徒然雑記

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★★★★

異世界迷宮の最深部を目指そう 16 ★★★★   



【異世界迷宮の最深部を目指そう 16】  割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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――祝福の産声。

――HP0。
相川渦波は死んだ(・・・)。
世界の『一番』は『星の理を盗むもの』ラグネ・カイクヲラ。カナミの肉体はラグネが所持し、彼女に付き従うは『血の理を盗むもの』ファフナー。
……それでも。
『光の理を盗むもの』ノスフィーはそれでも誓う。
人生の全てを『代償』として本当の『魔法』に至り、『お父様(カナミ)』を生き返らせるために。
ノスフィーはカナミの肉体を奪還するべく、ラスティアラたちとフーズヤーズ城突入作戦を開始する――。
全てはこの光満ちる『頂上』で、産声をあげるために。

相変わらず登場人物の殆どが躁か鬱のどちらかに極振りしてるなー。どん底まで落ち込んで病み憑かれるか、真実に目覚めてテンションマックスではっちゃけるか。シーソーみたいにどちらかに極振っていずれにしてもメンタル目一杯になっている。毎回誰かに、落ち着けッオチツケッ、と思ってしまうんですよね。
ほんと、いつも冷静なライナーと精神的にリソースの余裕を抱えているリーパーは重要な要という以上に読んでる方としても癒やしですわ。これも毎回言ってるような気がするなあ。
でも、まさかついに裏切り本性を見せてこれまでの謀の主、黒幕として立ち上がったラグネちゃんが、やってやったぜーー!! ついにカミナを殺してやったぜー! というヒャッハー状態からいきなり速攻で鬱モードに入るとは思わんじゃないですか。
なんでラスボス格として立ち上がった敵キャラが、突然情緒不安定になってネガまっしぐらになっちゃうんですか!w
いやそれも「理を盗むもの」になってしまった弊害、というのもあるのでしょうけれど。ラグネちゃん自身、自己制御出来ないほどに情緒不安定になっていく自分の有様に、これまでの「理を盗むもの」たちと同根のものを感じていたようですけれど。
それでも、「理を盗むもの」になる資格がラグネちゃんにあったということなんでしょうけれど。未練、というよりも自覚だよなあ。
自分の本当に求めるものを見つけよ。
その意味では、敵として立ってはじめて、ラグネちゃんはその中身を解体されたのだ。一つ一つ丁寧に腑分けして、その内側をさらけ出された。選り分けて取り出して裏返して、それらすべてに光を当てて、自己で偽っていたものも騙していたものも無視していた矛盾も、照らし出されてしまった。
今回のノスフィーの光は、彼女がなろうとした魔法は、ノスフィー自身を照らし出し、彼女が本当に求めていた父親を、カナミを照らし出し、その鏡写しとなるくらい似通った存在であったラグネちゃんのすべてを照らし出してしまった。
本当に、全部照らし出してしまった。
カナミも、ラグネちゃんも、もう自分を誤魔化すことも騙すことも出来なくなってしまった。自分のどうしようもなさを、情けなさを、愚かさを、これでもかと突きつけられ、目の前にいるのはそんな憎むべき自分の鏡写し。八つ当たりとしてぶん殴るには、最適最上に一品だ。
その発散の大小をノスフィーに支払わせる、というところまで込みで最高の自己嫌悪をもたらしてくれる。近親憎悪をもたらしてくれる。
それを、お前のせいだ、とぶつけられる事はきっと、彼らが前に進むためには必要……かどうかはわからないけれど、効果的なものだったのだろう。決闘だったのだろう。ノスフィーにとっては大満足で、カナミとラグネちゃんとしては最悪最低のこととして。
いずれにしても、ケリはつけなきゃいけなかった。清算だ。

一方でノスフィーは、自分が成すべきを見つけ、在るべき形を見つけ、あとは光のようにまっしぐらに進むだけ。カナミの妻を名乗って現れたノスフィーだったけれど、そうあらんと振る舞い続けた彼女だけれど、ようやくカナミに対して自分が欲したあるべき形を見つけられたんですよね。
本質的に、ノスフィーはどうやったってカナミの妻ではなく、娘だった。娘として父を慕い愛しながら、しかし立場として妻となりその在り方に殉じようとしたが故の矛盾であり迷走であり苦悩であった。それが解消され、迷いが晴れ、自分の想いの方向性が定まった時、ようやく彼女の光は彼女自身をも照らし出すことが出来たのだろう。
彼女の光の本質は刺し貫くことではなく、優しく包み込むものだったのだろう。淡く暖かな光の雨、今回の表紙がそのようにノスフィーの光を表現しているかのようだった。
その光はラグネちゃんをも受け入れて、ラグネは確かにノスフィーの光に救われたのだ。
しかし優しくも厳しいノスフィーの光は、すべての偽りをさらけ出してしまった。光は、闇のように包み込んだまま眠らせてはくれない。それは朝の目覚めの光であり、指し示し進むを促す導べであった。
ラグネの過去を暴き立て、その野望と信念の欺瞞を浮き彫りにし、彼女の心を解体した。本当の想いを照らし出した。その対面として、親和としてカナミの過去もまたラグネという第三者の目からもう一度映されたのだけれど、まさかここまで無造作にカナミの過去に巣食った違和を引っ張り出すとは思わなかった。
ここまで率直に、大胆に、その現況を指し示すとは思わなかった。
本当のラスボスの存在を、ノスフィーの光は照らし出したのだ。それを、カナミに直視させたのだ。
この認めざる存在を、果たしてどうやってカナミに認めさせるのか、長く疑問に思っていたのだけれど、ノスフィーとラグネという二人の「家族」のお陰というのがまた……辛辣なのか心強いというべきなのか。いずれにしても、相応しい理由であり原動力と成り得るものだったように思います。

そして物語は、ついに核心へ。


婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~ 2 ★★★★  



【婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~ 2】  ふか田 さめたろう/みわべ さくら PASH! ブックス

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魔法使いアレンとお尋ね者の令嬢シャーロットは今日も健全にイケナイことに邁進中!
だけどふとしたシャーロットの仕草に、言動に、アレンは心臓のドキドキが止まらない。
やはり俺は、シャーロットのことを好いているのか……?
それは本当にいけないことだ——

そんななか一行はアレンの古巣・アテナ魔法学院に向かう。シャーロットの妹・ナタリアが密かに留学中らしいのだが、なにやら問題が発生しているようで?

想いが爆発寸前なアレンと、輝く笑顔を見せるようになったシャーロットのめくるめくイケナイ毎日、第2巻!

判断がはやーーいっ!! ふとしたきっかけで、シャーロットへの温かい気持ちが保護者のものではなく、彼女への恋だと自覚したアレン。ここでグダグダとくだらないことで悩まないのがこの大魔王のいいところ。
即断即決、即行動の男である。
ここで自分には資格がないとか彼女の幸せを考えると、などとうだうだする男も多い中で、彼は自分の気持ちに一切嘘をつかない。色んな意味で正直すぎて偽らずにガンガンやりまくった挙げ句が、魔王呼ばわり。むしろ、誇らしげに魔王では物足りないから大魔王と呼ぶがいいッ、と言い放つ男である。そんな無駄で無意味な回り道などで貴重な時間を浪費しないのである。
ここまで自分に正直で居られる、というのはむしろ凄い精神力であると思うんですけどね。
シャーロットには幸せになってほしい。でも、願わくば彼女を幸せにするのは自分でありたい、そんな我欲を清々しいまでに真摯に思える彼は、実にカッコいいですよ。
それに、考えなしに行動するわけじゃなく、ちゃんと周囲に相談もして準備を整える理性も備えているあたり、隙はなし。なんで、シャーロット・ファンクラブとも言うべき街の輩なおにーさんたちにわざわざ相談に行くのか、相談相手間違えてないか? と思わないでもないけど。いや、ある意味義理を通しにいったとも言えるので、それもまた男前なんだよなあ。
おにーさん方と同じく、いつまでもはっきりしない関係のままイチャイチャし続けるんじゃないか、と思ってたんですけどねえ。その辺はっきりした主人公を描くのは、この作者さんとしては慣れたものなのでしょう。
GA文庫の【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく】の作者さんでもありますしねえ。

しかし、恋を自覚してしまうということはシャーロットの外見的性格的な究極的可愛さを保護者目線なんていうフィルターを通さず、ダイレクトに受領するということ。
毎秒更新でシャーロットの可愛さに貫かれてのたうち回るアレンの姿をご愁傷さまというべきか、ごちそうさまというべきか。仕方ないよね、シャーロットかわいいもんね。
うちの娘がかわいい、からうちの彼女が可愛いにバージョンアップしてしまった以上、常に致死量の可愛さ成分で血を吐く大魔王は、毎秒爆発しろ。
シャーロットとお付き合いをはじめて浮かれっぱなしのアレン、ひたすらデレデレしてたな、この男。

と、これだけシャーロットの身辺も安定して、メンタルの方もアレンが全面的に引き受けることで最初の頃のような虚無や諦観も消え去り、本当に幸せそうに笑うようになってくれた。
あとは、残る懸念を解消していくばかり。幸いにしてシャーロットにかけられた指名手配の方は、アレンと住むこの街ではもうシャーロットの人となりが知れ渡り、むしろ街中がファンクラブみたいになっているのでもうコソコソと変装したり隠れたりする必要もなくなってきた。
とはいえ、彼女を苦しめ貶めた実家や故郷の国の問題はまだまだ解消されず、放置されたままなんですよね。なにやら、あちらはより闇を深めているというか泥沼に陥っている様子が、アレンの情報網に引っかかってくるのだけれど。
それよりも、まずシャーロットが実家で唯一好意をもって接してくれていた妹のナタリアが今どうしているのか、というのがシャーロットの心残りだったんですね。
ナタリア、妹なんだけれどまだ7歳……って、結構年離れてたんだ。それだけ幼い娘が周りの空気に流されずに、シャーロットを慕って彼女を庇う姿勢すら見えていた、というのはそれだけ意思の強い娘でもあったのだろう。
それがシャーロットの失踪と指名手配である。どんな想いでいなくなった姉の事を思っているのかと思ったら……グレてたw
わずか7歳でひとりアレンの古巣である魔法学院に留学という形で放り出されて、寂しい想いをしているどころかそこではぐれものたちの希望の星になり、派閥を立ち上げて女親分として姉御肌全開でカリスマになってるの、年齢設定間違えてないですか?
やたらと周りの人に慕われ好かれる、というのはシャーロットの妹らしい人徳とカリスマ性なんだけれど、その方向性が親分肌姉御肌というのはお姉さまとかなり傾向違いますよねw
むしろ、大魔王アレンの系譜なんじゃないだろうか。シャーロットが出奔するまではそこまで我が強い様子はなかったそうなのだけれど……グレたのか。
ヒロインの妹登場、なんてなると恋のライバルにもなりかねないのですが、さすがに7歳というのは範囲外でしょうし、それも考慮しての7歳という年齢だったのかもしれません。
ラブコメとしては、アレンとシャーロットは不動のカップルとして揺るぎなく君臨しそうですしね。

滞りなく恋人関係にまで行き着いてしまった本作のメインのお二人ですけれど、甘酸っぱくもテンポのよいストーリー展開の勢いは、甘ったるさよりもピチピチと弾けるような活きの良さを感じさせてくれるラブコメで、このスピード感は心地よいものがありました。
次はシャーロットの実家へと乗り込んでくれるのでしょうか。アレンの言動はいちいちスカッとさせてくれるので、素直に楽しみです。



シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 ★★★★   



【シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱】  高殿円/雪広うたこ ハヤカワ文庫JA

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2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!
登場人物全員女性! 高殿さんの作品はもっとガンガン読みたいんだけれど、なかなかタイミングがなかったんだけれど、いざ読み出すとめちゃくちゃ面白くてサクサク読めてしまうので、まずページさえ開けばいいんだよなあ。

冒頭からアフガン紛争帰りの軍医ジョー・ワトソンの登場で引き込まれてしまう。本来のワトソン君もアフガン戦争帰りの軍医だったのに、舞台が現代になっても変わらずアフガンに首突っ込んでるイギリスになんだかなあ、という気持ちになる。まあ、現代のアフガン紛争は9.11を端緒にはじまった対テロ戦争の一貫でアメリカ主導だったんだけれど。でも、巡り巡ってそもそもこの地域の紛争がはじまった原因はイギリスだからな!
というわけで、時代背景はがっつり現代。2012年のロンドンオリンピックが開催されている真っ盛りの頃。それでももう10年前になるのだが。
高殿先生、めっちゃロンドンに取材にいっている上に短期だけれど実際に旅行じゃなくて住んだりもしてたんじゃなかったっけか。それだけに、ロンドンの情景描写にはリアルな色彩と息遣い、そして生活感を感じさせるものがあって、眼に心地よい。
とはいえ、ワトソンちゃん、戦地から帰って早々就活に失敗して引きこもるわ、金なくて住む所もなくて、モルグ……病院の死体置き場に勝手に潜り込んで、死体袋を寝袋代わりにして宿代わりにする、というすげえことを平然とやらかしてくれるのだが、そこで図らずも同じく死体袋に入って仮眠を取っていたシャーリー・ホームズと運命の出会いをかますのでありました。
出会いの絵面が酷いなんてもんじゃないんですがw
ホームズシリーズのワトソン君と言えば、凡人の聞き役として頭脳明晰なるホームズ氏の推理に実にわかりやすい反駁と疑問を呈してくれる狂言回しの王様みたいな存在で、この作品におけるワトソン女史も普段のホームズの奇行に苦言をていして常識を諭したり、事件の推理パートに際してはわかりやすい答えにとびついて、と実にワトソンしているワトソンなのである。見事なワトソンっぷり、と言っていいでしょう。
しかし、彼女が平凡か、凡人か、というと……実際の所シャーリー・ホームズに勝るとも劣らない奇人なんじゃ、と疑ってしまうんですよね。ダメンズ趣味なのを除いても。
いや、その前に物語の主役であるシャーリー・ホームズを語らねばなるまい。
自分には心がない、と語る彼女は、胸に人工の心臓が埋め込まれた半機械化人間である……いや、マジで。ただ心臓疾患で人工心臓を胸に埋め込んでいる、というだけならアンドロイド呼ばわりはしないのだけれど、彼女の場合その心臓がどうにも特別性である上に、ネットワークと繋がりミセス・ハドソンというAIと連携していたりするんですね。
ハドソン夫人が人間じゃないんですけど! というのもアレなんですが、シャーリーの電脳との繋がりっぷりが、2012年が舞台なのに一人だけ攻殻機動隊!
ハドソン夫人も「Hey Siri!」とかでは済まない異様に高度なAIですし。ちゃんと元のハドソン夫人という人間は居たらしく、亡くなった彼女の人格モデルを用いているAIらしいのですが、いずれにしてもシャーリーってばホログラムとか普通に使ってるし、技術レベルがひとりだけ100年単位でおかしくないですか? という様相なんですよね。
ワトソン、なんで気にしてないんだ? なんかもうそういうものなんだ、とさらっと受け流しているのですが、彼女の受容力ってちょっと異様なんですよね。
シャーリーのどこかロボットじみた非人間的な挙動、停滞した感情、絶世の美貌が余計に人形めいた雰囲気を増しましているところなど、最初の頃こそシャーリーの異様さがワトソンの目を通じて浮き彫りになるのですけれど。
ワトソンとのシェアハウス生活の中で、一見してわかりにくい中でシャーリーは実は結構表情が動いていたり、感情的な部分が見え隠れしてくるんですね。家族……姉の突拍子のなさに振り回され、自分に与えられた役割に頑ななほどに拘る意地の張り方、そして自分の存在意義、生きる価値についての苦悩など、シャーリーの人間性、人間臭い部分は後半に行くほど顕著に見えてくるのである。
んで、面白いことに逆に平凡な人間に見えたワトソンの異様さがチラチラと見えてくるんですね。その人生の岐路に、いつも男の影がある、男運の悪い要領も悪いお人好しのハーレクイン好きの医者崩れ、というわりとダメっぽい女性という姿の奥底に、シャーリーと普通に友人として付き合えている、シャーリーを取り巻く異常な環境を特に気にせず受け入れて何の隔たりもなく一緒に暮らしている、という所からなにやらワトソンという女性の得体のしれなさが垣間見えてくるんですね。
それは、彼女のアフガン紛争での戦地での経歴が明らかになった時に、はっきりと突きつけられるのである。
いや、ジョー・ワトソンのアフガン時代のプロフィールがちらっと開示された時の、あのゾッとするような感覚は忘れられない。アフガンでなにやってたんだ、このワトソン女史!? そして、なんで平然とした顔でロンドンに戻ってきてるんだ?
巻末の中編で、シャーリーの姉がワトソンの人となりを危惧して個人的に喚び出して面談したその気持も、その危惧も、ワトソンという女性の中にある異様さを見せられると、わからなくもないんですよね。
そんな姉に呼び出されたワトソンを、めっちゃ心配するシャーリーが可愛いのですが。あの姉のちょっとやべえくらいの変態っぷり、人間として明らかに踏み外している人格を身内としてこれ以上無く思い知っていたら、そりゃ心配だわなあ。ジョー・ワトソンが喰われちゃうッ!(性的に)と焦りまくるシャーリーは十分以上に人間らしくて、可愛かったです。
個人的に、シャーリーって妹属性強いし、ワトソンからも普段からよくお世話されているのを見ると、妹属性強い感じがして、イメージとしてはチンマイ容姿を連想してしまうのですが、実際はワトソンよりも背が高い女性としては長身のスラリとしたスタイルなんですよね(ブラはしなさい)。
イメージはメチャクチャ綺麗だけれどちびっ子、なんだけどなあ。

