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エンターブレイン

未実装のラスボス達が仲間になりました。★★★   



【未実装のラスボス達が仲間になりました。】  ながワサビ64/かわく エンターブレイン

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新型VRMMO“eternity”の第2陣テスターとして選ばれた修太郎。ランダムスキルで“ダンジョン生成”を得た彼は、さっそくスキル発動する―時同じく、mother AIの暴走によりプレイヤー達はゲーム内に閉じ込められ、ゲームの死=現実の死、となるデスゲーム世界になってしまった。デスゲーム開始と同時にスキルを発動した修太郎は、座標バグにより実装予定の最終エリア“ロス・マオラ城”にいた。そこにいたのは、世界を統べる予定だった六人の魔王。スキルによって魔王並みに強いスライムを誕生させたり、モンスターの城下町を楽しく発展させたりする修太郎に、六人の魔王たちは徐々に惹かれていく。そうして魔王たちの加護を得た修太郎は、当初の目的である冒険を始めようと始まりの街に戻るのだけれど―。魔王達と楽しくデスゲーム世界を切り拓く、ある少年の成長冒険譚開幕!7話+書き下ろし「死族の魔王」。
未実装って、まだ実装していない待機状態なのか、それとも実装する予定がないままお蔵入りしていたのか、どっちなんだろう。
いずれにしても、固有の意識があるにも関わらず、ラストダンジョンに閉じ込められたままだった、というのは牢獄みたいなもんですよね。
でも、ラスボスが6人もいるというのはどうなんだろう。というか、ラスボスって比喩なだけで別にゲームのトリを飾るボスキャラではないみたいだけれど。強いて言うなら裏ボス? 或いは野生の野良ラスボス。そういうのって、自分の世代だとまず「神竜」と「オメガ」のイメージになってしまうのですが。
ともあれ、そんな彼ら魔王たちを眷属にしてしまった修太郎くん。彼の情報、ほとんどないまま話が進みだしてしまったのでわからなかったのですが、彼って中学生らしいのだけれどどうも中学生は中学生でも成り立て。まだ一学期かくらいのちょっと前まで小学生だった年齢みたいなんですよね。
どうにも言動が幼いというか純朴というか。最近のこの界隈の小説は、小学生だろうと幼稚園児くらいの年齢だろうと関係なく大人仕様の言動をするのが普通みたいになっているので、普通の小学生ってどんなだっただろう、とわかんなくなってるのですが、だいたいこのくらいの年齢の子供というと、同時にあれこれと並列的に考える事よりも取り敢えず目の前のことに夢中になっちゃいますよね。
修太郎くんも、最初はデスゲームがはじまってしまった事に怯えていたものの、次にわけのわからない魔王たちを眷属にしてしまって途方に暮れて、次に色々と与えられてしまった報酬やスキルを使ってあれこれ試してみることに夢中になって、と取り敢えず目の前のことに頭がいっぱいになってしまうところや、ラスボスたち相手にも不器用に仲良くなろうとするところなど、微笑ましい子供っぽさが随所に見られて、なんだかほっこりしてしまいました。
絶対戦力とも言えるラスボスたちを眷属にしたことで、如何用にも彼らを利用して利益を得たり、名声を掴んだり、果ては好き勝手なんでもすることが出来るだろうに、そういう恣意的な発想がそもそも生まれずに、街づくりなどゲーム的な要素を夢中になって遊んで……本人感覚ではこれゲームで遊んでる感覚なんだろうな。まあそういう姿は純粋に楽しそうで、ラスボスたちもあんまり不埒なことは考えてなくてなんだかんだと修太郎に従う気満々なので、随分と平和な空気感になっている。
こちらは、死者の女王たるバンピーが実質ヒロイン的な立ち位置なのかしら。

一方で、他の一般プレイヤーたちはというと、こちらはこちらで真面目に純粋にデスゲームに巻き込まれ阿鼻叫喚の真っ最中。いや、なんか随分真っ当にデスゲームに立ち向かってるなー、と逆に感心してしまった。これだけ真面目にデスゲームしてくれると、運営の方もやった甲斐あったんじゃないだろうか。
有力ギルドのリーダーから、巻き込まれたプレイヤーたち全体のまとめ役として立ち上がったワタルを中心に、なんとか生き残り戦略を建てていくプレイヤーたち。
でも、一致団結して対処しようという姿勢に背を向けて、個々に先のフィールドに進んでいってしまうプレイヤーたちもいれば、戦闘に参加せずに引きこもるプレイヤーもあり、とまあ案の定立ち位置からなどの揉め事が増えていってしまうわけだ。
それでも、最初からほぼ滅私奉公的にプレイヤー全体を助け生き残らせようというワタルを中心としたギルドの献身的な働きは、なんとかセーフティーネットとして機能して、士気の瓦解、パニックの拡大を防ぐことに成功してるんですよね。これは控えめに言ってもよくやったよなあ、と感心してしまいます。
それでも、体制が安定する前に安全フィールドのはずの街自体を崩壊に追い込むイベントを早々に盛り込んでくるあたり、運営の殺意相当高いんじゃないだろうか、これ。
これ、修太郎君というイレギュラーがなかったら、かなり高い可能性でギルドの首脳部壊滅していたわけですから、早々に安全なはずのフィールドがなくなり、プレイヤーたち壊滅状態に陥って一部の戦闘職しか生き残れなかったんじゃないだろうか。
この運営、ゲームバランスとか考えてないな、さてはw

