですか。人の話を全然聞かずに自己完結してカナミだけに執着していたヤンデレヒロインたちが、カナミ関係なしにメンタル薄弱な部分を克服して自分たち同士でぶつかり合い胸襟を開けあって、理解しあい認め合い心寄せ合って、今や親友、今や運命共同体。共に行き共に死す仲間として、同じ人を愛し恋した同志として、手を取り合い頬を寄せ合い額を合わせて満面の笑みを浮かべる関係になったのである。いや、なったんじゃなく、ラスティアラを中心として、そして各々の克己心によって、そういう関係を自分たちで築き上げたのである。
本心から、すげえなあ、と感心させられてしまいました。ここまでヒロインたちがしっかりと自立して自分たちだけで関係を築き直したケースはちょっと見たことがないですよ。
主人公がそれを阻害しまくってたパターンもw
いや、いつの間にか話を全然聞かないのってヒロインたちじゃなくて、カナミの側になってたんだなあ、と気付かされてしまう。いや、カナミは視野狭窄になっててもちゃんと自力で気づくし、而今完結してしまわずに、ライナーをはじめとして話を聞いて考えを改めることができる、そういう風に成長した主人公なので、話を聞かない、なんて事はないのだけれど。
でもだからこそ、カナミはそれだけ成長した、と思っていただけに読者側もカナミ自身もいつの間にか考え方捉え方見方が偏ってしまっていた事に気づかなかった、というのもあるんですよね。
……何度も何度も思い知らされるけど、ライナーはこういうときでも外側から冷静な視点でカナミを掣肘してくれるので、ほんと助かりますわ。彼が居てくれるだけでどれだけ道踏み外しかねない判断や思考を食い止めてくれたか。
ともあれ、今回の視野狭窄はカナミの人間的な欠陥というよりも明らかに仕込まれたものっぽかったので、カナミ自身なんか自分おかしくなっていると自覚してますし、彼が悪いというわけではないみたいなのですけれど。

まあ、千年前にやらかした事に関してはどうやったってカナミあうと、ですよね。カナミが悪い。
ノスフィーがねえ。いやうん、まさかここまで並外れてイイ子だとは思わなかった。悪い子じゃない、という風には今までの感触で納得はしていたんですけれど、ここまでこんなイイ子だとは想像できませんよ。むちゃくちゃイイ子じゃないですか。善良の結晶であり、健気の塊じゃないですか。
なるほど、元妻、という肩書にも意識が引っ張られていたのでしょう。その素性が本来なら妻じゃなくて、娘。しかも、ずっと父親に焦がれていた子となればなおさらに……。
もう完全無欠にイイ子でしかないイイ子が必死に悪いことしようと頑張っているものだから、そりゃ行動がどこかちぐはぐになりますよね。凄く悪意をもってカナミを狙い撃ちに彼を陥れる、苦しめるようなことを企てているにも関わらず、結果見ると妙に良い結果に終わったり誰かが救われてたり、報われてたり、助けられてたりして、なんかここしばらく物事の巡りが良いような感じがしてて、凄く違和感たっぷりだったんですよね。カナミがなにかすると大概悪いことになったりケチがついたりする印象だっただけに、妙に居心地わるくすらあったのですが。そうかー、ノスフィーが悪いことにしきれなくて、ついついみんなが助かったりするように着地点を変更しちゃってたのかー。
……いい子すぎるッ(思わず両手で顔を覆って
そんな頑張っても頑張っても悪堕ちしきれないこの善良無垢な子を、それでも悪者にならねば、と追い込んだ元凶こそが、千年前のカナミであったわけで。
もう死ねばいいんじゃないかな、こいつ。現在のカナミが黒歴史どころじゃない自分のアレっぷりに怖気づいてヘタレてしまうのも、ちょっと仕方ないなあ、と同情してしまうほどの、あの無神経っぷりはここまで来ると凄いなあ、としか言えない。正直、間が悪かったとも言えなくもないのだけど、ノスフィの健気さを思うとそれをこれでもかこれでもかとクリティカル連発でピンポイントに踏み躙ったカナミの所業は、言い訳しようがないんですよね。どう考えてもお前が悪い。
そこで最大限これ以上無いくらい覚悟決めて完膚なきまでに謝ってみせるところは、カナミえらいと思いますよ、素直に。極端に走りすぎ! と思わないでもないんだけど、ノスフィが拗らされた状態がそこまで極端に走らないと言葉も気持ちも届かないまでにグリグリ踏み躙られっちゃってるんだから、仕方ないよね、としか言えない。正しい極端であった、と言えるのかも知れない。多分、あれこそが正解だったのでしょう。
取り敢えず、修羅場を越えて一致団結したカナミパーティーが、一人ひとり意味不明な強さすぎてそれが一堂に襲ってくるとか、魔王軍総攻撃かな? というくらいのスケールなんですけど。この娘ら、しがらみとか要らん拘りとか全部放り出して最適化した協働したら、ここまで分けわからんレベルの集団になってしまうのか。
いやこれもう無敵じゃん。と、凄まじい安心感に後ろ支えられつつ、一番の難関であった対ノスフィ。これは戦って倒すという方向性には行かない時点で、無敵無双の強さは意味をなさず、だからこそ最難関だろうという壁の高さを感じていただけに、うん、それを乗り越えることこそがこの巻の山場だと思っていたわけだ。あくまで、山場……峠であって、まさか分水嶺だとは思っていなかったし予想もしていなかった。
いやこれどうすんの!?
途中で散々、カナミと似た者同士と言ってたの、こんな形で放り込んでくるとは思わないじゃないですか。そうだよね、カナミと同類項、同じ穴のムジナ、似た者同士なら……そいつはカナミと同じ「人間のクズ」にカテゴライズされる側だった、とも言えるのか。
どうなるんだこれ? さすがに驚天動地の展開過ぎますよ!? ……まあ、次の瞬間普通に何事もなかったかのように動き出しても不思議ではないブキミさというか得体のしれ無さというか、化け物感がこの人にはつきまとっているのも確かなのですが。
むしろ、いついきなり目をぱっちり開いて喋りだすか、ホラー感覚でずっとハラハラドキドキしていた自分がいるのも確かでありますw


