徒然雑記

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たかやKi

継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで ★★★★☆   



【継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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生徒会は、恋ざかり!? 新たな日常と体育祭――二人の誕生日ももうすぐ。

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
文化祭の一件から、元カップルだった記憶もいい思い出になりつつある秋のこの頃……結女が生徒会書記を務める、新たな日常も始まっていた!
緊張の面持ちで踏み入れた生徒会室に集うのは――意外と恋に多感な高校生たちで!?
水斗と散々嫌みを言い合った手前、いまさら好きだと言いにくい結女は、会長・紅鈴理はじめ女子メンバーの恋バナをヒントに、水斗から告白させるための“小悪魔ムーブ”を思いつき!?
「――私たちの、誕生日。予定、空けておいてね」
そしてきょうだいとして迎えるその日に、二人の想いは向かい合う――?


生徒会は恋の花咲く春爛漫、とばかりに結女が入った生徒会の役員たちは青春の真っ只中でありました。前巻で登場した生徒会長の紅鈴理はそのカリスマ性を見せつけてくれると同時に恋に悩む一人の乙女である事も発覚していたのですが……。
もう一人の副会長の亜霜愛紗という娘も、前生徒会長の星辺先輩に小悪魔ムーヴをかまして気を引こうと一生懸命。まさに恋真っ盛りの生徒会は、水斗にどうやってもう一度恋させるかに悩む結女にとっては相談相手に事欠かない頼もしい先輩達の園、になるはずだったのですが……。
いやうん、だめだこりゃ。
今まさに恋に夢中、と言った女性陣。年上の先輩たちと来たら、もう恋愛模様については練達、経験も豊富で相手を意識させるスキルにも事欠かない恋愛強者だと思うじゃないですか。
ちょっと相談したら含蓄ある台詞が帰ってくると思うじゃないですか。今恋している女の子特有の、価値ある言葉を送ってくれると思うじゃないですか。
……鈴理会長も、愛紗副会長も、ひでえポンコツだったぁ。
今まさに恋真っ盛りって、思いっきり空振りまくってる真っ最中じゃないですか! 相手を振り向かせるために、金属バットで殴りかかるような暴走娘たちじゃないですか。
恋愛弱者にも程があるじゃないですか。いや、もうちょっと男を振り迎えるにもやり方ってもんがあるんじゃないですか? 恋愛雑魚か! ゴブリンか何かなにか、この先輩たちは。
ラブコメ漫画読んだほうがまだ参考になるんじゃないだろうか。やり方を完全に間違えてません?
なんかもう目を覆わんばかりの惨状が繰り広げられてて、むしろもっとこの人達の恋模様一部始終見てみたい気がムクムク湧いてきてしまうんですが。ラブコメとして面白すぎるサンプルだぞ、この二組。
愛紗は小悪魔ムーヴかますにしても、もうちょっとやり方があるだろう、とかもうちょっと上手くやれよ、空気読めよ、タイミング見計らえよ、とツッコミが絶えないありさまで。
いやあ、作者の紙城さんといえば、別作品ですた最強のサークルの姫「アルティメット・オタサー・プリンセス」の暴れさせっぷりからも小悪魔ムーヴに関しては達人もいいところなんですけれど、あれをポンコツ方向にぶん投げるとこんな残念キャラになるのかー、すごいなー、わはははは(爆笑
それよりも酷いのが鈴理会長なんですが。この人は……ほんとになにやってんだ? 物理か? 取り敢えずメーター貯まりきったら襲いかかるのは、女の子としてどうなの!? どうなの!?

彼女たちを見ていると、中学時代に凄く真っ当に男女のお付き合いをしていた結女の方が恋愛経験値では遥かにベテランの風格が感じられてしまうのですが。暁月の方ですら、大失敗をしたとは言え川波とそれはディープな付き合い方をしていたのですから、同じ小悪魔ムーヴでも恋愛雑魚どもとは格が違うんですよねえ。
暁月の場合、やり方がエグすぎてどんな瀬戸際狙ってるんだよ、となってしまいますが。この娘、色んな意味で業が深すぎるw
ともあれ、恋愛雑魚どもの頓珍漢なアドバイスを真面目に聞いてしまう結女でありますけれど、生徒会の先輩たちの旋風脚並の空振りっぷりに比べると、結女がそのアドバイスどおりに動くと多少から回っててもちゃんと水斗に刺さるように着弾してるのを見て、流石結女さん恋愛経験値が高い! となってしまう不思議。
いや、最初の時のバスタオル事件と比べると、結女の肝の据わり方も違いますからねえ。腰引けたまま勢いだけでツンツン突き回そうとした頃と比べたら、攻める気満々の今は度胸が違う。
それはそれとして水斗の息子さんを思いっきりガン見してしまった後の、あの喜悦っぷりは普通にキモい、キモいぞ結女さん。いさな並にキモいw いや、生々しい反応というべきなんだろうけど、あんた喜びすぎだw

そんな裸のお付き合い、に限らないんだけれど、結女と水斗の距離感が凄く安定してきたのがわかるんですよね。かつての恋人だった時の頃のお互いに気を遣い、相手のことを慮りだからこそ距離が一定置かれてしまっている状況と違って、家族になったが故の遠慮のなさ。
それでいて、結女が生徒会に入って学校の中でも水斗と違う時間と空間の中で過ごすようになった事で、それぞれ離れた所で時間が進むようになったんですよね。それぞれに自分の世界を作って、別の道を歩きはじめた、とも言えるわけで、その意味では距離は開いた、とも言えるんですよね。
でも、恋人だった頃よりもその距離感は柔軟と言えるのかもしれない。近くも遠くも自由で、でも望めばすぐ手が届く。望めば、いつもそこにいる。
距離感というなら、今水斗とべったり近くにひっついているのはいざなの方でしょう。いやそりゃ、付き合ってると思わないほうがおかしい、という距離感でくっついている二人だけれど、結女はさほどその二人の距離感に焦りとか嫉妬とか感じている様子見えないんですよね。
それは、二人の関係をちゃんと理解しているという以上に、今の自分と水斗の距離感に確信を抱いているから、なのかもしれない。
あの体育祭の借り物競争の時の、いざなに対しての「貸して」じゃなくて「返して」。は結女の揺るぎない立場を指し示しているように思えます。いざなはほんと、無双状態エンドレスなんですけど、この結女に対しては完全に立場わからせられてますよねー。完全にひっくり返ってお腹見せてる状態。そんな無条件降伏状態にも関わらず、隙あらば水斗の美味しそうなところ齧ろうとしているところが卑しいw いざな卑しいw それを愛嬌として水斗にも結女にも見事に認めさせてしまっているところがなおさら御卑しいw
いやあ、この娘ほんと好きだわ。


もう少しだけこのままで
誕生日の、あのプレゼントを渡すエピソードは良かったなあ。今の兄妹という家族の関係と、元恋人という過去の想いと、今新たに好きになった人への想い、それらがゆっくりとかき混ぜられていく心地よさ。それが穏やかながらしっとりとした熱の籠もった深夜の部屋の中で交わされる会話の中に詰まってて、なんか胸が暖かくなるやらキュンキュンするやら、ぶわーっと読んでるこっちの感情というか気持ちというか、噴き上がってる感覚がたまらんでした。こういう「ぶわーーっ」ってなる作品は、やっぱりイイですわ。充足感というか、この胸一杯になる感覚を味わわせてくれる作品は、物語は、最高です。


継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 6.あのとき言えなかった六つのこと】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」お互いの気持ちに向き合う文化祭編!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
水斗といさなが付き合っているという噂で校内が色めく一方、結女は水斗との距離を縮められないままで……。
そんな初秋、きょうだい揃って文化祭の実行委員に選ばれる!
衣装選びに放課後の準備作業……長くなる二人きりの時間に、夏祭りのキスの真意を確かめようとする水斗。
そして水斗に自分の好意を気付かせたい結女。
探り合いながら迎えた、文化祭当日――二人は展示の見回りを任されるが、これってもうデートでは!?
「なぁ。『好き』って、なんなんだ?」
元カップルが、お互いの気持ちに向き合う文化祭編!