ゲーム初心者ながら、今回のイベントの攻略の鍵となったミサキの、無力でありながらみんなの為に戦おうとする意思が、修太郎との出会いを生んで壊滅の危機を救ったように、あっちこっちで一人ひとりが生き残るために必死に戦う様子が描かれている、あとがきでも書いていたけれど群像劇なんですねえ、これって。
でも、修太郎以外のプレイヤーってほんとにギリギリで必死に戦っているので、空気としては悲壮感すら漂う切羽詰まったものなわけです。
修太郎サイドのあの修太郎の気質も相まってほのぼのとしているのんびりとした平和な空気感とは、寒暖差がありすぎるんですけれど、これって修太郎の戦力が極まりすぎてて彼が手助けしたらあっという間にデスゲーム崩壊してしまうんですよね。何気にこっちもゲームバランスがヤバいことになっているのだけれど、果たして修太郎サイドと一般プレイヤーサイド、どう絡めていくんだろう。
あんまり修太郎が前に出てきてしまうと、ほんとにバランス崩れてしまいますし。そのあたりのお話の進め方は気になるところですねえ。


悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。1 ★★★☆  



【悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。1】  丘野 優/TEDDY エンターブレイン

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「心を入れ替えて生き直そう」ーーそして始まる貴婦人無双!!!

国家転覆を企てるほど悪逆を尽くした公爵夫人エレインは自らの娘によって命を奪われた。
死の間際、大罪を後悔するも時すでに遅し。公爵家は滅び、その悪名は時間と共に忘れられるはずだったーーしかし、気がつけばエレインは出産中で!? なんと長男を出産した30年前に時間が巻き戻っていたのだ。
嘘と暴虐に塗れた人生を改めるため、
我が子に親殺しをさせないため、
前世の経験と知識を総動員したエレインの快進撃が始まる!!
人妻! 主人公、夫のある人妻である。しかも子持ち! 奥様、子持ちの人妻にも関わらず、そのボディスーツはちょっと攻めすぎじゃないでしょうか、大変結構!
国家転覆企てて王家に反逆したけれども大失敗したので、死に戻った今回はもっと上手くやろう。じゃなくて、反省して後悔して今度はもっと穏やかに家族を愛して生きよう、となるのか。
いや、わりと盛大に心変わりしすぎじゃないだろうか。かなりの悪逆非道で政敵を排し、障害となる者たちを謀略で抹殺し、と相当な悪役ムーブを貫いた人生を送っているにも関わらず、今際の際にまるで憑き物が取れたかのようにそうした自分の人生を悔いているんですよね。
それだけ、自分の娘に親殺しをさせてしまった事がショックだったのか。それとも本当にナニカに憑かれていたのか。
新たな人生でも、エレインは大逆罪の自分を討ち果たす役目を負わされた末娘リリィに殺されないようにと、史上に残る天才大魔導師だったリリィに対抗できるようにと、未来の技術と経験を生かして自分を鍛え上げていくのです。……いや、これ真っ当に生きてたら普通娘と殺し合いにはならないんじゃないだろうか。何気に、いつか殺し合いになるかもしれない、という前提がエレインのどこかにあるみたいなのですけど。
なにか、運命の収束みたいなものがあると感じ取っているのだろうか。
でも、死に戻ったエレインの行動によって歴史は前回から大幅に変わっていってるんですよね。本来なら死んでいるはずの人が生きていたり、敵対していた者同士が仲良くなっていたり、エレイン自身も前回は疎遠だったり敵対することになった相手と交友を持つことになったり、と。
今の所、そこに改変された歴史の揺り戻しみたいなものは見えないのだけれど、エレインは油断せずに自身の研鑽を怠らないし、魔導具の開発や事業の拡大など周りの環境の強化に勤しみ続けるのである。
……全然、大人しくなってないどころか別の意味で突っ走りまくっている気がするんだが、二度目の人生。
ただエレイン自身、二度目の人生を見ていると冷静で他人の心情も察することの出来る深い人格の持ち主で、情にも厚く何より家族への愛情に満ち溢れた人物なんですよね。野心家だったり権力志向だったり、という素振りもなく、なんで前回の人生ではあんな大逆罪に走り、家族をも利用して、他人を陥れることも厭わない人物になったのか、ちょっとわからないんですよね。
前回も家族への愛情は変わらなかったけれど、その愛情の扱い方を取り違えてた、とはエレイン自身が自戒しているところだけれど。
だいたい、彼女の周りに居た人達。友人知人、旦那の交友関係やファーレンス公爵家の臣下たちなど、有能である以上にまず人格者であり、心からエレインの事を心配してくれるような人達ばかりなんですよね。
特に親友のセリーヌなんかは、エレインの暴走を案じて彼女の野心の最大の障害として立ちふさがりながらも、最期まで親友としてエレインを諌め彼女を止めようとしてくれたほどの人で。
エレイン当人も旦那のクレマンも、周りの人達もこんなにマトモなのに、本当になんでエレインが大逆を犯すに至ったのか、そんな野心を抱くに至ったのかわからないんですよね。
エレイン当人が、なんであんな事をしてしまったんだろう、と考えているくらいですから、ちょっと異常ですらある。これって、何か外的な要因があったんだろうか。それこそ洗脳とか思考誘導とか、何者かの意思に取り憑かれたとか。
だからこそ、エレインも無意識に警戒か危惧が残っていて、この二度目の周回で自身を含めた周囲の強化に勤しんでいるとか。未来予知能力者であるセリーヌに、死に戻りや前回の自分の所業なんかを打ち明けているのも、セリーヌが誰よりも信頼できる人物だからというだけでなく、自分以外の外の視点があった方が良い、という考えもありそうですし。
幾らなんでも、娘リリィに殺されないように、というだけでは頑張りすぎなんですよね、エレイン。
……いや、単に社畜気質というか、働き出すと止まらないタイプ、という可能性もあるのですが。
なんやかんや、働きすぎで家庭を疎かにしだして、ついに旦那のクレマンにちょっと君まとまった休み取りましょうよ、と強引に長期休暇とらされたくらいですしね。まだ幼い長男もほったらかし気味でしたし……だいたい、まだあと三人子供産む予定なのにこの奥さん、働きすぎで家帰ってこないものだから子作りとか全然してないじゃん! 大丈夫!? 予定通り二男二女産めるの? そもそも末娘のリリィはちゃんと生まれてきてくれるの!?
奥さんとラブラブのはずだし実際ラブラブなんだけれど、なんでかあんまり構ってもらえない旦那さんがちょっと不憫である。まあ、前回の人生ではお互い愛し合っているにも関わらずだいぶすれ違ってしまって、ちゃんと表立って愛情を向けて貰えなかったらしいので、それに比べれば大変仲睦まじい夫婦関係になっているはずなんですけど、旦那としてはもうちょっとイチャイチャしたいだろうなあ、これ。
ただ、結婚当初から長男出産まではなんでかエレインはやさぐれていたらしく、前回の人生ではどうやらそのあたりから夫婦関係すれ違ったまま、エレインの野心の暴走がはじまってしまったみたいなんだけれど、なんでエレインがやさぐれていたかについてはなんかエレイン語ってくれないんですよね。
しきりと、その頃のことは反省しているにも関わらず。いったい、彼女に何があったんだろう。どうやらそこが重要なポイントの一つではあるみたいなんだけれど。