転生王女と天才令嬢の魔法革命 3 ★★★★☆   



【転生王女と天才令嬢の魔法革命 3】  鴉 ぴえろ/きさらぎ ゆり 富士見ファンタジア文庫

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転生王女と天才令嬢は今、二人の未来のために向かい合う。

アニスフィアが王になる。姉弟喧嘩から狂いだした歯車。疲弊していく王女を隣で見続けたユフィリアは、彼女のため一つの決意をする。だが、それこそがアニスフィアにとって譲れない一線で――

前回、アルくんに言って聞かせて全部空回りしてしまった説得が、今度アニスが次期国王となってしまった事でそのまま返ってきてしまった感がある。彼女は弟に諭しこう語った。人生を楽しめばよかったのだと。
でも今、王にならんとするアニスはそれを楽しめただろうか。
彼女が身体を張って止めようとしたアルによる既存の社会の破壊。それを彼女は自分が王になることによって、自ら行うことになってしまった。それは魔法を使えない身と貴族の存在を無にする革新たる魔学を伴う以上、逃れられない必然だ。アニス自身が既存の社会の在り方を破壊する存在である以上、彼女が王となるということは既存の社会の否定になってしまう。しかし、王の成りてが他にいない以上、選択肢は存在しない。父たる国王は緩やかな変革を諦め、アニスは覚悟を決めた。
アルが叫んでいたじゃないか。魔法は呪いだ、と。国王となることは生贄になることだ、と。
今、アニスが王になるということは、アルとは形が違うとは言え国の生贄になるということ。彼女の自由が失われてしまうということ。彼女が憧れ追い求め続けた魔法は、きっとアニスにとっての呪いになるだろう。
アニスは立派な王になるだろう。反発から多くの血が流れ破壊が伴い国の在り方は変わり、しかし彼女はやり遂げるだろう。
でも、そこにアニスの笑顔はない。アニスの幸せはない。
人生を楽しめ? かつてアニスがアルに語った言葉だ。それを今、彼女は自分に告げることが出来るだろうか。言われて、それを受け入れられるだろうか。きっと、絶望に嗤うに違いない。