いさな、この子ほんと凄えわ。この物語上における怪物なんじゃないだろうか。正直、この子みたいなタイプの登場人物ってその立ち位置を含めて見たことがないんですよね。なんなんだ、この未知の怪物は。
登場した時からそうだったのですけれど、いさなって結女の恋敵、ライバルキャラ、ヒロインの一人、では一貫して無いんですよね。じゃあなんなんだ? と、言われるとこの巻を読んでるともう「親友」としか言えないわけですよ。でも、男女の仲を越えた親友、というカテゴリーでもないんですよね。だって、男女の仲越えてないんだもの。いさなの方は未だに水斗の事好き好きですしねえ。
ただ、究極的には恋人になるとかあんまり欲してるわけでもない。
普通の人が考える男女の関係の範疇にどうしても収まらない。独立独歩というべきか、いさなはいさなの価値観の中で生きている。
世間の当たり前にどうしても適合できない自分にずっと悩んでいた彼女だけれど、前巻でおおむねその辺吹っ切っちゃったんですよね。
いさなに比べると、水斗の方は常識的と言える。いや、いさなと比べるなよ、て話かもしれないけれど、水斗みたいな他人と関わることを億劫に感じる人種って、みんなでわいわいとやるのが楽しいと思う人種からはびっくりするくらい認識されないんですよね。そういう人との関わりを避ける人の事は、本当はもっと周りの人と仲良くなりたいけれど性格的に不器用だったりしてうまく出来ない人、と思っちゃう事が多いんですよね。だから、善意で関わろうとするし関わらせようとしてくる。違う価値観の存在を認めない、というんじゃなくて認識出来ないわけだ。
水斗は、接客や委員会の取りまとめなどやろうと思えばできる人間である。でも、できるからってっやりたいわけじゃない。できるからってそれが別に楽しいってわけでもない。
そういう人間なのだ。そういう自分であることに、水斗は別に悩んでいたわけではないんですよね。
この巻においての主題は、あとがきでさらっと美しいぐらいシンプルに纏められてあって、ちょっと唖然としてしまうほどでした。いや、ここまで明確な指針を以て水斗という人間を掘り下げていっていたのか、と感嘆してしまって。本作って、キャラクターを解体してバラしきった後にもう一度そのバラした要素を組み上げていく行程がメチャクチャ綺麗なんですよね。ストーリーとしてでこぼこが一切ないなめらかすぎるほどの曲線を描いている。ラブストーリーとして「美しい」としか言いようのない情景が、心情が奏でられることになる。
いさなが導き出した、「好きってなんなんだ!?」という水斗の苦悶に満ちた問いかけへの答え。その前後に描かれていく、幾つものシーンがとても綺麗なんですよ。ドラマティックで神秘的で情熱的で、答えを聞いた水斗が衝撃を受けると共に自分の中に厳然として在った「好き」という感情が色を帯びて熱くなっていく瞬間が。二人のやり取りを知らないまま、後夜祭の独特の雰囲気の中でセリフもないままその眼差しを以て答えを示していく男女たちの情景。そして、一人歩く結女の脳裏の過ぎっていく水斗の横顔。
クライマックスは、決して盛り上がるわけではなく、熱がほとばしるわけではない。むしろ地味ですらあるのでしょう。それは静かで、ざわめきもなく、落ち着いた空気の中でそっと置かれたものでした。
劇的、とは程遠かったのかもしれません。感動というような震えるものを起こされたわけでもなかったでしょう。
でも、美しかった。こんなに胸に、心にふわりと熱をおびるシーンは経験がないほどに。
綺麗でした。きっとずっと先まで、忘れられないくらいに。
これが二人の恋のリスタート。勇気を出して踏み出したもう一歩。そのままの自分を許し肯定し認められたがゆえの、君を欲する我儘。
物語においても間違いなくここが転換点。こここそが最も大事なターニングポイントでした。
なんかもう、何度も読み返したくなります。読めば読むほど、色んなものが染み込んでくる。

あと、大正時代風の書生衣装をまとった水斗を目撃した女性たちが片っ端から聖闘士星矢の車田飛びみたいにぶっ飛ばされていくのは、なんかもう笑ってしまった、面白かったよw





継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人 ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 5.あなたはこの世にただ一人】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
結女が気持ちを決めたあの夏祭り以降、余計にお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも終盤、いつも通り水斗の部屋に入り浸っていたいさなは、水斗とのじゃれ合いを結女の母に見られてしまい、
「東頭さんが、水斗の彼女になっちゃった」
いさな=水斗の元カノという勘違いが、『今カノ』へとランクアップし!?
さらに、いさなの母には結婚しろとまで言われ、結女が攻めあぐねるなか着々と外堀は埋まっていく!
そして、いさなと水斗の噂は、新学期の高校にも伝わって……。
純真健気な片想いと、再び萌ゆる初恋の行方は――!?
こ、このヘタレがーー!! あの女、あそこまでキメ顔でキスして宣戦布告しておきながら、速攻で日和りやがったw ヘタレすぎる、根性なしすぎる、ポンコツすぎる!
普通、あそこまで心に確信を得て、二度目の恋をして、覚悟を決めて、キスという行動にまで打って出ておきながら、そこまで行っておきながらどうして腰砕けになるんだよっ!
おかげで水斗くんが訳わからなくなって混乱してるじゃないですか。当て逃げか! そりゃ、当たりも厳しくなりますわな。それでダメージ受けてるんだから世話ないよなあ、結女さんは。この娘さんは本当に、本当にダメだなあ……(しみじみ)。
うん、忘れてた。伊理戸結女という娘はこういう娘だったのでした。あんまりにも覚醒したみたいな言動してるから、見違えたのかと思っちゃったじゃないですか。
むしろ、義理の兄妹という関係で一旦落ち着いて意地はってた時の方が体裁を保てていた気がするぞ。今は、情緒不安定そのもので浮き沈みが激しいことになってて、それが余計に水斗を振り回す羽目になってるのがなんともはや。妙に小悪魔ちっくにいたずら仕掛けてきてマウント取るかと思ったら、自爆して自分から沈んでいったり。これを水斗くん、結構場面場面で真面目に受け止めているので傍目にはわかりにくいんだろうけど、結女の浮き沈みに思いっきり引きずられてるんですよね。イタズラにはかなりダメージ食らってるし。結女が意図しないところで、熱で臥せった時の結女の何の思惑もなく心配して看病する様子にもそれ以前の態度との違いに訳わからなくなって、動揺してるんですよね。
ここに来て、水斗くん結女が何考えてるのかさっぱり読めなくなって、結構パニックになっている。そりゃそうだ、結女自身がメンタルのコントロールミスって暴れ馬よろしく振り幅の大きい態度になってしまっているわけで、結女本人も自分が何やってるかよくわからなくなってるわけだし。それをちゃんとした意図の元に結女がなにかしようとしている、と見ている水斗くんである。訳わからなくなるのもしょうがない面がある。
そのお陰で警戒心でガチガチになって表面上、固い殻をかぶって様子を窺うモードに入ってしまったものだから、その水斗のそっけない当たりの強さに結女がさらにダメージ受けてさらに情緒不安定になって、とスパイラル入ってるし。
いやほんとに、前回の宣戦布告したときはカッコよかったのになあ、結女は。決意に実体がまったく付いてこなかったんだなあ、なんて残念な。