ともあれ、前回の色々と踏み外してしまった人生を後悔して、新しい人生ではできるだけ周辺との関係を良好に保ちながら、特に権力など求めず、でもわりとガンガンと自分と公爵家の強化に勤しみ続けるエレインの快進撃。かつての人生では袂を分かった人々ともより親交を厚くしながら、大体においてWin-Winの形で進んでいくので、実に痛快な物語となっている。
果たして、今のエレインに立ち塞がることの出来るナニカは存在するのだろうか。
珍しい子持ち人妻主人公でありましたが、なかなかに派手に立ち回ってくれる面白い作品でありました。続きが楽しみ♪

主人公じゃない! 02 ★★★☆   



【主人公じゃない! 02】  ウスバー/天野 英  エンターブレイン

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能力差5倍!? 脇役 VS 「序盤、中盤、終盤最強」の剣聖

素質看破、無限骸骨トラップ、囮召喚装置……ゲーム知識を駆使したレクスの手法によって、常識外れな速度で成長していくラッドたち新人パーティ。
だが、その総仕上げに挑んだ「世界一決定戦」で待ち構えていたのは「序盤最強」のレクスを超える「真の最強キャラ」で……!?

現実で無限に敵湧くフィールドでレベル上げ、って出来るのかー。
いや、実際にはゲームでやってたレベル上げの多くはゲームみたいに上手く行かなかったのだけれど、その中から何とか実用に耐えられるものを検証の上で採用して、という形で実現しているのですね。
シナリオの展開でもそうだけれど、ゲームが現実化したからと言ってすべてがゲーム通りに進行するのではなく、ゲームでは可能だったことが不可能になっていたり逆にゲームではシステム上不可能だったことが、自由に動き回れる現実だと可能になっていることがあったり、とその辺の現実とゲームの可能と不可能の範疇のバランスが非常に高く取れていて、読んでても引っかかりが少ないんですよね。
レクスがゲームと同じつもりでやらかしてしまい、失敗してしまうというケースもありますし、ゲーム表現と現実とのすり合わせがうまいんだなあ。
そんな中で自分たちよりも明らかにレベルの高いダンジョンボスを、ゲームさながらにハメ技で傷一つ負わずに倒してしまうシーンは、苦笑交じりながら面白かったです。
ゲームではNPCが不規則な行動を取ってしまうためにランダム要素が強かったハメ技が、現実側ではパーティーでしっかり個々のメンバーと信頼関係が結ばれていて意思統一が取れているために、余計な行動を取る人間がおらず、安全にハメられた、というのはなんともはや。
まあ現実は現実で不確定要素があったり、思わぬミスがあったりという事もあるので結局完璧に安全という事はなかったのだろうけれど。

