そして黄昏の終末世界

そして黄昏の終末世界<トワイライト>2 ★★★☆   



【そして黄昏の終末世界<トワイライト>2】 樋辻臥命/夕薙 オーバーラップ文庫

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シスカ社へ潜入し、信頼を勝ち取れ!

東雲冬夜は『刻の黄昏』に巻き込まれ、如月御姫と共に魔人『ペイガン』を退けた。
そして冬夜は、御姫が発症した吸精病を隠しつつ、シスカ日本支社の終末化特別対策室の面々と接触を果たす。
そこでクラスメイトの古道いつきも対策室に所属していることが判明。
自身の目的と御姫の発症を隠し通すために、対策室への加入を申し出た冬夜は、御姫と同じ第一隊へ編入されることに。
すぐに非凡な力を示し始める冬夜だが、加入に納得できないといつきに勝負を挑まれてしまい――!?
「異世界魔法は遅れてる! 」に通ずる現代神秘ファンタジー、第2巻!

対策室に加入しようという冬夜の文言が、何も知らない一般人が正義感とか義侠心だけで突っ走ってる危なっかしい輩のそれとだいたい一緒になってしまっている件について。
いやいや、見過ごせない、自分に出来る事があるなら手伝いたい、って無知で自分が置かれている現況をちゃんと理解していない思い込みの激しい男の子が言うとこっ恥ずかしいくらい青い主張なんですけど、冬夜ってばこれ自覚して言ってるのかしら。対策室の人から見たら、まんまこれなんですよね。一瞬みんな何言ってんだこいつ、となるのも無理はないでしょう。
いつきが後々まで突っかかってくるのって、冬夜という人間の実情と傍から見た時の齟齬から来てるとも取れるんですよね。
冬夜としては、対策室に入るのは御姫の吸精病をカバーするためと、自分の仇がシスカ社にいるらしいのを調査するため、という確固とした理由がありつつそれを説明できないが故の表向きの理由という体であり、同時に本心も混じっているという主張なんだろうけど、上記の通り変に青い主張になっててしまってて、いやいやもう少しこう何か良い言い訳があったんじゃあ、とついつい苦笑してしまいました。
これ、作者側としてはわざとなんでしょうけどね。
本来ならド素人の一般人が色々やらかしてしまったり、または思わぬ才能を見せて云々という展開なのが、冬夜自身が『刻の黄昏』という現象にまつわる話は全く知らなかったものの、神秘に携わる側の人間でありなおかつ歴戦の騎士という来歴の持ち主であるために、定番の展開となるはずのところに妙なエッセンスが加わって常とは異なるノリと味わいの展開になってくんですよね。そのへんのギャップが妙に楽しくて。そういうところが狙い目だったのかな、と。
冬夜くんてば、自身がオリジナルのサクラメントを保有している事や出自なんかは隠そうとしているくせに、神秘側の人間であることとかサクラメントが使えることとか素人じゃないの、全然隠そうとしないんだもんなあ。素人だと思って採用したら一流のプロでした、てなもんだから上司の人たちが嬉しい悲鳴をあげるのもよくわかります。ただでさえ人員不足でのたうち回ってて、苦肉の策で自分売り込んできたやつ使ってみたら、バリバリ第一線のヤツだった、とか色んな意味でたまらんでしょうに。
戦場帰りとも知らずに素人が粋がって死ぬかも知れない戦場で戦う覚悟を問うてやる、とつっかかってくるいつきくんが、この場合的外れすぎてちょっとかわいそうですらあるんですが。
いや、いつきからすると冬夜はクラスメイトだし『刻の黄昏』についてなんにも知らないし、ド素人が粋がって、となるの当たり前じゃないですか。冬夜はあれ、どこか天然でわかってないところもあるので仕方ないかも知れないけど、御姫あたりが教えてあげたらいいのに、とか思ったのですが御姫は御姫で自分と冬夜の事で色々と一杯でそういう余裕なかったか。ポンコツと思い込みの強さという意味では、御姫は追随許さないことになってるからなあ。この女、エロ妄想が激しすぎる。
それでも、冬夜が自分を助けた事で自分が想像していた以上のものを背負い、責任を請け負う覚悟を持っていた事に気づいてしまったら、平静では居られなかったのでしょう。ただ命を助けた、吸精病の事を秘密にしてくれた、だけでは済まない事になってしまっていましたからね。
しかし、冬夜の方もこれだけ運命共同体として御姫に対して責任を請け負ってしまって大丈夫だったのだろうか。冒頭の回想にもあったように、彼もまた敵討ちという所業に正義ではなく業を背負ってしまってる。その果てにあるのは自分もまた仇討ちという名の殺戮の報いを受ける末路だという覚悟もしているわけだけれど、彼の死がそのまま御姫の死となってしまった中で粛々と報いを受け入れることが出来るのか。まあ、御姫の方は何があろうとどうなろうと、冬夜の報いに喜んで付き合うのだろうけど。
一日の時間が24時間から23時間になり、冬夜を除いて誰もがその事を忘れてしまっている、という設定、これが今後最重要のポイントとなりそう。秘跡狩りなど次回へ続く伏線もぶっこんできたし、立場も確立できたので次回以降ガンガン動いていきそう、楽しみ楽しみ。