そんな義理の兄妹で妙な攻防をしているうちに、いさながスルッと入ってくるんですね。いや、以前と変わらぬスタンスではあったはずなのですが、警戒心を募らせている水斗にとってはフラットに接する事のできるいさなは癒やしになったのかもしれない。
お互い気を許しすぎるほどに許しあったじゃれ合いを、結女の母に見られてしまった事からトントン拍子で二人が付き合っている、という話が広まっていってしまう。
それで二人が改めて意識しあって、なんて単純な展開にならないのが本作なんですよね。水斗といさなの二人はお互い変わらないし、結女なんかも不安になって穿ったりもしつつも、二人のことを良く知っているから、川波・暁月の幼馴染組と二人に近しい人間はその関係を勘違いはしないものの、周りの環境が二人の関係を付き合っていると思いこむことで、徐々に変化してくるのである。
その環境の変化が、東雲いさなという少女の本質を浮かび上がらせてくる。
改めて思うのだけれど、今、紙城 境介さんという人ほど登場人物の内面を徹底的に掘り下げて掘り下げて、細部に至るまで解体してバラして隅から隅まで暴き立てるライトノベル作家は数少ないのではないだろうか。作者自身にも把握しきれていない人物像を、書いて描いて書き出していくことで鮮明にしていく、形にしていく、言葉にしていく、そうやってキャラクターを一から再構築していく作業ってのは、いわば深い深い海の底に息継ぎなしで潜り続けていくようなものだ。
自分が生み出したはずのキャラクター。でも、それがどんな人物なのか、というのは実のところ完全な未知なのである。作者の押し付けや決めつけ思い込みを拝していき、脳内でシミュレーションを繰り返し、何度も何度も問いかけて、違和感を吟味し、しっくり来る言動を見出していく。彼ら彼女らの言葉を、思いを、考えを、感情を聞き取り汲み取り捉えて捕まえて、それを言葉に、文章に再変換していく作業というのは、永遠のように途方もなく、脳髄が煮えるような熱が頭をフラフラにさせていく。
ゲロを吐きながら振り絞るように書いていた、とかつて言っていたのは冲方丁さんだったか。
でも、そうやって掘り下げて積もっていたチリを払って「見つけた」キャラクターは、本物だ。
東雲いさなというキャラクターは、作中でも怪人と言っていいほどの変人だった。誰も予想のつかない掴み所のない言動で、作中の登場人物たちの度肝を抜いていく。作者本人ですら、わからないと言わしめる未知の存在でした。
それを丁寧に丁寧に、偏執的なほどしつこく探求し覗き込み、裏までひっくり返してバタバタ暴れるこいつを踏みつけておらおら吐けぇ、と誰も知らなかった本人ですらもよくわかってなかっただろう本音を、心の奥底にあったものを形にして引っ張り出してみせたのが、この5巻でありました。
いやもう、すげえよ。
特別になりたい、或いは普通になりたい。どこかしらで見聞きするテーマでもあります。いさなの母は、まさに特別のスペシャルであり、いさなの変人さを全肯定してくれる人でした。でも、いさなにとっては決して救いにはなってなかったんだなあ。いさなという人物を徹底的に解体していったとき、そこに現れたのは普通になりたかったただの女の子……なんて安易な事にはならないんですよね。水斗がいさなに見ていたのは、ある種の決めつけによる幻想でもあったわけですけれど、だからと言って結女たちが見ていたようなただの女の子でもなかった。あそこで、いさなへの幻想を諦めない水斗はやっぱりすごいと思いますよ。果たしてどれだけの人間が、東雲いさなという少女の本質にあそこまでたどり着けただろうか。とても普通でとても特別、その結論は決して珍しいものでもないのでしょうけれど、そこにたどり着くまでの東雲いさなという少女の徹底的な解体が、尋常ならざる説得力を、凄まじいまでの浸透力を、その結論へと与えるのである。これほどわかりにくい、意味不明な人物像を、そこまで詳らかにしてしまうだけの描写が、ここにはあったのだ。
そして、その普通であり特別である、という答えは誰もが普通であり特別である、という事へも繋がっていく。水斗という少年は、はっきり言って特別、と言っていいだけのキャラクターの持ち主だ。でも、いさなと再接続したときの彼は特別なんかじゃない普通のこっ恥ずかしい青臭い下手くそな男の子に過ぎなくて、でもそれが本当に素晴らしいんですよね。
特別な部分というのは誰にでもあって、前巻の水斗の従弟である幼い少年だった竹真くんの初恋の物語が背後で繰り広げられていたように、本巻でも結女のクラスメイトである二人の女子高生、坂井麻希と金井奈須華というそんな娘居たっけ? というキャラが登場した途端にとんでもねー濃いエピソードぶっこんできて、本作には背景キャラなんていなくて本当に一人ひとり自分の物語をそれぞれに繰り広げているんだな、というのが伝わってくるのだ。奈須華と先輩の話とか、これ結構色々とイメージあるんじゃあないかしら。
こういう子らが、周りに当たり前に散らばっていることで、作品そのものへの厚みが増していく。そしてメインのキャラをこれでもかと解体していくことで、深度もまた深まっていく。
東雲いさなの解体と再構築、そして周囲の人間関係の再設定は、一度義兄弟として固まってた水斗と結女の恋物語をリスタートするためには必要な事業だったのだろう。なにしろ、結女さんと来たら作者が「結女さんはなんで一人で勝手に負けヒロインになろうとするの?」と、わりとガチ目と思われるトーンで嘆くほどのポンコツであるからして、環境の後押しがないとドツボにハマったまま出てこなさそうだしなあ。
何気に、結女が水斗に恋をしているという事は暁月に伝わり、水斗もまたいさなと川波の協力を得て自分から動き出そうとしはじめているわけで、もう伊理戸兄妹の二人の間だけで収まる話じゃなくなってるんですね。
しかしこれ、冷静に考えるとお互いにもうすでに相手に惚れ直しているのに、もう一度惚れさせてやると入れ込んで、周りの支援を受けつつ真正面から衝突しようとしている三秒前、みたいな事になってやしませんかね。色んな意味で大惨事になりそうだなあ、うんうん。

しかし、同じシチュエーションでのお色気攻め、バスタオル一枚で男心を翻弄する、という行動に打ってでながら、結女と暁月でこれほど差が出てしまうのは、なんか結女さんに対して目を覆う他ないというか、逆に暁月と川波の幼馴染組は関係性がディープすぎてめまいしてきそうなんですけど。暁月ちゃん、小暮のこと好きすぎだろうこれ。そして、このままだと特殊なプレイに目覚めそうw

そして、本作読み終わって一番すげえな、と思わされた所が、あれだけ東雲いさなというキャラを解体し切ったにも関わらず、終わってなお「いさな」が予想のつかない想像の上を行く人物であり続けた事だろう。どれほど掘り下げ暴ききっても、キャラクターは駒にはならない。物語の登場人物に、実のところ底なんてものない。彼らは本来は誰からも自由な存在なのだ。東雲いさなは、それを一番先頭で体現し続けている。アホみたいに、すごいなあ、と口をぽかんと開くしか無い。
それがまた、痛快で楽しくて仕方ないのだ。うん、たまんないねェ♪


継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する ★★★★★  



【継母の連れ子が元カノだった 4.ファースト・キスが布告する】 紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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そういうところが、好きだったから。終わった初恋と“今”が交差する帰省編

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
“家族”らしさも板についてきた二人だが、ときおりあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな夏休みも半ば、伊理戸一家は父方の実家に帰省する。
「水斗くんじゃ~ん!! ひっさしぶりぃーっ!!」
水斗をハグで出迎えたのは、親戚の清楚風陽キャお姉さん・種里円香。
なぜか彼女には従順な水斗に、結女は察する――この人、水斗の初恋相手!?
昔の恋は振り切って、今の関係――“きょうだい”を受け入れたはずの元カレと元カノに、未練が渦巻く三度目の夏祭りが訪れる。
結女の決断に元カップルが大いに揺れ動く、夏休み帰省編!

はぁーーー。いやもう凄かった。元カップル同士が義理の兄妹になってしまって、未練を引きずりながらどうしようもない距離感で甘酸っぱいラブコメを繰り広げる、そんな作品だった本作だけれど、この巻に至ってラブコメという段階を突破してしまったのではないだろうか。
ほぼ結女の視点から描かれる未練の終わりと二度目の恋のはじまり。繊細に一つ一つ丁寧に紡がれていく心理描写。行きつ戻りつしながら整理されては迷走し、やがてひとつの答えへと辿り着いていく心の内。これはもう、真っ向純正の恋愛小説ではないか。
伊理戸家の実家に帰省し、父方の親戚の歓迎を受けて、知らなかった水斗の姿を垣間見る結女。これまでも家族となってはじめて恋人の頃と違い、お互いを慮らず気を遣わずただ一緒にいるという時間と空間を共にすることで、かつて知らなかった相手の姿を見る機会を得てきた二人だけれど、今回の帰省は改めて結女の知らない、過去の水斗が彼女の目の前に現れてくる。
それは言わば、水斗という青年の今へと繋がるルーツだ。彼という人間がどのように作られ、どのように育っていったのか。その内側に何を抱えているのかを知ることになる旅路だった。過去を知ることで、ようやく結女は今の水斗という青年の本当の姿を知ることになる。
それは恋人であり続けたなら多分知ることのなかっただろう姿。家族になってはじめて触れることの出来た成り立ち。
そして、彼の初恋の人と思われる親戚の女性円香の登場によって、彼女の未練は大いに揺さぶられることになる。
自分の中の未練の姿を、かつて自分が失ったものの大きさを、どれだけ自分が成すべきを成さなかったのかを、足りなかったのかを、知ることになる。円香さんの存在はまさに触媒だった。年上の女性、という経験値の豊富な彼女のアドバイスは結女の迷走に一つの方向性を与え、自分の心の内側を照らしだす灯火となる。
家族になってはじめて辿り着いた場所。義理の兄妹になってこそ。それこそが、この物語がただ元カップルがよりを戻すだけのお話にならなかった要なのだろう。
彼らが幾度も過去の関係を「若気の至り」と強調するのはごまかしでもなんでもない。彼らにとっても物語にとっても、それはまさに事実だったのだ。初恋は実らない、これもまた事実。だから、ここからはじまるのは、恋に恋する幼い初恋の物語でも青春の勢い任せの恋愛でもない。未練に引きづられて終わってしまったものをもう一度再開する昔の恋の続きでもない。
痛みを知り苦味を噛み締め傷跡を抱えながら、今度こそ本当にその人の人生そのものを掴み取る大人の恋の物語だ。
昔の恋が終わってくれない? それこそ未練だ。終わっている、それはもうとっくに終わっているのだ。それを認めなくてははじまらない。受け入れなければはじまらない。
だからこそ、伊里戸結女の宣戦布告。一足先にケリをつけてみせた女の宣言だ。
【ファースト・キスが布告する】。最高のサブタイトルだろう、これ。