そんな風にズルにも思える強化策を取り続けるレクスだけれど、彼の教授する攻略法や強化法は効率の最適化というもので決して楽して強くなるものではないんですよね。いや、楽しようとすれば楽できるんだろうけれど、コードをイジってステータスの数字を変更するみたいなチートではなく、ちゃんと鍛えて強くなる方法ですからね。ハメ技はシステムの穴をついたみたいなものだけれど、リスクはあったわけですし。
まあレクスの思惑以上に、ラッドたちは真面目なものだから彼に提示された訓練法にレクスの思惑以上に真剣に向き合って、数値だけをアップさせるのじゃない自力からお仕上げていくような地道な強化に繋がっているので、その成長も大きいのでしょうが。
それでも、あっさり2巻でラッドたちがレクスのステータス数値を上回ってくるとは思いませんでしたが。スペックだけなら、もうレクスよりも強いのかw
それでもこの世界で認知されている戦闘システムを越えたプレイヤースキルと知識を駆使するレクスは、戦闘巧者としてまだまだ新人で戦闘のイロハを学びきれていないラッドたちでは、遥か天上にいる英雄に思えるのでしょう。レクス自身、その憧れを裏切るようなこすっからい真似はしてませんしね。
結構内心卑屈だし、コンプレックスも強いし、ラッドたち才能あふれる若者たちに嫉妬を滾らせているレクスですけれど、その教育は熱心で誠実ですし、ついつい面倒を見てしまうところなんか、教えて貰う側もレクスがそれだけ心砕いてくれているというのが伝わるから、慕うのも無理ないんですよね。
彼の誠実さは、今回の大きな壁だった剣聖相手にも示されていて、単にゲーム感覚だけだったら彼に勝ったあとにあんな塩を送る真似は思いつきもしなかったでしょうからね。与えてもらったら、少なくともそれに比肩するものを返したい、と今以上に彼に強くなるためのシステムブレイクのヒントを与えてしまうとか、ほんとそういうところだぞ、という感じで。
しかし、主人公じゃないと自重し逃げ腰にもなりながら、いざというときには逃げないし、度胸も据わって思い切るあたりが、このレクスの中の人の資質だよなあ、と思う所だ。大人のくせにガキみたいなピチピチした心を持ってるんじゃないだろうか、この人。まあそういう粋人じゃなかったら、高くて売れなかったゲーム機を買い揃えて夢中になって攻略したりとかしないですわなあ。
彼ならたとえ本当の現実だとしても、必要ならバカ高い高級品を使い潰すことを躊躇わなかったんじゃないだろうか、と思えてくる。
同時に、その必要な時を見極めるのも上手いよなあ、と。単に意地や見栄だけで不必要に超高級アイテムを使い潰したりはしない強かさもあるんですよね。
まあ、単純に負けた場合面倒見てる若手の女の子の身の安全がヤバイ、という段階で勝つために躊躇うことはなかったかもしれませんけれど、ちゃんと得るべきものは得ているあたりが抜け目ないんですよねえ。

さて、これでレクスの行き止まりだった成長の壁を突破できたわけですけれど、だからといって順調に波に乗れる、というはずもなく。また不用意に名声があがってしまったために余計なトラブルも舞い込んできそうですし、果たしてこれからもシナリオ管理や成長管制ができるのか。
あと、若手の中心であるラッドの成長はわりと丁寧に描かれているのですけれど、それ以外のメンバーはあんまり掘り下げた描写も少ないので、もう少し描いてほしいかなあ。それとレクスの妹のレシリアのポディションもまだ中途半端でどういう立ち位置なのか微妙によくわからんのですよねえ。ラッドのパーティーとは一歩距離置いていますし、レクスの相棒というわりにはレクス単独行動が多いですし。レシリアがヒロイン枠ではあるんだろうけれど、もうちょっとハッキリ立ち位置がしてくるとありがたいなあ、と思ったり。


聖女様は残業手当をご所望です ~王子はいらん、金をくれ~ ★★★☆   



【聖女様は残業手当をご所望です ~王子はいらん、金をくれ~】 山崎 響/伊吹 のつ エンターブレイン

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教皇・王子・ギャングにお嬢様。みんなまとめて叩きのめします!
儚げな美貌と強大な聖魔法を持つ心優しき聖女ココ・スパイス……というのはあくまで表の顔。素顔の聖女様は引退後を睨んでちまちま貯金に励む超しっかり者だった。それもそのはず、ココはもともとはストリート・チルドレン。「他人をあてにせず、自分の力で食って行く」その矜持は聖女になった今でも変わらない。教皇の威光? 王子様からのラブコール? ギャングの魔の手? どんな相手だろうが、気に喰わなければありとあらゆる手段で叩きます!

