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すえばしけん

元世界最強な公務員 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました ★★★★   



【元世界最強な公務員 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました】  すえばし けん/キッカイキ HJ文庫

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隠遁した元勇者がお世話役……!?

久住晴夏はかつて、地球と繋がってしまった異世界を勇者として救った。その闘いの日々に嫌気がさした彼は、地球に戻った後に安定を求め公務員を目指して就職活動を始める。
しかし、異世界に飛ばされたことで職歴も無し、学校も中退の彼が選べる仕事は少なく、その知識を利用して異世界交流課に勤めることに。
その最初の仕事とは、ワケありな三人の新人女子冒険者をサポートすることで――。
隠遁したい元勇者による、現代バトルファンタジー開幕!

ほぼ4年ぶりくらいの、すえばしけんさんの新作だー! あとがきの書き方だと、別名義でなんか書いてたのではないか、という風にも見えるのですけれど。
今どき寄りのタイトルですけれど、ちょっと世知辛いくらい生活感ある登場人物たちの日常風景に、わりと重めの政治的要因が絡んでいたりするあたりは、変わらぬすえばし作品で染み入りますわー。
主人公にしてもヒロインにしても、そして敵役にしても一人ひとりじっくり寄り添ってその心の在り方を浮き彫りにしていく描き方は相変わらずなんですよねえ。そして、自分そんなキャラ描写が好きで好きでたまらなくて、この作者さんのファンであり続けてるわけです。
もう好き。

今回の話の主人公である久住晴夏は、異世界で邪竜を倒した元勇者。普通の異世界召喚ものと違って、異世界と地球が繋がった上に日本の地方都市が崩落のような形で異世界に落ち、凄まじい数の死者行方不明者を出し、異世界に遭難する形で大量の日本人が異世界に放り出された、という大災害になってるんですね。
ハルカは、その災害で家族を失い、紆余曲折あって適合した神具を使って、その災害を引き起こしたという邪竜を倒した人物であり、ノインの名だけが知られる謎の勇者、だったわけです。
本名名乗らなかったのはファインプレイなんだろうなあ。お陰で、再び異世界と日本が繋がってゲートが固定された際に、誰にも気づかれずに日本に戻れたのですから。
下手に有名人、それも戦略兵器に匹敵する勇者としての力を持った個人、となるとまともな人生は送れなくなりますし、個人情報特定された人間がどうなるか、昨今の情報社会では明らかですからねえ。
軽い感じの話だと身分とか英雄勇者だった事実を隠して隠遁するのって、奥ゆかしさとか実力を隠して過ごす俺カッコいい、という感じの代物でしたけれど、重めの話となるとガチのリスク回避だったりするんですよね。そうでなくても、有名税とか力あるものの義務とかで片付けるには面倒どころじゃない事になりますし。自己承認欲求とか英雄願望とか目立ちたい気質がなかったら、持て囃される毎日というのは本気で苦痛でしかないので、正体を隠して生きるというのは結構切実な面も大きいと思うんですよね。これは、物語のタイプにもよるんでしょうけれど。

ただ、本作においては……これらとはまたちょっと理由が違うんですよね。
これが明らかになった時には、ちと絶句してしまいました。ハルカが元勇者という正体を隠し、さっさと日本に逃げ帰ってしまったのも、これは無理からぬ事ではなかったでしょうか。彼本人が語る内容から推察するしかないですけど、当時は精神的にもほんとにギリギリ一杯だったんじゃないでしょうか。
というか、神具に適合して以降、よく持ったなあ、と。この事実をよく受け止められたなあ、と。いや、今も受け止めきれていないのかもしれませんが。
邪竜討伐の旅、あんまり仲間が居た様子もありませんし、実質妹の玖音との一人旅だったんじゃないでしょうか。ほんとにメンタルよく持ったなあ、と繰り返しになりますけど。
彼当人の責任なんて一切ないはずなのに、彼はすべての責任を背負って生きていく羽目になったのですから。

でも、彼が世界を救ったのは、事実だったんだなあ。ハルカはそのことに何の意味も価値も見出していなかったわけだけれど、三人の新人冒険者との交流が彼に違う見地を与えてくれたということなのか。

バイト生活に汲々としていたハルカが、募集を見つけて応募したのは公務員と言っても市役所の非常勤職員。それも、異世界との交流プログラムで市に常駐することになった新人の冒険者三人の案内役で、まったく戦闘とかとは関係ないお世話係みたいなものでした。
その新人たち。エウフェミア、リュリ、マリナの三人は、多少経験のあるリュリを除いて、冒険者になりたて。実力を見込まれて送り込まれてきたのではなく、あくまで市の交流事業のシンボル的な扱いだったのですけれど、それぞれ邪竜との戦争の様々な形の被害者でもあったわけです。
あの戦争で人生に大きな影響を受け、戦争が終わった世界でそれまでと違った生き方を得ようと、このプログラムに応募してきた子たち。それぞれ志があったり、家族の生活のためだったり、平和になったが故に放逐された身の上だったり、と事情は様々だったのですけどね。
最初はそれぞれが抱えている事情なんかわからないので、第一印象から深くまで踏み込まない段階でのコミュニケーションから受けるそれぞれのイメージなのですが、これが付き合えば付き合うほど目まぐるしく印象が変わっていくんですよね。
人となり、というのは絶対にシンプルでは収まらない。若くとも十数年の歩んできた人生に基づく、様々な側面がヒトには根付いている、というのがなんとなく伝わってくるんですよね。覗けば覗くほど、色んな顔が見えてくる。こういう幾層も重ねたようなキャラクター付けと、それを一枚一枚広げて様々な方向からヒカリを当てて見え方を変えていく、キャラの掘り下げ方はこの作者であるすえばしさんらしさが色濃く出ていて、なんとなく染み入ってしまいました。
それに、三人が影響を与え合うことで三人娘たちは新しく違う自分を見つけたり身につけたりしていくわけです。刻々と成長もしていくわけだ。
特に顕著なのが、対邪竜の兵器として扱われてきたが故に、戦闘狂という側面ばかりが磨き上げられ、それ以外の情緒がまったく育っていなかったエウフェミアでした。
いや、ここまでガチの戦闘狂って珍しいくらい、強さ以外に何の価値観も持っていないエゲツない子で、それを温厚でぽやぽやしたキャラクターでキレイに覆い隠していた、色んな意味でヤバい子だったのですが、この子が他の弱っちくて何の関心も持っていなかったはずのリュリとの衝突から、自分の中に芽生えた経験のない感情に戸惑い、そこから手繰り寄せて一つ一つ階段を登っていく様子は感慨深いものがありました。

そんな三人娘の現状というのは、ハルカが邪竜を倒して世界を救ったことによって発生したものであるんですね。邪竜を倒した後すぐにとっとと異世界から帰ってきてしまったハルカにとって、邪竜を倒すことというのが清算であり、証明に過ぎずにその後のことなんて何の意味も見出していなかった彼にとって、彼女たちはある意味自分が成したことの結果そのものだったわけです。
自分がやったことの影響を、彼はこの仕事を通じてはじめて目の当たりにして実感することになったのでした。勇者なんて、自分で名乗ったわけではなく、すべてが終わったあとで誰かが勝手につけた称号。世界を救った自分は、しかし誰も救ってくれなかった。
でも、自分が救った世界で救われた人がいる。救ったはずの世界で苦しんでいる人たちがいる。自分が成した事を仰ぎ見て、それを追いかけている人がいる。その先を、未来を自分の力で掴み取ろうとしている人がいる。
その事実は、誰も救ってくれなかった勇者の心を、確かに救ってくれた。

後始末で戦後処理が多く絡むお話でしたけれど、それ以上に終わった後にしっかりと前に進めるようになる、未来に向けた話だったんだなあ、と。それを、戦って勝ち取るのではなく、隣人となった異世界の人たちとの交流で、寄り添うことで紡いでいく。育てていく。
そんな噛みしめれば噛みしめるほど味わい深さが滲み出してくる、そんな逸品でありました。
堪能した!!

しかし、あのリュリの意識高い系キャラは面白かったなあ。何気に現代地球の科学技術への理解や習得も柔軟で早いし、意識高いが故に自分にも他人にも厳しくてほかを置いてけぼりにしそう、に見えて急き立てながらも他の二人とちゃんと歩調をあわせる機微もありますし、キャラがわかってくればわかるほど頼もしく思えてくる良いキャラでした。
エウフェミアの方はもうすげえ、としか言いようがないヤバい子でしたけれど。いや、あのぶっ壊れ方はほんと凄いよなあ。なまじ、傍目にはまともに見える分、余計に。インパクト大でした。


すえばしけん・作品

すえばしけん 4年半ぶりの新刊きたあ!!  


【仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》】(GA文庫)の2巻以来長らく音沙汰なくて、なろうやカクヨムなんかでも書いている様子もなく、もう作家としての活動もなさってらっしゃらないのかと少なからず新刊出るのあきらめていた「すえばしけん」さんの新刊情報が出ているのを見て「ふぁ!!」となりましたよ「ふぁ!!」

【元世界最強な公務員 1.帰還勇者、身分を隠してたのに新人冒険者の世話をすることになりました】 すえばしけん/キッカイキ  HJ文庫

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この人の作品、私好きでねえ。心温まるハートウォーミングな部分とひりつくような凄惨で冷徹な部分を並列で掛ける稀有な作家さんであり作品のテーマをキリキリと引き絞るように掘り下げていける方でもあり、物語としても一級のエンターテイメントだったんですよね。
個人的には【ひきこもりの彼女は神なのです。】があれ本当に好きで好きで。
いやすえばしさんの作品がもう一度読めるというのは嬉しい限りですわー。

すえばしけん・作品感想

仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》 2 ★★★★  

仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》2 (GA文庫)

【仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》 2】 すえばしけん/マニャ子 GA文庫

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秋輔の元師匠が帝国の将に!?

俺たちには、できるだけ多くの味方が必要だ。協力者を集めよう」
エティル王族が率いる抵抗勢力の噂を聞いた秋輔とカティアは、真偽を確かめ、共闘するためにサナレ村を離れる。だがその時、解放軍殲滅のため帝国は大軍で再侵攻してくる。しかも敵将は秋輔の師、樹神亜梨朱だった。
「この状況なら秋輔と全力で殺し合うことができる。なんて素敵な再会」

秋輔は、抵抗勢力を巻き込んだ奇策をもって帝国軍に立ち向かう!!
「ここで私が負けると、師匠に失格の烙印が押されるのですね?」
そしてカティアは、己の誓約のため、秋輔と仲間を護るため、無謀にも亜梨朱との一騎撃ちに臨むが……。
弱小解放軍の進撃譚、第二弾!!
ああ、そうか。秋輔が特別にイカレているわけでもオカシイわけでもないのか。魔術師という存在そのものが、そもそもこういう異常な在り方をしてるモノなのか。
いや、魔術を使えるだけならそれは魔術師ではないんですね。常識や倫理や善悪などを一顧だにせず、どれだけ自分の誓約に殉じることが出来るか。そもそも、自分の誓約とそれ以外のものを比べてどちらを選ぶとか、そういう発想すら生まれないのか。優先順位とか比較対象とか同列じゃないんですよね、完全に断絶している。誓約こそが、存在理由と言ってすらいいのかもしれない。
これはぶっ飛んでるわ。常人には決して理解が及ばない領域だ。どれだけ邪悪でも、どれだけ俗物でも、どれだけの怪物でも、それは条理の中での立ち位置の問題であって、魔術師のそれはそれと完全に隔絶している。
だから、雪火にも魔物とも怪物とも言える人間からハズレた存在であるマリカですらも、それは踏み込むすべがない領域なのだ。雪火の魔術師への解釈はやや偏見に歪んでいたとはいえ、その異常性については彼女の言うとおりだったのだろう。
亜梨朱が言うところの、あちら側とこちら側という比べ方こそが一番ふさわしいのかもしれない。魔術師という側に来れてしまう人間は、本当の意味で壊れてしまっているのだ。頭が狂っているのだ。人間をやめているのだ。
そう、秋輔だけじゃないんですよね。それは、彼の師匠である亜梨朱もそうであるし……そう、秋輔の弟子となったカティアもまた、魔術師としての資質を持つ人間だったわけだ。
カティアが、カティアのまま、あの純粋でひたむきでやや内気で優しいあの少女のまま、何も変わらないまま……まさに魔術師としか言いようのない常軌を逸した価値観に基づく発言をしだした時のあの背筋がゾクゾクするような感覚。彼女本人は当たり前のことを言っているつもりなのに、マリカたちが唖然と絶句する他なかった、あの断絶。ああ、この娘、外れたんだと如実にわかるシーン。
そうなんだよなあ、魔術師って意図してなるわけじゃないんだ。マリカがあれだけ望んでそちら側になれなかったように。むしろ、その当人の中に誓約となる願いが、狂気が生じたからこそ魔術師になってしまった、というべきなのかもしれない。そう、なろうとして狂人になれるもんじゃあないんだ。
このゾワゾワっとなる感覚を味わえる作品って、滅多ないんですよねえ。
そして恐るべきは、この価値観の断絶が人間関係の断絶に何ら至らない、というところなのでしょうか。誓約にまつわる魔術師としての考え方以外は、基本的な価値観や喜怒哀楽の感情なんかは何も普通の人と変わらないんですよね。ただ、生き方の指針が根本的に違うだけで。だから、カティアとマリカたちの間に芽生えた友情は何も変わらず深まっているし、新たに登場したカティアの従姉妹にあたるエルシーリアとの王族としての義務にまつわるすれ違いと身内同士ゆえの親愛と信頼関係なんかも、極々まともに進行するんですよね。
亜梨朱と秋輔の姉と弟ともつかない師弟関係も、二人の間に起こった出来事が変にもつれた結果としてより面倒くさいカタチで亜梨朱が誓約の順守の仕方を拗らせている、という側面があって、原因なんか見ても基本的に当たり前の価値観に基づいているわけなのですが……、根本的なところで魔術師の狂気が作用していて、不気味で理解不能なベクトルに言動がズレたり、すっ飛んだりするんです。その正気と狂気の並存がまたゾクゾクさせる面白さに連結されてるんですよね。
エルシーリアの無力感に苛まれながらの苦悩や、マリカがもどかしさに歯噛みしながら、自身の内にある自分の本当の気持ちを手繰りよせていく葛藤など、いわゆるマトモな側のキャラクターたちの真っ当な内面の掘り下げも丁寧にやっているだけに、余計に魔術師たちの側のアレな部分が引き立つのかもしれない。
うん、面白かったー。

