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しらび

異世界、襲来 03.星を呼ぶもの ★★★  



【異世界、襲来 03.星を呼ぶもの】 丈月城/しらび MF文庫J

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着装者vs着装者。ヒーローは、人間同士の戦いに巻き込まれる。

激化する異世界文明の猛攻に対し、各国はアスラフレームの配備を推進していた。そんな中、アリヤの持つ「休眠状態のアスラを覚醒させる力」を検証するために水上都市《エリクシア》を訪れたユウたちは、中国の着装者四号・雪麗、インドネシアの着装者候補・シャンティと出会う。一方の日本では、福岡の臨時政府が着装者三号の身柄を要求していた。断固拒絶するユウたちだったが、《福岡》が隠し持っていた七号フレーム《アグニ》とその着装者・巻志摩レオの手によりアインが囚われてしまう。大魔術師クアルダルドの奸計も蠢く中、同じ着装者を相手取ったユウの戦いが始まる──ヒーローVS異世界の革命的戦記、第3巻!

アスラフレーム装着者が続々と登場。なんだけど、マトモな奴が全然いないじゃないですか。それも自我が肥大化しているような連中で、まあ人格的にもとてもじゃないけれど好感を抱けないようなのなので、どういう目的でこういうキャラにしたんだろう。仲間にするには此方からご遠慮したいし関わり合いになりたくない、かと言って敵対するにしても面白みを感じる相手じゃないんですよね。
戦う価値のある良い敵、ライバルって感じじゃ到底ないですし。どうにも魅力を感じにくいキャラなのです。
特にレオくんね。日本が壊滅する過程において、酷い体験をしてきて人間にも世界にも三行半を突きつけている、という境遇もわからないでもないのだけれど、この世界のご時世ではそういう体験をした人は珍しくもないでしょうし、ガキが拗ねて斜に構えてイキっているようにしか見えないのが余計にタチが悪い。年上のお姉さん上司に宥められて多少のコントロールを受け付けるあたりなんぞも中途半端ですし。これで、悪いところばかりじゃない、と言われてもねえ。

肝心の敵である異世界の方も、なんかクアルダルド一人だけがウキウキと暗躍しているばかりで、地球を侵略してきている異世界、という敵側の様子が全然見えてこないものだから、地球サイド、人間側が勝手に内部分裂や権力争いで自滅しているようにしか見えない、というのもスッキリしないところ。そのクアルダルドはというと、いつもの愉快犯型戦闘狂で独りで勝手に遊んでいるだけで、こちらもユウたち主人公サイドと噛み合っているかというと、グアルダルドの一方的な片思いでユウの方はなんか強い敵、という認識しかなくて此方も好敵手とかお互いしのぎを削りあう噛み合った敵同士、という感じもなく。そのせいか、グアルダルド自体があんまり印象に残らないんですよねえ。

今回はユウたちもいまいち行動に指針が見られず、明確な目標や意思が感じられず、周りの状況に流されてるうちに各地でなんとなく戦いになって、という風情で全体的に中途半端に見えちゃったんですよね。なにやってたんだろう、今回。
アインが囚われた事で、ユウがアインの存在の大きさに気づく、という展開もあったのだけれど、そこに感情が行き着くまでが結構唐突感あって、そこに至るまでの丁寧な積み重ねがあったんだろうか、これ。クライマックスの展開も同じく唐突感があって、え?どうなったの? と戸惑ううちに何もかもが終わってしまっていて、作中の登場人物たちの感情についていけずに、あれ?と思ううちに終わっちゃったりして、なんか置いてけぼりだったなあ。

なんか今回は全体的に焦点がぼやけていて、いまいちノリ切れませんでした。あと、時事に関しての作者の考えをキャラに語らせるの、あれは激烈に冷めるので勘弁してほしいものです。


りゅうおうのおしごと! 13 ★★★★   



【りゅうおうのおしごと! 13】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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五人の少女が集う最後の一日。約束の13巻!

三段リーグ最終日の翌日。
『史上初・女性プロ棋士誕生!』の報に日本全土が沸き立つ中、雛鶴あいは関西国際空港を訪れていた。
親友の水越澪が海外へ旅立つのを見送るために……沈みがちになる気持ちを隠して明るく振る舞うあい。
意外な人物との再会をきっかけに、事態は思わぬ方向へと動き出す。

「最後に一つだけお願いがあるんだ」

同じ頃、あいの師匠である八一は東京の病院にいた。満身創痍で眠り続けている銀子の傍らに……。
あい、澪、綾乃、シャル、そして天衣。五人の少女が集う最後の一日を描いた、約束の13巻!!
飛び方を覚えた雛鳥は今、大空へと羽ばたく――
水越澪、この娘まだ小学生なのだけれど、既に一廉の人物よなあ。
ドラマCDなどの特典を小説に書き下ろした短編集であり、JS研の少女たちの別れを描いた13巻。
短編のほうがもう酷くて、なにがって師匠のロリコンがガチすぎて、この竜王ガチでロリコンなんじゃないのか!? と、疑いたくなるのですけれど、よくよく見るとどちらかというとシャルちゃん限定なんですよね。特別扱いはシャルちゃんのみ! つまり、こいつロリを通り越してペドなんじゃないかと。本来なら年齢的にロリ歓迎、のはずのあいちゃんまで真性であるのを垣間見せてしまう師匠に、かなり必死になって矯正を促しにかかってますし。

まあそれはさておき、本編はJS研の仲間でありムードメーカーであり皆をつなぐ鎹でもあった水越澪が、親の仕事の都合で海外に移住する事になり、その見送りにJS研のみんなが空港まで小学生だけで訪れる、というお話。保護者となる面々はちょうど皆、銀子のプロ昇段と八一の帝位戦のために上京することになり、同世代だけで別れを、という塩梅になってたんですね。ある意味、大人の介入を許さずに子供たちだけで彼女らの世界だけで、本心からぶつかりあえる最後の機会だった、という事なのでしょう。
折しも、あいは銀子がプロになるという決定的な差を見せつけられると同時に、どうやら八一と師匠が付き合い始めたことも察していて、落ち込んでいる最中でした。そこにトドメと言っていい親友であった澪との別れが重なって、かなり凹んでたんですよね。
この娘たちはまだ小学生なのですけれど、彼女らの将棋に対するスタンスはもう遊びじゃなくなってる、というのは10巻での彼女らが主役となる話で見せてくれていました。
でも、それからここまで銀子の奨励会での話を中心に描くことで、将棋に生きる棋士たちは真剣とか本気を通り越して、もう魂まで将棋で染め上げられるような人生そのものを将棋で埋め尽くすような、存在自体が将棋のためにあるような、そんな壮絶すぎる生き様を見せつけてくれていました。
果たして、彼女たちはどうなのでしょう。まだ子供だから、小学生だから、というのは将棋に関しては言い訳にならないんですね。将棋という生き方は、既にもう小学生の頃には自分自身で刻み込まなければならない。それをすぎれば、遅いくらい。あいですら、デビューは遅かったと言えるくらいなのですから。
また奨励会では椚 創多が既に小学生でありながら、壮絶な闘争をくぐり抜けて恩人とも尊敬する人とも兄とも慕う人の首を泣いて切り落とすような、棋士としての生き方を体現している。
遅いなんて事はもうないのです。
彼女たちの中で、唯一天ちゃんだけは、最初から既に魂は棋士として完成していました。彼女はもう既に棋士として生きていて、死ぬまで棋士として在り続けるでしょう。
そんな彼女が何気に一番認めていたのが、澪だったんですね。もし、澪以外のJS研の他の誰が旅立とうとしていても、果たして天ちゃんは見送りにきたでしょうか。いや、この娘なんだかんだと優しいから見送りくらいは来るかも知れませんけれど、なんだろうあんな風に相手を対等に認めて、選別を送るような関係になれていたのは、澪だけだったような気がします。
ってか、天ちゃんが小学生の段階で既にイイ女すぎて、この娘相手だとロリコン扱いにはならないんじゃないでしょうか。精神年齢が大人すぎるし、中身がイケ女すぎる。なんなんだこの生き方あり方から尋常じゃなくカッコいい小学生女子は。正直、銀子の抜けた後の女流棋士の界隈を、天ちゃんが席巻を通り越して蹂躙していくの、目に浮かぶようなのですけど。

あとで澪が見せた、将棋に対するスタンスは、本物でした。将棋に生きる、呼吸が出来なければ死ぬように将棋を息を吸い息を吐くように指し続ける。そんなそれ以外のすべてを投げ打つような、将棋へののめり込みをこの娘は見せてくれたんですね。
もうこの娘は、本物の棋士だったのです。たとえ海外に行ったとしても、彼女は何らかの形で女流棋士として戻ってくる、それを感じさせる本物の本気でした。
いや、作中での表現を借りるならば「強烈な努力!」というものでしょうか。

シャルはまだ幼く、綾乃は周囲と比べての自身の才能への疑問を抱き、そしてあいは将棋と出会った時間の短さ、経験の浅さから、まだ「うつつを抜かす」状態だったと言えるでしょう。
あいに関しては、ずっともどかしくもあったんですね。この娘の才能はとびっきりで、完全に人類とは違う将棋星人の構造をしていて、しかしその魂は将棋に染まっていなかった。
これまでも、将棋に対して本気になろう、と思うだけの痺れるような体験を、燃えるような熱量を、死にたくなるような悔しさを、感じてきた経験してきたのは確かです。そのたびに、この娘は将棋に対して深く深く向き合い出していたと思います。真剣だったでしょう、本気だったでしょう。
でも、まだ将棋に魂を侵され切ってはいなかった。才能とは裏腹に、その心根は線引されたコチラ側。まともな「人」の領域の側に立っていた。
そんな彼女に対する澪の見せたくれた生き様は、あいに語りかけてきた別れの一局は、言葉に尽くせないほど沢山の、想いを届けてくれたのでした。これほど強烈な叱咤激励を、他に自分は知りません。小学生の女の子が、同じ小学生の女の子に送る激励としては、あまりにも強烈でした。人生のターニングポイントとすら言えるほどの重さ。生涯の生き方を決定づけるほどの、強い強い意志の付与。
凄いなあ、人間年齢なんて関係ないですよ。心からの叫びは、こんなにも深く強く響くのか。
友情の真髄とは、まさに斯くの如し。

少女たちの、旅立ちの時である。これは彼女たちが一人の棋士として立つ日であり、師匠の庇護からも飛び出す巣立ちの日ともなるのでしょう。


さて今回は感想戦はなく、銀子が眠る病室での一幕である。
とりあえず、お燎と万智さんのナースコスプレは何だかんだとエロすぎやしませんかね?
ただ二人の騒がしさは、あれはあれで清涼剤なんですよね。ライバルとして友人として、この二人は得難い人なんだよなあ。でも、プロになるともう銀子は対戦出来ないのか。
……将棋に関しては、もう八一の存在感ってあの「名人」に勝るとも劣らないようになってるんだなあ。身近な親しい人ですら、将棋に関わるものなら感じざるを得ない「威」。風格が、もうこの青年には備わっている。
それはそれとして、弟として妹として八一と銀子は桂香さんには一生頭あがらんのでしょうね、これ。



異世界、襲来 02.王の帰還 ★★★☆   



【異世界、襲来 02.王の帰還】 丈月城/しらび  MF文庫J

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激化する対異世界革命的戦記。舞台は関西へ――

水上租界《那由多》に辿り着くもその矢先、分断された一行。ユウとアインは大魔術師クアルダルドの《ポータル》に囚われ、伊集院たちは《那由多》を統治している亡命エルフの理事会と接触していた。理事会と国防軍との間に生じる不穏な空気を感じながらも、久々の文化的な生活を満喫する伊集院たち。一方のユウとアインはクアルダルドの歓迎に戸惑いつつ脱出方法の模索を開始する。そんななか、ユウは三号を継承することに対して抵抗を感じていた。皆の希望となって戦うこと、ヒーローとしての資質に対して悩み始めた彼が出した答えは……。丈月城×しらびによるヒーローVS異世界の革命的戦記、怒濤の第2巻! 今、王は帰還する――。


正義のヒーローになんかなれない。国が崩壊してからこっち、人間の、大人の醜い行いに何度も痛い目を見て、嫌な目にあわされ、傷つき続けて。きっと彼は失望していたのだろう。
そんな嫌な人たちまで、なんで身を挺して守らなければならないのか。それは至極当然な気持ちだ。
ユウは今、アスラフレームという誰にも有無を言わせない圧倒的な力を持ってしまった。それを如何ようにも振るえるのが今の彼だ。そして、着装者3号という偶像に人々は期待を重ねヒーローが助けてくれると願い信じている。
その期待に応えることが嫌だからこそ、ユウはずっと不調だったんですよね。そこからどうやって折り合いをつけるのか。
丈月さんの描く物語の主人公は、みんな精神的にタフ、を通り越してどこかしらに突き抜けたメンタルを持つある種の超越者でもあり、自分の行動の芯の部分に不動の揺るぎないものを持っている完成した人間でも有りました。
だから、ユウが普通にこうして悩むというのはいっそ新鮮ですらあるんですよね。分不相応の力を手にしてしまったものの、当たり前の苦悩。
尤も、そこで等身大の少年らしい答えを出してしまうのではなく、ある種の突き抜けた着地点へと到達してしまうところが、さすがというべきなのでしょう。
仮面の英雄、という正体不明で個人の特定がかなわない存在であるからこそ、誰もが望む偶像になり得る。ユウ個人が受け入れられない理不尽も、着装者3号という英雄ならば呑み込んで守ることが出来る。
あれほどの力を得ながら、その力と自分とを分けて考えることにした、という事なのだろうか。その在り方は戦士というよりも、まさに王。個として威を発する存在ではなく、集の意を束ねる王様という座こそが、ユウが継承したものだ。
同じ王……門主たるダルヴァの大魔術師たちとはまったく正反対の在り方なのだろう。
それに着装者3号はユウが身に纏うとは言っても、ドローンなどの運用含めてアインや伊集院などの仲間たちのサポートがあってようやく万全の力を振るえる存在でもある。ユウ個人ではなく、仲間たちとともに着装者3号というヒーローを創り上げ、形成する。そこにはエルフの賢人たちの支援も必要で、国防軍の軍人たちや市民の協力だって必要だ。そうして、バラバラだった衆を束ねて一つの意志に基づく集団となっていく。
今までユウたちが遭遇してきた人々は、国や組織の統制を失い無秩序にバラバラに動き回り、末端の人たちに負担を押し付けながら、バラバラの方向を向いたまま小さく固まって結局千々に砕けて滅びようとしていた。
だからこそのとにかく皆を守るのだというヒーローであり、希望を集めることで皆を束ねる王という偶像だったのだろう。
かつてユースのサッカープレイヤーだったユウが、途中で野良サッカーの試合に参加するシーンがありましたけれど、そのサッカーのシーンこそが示唆でもあったのでしょうね。チームの指令塔として、その意図を理解する者も理解しない者も含めてまとめあげ、誘導していく姿。パス出しに徹するようで、最後に自分でゴールを決める戦術。チームで唯一ユウの意図を理解して支援してくれていた最大の味方であった人物が、現実ではユウたちの今を一番理解しておらずぶち壊そうと動いてる国防軍の佐久間だったというあたりなど。
何事も表裏一体。それをどう呑み込んでいくか。元々の資質ももちろんあったのでしょう。アインが見込んだのもそのあたりでしょうし。しかし、苦悩する少年に道筋をつけてくれたのは、なつきさんなんですよねえ。この傾奇者な女子高生、年齢的にも姉御になるのか。その明るい性格とは裏腹に、あっけらかんと喋ってくれますけれど国家崩壊からこっち彼女がくぐり抜けてきた修羅場は、ただの生き死にの場どころではなく、津波のように押し寄せてくる人間の悪意そのものを切払いながらのすさまじい経験だったはず。ゾンビ映画にたとえてますけれど、相手は生身の人間だったはずですしね。
それでこれだけ明るさと豪快さを保って、ユウたちに対してもどんと構えてくれているのですから、頼もしいなんてものじゃないんだよなあ。女子高生というキャラの枠組みから完全に中身が溢れかえってますよ。
彼女自身、もうヒーローそのままで偶像になりそうなものなんですけれど、敢えてこの娘は戦士の方向に突き進むのか。まさかこんなに早々に強化イベントが来るとは思いませんでしたけど。これ、実質ユウと同格なんですよね。ちょっと特化しすぎではあるんでしょうけど。
アスラフレームって、全部スーツタイプだと思ってたので、これは予想外だった。
アリアも何気に重要なポディションであることが発覚しましたし、アスラフレーム12体が全部揃うのそれほど遠くはないのだろうか。何体かは情報出てますし、最後は別の着装者も出てきましたし。
まあ、全部が味方ってわけじゃないのでしょうけど。一致団結して最強の敵にあたろうか、というシチュエーションで速攻嬉々として同属で潰し合いの内戦はじめたカンピオーネは忘れんぞw