「ジジイ、毎年毎年一時金でごまかしやがって! いつまでも日給銅貨八枚でこんな仕事をやっていられるか!? 今年こそベースアップを要求する!」
「いい加減信仰心を身に着けんか聖女! 日給月給の聖職者なんておぬしだけじゃ!」

教皇だろうが王子だろうが遠慮なし! いつだって自分を忘れない、規格外聖女ココちゃんのドタバタ日常コメディ登場!

日給銅貨8枚って、完全にブラックですよね!? と、作中で描かれた貨幣価値からしてもこれ日給じゃなくて時給換算じゃないの? という薄給ですからね。
むしろ、聖女様の春闘って正当行為じゃないの? と思う所なのだけれど、これ教皇の爺さんの悪意とかじゃなくて、ちゃんとした教会の事情があるらしい。
なんだかんだと、この僅かな小遣いの金額で受け入れているあたり、ココって別に金にがめついとかじゃないんですよね。本当の守銭奴だったら、ココのあのイイ性格と才覚なら金の集めようなんて幾らでもありそうですし。傍若無人で頭の回転が早く、多分聖女として召し上げられずそのまま路上ぐらししていても、路地裏の顔役の一人にでも成り上がってたんじゃないか、というアグレッシブさからしても、教会の運営にいっちょかみして集金システム作り上げても不思議じゃない悪党の素質はありそうなんですよね。
それが、与えられた小遣いだけをコツコツと貯めて、18歳での聖女という役割の年季明けに備えているあたり、あんまり無茶無道はする気ないんだなあ、と。
あれだけ自由に振る舞って、教皇はじめとした教会の偉いさんたち相手にも権威をもろともせず言いたいこと言って行儀作法なんざ知ったこっちゃねえとばかりにふんぞり返っているけれど、別に教会に対して反逆してるって訳じゃないんですよね。むしろ、明日をもしれないストリートチルドレンという身の上から、衣食住ちゃんと面倒見てくれる聖女という立場に拾い上げてくれた教会にはちゃんと感謝してるっぽいんだなあ、これが。
なので、聖女という役割も放り出すことなく、本性表すのは限られた身内の前だけで外ではキッチリ猫かぶって立派な聖女として振る舞っていますし、あれで教会への帰属意識はちゃんとあって客観的に見るとかなりちゃんと聖女やってるんだよなあ。
まあ、それも12年聖女やったら引退できる、という年季明けの制度があるから、拾ってもらった恩返しもそれで返し終えて、あとは自由! 娑婆への脱出! と目論んでいるようですが。
その普段からの大暴れっぷりから、魔王のように畏れられているココですけれど、教皇様はじめとして叱り怒りながらも、わりとみんなそんなココに順応してるというか、ある意味慣れちゃってるのが面白いw
もちろん、その低い出自もあって蛇蝎のように嫌っている層もあるんでしょうけれど。ココは喧嘩売られたら百倍返しが基本みたいな所がありますからね。変なちょっかい掛けて痛い目見た連中は多いんじゃないでしょか。作中でもモノ知らずの新人貴族娘に絡まれて、逆に徹底的に泣かす! をやらかしていますし。完全に周囲の反応が、触らぬ神に祟りなしのヤバイ奴に喧嘩売りやがったぞあの娘、でしたからね。むしろ周りがココにしばかれる娘相手に「ざまぁ」だったの、色んな意味でココに毒されてやしないでしょうかw
わずか6歳のときまで路上で逞しく生きてきたココ。そこから聖女として召し上げられ、今14歳。ということは、既に路上生活していた時期よりも聖女として生活してきた日々の方が長くなっているにも関わらず、覚えた行儀作法や淑女教育は身につかず……いや、猫かぶってる時の様子を見るとほぼ完璧に身についているはずなのに、それがあくまで外面にしかなっていないの。三つ子の魂百まで、というべきか、登場人物みんなが思っているように、生まれ育ちゆえにあの性格根性になったんじゃなくて、あれ生来の性格だろう!? というのは間違ってないんでしょうね。
一方で、その幼児時代の親に捨てられ地べた這いずって生きていたストリートチルドレンの頃の辛さ、世間の冷たさ、底辺の生活の酷さはココの中で今も忘れられることなく息づいていて、ふとした瞬間、含蓄ある言葉が飛び出したりするんですよね。
一時、教会を飛び出したときもあっさり下町生活に馴染んでいましたし、彼女の魂は今も路地裏にあるのかもしれません。
だから、聖女の年季明けたら下町で暮らす気満々なんですよね。この国の王太子セシルとの結婚話があるにも関わらず。
このセシル王子も、ココの本性をがっつり知っている人物にも関わらず、むしろそのイイ性格なココを面白がって嫌がる猫を構うみたいにして毎度からかってくるココの天敵なのですが……。
いや、ココ様ってばけっこう満更じゃないじゃないですかw
あれだけ毛嫌いして面と向かって罵倒して追い払おうとしながら、実は全然嫌いじゃないどころか、あのイイ性格なところ気にいっていて、満更じゃないって可愛いか!
本気で王子と結婚する気はないものの、王子が自分に構ってくるのは聖女と結婚するという政略とココの本性を面白がっているだけで、女性としては見られていないんだと期待しないようにしているとか、可愛いか! 王子関連が唯一、ココの可愛い面が見られる所っぽいんですよねえ。
まあ、マジで王妃になるの嫌がってるんですが。聖女と違って年季明けはありませんし、一生自由が束縛されてしまうわけですから。
果たして、王子は甲斐性見せれるんですかね、これ。王子も軽薄に見えてちょっと踏み込むのビビってるところあるみたいですし。王子とのラブコメももうちょっと見てみたいですよ♪