1巻感想

吸血鬼に彼女役を頼んだ結果→とんでもないことになりました4   

吸血鬼に彼女役を頼んだ結果→とんでもないことになりました (一迅社文庫)

【吸血鬼に彼女役を頼んだ結果→とんでもないことになりました】 すえばしけん/LENA[A-7] 一迅社文庫

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異世界に続くゲートが開いたことにより、異種族と人間が共存する現代日本。何故かやたらと女性(人外限定)にモテる体質のため、トラブルに巻き込まれがちな俺・真城大河は、ひょんなことから、行き倒れていた密入界者で吸血鬼の美少女・リーゼロッテを助けることになる。彼女をかくまう代わりに、形だけの恋人になってもらうことで女難を避けようと、偽の彼女役をお願いすることにしたのだが、それがさらなるトラブルの引き金に―!?モンスター娘にモテモテ!?人外ハーレムラブコメ!
すえばしさんの作品としては【ひきこもりの彼女は神なのです。】寄りの世界観だなあ、これ。しかも、この作者特有のああこれはヤバイとゾクゾクさせられるような黒かったり壊れてたり、という部分が見受けられない久々のマイルド路線。かと言って味気なくなっているわけではないのは、さすがというべきか。ハーレムラブコメというには独特の渋みといいますか、キャラクターに味わいがあるんですよねえ。特にリーゼロッテと日和子さん。リーゼロッテは庶民的な生活の知識を殆ど経験していないまさにお姫様で態度も偉そう、という記号的になりそうなキャラクターにも関わらず、これが妙に面白いというかシットリとした雰囲気のあるキャラに仕上がってるんですよね。偉そうだけれど素直でクール。無愛想だけれど人付き合いが良く、世間知らずなのに世知に長けている。誤解されがちな大河という少年に対する深い理解者、それも大河当人が自覚していない部分まで短い付き合いの中でよく読み取り、彼の在りようを定義づけていたりもするんですよね。そういった点から見ても、彼女の性質が崇め持て囃されるお姫様というよりも……なるほど、彼女が異世界において与えられていた特殊な役割に相応しい在り方を培っていたのが何となくわかるなあ。観察し、把握し、価値を見抜き、在りようを捉え、その真贋を見極める。
必要に迫られて、緊急措置的にあの最後の選択をしたわけではなく、リーゼロッテはしっかりと選定を行っていたんですよね、これ。
さて、そんなお姫様にしっかりじっくり見られていたことに、この主人公の大河はどれだけ気づいていたのか。全然気づいていなさそうだな、うん。この大河って子、体質によるこれまでの不遇な人生の影響によるものなんだろうけれど、他人に自分がどう見られているか、という点について恐ろしく鈍感なんですよね。まあ自分の出すフェロモンによって、正気を逸しかけてる人外によるトラブルに遭い続けた、というのは相手から向けられる意思や感情が常に変な状態であり、普通の人間もちゃんと彼の人となりや言動を見てくれずに一方的な思い込みから来る決め付けで判断され続けたのだから、むしろ他者からどう思われているか、については鈍感にならないとやっていけなかったのかもしれないけれど。
ただ彼の偉いところは、他者から何も与えられず理不尽に見まわれ続けながらも、自分からは礼節を喪わず信義を重んじ、他者が見舞われる理不尽に正しい怒りを示す人品を保ち続けたところなのでしょう。これだけ心を叩かれ続けながら、歪むことがなかったというのは果たしてどれほど強靱だったのか。
いや、冗談抜きでリーゼロッテの見る目というのは、まさに選定の側に立つに相応しかったんじゃないでしょうか。惜しむらくは、主人公の大河が鈍感故に基本一方通行であることとリーゼロッテが物語の核心としては能動的でありながら、内面の問題に関しては基本観察者モードで積極的に相手に干渉してくるタイプ、或いは時期ではなかったせいか、肝心の主人公とメインヒロインの関係の醸成がひどく大人しかった、というところでしょうか。いや、あんまりバンバンぶつかり合うことも干渉しあうこともなく、静々と熟成されて行ってたんですよね。わりと物語の進行が捲いてるのか早かったんで、微妙に二人の関係の修熟のスピードと合ってなかった気が……。これが長期シリーズでゆっくり進行していくなら、この二人の関係のスピードもちょうどよい丁寧さなんですけれど。
あと、面白かったのが日和子さん。大河のTシャツの匂いかいでハアハアしてる変態さん、と定義付けてしまうと可哀想か。でも、この人の立ち位置もヒロインとしてあるまじき苦労人的なポディションで。主人公たちが関知しないところでひたすら公務員としての立場と大河たちの隣人としての情に挟まれて、あたふたと苦悩しストレス溜め続けるという、一人で何をしてるんだろう、と思わず涙誘われる人だったんですよね。この人、ヒロイン枠にちゃんと入ってるんだろうか(苦笑
いやでも、一番感情移入してしまうのがこのいい人すぎる日和子さんだったわけで。もう少し良い目見させてあげてください。

すえばしけん作品感想

仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》4   

仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》 (GA文庫)

【仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》】 すえばしけん/マニャ子 GA文庫

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「力を貸してください、秋輔様!」
異世界から飛ばされてきた魔術師の少年、阿由葉秋輔は、帝国に追われるエテイル王国の姫カティアと出会う。
カティアに請われた秋輔は、魔術で村に駐屯する軍勢を退けるが、帝国の再侵攻と村の包囲という最悪の状況を招いてしまう。絶望するカティア。だが、秋輔はそんな彼女に真逆の提案をする!
「『村一つ護れればいい』では、村一つも護れないんだよ。帝国そのものを消滅させなきゃね」
秋輔はカティアに常識を覆す意外な策を授け、共に戦うことを約束する。
「秋輔様が支えてくれるなら……、本物の護り手になれるかもしれない」
異世界から来た最恐魔術師と弱小解放軍の進撃譚、ここに開幕!!

現代から異世界への転移となると、そもそも持っていけるものは知識くらいのものでこれを実際に役立たせようとすると、相当の年月と基盤が必要になってくる。武器や道具の類は補給が続かなければすぐに消耗してしまいますから、継続的に使用できるものというのは必然的に限定されてしまう。異世界転移もので、現地に到着してからそこでチート能力を獲得する、というパターンはこうして考えてみると理に適っているのかもしれません。
ところが、昨今チラホラと見受けられるようになったパターンの一つがあって、これが現代からの持ち込みで徒手空拳にも関わらず、即座かつ継続的に身を守る武器にもなり、立場を得るための手段ともなり得るのが、異世界における魔術魔法の類とは術式大系を異にする、或いは世代が数百から千年単位で先進している最新魔術・異能を習得している魔術師・異能力者が異世界に転移してしまう、というケースである。
いわゆる、現代舐めるなファンタジーではなく、現代異能舐めるなファンタジー、とでも言うべきか。
転移する異世界が、おおよそ中近世時代が多いこともあってか、科学知識や社会の成熟度の差を以って現代人としてのアドバンテージを得ているのを踏まえるのなら、魔術魔法の類だって数百から千年の研鑽の差があるのなら、或いは現代科学とのコラボレーションなどから、それこそ魔術理論なども格段の差が出来ているのもありだろう、という考え方からくる設定様式だけれど、それこそ「魔術は古い方が強くて深く鮮明である」という世界観でもなければ、決して突飛な考え方ではないだろう。
でも、そういう魔術の捉え方は、魔術というものを単なる技術の一つとして捉えているだけとも言えるし、魔術師は技術者に過ぎない、と考えているとも言える。
では本作はどうなのか、というと……むふふふ。
いや、うん、面白いね。最初は、魔術師という存在を憎み、呪っている人たちが語る非人間的な魔術師という存在の在り方と、主人公の魔術師である秋輔が語り、その言動で指し示す魔術師の姿とは全然違っていて、彼ら魔術師を憎むものたちが考えている魔術師像は、彼らが目の当たりにした一部の極端、或いは過激な人倫から外れた魔術師像を、すべての魔術師がそうだと誤解し思い込んでいるものなのだ、と思ったんですよね。思うよね、ここらへん。

ところがですよ、途中から段々と「あれ?」となってくるんですね。
秋輔くんは、すえばしさんの作品の主人公としては珍しいくらい素朴で善良。しかし、意思は強く、柔らかい性質とは裏腹にさすがは巨大な組織の長へと担ぎ出されただけあって、度胸も肝も据わっていて頼もしい、いわゆる真っ当な方向に芯が通った主人公、に見えたんですね。
おそらく、彼に助けられ彼を師事するようになったカティア、そしてはからずも異世界で同行することになってしまった魔術師殺しのテロリストである少女も魔術師への不信感から警戒は解いていないものの、さてどこまで違和感に気づいているか。いずれにしても、彼の、秋輔という魔術師の性質を見た目通りにしかまだ認識していないっぽい。
だけれど、なんかね、変なんですよね。見ていると、段々肌が粟立ってくるわけです。言っていることも、やっていることも一貫していて何も変わってないんですよ? 一切、ブレてないし、最初に宣言したとおりに彼はとてもやさしい笑顔を、きっと内面も優しい気持ちで満たしながら、カティアの背中を支え、見守っているのですけれど、それを見ている読者のこっちからすると、当初と最後では場に流れている空気感が、その冷たさが全然違うわけですよ。
いつからだろう、こんなに「ゾッ」と寒気を感じていたのは。
そして、最初に魔術師喰らいの雪火が語っていた、いささか憎しみ余って思い込みが強すぎて、秋輔のような魔術師を見ていると、滑稽にしか聞こえなかった非人間的な魔術師像が、段々と色彩を帯び、肖像を結んでそこにいる温厚そうな少年の姿に重なっていったのは、いつからだろう。
いや、雪火の語るような邪悪で利己的で欲深なわかりやすい悪いやつ、というのが魔術師というものの在りようだというのなら、むしろ安心できただろう。
彼女らは、自分たちが憎み恨み許すまじと怒り狂っている対象が、どんなものなのかを本当にわかっているのだろうか。それとも、あまりにも彼が異端すぎるのか。少なくとも、彼の周囲にいた彼の仲間たちは、話を聞く限りでは「同類」の匂いがプンプンするのだけれど。

ともあれ、秋輔にとって魔術師として誓ったものは、その存在意義そのものである。それはきっと、自己満足ではあっても善意に近しいものなのだろう。だが、それは果たして善悪の括りの中に則っているものなのか? 人倫というものを介しているのか?
彼をして魔術師の代表と見るのは、やはり間違っているのかもしれない。その真の在り方を見て脳裏に思い浮かんだのは、魔術師などではなかった。