っと、事件の方はシャーロック・ホームズ最初の事件である「緋色の研究」のシナリオとはだいぶ異なっていると思われる。主要人物が全員女性になっている、という事もあってかもちろん、刑事であるレストレード警部や被害者、犯人も全員女性となっている。てか、レストレード警部、ママさんデカなんですが。シングルマザーで、子供もいる中国系の切れ者刑事で、仕事が忙しい時はなんでか子供をシャーリーとジョーのアパートメントに預けていく、という最初からの親密さ。
まあそれはそれとして、事件の方は殺害方法がわからない、被害者たちの共通点がわからない、という謎の連続殺人事件。そもそも殺人なのか、それも連続殺人なのかすらわからない状況で、にも関わらず連続殺人事件じゃないかと想定して動いていたスコットランドヤードは素直に優秀なんじゃないか、と思う。被害者の全員が女性ということもあるのだけれど、様々な意味で女性的な事件であり真相であったと言える。これ、解決側が男だったらなかなか平静な顔して推理とかしにくかったんじゃないだろうか。
と、本作の注目点はこの連続殺人事件が単発の事件ではなく、最初から某教授が絡んでいた、という所なんですよね。宿命の敵は、既にシャーリー・ホームズと運命の糸によって結ばれているのである。そして、その運命に対して、シャーリーは決して超然としていられない。彼女は真実に怯え、IFに苦悩し、正義を果たすことが正しいのか迷い果てている。
そんな彼女を、ジョー・ワトソンは傍らで見守ることになる。果たしてジョーは、シャーリーの友人で居られるのか。その異様な受容性は、彼女たちを救うのか突き落とすのか。
いずれにしてもこの物語において、ライヘンバッハは既に約束された未来なのだ。

そこに至るまでに起こるだろう様々な物語が、シャーリーとジョーの冒険は想像するだに楽しみなんですけれど、まだ続刊一冊しか出てないんですよね。コロナが収まらないとロンドンを訪れることも難しいでしょうし、首を長くして待ちたいところです。その前にバスカヴィルを読まねばですが。


高殿円・作品感想

七つの魔剣が支配する ★★★★   



【七つの魔剣が支配する 察曄 ̄野 朴人/ミユキ ルリア  電撃文庫

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運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第7弾!

キンバリーの今後を左右する一大イベント、決闘リーグの開幕が迫る。三年生に進級し成長を見せるオリバーたちは、そのために三人一組のチームを組むことになった。同学年の中でも実力上位と目されるナナオらは、他チームから徹底的にマークされて厳しい戦いを強いられる。
一方で、例年以上に豪華な報酬と特殊なルールは、教師殺しの犯人を探すための教師陣の罠でもあった。さらに次期学生統括の座を巡る選挙戦もその影響を受け、駆け引きは激しさを増す。
そんな中、ユーリィが追いかけていた「骨抜き事件」の犯人、サイラス=リヴァーモアが動き出す。激動のキンバリーで、屍漁りの魔人は何を企むのか――。

決闘リーグというか、なんかアスレチック競争みたいな……そう、これってなんか大昔の大人気ゲーム「熱血硬派くにおくん」シリーズの「熱血大運動会」をちょっと思い出してしまったんだがw
それはともかくとして、キンバリーの生徒たちが一年生を除いて各学年が全部参加する決闘リーグというイベントが開幕。図らずも次回生徒会選挙の行く先を占う代理戦争、派閥戦の様相をも内包するイベントになってきたのだけれど、それはそれとしてオリバーたちもそれぞれ三人一組のパーティーを作って参加することに。いつもなら、剣花団の6人が3人ずつに別れてパーティーを編成するんだろうけれど、ミシェーラが家の事情もあってステイシーとフェイと組むことに。家の事情とか関係なく、かつて揉めてた従姉妹とこうして仲良く組めるようになったというのは素直に嬉しくなりますなあ。
また、カティとガイ、ピートが3人で組むことになったので、自然オリバーとナナオが前回登場したあの「探偵」ユーリィと組むことに。
剣花団では特に戦闘面ではまだまだ未熟のカティたちが、3人で頑張る、となったのは相変わらず向上心が高くて微笑ましくなる。未熟といっても最初の頃から成長著しく、それぞれの得意分野を順調に伸ばしているだけに、優勝候補のアンドリュー組といい勝負になっていて見ごたえある対戦でした。
アンドリュー、ロッシ、オルブライトの同年代ではオリバー、ナナオ、ミシェーラと並ぶ最強格の三人がチームを組んだのは面白いなあ、と。彼らも最初の頃は色々と能力的よりもむしろ人格的に甘いところや隙や油断、傲慢さが見られたものですけれど、そういった余計なものが削ぎ落とされてホントに強いキャラになりましたよね。アンドリューなんて話の転び方によっては噛ませ犬のまま小物落ちしそうな危ういポディションだったのに、見事に立て直して風格すらある強キャラになりましたし。
なんて、感慨深く思ってたらオリバーたちが戦うことになったバトルロイヤルの他の三組を率いるリーダー格含めた面々が、これまたモブとはとても思えない凄味を見せてくれることに。
いやマジでミストラル、リーベルト、それにメカクレ剣豪ことエイムズの三人にリーベルトチームの狙撃手カミラはこれまで名前を聞かなかったのが不思議というかありえないくらいの強キャラで、特にカミラの狙撃は戦闘中も神業の連発で背筋がゾクゾクするほど研ぎ澄まされたプロのお仕事だったんですよね。
そしてまさかのオリバーやナナオに比肩するほどの剣士だったジャスミン・エイムズ。あとがき読んでびっくりしたんですけれど、ミストラルやエイムズって前に読者から募集していた投稿キャラだったんですね。そうとはまるで想像できないくらい作り込まれたキャラクターに、主人公たちと対等に渡り合う能力以上にその個性と存在感が作者の手の内にあって、まさか投稿キャラとは思いませんよ。
オリバーやナナオの実力はこれまでに嫌というほど知らしめられているにも関わらず、静かに剣でなら渡り合えると自負する、おとなしそうに見えて結構強気でメンタルも動じない不動感があるキャラクターはまさに強キャラでしたよ。ナナオとは違うタイプの静の型の剣客という風格で。
実際、同年代ではまじで最強の一角に入るみたいですし、出番がここだけ、というにはあまりにももったいないので、せめてロッシくん並には今後も登場して活躍してほしいですね。

他の3チームが結託してオリバーのパーティーが集中的に狙われることになったバトルロイヤル。カマセ役とは程遠い練達の技、急造とは思えない巧みな連携、そして得意の分野では他の追随を許さない魔術の粋を見せてくる怒涛の攻勢を、ギリギリの瀬戸際でしのいで3チーム相手に渡り合うオリバーたち。躍動感あり、頭脳戦あり、詰将棋さながらの指し合いあり、と思っていた以上に読んでる側をぶん回してくる楽しさ満載の攻防で、いや満足の面白さでした。
これは観客も盛り上がっただろうなあ。見た目も派手でしたし、見応えたっぷりでしたよ。

まだまだ決闘リーグは開幕したばかり、とこんなガッツリと続く、になるとは思っていなかったのですが、ラストでイベントとは無関係の、以前から起こっていた骨抜き事件がイベントの最中に発生、その被害者があの人、ということでイベントの裏の意義でもある生徒会選挙にも影響が出そうな勢いなんですよね。
それよりも、犯人であるリヴァーモア先輩の目的がなんかヤバそうなのですが。またぞろ魔術の闇を覗き見る展開になりそう。

それはそれとして、先生がちょっと大暴れしすぎである。最上級生含むあの大多数相手でも無双するのか。お互い、殺し合いじゃないので切り札は切らないにしても、化け物しか残っていない上級生相手に、手も足も出させない、というのはさすがキンバリーの教師ということか。
ってか、これらを殺さなきゃならない、以前に二人すでに殺ってるのよねえ。
こんなん相手にしてたら、あと何人犠牲者が出るものやら。その犠牲者候補であるあの子を、成長譚のなかに組み込んでいるの、結果次第では邪悪極まるやりくちですよねえw

あと、今回オリバーたちと同じパーティーで戦ったユーリィ。今まで得体のしれないというか掴みどころのないキャラでいまいちどういうキャラなのかわからなかった所に、前巻の最後でその正体が明らかにされた事で、どういう取り扱いのキャラになるのかと思っていましたけれど。
結構、がっつりとオリバーとナナオのコンビにからめて一緒に戦うことになって、掘り下げたみたいな感じになってるんですよね。正体わかっているにも関わらず、なんか仲間感が出てきてしまったのとか、それこのやり口よw
こうなってくると、ユーリィは正体が明らかにされて底が知れた、のではなく与えられた役割に留まらない可能性を持ってるんじゃないか、と思いたくなってくるんですよね。無知の知であり真理に届くための存在だからこそ、本来の役割を越えた彼だけの発見、到達があって欲しいなあ、と。

なんにせよ、ストーリーとしては続く、になったので早い目に次巻が来てくれることを願うばかりです。6巻と7巻の間そこそこ空きましたしね。まあ、私自身7巻発売されてから読むまでちょっと間あいてしまいましたけど。って、9月にもう出るんだ。ありがたや。


やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4 ★★★★   



【やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく 4】 ふか田さめたろう/ふーみ GA文庫

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お互いの気持ちを確かめ合い、晴れて恋人同士となった小雪と直哉だが、恋人としての関係を意識して小雪は逆に固くなってしまう。
そんな折、小雪の許嫁として、イギリスからの留学生アーサーがやってくる。しかし彼は一緒にやってきた義妹のクレアと相思相愛だと見抜いた直哉。小雪との両想いぶりを見せつけることで許嫁として諦めさせ、クレアとの恋を成就させるべく立ち回ることに。
なかなか素直になれない二人をたきつけ見守りながら、自分たちの関係を省みる小雪と直哉は――
天邪鬼な美少女と、人の心が読める少年の、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ、第4弾。

ラブコメってラブコメディというだけあって、甘酸っぱい恋愛模様が描かれると同時に、それを明るく楽しくテンポよく、のコメディチックに描くジャンル、と言えます。
そのラブの部分に比重を置くのか、コメディの部分に重きを置くのはそれは作品それぞれで違ってくるのでしょうけれど、本作は特にこの「コメディ」としてのテンポの良さ、リズム感みたいなものが数あるラブコメ作品の中でももう突出してるんですよね。ある種、ラブコメの究極系として一つの完成を見たんじゃないか、と思ってしまうくらい、最初から最後まで見事なほど息切れの一切ない畳み掛けるような勢いと、展開の連なりの調和が取れた話の転がりかたになってるんですよね。
キャラクターの個性と押し出し、ストーリーラインのスムーズさも相まって、交響曲かという重奏さと軽妙さが合わさってる。
一言でいって、めちゃくちゃおもしろかった。
正直、小雪と直哉が両思いになることで、こんな以心伝心二人一組で物語そのものを牽引するユニットになるとは思ってなかったんですよね。読心能力かという能力持ちの直哉が、素直になれず本心を口にできないのにあっさり本心をぶっちゃけられて右往左往振り回される小雪、というのがこのシリーズのパターンでしたけれど、両思いになってもう開き直っちゃった小雪は、本心全部バレバレなのが当たり前という前提で直哉と付き合うようになってます。
じゃあ本心を素直に口にするようになったか、というとそうとも言えないあたりがまた小雪の可愛らしさなのですけれど、本心を読まれることを前提に物事を考え動くようになったものですから、もうこのカップル、完全に以心伝心になってしまって、二人して動く時一旦立ち止まって相談したり考えをすり合わせたり、というラグが全然なくなっちゃったんですよね。
なので、一切この二人の行動に淀みや停滞がなくなってしまったものですから、話の展開まで全く停滞がなくなって、直哉と小雪の邁進に合わせて話がどんどん進む進む。展開もどんどん転がる転がる。オマケに小雪もなんだか旦那に影響を受け始めたのか、やたらと察しがよくなってきている傾向があり、他の人の言動や思考を先読みするようになりはじめているんですよね。
それどころか、なんか直哉以外と会話する時一から十まで全部話す内容を口に出して話しながら話さないといけないので、なんか最近直哉以外との会話に面倒臭さを感じ始めている、という危険な兆候がw いやそれ、もう完全に直哉専用に調律されはじめてやしませんか? 大丈夫か? そのうち、他人とまともに会話できなくならないか?w

本来なら、徐々に明らかになってくるだろう新キャラクターである小雪の婚約者にして海外からの留学生、アーサーとクレアの事情も、空港で出迎えた初対面の時点で全部明らかになってしまったので、とにかく話が早い。直哉のみならず小雪まで加わって、ガンガンと話を進めていくものだから、余計なエピソードを挟む余地なく最大効率でアーサーとクレアの本心が暴かれていった上に、この兄妹完全に勢いのまま引きずり回されて、気がつけばお互い思いを秘めた両片思いだったのが想い通じ合っている、という怒涛の展開。いや、怒涛すぎるでしょう、RTA(リアルタイムアタック)かよ!
それでいて、直哉と小雪当人たちはというとよそのカップルにかまけて自分たちはどうなんだと言えば、僅かな暇さえあればひたすらイチャイチャ甘酸っぱい雰囲気を出してるのですから、余裕すら感じるダダ甘カップルっぷりでした。
いやー、ここまでしてくれるともうひたすら楽しいばかりでした。この直哉と小雪のカップルは延々見ていられそうですわ。