主人公じゃない! 01 ★★★☆   



【主人公じゃない! 01】  ウスバー/天野 英  エンターブレイン

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「ただのサブキャラ」がゲーム知識で世界を塗り変える!

女の子をかばって車に轢かれ、「俺」はRPG世界の「レクス」に転生していた。
あらゆる分野の技能を備えたイケメン・レクスだが彼は序盤のお助けキャラ。
低過ぎる成長率、残念過ぎる固有技、器用貧乏過ぎるステータスでレクスが無双出来るのは最初だけ。
あっという間に役立たずになってしまう危険性を前に俺は決意した。

「世界を救う」ことも「魔物との命懸けの戦い」もゲームの主人公様に任せて、のんびりしよう!

これは「主人公」を探す凡人が、なんだかんだで世界を救う英雄になってしまう物語

ゲーム序盤の最強キャラが、中盤以降なんだか使えなくなってきてお役御免、後方待機、予備役入してしまうのはゲームあるあるだよなあ。
というわけで、RPGのそんな序盤のお助けキャラへと転生してしまった主人公。いや、主人公じゃないのか。タイトルがタイトルなので主人公という言葉使いづらいな、これ。
というわけでゲームの主人公じゃないけれど、この物語この作品の主人公はこの序盤最強キャラのレクスである。最強キャラなんだけれど、無双できるのは序盤だけ、というだけあって兎に角ステータスを中心にショボい要素が満載で、あんまり最強キャラという感じがしないのは上手いなあ、と思うところ。実際、序盤の負けイベントでレクスではどうやっても太刀打ちできないような敵キャラもどんどん出てくるので、むしろレクスの低すぎるポテンシャルでどうやって不可能を可能にするか、という雑魚キャラ縛りプレイ的な展開の方が多くて、これがまた面白い。
それにしても、レクスの成長率はすでに終わってる状態だし、そもそもの初期の素質が周りの特別ではない冒険者たちと比べても貧相を通り越して酷いの一言で、周りの有望さと自分の悲惨さを比較してしまってのたうちまわるレクスさん、可哀想だけど面白すぎるw

これは、自分を主人公だなんて、間違っても勘違いできないよなあ。

でも、実体がどうあれ内実がどうあれ、レクスという人間の内面がどうあれ、彼の姿は周りの、特に冒険をはじめたばかりの少年少女を中心とした冒険者パーティーの面々からしたら、レクスこそが勇者であり主人公なんですよね。

自分は主人公なんかじゃない。

それを、主だった登場人物みんなが痛感して、自分は特別ではない事を噛み締めている。でもそれで挫折して膝を折ってしまうのではなく、レクスも、そしてラッドたち若き冒険者たちも諦めること無く自分が主人公になれない世界でも強くなる事を目指す。それを彼らに促したのが、それぞれお互いなんですよね。
ラッドたちは、レクスという世界のシステムを覆す可能性を見せてくれる憧れの冒険者の姿に心を滾らせ。
レクスたちは、ラッドたち初心者がひたむきに頑張り、自分の訳のわからないだろう指導についてきてくれる一途さに魂を震わせられて。
自分は主人公じゃない、という絶望を乗り越えるのである。いやあ、面白い。