異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース ★★★☆   



【異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース】 丈月城/しらび MF文庫J

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世界を救うのは、いつだってヒーローだ。

突如、現代社会に現れたポータルから、異世界文明は人類への侵攻を開始。ドラゴンが飛来し、大魔術師が襲撃する世界へと変貌した。中学生の一之瀬ユウは国家プロジェクトの幼年従事者として、国防軍所轄のナノテクノロジー研究所に徴用される。彼は運命の導きにより、かつて国防の要であった人型戦闘機械『アスラフレーム三号』の継承者として選ばれる。それは『着装者三号』の愛称で親しまれ、日本に平和をもたらす救世主としてグッズ化、映像化もされるなど、社会現象になるほどの人気だった。大人も子供も憧れた彼はまさしく、ヒーローだった――。丈月城×しらびによる、ヒーローVS異世界の革命的戦記、ここに開戦!

こりゃあもう、アポカリプス・デイ……「黙示録の日」のその後だ。
異世界文明の襲来によって崩壊した現代地球文明。描かれているのはとりあえず日本のみだけれど、国防軍は組織だった反抗が粉砕され、首都圏は水没。政府は九州に疎開したものの、統治能力を失い、他の本土大都市も大規模魔術によって壊滅。社会体制は崩壊し、日本国内で難民が発生。もはや治安は守られず、異世界から送り込まれてくる魔獣たちの襲撃に怯えながら寄り集まって暮らす市民たちからはモラルは消え去り、暴力で弱い人々を従える組織構図が自然とできあがっている。
荒廃した未来なんて世紀末絵図ではない。現在が、現代が、今こうして日常を失い荒れ果てていくその最中なのだ。
ゾンビパニックなんかでも起こりがちな人心の荒廃だけれど、ニンゲンの手ではどうしようもない上位存在からの徹底した攻撃、文明そのものの破壊という意味ではまさに黙示録の日なんですよね。

そんな絶望的な天意に抗えるのは、亡命者であるエルフたちが持ち込んだ技術などによってもたらされた「アスラフレーム」。その装着者のみ。
人形戦闘機械というけれど、乗り込むんじゃなくて着込むようなタイプなんですよね。そして見た目はまさに仮面のヒーロー。黄色いマフラーが聖骸布として意のままに動くどころか自律して動く武器であり防具というあたりも、まさに仮面のヒーローなんだけど……。
ここまで社会体制がボロボロにされてしまった状態から果たして挽回できるんだろうか。
偶然なのか運命なのか、前任者の戦死から稼働する事なく沈黙を続けていたアスラフレーム三号と、眠らされていたエルフの姫のクローンとに認められ、新たな装着者となった少年兵の一之瀬ユウ。中学生の彼は、決して才気煥発とした意気軒昂な主人公というわけではないのだけれど、年齢の割にクレバーで強かなんですよね。こういうさっぱりとした粘り強さを感じられる主人公は、丈月さんらしい。同時に、この絶望的な状況に心折れないソルジャーとしての気質の持ち主でもあると言えるし、絶望的な状況に達観し割り切っているとも見て取れる。しかし捨て鉢になってるわけじゃないんですよね、いざというときの覚悟を決めているとは言っても。
中学生にここまでの覚悟をさせてしまうほどの、どうしようもない状況であり、それまで彼とその友人である伊集院が経験してきた世界が亡びていく日常が鏖殺されていく現実の過酷さ、凄惨さがそれほどのものだった、とも言えるのでしょう。
果たして、たった一人のヒーローと僅かな数の仲間たちとで、この終末極まった世界を救うことなんて出来るのだろうか。異世界側も、何気に少数の超強力な魔術師のもとに侵攻を行っているみたいなので、首刈り戦術を行っていけばワンチャンあり、なのかもしれないけれど。
仮面のヒーローと言っても、パンチやキックで怪人をぶっ飛ばすどころじゃなく、殆ど戦略兵器なみの強力さを誇るだけに。まあ敵側も同レベル以上に単体で戦略兵器そのものなんですが。
アスラフレームの話題からして、少なくともあと二体は3号と同レベルで似たコンセプトの機体みたいなので仲間か味方になりそうではあるのですけれど。

尤も、この一巻に関しては強大な敵と戦うよりも前に、モラルが崩壊してしまった同じ日本人たち相手にどうやって日々を無事にやり過ごし、また生き残るかという方にエネルギーが費やされていた気がします。それだけ、荒廃した現状を噛み締められたとも言えたのですけれど。
同時に、そんな世界でユウと伊集院、研究所仲間のハーフエルフのアリアとエルフクローンのアインの四人で、サバイバルしながら逞しくなんだかんだと賑やかに生きていく姿がなんとも心惹かれるものがありました。
この四人の関係、ここにあとで波多野なつきという姉御が加わるのですが、この仲間たちの一蓮托生で運命共同体でこの亡びかかった世界で一緒に生きていこうというパーティーとも家族とも取れる関係は、なんか凄く好みでした。不思議と誰かがリーダーシップとるわけではなく、みんなで色んな意見出し合いながら方針決め合うのとか、下手すればグダグダになるし人間関係も難しくなるパターンもあるのかもしれませんけれど、この子たちはある意味現状や生き死にに腹が据わっている分、結束が強く自然なんですよね。
彼らのこの黙示録後の世界での旅は、あまりに絶望的なんですけれど同時に生きるために前に前にぐんぐんと歩いていく冒険譚でもあって、うんなんか好きだったなあ。
とはいえ、ここからは本格的に異世界側の勢力との対決になっていくのでしょうけれど。えらいところで次回に続く、となってしまっているけれど、2巻は速攻来月刊行みたいなので待たされずに済みそう。

りゅうおうのおしごと! 12 ★★★★★   



【りゅうおうのおしごと! 12】 白鳥 士郎/しらび GA文庫

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奨励会三段リーグ。
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる
奨励会編堂々のフィナーレ!

すげえモノを読んだ。
よく身寄りのない子供たちを集めてきて暗殺者とか工作員を養成する学校とか隠れ里みたいなの、あるじゃないですか。ああいうのって、厳しい訓練にどんどん櫛の歯が欠けたように同じ境遇の子たちが消えていき、最終的に残った優秀な子供たちが卒業試験で試験官からこう告げられるのですよ。
「今、目の前にいる相手と殺し合え。生き残ったほうが合格だ」
そうして、生き残るために共に手を携えて育ってきた兄弟にも等しい大切な相手を、自らの手で殺すのです。最も大切で掛け替えのない相手を自分の手で殺すことで、彼らの育成は完成する。

この奨励会というシステムは、まさにこれなのである。これなのだ。まさに、これそのままなのだ!
ガチの殺し合いである。
一緒に育ってきた家族も同然の仲間たち、先輩後輩であり兄弟であり親友であり恩人ある人達と、総当たりで殺し尽くしていく。自らの手で葬り去っていく。引導を渡す。その将棋人生を終わらせていく。
殺し合いなのだ。殺戮なのだ。作中、ぶち殺す、という台詞が少なからず飛び交う。それは本当に比喩ではない、本気の言葉だ。本心からの叫びだ。己の手で大切な人を殺さなくてはいけない事への、悲鳴そのものなのだ。
これが現代の日本で行われているという事実に、今更ながら戦慄させられる。これほどの修羅の戦場が、現実に存在しているのだ。実在しているのだ。これは、小説であってもノンフィクションではない厳然とした真実なのである。死闘という言葉はなんらの比喩ではない、本物なのだ。
彼らは、本当に命を賭けている。人生そのものを賭けて捧げて費やして、喪っていくのだ。いって、いるのだ。
そんな光景を、情景を、この物語はあますことなく描き出している。
「命懸け」という言葉の本物を、この巻を読んだときに思い知るだろう。思い知らされるだろう。その恐ろしさを、重さを、激しさを、鮮烈さを、知るだろう。
人は、ここまで一つの物事に本気になれるのだ。それは感動であり、恐怖である。
人間は、ここまで化け物になれるのだ。能力ではなく、その在り方をもって怪物に成り果てられるのだ。
そうして、怪物は完成する。将棋の棋士とはそんな完成した人外の怪物の巣窟なのだ、と棋士の登竜門である奨励会三段リーグの凄まじさを前にして改めて魂に打ち込まれる。
そんな化け物共の、さらに上澄み。その頂点に彼は居る。
「人間じゃねえ」
その慨嘆は、これももう比喩に見えない。本当に、人間じゃないんじゃないのか、この主人公は。
恐るべき事に。実に恐るべき事に現実の将棋界はこれよりすらも魔界であるという。マジで人間なのか、棋士たちって?

前巻においてついについに想い結実し、通じ合った銀子と八一。その結果として描かれたのが今回の表紙絵なのでしょう。もう、見ただけで悶絶させられる素敵で素晴らしい二人の手を繋ぐ姿でした。
でも、覚醒した銀子がそのまま一気に頂点に駆け上る、なんて展開が待っているはずなかったのです。壁を突破しようやく将棋星人たちの見ている景色を理解できるようになった銀子は、でもようやくそこに至って棋士への挑戦権を得たようなものだったのです。棋力が激増して、ようやく舞台に立てたようなものだったのです。才能がないと唄われるのは、何も変わっていなかった。
ここからが、彼女にとっての本当の死闘、本物の死闘。命懸けの戦いのはじまりに過ぎなかったのです。
正直、本気で今回銀子、死ぬんじゃないかと不安にかられ続けました。銀子の残す言葉全部、遺言に見えて仕方なかった。実際、間違っていないんじゃないかと今でも疑っている。
この娘は、このあとも生きていけるんだろうか。生きて、幸せに成りえる娘なんだろうか。本質的に将棋を持ってしか繋がりあえない、だからこそ誰よりも深く深く余人が入り込めないほど混じりいるほどに寄り添い重なり合った八一との関係も、その将棋を以て焼き尽くされてしまうのではないか、と思えてならない。白雪姫と竜の魔王の寓話は、この上なくありのままを現しているように見えて仕方ない。でも、白雪姫は絶対に離れることはないだろう。竜の爪が彼女を引き裂き、その炎が身を焼こうとも彼女は離れないだろう。そうして、炎の中で燃え尽きていく光景が浮かんでやまない。それが、相応しいとすら思えてならない。
前巻で、あんなに素敵なハッピーエンドが見えた気がしたのに、銀子は超えられない壁を超えたのに。絶対に不可能だった世界へと、飛び込んでみせたのに。ああ、何もかもが遠すぎる。九頭竜八一はあまりにも、強大すぎる。
これ、本当にどうするんだろう。どこが着地点なのか、どうすればどうなればハッピーエンドなのか方向性すらわからなくなってしまった。
銀子が、八一に勝つしかないのか?

今回の奨励会編は、本当に誰が勝ち抜けるのかわからなかっただけに、最後の最後まで拳を握ったまま力が抜けない展開でした。感情移入してしまう、という意味では銀子だけじゃなく、ようやくその内面を垣間見せてくれた創多や、年齢制限によってこれが本当に最後の挑戦となる鏡洲さん、ヒールに徹しながらなぜ一度離れた奨励会を、アマの立場から這い上がってもう一度挑もうとしたのかが明らかになった辛香さん。誰も彼もが苦しみもがき、血反吐を吐くように戦う姿に心奪われ、感情移入しまくりました。
坂梨さんのくだりで決壊。泣いたよ。
これは本物の殺し合いでした。同じ棋士を目指して切磋琢磨した奨励会員同士、ライバルであり仲間であり、家族であった人たちとの殺し合いは、だからこそ殺し愛でもありました。これほど愛情を、親愛を、尊敬を込めて殺し合う戦いがあるのだろうか。相手の息の根を止める一指しに、血の涙を流しそうなほど苦しみもがく。生きて苦しみ死んで苦しみ、殺して苦しみ殺されて苦しむ。そうして苦しみあいながら、この最終局面に残った四人の間にあったのは、確かに大切な人への温かい想いであったのです。
だからこそ、辛すぎる。喜びと悲しみを、これほど一緒に味わう局面がこの現代にどれほどあるんだろう。
凄まじすぎる。

天ちゃん、君はこんなこの世の地獄みたいな場所を這い上がった、八一と指すためだけに這い上がった白雪姫と戦わなきゃいけないんだぜ。個人的には、あいよりもずっとこの子を応援している。この娘の心映えは誇り高く、果敢でカッコよく、女の子として健気で勇ましいその在り方が本当に好きだ。この娘はきっと、この作品に出ている女性の中で誰よりもイイ女になるだろう。間違いない。
あの奇襲は天晴極まる痛快なクリティカルだった。
それでもなお、あの血塗れで傷だらけのボロくずみたいな白雪姫の姿はあまりにも鮮烈で。
八一は魔王に例えられていたけれど、あらゆる本作のヒロインにとって銀子こそ魔王のように聳え立つ存在なのではないだろうか。まったく、勝てるヴィジョンが想像できない。本当にかろうじて、天ちゃんなんだよなあ。

鏡洲さんと創多のくだりでまた泣く。受け継がれる想いと夢、そして年相応の創多の満面の笑み。天才少年の、将棋を選んで良かった、という言葉。
戦いの後、殺し合いの後、そこに悔いはなく憂いはなく、先へと向かう者と見送る者の間に結ばれ託された思いの尊さに、ああ胸が熱い。この熱さが、たまらなく愛おしい。