しかし、このシーンをもうひとつの初恋の終焉に絡めているのって、心憎い演出だよなあ。恋破れた男の子にとっては、彼と彼女の間に繰り広げられている恋模様の内実は何も知らず、ただ目の前で起こった出来事でしかない。男の子の視点から見た光景を思うと、彼の千々に乱れているだろう心情と、結女と水斗の間で起こっている物語との断絶に感慨みたいなものが湧いてくるんですよね。
ああ今、結女と水斗と全く関係ない所でこの子だけの物語が繰り広げられているんだなあ、と。
この世界は、決して結女と水斗だけで出来ているわけじゃない。この子、竹真にとっての初恋の物語があり、やがて彼が成長するにつれてあのシーンは彼の心の育ち方に、恋愛観に多大な影響を及ぼすだろうことが想像できる。水斗の父と結女の母の結婚にも、親族たちの歓迎っぷりを見るととても大きな人生のドラマがあったのだろう。水斗の内面を作り出すきっかけとなり、今また結女に水斗の在りようを伝えるきっかけになってくれた曽祖父の自伝「シベリアの舞姫」もまた、かつてあり今結女たちに繋がっている人生の物語だ。とある壊れた幼馴染たち、あのどうしようもなく続いていくだろう川波と南の二人も独自の物語を構築しながら、この作品の世界観を形作る要素となっている。
登場人物の内面描写、心理描写を深く深く掘り下げて浮き彫りにしながら、人間関係を描き出していく作品は、ともすればメインの登場人物、主人公とヒロインのみに焦点を合わせて二人を描くためだめにすべてが用意されているような閉じた世界になるケースが幾つも見受けられるけれど、本作はちょっと違う気がする。
主人公とヒロインとは関わりがあるようで遠いところに幾つもの独自のドラマを見つけ、或いは目の端に映すことで、世界を広げ、そうすることでより深く一人ひとりのキャラの奥底を掘り出すための助走にしているかのようだ。広く浅くでも狭く深くではなく、広げることでより深く掘り起こし、成長させ、今までになかったものを構築していくかのような。心のあり方を見つけ、芽生えさせていくような。
この巻は、その一つの昇華の形である。
今までの三巻でばら撒いてきたものを、一気に集約して綴りあげてみせた段階を一つ上げるステップだ。そんでもって、こっからがリスタート。終わらない恋を終わらせて、はじまりはここからなのだ。
此処からなのよ!?
ほんとにもう、こいつは物凄い作品を送り出してきやがった!


継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 3.幼馴染みはやめておけ】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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まだ覚えてるよ、 好きだったこと。元恋人たちが大いに悶える勉強合宿編!

いさなの告白叶わずも、すんなりと親友同士に戻った水斗といさな。相変わらず近い二人の距離感に、心がざわつく結女だったが――そんな彼ら以上に、理解できない二人がいた。
南暁月と川波小暮である。幼馴染み同士なのに、顔を見る度にいがみ合い……。
暁月たちの仲直りを望む結女、そして二人の過去を察した水斗は、いさなを巻き込んで一役買うことに!?
きたる勉強合宿。かくして暁月と川波は、黒歴史《おもいで》に向き合うことになる。
あの頃のあだ名で呼び合い、恋人ごっこをさせられて。
それはただの“罰ゲーム”なのに、どうしてもお互いを意識してしまうこの二人も――元恋人同士なのである!!

凄えな、ホント凄えな。幼馴染という関係をここまで多面的に掘り下げて解体して見せた物語が果たしてどれだけあるだろうか。幼馴染の光と闇、功罪、清濁正邪にメリット・デメリット、その精髄を極めつけたようなある幼馴染カップルの顛末である。

幼馴染とは、すなわち距離感だ。兄弟姉妹と違って他人にも関わらず、家族同然或いはそれ以上の密接な距離感。同時に、他人である以上兄弟と違って本当に何の関わり合いもない他人の関係になってしまえる儚い関係性とも言える。
川波小暮と南暁月はその幼馴染としての距離感で致命的にやらかしてしまった失敗カップルだ。その原因は概ね、暁月が生来のメンヘラ女であった事とその事実に暁月本人と小暮自身が破綻するまで無自覚であった事に求められるのだろうけれど、二人の話を見ているとそれだけじゃあないんですよね。
よくある幼馴染が恋人同士になって破綻してしまう理由として、関係の変化。恋人という関係にどうしても馴染まなかった、というものが多いけれど果たしてこの二人の場合はどうだったのだろう。少なくとも、その変化に違和感を感じていなかったのは確かなんですよね。むしろ、ドハマリしたとも言えるのでは。一方で、元々幼馴染であったが故に……最初から彼氏彼女の関係なんかよりもよほど一心同体の関係であったが故に、その距離感はより悲惨にグチャグチャになってしまったと言える。
南暁月は、カノジョなんかよりもずっと面白い、という彼の言葉に芽生えてしまった彼女は、彼氏彼女よりももっともっと濃密な幼馴染としての関係にのめり込み、生来何かを演じ続けていた小暮は何も演じず頑張らず言わずに素の自分をそのまま受け入れてくれる、幼馴染や彼氏彼女という周囲がこういうものだとレッテルを張る枠組みではないただの暁月に傾倒し、すれ違った。
ここらへんの二人の食い違いと破綻については一概にこうだとは言えなくて、読めば読むほど言葉にできる範疇よりも奥底に渦巻くものがあって、いくらでも覗き込んでいけそうなのが色々とたまらんのですよね。幼馴染という複雑にして紐解けない関係の深奥を垣間見えることに、興奮が否めないのだ。
そうして破綻してしまい、恋人でも幼馴染でも居られなかった暁月と小暮はお互いのハイスペックなコミュニケーション能力を駆使して、他人同士という関係を演じるようになる。それは周りに見せつけるための演技ではなく、そうやって人工的に距離感を製作しなくてはどうやって顔を合わせて付き合えばいいのかわからなくなってしまったからだ。人生の殆ど大半、全部と言っていい時間を費やしてきた関係だ。それが圧潰してしまったのだ。小暮のPTSDも相まって、それは修復不可能なものになってしまった。もう、元の関係にはどうやっても戻れない。今までずっと続けてきた距離感では、もう何も出来なくなってしまうまでに破綻したのだ。だから他人を演じなければ、本当に距離を置かないといけなくなる。真の意味で疎遠になってしまう。
……そうなんですよね。家が隣同士とか同じ学校でクラスメイトとか親同士は今も仲の良い幼馴染同士と思ってるとか、そういう理由で実のところ理由にはなってないんだろうな。
やろうと思えば、ホントの意味で他人同士になる事は出来たはずなのだ。スッパリと、幼馴染という過去を上書きしてなくしてしまう事は出来るのだ。人間、出来てしまうのだ。それは暁月と小暮も変わらない。実際、そう成りかけてた。多分、二人の繕っていた外面は、破綻した距離感を誤魔化して適切さを維持するためのコミュニケーションという技術によって維持されていたバランスは、時間の経過によって本物に成りかけていた。
そして自然消滅ではなく選択としても、それは出来ただろう。合宿の途中で、それは示された。
本当の他人同士になることは、出来たのだ。

それがそうならなかったのは。出来なかったのは。
出来ないのは、嫌だからだよ!!
なんでわざわざ嫌ってるはずの幼馴染の家にマメに掃除に行くのさ、小暮くん。別れて登校するのに、なんで家を出るタイミングはそんなに重なるのさ。たまに一緒に飯作って食ってるだろ!? すんげえ、抵抗してるじゃないか。自然消滅、過去が解消されちゃうだろう時間経過による摩耗にさぁ!

