【大魔法師の息子 Lesson1 最強の愛弟子と復讐に囚われる少女】 大菩薩/ねめ猫6 オーバーラップ文庫

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魔法――かつて第三次世界大戦の中で《大魔法師》によりもたらされた新技術。
そんな魔法の研究機関が集う人工島《武蔵》の魔法師養成のためのエリート校・武蔵学園に、ある少年が入学する。
名門・焔魔(えんま)家に生まれながら捨てられた“無能"であり、《大魔法師》アリアに育てられた最愛の“息子"――無道袮音(むどうねいん)。
アリアの教育の甲斐あって、袮音は学園でめきめきと頭角を現していく。
しかし順風満帆と思われた彼の学園生活は、かつて自分を捨てた焔魔家との因縁や、家族の仇を追う少女・暗条冥(あんじょうめい)との出会いにより波乱万丈なものとなっていき……!?
「第5回オーバーラップWEB小説大賞」奨励賞受賞の新英雄譚、堂々開幕!!

非常にオーソドックスな作りなのだけれど、それで退屈というわけではなくスルスルと読める面白味がある作品でした。こういうのって、同じような展開でありながら教科書的な味気ない読み応えになってる作品とどういう所が違うんですかねえ。これでも結構な数読み散らしてはいるのですけれど、そのあたりの差異をどうしても具体的に出来なくて難しい。本作なんかも決して文章が上手いタイプではないんですよね。それどころか地の文とか説明的になってしまっている部分が多々見受けられてテンポを崩されるところも多いし、決して地に足がついている洗練された文章というわけではない。でも、そういう部分をあんまり気にしなくて済んでいて、ぎこちなさがあまりストレスにならない。長年読んでいても未だに不思議だなあ、と思うところであります。
本作は敢えていうなら、登場人物の描き方に人間味が感じられるという所かもしれません。個性的なキャラ付けはされていないのだけれど、それぞれに丁寧にキャラクターが描かれている。その人の性格、行動原理、そこから発生する感情表現や他の人との接し方、相手の行動に対しての心の動き。そういうのが朴訥として丁寧であるからこそ、読み易さが安さにならずに済んでいるというべきか。
入学早々から、お調子者ながら信頼できる親友が出来るというのも良かったのかも。こいつがまたイイ奴なんですよね。浮ついているけれど怒るべき所で怒ってくれるし、袮音の境遇を知ってもまったく動じないで居てくれる。ヒロインじゃなくて男キャラにこういう奴が居てくれると、それだけ主人公の方にもキャラに幅が出ますし、何よりこういう友人キャラがいて気安いやり取りをしているということが主人公にも親しみを感じさせる要因になる。

一方でヒロインの暗条冥の方はというと、刺々しいキャラで取っつきにくいのですけれど、ある意味袮音が既に通り過ぎたダークサイドにはまり込んでいる復讐者という立ち位置で、袮音が他人事に思えず気にかけてしまうという人間関係の紐付けにもなっていて、登場人物同士の関係を成り立たせるための筋道をきっちり整えてるんですよね。
魔法師界隈では欠陥者として扱われる袮音の要素を踏まえつつ、それを吹き飛ばすだけの痛快さもちゃんとこの手の作品として備えているし、一方で彼への理解者も普通に多く変に孤立させていないあたりも、袮音を人間外に追いやらずに年相応の男の子らしい主人公として成り立たせているのではないでしょうか。
彼が家族から捨てられる事になった出来事も、どうやら外部からの悪意が介在しているようで謀略の陰が見えるのですが、しかし今回登場した敵役には袮音に関して知っている様子もなく、果たしてまったく関係がないのかどうなのか。記憶を操る云々の操作をしているあたり無関係ではなさそうなんだけれど、世間的に特別でも何でもなかったただの無能力者の袮音をあのような形で強引に放逐する理由が、今の所全く見えないだけにここは話が進まないと展開も見えてこないか。
少なくとも、袮音の家族は現状加害者だけれど実は彼らも被害者でそもそも袮音に対して害意も隔意もなく、普通に愛情を抱いていたようなので仲直りできそうな余地があってよかった。まあ今の所は、捨てられた方の袮音がどうしても拒絶感、憎しみを捨てられないのも当然なので、今の関係は仕方ないのだろうけど。
しかしこれ、ヒロインは普通に冥で良いんだろうか。義母のアリアさんがめっちゃ唾つけまくってて、色んな意味でダメ女なアリアさん相手だととてもじゃないけど手を出したら火傷ですまなさそうなんだけどw