それは正しく<悪魔>の在りようというものだよ、秋輔くん。

幸いなるは、その悪魔と契約を結んでしまったのが、哀れな贄などではなく、強き意思と信念を持ち、自ら考える力を持つ「王」であったことか。
すえばし作品の特徴の一つとして、主人公こそがラスボスであり、生徒たる少女は教師であるその主人公を上回り乗り越えて、逆にその人が抱え持つ破綻や虚無から救い出す、というのがあるんですよね。その意味においても、カティアはライトスタッフの持ち主であろう片鱗を随所に見せている。いつ、秋輔がラスボス化するかはまだ予断を許さないけれど、それがそう遠くない未来だとしても十分間に合いそうな成長の気配を見せているのが頼もしい。

いずれにしても、本作はすえばしさんの物語りの髄の部分をしゃぶりつくせそうな匂いがプンプンしている作品なので、期待大でありますよ。

すえばしけん作品感想

ラエティティア覇竜戦記 2.持たざる者の剣 3   

ラエティティア覇竜戦記2-持たざる者の剣- (HJ文庫)

【ラエティティア覇竜戦記 2.持たざる者の剣】 すえばしけん/津雪 HJ文庫

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隣国マグノリアを傘下においてから一ヶ月。トウヤ達率いるラウルス国は次の目標を《蒼の神王》が治める北方のティリアに定める。
密かに敵地に赴き、精霊竜に自分達の味方につくよう説得するが、ティリアの精霊竜が出した条件は「当代のティリアの神王を殺す」ことだった――!
果たして精霊竜の真意とは? そしてトウヤの下した次なる一手は!?
やっぱりこのトウヤって自称ギャンブラーだけれど、実質は詐欺師かペテン師なんですよね。運を天に任せるような博打は打たないし、打つ場合は結局全体に影響が及ばない状況のときのみ。彼がギャンブル好きというのは多分本当なのだろうけれど、実は運を天に任せるのが大好きなタイプなんだろうけれど、本当に大事な場面では決してそれをやらない慎重派。破滅型ではなく絶対に勝てるようにイカサマするタイプだ。正しく策士であり権謀術数の担い手なんだけれど、それを政治や軍事ではなく、対面での勝負に費やすからやっぱり博打打ちとか詐欺師にしか見えないんだよなあ、王様なのに。
前回、トウヤの本当の目的が神を討つことだと明言されたためか、物語の核心はこの神の代理戦争の理不尽さを浮き彫りにするような展開にジリジリとスライドしていくことになる。トウヤの意味不明で自由奔放な振る舞いにふr回されっぱなしのラシェルだけれど、その言動にいちいち理由があり意味があり布石がある、と既に信頼できて全部預けられる絆もできているので、何だかんだと愚痴りながらもトウヤのサポートに徹するラシェルは、何故か微妙に悦に入っているような素振りがあって、微苦笑を誘われる。献身的な嫁気分でご満悦、というのはまああれだ、色々と面倒をおっ被される人にとっては溜息ついてしんどい思いするよりも、幸せな気分に浸れる方がいいんじゃないかしら。トウヤに振り回されるにしろ、彼は別に理不尽な物言いしたり、無茶ぶりするわけじゃないですからねえ。
前回のマグノリアの神王が、いわゆる神王としての役割をまっとうに果たそうとしている正統派だとすれば、今回のティリアの神王は、神の理不尽を体現した物語を担っていた、と言えるのでしょう。トウヤの抱く、神への隔意。それが如何なるものなのか、神という存在の下す意思の不条理さがどのようなものなのか、トウヤの目的である、真に戦うべき相手は各国の守護神である、という神との敵対が今回の一件で広く共有される事になったんじゃないだろうか。まあ、とは言っても各国の守護神を一律に一括りにしてしまうのは、神にもそれぞれ個性があるようですから、難しい所なのですけれど。ラウルスの神からして、アレですからねえ。
でも、トウヤたち神王が元いた世界が、どうやらなんかされたっぽいだけに、根は深そうなんだが。って、トウヤたちの元の世界って、普通に現代の地球だと思うんだけれど、地球どうなっちゃったの!? てっきり、単に個別召喚されただけだと思っていただけに、地球そのものがえらいことになったという発想はなかっただけに、トウヤのあの発言にはかなりぎょっとさせられたんだが。
あと、さすがに、ティリアの神王の秘密については予想外でした。トウヤの何の気のない軽口までが全部布石だったとはなあ。とりあえず神王については穏当に片がついたとはいえ、決してハッピーエンドじゃないだけに、気分は重たい。
その分、対蒼の神戦はスカッとしましたけれど。あそこまで見事に神様をだまくらかしてペテンにひっかけてくれたら、そりゃあ気分もいいですよ。ひどい話ですけれどね。勝負が成立した段階で、あれどうやったってトウヤの勝ち以外なかったんですから。神様、間抜けw いや、この場合トウヤの仕掛けがえげつなさ過ぎたんですけれど。ちょっと先を見通しすぎなくらいでしたが、口車に乗せて自分の準備していた展開に誘引してたわけですから、やっぱり詐欺師だよなあ、この人。

1巻感想

祓魔科教官の補習授業 2.優等生は振り向かない4   

祓魔科教官の補習授業2 優等生は振り向かない (一迅社文庫)

【祓魔科教官の補習授業 2.優等生は振り向かない】 すえばしけん/NOCO 一迅社文庫

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異世界との亀裂から現れる異形―魔禍魂を狩る“祓魔技能士”を養成する天原学園。教官を務める“常人”にして最強の祓魔技能士、日垣悠志朗は、稀有な才能や能力を持つドロップアウト組5人の生徒と合宿を行うことに。しかしそこでは、フィオと因縁浅からぬ男と、謎の組織が暗躍していた―学園育成祓魔バトル、第2弾!
あかん、すえばしさんが本気出すと最初から最後まで胃がキリキリなりますわー。この人【スクランブル・ウィザード】でキッチリ前科がありまして、政府の暗部やアウトサイダーのダークな部分を容赦なく引っ張ってくるんですよね。お陰様で、いつどの登場人物が惨たらしくまともな死に方じゃないような最期を迎えるかわかったものではないので、ハラハラを通り越して胃がキリキリ締め付けられる始末。今回、悠志朗の友人として登場した医師の猪浦先生や、その助手で悠志朗やその義姉のかがりとも古い付き合いのある琴羽さんなんか、モロに標的になりそうだったわけですよ。案の定、暗部サイドの傭兵部隊に身柄を狙われ、手段を選ばないそのえげつない姿勢に、いつ場面変わってバラバラ死体になって主人公たちの目の前に、とか首だけ梱包されて送られてきたり、とかいうサイコな展開になるのか恐々としていたのです。普通なら、間一髪助けに来てよかったね、で終わるんですけれど、その辺いい意味で信用してませんからw
まあこれ、猪浦先生か琴羽さん、どっちかはヤバいなあ、と。二人共医療を志し、人を癒やす事に人生を捧げている立派な人だけに、尚更にフラグ立ってるなあ……、となんかもう暗澹たる気持ちになりながら読み進めていたのですが……。

ぎぃやぁーーーーーーーーーーーーーー!!www

もうやだこわい。

あかん、予想以上どころか完全に死角からブスリとやられて、そのままグリグリと脇腹を抉られたような有り様ですわ。違う意味で怖くて涙目だわぃ!!
これはちょっと、本当に頭の片隅にもなかったので、泡吹きました。この作品、ヤバいわ。いい具合にイカレてる。悠志朗やかがりが人間としておもいっきり欠落しているのは前巻で見せつけられたところですけれど、いひひひ、いやああそこが振り切った限界点であって、そこからもうちょっと落ち着いて、というか範囲を限定してカウンセリングじゃないんですけれど、花耶が徐々に悠志朗の狂気を解きほぐし、欠落を埋めていくのだと思ってたんですが……あかんこれ、狂乱博覧会の様相を呈してきたw
神和、本気で全員ヤバいんだ。頭おかしくなってるんだ。この人達が怖いのは、一見して正常であり、それなりに日常に適応し、体制側にキッチリ収まっていながらも、人間として完全に破綻してしまっている所なんですよね。制御されてない暴走している狂気なんて、これに比べたらただ暴れてる動物だわ。ふとした瞬間にヌルリと湧き出してくる狂気が、正気と並列していて、なおかつそこに全く自分で違和感を抱いていない時点で、本当にヤバい。怖い、泣きそうw

ただ、面白いのが今回、かがりさんという悠志朗の破綻を助長させている狂人に対して、花耶は対決姿勢を露わにしているんですが、どうもその手段が悠志朗の周辺からの排除、という形ではないっぽいんですよね。花耶自身はまだ何も具体的に考えていないと思うのですけれど、琴羽の途中で途切れてしまった昔話からは、かがりがもはや後戻り出来ないまでに狂ってしまった存在とは言い切れない事が示唆されているわけです。
この作者さんは、面白いことに弱い者を一方的に救われるべき存在とは見なさないんですよね。むしろ、強い者こそ、見捨てず、見放さず、切り捨てず、手を差し伸べようという試みを感じるのです。絶対的強者であることが、同時に誰にも救いを求めずにいられる存在であるのか。強いからこそ、誰かの助けを必要としているんじゃないのか。その時、そんな絶対強者を助けてくれる人は、手を差し伸べてくれる人は誰なのか。
自分は、1巻の最後の場面で、かがりがラスボスとなるであろう展開にゾクゾクすると同時に、ラスボスとなるからこそ、彼女は倒されるんだろうなあ、と思ってました。
悠志朗を救うために、かがりは排除されなければならないんだ、と思ったのでした。
でもね、【スクランブル・ウィザード】で、作者は完全に破綻し狂気に身を任せ、殺戮者になろうとした能勢という人物を、しかし最後まで見捨てなかった。彼を単なるヤバい敵にせず、最後の最後までその手を離さなかった。
それから、この2巻。新たな神和は、悠志朗やかがりと同じく欠落した狂人でありながら、既にその手を握って貰っている人でもあったわけです。
そして、花耶はラストシーンでかがりに対して、真っ向から宣戦布告してみせた。かがりのそれも、悠志朗のそれをも皆指摘した上で、すべてを受け入れた上で、対決姿勢を露わにしてみせた。あれを見た時、思ったんですよね……ああ、かがりは切り捨てられなかったんだ、とね。
こう言っちゃなんですけれど、もうこれでこの作品の主人公は花耶ですよ。そして、ヒロインは悠志朗であると同時に、かがりにもなりました。ダブルヒロインですよ。あの宣戦布告で、花耶は悠志朗だけじゃなくかがりの同時攻略が必須になってしまったわけですし。むしろ、かがりをどう落とすか、という話になったとすら言えます。失敗すれば、文字通り惨殺されて排除されかねない、という危険度ルナティックな攻略なのが、もう色んな意味で鳥肌です。
ヤバいヤバい、期待以上に面白くなってきた。これはいい具合にキマって来ましたよ。

1巻感想

ラエティティア覇竜戦記 神王のゲーム4   

ラエティティア覇竜戦記 神王のゲーム (HJ文庫)

【ラエティティア覇竜戦記 神王のゲーム】 すえばしけん/津雪 HJ文庫

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国の命運を賭けた一世一代の勝負が始まる!