幼馴染じゃ居られない、だからといって恋人にはもう慣れない、だからといってホントの他人になるのは嫌だ。絶対に嫌だ。
だからこそ、そんな地獄のような有様で口を揃えてこういうのだ。
「幼馴染みはやめておけ」


でもだからこそ、観察者たる読者の立場としてはこう叫ぶ他ないのだ。

「幼馴染って、最高じゃん!!」



いやもう、幼馴染の恋愛話としてとんでもねー位階まで掘り下げてみせた、そして繊細かつ縦横無尽に描ききってみせたラブコメでした。読めば読むほど凄えわ、これ。サブキャラの話とか、完全に忘れる。
しかしこれ、小暮くんてばまさかあそこまで酷いPTSDを患ってるとはついぞ想像もしてなかったんだけど、取り敢えず一度伊里戸兄妹のお節介によってグチャグチャになった後になんとか修復された後の関係って、生理的には受け付けないけど感情的には実のところ……って奴なんですよね、これ。暁月に関しては、険悪な態度とは裏腹に内心は最初っから昔と変わってなかった節もあるし。ってか、あの態度は適切な距離を保つためだけではなくて、小暮の症状を鑑みてのものという可能性もあるのか。
あれ、PTSDが治れば障害はなくなるとも言えるし、たとえ治らなくても……治らないなら小暮には絶対に他の虫は寄りつけないという事でもあるので、もうこの二人あの幼い頃の約束破る気ないですよ、きっと。かぁーー、もうたまんねえなあ、幼馴染って。
知っていますか? お互いベタベタ好意を寄せ合わなくても、熟練したカップルは無自覚自然にイチャイチャ出来てしまうのだ。なのでこの幼馴染ども、小暮に蕁麻疹がわかないレベルでも普通に濃密なイチャイチャをしはじめそうである。


……そんな暁月と小暮の幼馴染話の最中、基本的にずっと背景側でナイスアシストを続けていた支援組の伊里戸兄妹ですけれど。
こいつら、背景の方でずっとイチャイチャしてやがったぞ!? 
なにこの、呼吸するように自然にイチャイチャしてる水斗と結女のお二人さん。しかも、まったく無自覚に! 今回の話では、伊里戸兄妹が混迷する幼馴染カップルの間で奔走する形にはなっているんですけれど、特別なイベントなくても普通の実生活の中でこいつら当たり前のようにイチャイチャしてるんですよね。本人たち普通に生活しているつもりなのかもしれないけど、傍から見るととんでもねーレベルでイチャついてるから! 本人たちにそのつもりがないのだけれど、二人が色々と画策して暁月たちにちょっかいかけるために相談したり動き回ってる時も、ナチュラルにイチャついてるから。普通、イチャイチャするのって二人だけの世界に入っちゃっての事のはずなんだけれど、この兄妹の場合普通にしてるだけでイチャイチャしてるのと変わらない塩梅になってしまっているので、元幼馴染カップルの話が進行している背景でやたらと伊里戸兄妹のイチャイチャが目に入ってくる始末。
君ら、メインの話じゃなくても関係なしに見せつけてくるなあ、ほんとさ!

そして、伊里戸兄妹を上回る勢いで背景で暴れまわるフリーダム東頭いさな。こいつ、やりたい放題ってレベルじゃねえぞ!www
確か前巻で振られてラブコメ的には終了したはずのヒロイン。そのままフェイドアウトならずとも、存在感のオーラは減少して主軸から外れるタイプの立ち位置なキャラだったはずなのに、この作品の場合むしろ振られて繋がれた首輪から解き放たれた凶獣の如く、自由に大暴れですよ。物語の大筋が一本の横線だとしたら、この女蛇行しながら度々大筋の横線に横から突撃してきてぶちかましてはそのまま去っていき、行ったと思ったら帰ってきて横線ぶち抜いていく、という迷走する台風か上陸して暴れまわる怪獣か、の如きやりたい放題である。
凄いな、ラブコメでこんな野放しに放たれたキャラ、早々見たこと無いぞw
ちょっといさなさんが色んな意味で面白すぎて、色んな意味で目が離せない。どうするんだ、この娘!?

ともあれ、今回はメインの二人の話ではなかったとはいえ、ずっと気になっていた幼馴染の元カップルの話を期待以上に掘り下げ料理しきってくれたので、満足どころじゃない大満足の堪能具合でありました。この巻のパートからウェブ上での連載は読まずに、初見で味わうことが出来ましたし。
もうほんと好き。
シメのあとがきの最後の一文は、サブタイトルの意味合いをきっちり仕上げていてくれて、実に最高でした。


1巻感想


2巻感想

継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって ★★★★★   



【継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって】 紙城 境介/たかやKi  角川スニーカー文庫

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元カノvs新カノジョ候補!? ぼっち系オタク少女・東頭いさな襲来!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
両親の前では“家族”らしく振る舞うも、二人きりになるとあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな中、水斗の前にぼっち系オタク少女・東頭いさなが現れ、二人はすぐに意気投合! 図書室で放課後を過ごす関係に!?
ただの気の合う友達だと真顔で言い張る水斗といさなの、友達以上な距離感に結女はやきもき。しかも、
「わたし、水斗君の彼女に、なれますか……?」
徐々に水斗への恋心を自覚していくいさなを、”水斗の義姉(おねえちやん)”として応援することに!?
恋と友情ときょうだいの絆が錯綜する、『水斗攻略作戦』が始まる!
プロローグから殺しに掛かってるんですけどーー!? 殺意高すぎるんですけどーー!? 悶絶死させる気満々じゃねえかぁ!!
もうなんですか、あれ〜。自分の勧めた本を水斗くんが読んでいく様子を傍らからジーッと見つめてる結女。ついさっき自分が読み終えた本だから、どのくらい読み進めた段階でどんな展開が待っているのか当然知っている結女は、その展開ごとに水斗くんがどんな想いを抱くのか、どんな風に感情を揺らすのかを、彼の横顔をジーッと見守っているのですよ。そんでもって、自分が読んだ時と照らし合わせながら、共感したり思わぬリアクションに驚いたり、期待通りの反応に内心ニマニマしてしまったり。
人が本を読んでいる姿がこんなに色彩溢れているのか、と驚くようなシーンであると同時に、それだけ結女の目から見る水斗くんの姿が鮮やかということでもあるんですよね。ほんと、めっちゃ見てるんですよ。水斗くんが本の中にのめり込んでいくのを、傍から見ていてちゃんと把握しているし、彼が読んでいる時に何を考えているか、とか細かな仕草や表情の変化の捉え方がいやもうどれだけ見つめてるんだよ、というくらいなんですよね。その見つめていることそのものが、楽しそうで。
この場面の二人の様子を思い描くだけで、なんかもう悶絶してしまうのである。なんかもうたまらん気分にさせられてしまう。初っ端からなんという凶悪なシーン打ち込んでくるんだ、この作品は!!

でも、結女のこの視線って、多分中学生の頃の彼に恋していた頃ではきっと生まれ得ない視点だったんだろうな、とも思うのである。中学生の頃の結女は、水斗のことが好きで好きでたまらなくて、だからこそ「好きな人」という部分に意識の大半を奪われてしまって、果たして水斗という等身大の少年をどこまで直視できていたのか、怪しい部分がある。彼のどんな姿を見ても、そこの「恋」というフィルターが挟まってしまっていたのではないだろうか。
今、この時水斗の読書する横顔をジーッと眺めている結女の眼差しは、あの頃に比べるととても率直にこの新たに出来た家族である少年を見つめている。
だから、彼に対して生まれる感情は、見つめたその先にあるのだ。前のようにフィルターを通した先にあるのではなく。お互いを全部さらけ出して、お互いの様々な側面をもう一度知り直して、お互いの等身大を目の当たりにしたその先に、もう一度芽生えたものなのだ。
このプロローグはその象徴的な1ページであり、この先の物語はそうして芽生え始めたものを、新たに横から割って入ってきたファクターによってお互いにどう処理するべきか考え始める、そのきっかけとなるエピソードである。

