赫光の護法枢機卿 (ファミ通文庫)

【赫光の護法枢機卿(カルディナーレ)】 嬉野秋彦/新堂 アラタ ファミ通文庫

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神の法に逆らうことなかれ――神の武器プレロマを手に、悪神を殲滅せよ!!

悪神【マラーク】に抗う唯一の神の武器【プレロマ】を授けられ、めでたく護法枢機卿【カルディナ―レ】となったアルゾラ。だが初陣を無事に切り抜けた彼女に与えられた聖務は、輿入れの最中に行方不明となった法王の妹君の救出。しかし一緒に聖務にあたるキュリアロスは、人の心を解さない超合理主義の失礼な少年だった。過激にも思える彼の発言にヒヤヒヤするアルゾラだったが、実は彼は最強の枢機卿と言われる“黒の巡礼者”で――神に愛を捧げる枢機卿達の苛烈なファンタジーアクション!
また凄え主人公来たなあ。嬉野さんの主人公の多くは正論でぶん殴ってくるタイプなのだけれど、このキュリアロスは合理性という意味ではこれ以上なく正しいのだけれど、人間倫理や社会規範、基本的な善悪基準など人間が人間であるための最低限のルールや社会性、或いは生物としての欲ですら放棄しているような、完全にぶっ壊れているタイプなんですよね。
ただ、過酷な戦場においては彼の人心を無視した合理性というのが案外無視できない「正解」であることが侭あって、簡単に切って捨てられないのである。何より、そのべらぼうな強さが、無私さが強烈な存在感となってそそり立っている。ヒロインのアルゾラは、それこそ成り立ての護法枢機卿でありしかも、長年修行してきて護法枢機卿になった類いではなく、突然プレロマに選ばれて急遽護法枢機卿に就任した「素人」さんなので、ただでさえ足を引っ張る方なのでキュリアロスに何か言えるもんじゃないんですよね。
それでも、言ってしまうところが彼女の図太さであり、魅力なのでしょう。
キュリアロスだけじゃなく、他の護法枢機卿たちも一癖も二癖もありそうな人たちばかりの中で、アルゾラは……まあこの娘も癖のあるタイプですわね。ただ、いい意味でも悪い意味でも感性が普通であり、だからこそ実家と軋轢を催して家を飛び出したわけで、なにかとズケズケとした物言いをしてしまうあたりも大したもんなんですよね。それに、わりと身の程は理解している方でオカシイと思ったことはちゃんと言うけれど、わからんこと出来ないことについては聞き分けが良いどころかむしろ自分から聞いていくような積極性もあるし。このガンガン行く属性は面白いなあ。
そんな彼女だからこそ、誰もが触れることも関わることも避けるキュリアロスに対しても、結構ズケズケと言っちゃうんですよね。彼にそれが届いている様子は残念ながらさっぱり見当たらないのですけれど、彼の異常性というのは後天的なものではなく、幼少期に故郷を家族ごとマラークに殺戮され、その際にプレロマに見出されて、まともな見識が形成される前の幼少の頃から戦い続けた、或いはそう育てられた弊害みたいなものなんですよね。あとから歪んでしまったものを治すのってかなり難しいのですけれど、まだ大人ではない年齢のキュリアロスくん。今なら横からワイワイうるさく言ってくる新たな雑音が、彼の在り方に影響を与えていく可能性というのは無きにしもあらず、なんですよね。
ラストにアルゾラが目撃してしまったモノが、果たしてアルゾラの意識に何を働かせるのか。ここで無視できないのが彼女っぽいので、恐らく積極的に関わっていくことになるだろうキュリアロスとのコンビがどう変化していくのか。嬉野さんの作品の主人公・ヒロインカップルのあの性格の不一致からの関係の変化は毎回楽しみですので、この二人もどうなっていくのか非常に楽しみ。

嬉野秋彦作品感想