86―エイティシックス― Ep.4 アンダー・プレッシャー ★★★★   



【86―エイティシックス― Ep.4 アンダー・プレッシャー】 安里 アサト/しらび 電撃文庫

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第八六独立機動打撃軍、始動。彼らの時計の針が、いま新たに動きだす――!
二人の奇跡を歯牙にもかけず。戦争は続く。ただひたすらに。

ついに運命の再会を果たしたシンとレーナ。どことなくいい雰囲気を醸し出す二人に、フレデリカとクレナは戦慄し、そして気を揉むライデンらの苦労は留まることを知らない。
しかしそんな束の間の休息を破り、レーナを作戦司令とする新部隊に初任務が下った。 共和国85区内北部、旧地下鉄ターミナル。地下深くに築かれたレギオンの拠点が、その口をあけて彼らを待つ。
そこに見えるのは闇。レギオンの、共和国の、そして彼の国が虐げた者たちの、闇。
シンとレーナ、二人の共闘を描く『Ep.4』登場!
“地の底からの呼び声が、彼らに新たな試練を告げる。”

一番懸念だった、シンとレーナの顔合わせ。声を通じてはずっとつながっていたけれど、実際に顔を合わせるのは初めてだっただけに、ギクシャクしたりそうでなくてもお互いの価値観の違いからすれ違いが生じてしまったり、というあたりを心配していたのだけれど。
そんな心配が考えすぎ、と思えてしまうくらい二人の間に流れる雰囲気は穏やかに寄り添い合うような距離感で、シンにとってもレーナにとってもそれぞれの存在が心の支え、或いは拠り所であった事実を、そのまま素直に受け入れているかのようでした。前回まで特にシンのメンタルが不安定極まりなかっただけに、レーナの存在をちゃんと受け止められるか、受け入れられるかほんと繰り返しになりますけど不安だったんですよ。まさか、こんな素直で落ち着いてて穏やかなシンエイが見れるとは思わなかった。
肝心要の二人がこんな風にとても落ち着いていたおかげで、全体としても今までで初めてと感じられるほど明るく憂いなく流れる時間がありました。
自分たちの後、レーナの傍らに居続けたシデン(思ってたのと全然キャラ違ったので驚いた!)にシンが嫉妬したり、逆にシンの隣を主張するフレデリカにレーナがもやもやしてみたり。
普通の年頃の男女みたいなやり取りを、彼らの間で見れるなんて。
まるで、未来が・将来が開けているような。戦うしか生きる術を知らなかった、自分たちを証明する手段を持たなかった86にとっても、進むべき標が得られたような。
そんな錯覚を……。

確かに、86たちにとって自分たち以外の確かなもの、信頼できる者、心も命も預けられる
人たち。優しく聡明で自分たちに心寄せてくれる特別な人達を見つける事は出来たのかもしれません。
でも、それは彼らの見ている世界にとって、ただの例外……掛け替えのない宝石のような、偶々手の中に飛び込んできた珠に過ぎなかったのでした。それ以外は、彼らにとって何も変わらない、今までと何も変わっていない。
過去もなく、未来もなく、ただ今を生きるために切り捨てていいものばかりの、呪わしき世界。諦め、期待せず、希望もなく、憎しみしか無い。そうあるべきだと心に刻んで生きている、悪しき世界。そこから、彼らは抜け出せず、抜け出そうとも思わず、むしろしがみつくようにこの世を呪って生きている。
その有り様は、まさに「少年兵」と呼ばれる現代の紛争地帯にも存在する、物心ついた頃から戦うための道具としてだけ生かされてきた子供たちの持つ傷そのものなんですよね。
たとえ彼らに手を差し伸べる人たちが現れても、その救いに来てくれた人たちを信頼し愛しても、世界そのものを無機質に憎み諦め続ける。
この物語は、決して安易に86という子どもたちを救うつもりはないのだと思い知らされたかのようだ。そんな程度で救われるほど、この子たちが負わされた傷は浅くはないのだ、易くはないのだ、その痛みは簡単なものじゃないのだ、と訴えかけるように。
覚悟を感じる。
痛みを描くことは、絶望を描くことは、心の奥底に根ざした諦観を描くことは、辛いはずなのに。この作者は、妥協せずにその傷の痛みを浮き彫りにし続けている。簡単には消しされない苦しみを、余すことなく描き出そうとしている。
彼らを、本当に救うために。彼らがお為ごかしなんかじゃなく、本当にこの世界を愛せるように。徹底して、徹底して、暴き出そうとしている。描き出そうとしている、そんな風に思うのだ。
たとえ、鮮血に塗れようとも。子どもたちと自分の撒き散らす血を頭から浴びようとも屈することなく。
その苦しみのたうち回りながら、86たちの痛みを本当の意味で消そうと足掻く者たちの尖兵として、【鮮血の女王(ブラッディー・レジーナ】は在るのだろう。
ヴラディレーナ・ミリーゼはこのとき、何と戦うべきか。何を勝ち取るべきか。何のために血に塗れるか、自らが負うべき傷と流すべき血の意味を、知ったのではないだろうか。
女王は倒すべき敵を理解した。だからこそ、彼女にこそ希望を託せる。この戦場の申し子たちを、どうか未来へ連れて行ってほしい。
どうか。どうか。




86―エイティシックス―Ep.3 ラン・スルー・ザ・バトルフロント(下) ★★★☆   



【86―エイティシックス―Ep.3 ラン・スルー・ザ・バトルフロント(下)】 安里 アサト/しらび  電撃文庫

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敵“レギオン”の電磁加速砲による数百キロ彼方からの攻撃は、シンのいたギアーデ連邦軍の前線に壊滅的被害を与え、レーナが残るサンマグノリア共和国の最終防衛線を吹き飛ばした。進退極まったギアーデ連邦軍は、1つの結論を出す。それはシンたち「エイティシックス」の面々を“槍の穂先”として、電磁加速砲搭載型“レギオン”の懐に―敵陣のド真ん中に突撃させるという、もはや作戦とは言えぬ作戦だった。だがその渦中にあって、シンは深い苦しみの中にあった。「兄」を倒し、共和国からも解放されたはず。それなのに。待望のEp.3“ギアーデ連邦編”後編。なぜ戦う、“死神”は。何のために。誰のために。

前巻、ようやくサンマグノリア共和国から逃れて自由を手に入れた86たちだったけれど、そこで得た平和な日常を享受できず、迫るレギオンの脅威を見なかったことに出来ず、もう一度戦場に戻っていった彼ら。本人たちをちゃんと見ず、哀れな子供たちというレッテルを張って同情を押し付けてきて、しかし思う通りの姿を演じずに自分たちの信念に従う彼ら86を、やがてギアーデ連邦の人々も不気味な存在と見做すようになっていく。
これ、難しいところなんですよね。大人たちの押し付けてくる善意は86たちがこれまで「人」として在るための拠り所だった信念をなかった事にするもので、結局86たちを自分たちの都合の良い、自分たちが良きモノたちであることを証明するための道具にしているようなもので、共和国での扱いと方向性は違うとは言え似たりよったり。86としては自分たちの存在意義を見失わないためにも、それを受け入れる事は出来なかった。
でも、連邦の人たちの善意は決して偽善というわけでもなく、本心からのものでもあり、彼らを本当の意味で理解し受け入れようとしてくれていた人たちも居たわけです。
86たちも、自分たちには譲れないものがある、ということを表立って示そうとはしてこなかった。彼らの境遇から仕方ない事なのかもしれないけれど、自分たち以外に自分たちへの理解を求めようという発想がそもそもないんですよね。連邦での生活は、彼らに余裕を与え頑なさを緩ませはしたものの、86たちだけで完結してしまっている閉じた世界を打破するまでは至らなかった。
とはいえ、フレデリカは凄く頑張って彼らの中に入っていってたし、エルンスト大統領やグレーテは食い下がって彼らを理解しようとしていた。それは決して無駄ではなく、楔となって打ち込まれていたのだけれど、やはり彼らの中で一番大きかったのはラストハンドラー、レーナ少佐との約束だったんですよね。
はじめて、向こうから彼らを理解しようと踏み込み、入り込んできた異端。
彼女こそが彼ら、特にシンと外界を橋渡しする架け橋のような存在だったのに。
だからこそ、サンマグノリア共和国が陥落し、おそらくレーナも死んだとわかったあの日から、シンからなにか決定的なものが失われてしまったのでしょう。
あれから、特にシンの様子が変わってしまい同じ86の仲間たちからも心を閉ざし、フレデリカが危惧するようなレギオンに取り込まれた戦士たちと同じ負の感情に苛まれながら戦い続ける機械のようになっていく有様は、今まででもっとも見るに耐えない痛ましさでありました。
生きる目的を失い、周りから大切なものたちが櫛るように死んでいき、自分だけが生き残っていく虚しさ。まず心をから死んでいくような、自分から死を求めるような有様は、死だけがゴール地点でありつつも生きる意志だけは失わなかった86としても終わっているような有様で。
それでも、自分から死ににいくような精神状態だけは、フレデリカの献身的な振る舞いとライデンをはじめとした仲間たちの叱咤で抜け出せたものの、決定的なナニカを内側から欠落させてしまった在り方だけはもうどうにもなりそうになかったんですよね。
フレデリカ、ほんと必死にシンの孤独を埋め、冷えた心を温めようと頑張っていたんだけど、彼女一人ではやっぱりどうにもならんかったのかな。

だから、フレデリカはレーナにちょっと嫉妬してもいいと思う。彼女が目の前に現れただけで、灰色に埋もれていた世界に急に色彩が戻っていくような覿面さは、それだけシンにとって彼女の存在がどういうものだったかを示すものだったんだろうけど。
本当に、覿面に彼を孤独から救ってくれた。呪いのようにシンを蝕んでいたものを、彼女はまたたく間に拭い払ってくれた。
望むものが生まれた。見る気もなかった先の未来が目の前に広がった。戦場での死がゴールではなくなった。
仲間たちはみんな先に逝くことなく、彼を独りにすることなく待っていてくれて、エルンストをはじめとして本当の意味で彼ら86を理解し受け入れてくれる人たちが居てくれている。
再会をきっかけに、シンの心は解き放たれ、重く閉ざされていた空気が一気に外へと開いて色彩を帯びていく。

そして、改めての再会と自己紹介。第一巻でのラストシーン。
やはりあの場面こそが、この物語の未来を描くスタート地点だったのだ。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 11 ★★★★★  



【りゅうおうのおしごと! 11】 白鳥士郎/ しらび  GA文庫

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「私を殺して…」
奨励会三段リーグで三連敗を喫し心が折れた銀子は、八一に懇願する。
「俺が連れて行ってあげますよ。絶対に死ねる場所へ」
こうして二人は将棋から逃げた。それは同時に、なぜ将棋を指すのか問い直す旅でもあり―なぜ、八一は銀子を『姉弟子』と呼ぶようになったのか?なぜ、銀子は女流タイトルを求めたのか?八一と銀子の出会いと修業時代の日々、そして“浪速の白雪姫”に隠された最大の秘密が遂に明かされる告白の第11巻!将棋の神が定めし残酷な運命は、誰に微笑むのか?

八一と銀子が二人で映っている表紙絵は、そうかこれがはじめてなのか。満を持して描かれた二人は、幼い二人。原点であるこの光景は多くを物語っている。
思えば、八一と銀子の二人には手を繋いでいる場面が不思議なほど多かった。ただひととき繋ぐだけのものではなく、ずっと離さずそれこそ新幹線で移動している間中ずっと、というものまで繋いだままというケースが見受けられた。それを自分は二人の関係の甘酸っぱいものだと捉えていたのだけれど、二人の手を繋ぐ、繋いで離さないという行為にはそれだけで収まらない、本当に深い深い理由があり意味があり、想いがあり、寄す処であった事がこの物語によって語られる。
銀子と八一の出会いの物語であり、二人が将棋の沼へと真に足を踏み入れ抜け出せなくなる物語であり、一緒に二人で堕ちることこそが絆であったと知る物語だ。
そうして、いつしか放してしまった手を、お互いにもう一度繋ぐために足掻いて足掻いて血反吐を吐きながらのたうち回り続けたのが、この【りゅうおうのおしごと!】という物語だったのだろう。究極的に、二人が求めていたのはただ、放してしまった手をもう一度つなぎたい、とそんな願いだったのだ。そのために、将棋に強くならなくてはならない。誰にも負けないくらいに強くならなくてはならない。先へ先へと行ってしまう八一/銀子を追いかけて、いつか隣に立てるくらいに追いつくまでに。滑稽だろう、お互いに相手こそが先に進んでしまっていると、自分が必死に死にものぐるいになって勝ち続けないと辿り着けない所に行ってしまった、と思い込んで走り続けていたのだから。

銀子が走り続けていた道は、凄まじい過酷さが渦巻いていたことを八一は知らない。八一が知り得ない所で、この子は本当に死にものぐるいで生死の狭間を歩いていたのだ。桂香さんが、銀子に特に目をかけ慈しんでいるのも、理由なきものではなく二人の間にもそうなるまでの過程があり、歴史があったのだろう。ほんと、桂香さんは愛情深すぎて確かに棋士には向いていないんだろうなあ。それでも、向いていなくても才能がなくても、女流棋士になれるだけ頑張れたことこそが桂香さんの凄さなんだろうけど。

そもそも、銀子が清滝 鋼介の元に弟子入りした経緯からして、様々な人の銀子への愛情が介在してるんですよね。将棋界のアイドルに祭り上げられ、否応なく孤高の只中に放り込まれた彼女、孤独感に苛まれながら必死で一人で八一の後を追いかけ続けていた彼女だけれど、今将棋を指せている、ただそのことが彼女が多くの人たちに支えられ、愛され、導かれている証明だったことを、銀子は八一に連れられようやく八一とすれ違っていた想いが合わさったとき、気付かされることになるのです。
どれだけ多くの人たちが彼女のことを見守っていてくれたのか。将棋の神様である名人の一言が、銀子の軌跡をずっと追ってくれていた名人の言葉が、釈迦堂里奈の教えが、生石先生の導きが、桂香さんの慈しみが、清滝師匠の愛情が、明石先生の庇護が、鏡州先輩の叱咤が、空銀子に届いた時、この娘に火を灯す、この娘を空へと羽ばたかせる。
ずっと振り返ってくれずに置いていってしまったと思っていた八一が、ずっとずっと自分を見ていてくれたと理解したとき、彼女は星に手が届く。空の輝きに、手が届く。

空銀子、覚醒のときである。

……もうさ、二桁巻数になるまでずっとずっと、銀子ちゃん苦しみ続けてましたやん。どんだけ追い詰めるんだ、というくらい追い詰めて追い詰めて崖から蹴落として、這い上がってきたらゲシゲシ踏み詰めて、グリグリ踵と爪先で踏みにじって、そこまでするかってくらいに地獄を味わわせて、もうやめて銀子のHPはとっくに0よ! という有様だったのが、ついに前巻のラストでしらびさん渾身の銀子でトドメさしたところまで辿り着いちゃって。
誰よりも心弱かったこの娘。いつ折れるか、いつ粉々に砕けてしまうか気が気でなかったこの娘。でも、この娘こそ折れない心の持ち主だった。明石先生の言う通りだ、空銀子こそ九頭竜八一という未曾有の才能を一番そばで目の当たりにしつづけ、一番たくさん対局し一番たくさん負け続け思い知り続けながら、ずっと諦めずにそれを追いかけて居続けられた根性の持ち主だったのだから。
長かった、長かったよ。銀子、よかった、良かったよぉ。最初からずっと銀子党だった身としては、感無量を通り越してちと放心すらしております。
ラブラブパワー注入! くははは。

こう言っちゃなんだけど、八一はあまりにも一途であってあいちゃんじゃまだ勝負にもなってなかったんだなあ、と思ってしまう。その点天衣の方がヤバい、という誰かさんの台詞には納得なんですけどね。この娘の恋は、魂からの本気の恋なんですよね。なんだろう、将棋でも恋でも銀子と本当の意味で噛合そうなのって天衣の方に見えるんだよなあ。
そういう意味では、八一のお母さんの銀子にあてたあの言葉は息子を持つ母として至言ではないでしょうか。

しかし、こうしてみると八一と銀子の仲が拗れるというかややこしくなる楔となる部分に尽く絡んでる供御飯万智さんが本当にヤバいんですけど! 