と、言ってもその重要人物となる東頭いさなの登場は後半から、となる。前半を引っ掻き回してくるのは、前巻で友人となった南暁月と川並小暮の両名だ。
この二人がまた曲者であると同時に、何気に伊里戸兄妹を上回る地雷持ちなのである。サイコレズの看板を背負って結女に迫り、水斗を引っ掻き回した暁月だけれど、この巻では結女の親友として相棒として、思いの外存在感を示しながら立ち回るのであるけれど、ただの脇キャラじゃ済まない様相を呈してくるのが、川並小暮と暁月が実はマンションの隣同士の部屋に住む幼馴染であり、しかもどうやら水斗と結女と同じく交際していて、盛大に失敗した元カレ元カノ同士であるらしい、というのがわかってくるあたりからなんですよね。
あくまでメインが伊里戸兄妹二人の視点で進むために、詳細は不明なのですけど友人の家でのお泊り回でその一端が明らかになり、この元カップルの幼馴染同士の微妙過ぎる距離感がわかってくると、小暮のあの妙に傍観を気取りながら変なところに地雷ポイントがあるところや、暁月のある一定のラインを超えると尋常じゃなく重いキャラになるところなど、想像の羽が羽ばたくところが怒涛のように湧いて出てくるんですよね。思えば、結女たちのように突然家族となり同居生活になる、というわけじゃないけれど、この二人隣同士で住んでるだけあって普段の生活範囲や行動パターンは完全に重なっているし、別れても即他人というわけに行かず、物理的にも精神的にも離れられない距離に居る、という意味では伊里戸兄妹と似た傾向にあるとも言えるわけです。
しかし、そこは幼馴染という関係を理して、適切な距離感というのを保ってきていたはずだったのが。二人が伊里戸兄妹ともっとも親しい友人になってしまい、必然的に今まで以上に顔を突き合わせる機会が増え……でも、それだけなら今までの「適切な」距離感が揺らがなかっただろうところに、間近でその適切な距離感を取れずにトンデモナイ勢いでグルングルン揺れまくってる自分たちとよく似た関係の元カップルが暴れまわる余波をもろに真横で受けているがためか……どうも、こっちの幼馴染たちも煽りを喰いはじめている感があるんですよね。まだ兆候だけですけれど、しかし無視できない兆候が。正直、結女たちの裏側で着々と変質しつつあるこっちの幼馴染たちの動向もめっちゃ気になるところなんですよーー。

と、思わずメインの二人ならざるカップルの方で語ってしまいましたが、やはり最強にラブコメしまくるのはメインのお二人、水斗くんと結女の兄妹なわけで。
結女の方がもうこれ、一巻の最初の頃にはまだ保っていた平静が、二巻ではもう殆ど保たれてないんじゃないですか、これ!? いや、これはもう水斗くんが悪いとも言えるんですけどね。このカレ、ズルいですよ、絶対! 席替えのときとか、あれなんですか? 中学のときには忘れていた合図を、あのタイミングでやっちゃうとか、そんなん結女ちゃん死ぬに決まってるじゃないですか。あんなんされた日には、平静でいられるもんですかい。そもそも、結女が水斗くんを好きになったきっかけというのが、自分を対等の存在として意識してもらったこと、認めてもらったこと。
自分を見ていてくれること、それこそが結女にとっての最大の急所だったわけですよ。それをこの男と来たら、この巻だけで何回そのポイント、急所目掛けてクリティカルな会心の一撃を叩き込みました? ここぞというときに、一番強烈なやつをぶちかましてくるわけですよ?

死ぬわ!!

見なさいよ、今回結女ちゃんほぼ瀕死じゃないですか。そこ触られたら死んじゃうって場所をピンポイントでグリグリ刺しやがってからに、この男は! この男は!!
控え目に言ってももう、結女って伊里戸がいないと生きていけない身体にされてしまったんじゃないだろうか。
しかも、水斗くん無自覚でやってるわけじゃなさそうなんだもんなあ。一度、結女の方がちゃんとした「適切な」距離を取ろうとした場面があるんですよね。兄妹として、別れた元カップルの友人同士として、感情的に割り切った適切な距離感というものを、結女からちゃんと取ろうとした時にこの男ときたら。
普段、シレッと素知らぬ顔して知らんふりしているかのような平然とした態度とっているくせに、いきなりガッと来て、ガシッと手を掴んで、グッと無理やり引き寄せて顔寄せて、その態度気に食わない! ですからね! しかも、結女が思わずアヘ顔になってしまう結女理想の装いにわざわざ着替えて。
もう思わず「きゃーーー!」ですよ。少女漫画見て色めき立つ女の子か、という勢いで読んでるこっちが黄色い悲鳴ですよ。
もう、きぃゃーーーー! だよ!
うん、もうこの男、ズルいわ。ズルいズルいズルい。格好いい……。
いやこいつ、絶対モテるわ。そりゃモテるわ。
後半に満を持して登場のいさなも、この娘はこの娘で言うてしまうとエキセントリックなんだけれど、うん惚れるわなあ。わかる、わかりみ。
なんかこう、面倒くさかったり自分で自分をコントロール出来ない系女子からすると、そういう暴走しがちな面も含めて、理解してくれて逆にうまいことコントロールまでしてくれる身も心も行き届いたフォローをしてくれる優しくて頼りがいのある男性、とか。普通に接したら死ぬよね、死ぬわ。
いやー、いさなもまた結女とはまったく別のベクトルで面白すぎる娘なんだけど。ってか、同じ文学少女で引っ込み思案とはいえ、昔の結女とこのいさなって全然キャラの方向性違いますよね。最終的には異世界人呼ばわりされてしまう価値観と言うかメンタリティの持ち主ですけど、そもそもマイペースだし内気というわりに自己主張激しくてイイ性格してますし。あんまりぼっちらしくはないなあ、と思ったけど女の子グループの中に入ってやってけるタイプでは全然ないな、うん。
全部終わった後の「「ちょっと面貸せや」」には思い切り笑ってしまった。うん、あれはズルいよw
一連の、あの男人の心を持たんのか!? も終始笑いっぱなしだったし。
あー、面白かったなあ。なんかもう、読んでいる間中ハートがあっちに引っ張られこっちに弾み、と落ち着いている暇がないのですよ。ずーっと揺さぶられて弾まされて。
ドキドキして、ワクワクして、ニヤニヤして、キューーンってして。
ラブコメの醍醐味を味わい尽くしているような、そんな幸せ。読書における最高の味わいなんじゃないでしょうか。
1巻に引き続き、2巻もまた紛うことなき最高傑作でありました。
3巻はまだウェブ連載のストック全然ないそうで、最近連載再開しているみたいですけど、私も書籍版の方で新鮮な多幸感を味わいたいので読まずに居てます。なので、ほんとーに楽しみにしつつ、夏頃予定というのを信じて次巻を待ってます、待ってます!

1巻感想

継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない ★★★★★  



【継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない】 紙城 境介/たかやKi 角川スニーカー文庫

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ある中学校である男女が恋人となり、イチャイチャして、些細なことですれ違い、ときめくことより苛立つことのほうが多くなって……卒業を機に別れた。
そして高校入学を目前に二人は――伊理戸水斗と綾井結女は、思いがけない形で再会する。
「僕が兄に決まってるだろ」「私が姉に決まってるでしょ?」
親の再婚相手の連れ子が、別れたばかりの元恋人だった!?
両親に気を遣った元カップルは、『異性と意識したら負け』という“きょうだいルール”を取り決めるが――
お風呂上がりの遭遇に、二人っきりの登下校……あの頃の思い出と一つ屋根の下という状況から、どうしてもお互いを意識してしまい!?

もう好きーーーー!!