レクスは現状ではレベル50という序盤の街では突出したレベルの持ち主なんだけれど、実は同じレベル50まで成長する他のキャラと比べたらステータス的にはせいぜいレベル30相当。そして、ここからも殆ど成長の余地がない。
現状で既にイベントボスだけれど、レクスではマトモに戦っても勝てないような敵が出てくる状況なので、ここで行き詰まっている、と言ってもいい。
ならばレクスが武器にすべきなのは、この世界の常識にはない外から来たゲームプレイヤーの持つ埒外のゲーム知識。ゲームシナリオの方はかなりぐちゃぐちゃになって早々に役に立たなくなりつつあるので、彼が活用しようというのはプレイヤービルドの知識だ。この世界の人間が経験則や曖昧な勘で行っていて効率的とは程遠い、場合によっては成長が行き詰まってしまうレベルの上げ方をしている中で、最適にして最強のビルドを素質の優れたラッドたち初心者パーティーに叩き込んで、彼らを世界最強のパーティーへと育てていく、という目標。
これ、ゲーム知識をふんだんに利用したものではあるのだけれど、意外とその訓練模様はゲームゲームしたものじゃなくて、スポーツ選手に施すような成長戦略っぽいんですよね。
スポーツ医学やスポーツ人間工学なんかが発展した現代では、必要な部分だけ伸ばすための練習法、みたいなものがあるけれど、満遍なくすべてを鍛えるのではなくそれぞれ個人の特性に合わせた、ジョブに合わせた最適なビルドを組んでいく、というのはむしろ生々しい生きた訓練法という感じがして、このへんの描写は面白いなあと思うと同時にそんな風に感じさせる所が上手いなあ、と思うところでした。
ラッドくんの、レクスへの捻くれた憧れがまたイイんですよね。可愛い。
顔を突き合わせているときはおっさん呼ばわりで突っかかってばかりなのに、陰では師匠とか読んでるの生意気なのに健気で可愛すぎやしないですか?w
本来のシナリオでは死んでしまうはずのレクスの妹の、レシリア。この娘だけが唯一、レクスの中身が実の兄とは別人と知っている、ある意味レクスの相棒キャラなのですがこの娘はブラコンを拗らせているのか、それともレクスの中の人に対して拗らせているのか。なんかややこしいことになってるなあ。レクスの肉体の方は実の兄のもの、というのもややこしいのを加速させている気がするぞw


108回殺された悪役令嬢 上 すべてを思い出したので、乙女はルビーでキセキします BABY編  



【108回殺された悪役令嬢 上 すべてを思い出したので、乙女はルビーでキセキします BABY編】  なまくら/鍋島 テツヒロ エンターブレイン

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全部あわせて108回悪役令嬢人生を繰り返したスカーレット。のちに冷酷な女王として国民を恐怖のどん底に叩き込むことになる赤髪赤瞳の公爵令嬢である。スカーレットは同じ人生を、何度も何度もループしていた。いずれの人生もその最期は、必ず惨殺される結末。やり直すたびに、前の人生記憶はすべてリセットされて。しかし109回目の人生で偶然すべての記憶を取り戻したスカーレットはループからの脱却をはかる。スカーレットは赤い呪いの鎖を断ち切ることができるのか?

いやこれ、スカーレット今の所あんまりなんにもしてなくない!?
現状まだろくにハイハイも出来ない赤ん坊だから仕方ないのだけど、折角前世までの記憶を取り戻してみたものの、それ特に活用する場面ないですよね!?
スカーレットがやった事と言えば……生まれてすぐに乱心した母親に投げ殺されそうになったのを、超必死にしがみついて抵抗したこと。思えば、この赤ん坊のくせにやたらと必死こいて生き足掻いた事こそがすべてをひっくり返すきっかけになったのだから、スカーレット何もしてない説はさすがに言いすぎか。
これによって、見ているだけだった暗殺者ブラッドが面白がって介入するという今までにない歴史が生じ、これまでスカーレットが経験してきたすべての歴史でスカーレットを産んだ直後になくなっていた母親が死なずに生きている、という結果が生まれるんですね。
これこそが最大のターニングポイントだったんだろうけど、これ以降特にスカーレット何もしていないにも関わらず、これまでの歴史で彼女が乳幼児の時期に起こっただろう様々な悲劇惨劇、いずれスカーレットを悪逆の女王へと登極させることになるだろう彼女の人生に根付いていた不幸の芽が、片っ端から覆っていくのである。
そもそも、生まれたばかりの自分の子供をヒステリーから投げ殺そうとした母親が生き残ったとして、果たして歴史が大きく変わる要素があるのか。産後鬱とかノイローゼ気味からくる突発的衝動的な行為だったのなら大いに同情の余地はあるし、母親本人冷静になったらまた変わってくるのかな、程度に思っていたら、母親の精神的な不安定さから大きな陰謀が関わっているわ、彼女の追い込まれ方がちょっと尋常でなかったとか、実はお母さんチートキャラだったんですよ、という怒涛の展開が待ってたんですよね。
こうしてみると、スカーレットの暗澹たる人生ってのはほんのちょっと力や願いが及ばずに本来の能力や人間関係が活かされず封殺されたことによって、不幸のドミノ倒しみたいになってたのが実情だったんですよね。
その最初の駒が喪われず、さらにブラッドという血流操作という名の意味不明な万能能力の天才少年が最大の味方としてスカーレットたちを守ってくれることから、ほんの少し足りなかったところが見事に片っ端から爪先が際に届くことで全部が好転していってるんですよね。
逆にスカーレットの両親をはじめとして、尋常でなく有能で切れ者というべき人たちが本来の力を発揮できないまま泥沼に叩き込まれ、マリアをはじめとする本当の意味でスカーレットの味方になってくれる人たちの未来を断ち切ってきた黒幕の立ち回り、というのは空恐ろしい狡猾さを感じさせる。
この黒幕というのがまた尋常でない、特に精神の在り方がもう完全に人間を逸脱してしまっているというか、愉悦部名誉会長みたいな有様なんですよね。もうこれサイコパス以外の何者でもないじゃん。こんなのに目をつけられてしまった以上の不幸はないだろう、スカーレットさん。
と、108回もろくでもない死に目にあってきたにも関わらず、この赤ん坊いい加減能天気というかアーパーでアホ丸出しで妙に人生楽しそうなのが、若干腹立つんですが(苦笑
あと、ブラッドの能力がちょっと便利すぎて頭おかしいんですが。こいつの能力ってほんとにただ血液を操るだけなのか? もう意味不明な能力になってるんですけど。なんか相手の血の流れを読むことで何考えてるかも察知することが出来るって、血かんけいありますそれ!?
おかげで赤ん坊で喋れないスカーレットの言いたい言葉まで読み取ってくれるので、便利は便利なんでしょうけど、特に有効活用してませんよね、スカーレットさん! この娘アホなことしか言ってないような気がするぞ。そして、なんか勝手に回りのひとたち、ブラッドを筆頭にマリアやお母様や遠方の地では帰還を目指すお父様にその盟友となった人たちがとにかく頑張りまくることで、彼らに降り掛かってくる悪意を、害意を、邪悪な企みを次々と打破していくのである。
絶体絶命のピンチのブラッドを、血の記憶を通して超常のバフをかけて救ったりしてるから、スカーレットもちゃんと頑張ってると言っておこう。