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 10 ★★★★   



【りゅうおうのおしごと! 10】 白鳥 士郎/しらび  GA文庫

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竜王、遂に小学校の教壇に立つ!「澪たち、くじゅるー先生に鍛えてもらいたいんです!」小学生の将棋大会『なにわ王将戦』で優勝を目指すJS研。しかしあいの新しい担任にJSとの同居を問題視された八一は、自らの潔白を証明するため小学校で将棋の授業を受け持つことに。一方、女流名跡リーグ進出を目指すあいの前には謎の女流棋士が立ちはだかり、そして銀子は地獄の三段リーグで孤独な戦いを始めようとしていた―。それぞれの戦場で繰り広げられる魂の激突。決意と別離の第10巻!小さな背中に翼が生えたとき、天使は自らの力で羽摶き始める!!

9巻で九頭竜八一の将棋の師匠としてのスタンスは、あいと天衣とでは全く異なっている、という趣旨のことを感想で書いた。それについては、間違っていないと思うんだけれど根本的な所で思い違いをしていたかもしれない。
天衣に対してはすでに棋士としてその魂の在り方まで完成している彼女を、その形を崩さないようにそのまま羽ばたいていけるように、大切に大切に扱っている。その成り立ちと根底に八一の将棋が存在する天衣は、いわば魂の共有者だ。
対して、あいは全く異なっている。彼女こそ、まだ何者でもない真っ白な無垢。棋士にもなっていない無形の粘土。それでいて、異形の才能が詰め込まれた可能性の爆弾、眠れる太陽。
正直、竜王であり棋士たる九頭竜八一のあの普段の真剣勝負の時のゾッとするような人外じみた恐ろしさよりも……今回垣間見せた師匠としての八一の方が、数段肌が粟立つような恐ろしさを感じたのだ。
この男は、いったい何を創り出そうとしているんだ?
禁忌に自らのめり込んでいくような、狂科学者じみた非人間的な探究心。それを、自らではなく一人の弟子を用いて顕現させようとしている。
その先に、地獄があると知りながらも。釈迦堂さんが、神鍋馬莉愛をその地獄へ導くことを当たり前のように躊躇いを覚えているのを横目に見ながら。
多くの棋士たちを、その贄として焚べ滅ぼしていくのだと理解しながらも。
この男は、なにを創り出そうとしているんだ?

桂香さんは多分棋士とだけは結婚しないだろうな。八一を間近で見ていて、家族として愛せてもその価値観だけは絶対に共有できないだろうということは、身にしみてわかっているだろうし。

今回の主役はJS研の小学生たち。彼女たちの最初は遊びの延長の感覚だった将棋へのスタンスは、いつしか真剣で本気のものへと移り変わっていたけれど、本当の棋士たちの世界はただの本気だけではその色も熱も実際には感じ取れないだろう別世界。
そこには、命と人生を賭すだけの、自身の破滅を受け入れないといけない世界。魂からその存在を将棋そのものへと作り変えていかないと、呼吸する事もままならない世界だ。
この10巻だけでも、何人もの棋士たちが絶息し、のたうち回って死に絶えていく。そんな世界に、しかしこの娘たちもまたついに、自ら足を踏み入れていくのだ。
発狂しそうな暴れくるう感情を胸に宿し、悔しい悔しいと髪を振り乱して地団駄を踏みながら。そうして、死にものぐるいで勝利を掴み取っていく。相手の心臓をえぐり出して齧り付くように、奪い取っていく。そんな戦いの渦中へと、飛び込んでいく。
小学生だろうがなんだろうが年齢なんて関係ない。その身も心も棋士に書き換え、将棋へと塗りつぶして、自ら勇んで地獄へと飛び込んでいくのだ。そこに一人ではない、戦友たちがいるとわかっているから。

これほど凄まじい世界を描きながら、しかし孤独では何もなせない、人の繋がり想いの結びつきこそが大切だと描いてみせる、この作品の凄まじさよ。
だからこそ、徹底して自分を追い込み孤独へと突き進む姉弟子銀子の集大成が、ラストシーンに繋がることになるのか。
……あれ、岳滅鬼翼さんの奨励会からの脱落と女流への転身。おなじ世界で生き、おなじように将棋の世界から追い出されるはずだった兄弟子との決別。彼女のこの巻における物語って、彼女が銀子以上の才能の持ち主だった、と語られるのと相まって、あれってもう一つの八一と銀子のアリ得た姿、でもあるんですよね。銀子が一瞬思い浮かべた、八一が奨励会を突破できずにいて自分と一緒にここにいる風景。
岳滅鬼山は、一度死に、死んだまま死にきれずに這いずり回り、そうした先にもう一度繋がりを取り戻せた。多分、彼女は幸せになれる。誰もが思い浮かべる幸せを、手に入れることが出来るはず。
でも、銀子の隣にはもう八一はおらず、将棋星人は地上を飛び越えて手の届かない大気圏の向こう側で、人外魔境の只中をさらに飛んで飛んで遥か彼方へと飛び去ろうとしている。
銀子は、奨励会三段リーグという将棋界における最も深く残酷で救いのない地獄の中で戦わなければならない。勝ち取らねば、生きていけない世界で彼女の手の中にはもうなにもない。
本当に、何もなくなってしまったのだろう。
ラストシーン、銀子が八一に自分の弱さを見せたのは初めてだったはず。どれほど傷つき弱って息も絶え絶えになってボロボロになっていても、八一の前に出れば完璧に繕っていたのに、装えていたのに。
それすらもついに出来なくなった姿に、佳境を見る。
ああ、次こそがなるほど、クライマックスだ。

シリーズ感想

86―エイティシックス―Ep.2 ラン・スルー・ザ・バトルフロント(上) ★★★☆  



【86―エイティシックス―Ep.2 ラン・スルー・ザ・バトルフロント(上)】 安里 アサト/しらび  電撃文庫

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共和国の指揮官・レーナとの非業の別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着いたシンたち〈エイティシックス〉の面々は、ギアーデ連邦軍に保護され、一時の平穏を得る。
だが──彼らは戦場に戻ることを選んだ。連邦軍に志願し、再び地獄の最前線へと立った彼らは、『隣国からやってきた戦闘狂』と陰で囁かれながらも、シンの“能力”によって予見された〈レギオン〉の大攻勢に向けて戦い続ける。そしてその傍らには、彼らよりさらに若い、年端もいかぬ少女であり、新たな仲間である「フレデリカ・ローゼンフォルト」の姿もあった。
少年たちは、そして幼き少女はなぜ戦うのか。そして迫りくる〈レギオン〉の脅威を退ける術とは、果たして──?
シンとレーナの別れから、奇跡の邂逅へと至るまでの物語を描く、〈ギアーデ連邦編〉前編!
“──死神は、居るべき場所へと呼ばれる”

レギオンが蔓延る領域の最深部を突破して、ギアーデ連邦まで逃れたシンたち86。連邦はトップである大統領を含めて、このレギオンとの絶滅をかけた戦争の只中でありながらかなりマトモな倫理観を保っている国で、シンたちはその悲惨な境遇も相まって手厚く保護されることになる。元居た共和国があまりにもクソすぎたので、それと比べればどこの国情も大概「まとも」に見えるんだけれど、それとは関係なしに比較的にではなく、本当にまともなんですよね、連邦。
ただ若干国家国民全体に潔癖のきらいがあるのは、ギアーデ帝国というレギオンを生み出してしまった国から革命を起こして連邦を立ち上げた革命国家だからかもしれない。国の中枢から一般市民に至るまで全体的に「正しさ」という理念への拘りが垣間見えてくる。
でも、その正しさが基本悪への排斥ではなく、多人種への融和や自由意志の尊重という方向へと向いているのだから、大したものである。革命政権というものは、よっぽど出ない限りだいたい既存の体制の破壊から混乱をもたらしてまともな国家運営にまで漕ぎ着けられないものなのに。
それだけ、今暫定大統領を務めているエルンストがよほどの傑物だった、という事なのだろう。シンたちの保護責任者にもなったこの人、プライベートではぽややんとした学者風のおっちゃんで人柄もよく真面目な善人なんですよね。いい人なんだ、この人が革命の首魁だったとは思えないほどに。
もう戦わなくていい。君たちはもう幸せになるべきだ。
86たちの悲惨な境遇は連邦内で大々的に報道され、シンたちは守られるべき子供として保護され、戦いから遠ざけられることになる。シンたちも初めて味わう真に平和で平穏な日々を過ごし、楽しみを覚え友達を作り、何事もない日常に慣れ親しんでいく。
シンたちは、平和を拒絶したわけでも慣れなかったわけでもない。ただ、選ばなかったのだ。彼らは、今このせかいがレギオンによって滅ぼされようとしているという現実に、背を向けなかった。それは確かに選択だろう、彼ら自身が選んだ道なのだろう。でも、もうほかの人たちに任せていいんだ、と思うことすらも出来ず、現実から逃げることは出来ない、と疑いもしていない時点でやはり「囚われている」のではないだろうか。
死に急いでいるわけでもないだろう。シンが殿を務めようとした時に皆が抱いた怒りは、死への拒絶だ。最後まで生きようと足掻いたが故に、彼らは連邦まで逃げ延びることが出来た。
にも関わらず、彼らは自分たちの最期が戦って死ぬことだと、本当に疑問にも思っていないのだ。それが当たり前の結末だと、真理のごとく思い込んでいる。
いつか死ぬ順番が来るのを、必死に遠ざけようとしながら、順番が自分の所に来ること自体は当然だと思っているのだ、こいつらは。それが、義務だと思っている。先に逝った戦友たちのもとに、自分たちもいずれ行くものだと思っているのだ。
それは、やっぱり、おかしいだろう。おかしいじゃないか。
だから、彼らが戦場に戻ることに憤り反発しながらも、最終的に彼らの意志を尊重したエルンスト大統領が、それでもなお抗うように彼らに示した道には、大きな共感を覚えるのだ。
戦争が終わったあとのことを、終わった後になにをしたいか考えてくれ。
戦争が終わるものだと、まるで頭になかった彼らに。戦死だけが終わりだと思いこんでいた彼らに、本当の意味で未来・将来というものを少しでも意識付けることに成功したエルンストは、親代わりとしても偉大な人物なのだろう。
レギオンに奪われ意志を乗っ取られた兄を討つ。その目的を果たしてしまい、ただでさえ生にしがみつくべき理由を失っているシンにとって、エルンストが指し示してくれた未来というものは、彼の中に強く焼き付いているレーナの存在を、もう一度強く意識させる要因になったような気がする。
もう一度、彼女と再会する。一巻の終わりで結実したこのシーン、ここに辿り着くためには果たして86たちはただ戦場に戻って死にものぐるいで戦うばかりでは足りなかったはずだ。強い、目的意識、生への執着、叶えたい願いこそが現世にしがみつく力となる。ただ、敵を倒すための狂った化け物というだけでは、どこへも辿り着けない。フレデリカのシンへの危惧もまた、そのあたりだったのじゃなかろうか。
いずれにしても、この物語が彼ら86たちが明確に、戦争が終わったあとの事を思い描く日が来るのを描くためのものであることを、願うばかりだ。

今回は、ちょっと時系列が前後するところがあって、わかりにくいというわけではなかったんだけれど、その理由がちとわからなかった。特にユージン、あれを先に描いちゃうのって逆に最初の時点では誰?という印象になってしまって、あんまり意味なかったんじゃないかな、と思ってしまった。
言うほど、しっかりとユージンと絡むシーンも少なかったし。あれだと、友達だという印象も薄いままで通り過ぎてしまったような気がする。それを言うと、86のシン以外の面々。ライデンはサブリーダーで兄貴分、というところで存在感あるんだけれど、他の面々はこの期に及んで未だにキャラの掘り下げが足りてない感じで印象薄いんですよね。これは一巻の時点からそうなんだけど。
あと、時々唐突に情景描写が抽象的になることがあって、そうなると何が起こったのか具体的なところがよくわからないまま、置き去りにされて話が進んでしまう所が何度かあって、ちと引っかかったんですよね。

ラストはレーナがすべて持っていってくれました。なんですかあれ、状況設定といい台詞回しといい、めちゃくちゃ燃えるじゃないですか。
最後の最後にガツンとテンション金槌で叩き上げての、次回へ続く。成長という意味では、レーナの方が何も知らず何も出来ず何も分からず為すすべなかった頃から、尋常ではなく爆上げしてるよなあ、これ。

1巻感想

りゅうおうのおしごと!9 ★★★★☆  


りゅうおうのおしごと! 9 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと!9】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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Kindle B☆W


夜叉神天衣。
わずか十歳にしてタイトル挑戦を決めたシンデレラは、両親の墓の前で誓いを立てていた。
「お父さま、お母さま。必ず女王のタイトルを手に入れます……私たちの夢を」
しかし彼女の前に立ちはだかるのは、史上最強の女性棋士にして師匠の姉弟子――空銀子。
二人が争うのは女王のタイトルだけなのか、それとも……?
《浪速の白雪姫》と《神戸のシンデレラ》が遂に激突!
アニメ化も果たしますます過熱する盤上のお伽話、家族の絆と感動の第9巻!
シンデレラの頬を伝う一筋の涙を、若き竜王の飛車が拭い去る――!!