ちなみに、毎度巻末で繰り広げられる、直哉パパと小雪パパの世界を股にかけたトラブルバスターズも、これスピンオフで見てみたいくらいハッチャケてて面白いんですよねえ。

さて、次は直哉と小雪のカップル反対勢力の本命となる小雪のお祖父様が登場するのか。既に会ったら直哉相手に即陥落だよね、と皆の意見が一致しているあたり、まったく障害になりそうにないけれどw




ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七 ★★★★  



【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七】 秋田 みやび/しの とうこ 富士見L文庫

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芹が呪いを受けていた!? 原因を除くため、形代の式神・青竜が目覚める。

“北御門”が呪詛で狙われた廃遊園地の一件を切り抜け、大学でも新年度を迎えるころ――ところが芹は、どうにも体調が優れない。
その様子に呪いの兆候を感じた皇臥は、芹に北御門への呪詛が効かなかったのは、すでに彼女が別の呪いを受けていたからだという可能性に思い至る。皇臥は事態を重く見て、災いを受け流す役割を持った式神・青竜を呼び覚ますのだが……なんとその姿は、若い頃の皇臥そっくりで!?
呪いも旦那も増殖中? 受難の仮嫁とぼんくら旦那は、呪いの源に迫れるか!?
ああもう、この旦那ホントにかわいいなあ!!
往々にしてこの手の下げる評価を受けてる主人公って、実は有能だったり天才だったりするのですけれど、皇臥って掛け値なしにぼんくらなんですよね。陰陽師としての腕前は最大限評価して普通。苦手分野多すぎるし、得意の式神製作も今回の青竜の如月も出来栄えはともかくとして、面倒がってアップデートしてなかったとか、何をやってるんだと。
本当の本当にやや駄目よりの凡庸な陰陽師で、覚醒の余地とか完全にないんだよなあ。
かといって頭のほうが冴えているかというと、こっちもぼんくらと言われても仕方ない右往左往っぷりで、オマケに芹に秘密に事を進めようとして、史緒佳お義母さんにこっぴどく叱られる羽目になってるし。
嫁さんの前で母親にガチで叱られるって、恥ずかしいなんてもんじゃないですよ。でも、それとなく皇臥を庇ってフォローする芹が実に良い嫁してて、史緒佳お義母さんもあとで感謝して褒めてましたけれど、あれは良いシーンでした。
という風にやることなすことぼんくらで、芹がかけられた呪詛に関してもあれ正体を見抜いたのって偶然の産物に近くて、皇臥が鋭く見抜いたってわけじゃ全然ないんですよね。それどころか、予想がことごとく外れるわ、芹を護るための防衛策が片っ端から効かないわで、文字通り右往左往してましたもんね。
ただ、芹のために必死で一生懸命頑張ってるのだけはこれ以上無く伝わってくるんですよ。余裕ない分、必死さが焦りが懸命さが余計に伝わってくる。芹に黙って対処しようとしていたのも、芹を不安がらせないためですし、芹の事が心配で心配でたまらないというのがヒシヒシと伝わってきて、もうそれが可愛いというほかなく。
形代という身代わりの生贄役である青竜を使いたがらなかったのも、皇臥が式神たちを使役する道具ではなく家族として愛情を注いでいるのが良く分かるエピソードでもありますし、彼の優しさというのは随所に見られるんですよね。そういうところが陰陽師として甘いところだと言われたとしても。
かっこ悪いところもたくさんあった、でもそういう時って自分のメンツ度外視して、芹の気持ちを組んで彼女の心身だけじゃなく芹の友人たちや置かれた環境ごと守ろうとしてくれている時で、それを叶えるためならどれだけ自分の無能をさらけ出してもいい、自身が格好悪いことになっても構わない、という姿勢って……カッコいいんですよ。
かっこ悪いのが、カッコいい。
いやほんと、あの兄貴に頼み込むシーンはダサダサで恥ずかしいしみっともなくてかっこ悪い事この上なかったんだけれど、それが本当にかっこよかった。
芹がそれを見ていて、もうなんかアテられちゃったの、凄くわかりますわー。
女の人が男のことを可愛くてたまらない、と思う場面ってこういう形もあるんだなあ。

その芹の方も、今までの生き方のせいか不安や辛いことがあっても、表に出さずに誰にも弱みを見せず大丈夫大丈夫と流してしまっていた自分に、友達からわりと厳し目に指摘受けてようやく気づくことになるんですね。自覚が全然なかった分、きっとたちも悪かったんだろうけれど。
目に見えて不調なのに、病院行ったらという心配に、全然大丈夫だから、と返すのって相手からすると何も安心できることはないんですよね。心配をさせてもらえない、気遣いを受けてもらえない、というのは心の壁になるんだろうなあ、これ。
そういうのを取っ払って、ようやく「家族」になるわけだ。芹としては、もう気持ちは北御門家の一員のつもりだったと思うんですよ。でも、家族という関係に今まで慣れ親しんでいなかった彼女にとって、意識しない所でこういう隔たりが生じていたんですなあ。まあ、皇臥たちもそんな壁とか気にするほどのものでもなかったんでしょうけれど、それでも芹が意識して皇臥たちからの心配を受け取ろうとしたことで、今まで以上に芹の中で心理的な隔たりが取っ払われたような気がします。
なんか皇臥との距離感も、元から全然近かったけれど、もっと深い所でしっかりと繋がった感があって、今まで以上に夫婦然として見えるようになった気がしますもんねえ。

あと、護里ちゃんと祈里ちゃんの可愛さが相変わらず天元突破なんですけど! この幼女バージョンも、蛇と亀の式神モードになっても変わらない可愛らしさといったら、なんなんですかね!?
仕草から台詞から、あのきゅーっと抱きついてくるところとか、もう何から何まで可愛いんですけど。かわいいなー、かわいいなーー!! 

さあ問題もすっきり解決して、平和な家庭の団らんが戻ってきた……と、思うんだけれど、なんだこの不穏な空気は。なんかまた怪しい人が暗躍してるっぽいし。できればこの家庭はほんとに平和で居て欲しいんだけれど。


天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう ★★★★   



【天才王子の赤字国家再生術 10 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

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ウルベスでの独断専行が家臣達の反感を買い、しばらく国内で大人しくすることにしたウェイン。
その矢先、大陸西部のデルーニオ王国より式典への招待が届き、妹のフラーニャを派遣することに。
しかしそこでフラーニャを待ち受けていたのは、数多の思惑が絡み合う国家間のパワーゲーム。一方で国内に残ったウェインの下に、大陸東部にて皇子達の内乱が再燃という報せが届く。
「どうやら、東西で両面作戦になりそうだな」
グリュエール王の失脚。皇子達の陰謀。東レベティア教の進出。野心と野望が渦巻く大陸全土を舞台に、北方の竜の兄妹がその器量を発揮する、弱小国家運営譚第十弾!

うわーーっ、今回はウェインは完全に盤外にあって、一から十まで主役はフラーニャだ!!
マジかー。これまでも一部の局面でフラーニャ主体となって状況を動かす事もあったし、物語としてもフラーニャ主役で動く場面もありましたけれど、一冊丸々フラーニャ主人公として描くとは。
それだけ、王女フラーニャの役割がこの作品の中で重要も重要、最重要になってきたという事を意味しているんだろうけれど、それにしてもフラーニャの活躍が予想を遥かに上回るもので、まだまだこの娘の事を見縊っていた事を思い知らされた。
今までも既に政治の表舞台に立ち、戦火の最前線に立たされた都市で演説をふるって市民の指示を取り付けたり、意外なカリスマや政治センスを見せてくれていたし、お飾りを脱して自分で考える事が出来る王族として、ウェインの代理で外国に使節として派遣されるなど、大きな仕事をこなせるようになってきたフラーニャでしたが、それでも今までは兄ウェインの指示を受けていたり、突発的なことに襲われても受動的に対処する、という方向に徹していたんですよね。
でも今回は……間違いなく、自分で考え自分で介入し政略謀略が渦巻く国同士のパワーゲームのという盤上で自ら局面を動かす「プレイヤー」の一人として動いていたんですよね。
それはウェイン王子やロワ皇女、グリューエル王といった世界を動かしせめぎ合うプレイヤーたちと同じ土俵の上に立ったということ。
それどころか、同じようにシジリスの後を継いだデルーニオ王国の宰相や、王女という立場から国を動かし世界情勢に関与するウェインたちと同じ立場に立とうとしたトルチェイラ王女といった野心家どもと同じ盤面で指しあった結果、役者が違うとすら言っていいかもしれない手練手管を見せつけてくれたのですから、もう刮目して瞠目ですよ。
まさか、ウェインのプレゼントという決め手があったとはいえ、トルチェイラを手玉にとって見せるとは。トルチェイラにとっては敵として相対したいのはウェイン王子であって、フラーニャなんて眼中にもない、と思いたがっていたのに、完全にしてやられたわけですからね。実際は、色々と着実に実績を上げていたフラーニャのことめっちゃ意識していたくせに、取るに足らない相手と無視するから。油断であり傲慢であり、プライドの高さが足を引っ張ってしまったか。
その点、フラーニャは素直で人の話も良く聞きますし、一方で自分の意見をちゃんと持っているし、兄ウェインを尊敬している分、自分の能力を過信しませんし。
何より、その善良さが悪い嘘をつかない姿勢が、騙そうとしないあり方が、人から信頼を寄せられ、味方を増やすカリスマになっていて、こればかりはウェインを含めて他のプレイヤーにはないフラーニャ独自の武器なんだよなあ。
ロワも表看板では似たような路線で評判上げてますけれど、中身がウェインと思いっきり同類なだけにフラーニャと比べるとすげえパチモン感がw
いや、ちゃんとロワはウェインと同レベルの大陸屈指の謀略家であり政治家なのですけれど、あの中身のポンコツさを見てるとなあ……パチモン感あるよなあw
今回もウェインの謀略の片棒担いで悪巧みしまくって、他の皇子たちの勢力を削ぎまくった挙げ句帝国の実権をほぼ握るという躍進を見せているのに、「だるーん」とか言ってるユルユルの姿を見せられるとねえ……ロウェルミナってもしかしてこの作品のマスコットじゃないのかと思えてくる。
……かわいい。

今回の一件でシリジスの心からの忠誠を勝ち取ったフラーニャですけれど、実際にプレイヤーとして動いたことで、遠く離れた土地で事の推移をすべて見通していた兄の凄味を本当の意味で思い知る。同時に、彼女の知見が高くなり鋭くなるほどに、ウェインという兄の真の姿が見えてくる。
果たして、あの愛する兄にナトラという国を預けていて、本当に大丈夫なのか。そんなフラーニャの心のなかに芽生えた僅かな疑念に、シリジスの野心や復讐心からではない心からの忠信ゆえの指摘が突き刺さる。
プレイヤーとして立ったがゆえに、フラーニャ自身自分が歩むべき道、その岐路に立たされるという凄まじい回でありました。
でも、そのフラーニャの選択ですら、ウェインの思惑の上っぽいんだよなあ。いったいどの段階からフラーニャのことをここまで成長すると見込んでいたんだろう。当初は政治の何も知らないお兄ちゃん大好きなふわふわとした王女様だったのに。そんなフラーニャをただ猫可愛がりしているだけに見えたのに。
まあ、猫可愛がりしているのは今も変わらないのですが。

ついに毒蛇にニニムの正体がばれ、彼女がウェインの心臓というのみでなくこの大陸の行く末を握る心臓であることが発覚し、表舞台に引きずり出されそうな気配が漂ってきたことで、さて事態はどう動いていくのか。
いやー、先が読めないしドライブ感のとどまらない政治劇、謀略劇に、ワクワクが止まらんですわー。


浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。 ★★★★  



【浅草鬼嫁日記 九 あやかし夫婦は地獄の果てで君を待つ。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫

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『――絶対に、連れ戻す。地獄の果てまで、お前を探しに行ってくるから。』

「茨木真紀は、まだ、助けられるぞ」ライの凶刃に真紀が倒れ、絶望に暮れる馨。そこへ助言を与えたのは、宿敵・安倍晴明の生まれ変わりである叶だった。
彼女は前世“茨木童子”の重ねた罪で、地獄に魂が囚われている。閻魔大王の判決を覆し、連れ戻せれば目覚める可能性はある、と。
一縷の望みに、馨は迷わず地獄へ向かう。そこでは姿が前世“酒呑童子”に変わり、鬼の獄卒として出世していくことになり……!?
彼岸花の咲く地獄の果て。朽ちゆく大魔縁・茨木童子――真紀が待つ、その場所へ辿り着くために。

おおっ、大魔縁・茨木童子モードの真紀ちゃん、見た目カッコいい!
前回、ライによって死んでしまった真紀ちゃん。いや、肉体的にはまだ死んでなかったものの、魂の方が地獄へと堕ちてしまったんですね。その真紀ちゃんを復活させるためには、直接地獄へと赴いて彼女の魂を連れ戻さないといけない。
こういうパターンだと日本の場合は黄泉の国へと赴くことが多いのですけれど、地獄まで行ってというのは結構珍しいんじゃないだろうか。地獄から戻る話って、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」くらいしかパッと思いつきませんしね。
つまるところ、地獄ってそれだけしっかりと組織だった「監獄」なんですよね。そこに落とされた死者は、裁判によって罪人と定められた囚人たちである以上、安易簡単にその罪を許して地獄から出してやるわけにもいかないし、勝手に抜け出したり連れ出したりしたら脱獄になってしまう。
そら簡単に地獄から現世に戻る話がないのも理解できようというもの。蜘蛛の糸の話は、仏様による恩赦あってのことでしたしね。
てっきり、真紀ちゃんは地獄に落ちようとあの真紀ちゃんなのですから、いつものごとく大暴れして地獄の鬼どもを屈服させるか心酔させて、お山の大将かみんなの姐御みたいになって地獄に君臨しててもおかしくはないなあ、と楽観的に考えていたのですが。
地獄というのは上記したようにしっかりとした組織によって運営されているもので、ならず者や無法者たちが好き勝手して暴れている場所じゃあないんですよね。ヤクザかチンピラ相手なら、真紀ちゃんが一発暴れて改心させて、という展開もあるのかもしれないけれど、地獄の鬼たちは鬼であっても獄卒というちゃんとした社会人であり、当人たち曰く社会保障制度によって守られた公務員という安定した職についている勤め人たちなのである。
いやそりゃ、真紀ちゃんと相性悪いわ。弱者を虐げている乱暴者相手に一暴れするのならともかく、真面目に働いている人相手に暴れたら、ただの悪い人だわ。
なればこそ、こういう時こそ馨くんの出番なんですよね。真面目で細かい所によく気がつくマメで責任感の強い馨くんが。まだ高校生にも関わらずバイト掛け持ちでよく働き、勤務先の評判もよく、社畜の気質もあるんじゃないだろうか、という勤め人気質の馨くんは、この公務員組織な地獄にもよく肌が合うんじゃないだろうか。というか、天職なんじゃないですか、これ?
実際、叶先生の手引で獄卒の採用面接を受けることになり、新卒として下っ端から採用された上に、その真面目な勤務態度と勤務成績から若手のホープとして順調に獄卒として出世していく馨くん。
……こいつ、前世酒呑童子で反秩序の旗頭みたいな存在だったくせに、なんでこんな組織の歯車として働く勤め人が似合う男になってるんだ?
いやこれで、ちゃんと家庭を大事にする所はしっかりしているので、家庭的だし家計を担う大黒柱としても頼もしいし、結婚する相手としては優良以外のなにものでもないんだよなあw
真紀ちゃんとしても、そのへん不満を覚えたこと一切ありませんし。

