
【イエスタデイをうたって 7】 冬目景 ヤングジャンプコミックス
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……え!? あれ、付きあおうって事だったの!? そういう趣旨の発言だったの? 読んでてしばらく気がつかなかったよ!
うーん、当人たちの間ではちゃんと意が通っている事は認めるんだが、その告白はどうにもはっきりしなさすぎなんじゃないだろうか。以心伝心も良いけれど、もっとこう、きっぱりと口に出して、はっきりと宣言することでお互いの意識の上にも植え付けられるというか、刻まれるものがあると思うんだ。
その点、この告白は勇気を振り絞った一歩なのかも知れないが、もしかしたら禍根を残してしまったんじゃないだろうかと危惧してしまう。折角、付き合いだしたにも関わらず、どうにもぎこちない二人の関係を見ていると、特にね。
ただの友人同士だった頃はもっと気の置けない関係だったのに、より真剣に相手のことを考え出すと距離感を掴めなくなってしまう、というのはどうしてなんでしょうね。自然にとりあっていた人間関係の距離を、意識的に図ろうとし始めると、不器用な人はうまくいかないって事なんだろうかねえ。
しかし、榀子とリクオが関係をはっきりさせたはずなのに、どうしてこうもモヤモヤが晴れないんだろう。結局、曖昧だった関係がはっきりしたところで、それだけで何もかもが解決するなんて幻想に過ぎないんだよね。まあ、これに関しては榀子とリクオの二人がモタモタしすぎているのが明らかに原因なんだけど。ややこしいことになってたのって、二人がはっきりしなかったからじゃなくって、いろんな人間関係が錯綜したまま濁されていた所にあるわけで、周りを置いてけぼりにしてふたりだけこっそりとくっついてしまっても、何の解決にもなっていないんですよね。面倒くさいことになってるなあ、ほんとに。結局のところ、まだ榀子もリクオも今の人間関係を壊す勇気を持ててないんだなあ。そりゃ、痛いほど分かるけど。今まで通りで居られないって、思っているよりもずっと辛いししんどいし、心折れる事だもの。
大学生を通りすぎてもう社会人である二人が、付き合いだして未だにキスも儘ならない、というのは決して二人が初心だから、という理由に留まらないと思うんですよね。関係を後戻りできないほど致命的に変えてしまうことを恐れているのではないのだろうか。
それでも、付き合っているという事実がある以上、それが知られることでどうしようもなく現状は壊滅していく。とうとうハルがふたりのことを知ってしまったことで、さてどうなるか。
重苦しいなあ。