戦乱期、天から各国に遣わされ人々を導くとされる伝説の聖人『神王』。
ラウルス国の若き女祭司長ラシェルは、隣国の侵攻が迫る中、なぜか自国にだけ神王が姿を現さず途方に暮れていた。そこへ従者の少女を連れた流れ者が訪ねて来る。トウヤと名乗るその青年は、「俺様が神王を演じてやる」と大胆にも神王の替え玉となることを買って出るのだが……!?
気鋭・すえばし けんが放つ知謀系異世界ファンタジー戦記!!
これは面白かった!!
戦記モノといいつつも、軍記や内政モノというよりも、人間同士の駆け引き中心の権謀術数。一種のライアー・ゲームと言っていいかもしれない。何しろ主人公のトウヤからして、胡散臭さ丸出しの詐欺師紛いですからね。スリルを求める賭け事狂いで、暇さえあればギャンブルに興じる怪しい男。とはいえ、その共犯者となるラシェルも若いながら政治家らしい虚実の駆け引きに長けた人物で、いい意味で清濁併せ呑むことの出来る娘なんですよね。だから、綺麗事に流されずに不審人物であるトウヤを利用することを厭わない。
ただ、食わせ者というわけじゃないんですよね。若くして国の中枢を担うことになり、その重責を担う為に相当無理もしていて、仮面を被り辛さを押し殺して濁を飲み込んでいる。素の彼女は優しくて思いやり深く、愛嬌もあってちょっとヤンチャなくらいの行動力のある、非常に公正な人物なのである。トウヤと偽物の神王を起てるという暴挙の共犯者となったことで、彼の自由な振る舞いに振り回されながらも、重責を一人で背負い込まなくて良くなった分、だんだんと素の彼女の顔が出てくるのですけれど、これがまた可愛いし、味があるんだ。
政治家、権力者として振る舞うためにカチコチに固めた仮面の彼女よりも、むしろ開き直って自分自身を開放したラシェルの方が、よく見ると一筋縄ではいかない相当な食わせ者だったりするんですよね。その意味では、癖者の極みであるトウヤの相方、相棒としてふさわしいキャラクターでもあるわけだ。
このメインとなる二人のみならず、この作品に出てくる登場人物は、皆がみんな一筋縄ではいかないいろんな顔、側面を抱え込んだ味わいのある人物像で、非常に面白い。
軍人としてラシェルをサポートする形となるエリアーヌにしても、あっけらかんとしてあまり難しいことを考えなさそうなキャラとは裏腹に、大胆さの中に人間関係の見極めなど繊細な見る目、本質を突くような、死角からヒョイッと肝を掴まれるような鋭さとを持っていて、その鋭剣の抜きどころ収めどころのバランス感覚が絶妙なんですよね。彼女の副官や、敵方となるマグノリア国の指揮官と副官コンビといい、登場人物の造形の出来栄えが一等
素晴らしい。
その充溢した登場人物を舞台の上に乗せての物語の転がし方が、また思わず引き込まれて夢中になってしまうような意表を突かれる展開の連続で、これは正直参った。まさに、そう来たか! うわ、そうだったのか! の連続。特に、ラストのトウヤという人物の分析については、表向き通りのギャンブル狂というキャラクター像を何の疑いもなく信じていただけに、その凄絶な目的を知るとともに、主人公としても魅力も爆発的に膨れ上がった気がします。
初っ端から、明らかに神々の代理戦争の場として用意されたと思しき箱庭世界。その中で、誰か他人の意思に強いられるがまま従うのではなく、どのような結果を招こうと「決断」すること。「選ぶ」ことを尊ぶことを最初から標榜していた神王トウヤ。彼はそれをギャンブル、賭け事に重ねあわせて、「選択」するという事に込めた本当の意図を迷彩していたようだけれど、彼の「選択」への本当のスタイルが明らかになり、その目的も理解すると、彼が尊ぶ「選ぶ」ということがどれほど、この箱庭世界に衝撃を投げかけるものなのかが理解できる。
これは、先々が非常に楽しみな作品がはじまりましたよ。オススメ!

すえばしけん作品感想

祓魔科教官(デモンビーター)の補習授業 落第少女に咒術指南4   

祓魔科教官の補習授業 落第少女に咒術指南 (一迅社文庫)

【祓魔科教官(デモンビーター)の補習授業 落第少女に咒術指南】 すえばしけん/NOCO 一迅社文庫

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異世界との亀裂から現れる異形―魔禍魂を狩る“祓魔技能士”を養成する天原学園。学園に転入してきたフリーの祓魔技能士・日垣悠志朗(18)は、咒術も異能も使えない“常人”なのだが、落第寸前少女3人の補習授業を担当することに!祓魔科の優しい新任教官×クセもの少女たちの学園祓魔バトル!

うははは、これは黒い。ダークサイドまっしぐらじゃないか!
【スクランブル・ウィザード】を好きだった人には、待ちに待ったダーク・すえばしーなんじゃないだろうか。あれも、先生と教え子の教育モノにも関わらず、社会の冷酷非情な暗黒面に踏み込みまくった容赦無い一面が色濃くある作品だったからなあ。
本作も、真っ当な教育・育成モノと見せかけて、人道とか人間性というものに後ろ足で砂を引っ掛けるような、人間として破綻し、壊れてしまった人たちが、物語の中軸でうごめく作品となっている。
何しろ、主人公からしてアレだからなあ。
一見して明らかに壊れてる人間なんて、別に何も怖くないんですよ。怖いのは、普通に接していたら全く破綻している事に気づけない壊れ方をしている人間の方。これがヤバい、本当にヤバい。同じ世界を見て、同じ価値観を有して、同じ気持を共有していると思っていた相手が、まるで感性の異なる怪物だったと知った時の、毛穴が開くようなゾッとする薄ら寒さ。
いやあ、もう読んでて青ざめましたよ。え? ナニイッテンのこの人? とぽかーんとなって、血の引いていく感覚。やばいやばい。
しかも、この壊れ方って、自然にこうなってしまったわけじゃなくて、とてつもなく丁寧に慎重に、外枠が壊れないように繊細に、注意深く、プツリ、プツリ、と致命的なものをちぎって、折って、破壊していく、という偏執的なくらいの情熱をもって、人格を壊していった結果なんですよね。
いや、或いは一度バラバラになってしまったモノを、敢えて元通りにはせずに、大事な部品をわざと抜いて組み立てなおした、というべきなのか。
それが、悪意によってではなく、むしろ愛情によって成されているというのが、余計に肌を泡立たさせてくれる。ヤンデレどころじゃないですよ、いい具合にイカレ狂ってる。
しかし、ここまでイカレ狂っていてこその、人類サイドの切り札なんですよね。こりゃ、確かに普通の“祓魔技能士”とは根本的に存在の在り方が違うわ。どれほど才能があろうと、鍛えに鍛えようと、人類の範疇を越えようと、それでもはやりそれは人間なんですよね。一方で、こいつらは見事に選ばれ反転してしまっている。文字通り人間をやめてしまっている。まるで、人類の決戦存在。絢爛舞踏みたいなもんですわー。
果たして、そんな本当の意味で人間ではなくなってしまっているモノを、人の領域まで引き戻せるものなのか。
スクランブル・ウィザードでは、主人公の十郎はヤサグレてはいたものの、人間としてはまともな部類でしたし、その教え子となったあの子も、小学生ながら「やり手」と言っていい子だったので、あの凄まじい状況を乗り越えることが叶いましたけれど……こっちは、ハードル高すぎですよ。スクランブル・ウィザードで言うなら、能勢っちをまともな人間に戻せ、と言うのと似たレベルに見える。さすがに、あそこまでは致命的に破綻してはいないけれど、何しろこっちには余計な真似をしようとすると邪魔してくる(物理的に死ぬ)人がいるもんなあ。どうすんだ、これ?
とりあえず、落ちこぼれ三人組のうち、メインとなる子以外の二人については、まだ殆ど掘り下げもしておらず、彼女たちにまつわる事情についても触れていないし、三人組がまだ打ち解けているとはいえない段階でもあるので、その辺を進めていかないと話にならないですね。これ、花耶ちゃん一人では絶対にどうにも出来ないですよ。
あと、鈴切先輩と木竜先輩も上手いこと絡んできそう。特に、木竜先輩は良いキャラになりそうなんですよね。出た当初は典型的な、適当にやられるチンピラ役という割り振りだったのに、男キャラでは特に重要かつ美味しいところを担いそう。
ともかく、ラストシーンにはもう完全にヤラレたので、次回以降すごく楽しみです、これは真骨頂が見られそうで、実に楽しみなシリーズの開幕です。

すえばしけん作品感想

さまよう神姫の剣使徒(デュエリスト) 23   

さまよう神姫の剣使徒 2 (富士見ファンタジア文庫)

【さまよう神姫の剣使徒(デュエリスト) 2】 すえばしけん/H2SO4 富士見ファンタジア文庫

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探索士・ユウキが拾ったのは、世界の守護者“六番目の神姫”ティナ(ただし、奇跡の力を失ったダメ神姫)。ひょんなことから、主(ユウキ)従(ティナ)契約を結んだふたりだが。ティナは「困った人を救うは神姫の使命!」と進んでトラブルを引き寄せ、ユウキはその後始末に奔走する毎日。しかし、ティナの存在が、他の五柱の神姫に知られることとなり―六番目の神姫が現れるとき、神姫・剣使徒たちの戦いが始まる。ティナに迫る“月の剣使徒”の凶刃を“かつての”月の剣使徒・ユウキの刃が受ける!―「迎えにきたぞ。ティナ」絆が織りなす“世界を護る”剣戟の迷宮ファンタジー!

うええ、ちょっとこれ、1巻で明かされた情報だけでも相当に酷い話だったのに、実際の所凄惨どころの話じゃないじゃないですか。かつての月戴く神姫の身に起こった事と言い、そもそも剣使徒がどのような人物から選ばれ召喚されるのかという事実と言い、どうも凄まじい悪意が世界の背景に見え隠れする。
そもそも、神姫同士を争わせて一番抜けた存在だけが女神に昇格出来る、というバトロワみたいなルールが存在するわりに、仮に神姫が死んでしまったら新しい神姫が誕生する事といい、そもそも神姫の性格が争いに向かず自ら敵意や悪意を以って他人を害する事が出来ない事といい、たった一組の勝者をつくり上げるシステムとしては随分と不備というか、穴がある……或いは歪な状況設定だなあ、と思っていたんですよね。
ティナやユウキの回想に出てくる神姫だけじゃ、そもそも神姫の性質が本当に争いを好まない存在なのかわからないので、このバトロワシステムが機能しない、とまでは全然思っていなかったのですけれど、作中でも触れられているのですが、実際神姫同士の争いに関してはかなり停滞しやすいものになっているようで。
だったら、そもそも神姫の性質をこんな争い事に向かないものにするな、という所なんですが、それを敢えてそう設定したところに、優しく他者を傷つけることに痛みを感じる娘たちにお互い傷つけ合わせようというシステムを作ったところに、悪意を感じるんですよね。しかも、状況が動かなくなった場合、無理やり停滞を破壊し破綻させるような仕掛けまで施して。先代月戴く神姫とユウキを見舞った災厄は、正直筆舌しがたいもので、彼女の心や尊厳を根こそぎ踏みにじり、ユウキが剣使徒として喚ばれた理由をそのままひっくり返して冒涜するような出来事でした。
こんな仕掛けを施しているような存在が、まともなはずないですよね。だからこそ、最後のユウキの決断はストンと腑に落ちるものでした。こいつは、ルールに則って勝利を目指すゲームなどではなく、根本的に土台からひっくり返し、悪意をもってほくそ笑んでいるモノの思惑に反逆すべき……そう、プレイヤー同士が争うのではなく、プレイヤーの立場からゲームマスターに喧嘩を売るべき展開なんだよなあ。

とはいえ、勿体無いのはわりと話を畳み掛けているところですか。微妙にストーリー進行をまいている気がするんですよね。なぜティナが神姫は五人しか生まれないなかで、無銘の第六の神姫として誕生したのか、という謎が見事に回答されたのは良かったんですが、星撒く神姫のエルフリーデや空支えうる神姫のキャラ見せがいささか慌ただしかったんですよね。特にエルフリーデなんか、事前の態度や言動と本来の素の性格のギャップがかなり面白いことになってて、このあたりじっくり攻めてたら相当に可愛いことになっていたかもしれないのに。空支えうる神姫も、登場から正体バレが相当急ぎなんですよ。彼女の素性については、引っ張ればかなり引っ張れたでしょうに。この段階で新たな神姫が出てくるとは思っていなかったこともあるんですが、それ以上に全く彼女がそうだとは気づいてなかったもんなあ。
カーヤなんかは、ジャハルとのうまく行っていなかった主従関係が、ちゃんと向き合って噛み合うまでの過程が良く描けていただけに尚更に。
今までティナしか登場していなかった神姫、幼い彼女と違って他の神姫はもっとちゃんと女神然とした戴かれ君臨するに相応しい人格の持ち主ばかりだと漠然と思い込んでいたのですが、カーヤと来たらティナにも増して弱キャラで、精神的にも考え方にしても未熟なくらいで、むしろティナの方が神姫としての風格と心意気を持っていたのが意外だったんですが、他の二人もあんなんだったとすると、神姫と言っても殆ど人間と変わらないんだなあ、というのがわかったのは良かったです。成長の余地があり、またどこまでも人と対等足り得る存在だったわけだ。だからこそ、こんな悪意に満ちた戦いの渦中に置かれるには、あまりに不憫で理不尽な存在たちでもあるわけで。
うん、改めてユウキの決断と、それに対する神姫たちの呼応には胸がすく思いでした。
この人の描く物語には、理不尽さや本来どうにもならない現実の重たさに対して、敢然と立ち向かおうという意志と、それを支えあう為の人と人との繋がりがきっちり描かれるのが、本当に好きなんですよね。
今回も、挫けかけていたカーヤの奮起や、ユウキが闇堕ちしかけた時のフランカの身を呈した気配りや、シュテファンのフォローなど、人間関係の機微を丁寧かつ絶妙に描いてるシーンが度々あって、何度もうんうんと頷くことになりました。
この人は、それだけじっくり書けば書くほどいいものを仕上げてきてくれる感のある作家さんなので、尚更にまきまきに捲いて話を畳まないで欲しいなあ、と願うばかりです。