鬼が暮らす環境として、地獄は思いの外仕事環境のみならず、生活環境の方も公共福祉に至るまで完備されてて、実に暮らしやすそうなので、いざとなったら地獄の方に生活基盤持ってもいいんじゃないだろうか。獄卒の鬼のみなさん、みんなイイ人ばかりでしたしw
とはいえ、今の馨くんたちの故郷は現世であり、細かく言うと浅草こそがホームであり、待っている人たちも沢山いるのだから、夫婦で幸せになるのならやはりそこで、なんですよね。
これまで馨が知ることのなかった、大魔縁・茨木童子としての真紀の姿を目の当たりにすることで、彼女が千年以上に渡って抱えていた苦しみ、悲しみ、彼女が背負った罪と業を彼はようやく夫として受け止める機会を得ることになる。
きっと、それを知らなくても二人なら幸せになることは出来たかもしれないけれど、真紀ちゃんだけが罪の意識を背負い続けるのではなく、夫婦で分け合って背負っていけるというのはまた全然違ってくるものがあるでしょう。
叶先生、本当にこの二人には何の憂いも蟠りもなく、幸せになって欲しかったんだなあ。そのために、随分と胡乱で面倒くさい手順を踏むことをしていますけれど、いちいち説明しないのって変に言っちゃうとシナリオ通りに進まないから、というのもあるんだろうけれど、この人説明するのが面倒くさいと思ってる節があるように見えるんだけどなあw
おかげでやたらと胡散臭く見えてしまうけれど、仕方ないよね、胡散臭いし。まさか、こんなに裏表なく真摯に二人のことを思い遣っていたとは思わないじゃないですか。胡散臭いし。性格悪そうだし。いや、性格歪んでいるのは間違いじゃないでしょう、この人の場合w
ともあれ、ミクズの本当の目的もわかり、どうして彼女が裏切ったかの理由も理解できたので、だいぶ全体すっきり晴れた気がします。叶先生の正体の方もはっきりしましたしね。

なんか、次の展開浅草を離れて京都の陰陽師の学校での学園編開始! みたいなネタフリもあったのですけれど、シリーズとしては次回が最終巻なのか。学園編、真紀ちゃんが悪役令嬢ばりに暴れてくれそうで、結構読んでみたいんだけどなあ。


恋は双子で割り切れない 2 ★★★★   



【恋は双子で割り切れない 2】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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割り切れないからこそラブコメは続く? 双子姉妹の誕生日、どうする!

わたしの妹は昔から賢くて、変わり者で、自由だった。
純と付き合うよう仕向けたわたしの狙いにも容易く勘付き、結果、那織の策略によって三人のこじれた関係がリセットされるに至ったのが先日のこと。
那織曰く、「単純明快な三角関係でしょ? 私はもう手加減しないからね」
だからこれからは正々堂々の勝負……なはずだけど、やっぱりこじれてばかり。
友達の慈衣菜は純に勉強教えて欲しいとか言い出すし、那織は機嫌が悪いみたいだし、純は恋愛そのものから距離を置こうとするし。わたしはと言えば、まだこの状況を素直に飲み込めなくて。
そんな中、わたしたち姉妹の誕生日が近づいてくる。……だからちょっとだけわがままを言ってみたい。昔みたいに、キスをして、って。
くわー、どちゃくそ面白いなあ。
1巻はほぼほぼ那織の手のひらの上、という感じで彼女の頭の回転の速さと突出した感性に振り回されたものですけれど、2巻はそんな彼女も思うがままに学校生活すいすいと泳いでいるわけじゃない、大きな弱点もあれば逆に振り回される展開もあり、ままならなさに頭抱えているのは彼女も変わらず、というのがよく見えてくる回でした。
というか、一旦視点をちょいと俯瞰的にした感じですよね。というより焦点を純と双子姉妹からちょっと後ろにさげて、琉実と那織、そして純の三人の交友関係にまで広げて改めて三人を取り巻いている環境を描いた、というべきか。
意外と三人はそれぞれのグループで離れて過ごしているんだけれど、同時にその3グループ間の交友もあって……いや、那織は人見知りもあってか琉実のバレー部の部活仲間とは接点持たないようにしてるわけだけれど。運動部で活発なバレー部の面々をやたら罵倒しまくってたくせに、いざそのグループに囲まれたら途端に寡黙になって表情閉ざしちゃうの、申告よりも酷い人見知りの内弁慶だなおい! どうせその際も内心ではめっちゃ早口に複雑でサブカル知識満載した罵詈雑言をつぶやいていたに違いないの容易に想像してしまえるのが、なんか笑える。
そんな彼女の頭の回転の速さについていける、というか対等に面突き合わせる相手っているのかねえ、とその役割を担っているらしい「部長」をどこか胡乱に見ていたんだけれど……いやあ、この娘はこの娘でとんでもねえなあ! むしろ対人能力ある分、那織より物事への柔軟度高いんじゃないだろうか。
まさか前回の那織に匹敵する人間関係を巡る謀略を見せられるとは思わなかった。関係者の殆ど、知らず識らずに手玉に取られてたって事じゃないですか。いや、前回の那織みたいに結論がひねくれているわけではなく、友人のあの子と仲良くなりたいという要望を叶えてあげただけ、ではあるんですけれど、やり方の迂遠さが! もって回っているうえに悪戯心満載なやり方が、那織曰くの邪悪!というの、わかっちゃうわー。
いやー、この歳でその悪魔的な蜘蛛の糸的なシナリオの描き方、エグくない!?
本質的な意味で那織と対等なのがよくわかった。
それでいて嫌がらせではないんですよね。那織にとって最適でスムーズな交友関係の広がり方をしたわけですし。散々、引っ掻き回されて悩まされて地団駄を踏むはめになったのは兎も角としても。
いやー、邪悪だw
でもほんとに那織みたいな子は「友達」足り得ると自認できる相手が、本当に少ないだろうから、もし友達になったとしたら一生モノなんですよね、それを見繕えるんだからなあ。
まあ、相手側からは友情ではない、というカードを伏せちゃっているあたりが実に邪悪ですがw 
最初、部長と那織の出会った当初が不倶戴天の敵同士だった、というのもこうなるとよくわかりますねえ。こんなん、最初から息が合うわけないじゃないですか。元々敵を作りやすい那織ですけれど、その敵というのは那織という存在を理解しきれず未知であるからこそ、その尖りっぷりばかりが突き刺さって敵意を抱いてしまうと思うのですけれど、部長の場合は同じステージに立ってしまったからこそぶん殴り合う以外なかった関係とも言えるので、ある意味本物の敵だったんだよなあ。
最後の那織の独白で引用されてた詩の作者であるテニスンの言葉を借りれば、He makes no friend who never made a foe(一人の敵も作らぬものは一人の友も作れない)という感じですか。
那織は敵を作ってしまうところもあるけれど、意図的に相手を敵認定していくところもあるんですよね。慈衣菜は元より、純を巡っての恋模様に関しても姉の琉実をしきりに敵としようとしている。
まあ、琉実相手はどれだけ那織が敵扱いしようとしていても、実際那織がやってることは琉実に助け舟出してばかりで、口で言う敵だ敵だという台詞は狼が来たぞにしか聞こえなくなってきているのだけれど。
それを一番わかってるの、琉実ですしねえ。この姉妹、仲が良すぎる。
実際問題、那織が仕掛けをして一旦拗れてしまった純との関係を三人でリセットしたの、今回の安定した琉実と純の様子を見ていると、あれ本当に正解だったんだなあ、というのがよくわかるんですよね。
ああやってリセットしていなかったら、元の幼馴染の気安い関係にも戻ること出来なかったでしょう。気軽にお互いの家を行き来することも、普通に学校で会話することもなく、疎遠になっていってしまったのが容易に想像してしまえる。
リセットしたからこそ、幼馴染以上恋人未満という淡い関係でもう一度、リトライする環境が整えられた。あんな、ハグしてとか甘えられること出来なかったでしょうし。
結局、早すぎたんですよね、付き合うの。幼馴染という関係を喪失して恋人になってしまった以上、その恋人という関係が終わってしまった時に日々激しい変化を迎えている高校生じゃ元に戻ることも出来ない、はずだった。
まああのままズルズルと幼馴染という関係を続けていった結果、関係そのものが腐ってしまう可能性もあったので、三人の関係に大きな刺激を与えるという意味で琉実が純と付き合ったこと自体は否定されるべきじゃないのでしょうけれど。ことを姉が起こすことで起動に成功し、その後始末というかリカバーを妹がして、というのはよく出来た手順じゃないですか。
一方で、純が何も出来ていない、というのもまあ確かな話なんですよね。わりと卒なく、姉妹の機嫌とって対処もスマートにこなしているのは結構凄いとは思うのですけれど(誕生日プレゼントの渡す順番とか、かなり気を遣ってるのが見受けられましたし)、それでも受け身のままなあなあで過ごしちゃってる。自分でどうこうしようとせず放棄してしまっている、という指摘は彼にとっては痛いものだったんじゃないだろうか。
まあでも、だからといってどちらかを選べ、というのもナンセンスな話だとは思うのですけどね。姉妹側もそういうのを求めてるんじゃないでしょうし。いや、最終的に自分の方を選んで欲しい、とは思ってるんだろうけれど、でも選んで欲しいと思ってるんだろうか。
那織は自分では好戦的に行動を起こそうとしているつもりみたいだけれど……あれで、琉実に純となにかやってるのかを秘密、というか特に言う必要も感じずに後回しにしてたというくらいなのですけれど、やたらと拗ねてましたしねえ。あそこで拗ねるのって、出し抜かれる云々というよりも除け者にされたという感覚の方が強いみたいで、それって三人一緒という意識が強くないと生じにくい感覚でしょうしね。那織ってそういう所、自分で思ってるよりも相当に現状維持派に見えるんだよなあ。

いやー、ほんとこの作品、登場人物見ているのがやたら楽しいですわ。人間関係が多角的な分、いろんな方向からキャラの側面が見えてくるし、掘り下げ方も深さから方向から多種多様でそのキャラを覗き込むのがほんと面白い。1巻のようなインパクトは、あの展開のひっくり返し方を何度もやられたらたまらんという所もあって、ありませんでしたけれど、その分縦横に世界が広がり奥行きもさらに覗けるようになって、噛めば噛むほど味が滲み出てくる感じでどちゃくそ面白かった!
これは先々も楽しみだなあ。


時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 2 ★★★★   



【時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 2】  燦々SUN/ももこ 角川スニーカー文庫

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動き始める二人の恋と会長選。話題騒然の青春ラブコメディ、第2弾!

「す、好き? 好きって、え? 違うのよ。ちがうぅぅぅ~!」
「なぁ~にが『支える』だよ。あ゛ぁ~俺マジでキモイ痛い!」
黄昏時の校庭での密事。
互いに煩悶するアーリャと政近であったが、二人はコンビを組んで会長選を戦い抜くことを約束する。
圧倒的なカリスマを誇る次期会長候補筆頭・周防有希との対決に向け、アーリャと政近は対策会議をはじめるのだが――
「さて・・・・・・じゃあ、会長選の話だが」「・・・・・・Круто」(ぬぐぅっ!)
ロシア語の甘い囁きにドキマギしてしまって!?
罵倒してきたかと思えばデレてくる、美少女ロシアンJKとのニヤニヤ必至な青春ラブコメディ第2弾!

いやこれ、妹様の存在感が半端ないじゃないですか。1巻の段階でもワイルドカード的な存在ではありましたけれど、物語における立ち位置といいキャラクターの個性といい、他に類を見ない強度なんですよね。
政近がアーリャの生徒会長選挙のパートナーとして表舞台に立ち、選挙戦を戦うというのは中学の時に意識が高すぎるせいか明確な目的意識無く高みに上ってしまった事への後悔から、本気でナニかをすることからドロップアウトしていた現状をひっくり返す一歩だったわけです。
いわば、政近の再デビューと言っていい状況。それを促したのはアーリャなんですけど、本気になった二人の前に立ちふさがる最大の壁が、カリスマの塊であり全校生徒からヒロインの中のヒロインであり主人公的な存在として一目置かれている周防有希なのです。
同時に、政近の幼馴染という体であり中学時代はまるで双子のよう(!)に息ピッタリの名コンビとして生徒会長副会長を担った二人であり、彼らを知る人達からは比翼の鳥のように思われていたカップルだったわけです。さらに、有希は明確にアーリャに対して政近の事を愛していると宣言して煽りに掛かっている。政近とアーリャの恋愛模様という側面からしても、周防有希こそが特大の刺激物として鎮座しているわけである。特にアーリャからすれば公私に渡って最大のライバルとなっているわけだ。
まさか、その周防有希が政近の実の妹であるとはほとんどの人が知らないまま。
この状況を一番面白がって一番引っ掻き回す気満々なのが妹様なんですよね。まさに黒幕であり、物語そのもののキャスティングボートを握っているのが彼女と言っていいわけです。彼女自身それを自覚的に振り回していて、陰でこっそり黒幕ムーヴして遊んでいるくらいですし。
同時に、遊びではあってもこれ以上無いくらい本気でもある。選挙でも真っ向から叩き潰す気満々だし、恋愛模様でも応援する気はあっても自分程度のちょっかいで日和ったら速攻潰す、くらいの気持ちはあるんじゃないだろうか。この子めちゃくちゃブラコンでもあるみたいだし、ドロップアウトしてしまった兄に本気を取り戻させたのが自分じゃなくてアーリャである事を本気で悔しがってる節もありましたし。
遊びとガチを同時並列的に励起できちゃう才媛なんだろうなあ。
そもそも、日々を思いっきり面白がって楽しそうに過ごしているのって、兄へのアピールも混じってると思うんですよね。跡継ぎの座を妹に押し付けてしまった事に少なからぬ罪悪感を抱いているだろう兄に対して、それを幾分でも薄めるために。まあ本気で面白がっている、というのも本当なのでしょうけれど。あの家での余人に見せることのないダダ甘っぷりも自堕落極まるぐだぐだ妹っぷりも、それが素だし本気だしあれこそが楽な姿というのもあるんだろうけれど、ああやってベタベタすることで兄へのメンタルケアも同時にやってるっぽいんですよねえ。そういうの両方を全力で出来るのって才能だし器用だよなあ、と思うわけです。
いずれにしても、お兄ちゃんめちゃくちゃ大好きですよね、この妹様。あのアーリャへの宣戦布告とも取れる誰よりも愛してる宣言は一切虚偽のない本気であることも間違いないんだろうなあ。

さても、アーリャと政近はそんな妹様に翻弄されながらも、生徒会の一員に加わって業務を手伝ったり、次期生徒会選挙に向けて有希以外の対抗馬と対決したり、と順調に二人で一緒に戦う準備を整えていく。そうなると、気になってくるのがなぜ、相手は自分なんかと組んでくれたんだろう、という疑問。特に政近の方は常に有希とセットだっただけに、唯一無二のコンビを解消してどうして自分なんかを助けてくれるのか、という疑問がアーリャに生まれるのも無理ないんですよね。
でも、そこで立ち止まって悩まずに、政近は私のものだから離さない、と明確に宣言し、さらに彼にふさわしい存在になってみせる、と前に進み続けるアーリャのそれは、間違いなく心の強さ。
そういう気高さ、ひたむきさにこそ彼は惹かれたのか。
いずれにしても、お互いに理由はただひとつ「あなただから」なんですよね。突き詰めればシンプルで、だからこそゆるぎようがない。成長一途の良いコンビだというのを、じっくり見せてくれた二巻でした。