白雪姫と、シンデレラか……。
今回は章タイトルを童話や昔話で統一されていたのですが、童話は童話でも「本当は恐ろしいグリム童話」みたいなものかもしれない。
『神戸のシンデレラ』と呼ばれる少女夜叉神天衣はわずか十歳である。十歳にして、孤高の道をひた走っている。その壮烈な生き様に対して、師匠である八一は思いの外何も口出ししてこない。
あいに対してはべったりと手取り足取り世話を焼いているのに対して、天衣に対してはむしろ何も言わず見守るスタンスを取り続けている。
あいと違って天衣には殆ど将棋の戦法などは教えなかったし、棋士としての在り方なども今更何を教えるか、というように示すことはない。その意味では、あいに対するものと天衣に対するものでは八一の師匠としてのスタンスは大いに異なっている、と言っていいんじゃないだろうか。
少なくとも、八一は天衣のことを既に一廉の棋士として認めている。
その上で。
八一はこの孤高の少女が心置きなくその翼を羽ばたかせて空へと飛び立てるように、師匠として力を尽くしている。それが象徴されるのが、以前天衣に彼女の亡き父の残した字を記した駒を送った出来事であり、そして今回の捌きのマエストロとの対局で示した記譜である。

彼女の魂は、将棋の形をしている。
将棋に心を奪われた少年少女は、その魂の形を将棋へと作り変えていくという。九頭竜八一は、その存在が将棋そのものだ。夜叉神天衣もまた、物心ついたときより将棋を指すために在ってきた。
そんな将棋の形をした師弟だからこそ、余分なものの入り込むもののない純粋なまでの、将棋を通して伝わるものがある。伝えられるものがある。肉も言葉も介さずに、ダイレクトに魂同士で繋がり合うことができる。
今、これほど純粋にして無垢なる師弟が他に存在するだろうか。
物心ついた時から、自分の魂を将棋の形へと作り変えていくときに注ぎ込み続けた触媒たる記譜。それはもう、彼女にとっての根幹であり、根源であり、魂の中に混ざり込み根付いた不可分の輝きである。
そこに、九頭竜八一の将棋が在る。
もはや、夜叉神天衣にとって師・九頭竜八一は魂と共にある存在なのだ。
それを、夜叉神天衣は空銀子とのタイトル戦を通じて、理解することになる。
少女は恋を知る。

そして片割れには、将棋の形にならない自らの魂を前に鬼気迫る姿でのたうち回る少女がいる。
はたから見れば、空銀子こそが将棋の形をした魔物だろう。身も心もすべてが将棋に染まった悪鬼羅刹に見えるだろう。
でも違うのだ。6巻での彼女の物語を見たものは、誰でも知っている。彼女の魂は将棋の形をしていないし、彼女は将棋の星にたどり着けずにさまよい歩く腐乱したゾンビだ。
この対局、空銀子は天衣に三連勝し、その内容も灰色の瑕疵をつけられたとはいえ、最終局もまた圧勝に近い内容であった。
しかし、果たして銀子は対局に勝利はしても、勝負には勝ったのか。
千日手への逃げを敢然と拒否してみせた天衣に、銀子はいったい何を見たのか。
奨励会の地獄に歴然とした差を突きつけられ、今また姪弟子に愛しい人との将棋を通じた魂のつながりを見せつけられ……。
自分で買ったマンションに連れ込んだ八一には、結局何一つ伝わらなかったのに。
この生意気なシンデレラはあの王子さまと同じ世界の、同じ星の、同じ領域で交感しあえる存在なのだと証明し、将棋で死ぬまで戦う勇気を、死んでなお戦い続ける勇気を証明してみせた。
それは同時に、銀子に己がどれほど足掻こうと、将棋の星のお姫様にはなれないメッキの人形だという事実を、突きつけられる対局ではなかったか。
偽物の自分は、王子様と心も言葉も通じ合えない、繋がれない。その恋は、どこにもたどり着けない。
空銀子は、おそらく作中の登場人物の中でも一際、心が弱い少女である。メンタルは豆腐並みのグズグズで、触れれば崩れる砂山のように脆い。いつだって、逃げ出したい気持ちを抱えている。だから、油断すればこう考えているはずだ。
将棋なんかささなくても、八一との恋は叶うんじゃないかって。
そうした気持ちが時折、銀子を八一との逢瀬に走らせる。彼女が垣間見せる、将棋じゃなく自分を見て、姉弟子じゃない銀子を抱いて、というサインはその証左であろう。
でも、そのサインをいつも無視して、彼女の逃げを丁寧に叩き潰しすり潰し掃いて捨てているのは、いつだって九頭竜八一なのだ。常にこの男が、空銀子を逃げることの出来ない先へと追い込んでいく。言葉では何も伝わらない、態度では何も気づいてくれない、体で示しても結局なんにも見えていない。
だったら、将棋で伝えるしかないじゃないか。自分の魂を将棋に作り変えて、人間でしか無い自分を人間では生きていけない居るだけで死んでしまう将棋の星にたどり着かすしかないじゃないか。
そうしなければ、この声は聞こえない。自分の本当の姿を見てもらえない。
この恋は、叶わない。

あの冒頭の壮絶なモノローグは、天衣のものだと思っていた。
しかしてこの9巻は、夜叉神天衣の初恋の物語であった。
そして同時にこの9巻は空銀子の…………。



シリーズ感想

異世界修学旅行 7 ★★★★★  

異世界修学旅行 7 (ガガガ文庫)

【異世界修学旅行 7】 岡本 タクヤ/しらび ガガガ文庫

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出逢いと別れの異世界修学旅行、最終日!

異世界修学旅行、そして伝説へ!

修学旅行の最中に突如飛ばされてしまった異世界で、王女プリシラと共にクラスメートを捜しながら修学旅行を続ける沢木浩介たち二年一組。
ついに、残るクラスメートはあと一人。
そしてその最後の一人、山田という少年は、大方の予想通り、浩介たちより先立ってこの世界にやってきて、魔王を倒し、世界を平和に導いた勇者となっていた。
世界を救った勇者は、やがてもとの世界へ――日本へと還っていく。
そんな、この異世界で何度も繰り返された筋書きをなぞるはずだったが、事態は予想外の方向に進んで……。
「ぼ……僕は、日本には還らない! この異世界で、これからも勇者として生きていくんだ!」
帰還を拒否する勇者山田を何とか連れ戻そうと、異世界を巻き込んだ最後の大騒動が幕を開ける!
そしてその最中、浩介は旅の終わりが近いことを意識する。
「おぬしらは、日本へ還っていってしまうんじゃよな。妾を置いて――」
クラス全員揃っての日本への帰還――異世界修学旅行の終わり。
それは、プリシラとの別れでもあった。

異世界から日本へ還ってゆく修学旅行生たちの異文化コミュニケーションコメディ、第七弾!

旅は旅でも当て所のない旅でもなく、どこか目的に向かって延々と歩き続ける旅路でもない。旅行なのだ。これは修学旅行なのだ。その旅先が異世界であっても、旅行であったならば家に帰らなければならない。どれだけ楽しくても、そこでかけがえのない友達ができたとしても、帰らなければならないのだ。
というわけで、さよならのシーンでボロ泣きである。わりとマジ泣きでありました。
だって、本当に楽しかったんだもの。楽しければ楽しいほどに、その終わりがとてつもなく寂しい。誰よりもこの旅行を、みんなとの旅を楽しんでいたプリシラと、ここで別れなければならないとなればなおさらに。
これが、もう二度と会えない別れとなるならば、なおさらに。

勇者山田はともかくとして、他のまだ未回収だったメンバーも雑に回収して、って本当に雑なんだけれど、その雑さすらもネタにしてしまうあたり、プリシラのキャラクターの強力さとお得さが知れるというものであります。
本作は、異世界集団転移モノというジャンルではあるのでしょうけれど、その中でもとびっきりの異端だったのでしょう。何しろ、呼び出された先は既に魔王が討伐され平和になった世界。召喚されたクラスメートの大半があっちこっちに散らばってしまって、その回収の為に世界を回ることになったのだけれど、その案内人たるプリシラ姫ときたら、こっちの世界の人間よりも日本のポップカルチャーに詳しいを通り越してもうあんた博士だろう、というくらいの現代エンタメネタの宝庫であり、そんな彼女とともにこれは異世界を遊び回り、異世界を観光し、それでいて色んなトラブルをみんなで協力して乗り越える、心を豊かにする青春劇だったのだ。二度と経験できないだろう、特別な体験だったのだ。それは、いつか異世界から訪れる異邦人たちと冒険の旅をするのだ、と夢見ていたお姫様にとっても、掛け替えのない体験であり、きっと予想していなかった楽しい時間だったのだ。
だから、こんなにも寂しい。別れが辛い。でも楽しかったからこそ、笑って「さよなら」を言い合える。二度と会えないのだとしても、「またいつか」と再会を約束できる。
旅行という特別な時間の中で、だからこそ少しずつ変わっていく自分たち。成長なのか羽化なのかわからないけれど、楽しいの冠がつく非日常体験は普段と違う自分を発見させてくれる。そうやって、少しずつクラスメイト同士の関係も変わり、自分も今までやろうとしなかったことを頑張る気になる。それは、修学旅行らしい特別な効果だ。今まであまり交流のなかった人と仲良くなったり、それまでよく知っていたと思っていた人のことを見直してみたり。
でも、幾ら特別な時間をもたらしてくれる旅行でも、同じメンツだとなかなか殻は破れないんですよね。異世界という特別すぎる環境に、ホームシックにさせてくれない日本に詳しすぎるプリシラという超強力な牽引役の存在こそが、この旅を最初から最後まで「楽しい」ものにしてくれたのだろう。
旅行の時間が終わりに近づいているのを理解しつつ、物語のノリはいつまでたっても変わらない。それは、プリシラもみんなも敢えて、だったんですよね。別れの時間が近づいてくることを努めて無視しようとしていた結果が、いつものとおり、だったのだと今にしてそう思う。
だから、本当に別れの時間になった時の想いの爆発が、抑え切れない感情の交歓が、もうたまらないあのシーンへと繋がっていったのだろう。たくさんいるクラスメイト、みんな強烈なほど個性的で、よく印象に残る連中ばかりでした。雑に扱われたw最終合流メンバーもその雑さ故にわりと印象に残ってたし。そういう意味でもプリシラのパーティー編成コミュは絶妙だったんじゃないでしょうか。楽しい、楽しい連中でした。綾ちゃん、ついぞ目立たぬポディションを維持し続けたなあメインヒロインなのに、と思ってたんだけれど、彼女の場合そうなってしまった、のではなくてキャラが勝手に動いてうまいことそんなポディションを確保し続けたのだ、という作者の回顧には思わず深く納得してしまった。いや確かに、うまく動かなくて、という目立たなさじゃなかったですもんね。そこにいるのにうまいこと視線から外れて、スススっとその位置に動き続けた、と言われると凄く納得。それでいて、プリシラと沢木が良い雰囲気になることがなく、友達ポディションに固着するようなバランスの取れた立ち回りをし続けてたわけですしね。このプリシラと沢木のまったく恋愛臭のしてこない、でも意気投合した息のあいっぷりは振り返っても感心させられるものでした。変に恋愛が絡んでしまうと、この旅行の楽しさやその終わりの別れに余分が混じっちゃうことを思うと、最上の関係性だったもんなあ。
締めの、あの余韻を余韻のままで終わらせてくれない、楽しいを想い出の中だけに置いていかないラストは、私はとても大好きです。それでこそ、それでこそ。
楽しい楽しい傑作でした。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 8 ★★★★  

りゅうおうのおしごと! 8 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 8】白鳥士郎/しらび GA文庫

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山城桜花戦開幕! 秘手繚乱の第8巻! !

「そうだ。京都へ行こう」
順位戦が終わり、プロ棋界は春休みに突入した。八一はあいを伴って京都を訪れるが、しかしそれはデートでも慰安旅行でもなかった。
『山城桜花戦』――女流六大タイトルの一冠を巡る戦いを見守るため。
挑戦者の月夜見坂燎と、タイトル保持者の供御飯万智。
「殺してでも奪い取る」
「……こなたはずっと、お燎の下なんどす」
親友同士の二人が激突する時――八一とあいは女流棋士の葛藤と切なさを知る。
春の京都を舞台に、華よりもなお華やかな戦いが繰り広げられる秘手繚乱の第8巻!
万智さん、観戦記者やっているときとやはり全然違うなあ。京都弁の色が濃いのもあるのだけれど、プライベートと仕事モードと棋士モードの区別がはっきりしているというかなんというか。
というわけで、女流棋士……巻末の感想戦が主戦だった月夜見坂燎と供御飯万智、そして月光会長の秘書をやっている元女流棋士の男鹿さんにもスポットを当てつつ描かれる第八弾。
やっぱりもう本番の対局の描写すげえわ。見ている観客の息を呑むような雰囲気をも取り込んでのこの迫真の空気感たるや。殺気剥き出しで叩きつけ合う、まさに殺し合いのような真剣勝負がビリビリと伝わってくる。もう読んでいる時にじっとしていられなくなって、読みながら悶絶、具体的には「ぐぅぅぅぅ!」とうなりながら床をゴロゴロと転げ回る、という「放出」をしないと弾けてしまいそうになりくらい興奮させられてしまった、この圧倒的熱量!!
あの「名局賞だ」と、ポツリと誰かがつぶやくタイミングの絶妙なこと。ものすごい展開で誰もが放心し呆然とする中で、あのセリフが響いた瞬間から一気にあの膨大なまでに渦巻いていた混沌が二人の対局へと収束して、興奮の坩堝へと化していくんですよね。
実際の対局の内容は、前例のないあの展開故の掌握力の低さや女流棋士のレベルに沿う甘さが確かに散見されるのですけれど、この熱量、対局という勝負が当事者たちの殺し合い、ぶっ殺してやるという迫力を漲らせて真っ向から叩き合う凄まじさを前にしては、そういうのは別の棚にしまわれちゃうんですよね。名局ってのが成立するのは、産まれるのは、そういう問題じゃあないんだ!
女流棋士の宿命として、所詮客寄せパンダに過ぎないという厳しい文句は以前から語られていて、この衆目が見つめる公開対局である山城桜花戦というのはその見世物の極地でもあり、当事者である万智さんや月夜見坂さんはそれと一番最前線で向き合って、悩み苦しみ、しかしそれ以上に一棋士として彼女らは眼の前の勝負に命がけで挑むのである。平均寿命が一般人よりも遥かに短いとされる棋士たち。彼ら彼女らは文字通り生命を削って盤上の戦いへとのめり込んでいく。それこそ、相手を殺してやるという殺気を込めて。たとえ親友でも、幼馴染でも関係なく、いや大切な存在だからこそ念入りに、一心不乱に、全身全霊を注ぎ込んで!
まさにまさに、名勝負でありました。
構成の関係上、特典なんかでかかれた短編なんかが挟まれてて、うまいこと話の中に盛り込んではいたものの、やっぱりちょっと話の流れがぶつ切りになるところがあってしまってたのがちと勿体なかったですけれど、焼き肉焼くのにも対局になってしまうとか棋士の宿痾が垣間見えたりそれぞれは面白かったんですけどねえ。ってか、焼き肉話は八一と姉弟子が幼い頃からどんな風に日々の生活将棋漬けでこれまで来たのかがよくわかる話で、かなり好きです。
まあ今回は、実は年上の幼馴染属性(尽くす系)というのを焼き付けてきた万智さんが在る種の殴り込みかけてきたようなものでもあったのですが。八一め、昔はこの人のこと万智ちゃんて読んで懐いてたのか。何気に女性との距離感にためらいがないところがあるんだよなあ、この男。幼少時から将棋というツールで中身剥き出しでグチャグチャに絡み合っていたせいなのか。
ところで万智さん、貴女それ現地妻志望でいいんですよね?
あと、完全に意表をつかれたのが自戦記でした。あれはまったく予想してなかった。わりとこう、傍から見える態度と内面を率直に書き出したときの丁寧さ、品の良さがまったく食い違ってる人って、いるんだねえ。
そしてあとがきがまた。作者さん、人生の波乱万丈期をまさに今、波乗りしてるがごとくだなあ。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと!7 ★★★★★   

りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと!7】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「文句があるならかかってこい! 八一!!」
 清滝一門の祝賀会。師匠である清滝鋼介九段から叩きつけられたその
言葉に、八一は衝撃を受ける。
 順位戦――名人へと続く階段で、昇級のチャンスを迎えた八一と、降
級の危機にある清滝。師匠の苦しみを理解しつつも八一は己の研究を信
じて破竹の進撃を続ける。
 一方、棋力のみならず将棋への熱をも失いかけていた清滝は――
「衰えを自覚した棋士が取れる手段は二つ……」
 残酷な運命に抗うのか、従うのか、それとも……?
 笑いあり涙ありの浪速ド根性将棋ラノベ、号泣必至の第7巻!