1巻感想

さまよう神姫の剣使徒(デュエリスト) 4   

さまよう神姫の剣使徒 (富士見ファンタジア文庫)

【さまよう神姫の剣使徒(デュエリスト)】 すえばしけん/H2SO4 富士見ファンタジア文庫

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一つの都市と一つの迷宮を残し、虚無に喰われ果てた世界。戦いの先の栄光、冒険の果ての一攫千金、あるいは死。人々の糧と欲望、そして運命と奇跡―あらゆるものが眠る大迷宮“大いなる門”で、探索士・ユウキは一人の少女を拾う。「ここがソリトゥス、我が街か!神姫の帰還をたたえよ!」街を守護する女神―神姫であると自称する拾われた少女・ティナは失った力を取り戻すため、ユウキに協力を求める。「対価は持っていない。だから、私自身を買ってくれ!」運命から目を背けた探索士と、奇跡の力を取り戻すため奮闘する女神が織りなす“世界を護る”剣戟の迷宮ファンタジー。
これ、冒頭のシーン最初に読んだときは意味がよくわからなかったんだけれど、全部読み終えてからもう一度読み返してみるとかなりキツい話だったんですよね。一つの物語として、ここから始まったものを描いても十分面白いものになっただろうに、あくまでこれはもう取り返しの付かないくらいに終わってしまったお話のはじまりだったというのが切なくてたまらない。何も持たず持たない事に疑問を持つことすらしなかった子が、そこからあまりに多くのものを与えられ満たされて、そして与えてくれた人ごと全部奪われてしまうことの残酷さを何と表現したらいいものか。
これを認識すると、ユウキのどこか他者や周りの出来事から一線引いて距離を置くような在り様にも理解が及ぶ。むしろ、巧妙にそうした断絶を感じさせない彼の態度には拒絶よりも歩み寄りを感じるのだ。彼なりに、残させた生を真っ当しようという決意がそこから垣間見える。
だからこそ、それ以上の歩み寄りは期待できない。一度全部無くしてしまうまでに崩されてしまったものを、精一杯一つ一つ積み上げた結果が今ならば、それ以上もっと頑張れよ、と無邪気に押し付ける事が出来るだろうか。それが、どれほど残酷なことかを自覚しないままに。
所々で垣間見える彼の冷たさ、に似た虚ろさは深い深い断絶と、彼の失ったものの大きさを強く感じさせる。むしろ、よくここまで持ち直したな、と思えるほどに。彼を拾い店を遺した先代店主は、余程の人物だったのだろう。
つまるところ、このユウキという探索士を本当の意味で立たせる事は本当に難しいことだったはずなのだ。事実、彼に以前から関わっていたフランカという少女は、踏み込み切る事も自分の事情に立ち入らせる事にも厳密には失敗している。彼女だけでは、ユウキが自分に敷いた一線を跨ぎ越すだけの意志を芽生えさせられなかった。それをしたのは、間違いない、自らを神姫と名乗るティナその人である。
この少女は世間知らずで純真無垢という自然に強制力を発生させるファクターの持ち主ですが、ハッキリ言ってそれだけではユウキは動き切る事はしなかったでしょう。適当に折りの良いところで適当に見切りをつけて状況を濁していたのではないでしょうか。決して悲惨な結末には終わらなかったでしょうけれど、モヤっとしたものが残ってしまう、そんな終わり方になっていたのではないでしょうか。
それを許さなかったのは、ティナの明晰さでした。この娘は人を疑わない心の綺麗な子ではあるんですけれど、だからといって馬鹿とは程遠い賢明さと思慮深さの持ち主であり、鋭く強く心に訴えかける言葉を使いこなせる少女だったのです。健気さと献身さ、そこに人の上に立ち導く強さを併せ持つ、なるほどユウキとの関係を、「神徒」でありながら「ご主人」という従わせるものと従うものという矛盾した間柄に収めながら破綻させずに上手く成り立たせた彼女の不思議な在り様というのは、そんな彼女の強くも素直な性質にあったんだな。
ラスト近辺の、ユウキとティナの答え合わせはお互いの本質を曝け出しあった真剣勝負、という感じで何やら胸のすくような感じを受けましたし。考えもなく思いやりもなく自分を押し付け寄りかかる関係ではなく、深く思い思慮を巡らせその上で感情とともに自分を開いて心をぶつけあう末に芽生える関係だからこそ、輝くものもあるでしょう。それが、一度潰え失い絶望に暮れた者に再起を促すことになるのならば尚更に。
故にこそ、この際責任がより大きいのは、ユウキではなくむしろティナの方なのでしょう。彼女の前の人が、それに失敗している以上、もう二度とユウキに同じ思いを味わわせない責任が、彼女にはあるのですから。
その意味では、ティナに課せられたものはただのヒロインとしての者以上に重いと言えます。まだ生まれたばかりで何も知らないティナを守り教え導くのはユウキの役目であり、彼自身もそう思っているのでしょう。同時に、どこか彼にはその役割を継ぎ橋と認識しているような節があります。いずれ、違う誰かに託すものだと。彼自身の神徒としての役割は、既にもう終わっているのだと心の何処かで決めつけているように。
だから、本当の意味で誰が誰を守るべきなのか。その為に成長し見識を広め大きくならなければならないのは誰なのか。この賢明な生まれたての神姫さまは、ちゃんとそれを認識し、また決意も抱いているようですけれど。
頭が良くて、自分が背負うべきものをキチンと理解している覚悟のある女の子は、大好きです。
本作の作者であるすえばしさんは、HJ文庫でデビューし、あちらで良作と呼んで過言ではない長期シリーズ二作を書くべきところを余すこと無く最後まで書き切り、見事に完結させた人です。レーベルの注目度の低さやジャンルの地味さから知名度はさほどあがっていないようですが、実力は折り紙つき。個人的にもお気に入りの作家さんの一人、期待して損のない新シリーズのスタートですよっと。

すえばしけん作品感想

ひきこもりの彼女は神なのです。84   

ひきこもりの彼女は神なのです。8 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。8】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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新米の神となった天人が、実尋市の危機に立ち向かう!!

唯一神・御子神てとらの弱体化によって、街では悪神・氷室結に扇動された人外たちの騒乱が頻発。「天秤の会」が総出で対応を強いられる中、新たな神となった天人は亜夜花とともに戦う意志を強めていく。一方、寮を出た梨玖はてとらに頼まれた"役目"を果たすべく行動していたが……!? 人と「人ならざるもの」の命運をかけた戦い、怒濤のクライマックス!!
ああ、良かったなあ。人と神様たちの新たな時代を自ら掴みとり繋げていく物語、ここに完結。人と人ならざる者たちとの交わりというテーマに対して真剣一途、そして心温まる素晴らしいハートフルなお話でした。前シリーズの【スクランブル・ウィザード】に続く、文句のつけようもない最高の幕引きで、この作者本当に上手いわー。それも安定高値。これほどレベル高いところで最初から最後まで綺麗に伸ばして広げて収められる能力は、一言凄いと思いますよ。もっともっと名前売れてもいいと思うんだけれどなあ。
派手に燃える展開こそありませんでしたけれど、本作はバトルものじゃなく、人と人の間にまつわる心の在りようを突き詰めていく話だったので、人の心の隙を突き相手の嫌がる部分を刺激し弄ぶように自在に引っ掻き回す悪神ロキに対して、これを痛快にぶっ飛ばす、という方向にはなかなか行かないんですよね。むしろ、ねじ曲がり絡まってしまった想いを丹念に紐解いていき、柔らかく穏やかにササクレだったものをなだめて諭し導いていく、優しさを以って乱を制するお話だったように思います。神威による天罰ではなく、寄り添い共に時間を共有し気持ちを繋いでいく、それが新しい人と神との在り方を体現してみせた最終回だったのではないでしょうか。
それが、神に列せられた半天使と、その傍らに侍る死者の女王の新しい神話。彼らが輪になって繋いでいく人と神たちの、新しい時代に紡がれていくべき世界のあり方。それを、見事に描ききった最終巻だったように思います。
亜夜花が終始デレっぱなしで、天人くんにベッタリだったお陰で、コウタが常時嫉妬状態だったのが苦笑モノでしたけれど。迷走していた梨玖と違って、コウタは自分の気持もハッキリしているので、この亜夜花に出し抜かれた展開は忸怩たるものがあったんでしょうけれど。状況的に亜夜花がベッタリ、天人の従属神になったのは仕方ないだけに、文句言えなくて憤懣溜まってそうw あとあと、梨玖よりもコウタの方が怖そうだぞ。
亜夜花と対になるように、このシリーズにおける最大の問題だった梨玖の心の迷走も、ついに決着。ヤンデレを拗らせた挙句についには自虐自滅の方へと転がり落ちていってしまい、かなり真剣にその末路を心配してしまったのですが、ちゃんと答えを掴めてよかったよかった。この子の病み方のヤバさ危うさはかなりスパイシーで作品全体の刺激にもなっていたので、多少ヤンだままでもいいのじゃよ? とか思わないでもなかったですがw
てとらさんには、寂しい気持ちにさせられましたけれど、託されるというのはやはり悪い気持ちじゃありません。頑張らないと、という気持ちにさせられますしね。ついに、引きこもりだった神様も自宅待機状態から社会に復帰することになり、最小にして最重要の課題もなんとか解決。まさにめでたしめでたし、でした。
……って、亜夜花、中学生相当だったんかい!!! ちょっ、それあかん、犯罪じゃね!? ま、まあ小学生相当の嫁がいる中年教師も居るんだから、セーフか、セーフか。神様に年齢は関係ありません。

シリーズ感想

ひきこもりの彼女は神なのです。74   

ひきこもりの彼女は神なのです。7 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。7】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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「天秤の会」崩壊の危機! 天人と亜夜花の選択は!?

亜夜花の父であり、「天秤の会」に敵対する神・氷室結から三本勝負の賭けを持ちかけられた天人。最初の賭けは「近いうちに羽村梨玖は寮を去る」という結の予言が当たるか否か。
梨玖との絆を信じる天人は、結が亜夜花たちから手を引くことを条件に勝負に応じるが、事態は彼の予想を大きく裏切って推移していく。
神に狙われた男、天人の運命は!?
戦いは、始まる前にすでに勝敗は決している。やってみなけりゃわからない、なんてのは人事をつくしていない言い訳に過ぎない。少なくとも、相手の用意した舞台に乗っかった時点で、勝つという結果は皆無だったわけだ。それだけ、氷室結が敷いていた状況設定は完璧だった。恐るべきことに、この巻において結は本当に何もしていません。ただ、状況が推移していくのを眺めていただけ。介入や手出しは一切していません。もはやゲームの舞台を整えた時点で、やるべき仕込みや心理操作は全部終えていて、あとは勝手に天人たちが自滅していって終わり。むしろ、結が果たしていた役割は敵対者というよりも、ゲーム攻略のためのアドバイザーと言っていいくらい。天人たちに残されていた可能性は、もはや自分たちにとって一番最良の結末を引き寄せられるか、に掛かっていました。それすらも、実は敗北であり最良と見せかけて実は等分以上のマイナスがあったのですが。
これ、無理ゲーですよ。ぶっちゃけ、役者が違いすぎる。神と人との違い、なんて区分での差じゃありません。どれだけ戦闘力が高かろうがそれは戦術によって封じられ、戦術なんてものは戦略によって意味を失わしめられる。プレイヤーとして立っている位置が違いすぎる。まともな戦いになってませんよ、これ。正直、これほど差があるとは思っていなかった。
考えてみれば、おそらくニュートラルハウスで最も知性派だったと思しき一二三さんが、為す術なく謀られて現身を失ってしまった、という時点で太刀打ちできる人材は存在しないんですよね。そう考えると、千那さんの問答無用で武力討伐、という選択はあながち間違いでもないんです。それすらも、結の想定内かもしれませんけれど、少なくとも結を討ち取れさえすれば、時限式の謀略はともかくとしてハカリゴトを仕掛けてくる結がいなくなれば、あとは何とでもなる。戦うことで失ったニュートラルハウスの信頼はあとで取り戻せても、天人を失ったら取り返しがつかない、という失っても取り戻せるものと取り戻せないものを秤にかけて、損害覚悟で片方を選択するという考え方は、おそらく正しい。正しいんだけれど、損害を思えば踏み切れない。結が巧妙だったのは、常に天人側に勝ち目がある、と思わせていた事でもあります。勝ち目があると思っていれば、尚更最悪の選択肢は選べない。その上、勝ったと思わせて、相手が意識していた失ってはいけないものとはまた違う、もう一種の失われてはいけないものを奪取していたのだから、真実の勝敗がどちらに掲げられていたかは自明でしょう。
ここまで縦横無尽に蜘蛛の糸が張り巡らされてたんじゃ、どこまで行っても相手の手のひらの上なんじゃないか、という疑惑から逃れられないじゃないですか。これ、勝利条件なんて存在するのか? 
辛うじて、この結と対等に立ち回れるであろう人は、おそらくてとらさんのみ。強いられたとはいえ、てとらさんもこの結末は想定内だったはずなんですよね。なればこそ、無策であるはずもなし。むしろこの人に起こった出来事は、彼女のくびきを解き放った、と言えなくもない。結はてとらさんを同じ舞台に引きずりおろして手出しの出来なかった彼女の首に手を掛ける事が叶ったわけですけれど、逆に言えばてとらさんもまた敵の首に手が届くところまで降りてきた、とも言えるわけで。ここからのてとらさんの手練手管に期待したい。でないと、ハッキリ言って勝負なんかにならないから。