終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #11 ★★★★   



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #11】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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終末のとき、開かれる未来の行方は。明日を繋いだ妖精たちの第2部、幕。

〈最後の獣〉が創り出した少年は、最期の選択を迫られる。
今ここにある幸せを慈しみ、浮遊大陸群《レグル・エレ》を滅ぼすか――多くを奪う邪悪として、自分自身が滅ぼされるか。
偽りの楽園は罅割れ、幸福のかけらも削れ行き、少年は自身の存在する意味を覚る。
「ぼくはちゃんと、あなたたちと戦います」
聖剣モウルネンを差し向けるティアットに、示す答えは。
そして、崩れ行く世界は、その跡に何を残すのか。

明日を繋いだ妖精たちの第2部、終幕。

黄金妖精たちは、自分たちを命のない存在だと定義している。自然発生してそのまま自然に消えてしまう死霊の類。自分たちはここにいるけれど、だからといって生きている訳ではないのだと。
だから、彼女たちは自分の命に対してひどく無頓着で、そこにあまり価値を見出していない。それはまだ幼い発生したばかりの幼子たちにこそ顕著に見られる傾向で、少女になった子たちにも少なからず見受けられる。ユーディアなど、この最後に至っても命のない存在としての自分を死を目前としていてもあるがままに受け止めていた。
でも、その最期にユーディアもまだあの子の、アミルタの傍に居続けたいと思ったんですよね。
自分たちのあり方はそのまま受け止めている、それでもその向こう側をこの妖精たちは望むことも出来るのだ。
だから。
そんな彼女たちのあり方に対して、生き続ける可能性を遺したのはヴィレムだった。
そんな彼女たちのあり方を許せないと、否定して消えていったのはフェオドールだった。
彼らの行動の後に、黄金妖精たちの今がある。それに彼女たちが納得しているかどうかは別として。
彼女たちが与えられたのは選択肢だ。摂理に身を任せるのではなく、自分の身を自分の生き方を、自分の終わり方を、そこに至るまでの続け方を、彼女たちは自分自身で選んで今、ここにいる。
パニバルが何も知らない何も持っていない生まれたばかりのモーントシャインに、彼自身が選ぶ選択肢を与えたかったのは、かつて彼女たち自身がそれを与えられたものだったからだろう。
そんでもって、もうちょっとお節介で選択肢という可能性以上のものを与えようとするのがティアットなのだろう。ティアットはいつだって皆に「生きろ」と呼びかける。その声は、命なき妖精たちにも生まれたばかりの世界の種子にも、ダイレクトに届いてしまう。だから、彼女は英雄なのだ。
思えば、この子が、ティアットが一番「生きてる」妖精だったな。この子を起点として、黄金妖精たちは死霊じゃなくて、自分たちの意思で生きようと思う生命に変わっていった気がする。
モーントシャインとの戦いと対話は、最終回答だったんじゃないだろうか。ヴィレムとクトリから始まって、フェオドールがひっくり返して、ティアットが叩き起こしてきたことの。
モーントシャインはかつてのヴィレムたちであり、同時に黄金妖精たちでもあった。その彼に後事を託して行ってしまうのではなく、かつ生きるという選択肢を掴ませるという事は、今までのシリーズであったことの総決算であり、これまで越えられなかった壁を超えたという事であり、終末とともに消えていくはずだったものの向こう側にたどり着いたような、そんな感覚なんですよね。
世界は、滅びるでしょう。でも、そこで全部終わってしまうのではなくて、その先も終わらず消えず生きていく、ゴールを越えて新しいスタート地点にたどり着いたような。
だから、ヴィレムはもう庇護者としての自分を置いていく事が出来たんじゃないかな。もう自分がいなくても、あの儚くふと目を離せば消えてしまう泡のような妖精たちは、これから逞しくしっかりと生きていく事がわかったから。愛すべき娘たちを友に託して相棒と新しい世界に旅立っていくことを選べたんじゃないかな、なんて事を思ったり。
エピローグに入ってからも、黄金妖精たちのその後が描かれていたけれど、みんながこの先も生きていくという確かな意思を持って、それぞれの日々を歩んでいる姿が見られました。特に、大人になってから一番、生の感触が希薄だったアイセアがあんな形になったことで、これからの黄金妖精達は命のない死霊とはまた違う、生きた命として在っていくんだなあ、というのが強く実感できたのでした。
新しい命の輝きを、一番ピカピカ光らせていたのはリィエルでしたけれどね。この幼い妖精は、誰かさんたちの魂の欠片を引き継いでいるのかもしれない幼子は、きっと自分の力であの人にもう一度会いに行くんだろうな。
ラストの「もう一度だけ、会えますか?」への回答は、ちょっとびっくりしましたけどね。こ、こいつあれだけやらかしておいて、最後両手に花かよ。ってかティアットさん大勝利ですか、もしかして。

というか、この「すかすか」シリーズ通しての大勝利者は文句なしにネフレンなんですけどね!
きっととても永いものになるだろう星の旅路に、ヴィレムの傍らに寄り添う少女あり。なんかもう、ついにやってやった感が凄いんですけど。クトリやリーリァを置き去りにして、最後の最後にヴィレムの隣に居続けたのがネフレンだったとは。ってこれ一期にも言っていたような気がするけれど、ヴィレムに先がもう存在しなかったかつてと違って、今度は悠久の旅になるんだもんなあ。
これを大勝利と言わずして、なんといいますか。

ああ、終わったなあ。こんなに続く事になるとは思いもしなかったこの物語が、こうしてちゃんと「終わったなあ」という感慨を浮かべることの出来る結末を迎えることが出来たのは、ずっと読み続けてきた身としても、感無量です。良き、物語でした。読むことが出来て本当に良かったと思えるお話でした。
これからも、この物語の登場人物たちが長く長く幸せに過ごせることが出来ますように。


サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと ★★★★   



【サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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奇跡に詠唱は要らない――気弱で臆病だけど最強な魔女の物語、書籍で新生!

〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレット。無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師で、伝説の黒竜を一人で退けた若き英雄。
だがその本性は――超がつく人見知り!? 無詠唱魔術を練習したのも人前で喋らなくて良いようにするためだった。
才能に無自覚なまま“七賢人”に選ばれてしまったモニカは、第二王子を護衛する極秘任務を押しつけられ……?
気弱で臆病だけど最強。引きこもり天才魔女が正体を隠し、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快ファンタジー!

コミュ障ッ!! いやもう筆舌に尽くしがたいコミュ障ッ!!
ってかこれもう対人恐怖症の域じゃないですか? 人見知りとかいう段階じゃないんですけど。人混みとかで死んじゃいそうなんですけど!?
人見知りとか内気とかコミュ障を標榜するキャラクターというのは珍しくないですけど、ここまでガチに他人とコミュニケーション取れないレベルで怯えてキョドってアバババ、となってるキャラはそうそういないと思いますよ。だって、コミュできないもん! それが況してや主人公て!
これは同じ七賢人のルイス氏のあのパワハラ紛いの上からガンガン命じて叱って怒って、というのがある意味正解なのかもしれない。やりすぎるとストレスで死んじゃいそうだけど。
何かと問題はあるけれど実は最強、というキャラクターは大体能力を発揮するときはキリッとなるものなんですけど、モニカの場合はそれすらもないですからね。
世界で唯一無詠唱魔法を使えるようになった、というのも人前でマトモに喋れないから、喋らなくていいように、という理由があるように、キョドって狼狽えている時でも魔術使えるようしてるだけで、魔術使うときだけ冷静になるとか意識が切り替わる、という事もありません。ひたすら、アババババとなりながら魔術使ってます、この娘。
しかも、無詠唱なものだからナニカ起こってもこの娘が魔術使っているとは一切疑われないし、本人は本気で怯えてビクついているのも確かなので、確かに完璧なサイレントだなあ、これ。

こんな娘を、人が一杯居て他人と嫌でもコミュニケーションを取らなければならない学園に放り込んで、さらに王子の護衛だか監視だかをやれ、と命じて放り込むルイス氏、ガチ鬼畜である。わりと真面目にモニカのストレス死を望んでるんじゃないだろうか。
とはいえ、モニカの実力を一番理解しているのも同僚であり同期でもある彼なわけで、本人の臆病な性格をして諸共しない、そんな状態ですらしっかりと成果をあげてしまう、結果を伴ってしまうモニカのスペックの高さ、能力の際立ちを、ルイス氏が一番わかってるんですねえ、これ。
ルイス氏自身は本気で不本意みたいですけれど。

というわけで、同僚に無茶振りされて無理やり学園に放り込まれたモニカ。任務とか言われても何も出来るはずもなく、周りに絡まれ鈍臭さからトラブルに巻き込まれ、怯え慌てて逃げ惑っているうちに、強引に無茶振りされた問題解決を半泣きになりながらサクッと成し遂げてしまったために、なぜだかトントン拍子に王子に近づき生徒会の役員に就任してしまうことに。
本人意図せず、右往左往してたり、現実逃避して得意な数学に没頭してたら、なんでか上手く行ってただよ、というなかなかに意味不明なムーブである。
この娘、本気で能力は抜群に高いだけに、無茶振りされるのが一番イイんだろうか。ビビリだから、命じられたら逆らえないし。七賢人という魔術師として最高峰の地位にあり、一代ながら貴族位も貰っているだけに本来なら学園でも王族以外なら誰にも謙らなくていい地位にあるはずなのに、徹底したパシリ根性、何かあったら這いつくばってごめんなさい、してしまう卑屈さがこびりついちゃってる娘なだけに、言われたら逆らえないという所がありありと。
なんか、ギャップがほんと面白いなあ、モニカは。

どうやら、彼女の対人恐怖症気味な性格には過去に受けたDVの影がまとわりついていて、ある種の精神的外傷がもとになっているっぽいんですよね。さすがに原因が原因なだけに、簡単に他人に慣れろ、とは言えないですし早々変わることは無理でしょう。数少ない友人とも決裂してしまった、という傷も抱えているみたいで、誰かと仲良くなる事自体怯えている節がありますし。
それでも、当たりこそキツいものの率直に物言ってくれて色々とかまって世話してくれるクラスメイトがいたり、厳しいものイイながら誠実に対応してくれる生徒会の先輩がいて、と……なんか当たりキツい人ばっかりだなあw
ただ、こういうキツい人は正直な人とも言えるので、むしろ当たりが柔らかかったり親切で優しかったりする人の方がどうにも怪しい気配がプンプンするんですよね。顔は笑っているけれど目は笑っていない的な。その筆頭が第二王子で、明らかに闇深そうな何を企んでいるのかわからない怪しい人物なんですが、この人が一応のヒロインになるんですかねえ。
他にも何を考えているかわからない怪しそうな人がわんさかと居て、モニカに心休まる暇なさそう。いやまあ、相手が怪しかろうがそうでなかろうが、誰だろうと人である以上心休まらないっぽいのですが、モニカさんは。
でも、ナニカ助けられたり好意で何かしてくれたりしたとき、その時は慌てふためき何も言えなかったとしても、ちゃんと後でも「ありがとう」と必死にどもる口を動かしてお礼を言う勇気を持ち、それを果たすことが出来るだけ、モニカは臆病なだけな心の弱い娘じゃないんだなあ、というのがわかって、あのシーンは何気にくるものがありました。
ありがとうと言われた方は特に響くものはなかったのかもしれませんけれど、モニカ本人は大変に勇気を振り絞って発した一言だったんですよねえ。

さても、言動はポンコツを通り越してもう不審人物なモニカが、そのくせやってる事を見るとテキパキと眼の前の問題を解決して、陰の任務も着々と成功させるための立ち位置を確保している、という本人まったく意識していなくて半泣きでもうやめたい帰りたいと嘆き呻いてやっぱり泣いているのに、結果だけみると有能極まる動きしている、というギャップの面白さ。
ストーリーとしては、まだ導入編。あれ?こんな途中で終わってしまうの?と驚いてしまったほど、話のキリもつかないところで終わってしまった1巻ですが、これシリーズ通して大きな一つの話を終わらせるロングスパンな作品なのか。ともあれ、続き気になります!

フシノカミ 5 ~辺境から始める文明再生記~  



【フシノカミ 5 ~辺境から始める文明再生記~】  雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス

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『古代文明の伝説にあるような便利で豊かな生活』を今世に取り戻すため、領地改革推進室にて文明の復旧を続けるアッシュ。
アジョル村にてトレント討伐の事後処理を終えたアッシュたち領地改革推進室の一行は、休暇も兼ねて温泉地があるスクナ子爵領へ。
そこで思いを伝えると意気込んでいたマイカは、先んじてアッシュから告白を受けてしまう。
『私はあなたのことが好きですが――あなた以上に好きなものがあるんです』
振られてしまったマイカだったが、アッシュを絶対に振り向かせるべく、優勝すればどんな要望も聞き入れてもらえる武芸王杯大会へ参加することを決める。かつて父親が優勝し、婚姻を果たして歴史に名を刻んだ大会。
一世一代の告白をするため、マイカは伝説の再演に挑む――!
理想の暮らしを手にするため、世界に変革をもたらす少年の軌跡を紡いだ文明復旧譚、第五幕!
うはははははっ! ワハハハハッ! やった! やった! マイカがやった!
マイカ嬢、大勝利だーー!!
いやー、痛快だった。気持ちよかった。スゲえわマイカ。めちゃくちゃとんでもねー女ですわ。アッシュがもう人並み外れているだけで、マイカの方もその成長の仕方がハチャメチャの領域にあるとは思っていたのですが、ずっとアッシュの背中を追いかけていたマイカがついについに、誰も追いつけないと思われたアッシュの所に追いついてみせてくれたのは、感無量でもあり愉快痛快でもあり、一言で言って最高でした。
ここまで気持ちよく、惚れた男のために突っ走り、一途に想い続け、その想いを叶えるために努力しまくって成長してみせた女性を、カッコいいと言わずしてなんというのか。
女性として自分を磨きまくり、武人として途方も無い領域に達し、未来の領主として政治力交渉力問題解決力を余人に及ばないくらい叩き上げ、あらゆる方面で人並み外れた域を収めたマイカ。
前に、アッシュが次期領主候補である自分に相応しいかじゃなく、自分がアッシュという前人未到の人外に相応しくなれるかだ、みたいな事をぶちあげてましたけれど、文字通り有言実行してみせたんですよね。もう両親や、領主である祖父や叔父もこれ以上無く納得させ(というか、この人たちもアッシュの価値を誰よりも理解しているために押し押しだったわけですけれど)、外堀を埋め、環境を整え、誰にも文句を言わせない状況を作り上げた上で、それでもアッシュ自身を納得させられなかったとなるや。
落ち込む暇もなく、足を止めることもなく、次の瞬間から次の手段を模索して突っ走りはじめるの、ほんとアッシュに誰よりも相応しくて、お似合いの爆発的な行動力で思わずニコニコしてしまいましたよ。
そして、アッシュをすら有無を言わせない、アッシュをして思わず黙って首根っこ掴まれて振り回されるような……いつも周りの人間を有無を言わせず盛大に引っ張り回し振り回しぶん回していたアッシュが、もう何も言えずにマイカを見守り、彼女の行動の果てを見守るつもりにしかなれないくらいに、ド派手にやってくれたんですよね。
ここまでかっこよく、惚れろ! とやられたら、さすがのアッシュですらもう完堕ちですよ。元々、マイカの事は唯一無二で惚れ抜いていることは、彼自身が明言していた事ですけれど。それでも、彼の文明を再誕させるという夢は、他に比べられない無二であり、マイカですら押しのけられない不動のナンバーワンだった事はこれまでのアッシュの言動を見ていれば、よくわかることでしょう。
その一番の理解者がマイカだったのですけれど、その絶対に勝てないはずだった恋敵に、この女の子は真っ向勝負でぶち抜いてみせたのである。絶対にアッシュの一番にはなれないはずだったのを、マイカはそのありえない一番を自力で、勝ち取ってみせたのである。奪い取ってみせたのです。
これほど、痛快なことはないでしょう。アッシュが、もう魂から惚れ抜いてしまう瞬間は、なんか胸にくるものすらありました。
あれほど追いかけ続けたアッシュの背中に、この子はついに追いついたのです。ついに、隣に立ったのです。アッシュと対等になってみせた。さすがは、女神ユイカの娘。女神の娘はやっぱり女神だった。
マイカ、大勝利! それに尽きる回でありました。