これもう、何を言えってんだよぉぉ。もうあかん、あかんて。こんな、世界一かっこ悪くて世界一かっこいいおっさんの話とか、泣くよ! マジ泣きだよ! いやもうマジで泣いちゃったよ、どうしてくれんの!? ラストの対局の、あの熱さとかもうなんなんだろう、すげえよ、ほんとになんかもうたまらん!!
将棋はボードゲームである。とかく必要なのは頭脳の回転だ。しかし、その知力記憶力をフル回転させるには凄まじい体力が必要となる。特に順位戦の持ち時間は6時間。一人6時間である。それはそれは果てしない戦いが、精根尽き果てるまで繰り広げられるのだ。
だからこそ、老いは覿面に実力へと作用していく。女性棋士の誕生の壁となっている大きな要員のひとつもまた、男女の体力差とも言われている。作中で、八一が銀子の弱点として指摘しているのもまた、その体力の無さだ。
自分も四十間際となって痛感しているのだけれど、人間本当に年齢このあたりから気力体力が目に見えて下り坂になっていく。いやもうマジで。おっさんもね、実際におっさんになるまで言葉ではそういうものだと理解していたつもりだったけれど、事実そうなってみると本気で「びっくり!」するから。え?なにこれ? と頭が体においつかない感じであかんくなってくから。若い人には絶対に伝わらないだろうけれど。こればかりは、直面してみないとわからないだろうし、実のところ体力の低下に直面した今になってなお、わけがわからん!! 
いや、こんなことを力説しても仕方ないのだけれど、ともかく棋士の全盛期というのはなんだかんだと二十代三十代、いや十代が一番そうなんだ、という強い声もあるほどで、かの異次元たる羽生善治ですら、最盛期は終わってしまった、と言われている。まあ、この人が本当にバケモノなのは、その最盛期が過ぎ去ってしまったはずなのに、まだバリバリにあっちゃこっちゃ蹂躙して暴れまわっているからで、ほんとなんなのこの人人間なの!?状態なわけですが。
であるからこそ、五十代へと差し掛かった清滝師匠の衰えは顕著であり、それはもろに順位に現れ、棋譜に現れ、精神面にすら浮き上がってしまっていたわけです。
折しも、将棋界は今まさに革命期。将棋ソフトの出現とその活用法の発展によって、研究は加速に加速を重ね、それについていけない棋士たちはA級だろうと九段だろうと容赦なく振り落とされていく、まさに未曾有の激流が荒れ狂う激動の時代の真っ只中。そして今、その突端を突っ走っているのが、九頭竜八一竜王であり、幾多の若き棋士たち、命を削って這い上がろうとしている奨励会員たち。
そう、古き棋士たちはその背中を若者たちに見せ、追わせるどころか、追い抜かれていった若者たちの背中を、清滝師匠のような棋士たちが見送るしかないような現状が、今厳然と現れてしまっているのである。
古いものは追い落とされ、見捨てられ、放置され、忘れ去られていくのか。
何もせねば、そうなってしまうのでしょう。現状に妥協し、諦め、情熱を失い、炎を消して、遠ざかっていく背中に背を向ければ、そうなるのでしょう。
だがしかし、だがしかし、師匠はそうではなかった。そうならなかった。そうしなかった。
現実は覆らない。自分が遥か遠くに取り残され、今若者たちの背中を見上げるしか無い存在である事実は覆らない。それを、この人は苦しんで足掻いてみっともなく無様で情けない有り様を露呈し、八つ当たりで老害を晒し、しかしそんな自分の最低さを、愚かさを、情けなさを、認め受け入れ、恥じ入り、置物と化したプライドを勢い良く放り投げ、このおっちゃんは生まれ変わったのだ。新生したのだ。新しい時代の流れに乗ったのだ!!
だが、生まれ変わろうとおっさんは厳然としておっさんなのである。どうしたって、おっさんは若者にはなれない。新しくなんてなりきれない。おっさんは、どうしようもなくおっさんなのだ。
その事実に改めて直面した時、おっさんはついに真に目醒めるのである。新しきおっさんに。古きからこそ蓄積されてた経験と、若者たちとの親身の交流のよって吹き込まれた新しい風を併せ持った、古きと新しきのハイブリッドなネオおっさんに。
それは、師匠のその行動は、活動は、新たな棋士としての在り方は、まさに新風となって将棋界をかき回す。将棋ソフトの隆盛をきっかけとして将棋界そのものを覆い尽くそうとしていた、何かを置き捨てたまま多くを取り残したまま景色そのものを一変させようとしていた局面を、反対側の古きものからの逆襲という形ではなく、まさに古きと新しきを両の足場として次のステージへととても多くのものが、沢山の振り落とされるものを出すのではなく、まともな人間が住めなくなる世界になるのではなく、将棋を指す棋士たちの住まう世界全体の階位が一つあがるかのような。
これもまた、革命の風!! すべてを吹き飛ばす暴風ではなく、まるですべてに生命を吹き込むような優しくも頼もしい風!!
でも、そこに吹き荒れるのはやはり、熱波である。戦う棋士たちの、生命を櫛る鬩ぎ合い。勝ちたいという意思を握り込んで殴り合う凄まじき闘争。だからこそ熱い。だからこそ面白い。だからこそ、そこに感動が生まれるのである。見るものを涙させる物語が生じるのである。そこに自分も立ちたい、たどり着きたい、その世界の中に飛び込みたいという根源の衝動を生じさせる輝きが発せられるのである。

まさに、歴史に残る名勝負。伝説として残るだろう戦いでありました。
見ているだけで、ただただポロポロと涙が溢れて止まらない一戦でありました。

嗚呼。

幾ら尽くしても語りきれないものがある。そしてそれは、読めば一瞥を以て伝わるのだ。だからこそ、一読あれ。
傑作である。




それはそれとして、デンジャラスビーストを銀子ちゃんに着せてデンジャラスする八一は、がちで変態である。言っとくけど、中学生相手も十分ロリコンだからな!! あと、銀子さんもノリノリすぎである。絵師のしらびさんもノリノリすぎである。おっさんの熱さにアテられておっさん描きすぎた反動か、熱量がそのまま銀子ちゃんにも注がれてしまった結果かわからんけど、もう自重してはいけない。もっとやれ。

熱い物語の中で何気にメインから外れてしまっているせいか、ちょっと陰に入っているけれど、天衣の快進撃がひたすら続いている。月夜見坂さん、ヤラレ役極まってきてるんじゃないだろうかw まいど、鮮やかにぶっ飛ばされすぎですじゃ、大天使。しかし、この快進撃は反動がありそうで怖いんだなあ。八一が、なんか天衣の弱点みたいなの気づいている素振り見せてたし。
でも、角頭歩の奇襲戦法は、ちょうどアニメ四話で天衣が新世界でメタメタにやられてしまった戦法でもあって、それをここで持ってくるか、となかなか感慨深い。

最近、銀子ヒロインの対抗馬って、アイじゃなくて創多くんなんじゃないか? という疑念が生じ始めた。ってか、創多くんが八一に一喝されてキュン死しておられる!!  この竜王、小学生なら男女関係なく見境なしか!! 

シリーズ感想

図書迷宮 ★★★★   

図書迷宮 (MF文庫J)

【図書迷宮】 十字静/しらび MF文庫J

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足掻いてください、あなたが人間足りうるために。

あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。
足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。
第十回MF文庫Jライトノベル新人賞、三次選考通過の問題作、ここに刊行―――。

二人称小説!!? いや、まさかまさかの二人称小説ですよ。自分も数作しか読んだことがない。そもそも滅多にお目にかかれない形式である。
二人称小説って、なかなか読みにくい代物なんですが、いや本作に関しては全く読みづらさを感じなかったですね。この辺のバランス感非常に難しかったと思うのですけれど、よくぞまあ仕上げたなあ、と。後半の叙述トリック満載の展開も合わせて、書く側の難易度本当に凄まじかったんじゃないだろうか、これ。それでいながら、読み手の方には殆ど難解という不可を掛けない構造や書き方になってるんですよね、これは正直凄いと言わざるをえない。絶妙のバランス感覚ですよ。よっぽど微細な調整を繰り返さないと、なかなかこの綱渡りなラインに載せることは難しい。
本作って、第十回の新人賞の投稿作品ということで、現在第十四回の投稿が募集されているのを鑑みると、三年近く改稿を繰り返していたそうなんですよね。それだけ根気よく完成品へと辿り着いた作者も然ることながら、編集部もよく粘り強く付き合ったものです。それだけ作品を見込んだ、というのもあるんでしょうけれど、昨今の作っては投げ作っては投げ、という出版事情を思えば、この編集部の姿勢は嬉しい限りですよ、ほんと。
それにしても、目次のあの記憶喪失まで※※ページ、という表記には面食らうと同時に引っ張り込まれたものですけれど、初っ端からのつかみとしては強烈な代物でしたし、その事情が明らかになっての緊迫感もぎゅと引き締まるもので、最初のアルテリアを背負って逃げる主人公の見開き挿絵からして物語の開幕としては素晴らしいもので、この段階的に事実や謎が明らかになるだけではなくて、読み手側の感情の盛り上げ方も計算しつくされたような作り方には感嘆しきりでした。
完成度の高い作品によくある忙しなさ、ある種の物語としての「一拍の間」。余裕がないのも確かなんですけれど、あと一匙キャラクター間の関係の醸成が進んでたら完璧に近かったんだけどなあ、という些細なところに思いをはせてしまうのは、それだけ良い作品だったからこそあとちょっと、もうちょっとという欲が出てきてしまうからなんでしょうね。
聖堂についても、明確にぶん殴れる相手として出てこなかった分、黒幕をぶん殴ってすっきりするカタルシスが得られにくかった、という点もちともったいなかったなあ、という気分ではあるんですけれど、そこを押しのけても純粋な二人のラブストーリーとして遂げたかったのもわかるだけに、これは仕方ないか。
続きが出るなら、これだけかっちりと設定や世界観、キャラの土台を固めただけに、あとはもっと自由に動かせるんじゃないだろうか、という期待も湧き上がってくる。怒涛の展開に急き立てられるのではなく、ここで立ったキャラクターたちが自分で考え歩き道なき道を切り開いていく展開を。自身の奥へと掘り下げていく物語を。可能性が溢れかえってて、実に楽しみである。

りゅうおうのおしごと! 6 ★★★★☆  

りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 6】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「重度のロリコンですね。治療法は死ぬしかありません」
竜王防衛を果たし、史上最年少で九段に昇った八一。二人の弟子も女流棋士になれて順風満帆……と思いきや、新年早々問題発生!?
不眠症や変な夢に悩まされ、初詣で怪しげなおみくじを引き、初JS研では小学生全員に告白され、弟子の棋士室デビューは大失敗。
おまけにあいはロリコンを殺す服を着て既成事実を作ろうと迫る。殺す気か!!
そんな中、銀子は奨励会三段になるための大一番を迎えるが――

新キャラも大量に登場! 熱さ急上昇で新章突入の第6巻!!
新時代の将棋の歴史は、ここから始まる。 
何度も何度も竜に救われ助けられて、その度にその竜によって奈落の底に、絶望の縁に、煉獄へと突き落とされる。
何度も何度も何度も思い知らされるのだ。身の程を、自分が銀の妖精でも将棋人形でも鬼でもない、ただの才能なんて欠片もない中学生の女の子が居るだけだ、という事実を。将棋の神様に魅入られ、いたぶられ、翻弄されるただの小娘がいるだけだという真実を、将棋の真髄へと近づくたびに、覗き見るたびに、銀子は思い知らされていく。身も心もボロボロになりながら、深淵を覗き込み、しかし深淵はこちらをまるで見てくれない。届かない、遠く遠くへと遠ざかっていく。這いつくばって進めば進むほど、遠くへ遠くへと自分を置いて遠ざかっていく。
ならば、ただ自分の口を使って言えばいいのだ、告げればいいのだ。好きだ、こっちを見て、私を見て、私を愛して。愛してる、誰よりも愛してる。この世の何よりも、誰よりも、アナタが好きだ、と。私の全ては、あなたの為に存在しているのだと。
言葉で告げればいいのだ。ただの女の子として。突きつけられた事実を踏まえて、ただの女の子として、その手で彼を捕まえればいいのだ。
しかし、彼女は。空銀子にはそれが出来ない。たったそれだけのことができない。
彼女が語ることができるのは、将棋でだけだから。将棋の駒をもってしか、なにも告げられない、何も訴えられない、何も伝えられない。
相手も相手だ。生粋の将棋星人だ。将棋のことしか考えてなくて、将棋を通じてしか何も伝わらない男なのだ、と銀子はそう信じている。そう信仰している。そう崇めている。そう非ねばならないと、祈っている。
だから、銀子には将棋で強くなるしか無い。将棋で語りかけることができるように、彼と同じ領域にまで辿り着かなければならない。彼と同じステージに立たねばならない。彼と同じ世界に至らなければならない。
そうあれかし、と。
だから、銀子にとって生きる道はプロにしかない。プロになって、九頭竜八一と真剣勝負を、全身全霊をかけた勝負を挑まなければ、彼女の願いは絶対に叶わないのだ。