そもそも、天人は結と勝負するという事について終始理解が及んでいなかった。いや、もうちょっと考えろよ! 警戒しろよ! と読んでいるこっちまで頭を抱える無警戒ぶり。本人はビンビンに警戒しているつもりでも、それは自信満々に紙の盾を構えて戦艦の主砲の前に立っているようなもの。いや、それどころか紙の盾を掲げて毒ガスの中に突っ込んでいっている、とでも表現するべきか。あまりに甘い認識に、或いは無知っぷりに、思わず誰か何とかしろよ、と呻いてしまった。いやでも仕方ないんですよ、元々天人はそういう智を尖らせるタイプじゃないんだから。
だから、良いように翻弄されてしまったのはもう仕方がない。褒めるべきは、あれだけ好き勝手に弄ばれてなお、心折れなかったところでしょう。半ば折れてた気もしますけど、自分で開き直れたのは素直に偉いとおもいます。今回はもう本気で綱渡りもいいところでしたけれど、最後の最後で選択を誤りませんでしたし……いやね、勝負を受けた時点でもう挽回のしようのないくらい選択誤ってたんで、本当に最悪の中の良を拾い上げる形にしかなっていなかったんですが……知らぬが仏、だなあ、これ。

とは言え、結との勝負という事を度外視すると、ここで行われた事というのは神と人との繋がりにおいて一つの革新ではあるんですよね。神が人の中に混じって生きていかなくなった時代において、ここで天人を中心に行われた事というのは、古き神話を一新する最新にして最高の神話の始まりでもあったわけだ。人が神を信仰するように、神が人を信じる時代に。……その結果として、新しい神が誕生するというのは前進なのか回帰なのかはまだ微妙に判断つかないけれど。
唯一の可能性は、最新であることが弱さではないということ。所詮古き神である結にとって、想定外があり得るとすればそこであり、神々が人の子を神とするまでに信じた、という意味をどれだけ履き違えていたか、という点にあるんだろうなあ。なるほど、梨玖の動きはそこに繋がってくるのか。どうやったって勝ち目ないだろうと思ったけれど、なるほどしっかりと下拵えは進んでいるのね。

しかし、まああれだ。今回の見所はやっぱりあれなんだろうな。怪物に捧げられた供物の女神は英雄神に救われて……奪われて、母体となる神話から、新たなに組み込まれ組み伏せられる、というお話。或いは、亜夜花はあれで神様だから未成年ではないので、親の同意を振り切って結婚できるという云々。親の同意より先に配偶者の同意を取り付けましょう、と思わないでもないですがw わかってないよ、こいつ亜夜花が何を言って何を誓って何を捧げて何をしたのか、絶対わかってないよ?
さて、それはつまり誰にとってのご愁傷様なのか(笑

すえばしけん作品感想

ひきこもりの彼女は神なのです。 64   

ひきこもりの彼女は神なのです。 6 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。6】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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妹の奏を送るため市外へと出かけた天人と亜夜花は、ある組織から脱走してきた人外の少女、果乃を助ける。天人は彼女にひとまず実尋市に身を寄せるよう提案するが「人間も、人間と共存しようとする人外も嫌いだ」と反発されてしまう。一方、市内の寮には亜夜花の縁者で氷室結と名乗る少年が現れる。てとら達と因縁があるらしい結の用件とは……!?
……面白いなあ。うーん……いやはや、この巻は読み終わったあとにこうして感想を書く段になって色々と考えこんでしまった。
ふと思い立って、作者がこれの前に手がけていたシリーズ【スクランブル・ウィザード】の最終巻の感想を読みなおしてみたんだけれど、それでちょっと得心のいった所がある。
結局のところ、すえばしさんが一番がっつりと書き切ろうとしている主題は、今も昔も人と人とのコミュニケーションなんですよね。前作のおいて、最強の力を有したヒロイン・月子は最終局面においてその力を振るう事無く、その代わりに彼女が使った最大の武器こそ、対話であり相互理解であったのです。
そして、本作においても神々という人知の及ばぬ力を有した存在が闊歩する中で、その物語の焦点は力による制圧ではなくコミュニケーションであることが徐々に主張されつつある。この度、ついにその姿を表したすべての陰謀の黒幕。神話世界最大最凶、最悪のトリックスターであるかの神が振るおうとしているものも、上級神としての問答無用の神の力などではなく、コミュニケーション。それも、相互理解のためのコミュニケではなく、悪意に基づく恣意を駆使した意思の疎通である。
必然的に、彼――氷室結のゲームの対戦相手に選ばれた天人に求められるのは大神に対抗する「力」などではなく、氷室結の悪意に基づく交信を跳ね返すだけの、相互理解を結べるか、に掛かってくる。
既に、氷室結による楔は幾つも「天秤の会」に打ち込まれていて、それはそのまま放置しても、中途半端な対処をしても、やがて「天秤の会」を崩壊させてしまうであろう、綻びの糸なのだ。
それは「人ならざるもの」が「人」と係わっていけるように、そんな願いに基づいて成立した「天秤の会」の存在理由そのものを根底から陵辱し、弄ぼうとする悪意である。そして、その悪意から「天秤の会」を守れるのは、もはや神々の人知を超えた力ではあり得ないのだ。てとらさんの万能の力も、千那さんや万那さん、リョウタさん。亜夜花を含めて、「天秤の会」のメンバーは誰しもが次元を超えた神の力を有している。が、その力は氷室結のし掛けてきたゲームでは、無力とはいかずとも決して主力とは成り得ない。皆を守る力とはなり得ないのである。
だからこそ、てとらさんが期待し託すのは、氷室結が対戦相手として選んだのは、天人なのだろう。

欺瞞とは、人と人との交流において必然の要素だ。それは一つのコミュニケーションの形であり、てとらさんの言うとおり嘘をつかれたことが、終点を意味するのではない。むしろ、嘘をつかれ、欺瞞をようされたあとにどう対応するか、という対話、交流の起点ともなり得るものだ。嘘は拒絶ではない、その続きがある、その先を求めるもの。
そして、欺瞞は許される。
今回登場し、事件の中軸として機能するヒロイン・果乃の在り方と言動、そして彼女が導き出した結論は、彼女の持つ特殊能力も絡めた上で、多くの示唆を含んでいたように思う。

黒幕も姿を表し、クライマックスが近づいてきた予感に鳴動する本作だが、その最終局面がどういった展開を見せるのか。どうやら、単純に天人くんがパワーアップして、神々に対抗できる力を得て大バトル、という分かりやすくも易い展開にはなりそうにない。
内面を掘り下げて掘り下げて、露呈した心のカタチを丹念に、じっくりと、職人のように繊細に捏ね回し、結びつけ、織り成していくという、実に自分好みの流れが期待できそうだ。相互理解とは、体を傷だらけにする闘争とはまた別の、剥き出しの心同士が爪を立て合う血みどろの決闘である。と、同時に粘膜どうしを擦りつけ合う濃厚なフレンチキスのような悦楽でもある。
この作者は、それを体現できる稀有な一人であることは、前シリーズとこれまでの本シリーズにて既に証明済みだ。そして、これまで以上の深くも濃密なコミュニケーションの決闘が期待できそうなのは、氷室結の独白やてとらさんと天人の問答を見ても明らかである。
次回以降、すえばしけんという作家のさらなる真価を、進化を、深化を目の当たりに出来るんではないか、というワクワク感が、今になってじわじわと湧き上がってきた。
ちょっと、体温あがった気がする。ああ、楽しみだ、楽しみだ。

すえばしけん作品感想

ひきこもりの彼女は神なのです。54   

ひきこもりの彼女は神なのです。5 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。5】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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夏休みになり、天人の妹・奏が寮に遊びにきた。明るく礼儀正しい奏はすぐに寮の面々と打ち解け、天人は安堵するがそれも束の間。何と天人はミツカズと名乗る霊に取り憑かれ、その現世の未練を断ち切るため密かに町を案内するハメに。それでもプール、買い物と楽しい休暇を過ごす天人。だがそんな中、亜夜花は奏に「ある違和感」を感じるが……!?
あれ? この表紙の少女って千那さんだったのか。彼女についてはこれまでの挿絵なんかでもそうだったんだけれど、もっとお姉さんなイメージが濃かったので、ちょっと幼い感じのお下げ髪の彼女が千那さんというのは結構意外でした。そうかー、千那さんって万那さんの姉というよりも兄を溺愛する妹というポディションなんだよなあ。特に今回は。
この巻では、天人の妹も登場するんだけれど、この作品ってシスコン多いですよね。天人然り、リョウタさん然り、柚原一二三然り。亜夜花の兄ちゃんたちもあいつらシスコンだったしなあ。あれか、カミサマって連中はみんなそうか。シスコンとブラコンの巣窟か!! 実際神話ってそんなばっかりだから始末が悪いw
とまあ、兄と妹の関係に焦点を当てたみたいな話の展開をしているけれど、実は今回の話って梨玖が前回亜夜花に叩きつけた挑戦状に、如何に立ち向かうかの答えを得るための話であったようにも見える。つまるところ、天人の絶対的信奉者として振舞おうとする梨玖に、同じ天人を愛する立場でありながらどう否を突きつけるか。神としてではなく、一人の女として。天人と対等の一人格として正々堂々と梨玖に宣戦布告するための立ち位置と根拠を、亜夜花は今回の事件を通じて見出すことができたのである。
実際、亜夜花は前回にも増して今回は頑張った。体力ないのに一生懸命外に出て、天人のみならず周りの人たちとコミュニケーションを深めることで自分の知見を深め、視野を広げようとしていましたし。
冥界の女王ともあろう神様が、健気もいいところである。ただ外に出るだけじゃなく、天人の目をきにしてお洒落に気を使ったり、一挙手一投足に一喜一憂したりと、可愛いなあもう。これは、コウタも同じくで、このちびっこも心は完全に乙女なんですよねえ。そっけない態度の裏で、自分天人のこと好きすぎるだろうw ちゃんと女の子の格好をしたコウタの可愛いこと可愛いこと。リョウタさんは自分の大事な妹分が天人に夢中なのをどう思ってるんでしょうね。あの大悪魔がお兄ちゃんは許しません状態になったら、半天使としても男としても太刀打ちできんぞw
閑話休題。
何度も体力不足で倒れそうになりながら、亜夜花が見出したのは神として天人を導くのではなく、ましてや彼をヒーローとして崇めるのでもなく、彼に力が足りなければ助け、彼が間違えればそれを指摘してあげるという対等の立場からの関係でありました。
ニュートラルハウスの雰囲気を一変させ、亜夜花たち神々の意識を変え、多くの迷える神や人間の蒙を啓くきっかけをもたらす活躍を見せてきた天人ですが、彼もまた只の人。間違うこともあれば、気付かない事もたくさんある。妹のことだって、気にかけているつもりでついつい疎かにしていた結果、致命的な事になりかけた。でもそうした躓きや失敗は、これまで彼がしてきてくれたように、誰かが横から後ろから、それは違うよ、気づいてあげて、と声をかけてあげればそれで済む話なんですね。決して、一から十まで助けてあげなくても、本人に気づかせてあげればいい。その気づかせてあげる、というのもまた大変なんですけれどね。声を届かせるためには、声を発する本人がちゃんと自分一人で立ってないと大きな声を出せない。それでいて世界と繋がっていないと、説得力を持たせられない。自分一人の世界に引きこもってちゃダメなわけです。天人くんは一度自分一人で何でも解決しようというスタイルで失敗して自分の内に閉じこもりかけて、このニュートラルハウスで過ごすようになって引きこもりから脱した。亜夜花やコウタもまた、そんな天人を通じて外と繋がろうと努力するようになったからこそ、今回天人の失敗に気づき、その指摘もまたちゃんと天人に声が届いたのでしょう。
そうした観点からすると、梨玖はまだ天人一人に拘って引きこもっている状態なのかもしれません。不思議で面白い話です。神である亜夜花が信仰を否定し人と対等に繋がることを欲したのに対して、梨玖は神にそうするように絶対的な信仰を以て天人とつながろうとしているのですから。
死という存在の終わりを得た神々は、もはや人と変わらぬ有限の存在と成り果てました。そんな神と、人間がどうつながっていけばいいのか。リョウタさんや一二三さんは、その最良の答えを天人に期待してるんだろうなあ。一二三さんのキャラクターは、予想外もいいところでしたけどw ありゃあ、盲愛の千那さんはともかく、万那さんが微妙な反応だったのも納得ですわ。あれは、胸張って最愛の兄です、とは表立っては言いがたいよなあw

1巻 2巻 3巻 4巻感想

ひきこもりの彼女は神なのです。 44   

ひきこもりの彼女は神なのです。4 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。4】  すえばしけん/みえはる HJ文庫

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友人の細屋に誘われ、初等部の一泊二日の野外教室に付き添うことなった天人。のどかな小旅行のつもりだったが、初日から『人ならざるもの』の仕業と思われる不思議な事件が次々と発生。天人は同行した梨玖やコウタと解明に挑むことに!
一方、紅南寮で留守番をする亜夜花は、天人と梨玖がそろって外泊することに強い危機感を覚えるが……!?