完全にどストライクでありました。これって、未練を残したままの恋愛のやり直し、とはまた少し違うんですよね。一度は確かに終わった恋愛なのである。気持ちは冷めて、感情は沈静し、相手の何もかもを好意的に感じられていた時間は遠ざかって、相手の言動の何もかもが癇に障る。
初めての恋愛で舞い上がっていた心が、地面に降りてきてしまった。そうなると、むしろ想いは反転してベクトルは逆へと向かい、冷静とはまた違う逆立った視点で相手を見るようになってしまう。
それもまた感情的であるからこそ、拒絶へと繋がってしまうんでしょうね。
未練を引きずっていたわけではない。まだ実は好きだった、なんてことはない。この二人、水斗と結女の恋愛は、完全に終わったそれであったのです。
だから、この二人の二度目の義兄弟としての再会は、家族としてはじまった二度目の関係は、延長戦ではなく、ニューゲームなのだ。ただし、前回の感情の記憶を残した二週目の、ただ甘いばかりだった前回とは異なる、お互いの嫌な部分も私生活も何もかも曝け出した上での、リスタートなのである。
二人の回想から語られる中学時代の恋人時代の思い出は、中学生らしいというべきか、実に初々しく恋愛という事象に浮かれきった実に甘酸っぱいエピソードばかりで……まあ当人たちからすると思い出すだけでSAN値がガリガリ減っていく黒歴史でありました。曰く、狂気の沙汰、愚かの極み、今になって冷静に振り返ると頭がおかしくなっていたに違いない、花畑が咲き誇っていたという表現で過去の自分を罵り、恥辱に七転八倒する水斗と結女。まあ確かに、他人事で見ていても微笑ましくもこっ恥ずかしすぎて、直視し難い思い出ばかりである。これも年月過ぎて大人になったあとに振り返れば、苦笑とともに飲み込めるのかもしれないけれど、未だ記憶が薄れる前にその当事者と毎日自宅で顔を突き合わせるはめになってしまったのである。まさに、黒歴史と暮らす生活である。
面白いのは、彼らが付き合ってた事については、家族どころか友達も全然知らない、まさに二人だけの秘密、なところなんですよね。だから、周囲には過去に付き合っていた素振りなんかを見せられないし、図らずも秘密を共有して、秘密がバレないように協力する共犯者、という立場も維持しなければならない。
そんな新しい家族で共犯者で秘密の元カレ元カノ同士、という複雑な関係は、お互い好きというふわふわとした綿菓子みたいな関係性だけで完結していた中学時代の恋人時代とは、全く次元の異なる距離感を彼らに突きつけてくる。
そんな距離感から育まれていく関係というものは、お互いへの幻想だけを積み上げるだけで維持していたものとは違うものでありました。より深く踏み込んで、より深く相手の心を覗き込んで、より強く相手の意志を、感情を感じてしまう、浴びてしまう距離感。嫌いという感情ともしっかり向き合わなくてはならない関係。そこから生まれてくる淡い想いというものは、中学時代のそれとは全然別物の、でも想い出を引き継いだ、二重に補強されたものになるのである。
中学時代の恋愛が最後まで続くなんて、まさに夢物語。そんな当たり前の現実に則って終わってしまった二人の恋は、今度こそ現実に負けないものになるのかもしれない。

このラブコメの素晴らしいところの一つが、水斗の一方的な視点からの物語ではなく、水斗と結女の視点からのエピソードが交互に描かれるところでありましょう。これ、二人が主人公で二人がヒロインなんですよね。軽快でテンポのよい語り口で描かれる二人の日常は、実にエキセントリックな友人たちの登場と介入でどんどんとポップアップされていく。普段から落ち着いている水斗と比べて、根は大人しいのに調子に乗ると後先考えずにハシゴを登って、自分でハシゴを蹴っ飛ばして外してしまい高いところから降りられなくなって狼狽えまくる結女が、かなりポンコツ娘で最高に可愛いんですよね。盛大にやらかすもんなあ。
コミュニケーション強者なんだけれど、中学時代は大人しい文学少女だった頃の対人能力の低さが突然顔を覗かせてけったいな事になることも度々ですし、ポンコツ可愛い。水斗とのデート回なんて、変なスイッチ入りすぎて酷い有様でしたし、この娘は〜〜〜ww
でもニヤニヤがひたすら止まらないんですよー。イチャイチャするって、ベタベタするのとは違うんですよ。お互いのことすき〜すき〜って撫であうばかりがイチャイチャじゃないんですよ。
お互いそっぽを向き合っていても、憎まれ口を叩いても、誰も間に入れないくらい通じ合うものが垣間見えた時、そこに二人だけの時空間が誕生してしまっていれば、それはもう果てしないイチャイチャなのであります! いや、反発してるだけじゃあやっぱりだめなんですけどね。不意打ちまがいに訳のわからないレベルの超ゼロ距離の距離感を差し込んでくるのが凄まじい効果を発揮しているわけで。作者の紙城さんはこの手の、いやこのたぐいに限らず多種多様のイチャイチャ感の描き方で至極の域に達している方だと自分なんかは思っているわけですが、その中でも純粋なラブコメとして描かれた本作はちょっとそのへん極まってしまってるんじゃないでしょうか。
控えめに言っても、最高すぎる。これぞ、ラブコメ!! ラブコメですヨ!!

紙城 境介作品感想

踊る星降るレネシクル 6 ★★★☆  

踊る星降るレネシクル 6 (GA文庫)

【踊る星降るレネシクル 6】 裕時悠示/たかやKi GA文庫

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瑞貴は星霊「陰月の咲夜」を倒して消滅した。
なななは石になった人々を救うため、剣へと姿を変えた。
すまるはベツノカの結界のために生け贄となった。

三人の少女がいなくなって半年、ミカホシは大きく様変わりした。
結界の効果で人々は闘争心を失い、ランカーバトルも廃止されてしまう。

ひとりぼっちになったレンヤは、三人を甦らせるため「祭り」の準備を始める。
かつての個性を失ったランカー達に彼の声は届くのか?

「こんな自分を好きになってくれた連中を助けるためなら、俺は悪星になる」
新章開幕、ハイテンション学園ストーリー第6弾!
すまる、生け贄になって封印されたのに精神だけレンヤにくっついてきて、しゃべるしゃべる。絡む絡む、まとわりつくまとわりつく! おい、生身の時よりウザいんじゃないのか!?
瑞貴となななを見習ってちっとは大人しくしてなさいよ、この娘はもう本当に。それにしても、レンヤもレンヤだよ。なななを芸人呼ばわりしすぎだ。違うから、芸人違うから。そりゃもう切れ味タップリすぎるコントの達人だけれど、あれは素だから。芸じゃないから。そしてなにより、彼女のツンデレは至宝なのだ。古今東西、あれほど見事なツンデレの執行を未だに私は知らない。
そんな彼女も今は剣となり沈黙を続けている。瑞貴に至っては安否不明のままだ。いや、安否不明というのはお為ごかしだろう。事実上、彼女は死んでいる。死んで、欠片も残らなかった。
その身を犠牲にして皆を助けたななな、その身を焼きつくして、その想いを燃やしつくして勝利し、消えていった瑞貴。それに比べてすまるさん、一人だけでしゃばりだよぅ。もうここはもうふさんにメインヒロインは譲りなさいよ。もう親公認の中なんですし、大人しく譲りなさいよー。
とか言ってるうちに、一人さっさと復活してしまったのですが。ちっ、そのまま封印されていればよかったのに、とか思っちゃダメですか?

平和平和、誰もが闘う意思をなくし、個性を潰して平穏の中に沈み、穏やかで何の波もない日常がんがれるようになったミカホシ。でもそれは記憶を操作され、精神をいじくりまわされ、洗脳によって訪れた平和だ。そんな平和が尊いのか。個人個人の心を弄くって、都合のいいように改変して作り上げた平和は尊ばれるべきなのか。
納得のいかないレンヤは、市外に出ていた僅かな仲間、市内で同じく精神操作から逃れた僅かな友人たちとともにこの平和に対抗するための方法を探しだし、その為に今は個性を喪われて日常の中に埋没しているミカホシランカーたちを一人ひとり訪ね歩いていく。まるで反転して異様な有様になってしまっているモノも居れば、まともな社会性、常識を手に入れ真っ当な人間として過ごしている人もいる。それぞれに、彼らも今を生きている。そんな彼らをだが否定すること無く、しかし訴えかけていくレンヤの行程に主人公らしい派手派手しさはない。地味で不毛にも思える黙々とした行脚であった。
だが、だからだろうか。その切々とした行脚だったからこそなのか。彼に懇願されたミカホシランカーたちはその場へと集まってくる。
新たな祭りの地へ。再び開かれる闘争のステージに。闘え、闘え、心のままにおのが魂を解放しろ、という無業の叫びに導かれるように、誘われるように。
そう彼らこそ異形異端のミカホシランカーたち。頭のオカシイ、存在自体が狂っている闘争本能の塊達。これぞお祭り、これぞ祭典。熱い熱いランカーバトルの開幕にして、ミカホシの集約たる決戦のはじまりなのだ。

と、まさにクライマックスの火をつけたところで……またぞろ8ヶ月くらい開いてまだ次巻出てないんですよねえ。別に次が出るまで読むの待ってよう、と積んでいたわけじゃないのですけれど、なかなか焦らされてますなあ。
とりあえず、自分は圧倒的に瑞貴派です、それだけは揺るがないっ。

シリーズ感想

踊る星降るレネシクル 5 4   

踊る星降るレネシクル 5 (GA文庫)

【踊る星降るレネシクル 5】 裕時悠示/たかやKi GA文庫

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ばーか
別にあんたのためじゃないんだからね?