修羅の道以外のなにものでもない。

ただ告白するためだけに、これほどの修羅道を歩もうという女が果たして他にいるだろうか。この時点で、既に自分には無理だと、どうやったって天外魔境であろうプロの棋界どころか、その前段階である悪鬼羅刹の巣窟である奨励会ですらも、自分の無才では、自分の弱いメンタルではとてもじゃないけれど生き残れないと思い知らされ、打ちのめされ、叩き潰される寸前であるはずなのに。息も絶え絶えに、泣きじゃくりながら、子供のように、幼子のように、八一の名前を呼んで悶え苦しんでいたくらいなのに。
その八一が前に現れれば、彼女は立ち上がる。空っぽの心身にいったいその時、何を満たして起立させたのか、きっと彼女自身にもわからないだろう。それは愛か、執着か。
辛い。辛い。辛くて苦しくて仕方ない。
生き残れるとは思えないこの先を、果たして彼女はどう進んでいくのだろう。誰も彼女を助けられない。将棋に囚われた彼女に、言葉は通じない。想いも繋がれない。気持ちも伝わらない。
むしろ、将棋によって隔離されているのは、将棋星人である八一たちよりも銀子なのだ。そんな彼女に、誰が何を与えられるだろう。八一は、他の星に住まうあまりにステージの違うところに存在してしまった竜王では、銀子に何も伝えられないのだろうか。銀子が、同じプロの棋界に来なければ、あの熱い舞台の上で戦わなければ、想いは伝わらないのだろうか。
だったら、今の銀子にはどうやったって手を差し伸べることはできないじゃないか。
空銀子は、最後まで一人で戦え、ということなのか。助けられるのは自分だけ、なのだろうか。
こうなってはもう、何もわからない。誰か助けてあげてくれ、と懇願するのも躊躇われる。
見守るしか無いのだろうか。
いずれにしても、これほど一途で狂的なまでの想いを、献身を、他の誰にも邪魔してほしくはないものだ。竜は、彼女のものなのだ、誰も触れるな、誰も奪うな、誰も盗ってくれるな。そう思ってしまっても、仕方ないじゃないか。

他にも今回は色々あったのだけれど、兎にも角にも銀子でした。
いや、それともう一つ。天衣に対する八一の師匠としての愛情と指南は素晴らしいものだった。八一だって大人とはまだ全然言えない未成年なのに、ものすごく立派に師匠してるじゃないですか。天衣、一生忘れないですよ、これ。棋士としての、指針ともなり根幹ともなり得る素晴らしい教えでした。
そして、あとがき。どこか淡々とした語であったからこそ、胸に来るものがありました。このシリーズの熱さの根源を感じ取った気がします。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 5 ★★★★★  

りゅうおうのおしごと! 5 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 5】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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将棋という名の奇跡に最後の審判が下される、激闘の第5巻!
「アーロハ―♪」
遂に始まった八一の初防衛戦。挑戦者として現れた最強の名人と戦うべく常夏の島を訪れた八一だったが……なぜか弟子や師匠までついて来てる!? 一門(かぞく)旅行!?
おまけに銀子と夜の街でデート!? そんなんで名人に勝てるのか!?
あいと天衣、そして桂香のマイナビ本戦も始まり、戦いに次ぐ戦いの日々。誰もが傷つき、疲れ果て、将棋で繋がった絆は将棋のせいでバラバラになりかける。……だが、
「もう離さない。二度と」
一番大切なものに気づいた時、傷ついた竜は再び飛翔する――!!


将棋は、一人でするものじゃあないんだ!!

師匠が居て、兄弟弟子が居て、自分の弟子が居て、家族が居て、将棋を指す場を作ってくれる協会の人たちが居て、スポンサーが居て、場を提供してくれる宿の人たちが居て、世に戦いの情景を伝えてくれる記者の人たちが居る。
そして何より、対局者が居なければ将棋は指せない。

将棋は、一人で出来るものじゃあない。一人で、戦えるものではないのだ。

だが八一は、どこかで将棋は一人で戦うものだという信仰があったように見える。自身こそが、人と人との繋がりを作り、その棋跡に多くの人の魂を縛り付け引きずり回し、何より自身が姉弟子・銀子との繋がりを求め、二人の「アイ」という弟子に棋士として新生させられたにも関わらず。
どこかでずっと、将棋という闘争における孤高の神聖さを、信じ続けていたように思う。
その根源が、思えば銀子の想いを受け止め損ね続けている理由でもあるのではないだろうか。銀子の願いは、観戦記で語られたようにただ一つ。しかし、八一はこのシリーズが始まった当初に銀子の棋士として追い求める先を絶対の孤高であるのだと、信じ切っているようだった。強さは、孤高の果てにあるのだと、銀子の棋士としての姿に、その結論を見出しているようだった。
だからこそ、なのだろうか。彼が、心の底から強さを求めた時、ひたすら他者を拒絶し、関係を断ち、孤独へ孤独へと突き進んだのは。
彼が「竜王」というタイトルに決死の思いでしがみつき続けた理由こそが、孤高を追い求める銀子を追い続けるためだったのだと、彼女の側に居るのに相応しいタイトル保持者である銀子と同じ格を維持しようとする我武者羅な思いだと、自身で血を吐くように吐露しておきながら。
矛盾である。しかし、これほど純粋な迷走があるだろうか。これほど一途な迷走があるだろうか。

根底から信じ続けていた棋士としての在り方を、名人戦を通じて九頭竜八一は覆すことになる。
それは銀子に囚われ続けていた軛からの脱却である。彼の将棋人生は、常に銀子とともにあり、銀子の為にあったとすら言えるのかもしれない。それから、彼はとうとう抜け出すことになったのではなかろうか。
しかし、それは同時に今まで見失い続けていた銀子の本当の願いと、ようやく真正面から向き合える姿勢になれた、と考えることはできないだろうか。
置いて行かれてしまったと、銀子は泣いた。でも、必死に脇目も振らず銀子の影を追いかけ続けて、銀子本人すら見ることもせずに走り続けた青年は、今ようやく振り返る余裕ができたんじゃないだろうか。
振り返った先に、本当の銀子がいることを、さて今の傷心の少女棋士が気づく余裕があるものか。
今、振り返った八一の目には多くの人が映っている。彼を支え、彼を愛し、彼を助け続けてくれた多くの人たちの姿が映っている。彼の目に映っているのは銀子独りだけではもうないのだろう。でも、そこには確かに、今までと違ってありのままの銀子が映っているはずなのだ。
今回随分とかわいそう、というよりも大いに下手を打ってしまった、恋愛以前に生きるのが下手くそな銀子らしいやらかしを、挽回できないままもうズブズブと沈んでしまった銀子だけれど、むしろここからこそが彼女のターンだと信じたいところである。
今回、その一途さと献身で一身に八一の暴れ狂う心を受け止め尽くしたあいだけれど、表立って頑張ったあいと違って、もう一人のアイ。天衣の方は目立たなかったのだけれど、むしろその弟子としての健気さではあいを上回っていたんじゃなかろうか。自己アピールが強烈なあいと違って、気づかれなくてもいい、理解されなくても良い、しかし最も自分を殺してでも師匠の為に尽くし、想いを捧げていたのは天衣の方だったように思うのです。
そんな天衣の秘めたる献身をすらちゃんと理解し、師匠と同じように傷つくあいを守り続け、ボロボロになった銀子を慈しみ、そして自分の夢も人生の行く末をも押しやって、絶対に負けられない戦いを、そのはての勝利を、八一に捧げた桂香さん。誰も届かなかった、当事者である銀子ですら触れることすら叶わなかった八一の孤独を、唯一打ち破った彼女。あれほど魂を削る戦いを、心身を憔悴させ尽くした戦いを、ただ八一に手を差し伸べるために費やした彼女を、女神と呼ばずしてなんと呼ぶのか。
人外魔境が渦巻くこの将棋界で。人ならざる天才ばかりしかおらず、その上に地球人ですら無い将棋星人が跋扈する中で、圧倒的な凡才でありながら、清滝桂香その人こそ、もっとも熱く、もっとも輝いていた。ただ一度の輝きではない。3巻からこっち、この人はずっと泥の中から天上に届くほどの輝きと熱量を放ち続けている。
凄い。
本当に凄い。

その熱と、輝きの照らし出され、救い出され、孤高ではなく多くの人の支えと愛情を受け取っていどんだ八一の名人との対局。
ただ名勝負だからではない。歴史に残る奇跡の戦いだったからではない。八一がこれまで残した棋跡に、そして名人が残した棋跡に、引き寄せられて、あの第四局には自然とあれほどの人が集ったのだろう。心奪われたのだろう。
月夜見坂燎の慟哭が、一番胸を打ったのは。八一の跡を一心不乱に追い続けたのが彼女だったからこそなのだろう。だからこそ、追いつけないと理解してしまった彼女の慟哭が痛切に響いたのだ。
彼女はこの時、本当の意味で置いて行かれたことを受け入れてしまったのだから。
将棋は一人では出来ない。一人では、出来ないのだ。
そしてそれこそが、空銀子がもっとも恐れる未来図なのである。
銀子はまだ、諦めていない。追いかける。追いかける。追いつくまで、追いかけるつもりなのだ。
だからまだ、作品は続く。完結なんてとんでもない。少なくとも空 銀子の闘いは、まさにこれからなのだから。


記者の鵠さんについては、もう完全にやられました。まったく気づかんかった。いや、もうね、読み仮名読み飛ばしちゃったのかな、と首を傾げてたんですが、まさかまさかそういうことだったとは。
冒頭のキャラ紹介の配置の塩梅も妙だったんで、あっちはあっちで別に???となってたんですが、まさか五巻に至っての種明かし。これは参りました。あひゃーー。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 4 ★★★★☆   

りゅうおうのおしごと! 4 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 4】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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人生で最も熱い夏が今、始まる。
「わたし、もっともっと強くなって……絶対に勝ちますっ!!」
小学校が夏休みに入ったその日、あい達は東京を目指していた。
目的は――最大の女流棋戦『マイナビ女子オープン将棋トーナメント』。
女流棋士やアマチュア強豪がひしめくその大会を、あいと天衣は破格の才能を武器に駆け上がって行く。
一方、その師匠はというと……弟子に隠れて美人女流棋士と将棋番組でイチャイチャしたかと思えば、その翌日は別の女の子と原宿で手繋ぎデート!? しかもそのお相手は……銀子!?

将棋に全てを捧げた女性達が織りなす灼熱の祭典を描いた第四巻!
人生で最も熱い夏が今、始まる。

姉弟子(かわいい)!!!

くそぅ、面白い、面白いよぉ。べらぼうに面白いってんだよぉ!!
八一の弟子であるあいと天衣の二人のデビュー戦。地元関西では既に名前が響きだしていた彼女たちですが、東京では未だ知名度ゼロ。
一線級の女流棋士やアマチュアの強豪たちが集う女性棋士たちの祭典であるこの『マイナビ女子オープン将棋トーナメント』に、そんな無名の小学生たちが殴り込み、並み居るプロたちをバッタバッタとなぎ倒していく、というこの痛快さと来たらもう。
天才小学生、なんて肩書、普通なら迫力や貫目に乏しいものなんですが、これまでの3巻で嫌というほど読者はこの二人の「アイ」の空恐ろしい実力を目の当たりにしている。天才なんて軽いもんじゃない。
将棋のプロ棋士、という人外のバケモノたちに堂々と肩を並べる、本物の怪物たち。それが、この二人の「アイ」であることを、自分たちは知っている。思い知っている、と言っていい。
だからこそ、二人の快進撃が並み居るプロたちを蹴散らしていく、なんて軽々としたものじゃないのを体感として理解している。あれは、あれは
「食い散らかしていく」
そう言って過言ではない、怪物たちの百鬼夜行なのだ。彼女たちの進撃の後を見るがいい、その惨状を、食い散らかされた跡たる敗者たちの有り様を。残酷と言うなかれ、これこそがプロの世界。その無情にして凶悪極まる現実の中で、女流棋士たちもまた生きているのだ。
ここでは、プロ棋士と女流棋士との明確な違い、格差もまた容赦なく謳われている。永世名跡という女流棋士の女王とまで呼ばれる女性が、自分たち女流棋士の凄惨な在り方を、弄ばれ踏みにじられ、それでもマスコットとして生きてゆかねばならない残酷な生き様を、滔々と語る姿は凄まじく印象的で、その上でそんな生き様を晒しながらもなお、勝つ、勝利への渇望を、飢餓感を、プロ棋士と同じ勝利に対する執念を、女流棋士は持ち続けなければならないという宿命を、彼女は炎のように語るのだ。その熱は、その火は、確かに女王たる彼女の元から、幾多の女流棋士へと燃え移り、プロ棋士の世界と何ら変わらぬ煉獄を作り出している。
才能があろうが無かろうが関係ない。勝つために、勝つために、勝つために、女流棋士たちもまた己の魂を燃やし尽くしているのだ。銀子も、鹿路庭珠代も、夢潰えて消えていこうとしている瀬戸際の棋士たちも、何ら変わらぬ熱量で、寿命を削るようにして戦っている姿を、この四巻ではこれでもかというくらいに突きつけてくる。
あいと天衣がたった今、足を踏み入れた世界は、そんな煉獄なのだ、と思い知らされる。そして、そんな煉獄を、彼女たちは目から火花を飛び散らせ、口から炎を吐きながら、背中に真っ黒な雷雲を背負うようにして地獄の鬼さながらに、その煉獄の真ん真ん中を突っ切ってくるのだ。まさに鬼であり悪魔であり、怪物そのものたる凄まじい新星なのである。
一方で、その足元でジタバタとのたうち回りながら、七転八倒しながら、鼻水垂らして大泣きしながら足元をふらつかせ、倒れ倒れて這いつくばって、それでも這うようにしながら一歩一歩、泥まみれ血まみれ反吐まみれになりながら前へと進み続ける女が一人。
華々しいデビュー戦を飾って快進撃を続けるあいと天衣の傍らで、彼女たちと比べるべくもない有り様を晒しながらも、それでも勝利を食いつなぎ、綱渡りの綱を落ちかけながらも運良く渡りきり、見るも無残な姿になりながらそれでも、それでも勝ち残っていく桂香さんの、敢えて言おう「勇姿」を見るがいい、見てほしい、見るんだよ!!
それはあいと天衣に比べれば、本当に無様としか言いようがないでしょう。それでもしがみついてすがりついて、同じ夢を共有した同志を足場に踏みしだいて、辿り着いた夢の先。そのみっともない姿の、なんと眩しいことか。なんと輝かしいことか。
どの対局も、もう身体の体温があがってしまうかのような熱戦ばかりで、手に汗握るなんてもんじゃないテンションのあがりっぷりなのですが、とにかくもう頑張れ頑張れと必死になって一番応援してしまうのは桂香さんの対局なんですよね。この才能のない凡人筆頭の彼女のジタバタした戦いっぷりには、見ていて涙が出てきそうになる。本当に好き。もう大好き。

そんな女性たちの戦いとはまた別に、ひたひたと近づいてくる「竜王」の防衛戦。その前哨戦である八一の親友と「神」たる名人の一局。もうこれが、凄まじかった。絶句、絶句、絶句である。なんていう境地なのか。これ、人間のたどり着ける領域なんだろうか。
「神の一手」
囲碁や将棋の作品では決して逃れられない一瞬ですけれど、もうこれたまらんかった。「ぞわぞわっ!!」とならざるをえなかった。対局を見ていた日本全土のあらゆる人間が、言葉を失って意識を飛ばされた、人外の一手。もうこの作品、ヤバいわ。表現の仕方というか演出の魅せ方がもうパないどころじゃないよ。
魂持ってかれる!!
ふわーーっ!
これ、前哨戦でこれって、本番どうなるのよ。どうなるってのよ。今から心臓バクバクしてるんですけど。この後すぐ読むつもりなので、テンションあがりまくってるんですけど。どうしようねー。

あとね、冒頭でも書いたのだけれど、姉弟子(かわいい)がもう天辺取っちゃってるんですけど、どうするんすかこれ?
八一は、敢えてこれ意識的にそっちの考え消してるんだろうか。もう銀子さん、あからさまもいいところじゃないですか。ってか、街中でずっと手を握ったまま東京から大阪まで繋ぎっぱなしって、言い訳しようがないんですけど。この逢引としか言えない逢引を、あいたちに教えなかった、秘密にしていた、という時点で自身でどう言い繕おうが八一も意識しまくってるとしか思えないんですよね。
個人的にはもう圧倒的に銀子推しではあるんですけれど、前巻からこっち将棋のキレっぷりが尋常でなくなってきた、凄まじいレベルアップを果たした八一と、その「眼」に追いつけない銀子という描写が印象的なところで挟まれるようになってきたのが少々気になるんですよね。棋士として、対等から遠ざかっていっている二人。その才能の差こそが、竜王ハーレムとかなんとかなっちゃってますけれど、そんなん障害じゃなくて、才能の格差こそが二人の間に横たわっている最大の障害なのかもしれないのか。

さあ、ともあれさあさあ、次だ。次だ。次ですよ。ついに来た、対名人戦。シリーズ最大にして最凶のホットスポットが来たれりか!!