あの人の超勝ち組っぷりに、わたくしテンションが有頂天であります。
毎回ながら、思わぬ所から意表を突いてくるなあ。さすがにあの人が人外だとは気が付かなかった。多分、一人だけだったらもうちょっと疑ってたと思うだけに、カモフラージュは万全だったと言えるのだろう。
しかし、それ以上に度肝を抜かれたのはその正体である。いやいやいやいや。こればっかりは似合わないにも程がある。どんな悪神や邪神よりも、よりにもよってあんたがそれをやっているというのはあかんやろう。ないわー、と爆笑してしまった。ちょっとでも自分の行状を思い出せば、とてもじゃないがそういう立場に立てんだろうに。
まあ世知辛い現代に至って、神代の頃のような振る舞いはできないと反省したのかもしれないが。やったらやったで犯罪どころの話じゃないし、その後が更に恐い。そりゃもう怖いなんてものじゃない。血の雨が降るどころじゃないもんなあ、きっと。あの悋気を、果たしてニュートラルハウスの面々で祓えるかどうか。たとえてとらさんでも無理じゃにゃーか、と思わせるものがあるだけに、ちゃんと大人しくしていて欲しいものである。

さて、本編はと言うと……普通ラブコメって対象の男女を接触させてその化学反応を楽しむもののはずなんだが、亜夜花は一人で放っておいても一人でジタバタと面白い反応したおしてくれるのである。もうすこし落ち着け!! 梨玖が大ウケしているのも納得の、実に恋する乙女がバーストした可愛い反応なのだ。天人に初めて送ったメールの内容にはもう笑った笑った。一生懸命なのはわかるのだけれど、幾ら何でも一杯一杯すぎるだろうに。仮にも黄泉の女王にして北の大神の一人である女神さまが、こんなヤワヤワの初心でいいんだろうか。いくらなんでも天人のこと好きすぎでしょう、これ(苦笑
挙句の行動が、もう苦笑を通り越して頭を抱えてしまいそうなアレな代物で。そのハチャメチャさは、確かに人間の範疇を通り越してます、はい。落ち着け神様。ってか、ここ最近、あなたタイトル無視しすぎです。引きこもりなんじゃなかったのかい!

とまあ、亜夜花が知らないところでジタバタと勝手に七転八倒しているなど知るべくもない天人は、引率者の一人として参加した野外教室活動で、頻繁に見舞われるトラブルに掛かり切り。そのうち、どうやらそれらのトラブルが野外教室に参加したメンバーの誰かが引き起こしている内部犯ではないか、という疑いが浮かび上がってきて……、と軽くミステリーの要素も含んだ真相究明のお話になっていくのだが、これがまた二段重の三段重ねの多段式の急展開が待ち受けていて、物の見事に作者の手のひらの上を転がされてしまった。冒頭の犯人との対峙をまったくもって上手いこと使われた。本当にこのシリーズと来たら、登場人物のキャラクターが綺麗にこちらの予想や想像、イメージを上回ってくる。というか、裏や真を見せる前にきっちり表のイメージが焼き付けられているのだろう。その表のイメージの焼き付け方が丁寧なものだから、それが全部だとどうしても思い込んじゃうんですよね。別の側面、あるいは裏の真相があるなどと思い浮かべもしないものだから、その時が来た時にかなりのインパクトを受けることになってしまう。既にシリーズも四巻目に至っているのだから、身構えておいて然るべきなんだけどなあ……身構えさせてくれない巧さに毎回唸らせられるしかない。

思えば、ここに出てくる神様たちは、今人間の中に混じって人の姿を模して暮らしてはいるものの、本当の意味で人間たちと交わっている神様というのは本当に少数なのだろう。当人たちにその気がないわけではないのだ、きっと。人間を好きだといって憚らない彼らの多くは、積極的に人に近づき、人間を観察し、その様子を伺っている。でも、長年まったく違うステージから人間を見守り続けた彼らは、たとえ同じ地面の上に立ったとしてもその頃のスタンスが抜け落ちないのだ。そして、人間たちもまた、神々がこんなに間近から自分たちを見ていることを知らない。
だから、どれだけ近くに寄り添っても、人と神の価値観は交わらない。交錯しない。相互理解とは、それこそ相互に理解し合おうという意思が無ければ成し得ないものなのだから。
でも、だからこそお互いが理解し合おうとした時は、簡単に交われるはずなのだ。天人が「人間」として、「神」である彼の価値観を理解しようとし、同時に「人間」の価値観を伝えようとしたことが、彼の蒙を啓いたように。
対話とは、かのように人と神をつなげて同じ地平に立ち兆しを芽生えさせるほどに、偉大なものなのだなあ、とちょっと感動してしまった。

しかし、人と神が理解し合える時が来ても、同じくして人と人の間にすら理解し得ない断絶が存在することを突きつけて見せてくるあたりに、この作品の凄みと面白さが焼き付いているんじゃないだろうか。
あの本心には、背筋が泡立ちましたよ。それはもう、狂信の領域だ。いったいこれ、どこに着地点を見つけるつもりなんだ? やばい、これホントに面白いよ!!

1巻 2巻 3巻感想

ひきこもりの彼女は神なのです。34   

ひきこもりの彼女は神なのです。3 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。3】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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天才魔術師コウタと悪魔の兄・リョウタの秘密とは?
実尋市の学生寮で神様たちに囲まれた騒がしい日常を送る天人。そんなある日、アンジェとレーナと名乗る二人組の魔術師が、街に流出した魔術書の回収を依頼しに寮にやって来た。二人を手伝う中、亜夜花と梨玖からコウタの様子がおかしいことを告げられた天人は、独自の調査を開始!  兄リョウタと父親の死にまつわる"隠された過去"に迫るが――!?
……や、やられた。うわーー、思いっきり意表を突かれた。いやいや、今回の話はコウタがメインと知った時に、もしそうならベタだけど美味しいよね、とは思ってたんですよ。思ってはいたんだけれど、それはないか、と可能性を切って捨てちゃったんだよなあ。
だってさあ。もう名前見たらそう思っちゃうじゃないですか。それはないな、って思っちゃうじゃないですか。というか、脳内変換してしまっていたのか、てっきりみんな「コータ」って呼んでるものと認識してたんだよなあ。あとで読み返してみたら、みんなちゃんとコウタって呼んでたし。兄貴がリョウタなのもこう考えるとミスリードだったんかー。
いやほんとにエピローグまで全く気づかんかった。

今回のお話は乱暴な言い方をするなら、コウタの独り立ちを促すものでした。二人の魔術師の到来は、ある程度自分の考えで生き方を決めていける年齢に達したコウタに自立を促す(という形で取り込みを図る、と見せかけて色々と別の思惑もあったようですが)ものであり、リョウタもまたコウタの意思に任せようという節があったように見えます。
でも、独り立ちする以前に、コウタはちゃんと子供として庇護されてこなかったのです。ニュートラルハウスの面々は、おそらく天人が来る前からこの子の事をちゃんと家族として扱っていたのでしょうし、コウタもだからこそこれまで疑いなく彼らを信頼していたのでしょう。ただ、この子はただ護られ見守られる子供としての愛情を、ニュートラルハウスに来る以前から、生まれた時から受ける事が出来なかったのです。故に、愛される事を知らない、愛されてもそれを実感できない子供になれなかった子供として、惰性のように生きてきた。
ゆりかごを出て自分の足で立って生きる道を決めるなんて、出来る以前の話だったわけですよ。この子は、自分が子供であることからちゃんと知っちゃいなかったんですから。
故に、拠り所がないこの子は、自分の記憶に刷り込まれた父親の愛情に縋るしか無く、皆の差し伸べる手を振り払って牙を剥くしかなかったのでした。
まあ仕方ないんだろうなあ。天人が来た時のニュートラルハウスの様子をみると、今と比べて随分と冷めたカンケイだったみたいだし。最初の印象、アットホームとは程遠い寮だな、というものだったし。その中で万那だけはコウタをちゃんと姉貴分として扱っていたつもりだったんだろうけどなあ。
今回の話って、何だかんだと万那にとっては辛い話だったんじゃないかなあ。梨玖が指摘したのって、どれだけ真剣に本気で、必死に相手のことを思っても、神と人間の断絶は乗り越えられないって事ですもんね。意思の問題じゃない、存在の違いの問題なんですから。価値観が違う千那さんやリョウタと違って、万那はメンタリティが人間に寄り添っているだけに、結構本気で傷ついたんじゃないかなあ、と気遣ってしまう。これ、言ってる梨玖もおんなじなんですけどね。元人間なだけに、余計にしみているかも。
だからこそ、神と人との橋渡しが出来るのが、半分人間で半分天使の両方の属性を持つネフィリムである天人なんだな。
彼が来てからですよね、ニュートラルハウスに家族のような一体感が生まれだしたのは。上にも書いたけれど、最初はもっと冷めたカンケイだったはず。それが、今回なんか逸れたコウタの為に神様であるみんなが一生懸命になってあの子を連れ戻そうとしていたのを見るとね、天人がここに来てよかったなあ、となんかしみじみと思いましたよ。
コウタの歪められた過去と、それに歪められた年月は戻らないのだろうけれど、思っていた以上にこの子には愛情を持って気にかけてくれていた人たちがたくさん居たわけで、それを知り得た以上これからは健やかに伸びやかに、子供らしく大人になっていってくれるものと信じたいです。
にしても、北方の冥界神さまのデレっぷりは、もう凄いことになってるな。
「せっかく、二人で……お出かけ……なのに」
あんた、引きこもりの神様だったんじゃなかったのかぃ(笑
しかも、同じ外出でも他の人と一緒の時と二人きりの時では気合が全然違いますし。あからさまに梨玖と天人の取り合いを始めているのを見ると、もう当人としては完全に自覚してこの人は私のものにする、と決めてるんだろうなあ。もうデレッデレですよ。かわいいねえ、もう。

1巻 2巻感想

ひきこもりの彼女は神なのです。 24   

ひきこもりの彼女は神なのです。2 (HJ文庫 す 3-2-2)