1巻感想

そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 ★★★☆  

そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 (オーバーラップ文庫)

【そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1】 樋辻臥命/夕薙 オーバーラップ文庫

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―終わりは、すでに約束されている。人類は予言された終末に抗うため、人知れずその要因『刻の黄昏』と、内部に現れる魔人『ペイガン』と戦ってきた。そんなことが世界の裏側で繰り返されるなか、日本の高校生・東雲冬夜は突如異変に巻き込まれ、刻の黄昏に迷い込んでしまう。刻の黄昏でペイガンに襲われた冬夜は、終末と戦う少女・如月御姫に助けられ、事なきを得る。翌日、冬夜が御姫から異変について説明を受けていると、再び刻の黄昏が発生。御姫はペイガンを倒しに飛び出すが、なぜか一介の高校生である冬夜の手にも、普通の人間が持ちえないはずの超常の武器・サクラメントが握られていて…!?
現代異能モノというよりも、往時の現代伝奇ものを想起させてくれる作品でした。最近、意外とこの手のガッツリ凝った伝奇テイストのものは多くはないですからねえ。作者の処女作が元のベースだそうですけれど、ある種の年代が感じられるのもそのせいかもしれません。
そして、作者の同じ作品の【異世界魔法は遅れてる!】シリーズとどうやらリンクした世界観の模様。リンクしていると言っても、あっちは異世界なのですがあっちに強制転移させられた主人公が実は現代地球で活躍していた魔術師で、という設定だったんですよね。で、どうやら地球サイドにもかなり分厚い設定があった模様でそっちの話も読みたいなあ、と思っていたので本作はまさに期待に応えてくれた作品といえるのかもしれません。と言っても、あっちの主人公・水明くんが所属していた魔術組織やその周辺からは関係ないとは言わないまでも離れた舞台となるようで、水明くんの回想に出ていた仲間たちの出番があるかどうかは不明だけれど、少なくともメインからは程遠いようだ。
主人公と言えば本作の主人公である東雲冬夜。彼ってあらすじ見てると全くの一般人としか読めないんだけれど、これってあらすじ詐欺じゃないですかぁ。お陰でプロローグの話から本筋始まったとき主人公に対する思い込みから少々混乱してしまいました。でも、この一般人のように見えて実は、というパターンもTYPE-MOONの作品なんかでは定番もいいところですし、異世界転移みたいに後から能力が付与されるような機会など滅多無い現代伝奇モノだと、むしろ最初から主人公も異質の側でないとなかなか話に追いついて行き辛い面もあるのでしょうなあ。冬夜の場合は巻き込まれ型、というには彼は彼で頭までズブズブに浸かってる現在進行系の深い事情があるのですが、考えてみると作中でさり気なく宣言されているとおり、冬夜くんはたった一人の女の子のために、それらすべてを放り捨ててるんですよねえ。プロローグで見せた狂気にも似た喪ったものへの執念を思うと、投げ捨てた人生をさらに投げ捨ててるようなものなんですよね。
古典的な、というとちょっと違うか。あり得るべき理想の騎士像を体現してるなあ。実際は騎士どころか王子様なのですが。
ほら、御姫さん。ご希望の白馬に乗った王子様ですぞw
そんな王子様が手を差し伸べるお姫様の方は、これがまた実にポンコツ臭の漂う残念クール美人で。学校じゃあ涼やかな品行方正の委員長という猫を被りながら、その素の顔はというと早とちりしたり注意不足だったり結構けたたましいおしゃべりだったり、と本人が理想としている姿と実体がやや乖離しているポンコツさが、でも愛嬌になってて親しみやすく可愛らしいんですよ。実戦となると覚悟も定まっててちゃんと凛としているし。
だからこそ、色んな意味で彼女を「汚して」しまうのはそれなりに衝撃的でした。あれ、本当に殺っちゃってるんですか。てっきり勘違いの類いかと期待しながら先まで読んでいたのですが、結局そのままでしたし。
こうなると、どうしたって彼女の魂には罪業の傷がついて、陰がつきまとって払われる事は難しくなるでしょうし、冬夜が負った代償も含めて今後の雰囲気って相応にダークサイドに寄っていくことになるのでしょうか。
そうなればそうなったで、一蓮托生となった冬夜と御姫の関係に共に闇に堕ちる的なインモラル感が漂ってくるので、それはそれで雰囲気が出て良き哉、なんですが。
冬夜が気づいた世界の異常も、単に『刻の黄昏』に関わることになった人間の共通認識なのかと思ったら、全く予想と違った展開に転がってしまって、いわゆる「今、世界に起きている謎」についての探求も物語の進行に組み込まれ、正しく役者が揃い舞台が整った、という体の一巻でした。いや、役者についてはまだ全然揃って無くて、メインの二人をがっつり舞台にあげた、というところなのかもしれませんが。
ってか、何気に冬夜の悪友の彼も謎なスペックですよね。あれ、一般人なのか?

樋辻臥命作品感想

 

7月23日


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