「俺の大っ好きなミカホシを守れえッ! バカ弟子ぃぃぃっっっ!!」

絶叫を残してレンヤは石となった。ミカホシ市、そして日本をも巻き込む戦争の行方は、
今やレンヤの愛弟子・すまるの手に託された。
覚醒する最強の力、しかし支払った代償はあまりに大きすぎて――。

一方、レンヤの幼馴染み・瑞貴はこの覚醒の裏にある陰謀を感じ取り、学園を離れることに。

そしてレンヤのケンカ友達・なななは、何故か留置所の中にいた……。
「もんちっち♪って踊ってる場合!?」

レンヤと絆を結んだ三人の少女が今こそ彼のために動き出す!!
少女を最強へと導く“王道"ノベル再始動!


七曜なななは死んだ!! なぜ死んだ!!

……ツンデレだからさ。

うおおおっ、うおおおおっ(号泣

これほど、これほどまでに切なく、哀しく、尊く、神々しいツンデレがかつてあっただろうか。
彼女にとって、ツンデレとは自覚なき性質であり、指摘され理解し自覚してなお消し去れない呪いであった。愛する人に素直に想いを伝えられないことの、何と辛くもどかしく遣る瀬無いことか。惨めで虚しく、道化じみたありようか。七曜なななは泣いた、苦しんだ、苦悶し、溺れ、悩み、藻掻いた。
そのツンデレという自分を縛るサガを、七曜なななにまとわりつくキャラクター性という呪詛を、振り払わんとして足掻いて、抗って、闘った、戦ったのだ。さながら、自分の中に灯った恋する想いを必死に掲げるかのように。消えてしまわないように、無くしてしまわないように。
彼女はただ、幸せになりたかったのだ。好きになった男の子と、恋をしたかったのだ。
しかし、その恋した相手は、今や石の像と化し、ミカホシの街は混沌とした戦火へと埋もれていく。
愛する彼を救い、自らの正義を貫いて、このミカホシを守るには、自分のすべてを捨て去らなければならなかった。生贄のように、供物のように、自らを投げ打ち、捧げれば、自分以外の全てを助けられる。
その事実を知った時、彼女は当然のように悩んだ。なぜ自分が犠牲にならなければならない。大好きなあの人を助けられたとしても、自分はその時彼の思い出にすぎなくなる。彼は自分の上を通り過ぎて行き、永遠に過去になってしまう。彼を救えば、彼女の恋は実らない。彼女は絶対に幸せになれない。
それでも、彼女は選んだのだ。七曜なななは征く。彼女は恋のために戦った。大好きなあの人の為に戦った。それは言うほどきれいな話じゃない。美談なんてものじゃない。自分を犠牲にして、なんて殊勝な想いというほどでもない。ただ、一生懸命だっただけだ。考える前に突っ走る。考えてしまっても、それを置き去りにして突っ走る。思うままに、あるがままに。それが彼女の愛だった。それが彼女の正義だった。それが彼女の幸せだった。ただそれだけの話。
そして、その時、彼女に科せられたツンデレという呪いは、ツンデレという生き様へと昇華したのだ。
普通に、好きな人に愛して欲しかっただけなのだ。自分の気持を素直に伝えて、自分の想いを知って欲しかっただけなのだ。レンヤという少年に、七曜なななの恋を魂に刻んで欲しかっただけなのだ。
しかし、嗚呼見るがいい。彼女の女としての挟持を。刮目して見よ、七曜なななという少女の、優しくも誇り高き選択を!
ツンデレなりし、死に様を!!




止まらず、止まらず、走って走って、燃え落ちるほどに走り抜けて、流星のように消えていく。
一人の男の子に恋をして、一途に抱いた想いを糧に、エネルギーにして走り抜けた少女たちは、そうして輝き、星となって通りすぎていったのでした。
すまる、ななな、瑞貴。さらば、愛しきメインヒロインたちよ。そして思い出の中で、永遠に……眠れ。



……あとは、もうふちゃんにもう全部任せろ!!
いやもうほんとに任せろ!

時代は、新にして真・メインヒロイン 更科もうふのものなのだ。ヒャッハーー!!


三年ぶりの新刊は、冒頭からクライマックス。最後までクライマックス。三人のヒロインたちが、それぞれの想いを胸に、恋のため、愛のために、叫び、振り払い、我武者羅に闘って戦って、自分の中の魂の一欠片まで削り尽くして、確かな何かを打ちたて、貫いてみせた、凄まじく熱い決戦でした。
そして、衝撃のラスト。まさかの、メインヒロイン全滅。そして驚愕の、新ヒロイン誕生。
これでほんとに、もうふちゃんエンドになったら、レジェンドとして語り継いでもいいんですが、それはさすがにちょっと無理かなあ。
しかし、すまる、瑞貴、なななの死闘は、本当に魂の震えるものでした。個人的にはやっぱり、すまるはちょっとアレなんですけれど、特になななについては、もはや伝説的と言って過言ではないツンデレキャラとしての金字塔を打ち立ててくれた気がします。
もはや、七曜なななを知らずして、ツンデレを語る事なかれ。

踊る星降るレネシクル4   

踊る星降るレネシクル (GA文庫)

【踊る星降るレネシクル】 裕時悠示/たかやKi GA文庫

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横も後ろも顧みず、急き立てられるように突っ走っていくヤツを追いかけるのは大変だ。ふと気を抜くと、徹底的に置いていかれてしまう。その突っ走る理由が明確な理由のない生来の強迫観念にまつわるものだったとしたら、なおさらだ。彼らは、理由もなく自分が存在する事を証明するかのように突っ走っていく。
それでも追いかけ、一緒に突っ走ろうとするのなら、そいつは追いかける対象以上に必死にならなきゃいけない。一心不乱に、そいつの事を見つめていなければならない。

だけれど、この物語の主人公レンヤは躓いてしまった。追いかけ、一緒に走るつもりで、肝心の彼女の脚を引っ張ってしまった。彼女の生きざまの邪魔をしてしまった。その後悔が、追いかける脚を止めてしまうことになる。
たとえ振り返らずとも、何も言わずとも、絶対に自分を追いかけてきてくれる、自分と同じ道を邁進してくれると疑いもせずに信じ抜いていた彼女を裏切る形で。
横も後ろも顧みず、ただひたすらに自分の望むものを追い続けた少女は、顧みないがゆえにレンヤのしでかしてしまったことなど、気にもしていなかったというのに。
ただ一緒に走ってくれていたことだけが、孤高を行く自分の生きざまに寄り添ってくれていただけで嬉しかったというのに。

常に上を向き、何一つ一顧だにせず、他の誰にもワカラナイ理由に突き動かされて、闘争に闘争を重ねて神へと至ろうとする少女沙良瑞貴。
これは自分自身から逃げ続けた逃亡者であるレンヤと、周囲の期待に敗北し続けた少女すまるが、仮初の師と弟子となり、お互いを導き高め合い、自分の中に凝った澱と向き合い、絶対勝者である瑞貴と胸を張って正対するまでの物語である。
ゆえに、この物語の主人公はレンヤであり、すまるである。もう一人のヒロインである瑞貴は、行ってしまえば向き合うべきトラウマであり理不尽なほどの壁であり、捉えるべき背中であった。それは目標であり到達点であり、ラスボスであったわけだが、むしろ私は彼女の方にこそ心惹かれてしまった。
同志であり半身であった男の挫折と裏切り。それが彼女に与えた絶望は、元々孤高だった彼女にどれほど孤独を与えてしまったのだろう。一層に闘いにのめり込みながら、隣に誰もいない独りだけの世界は、どれほど彼女に寂しさを浴びせていたのだろう。
すべてをかなぐり捨て、神への道へと邁進する彼女が、ただ一つ、レンヤが作ってくれたぬいぐるみだけを肌身離さず持ち歩き、大切に傍に置いていたのはなぜなのだろうと考えると、それは身代わりだったのだとしか思えなくなる。自分を裏切り、立ち止まってしまった一番大切だった男の身代わりだと。それは、動けなくなった彼に手をさしのべることもせず、一緒に立ち止まって待つことも出来ずにひたすらに前に進むしか生きられない自分への嘲弄であり、もう一度戻ってきてくれると信じる心を押し隠した淡い縁、捨てられなかった想い、というやつだ。
そう思うと、無骨で不器用で理不尽でしか無い彼女のことが、無性にカワイイとしか思えなくなってくる。
世は、すまるをヒロインとして扱うのだろうけれど、たとえ周りはどうあれ私は瑞貴を崇め応援したいと思う。
そんな私は幼馴染スト♪
 
9月21日

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9月19日

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9月12日

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8月26日

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