シリーズ感想

異世界修学旅行 6 ★★★★   

異世界修学旅行 6 (ガガガ文庫)

【異世界修学旅行 6】 岡本タクヤ/しらび ガガガ文庫

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異世界修学旅行、いよいよ大詰め!

修学旅行の最中に突如飛ばされてしまった異世界で、王女プリシラと共に、クラスメートを探しながら修学旅行を続ける沢木浩介たち二年一組。次なる目的地は、その主である魔王を喪い、今や聖徒会なる集団に支配され、新たな文化の発信地となっている魔王城!聖徒会の野望を打ち砕き、クラスメート全員で日本へと還るため、魔王城へと乗り込んで行った浩介たちだったが――。気付くと浩介の眼の前には、毎日のように通っていた――それでいて懐かしい、母校である緑ヶ丘高等学校の校舎がそびえていた。

「……あれ? 俺たち、異世界で修学旅行をしてたんじゃなかったっけ?」
「異世界? 何をファンタジーなこと言うとるんじゃ。それよりはやく教室へ行こうぞ! このままでは遅刻じゃ! 食パンをくわえて走るのは意外と難しいぞよ!」
「あ、ああ。でも何か、大切なことを忘れてるような――」

日本と異世界が、現在と過去が交錯する懐かしくも心地良い幻の中で、浩介はついに生徒会長・若王子暁と再会する! 聖徒会の、若王子の目的とは? そして、魔王を倒した勇者とは?
異世界で日本を想う修学旅行生たちの異文化コミュニケーションコメディ、第六弾!


元の世界に戻っちゃって学校生活とか修学旅行じゃないじゃん! と一度は思いはしたものの、学校生活自体が初体験かつ、いくら日本の知識は豊富とはいえプリシラにとっては日本は異世界なのだから、彼女にとってはこれが異世界修学旅行になるのか。
ついに、生徒会長若王子との対面、という肝心なところで、魔王城の扉をくぐるとそこは日本の母校でした、というパターンに。しかも、そこは時系列的に巻き戻っていて、戻ってきた面々の記憶も浩介をはじめとして全員が消えてしまっていて、二度目の高校生活がはじまってしまう。
ただし、傍らにプリシラが当たり前のように生徒としてくっついていた、という差異を生じさせながら。

いやもう、生徒会長の若王子が実は女でした!とか(みんなはクラスメイトだから当たり前に知っていたのだけれど)、実は浩介の元カノだったんだよ! という驚愕の事実でぶん殴ってくれた前回。そりゃもう、ついに若王子ご当人の登場という展開に、いったいどういうヤツなんだ。浩介との関係とは。そもそも、マジで付き合ってたの!? なんで別れたの!? どうして今、浩介は若王子から目の敵にされてるの?
という様々な謎や疑問を、どう表現してくれるのか。若王子との直接対決で明らかになるのだと思っていたのだけれど、そうかーー! 語らせる、対論させる中で事情や若王子のキャラを見せていくのではなく、若王子という人物の人となりを、どうして彼女が浩介に関心を寄せていったのか。そもそも、このキャラ濃すぎる面々ばかりの二年一組がどのように修学旅行に出発するまでに今のようなクラスになっていったのかを、追体験という形で見せてくるとは。
しかも、本来若王子が居たであろうポディションに、プリシラがはまり込むことで実際の過去の流れとはどんどん違ってきてしまうんですね。同時に、浩介をはじめとして修学旅行の記憶が戻ってきたり、この魔王の精神攻撃に類する体験型幻覚の中で少なからぬクラスメイトたちが悪堕ちしてしまい微妙にクラス崩壊しだしたり、ただの追体験では終わらないのである。
いや、二週目の高校生活だったからこそ、あのすっとぼけた脳天気なスチャラカ異世界修学旅行の中で、みんな少しずつ成長したり、以前より頑張れるようになっていたり、関係が進展したり、というのが過去との対比の中で浮かび上がってくるのである。坂上先生しかり、ハイファンタジー室田しかり。そして、若王子との関係をかつて盛大に失敗してしまった浩介しかり。
一方で、プリシラにとっては二週目ではなく、これが初めての学校生活。それも、どれほど仲良くなろうとも異邦人と現地人というしがらみがどうしても付きまとう二年一組のメンバーと、本当の意味でクラスメイトとして同じ時間を過ごせた体験が、プリシラにとってどれほど掛け替えのないものだったのか。
相変わらず学校生活でもスチャラカなノリでありながら、この浩介たちの以前よりも前に進めた二度目の学校生活と、プリシラのはじめての学校生活という二重螺旋の話の主筋がうまく芯棒となって物語を支えた上で、クライマックスで化学反応を起こすように収斂していく、この構成が実に見事なんですよね。
普段ふざけてばっかりのプリシラ王女、浩介たちとの関係にもこれまでも全然気後れなく、心底楽しそうに絡み合ってたと思ってたんだけれど、あんな風にしんみりと涙ぐみながら同じクラスメイトとして体験した高校での時間を語るようなキャラだと思っていなかっただけに、衝撃でありそれだけ本当に二年一組の愉快な仲間たちのこと、好きになってくれてたんだな。一緒に過ごす時間を大切に思っていたんだ、というのが実感できて、なんだか感動してしまいました。いやもう、そんなキャラじゃないのに。そんなキャラじゃないくせに。
ああ、ちゃんとみんな、青春してるじゃないですか。

家に帰るまでが修学旅行です、って一旦家というか学校に帰っちゃったのだけれど、もう一度仕切り直しで異世界に戻ってきた浩介たちを待ち受けていたのは、あっと驚くような衝撃の真実。
考えてみると二周目の高校生活では決着つけたとはいえ、異世界ではまだ若王子ともちゃんと再会してない件も含めて、色々と問題は残っているのだけれどそろそろこの異世界修学旅行もクライマックスの雰囲気になっていたぞ。
旅の終わりはもう近い……。

シリーズ感想

りゅうおうのおしごと! 3 ★★★★★   

りゅうおうのおしごと! 3 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 3】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「あいも師匠と一緒に『おーるらうんだー』めざしますっ!!」

宿敵《両刀使い》に三度敗れた八一は、更なる進化を目指して《捌きの巨匠》に教えを乞う。
一方、八一の憧れの女性・桂香は、研修会で降級の危機にあった。急激に成長するあいと、停滞する自分を比べ焦燥に駆られる桂香。
「私とあいちゃんの、何が違うの?」
だが、あいも自分が勝つことで大切な人を傷つけてしまうと知り、勝利することに怯え始めていた。そして、桂香の将棋人生が懸かった大事な一戦で、二人は激突する――!

中飛車のように正面からまっすぐぶつかり合う人々の姿を描く関西熱血将棋ラノベ、感動の第三巻!!
……やっべえわ。これ、やっべえくらい面白いわ。いやいやいやいや、普通「両刀使い」との決戦だけでも一冊分の山場としてこれ以上無い盛り上がりを見せるのに、その対決を踏まえた上でラストにもう一つ山場を持ってくるとか、物語としてもボリュームありすぎるんじゃないですかね、これ!?
確かに、両方の戦いがテーマとして連動している以上、ここで一連なりの物語として片を付けるのは絶対であったのは理解も認識も納得も出来るんだけれど、それでもすげえわ。一冊でこれだけの熱量が摂取できるとか、贅沢すぎる。

……はぁ〜〜〜。
久々に、読み終えた後の高揚と酩酊感にふらついてしまった。
昨今、藤井四段という将棋界の新星が蹂躙戦を開始したことでにわかに将棋への世間体な注目があがっているところで、実際解説込みで将棋の中継見てても面白いなあ、と思うこともしばしばなんですが、改めて思い知りましたよ。
将棋って面白い!!
いやもうなんですか、あの八一の山刀伐戦の盛り上がり。震撼、震撼、震撼ですよ。本作のすげえところは、対戦者同士のみならず、観戦している人たちの空気感の見せ方なんでしょう。あの、神懸った手の意味が開示された瞬間、この戦いを目撃していた人たちみんなに電撃のように走る戦慄が、震撼が、思わず「ああっ!」とあげられる呻きが、叫びが、読んでるこっちともシンクロして、目の前の盤上以外が真っ白に塗りつぶされるような、あの瞬間。そして、あり得ない光景が現出したことが事実なのかと確認するかのように、お互いの顔を見合う瞬間をも、読者側も彼らと同じ心境になってしまうことで共有してしまうんですよね。
歴史的瞬間を目撃した体験を、これほど鮮やかに味わえるなんて。
そりゃあね、興奮もしますよ。テンション上がりますよ。自分がいま何を見たのかわけがわからないまま、うろたえてしまいますよ。
凄いよなあ、何よりすごいのがこの八一の手って、実際にモデルあるんですよね。将棋界ではかなり有名な対戦だったらしく、調べたらあっさりポコポコと出てきました。「トリプルルッツ」って、名称がまたもうなんちゅうか、キてるよなあ。
将棋って、戦法名もそうなんだけれど結構ハッチャケていて好きですわー。
今回の鍵となる振り飛車の「ゴキゲン中飛車」なんか、その代表格ですしねえ。
まさに、異次元同士の戦いのあとで、最後に敢えて持ってくるのが桂香さんの戦いというこの構成。年齢制限ギリギリとなり、これ以上将棋を続けていくのか苦悩する常人でしかない女の足掻きを、同じ土俵の上で同じだけの盛り上がりを持って描くこの白鳥さんの手腕。
本作って、もう徹底して「才能」あるものこそが強い、という将棋界の様相を冷徹なまでに貫き通して描いてるんですよね。
才能あるものに、才能のないものは「絶対」に勝てない。努力は才能を上回らない。絶対にして無比な事実にして現実がここにあるわけです。それを、銀子は地球人と「将棋星人」の違いと表現して、無情なまでに突きつけてくるのです。地球人が決して覗き見ることの出来ない領域を、将棋星人たちは悠々と泳いでいく。八一も、あいも、まさにそんな人外の側の宇宙人なんですよね。
でも、それでも。
才能を持たない地球人たちは、破れ打ちのめされ朽ち果て心潰されながら、それでも生き残り戦う闘志を喪わなかったものが、将棋星人たちに戦いを挑んでいくのである。諦めないのだ。諦められないのだ。
将棋という魔性に魅入られてしまった人間は、たとえ才能を持たなくても、絶対に勝てない才能の差を前にしても、なお将棋を捨てられないのだ。
なぜなら、将棋が好きだから。
その好きという気持ちが、その魔性に魅入られた堕落が、届かない頂点への憧れが、ときとして「絶対」を覆す。
才能の有無は「絶対」だ。残酷なまでに「絶対」だ。にも関わらず、その「絶対に勝てない」の「絶対」を覆すのだ、棋士たちは。
本作の凄まじいところは、才能の絶対性をこれ以上なく描き尽くしながら、「努力」というものが限界を超えて突き詰められた時にどれほど恐ろしい殺戮兵器となるのか、憧れという源泉が信じがたい原動力として可能性を爆発させるのか、それをまざまざと見せつけてくれるところなのでしょう。
地球人だろうと、将棋星人だろうと、このプロの将棋という世界で生きていくことを決めたなら、さながら土星の大白斑のように、そこに居るだけで存在自体消し飛ばされそうな嵐の中を往くことになる。それをみんな覚悟の上で、喜々として挑んでいく。その棋士を取り巻く世界の厳しさ、凄まじさ、異次元さを、今回は今までにもまして味わえた。アイや天衣のように、新たにこの世界に飛び込む新星ではなく、才能なくその世界に飛び込むことすら叶わなかった飛鳥や、今まさに崖っぷちに立たされ人生を終えようとしている桂香さんにスポットが当たっていたからこそ、痛切なまでに斬りつけられた物語だった。そして、そんな彼女たちがそれでもなお「好き」とのめり込める将棋という存在。まさに魔性の魅力である。本当に、凄まじい世界だ。
そんな世界を、地球人として、女性として切り分け、切り開き、八一の場所までたどり着こうとしている銀子。その道の険しさを、彼女こそが誰よりも知っている、痛感していることが、桂香さんを支え、叱咤する姿からうかがい知ることができる。誰よりも、彼女こそがわかってる。
それでもなお、征くのか。
やっぱり、彼女こそがヒロインだよなあ。

なんかもう、ものすごいものを読んでしまった、という読後感でした。恐るべきことに、このシリーズまだまだ燃え上がること確定してるんですよね。やばいわ、ほんと。

白鳥士郎作品感想
 
12月3日

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11月19日

(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(ヤングジャンプコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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(サンデーGXコミックス)
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11月18日

(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガ文庫)
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(ガガガブックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(少年サンデーコミックス)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤンマガKCスペシャル)
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(ヤングチャンピオン烈コミックス)
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11月17日

(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(電撃の新文芸)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(星海社FICTIONS)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(アフタヌーンKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(マガジンエッジKC)
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(講談社コミックス)
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(講談社コミックス)
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(フロース コミック)
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11月16日

(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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(アース・スターノベル)
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11月15日

(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(富士見L文庫)
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(Gファンタジーコミックス)
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11月12日

(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(GA文庫)
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(宝島社)
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(星海社COMICS)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(ゲッサン少年サンデーコミックス)
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(サンデーうぇぶりSSC)
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(ビッグコミックス)
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(アース・スター コミックス)
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(メテオCOMICS)
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11月11日

(裏少年サンデーコミックス)
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(アクションコミックス(月刊アクション))
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11月10日

(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(BLADEコミックス)
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(MFコミックス アライブシリーズ)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(電撃文庫)
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(カドカワBOOKS)
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(TOブックス)
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(TOブックス)
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11月9日

(ドラゴンコミックスエイジ)
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(角川コミックス・エース)
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(角川コミックス・エース)
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(KCデラックス)
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(KCデラックス)
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(シリウスKC)
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(講談社コミックス)
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