再誕させた古代文明の様々な知識や技術を実用化させ、領内で運用させはじめたアッシュ。そのお陰で領地は空前の上昇気流にのり始めたわけですけれど、その波を領内のみに留めることなく、今度は近隣の交流のある親交の深い、或いはこの波に乗るだけの見識と好奇心を持つ他領の責任者たちともコンタクトを取って、同盟というよりも共犯者……いや、この文明復興という楽しい楽しい遊戯を一緒に遊ぶプレイヤーとして、多くを巻き込んでいくのでありました。
ほんと、これは共通しているんだけれど、アッシュによって巻き込まれた、いや振り回されはするものの最後は自分の意志で巻き込まれに行く、波に乗ってくる、自分たちも混ぜてくれーと飛び込んでくる奇矯な人達なんだけど、みんな共通して楽しそうなんですよね。アッシュの言葉に乗せられて、目をキラキラさせて、ワクワクを抑えきれずに、一緒にはしゃいで騒いで盛り上がってくれる人達。
そんなバカモノたちの輪がどんどん広がっていく。それがもう、楽しくて仕方ない。皆が見ていた未来の色が、まったく違うものに変わっていくことに、ワクワクが止まらない。
このワクワク感こそが、その広がりこそが、この作品の醍醐味だなあ、と再認識。
王都に帰った姫様ことアーサーが、当地で彼女なりにそのワクワクを広げていることが、今回の再会でわかって思わずニッコリ。マイカとの恋敵という友情物語はマイカの突出を許してしまったけれど、さて姫様も全力でマイカを応援しつつ黙って見てばかりもいないだろうし、王家との関わり方はどうなってくるのだろう。
姫様も、自分を傀儡化しようとしている後ろ盾の公爵家相手に、まだ雌伏しているみたいだけれど、なんか着々と自分の勢力は広げているみたいですしね。今回の一件で辺境勢力はこぞって姫様の親衛となるだろうし、彼女の侍女団があれほど姫様の思想に足並み揃えてくれているとは思わなかっただけに、足元は万全だろうし。
さて、今度はどんな規模の大騒ぎになるのやら。楽しみで、ワクワクしますよ。


五人一役でも君が好き ★★★★   



【五人一役でも君が好き】 壱日千次/うなさか MF文庫J

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好きな人が五人で一人のフリをしていたので、全員カノジョにしようと思う。

(あ、高校生活、終わった……)
入学早々に肥だめに落ちて死にかけ、絶望していた僕を救ってくれたのは、誰もが憧れる完璧な生徒会長、近衛・R・知佳さん。
当然のように恋に落ちた僕は、彼女の隣に並ぶため、そこから猛烈な努力を始める。
学校底辺の成績から学校トップへ。死に物狂いの勉強のすえ、なんとか会長の補佐になることができた。
だが、僕はそこで知ってしまう──完璧な会長の姿は、実は特技の違う五つ子が五人一役で演じていた虚像だったのだ!
僕が好きだった彼女は存在しないのだろうか?
そうじゃない。好きな人が、五人に別れただけだ。だったら──

好きな人が五人で一人のフリをしていたけど、気づかないふりをして全員彼女にしようと思う。

これ全然同一人物に似せようとかしてないだろう!! 五人ともキャラ立ち過ぎているのはともかくとして、そのキャラクターを一切隠そうとしてないし! なんでこれバレないんだ!?w
双子の入れ替わり展開はまあわりとよくあるネタだと思うんだけれど、まさかの五人姉妹で一人を演じるという大技をかましてきて、いやあんまりと言えばあんまりの力技な展開に大ウケなんですけど!
それだけならまだ普通のコメディと言えたのかもしれませんが、ここから凄いのが主人公のアグレッシブさである。
中学で野球で名を馳せた牧原大河はスポーツ推薦で入学を決めた直後に事故で腕を怪我してしまい、野球選手として再起不能になってしまう。将来はプロ野球選手確実と言われた才能を潰され、挫折を味わった彼は、しかしそこで運命と出会う。
元々ストイックに自分を鍛えるスポーツ選手だったせいか、大河って努力を厭わないんですよね。恋を原動力に、スポ選故に学力最底辺だったのをわずか数ヶ月で学年2位まで駆け上るという尋常でない奮起を見せている。
その努力の方向性を、この男とんでもない方向へと差し向けてしまうのである。
生徒会に入るために学力を爆上げしてみせた大河(学則で成績優良者が生徒会メンバーに推薦される仕組みになってる)。その過程で知佳さんとも幾度も接触するのだけれど、その度に彼女の違う側面に触れて、その度に惚れ直していくのだが……その違う側面ってつまるところ別の姉妹に入れ替わってる時の近衛さんだったわけですね。つまり、大河はちゃんと全員に惚れて心奪われているのである。
そして、偶然近衛さんが五人の姉妹間で入れ替わり立ち代わりして一人の近衛・R・知佳という人物を演じている(いやあんまり演じてはいないけど!)事を知ってしまうのだ。
そこからが大河の凄い所で、五人のことそれぞれ好きになったのだから、これはもう五人全員と付き合って、最終的には五人とも結婚してハーレム作ってやるんだ、と決意するのである。
ハーレム展開というのは大概、なし崩しや八方美人に振る舞っているうちに何となく許されて、という展開が多いのだけれど、牧原大河という男は積極的に五人全員と付き合うために策を練りだすのである。
と言っても、近衛姉妹の弱みを握って陥れて、みたいな卑怯な真似をするのではなく、わりと正攻法なんですよね、彼のやり方って。
ごくごくまっとうに、彼女たち全員に自分に惚れてもらえるように、好感度が上がるような振る舞いを心がける、という女性へのアプローチとしてはこれ以上無い正攻法なのである。
また、五人全員と付き合うためにはフィジカルは重要、収入も五人分養えないといけないから高収入の仕事を目指さないといけない、さらに五人と正式に結婚するためには奥さん複数持っても大丈夫な国に移住しないといけないから、海外でもつぶしの効く仕事を選ばないと、ということで医者を目指し、さらに中東付近で通用するようにアラビア語を学び、と肉体と学力をビシバシ鍛え始めるのだ。
五人全員と付き合うために、小賢しい小細工をするのではなく、まず自分を鍛え上げるという発想に至るのが何とも面白く、それでいて五人全員と組んず解れつえっちい事もしたいから、と亜鉛の摂取を心がけたり、五人まとめて相手できるように体力つけようとしたり、下心も満載なんですよね。
この主人公ほど一途で純真にストイックに純情に、欲望に忠実かつ誠実な男はなかなか見たことないよ!?
これで、近衛姉妹の全員にべた惚れ、というのは本当に間違いなく、その恋心はまっすぐでキラキラと輝いているくらいなので、その誠実なくらいの純真な恋心がなぜかダイレクトに五人全員と付き合うという下卑びた方に全振りしているのが、なんかもう面白くて仕方ない。
それに、単に好感度を稼ぐために心にもない事をしているというわけではなく、大河という青年が根っからの善人であるのは、折に触れて何の思惑もなしに赤の他人を助けたり、誰かのために真剣に怒ったり、体を張って他の人の努力を守ったり、という振る舞いが彼が本物の好青年である事を伝えてくれるのである。
そんな彼が夜神月ばりの悪い顔して「計画通り!」と、ハーレムを作るためのあれこれを成功させてほくそ笑むの、そのギャップがなんとも面白いと言うか可愛げがある主人公なんですよね。
実のところ、大河がやってた事って近衛姉妹が五人一役をやっていたのを前から知っていた、というのを黙っていただけで、ほかは本当に正攻法に誠実に彼女たち一人ひとりに接してまっとうに惚れて貰ったので、別にそれほど後ろ暗いことはないんですよね。
彼女たちの秘密の入れ替わりしているのを知っているのを利用して、上手いこと好感度アップのためのアピールをしていたけれど、そもそも近衛姉妹が嘘ついていたことも、覗き見していたことも、彼女たちにも後ろ暗いところはあるわけですしねえ。その嘘を巧妙に罪悪感として利用してハーレムオッケーに持ってこうとしたのは、まあズルいと言えばズルいのかもしれませんけれど、ある意味ここはお互い様でもありますしね。
大河の下心がバレてしまったときも、実はそれほど彼女たちの好感度には影響しなかったと思うんですよね、これ。卑怯なやり方で好感度あげてたら、そりゃ幻滅されたかもしれないけれど、彼女たちが大河に惚れた所に大河の嘘はなかったのですもの。
いや、さすがにあのバレる展開は予想外もいいところでしたが。これはまさかまさかの展開でした。伏線もちゃんと仕込んであったのかー、あれは気が付かなかったぞ。
そして、大きな人生の挫折を経験した、そしてそこから文字通り這い上がった、その這い上がる奮起の、一度心そのものが死んだも同然だった大河の心を生き返らせてくれた、再誕させてくれた近衛・R・知佳という女性への恋を前にして、もう彼は二度と心折れたりしない。
彼は不屈の男。そしてその怪物級な欲望に一途で忠実な男。
牧原大河は諦めない。
近衛姉妹ハーレムを、諦めない。
何気にマジに好感度下がってないっぽいので、あとはホントにハーレム願望を受け入れて貰えるかどうかっぽいんですよね。なんか争奪戦がはじまりそうな勢いですし。
いやー、こっからどんな展開になっていくのか。衝撃的なラストと相まって、続き、めっちゃ読みたいぞッ!!

壱日千次・作品感想

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#10 ★★★★   



【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#10】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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終わりゆく世界を救うために、この幸せな楽園を[壊す/護る]。

浮遊大陸群を救う、最後の戦いが始まった。〈最後の獣〉の結界内に広がるのは、在りし日の地上を模した風景。散り散りになる妖精兵たち、ティアットの前にはエマと名乗る女性と、白いマントの少年が現れて――。

これもまた世界、か。
〈いずれ訪れる最後の獣(ヘリテイエ)〉が創り出した世界というのは、言わば再演だ。核となった存在から抽出した思い出から形作られる世界。揺籃の世界と章タイトルにもあるように、それは夢のまどろみ、揺りかごの中で見る夢。の、はずだった。
でも、最後の獣が取り込んだのは星神エリクと地神たち。かつて、人類種が地上に反映していた頃、旧世界を文字通り形作ってた神たちだ。
思えば、かつての旧世界もまた揺籃の世界だったじゃないか。あれは、神の夢見る世界だった。だからこそ、神が目をさますことで夢の住人だった人は滅びた。
かつての旧世界と、最後の獣の結界の中に広がる世界にどれほどの違いがあるのだろうか。
もちろん、最後の獣の世界は繰り返される過去の情景だ。そこに生きる人達は、再現された存在であり、その果ては行き詰まってる……はずだったのに。

モーントシャインの存在がその前提を崩し去っている。本来なら、外から取り込んだ核となる人物をもって形成されるはずの世界が、その世界の中から新たな核を自ら生み出してしまった。
それって、仮初の夢の世界で命が生まれたという事じゃないのか。それは、旧世界と同じように仮初めの夢の中であっても、人が生まれ世界は続き未来へと繋がっていく、そんな可能性が生まれたという事ではないのか?
モーントシャインの誕生は、黄金妖精たちの誕生と、何が違うのだろう。
かつて、兵器として消費されていた彼女たちは、様々な事柄を経て生命として生きていく権利を得ている。まだ命の価値というものに対してあやふやな感性しか持たない黄金妖精たちだけど、それでも彼女たちは生きている。生きていく意思を持ってここにある。
ならば、モーントシャインは。
ああなるほど、パニバルがどうしてモーントシャインに育成を施し、彼に自ら行く末を選択するように促しているのか、その理由が何となくわかってきた気がする。いや、どうかな。わからないな。まだわからない。パニバルという不思議な女性の本質は、7巻で大いに語られ、その中でティアットというパニバルにとっての英雄の誕生と共にほんの少しの変化を迎えたはずだ。
未来を守りたいわけじゃない。未来に焦がれているわけでもない。ただパニバルは、新たに生まれた命に自ら選択する機会を与えたかった。それが幸福な終わりに焦がれた彼女の、役割だとでも言うように。その願いの在り処がどこにあるのかは、まだわからない。やっぱり不思議ちゃんだよ、パニバルは。
見てくれは、すっごい美人になったのにね。いつのまにか、大人の女性になってるじゃないですか。挿絵に描かれる彼女はもう少女の殻を破り捨てている。どこぞで黒幕でも気取っていそうな貫目のある雰囲気を醸し出している。謎めいた美女感マシマシである。
パニバルに限らず、コロンもティアットももう少女とは呼べない妙齢の女性への階を登りだしている。アルミタとユーディアが一端の少女になろうとしているのを横目に見ているから、なおさらだ。あの小玉みたいだったアルミタが、こんなに大きくなっちゃって。
と、そんな感慨を抱いたのはこれが初めてではなく、このシリーズ。【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?】がはじまった時にティアットたちに感じていた事なんですよね。
幼女だったちびっ子だったあのラキシュを含めた四人組のお子様カルテットが、一端の少女となってはじまった新シリーズ。そこに、世代の移り変わりを、継承を、引き継がれていくものを強く感じたものですけれど、ここに来てティアットたちが先輩として振る舞う時期になってたんですね。
実戦を知らずまだ右往左往しているアルミタたちを、なんだかんだとしっかり導いていくティアットたちの姿はちゃんと先輩していて、そこにクトリ世代の黄金妖精たちがかつてこの娘たちに見せていた背中を、今ちゃんと後輩たちに見せられているんだなあ、と思うと感慨深いものがあります。

ラキシュも、きっと美人になったんだろうな。

大人になった彼女たちは、もう自らが歩く道を選んでいる。ティアットも、パニバルも、コロンも、自分の道を進んでいる。ならば、その道が離れることもあるだろう。お互いに道を譲らずぶち当たることもあるだろう。それもまた、生きるということだ。彼女たちは、死霊として発生した彼女たちは、今こうして間違いなく生きている。世界が滅びるその時まで。
かつて、リーリァたちがそうであったように。

ならば、エルクは? 永遠の幼子である彼女は? 紅湖伯は文字通り、この世界を彼女の揺り籠としたいみたいだけれど、リーリァ・アスプレイに憧れたこの子は、クトリの恋を応援したこの子は、黄金妖精たちの夢を見続けた彼女は、モーントシャインと並んだエルクは。
いつまで幼子で居続けるだろうか。

長き長き物語の終わりが近づいている。最終巻は来月すぐに。待ち遠しくもいつまでもこのまま微睡んでいたい気にもなる。この世界も、物語も、一人ひとりも、好きであるが故に。


枯野瑛・作品感想

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 2 ★★★☆   



【スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 2】  森田季節/紅緒 GAノベル

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300年スライムを倒し続けていたら、いつのまにか世界最強になってました。
おかげで面倒ごとに巻き込まれはしたものの、
最終的には新しく家族になった4人の娘たちとスローライフを始められそう、だったのですが……。

ええっ、エルフのハルカラが経営する工場で幽霊騒動? 収まったと思ったら今度は違法操業とかで逮捕されちゃうし! さらには私の活躍(?)が魔族に評価されて、魔王の城へご招待!?
――って、今回もトラブルの予感しかしません!