【ひきこもりの彼女は神なのです。 2】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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その住人のほとんどが神様という特殊な学生寮で暮らし始めた名塚天人。街の治安維持組織でもある寮の仕事として、魔術騒動の調査を任された天人は、意外にも同行を申し出た亜夜花とともに外出する。そしてなぜか《紫電の堕天使》牙龍院煌夜という痛いヒーローを名乗ることに!? それは戦神・柚原万那の作戦? 悪ノリ? 奇妙な調査の行方はいかに!?
冒頭でいきなり天人が、痛いヒーローをやらされ始めたときは一体何事かと思ったが、ちゃんと真面目な理由があったのがホッとしたやら残念やら。てっきりバカネタで、万那あたりの趣味でヒーローの真似事でもさせられてるのかと。でも、これは確かに効果的だ。こんなの、衆目にさらされたら悶絶ものだわ。この作戦考えた万那、幾ら軍神としても策が悪辣すぎるw
ところが、この厨二病も決してただ妄想を拗らせたものじゃなかったんですよね。【《紫電の堕天使》牙龍院煌夜】誕生の真相が明らかになった時は、じんわりと感動してしまった。
そう、今回の話で重要だったのは愚かで矮小な人間という存在の持つ、切なる願いの純粋さと誇るべき矜持。人という存在に全く価値を見出さず、路傍の石以下の認識しか持たない神々に対して、ちっぽけな人間たちが矜持を見せつけ、尊厳を知らしめ、一矢報いてみせる、胸のすくようなお話でした。天人は天使と人間の混血種であるネフィリムという種族なのですけれど、本当の神々に比べれば人間と変わらない小さな力しか持たず、実際ラストの神同士の次元を超えた戦いを前にして殆ど何も出来ないのですが、それでも彼は人間として今回の敵である大神に一矢報いて見せ、戦いが決着を見せたあと神様たちのルールに異を唱え、人間のやり方を受け入れさせる事に成功するのです。今回、彼が戦闘そのものに寄与する事はかなり少なかったのですけれど、それ以上に天人がやってのけた事は大きかったように思うな。前回の第一巻では、まだ天人は一度ヒーローとして挫折したあとで、自分が何を為すべきかがわからず迷いが内向きになっていたのですが、人を救うという傲慢さに身を委ねるのではなく、人が助かる手助けをしたい、という新しい自分のやり方を見つけた彼は迷いがなくなって、良い意味で理性的に突っ走れるようになりましたね。実に気持ちがいい。
そんな彼の頑張りや、今回巻き込まれることになった兄妹のお互いを思い合う純粋な願いを前にして、<天秤の会>の神様たちがちゃんと認めてくれたのも嬉しかったですねえ。どれだけ頑張っても一方通行じゃ虚しいですもの。本来隔絶しているはずの神と人の壁を前に、天人たちの想いに応えて神様たちも歩み寄ってくれたことが地味に感動ものでした。じわじわーっと来たんですよね、なんだか。
特に、人間が大好きだった兄の影響で人に味方しているものの、彼女個人は人間に対して何の心向きもいだいていない千那が認めてくれたことがにんともかんとも、ぐっときたのでした。
それにしても、千那さんみたいなのが人に好意的な神様の標準と考えると、亜夜花のデレっぷりは笑っちゃうレベルだよなあ。確か、この前まで人間そのものに対しては随分と倦んでたはずなのに。人間そのものよりも、天人への執心と考えるべきだよな、これ。ひきこもりだったはずなのに、天人にくっついて街に繰り出すわ、反応がいちいち可愛くて、天人のこと意識しまくってるのがダダ漏れだわ。大丈夫か、神様w これが北欧神話の冥府の女王ヘルだとは。そう考えると、今回の敵もまあとんでもなかったわけですけれど。
そう言えば、前回予想は立てたものの確信が持てなかった柚原姉妹の正体、今回専用武器を使ってくれたおかげで漸く特定できたのですが……ウリガット神話って、その発想はなかった!!
ウリガット神話の嵐神バァルの陪神であり妹であるアナトとアスタルト。こ、これはわからんかったわー。アテナとかミネルヴァあたりかなあとは予想していたので、ハズレではないんだろうけど、まさか習合の一番古いあたりの神話から来てるとはなあ。マイナーではあるけれど、これだけ古いならなるほど北欧神話にも早々負けんわ。アナトの神話を見たら、まんま千那さんで笑った。ってか、神話の方、とんでもないブラコン話なんですが。この女神、どれだけお兄ちゃんのこと好き好きなんだよ。しかもこれ、ヤンデレ入ってるし!!
和泉兄弟の弟の方の正体にも驚愕させられましたよ。普通にベルゼブブだと思ってたもんなあ。あ、そうなるとバァルと起源は同一だから、千那たちの兄になっちゃうのか。

一巻読んだ時にはストーリーが殺伐としていて、そもそもニュートラルハウスの神様たちと人間との意識が断絶していて、とてもアットホームな話にはなりそうにないな、と思ってたんだけれど、亜夜花がこれだけ心をひらいてくれて、一番難しそうだった千那さんが歩み寄ってくれたことで、相互理解がだいぶ進んだんですよね。スッタモンダの末に前回ニュートラルハウスに住むことになった梨玖も、どうなるかと思ってたら随分と馴染んでましたし。このまま行けば、どこかバラバラだった<天秤の会>も、一致団結して事に当たれるような、家族みたいなグループになっていける、のかな?

一巻感想

ひきこもりの彼女は神なのです。3   

ひきこもりの彼女は神なのです。 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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高校進学を機に、とある学生寮での新生活をスタートさせた名塚天人。だが、彼が本来入るべき部屋には"冥界の王"を名乗る少女、氷室亜夜花が居座っていた! 天人は自分の居場所を確保するために、亜夜花をあの手この手で誘い出そうとするが……。幻獣、怪物、神話の神々。人ならざる者達が集う街を舞台に繰り広げられる"超日常"ストーリー、開幕!!
ほのぼのホームコメディと見せかけて、また随分とエグい話を持ってくるなあ。すえばし作品はキャラを甘やかさないのがデフォルトなのか、殺伐としているのが基本なのか、容赦が無いのが基準なのか。
これって詰まる所、主人公の天人含めて自分の居場所を作ろうとして失敗に失敗を重ねたその末に、小さな居場所を見つけるお話だ。結局のところ、彼ら彼女らが踏み外した失敗は無かった事に出来ない取り返しの付かないもので、既にその苦悶に対して諦めている子、新しいやり方を模索している子、現在進行形で踏み外していた子、とそれぞれに展望はお先真っ暗だった訳だけど、その取り返しの付かない状況の中でそれを踏まえた上で無力を噛み締め、前向きに頑張ろうじゃないか、という……前向きな結論になってるのか? これ。
一応、無関心、逃避、投げやりという停滞から、足掻いて足掻いて少しでも変えられる所は変えてやる、という所までたどり着いたんだから、多分前向きな話のはず。そこに到るまでが随分とひどい話になってるけど、主人公はよく頑張ったと思うよ、うん。一度大きな挫折を既に経験した上で、一度諦め逃避し身の丈にあった生き方をしようと自重し、その上で諦めずみっともないと自覚しながらもがいてもがいて、誰にも当たらず助力を乞うても頼り切らず、足掻いて足掻いてその結果として絶対的な絶望を覆し、ほんの僅かとはいえ希望を得て、可能性を取り戻せたんだから。自らの恥を知りながら、しかし敢えて恥を呑める男は文句なしにカッコイイもんなんですよ。どれだけみっともなくても、無様でも。
ちょっともったいなかったのは、せっかくの寮モノにも関わらず、同じ寮のメンツが亜夜花とウルリカ以外殆ど話に絡まなかった事かなあ。ただ、あのメンツは一筋縄じゃいかない、というか亜夜花と千那以外はどうも人間としてのまともなメンタリティを持っていない様子なので、どう考えてもアットホームな話にはならないんですよね。家族モノとして話を転がしていくには絶望的なメンツであるわけで、そっち方面には話は進展しなさそうだなあ。どうにもこうにも殺伐とした話になっていきそうで、なんともはや。
ところで、概ねこのニュートラルハウスの寮生たちの正体は推察できたんだが、本気で大物しか居ませんね。亜夜花からしてもっとマイナーな神様かと思ったら、どうやら北欧神話でも相当の大物ですし、兄弟は無価値の堕天使に豊穣神。姉妹については多分、ギリシャのあの二人。あるいはケルト神話の方か。彼女らだけは判断材料が少なすぎて、わかんないんですよね。今名乗ってる日本名は全然あてにならないしなあ。

スクランブル・ウィザード 74   

スクランブル・ウィザード7 (HJ文庫)

【スクランブル・ウィザード 7】 すえばしけん/かぼちゃ HJ文庫

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 bk1

一部の隙もない、完全無欠の大団円。正直これ、筆者がこのシリーズを書きはじめたときにこれほどまでの結末を用意していたのだろうか。もしそうだとしたら、これが初シリーズとなる新人作家としては凄いとしか言いようがないし、そうでなかったとしてもここまでシリーズの完成度を高めた手腕は絶賛に値する。
これは個人的な心象なのだけれど、ヒロインとなる月子は当初想定していたよりも遥かに成長してしまったんじゃないだろうか。能力的な意味ではなく、キャラクターの存在感として。それくらいに、スケールの大きい存在へと成長しているんですよね、月子は。でも、魔法士の社会的な立場を最初から懇切丁寧に印象づけ、政治家の娘という立場を考えると最初から想定していたストーリーラインだったとも考えられる。何れにしても、凄い。
このシリーズが素晴らしかったのは、他に類を見ないレベルでの魔法の天才である月子に、この最終巻では一切魔法を使わせなかった事(戦闘シーンではない場面で使っているが)、絶対無二の武器となり最強の兵器となりえる月子の魔法士としての能力、それがこのクライマックスの戦場において全く必要とされなかったところにあるのではないでしょうか。
彼女の武器は、この時点において魔法ではなく、世間に訴える言葉であり、多数の人に共感を抱かせる思想であり、自分の考えを伝えるだけでなく伝える相手のことを逆に知ろうとする真摯な態度でありました。同じマルチキャスティングの能力を持ち、天才と謳われ、最強の魔法士として自他共に認める存在だった十郎の姉・一花が、しかしその最強の能力を振るったとしてもその影響はただの一個人として以上のものともならず、結局テロリストとして無残な最期を迎えるしかなかったのとは大きく違い、彼女は自分の能力を持って得た足がかりを利用して、見事に世間に無視を許さない、対話を強要する力を手に入れ、その武器を振るうことを自分のやるべき事だと決意したのです。
ただ力を振りかざすのではなく、一方的に伝えるのではなく、対話を心がけること。自分の心を殺して生きていた月子が、最初は恐怖の対象として、その後は憧れと恋の対象となった教師・十郎の事をもっと知りたい、そして自分のことを伝えたい。優等生の仮面を被り、本心を誰にも魅せずに生きてきた彼女が、十郎と出会ったことで見つけた他人とつながる方法、対話という方法を、月子は十郎との間だけではなく、初めてできた友人と、社会と敵対する魔法士や魔法士を憎むテロリストたち、そして果ては魔法士に偏見を抱く世間そのものへと広げていったのです。
やがて彼女の対話は、社会に絶望をいだいていた者たちに希望を与え、魔法士という存在に強い恐怖をいだいていた世間の目を開かせ、自分の思うがままに他者を利用しようとする者たちを揺り動かすほどになっていくのです。
この作品の感嘆するところは、月子の対話が綺麗事によって構築されているわけじゃないってところなんですよね。対話というのは、そもそも相手が話を聞いてくれなければ成立しない。力無き正義が無力という言葉をよく聞くけれど、人に話を聞いてもらうためには、他人に耳を傾けてもらうためには、振り向いてもらうための力が必要なのです。その点において、この作品は現実的でした。月子には政治家の娘という立場があり、テロリストから無辜の人々を救った英雄という背景があり、彼女個人、魔法士として他の追随を許さない能力を持っている。これらの力を、月子は自分の言葉を聞いてもらうための力としてしっかりと利用している。勿論、その力ゆえに苦しい立場に追い込まれたり、絶体絶命の苦境に置かれたりとするのですが。
とはいえ、彼女はその力を、自分の言葉を、考えを押し付けるためには使っていない。あくまで、言葉を聞いてもらうため、自分の考えを知ってもらうために使っているのが、普通の異能者もののヒロインとは一線を画しており、彼女の活躍がこの物語を終局に転がし、大団円へと導いた事が、この作品の試みを示しているのではないだろうか。

月子だけでなく、この最終巻においては月子の側にいる者たちは皆前線に立ち、破壊の力として魔法を振るいながらも、その根底に「対話」の思想が根づいていたのが興味深い。勿論、対話の結果決裂することも当然あるわけだし、対話そのものを拒絶してくる相手もいる。
でも、十郎と能勢の対決は、殺し合いにも関わらず、これも言葉ではなく闘争という形をした対話になってるんですよね。月子の影響を強く受けた十郎が、そう望んだことで、二人の戦いは救いのない血塗られた殺し合いではなく、純粋な互いが望む決闘へと昇華されていったのには驚かされた。
結局、この対話の姿勢こそが月子たちと、伊蔵やマックスウェルとの差になったのではないだろうか。他人を理解しようとしなかったマックスウェルは、彼の策謀によって悲惨な最期を遂げた一花が、遺して芽吹いたものに最後まで気付かなかったわけだし。十郎の、姉への想いが結実したあのセリフは胸に来たなあ。
そして、月子と十郎の関係も。月子が十二歳とか、こうなったらどうでもいい話だ。十郎は最後の最後まで月子に対して真摯で大人だったもんなあ。それだけに、エピローグでの彼女に向けた柔らかい表情が心を擽る。素敵な素敵なハッピーエンドでありました。

ところで、氷見谷くん。PM社の生き残りに追いかけられている、ってそれって残党に命を狙われているとかじゃなく、明らかに別の意味だよね?(笑
惚気けているようにしか聞こえんw

シリーズ感想
 
12月3日

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