この巻では、弟に替わって王座を継ぐことになったアニスの心情が深く深く語られている。
彼女がいかに自分を殺し、王になる覚悟を決めたのかを。
そして、そんな無理を重ねて本当の自分を仮面で塗り固めていくアニスを目の当たりにして、打ちのめされていくユフィの無力感を。
ユフィは、アニスとアルの姉と弟の衝突に際して、結局大したことは何も出来ないままだったんですよね。傍観者とまでは言わないまでも、彼女としては何も出来ないままだった、と思う所は強かったでしょう。アルがああいう結末を迎えてしまった理由の一旦は自分にある、という自責も募っていた。
そこに、アニスがアルと同じ繰り返しになろうとしている、二の舞になろうとしているのを前にして、再び突きつけられるのである。正しい貴族としては、そんなアニスを支持して支えなければならない、という事実に。国のため、アニスには立派な王になってもらわなければならない、と彼女が受けた教育が物語っている。でもそんな正しさが、アルを潰してしまった。アニスを傷つけてきた。今更に、あの太陽のような姫の輝きが失われようとしている。アニス女王が国を照らす代わりに、アニス自身の輝きは曇り果ててしまうだろう確信がある。それを再び傍観しようというのか。
葛藤する、苦悩する、現実は揺るぎもせず選択肢の無さを突きつけてくる。
ここでユフィもアニスも、自分の本心と、感情とこれでもかというくらいとことん向き合うことになるんですね。義務や責務、仕方ないという諦めの向こうに押し殺した本当の気持ちと。
これ、本当に作者である書き手が登場人物たるアニスやユフィの心情と本気で向き合った結果だと思うんですよ。複雑で時に矛盾していて相克しているもどかしいくらい揺れる剥き出しの感情が、ぶちまけるように書き殴られていくのである。それは、アニスとユフィが本音でぶつかり合うことで、さらに加速していく。衝突してぶつかってぶつかって、気持ちをぶつけ合うことでその更に奥の思いを暴き出し、掻き出して、掘り出して、剥き出しにしていくのである。
それは、書き手側から与えられた、被せられた、着せられたものではあり得ない生々しい感情なんですよね。キャラクターに問いかけて問いかけて、様々な方向からアプローチして探って確かめて返ってくる反応を拾って、かき集めて、そうして形にしていったもの。
どうして? どうしてそんな風に思うの? どうしてそんな風に行動していたの? なんでそんな事を言ったの? なんでその人にそんな素振りを見せたの? そうやって問いかけて問い詰めて、心のウチを確かめていく作業。断片を分析し、そのキャラクターそのものをバラバラにして解体して、明らかにしていく作業。曖昧模糊として形にならないものを、丁寧に磨いて磨いて、言葉にしていく作業。文章にしていく作業。それは深い深い水の底に息を止めて潜っていくような、苦しくて辛くて、気が遠くなるような作業だ。でもそれによって聞こえてくるのは、そのキャラクターの生の声。与えられたセリフではない、そのキャラの境遇、性格、歩んできた人生、積み重ねてきた経験、周りの人達との人間関係。そういった複雑で重厚に入り組んだ構成の奥底で育まれたものを汲み出した、本物のそのキャラの声だ。叫びだ。
アニスの悲鳴も、ユフィの祈りも、王妃の涙も、確かのその人の心からの声なのだ。
よくぞここまで、と思えるほどの心情描写でした。生の声だからこそ、ダイレクトに心を叩いてくる。こんなにガンガン叩かれたら、痛いですよ、熱いですよ。辛さも苦しさも悲しさももどかしさも、全部ダイレクトに伝わってくる。
よくぞ、ここまで描いたものです。キャラクターに向き合ったものです。剥き出しになるまで、掘り下げて掘り起こしたものです。
凄かった。
いやもう、アニスにしてもユフィにしても、気持ちが器を満たしきってしまって、ダバダバと溢れかえってしまったのは嫌というほどわかってしまったので、ユフィがアニスに対してああなってしまったのも、なんかもう仕方ないと言うか当然というか必然に思えてしまいました。あそこまで感情を注いでしまったら、もう性別とか関係ないですよね。ユフィの方、なんかこう染まってしまったというか、塗り替わってしまったというか。決め込んでしまった分、食らう側になってしまった感がありますが。これ、攻守完全に交代しちゃってますよね。

話的にはここで最終回でもおかしくないくらいだったのですが、一部終了という形で二部以降も続けていくつもりみたいなんですが……そうなったらなったで、何を見せられることになるんだろう。
それが怖くもあり楽しみでもあり……。


 
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