それでも私は負けずにスローライフを目指すからね!!


ハルカラには意外な一面が!?
本書だけの書き下ろし短編「迷い猫が来た」も収録でお届けです。

お祭りでの喫茶店話はアニメでは最終回だったのですが、なるほどアニメで最後に回したのはグッドでした。この段階ではロザリーもフラットルテも家族に加わってなかったですもんね。彼女たちの給仕服姿はまさにガンプクでしたから。
ちょうどお話としても、家族が出来て家族と一緒に旅行して、と外に出る機会が増えてきたところで、家族みんなで外とつながるナニカのイベントをしよう、というタイミングだったのでしょう。
家族の中だけで完結しているのもいいのですけれど、外とつながることでより深く家族同士の繋がりを感じる事もありますから。
それにしても、ライカは美少女ですなー! ドラゴン娘ってわりとワイルドだったり美人系の傾向があると思うのですけれど、ライカはむしろ可憐系なんですよね。性格的にもお淑やかだし、清楚可憐系なんですよ。この娘が最初、最強を名乗って襲ってきたのが不思議なくらいお淑やかなんですよ。
同性をも魅了してしまう絶世の美少女っぷり、どうも元々お洒落で衣装のセンスも抜群みたいですし、家事能力も高いのだから女子力も抜群だし。
マジ可愛いです。
そして、いつもなんだかんだと助けてくれるベルゼブブ。ほんま、この人お姉ちゃんやなあ。アズサがお姉ちゃんと呼ぶのも良く分かる。しょっちゅう様子見に来てくれるママのお姉ちゃん、つまり伯母さんって感じなんですよね。居る居る、こういう親戚のオバちゃん。いや、年齢的にお姉さんと呼ばないと怒られますが、いや年齢を言い出すとオバちゃんどころじゃないのですが。
普段偉そうな喋り方してるのに、給仕役に回った途端にちゃんとTPOに合わせた丁寧な言葉遣いできるの、ほんと社会人レベル高くて好き。
そもそも、このベルゼブブさん、魔族国家でも偉い人は偉い人なんだけど、宰相とか国務長官とかじゃなくて農相なのが結構ツボなんですよねw

というわけで、この巻から新たに幽霊のロザリーと、ブルードラゴンのフラットルテが家族に加わることに。ロザリーは世界一元気な幽霊と呼ぶに相応しい快活な娘でハルカラとは別の意味でムードメーカーなんだけど、元々地縛霊だけあって闇は持ち合わせてるんですよね。
まあアズサも過労死して転生してるくらいなので、そっち系の闇は深いのですけれど、かつてをちゃんと反面教師にして、家族にも自分の限界を越えて無理とか無茶しそうになると、きっぱり止める所はアズサ自身のトラウマ感じると共に、自分自身の体験談も交えているので非常に説得力があります。
ゆるく軽くをモットーにしているような物語ではあるのですけれど、時折挟まれる人間社会の中で生きていく中で押し付けられる圧力や圧迫、強制力への戒めや、心の負担や精神的な疲労といった人が抱えがちになってしまうものへの真摯な手の差し伸べ方、言葉の選び方は時に鋭く貫くように時に優しく包み込むようで、ふと考えさせられたり感じるものがあったり、じわりと染みたりするものがあり、決して薄っぺらいお話ではないんですよね。
そして、家族を取り巻く愛情に癒やされる、ヒーリングされるのであります。
あのシャルシャとファルファの双子への愛情を伝えるためのほっぺたへのキス。そして娘たちからのお返しのキスのシーンは、ほっこりを通り越して尊さに解脱しそうになりました。
アズサって独身のはずなのに、かなりママレベルが高いんだよなあ。あとのフラットルテにもバブ味で陥落させちゃってるし。若い身空で小さな双子の娘を抱えて笑顔で頑張るお母さん味が強すぎる。
この物語に出てくる登場人物はみんな、アズサの事大好きなんですけれど、その好きってホントに家族への好きなんですよねえ。温かくて瑞々しい家族愛。
いや、ベル姐さんはまたちょっと違うんでしょうし、魔王ペコラがお姉さまと慕ってくるのも、あれ家族愛とはちょっち違っていますけれどさ。

こうして家族として加わってくるメンバーを見ると、全員寿命とか一切考慮しなくていい人外メンツばかりなので、この家族の時間はずっと続く、というのもなんかほっこりしてしまいます。
そう考えると巻末の描き下ろしの猫拾ってくる話は、そのまま飼うことになると将来色々と辛い想いをすることになるだけに、ああいう展開で良かったのかもしれません。
永遠に変わらない家族、となるとファルファとシャルシャがずっとお子様で居続ける、という所に引っかかるものがあるかもしれませんけれど、何気にこの二人、社会性は高くてそれぞれ趣味が高じて分野の研究者として認知されはじめているので、家族の家では可愛い娘たちですけれど、外との繋がりでみると会社社長なハルカラ並みに広く深くいろんな人脈を広げているのは、ハルカラが逮捕された一件で各分野の学者たちにアポ取りまくったことからも明らかなので、実は社会人としては何百年も一所にとどまってて世間が狭いアズサよりも大人だったりするあたり、こうバランス取れてるなあと感心したり。
なにはともあれ、面白かった!




Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 04 ★★★★   



【Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 04】  之 貫紀/ttl エンターブレイン

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Dパワーズが記者会見!?新たに入手した碑文とUSのスキャンダルとは!?

新たに「さまよえる館」をダンジョン1層に出現させた三好と芳村のDパワーズ。
そこで入手した碑文には、ダンジョンで行方知れずとなった人物のサインが!?
サインの謎を探るうちにDパワーズは
始まりのダンジョン「ザ・リング」に隠されたUSのスキャンダルを知ることに――。

スライムを効率的に倒すのにも四苦八苦している既存の冒険者と対比して、サクサクっといつもみたいにスライム連続討伐、ってそれどころかアルスルズの能力使ってさらに効率化しちゃってるじゃないか。
この両者を比べると、Dパワーズがいかに無茶苦茶やってるのが具体的によくわかるなあ。箱作ってそこにスライム押し込んで押しつぶす、とか試行錯誤してるテレビ制作に雇われた冒険者たちの努力は面白いんだけど、DIY​レベルの工夫じゃあそりゃどうにもならんよなあ。
というわけで、気軽に一階にもう一度館を出現させてしまうDパワーズの二人。もすこし、もう少し慎重にやりませんか、アナタたち。結構勢いだけでやってません? いや、もう一度さまよう館の探索をやった方が良かった状況なのはわかるんですが、せめて同じフロアにどれだけ他の冒険者が活動してるか、とか。実際館に突入することになった場合の事前の入念な準備とか、あんまりしてなかったですよね!?
おかげで、結構なピンチに陥ってたじゃないですか。破壊不能オブジェクトのお陰で脱出不能にも成りかけてて、実際マジの命の危機になってましたし。芳村さんの何気ない善意が発動してなかったらヤバかったですよ、今回は。
いや、今回に限らず前回のVS神についても、あそこヤベえ所だと事前に聞き及んでいたにも関わらず、わりとホイホイと気軽に突入してしまっていたような。そこでいきなり神と戦闘、という事態になってしまったわけで。
このDパワーズの二人。今や自分たちが持つ技術や知識が人類の行く末に大きく関わっている、という自覚とかあんまりないんじゃないんだろうか。もう洒落にならない規模の叡智を、独占してしまっているのに。それが人類全体の財産と言ってイイ代物であり、彼らが死んでしまって喪われる事がどれだけ巨大な損失につながるか……まあ、わかってはいるんだろうなあ。わかっているけど、そんな大仰な話は知ったことじゃありません、と気にしなさそうなのがこの二人なのは、うんわかってるわかってる。
かと言って、無思慮無分別に混乱を広げるのを良しとしているような人たちでもない事は、ダンジョン管理課に事前にあれこれと連絡報告相談はしている事と、アメリカなどの国家中枢にあるホントにやべえ虎の尾は踏まないように立ち回っている事からも伝わってくる。
とはいえ、自分たちを蔑ろにしようとするやつ、利用して使い潰そうとするやつ、利益を掠め取ろうとするやつらに対しては、実にクレバーに立ち回るのですが。おもに三好が。
この自称他称共通の近江商人娘、よくこんなイイ性格した爆弾娘が市井に転がっていたなあ、と。普通、かどうかは知らないけれど、少なくとも数ヶ月前までは芳村と同じくそのへんの企業に務めていたまだ入社したばかりのOLだったんですぜ。いや、ねえよこんな初々しさの欠片もない新入社員w
マスコミ相手に人を食ったような記者会見を切り盛りして、記者どもの鼻面を引っ掻き回すのですから、今まで本当に普通の女の子の人生送ってきたのか何だか怪しくなってきたぞ。
すでに人生踏み外すような大金を懐に収めているにも関わらず、多少贅沢というか金銭感覚を上流階級よりにシフトしたとはいえ、その金遣いって成金というような不細工なものではないし、そもそも金に振り回されていませんし、それでいてちゃんと金にがめつく近江商人らしくがっぽり取れるところからはせしめているわけですし。
ほんと、何者なんだろうこの娘。
Dパワーズの代表としては十分以上の個性の持ち主であり存在感の塊であることは間違いなく……そりゃ、注目は彼女の方へと集まるわなあ。
ただ、一定以上ちゃんと付き合いを深めると代表である近江、じゃなくて三好が芳村の方を立てている事は如実に理解できるわけで……見る人が見れば、Dパワーズの中心人物がどちらなのかというのは一目瞭然とも言える。
それなのに、芳村さんってぶっちゃけ何してるのかさっぱりわからんのですよね、傍から見たら。三好があらゆる方面に積極的に動いているのに比べたら、芳村さんは動きがさっぱり見えない。目立たないし三好のオマケみたいにしか見えない。いや、目立たないことはないのか。妙な人変なおじさんとして有名ではあるみたいだし。
ちゃんと迷彩になってるんだなあ。
それでも、彼こそがヤバいのではないか。彼こそがあのファントムなのではないか、と想定する人達は段々と出てきているわけで……そんな想像をするくらい付き合い深くなってきている相手にはあんまり隠すつもりもなさそうですけど、そもそもこの二人。
大体、あのアルスルズだって最近もうあんまり隠してないじゃないですか。区にちゃんと飼い犬として登録できたからって、出来たからって犬って公共に認められたからって、わりと衆目のあるところに出しちゃってるけど、いいんですかあれ!?
なんか騒動になっているの、収めなきゃならないダンジョン管理課、特に斎賀さん、仕事が立て込みすぎて過労死しないだろうか。
微妙に覚醒というか、組織内で必要に駆られてだろうけれど、その役職に与えられている職分以上に権力と権限を掌握してふるいだしているような気もするのですが。
いつも、Dパワーズから鳴瀬さん通して無茶振りとか、情報の爆弾投げつけてこられて頭抱えているイメージしかない人なのに……この人、頭抱えて動かなくなるんじゃなくて、ため息つきながら絶対になんとかしてしまうの、考えてみると意味不明なくらい超絶有能なんだよなあ。不思議と往々にして、こういう人の上役は同じくらいの規模の無能になったりするのですけれど。

さて、ダンジョン発生の原因となった人物の情報とか、ダンジョン発生時の事件の状況とかの話も出てきて、ストーリーも徐々に進んでいるんだろうかこれ。芸能界というかテレビ番組制作関係の話もチョロチョロDパワーズに絡んできているし、さてまたぞろ世間をあっと言わせる盛大な花火が打ち上がるのか、楽しみ楽しみ。



婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~ ★★★★   



【婚約破棄された令嬢を拾った俺が、イケナイことを教え込む~美味しいものを食べさせておしゃれをさせて、世界一幸せな少女にプロデュース! ~】  ふか田 さめたろう/みわべ さくら PASH! ブックス

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森の奥に住まう人嫌いの魔法使い・アレンは、「魔王」と呼ばれ周囲の人々から恐れられていた。
隠遁生活を送る彼はある日、行き倒れた令嬢・シャーロットを拾う。
彼女は無実の罪で婚約破棄され、祖国から逃げてきたのだという。
それを聞いたアレンは、かつて仲間と信じていたパーティに裏切られた苦い経験を思い出す。
17歳、搾取されっぱなしの彼女の話を聞いて、アレンは決意する。
自分の屋敷に住まわせて、……イケナイことを教え込む、と。


この娘はほんと、絶対に幸せにしてあげなければならない!!
と、思わず使命感にかられてしまうほど、シャーロットという娘の不憫さと純粋無垢な健気さ、幼気なさが極まっていて、なんかもう全力で過保護にしてあげないと。甘やかしてあげないと。この世界には素敵なものがいっぱいあるんだと教えてあげないと、という気になってしまう。
べらぼうにかわいい、かわいい、ひたすらに可愛い。
こんな可愛くて優しくてイイ娘が、天使のように女神のように素直でイイ娘が、これまで筆舌しがたい境遇の中で虐げられてきたというのが信じられない。搾取され、踏みにじられ、苛められ、人扱いされなくて、何の楽しいことも幸せなことも経験せずに生きてきたんですよ。
自由にしていろ、と言われたら何をしていいかわからなくてひたすら床の木目を数えているような娘なんですよ?
どれだけこれまでの人生、自由与えられていなかったんですか。
そんな娘が、酷使され続けた果てに政略結婚の駒にさせられた挙げ句に冤罪で毒婦に仕立て上げられて処刑されそうになったわけです。
何の自由意志も許されていなかった、何も判断させてもらえなかった娘が、このときはじめて自分の意思で行動したのでした。自分の意思で決断し、思い切って逃げ出して、生きたいと願ってボロボロになりながら国外まで脱出して、追手に追われながらも空腹に擦り切れながらも、諦めずに逃げ続けて、アレンの住まう森の奥の屋敷の近くに行き倒れるまで逃げ延びたのである。
シャーロットは、アレンに出会った時点でちゃんともう選択はしていたのです。ただ無抵抗にしていて横から勝手に救われたのではなく、ちゃんと自分の力で逃げ出した、自分の意思で生きたいと願った。ここまで諦めずに、頑張った。
アレンが助けるのに、十分なものを最初の時点でこの娘は示していたんですね。

