【西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~】 ぶんころり/またのんき▼ MF文庫J

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学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)。
……い、いたたまれない!
おおぅ、なんというかこれ、というかこの西野という少年、筆舌に尽くしがたいキャラクターである。いやもうこいつ、どうするんだよ。かっこつけを拗らせるとここまで目を覆わんばかりのアレになってしまうというのか。世界は残酷である。
っていうかさ、フツメンだから何しても何言っても格好つかない、というレベル範疇を越えてませんかね、これ。
イケメンだったら何しても許される何を来てもかっこいいどんな言動でもキマって見える、という限界を越えているような気がするんですけどね、これ。

ダサいよ!
痛いよ!
居た堪れないよ!!

空気読め、という言葉は周りに合わせろという強制を促すような意味が籠もってるけれど、そうじゃなくて空気を読むというのは、周りの人たちが何を考えているのか、どう感じているのか察しろ、理解しろ、認識しろ、把握しろ、という意味合いもあると思うんですよね。その上でどう行動発言するかは敢えて無視するか迎合するかはその人次第だと思うけれど、それ以前にそもそも空気を読めてない人、周囲が抱く感情、気持ちがわからない人というのはどういう有様になるのだろうか。
その言動が人に好感をもたらすような善性のもの、温かいものだったとしたら、天然みたいな扱いで保護されるかもしれないし、苛烈で破壊的なものだったとしても共感者や追随する人を生むかもしれない。まあ空気を読めない人でも、受け入れられる余地や可能性というのは多分にあるもので、決して否定されるものではないはずなんですよね。
でも、彼西野の場合はなんというかこう、徹底して他者から忌避される要素しかないので、なんかもう辛いw しかも、そんな忌避される……ぶっちゃけていうとキモがられているという事実をまったく彼自身が認識も把握もしてないことが、悲惨さに拍車をかけることになるのである。
何かの信念があって、自分のあり方に胸を張れる形でやっているのなら、周囲にキモチワルがられようと余計なお世話だし、感性の違いからくる嫌悪は住み分けによって回避できるものだし、その感性の違いによって虐げようというのなら、それは悪し、なんだろうけれど……。
自覚なく、勘違いで敷き詰められ、自尊心と自己肯定で他者との認識の違いに全く気づかず、理解しようとせず、自分のそのスタイルを無遠慮に振りまくというのは、やっぱり痛々しいしキツイものがある。
でも、考えてみると彼のその居た堪れない暴力的ですらある自分たちの価値観に疑いすら抱かない無神経さというのは、この作品において彼の周りにいるカースト上位の連中と一緒なんですよね。いわば同類なのか。違いと言えば、フツメンかイケメンか、という違いだけ。その格差が、西野のみを「キモイ」のカテゴリーに押し込めてしまうのなら、それもまた痛々しい惨劇ではあるのかなあ。ただ、同類であるだけに同情や共感のたぐいは一切湧かないのだけれど。
いやはや、まったくけったい極まる主人公像である。特異ですらある。これで、何も為しえない路傍の石のような存在だったら、その滑稽さもまたあんまり気持ちの良くないタチの悪いものになってしまいそうなんだけれど、西野の場合は比喩ではなくある業界においてはゆるぎのないナンバーワンであり、彼の滑稽な在り方の一側面が許され肯定される存在でもあるわけですね。それが一般日常生活ではまったく通用しないにも関わらず、それを区別せずに混同してしまっているが故の、西野の奇行と周囲からの辛辣な視線になってしまっているんでしょうが。
ローズの対応が異なっているのが、彼女が両方の世界に併存していて同時に西野よりもよっぽどうまく区別と適応が出来ている、のに西野の迷走っぷりにまったく気づいていない鈍感が合わさっているが故なのか。
いっそ、西野もローズの存在を裏側のみに限定せずに、一緒くたに混同してしまえばもうちょいうまくやれたかもしれないのに。いや、それが出来ない空気読めないからこその西野なんだろうけれど。
面白いのかと問われるとうむむと口ごもってしまうけれど、このもやもやとした感覚が妙にくせになってしまう、そんな変な無視できない存在感のある作品が本作でありました。
……何にしても、あの西野の顔面デザインは秀逸だと思う。なんかもう、強烈だものw あれをフツメンと言い張っていいものだろうか。