もっとも、最初はアレンも捨て猫を拾った、くらいの感覚だったのでしょう。自分が嫌われ者、という自覚はあっただけに、ある程度世話をして元気を取り戻せばすぐに出ていくだろう、と必要以上にかまうつもりもなく……まあ、捨て猫をあれだけせっせと世話して面倒見て心身充実せさて出ていけるようにしようとしている時点で、この男根っからの世話好きという事が暴露されてしまっているのですが。
ともあれ、最初はそっけない態度でいようとしたアレンですが、シャーロットがこれまで過ごしていた境遇を、虐待され続けた過去を、どこか不均衡で不安定で常識を知らないシャーロットの様子から伺い知り、また彼女の口から詳しく聞くことで、怒涛のごとく前のめりになっていくのである。
その不憫さと裏腹に、シャーロットがあまりにもいい子でありすぎるのも拍車をかけて、

「あかん、この娘は幸せにならんとあかん!!」

というスイッチが入ってしまうことに。
まあこれ、アレンが特別、というわけではなく、以降登場する人物の殆どが、シャーロットの人柄を知り親しくなった途端に、この娘は幸せにならなあかん!モードに突入するので、むしろシャーロットの方が筋金入り、というべきなのでしょう。
あまりにも影響が周辺に及びすぎて、若干シャーロットをご本尊とした宗教法人が誕生しそうな勢いもあるのですが。

ともあれ、この幸せというものを全く知らず触れたこともなく経験したこともない少女に、とにかく贅沢をさせて美味しいものを食べさせてお洒落させて遊ばせてあげて、世間一般ではちょっと背徳的な夜中にこってりした夜食を食べてみたり、一日中ごろごろ時間を浪費したり、アイスクリームを大きな器でこそぎ取りながら好きなだけ食べてみたり、という悪いことを、イケナイことをさせて堕落というものを体験させてやりたい、という欲求に素直に驀進する主人公アレンは実にこう……良い魔王っぷりでありました。
若干、そのままやりすぎるとシャーロット、ぷくぷく際限なくふくよかになっていかないか!?という心配もあったのですけれど、元々アレンのもとに現れた時のシャーロットは長年の虐待もあってそもそももっと太らないと、肉が足りない!という状態だったのでこれはこれでよし。

そうして、溺愛と言っていいほどシャーロットを猫可愛がりして彼女のために、様々な幸せな体験を味わわせていくアレン。途中から乱入してきた妹も加わって兄妹揃って、さらに街で親しくなった面々も参加して、シャーロットが幸せを感じてくれるイベント盛りだくさんでお送りします、という風になっていくのだけれど、そんな中で段々とアレンのスタンスも変わってくるんですね。
他の誰でもない、自分がこの娘を、シャーロットを幸せにしてあげたい、という気持ちが知らず知らず彼の魔王の言動を侵食していくのである。
最初は拾った猫を扱うように、やがて過保護なくらい溺愛して囲い込んで、いったい何目線だよ、と妹たちに突っ込まれるくらい、保護者目線だったのがいつのまにか、掛け替えのない大切な人への接し方へと変わっていってるんですよ。本人はまだ自覚ないようなんだけど。
また、シャーロットの方も自分を助けてくれた、という以上に虐待されてきた人生から自分自身に価値を感じる事が出来なくなっていた自分の心をすくい上げてくれて、幸せって何かを教えてくれたアレンに対して、そりゃただの恩人なんて思いで済むはずもなく。
二人の想いの交錯が、また甘酸っぱくてキュンキュンさせられるわけですよ。アレン以外の面々もシャーロットを幸せにしなくては教団の面々である以上、彼女の初めての恋は当然彼女の幸せにも通じるわけですから、全力で応援体制ですからね。
アレンも自覚あんまりないくせに、こちらも全力で臆面もなくお前は自分が絶対守るから安心しろ!みたいな事を言っちゃえる、さすがは魔王様というべき傲岸不遜のイケイケっぷりなので、色んな意味で頼もしい人なので、この揺るぎない幸せ空間に安心して浸ってられそうです。
またシャーロットを不幸にしようという何かが現れたら、アレン筆頭に街中総出でタコ殴りだろうからなあ、安心安心w
もうひたすらイチャイチャしててください。


オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど! ★★★★   



【オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!】  コイル/雪子 電撃の新文芸

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同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。

同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

これは面白いなあ! 面白かった!
偽装結婚というタイトルになっているけれど、作中で自分たちで言っているように「シェアハウス婚」と表現した方がしっくりくるような関係なんですよね。
相沢さんも滝本くんも、二人共仕事ではバリバリのやり手ビジネスマンでありながら、プライベートではそれぞれどっぷりとハマったオタクでもあるという、公私を見事に使い分けている社会人。ビジネスマンとして非常に優秀な人らしく、二人共コミュニケーション強者と言っていい人種ではあるんだけれど、同時に他人を必要としない独りで居ることを全く寂しく思わない人種でもあるんですよね。だから、決して恋人とか結婚相手なんかを必要とはしていないんだけれど、同時に他人と一緒に過ごす事に苦痛を覚えるというタイプでもない。友人も少なくないし、他人との距離感のとり方が抜群に上手いんですよね、だからこういう人種って、最強なんだよなあ。
おまけにこの二人って、かなり強度の高いオタクなんだけれど、自分のテリトリーであるジャンル以外でも好奇心を抱き楽しめるタイプなんですよね。だから、自分の知らない未知のジャンルの話をされても、むしろ目をキラキラさせてそれは面白そう!と食指を伸ばせるのである。
だから、相沢さんも滝本くんも自分のテリトリーの話を相手にしても、疎ましがられるどころか本当に心の底から楽しそうに話を聞いて一緒に面白がってくれるものだから、話が弾む弾む。
おまけに二人共距離感のとり方がべらぼうに上手いから、変に強引に自分の好きなものを押し付けたりしないし、かと言って遠慮して遠ざけたりもしない。ごく自然に、自分の興味あることを話題に出して盛り上がり、また相手の興味あることを訪ねて盛り上がり、未知のジャンルに知見は広がり思わぬ見地から自分のジャンルへの考察が深まったり、と独りで楽しんでいた事が二倍三倍になっていくかのような生活がはじまってしまったのだ。
そりゃ楽しい!
それ以外の普通の生活空間の共有も、お互いまったくストレスを感じない距離感をごく自然に取れているんですよね。相手が忙しそうなら邪魔せず、そうかと思うとちょっとした気遣いでかゆい所に手が届く手助けをさり気なく行き届かせることで、ああこの人と一緒に暮らしてて良かった、という想いがふつふつと湧いてくる。楽しいだけじゃなく、嬉しいと思うことが毎日の中に増えてくる。

人生、充実してる! 毎日が楽しい! なんかもう、ハッピー! という風になっているのが伝わってきて、思わず読んでいるこっちにも多幸感のおすそ分け。なんかもう本当に楽しそうで、人生にハリがあって、素敵だなあと思わず微笑んでしまいました。

そんでもって、実は滝本くんの方が前から相沢さんの事が密かに好きだった、というあたりがまた絶妙なんですよね。好きだし異性として恋はしているけれど、今の生活が想定以上に楽しすぎて、大好きな相沢さんが自分と一緒に暮らしていることで滅茶苦茶楽しそうにしていてくれることが嬉しくて、そんな時間と空間を壊したくなくて、現状維持に満足している滝本くんが何ともいじらしいのです。
彼としては、今の所今以上を望んではいないんですよね。今の段階で幸せ過ぎる、というのもあるのでしょうけれど、彼女のほうがとても楽しそうでいるのにそれを壊したくない、と思っているあたりが健気でいいんですよ。それでいて、問題を抱えている相沢さんと実家の家族との関係に、一石を投じるつもりでいるあたり、ちゃんと「結婚した」という事実を彼はともすれば相沢さんが想像している以上にしっかりと背負っているんじゃないかな、これは。責任云々じゃなくて、もっと相沢さんには幸せになってほしい楽しく居て欲しい、という気持ちから生じているようにも見えるのだけれど。
これってでも、十分以上に「愛情」ですよねえ。そう思ってしまいます。
思わぬところから突然お付き合いとかを経ずに結婚からはじまった関係だけれど、最初から楽しいで満ち満ちた関係になってしまったわけで、そこからさらに二人は本当の意味での家族になるのか。このサキの進展が色んな意味で楽しみな、そして現状ですでになんかもう見てて楽しいオタク夫婦のスターティングでした。

しかし、イケメンくんのドルオタというのはなかなか今まで見たことなかったカテゴリーで興味深かった。相沢さんみたいな、クリエイター方のオタクではないんだけれど、本格ドルオタって凄まじくアグレッシブで行動的でパワフルなんだなあ、と感心するばかりでした。
どんなジャンルでも、突端を行くオタクの人はやっぱりスゲえなあ。

魔女と猟犬 2 ★★★★   



【魔女と猟犬 2】  カミツキレイニー/LAM ガガガ文庫

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静寂に包まれた“氷の城”で巻き起こる殺戮

“鏡の魔女”テレサリサと共にレーヴェを脱出したロロは、魔力の影響で眠り続けるデリリウムを連れてキャンパスフェローへと戻ってくる。だが、王国アメリアによって陥落された故郷は、流血と破壊に蹂躙され見る影もなかった……。

ロロとテレサリサは城下町に作られた隠れ処にて、城から逃げ延びた者たちと合流する。領主バド・グレースの留守を預かる宰相ブラッセリ―と、<鉄火の騎士団>の副団長であり、ハートランドの妻であるヴィクトリアをはじめとする九十二名の者たち。

彼らは隠れ処を捨て、<北の国>へ向かうことを決断する。そこには、バドが生前に同盟を結んだ雪王ホーリオが治める<入り江の集落ギオ>がある。きっと助けになってくれるはずとの目算からだった。そして、ロロには<北の国>へ行くもうひとつの目的があった。それは、氷の城に住むという“雪の魔女”を味方につけること――。

その頃、王国アメリアの王都にあるルーシー教の総本山“ティンクル大聖堂”には、魔術師の最高位を冠する九人の者――“九使徒”が集められていた。

これはッ、マジかーー!
いやあ、これは驚いた、マジかロロよ。一巻のあの怒涛すぎる展開もあまりにも予想外で驚愕させられたけれど、今回のそれも常道からは大いに外れていって、まさかそんな事に!? と、唸らされる事になってしまった。
容赦ないと言えば容赦全然ないよなあ。というよりも、主人公であるロロに優しくないというべきか、或いはロロにとって彼に背負わされてしまったものが重すぎた、という事なのかもしれない。
当代黒犬。殺す覚悟を決めた彼の実力は、それこそ比類なきものなのは疑いようもありません。アメリアに対抗するために魔女を集める旅ですが、ぶっちゃけ黒犬ロロはその魔女に引けを取らない「戦力」でもあるんですよね。魔法という未知すぎる力に惑わされ苦境に立たされますけれど、テレサリサが丁寧に魔法について講義してくれたお陰で、何もわからない意味不明の存在ではなく、ちゃんと戦う前から相手を考察する余地ができた。それは黒犬にとってゼロからとてつもないアドバンテージを得たも同然のことで、歴戦に魔術師を相手にしても一方的にやられてしまう可能性は大いに減じたのではないだろうか。
とはいえ、九使徒に連なるアメリアの魔術師たちは、謎多く対峙して相手の必殺を躱しながらその正体を見極めなければならないというハードルの高さなのですが。
突然、首が90度捻られる、とか完全に初見殺しじゃないですかー、怖いなんてもんじゃねえ。ホラー映画かよ。
そういうのを相手に出来るだけでも、化け物じみた戦力なんですよね、黒犬。
でも、戦闘力が高いこととロロという人間が強いことは、また別の話だったんですよね。真面目で責任感が強く、忠誠心も高く……それでもまだ十代の幼さが拭いきれない若者だったのだ、このロロという少年は。
そんな彼に、王の遺命が背負わされた。王が殺され使節団は全滅し、生き残った姫も目を覚まさず、それでもなお姫を守り、魔女を集めろ、という王の遺命に従い、アメリアの追手と戦いながら蹂躙された故郷を後に戦い続ける日々。
そんな素振り、一切見せていなかったけれど、見せていなかったことこそがロロがどれだけ張り詰めきり、限界に達していたかの証左だったのか。
我武者羅に必死に限界を踏み越えて頑張り続け……でもその重さに苦しさに辛さに、どこかで楽になりたいという願望が鈴を鳴らし続けていたのだ。
稀代の暗殺者、その後継であろうとも。この子は思いの外、普通の子だったのだ、きっと。

テレサリサにとっては、これはしごを外されたようなものなんだろうか。でも、ロロが本当はもう疲れ切り心折れて死にたがっていた事に気づいたテレサリサは、そのまま彼を死なせてあげたほうがいいんじゃないだろうか、と思ってしまうんですよね。そう考えてしまうところが、この魔女の優しさなんでしょうね。
それでも、彼女は雪の魔女ファンネルと共に彼の生命をつなぐことになる。それは、ロロがテレサリサの目的に必要な人間である、ということも理由なのだろうけれど。
それ以上の想いも、ロロに抱きつつあるのだろうか。ファンネルもそうだけれど、ロロへの「よすが」が感じられるんですよね。そこまで深く心交わらせるような関係はまだ無いはずなのだけれど、魔女となり人との交わりを絶たれていたテレサリサにとって、ファンネルにとって、ロロは魔女を恐れず怯えず人として接してくれた数少ない一人。それが使命ゆえであったとしても、ロロは常に誠実だった。そんな彼によすがを感じてしまう。心を幾ばくかでも寄せてしまう。それは、とても人間らしい情動なんじゃないだろうか。

魔女とはなんなのか。
同じ人と隔絶した存在として、アメリアの九使徒たちがいるけれど、あれらは本当に不気味で人として完全にハズレきってしまっているのがよくわかるんですよね。異常者たちであり異端であり、人の心を感じさせない、或いは人としての心を修復不可能なまでに歪めてしまっているかのような、異なる者ども。
それに比べて魔女たちは……その心根が人としてあまりに情深かったが故に魔女になった、そんな存在にも見えるんですよね。あまりにも人らしいからこそ人でなくなってしまった者たち。
その壮絶さは、美しさとなって容貌に映し出されている。表紙絵に描かれた一巻のテレサリサ、この二巻のファンネル。ともに、目に焼き付くような強烈な存在感であり、息を呑むような凄絶なまでの美しさだ。
そこに垣間見えるのは、一心不乱の生き様か。
こうして読み終えてみると、タイトルの魔女と猟犬というそれがすごくしっくり来る。確かに、この物語は魔女と猟犬が主人公の物語だ。彼と彼女らの切々とした在り方を書き記した物語だ。

個人的には、あの雪の国の姉と弟には、もう一歩踏み込んだ再会が欲しかった。別れも、再会も、弟はついに姉と向き合うことが出来ないままだったのだから。姉は、弱虫だからべつにいい、と言うのかもしれないけれど。この姉弟のお互いに対して抱いているだろう複雑な情念を、ぶつけることも交わすこともなく、通り過ぎていってしまったから。願わくば、もう一度何らかの形で再会と決着があれば、と思わずにいられない。

そして、まさかのカプチノ一人旅。しぶとい、このメイドしぶとい!


 
12月2日

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11月20日

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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(富士見ファンタジア文庫)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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(GCN文庫)
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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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11月6日

(角川書店単行本)
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(SQEXノベル)
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(SQEXノベル)
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11月5日

エンターブレイン
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(エンターブレイン)
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(ドラゴンノベルス)
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(ドラゴンノベルス)
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(PASH!コミックス)
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(フロース コミック)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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