とまあ、本編そのものはスカーレットが常に頭の悪いアホの娘の物言いをしているので緩い感じなのだけど、頻繁に挟まれるこれまでスカーレットが辿ってきた108回の死亡遊戯。その過程の中で起こったスカーレットの味方となったであろう人々を見舞う惨劇が悲惨以外のなにものでもなく、夢も希望もないんだよ、と言いたい無残さで胸を打つのである。
そして、黒幕の圧倒的な悪意の恐ろしさも、容赦なくぶちまけてくる。果たして、今まで見舞われてきた不幸の数々を打ち破れるのか。この邪悪に勝てるのか。
スカーレットはちゃんと自力で活躍できるのか! いや、赤ん坊でいる間はまあ無理でしょうけど。
自分でも私何もして無くね? と自己ツッコミしてるくらいだしなあw


幼女信長の異世界統一 ★★★   



【幼女信長の異世界統一】  舞阪 洸/tef エンターブレイン

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第六天魔王、幼女の姿で異世界に降臨す!

本能寺で炎に包まれた信長は、寺内に運び込んであった火薬の誘爆によって粉々になった。
しかし、肉体は四散しても、魂は消えなかった。
信長の魂は爆発の衝撃でその肉体を飛び出し、異世界へと運ばれてしまったのだった。

異世界に落ちた魂は、今まさに死なんとしている瀕死の者の体に飛び込んだ。
その者の名は、ロゼリア・ロマネスコ。地方領主ロマネスコ家の長女だった。
そして転生したことを受け入れると同時に当主である父親が討ち死にしたとの報せが入る。
息つく間もなく、彼女は報復のために軍を率いて戦いに赴くのだった――。
舞阪さん、以前に信長を主人公に、それもまだ青年時代の若い頃の信長が記憶喪失になって異世界に召喚されて、みたいな話を書いてたんだけど、また信長主人公でというの本当に信長好きなんですね。
とは言え、同じ信長でも前作の信長とは別の人みたいで正史の信長が転生して幼女に、という話らしいのでちょっと残念。前作、レーベル違うからまず無理だろうけど、戦国日本に戻ったナーガが再び転生して、というのも面白そうだったのだけど。
さても、本能寺で死んだはずが目覚めてみたら幼女と化していた織田信長。まだ状況もはっきりと把握していない所で、ロマネスコ家当主である父が戦死してしまったという一報が入り、領地は大混乱に。
いきなり幼女の身の上で家中を取りまとめなくてはならなくなった信長ことロゼリア。さらに、ロマネスコ勢を破った隣家が、勢いのまま攻め寄せてくる。なかなかどころじゃないハードモード。実質、詰みとしか言えない状況からスタートさせられたロゼリアの未来や如何に、てなもんで。
ある意味色々と思い悩む暇もなく悪化し続ける状況に対処せざるを得なくなったのは、むしろ好都合だったのかもしれない、ロゼリアにとっても。異質な存在と化した幼女に、勢いのまま呑まれ従うことになる家中の面々にとっても。
まあロゼリアとしては、不本意な状況だったでしょう。織田信長の戦の仕方というのは兎にも角にも準備段階で勝ちを確定させてから動き出すのが必定。そのためには時間をじっくりかけて慎重に我慢強く粘り強く天秤を傾けていくのが信長のやり方と言えましょう。
でも、彼の人生の中でもそう悠長なことを言っていられなくて、主導権を相手側に握られたまま状況が悪化していくことは侭あったわけです。
そういう時、信長という人物は凄まじくアグレッシブに拙速果断に動き出すんですよね。ここはじっとしていては詰まされる。状況を打開するにはとにかく自分から先頭に立って動いて雪崩を打って崩れていく展開を食い止めることが出来ない、と判断するとべらぼうなフットワークを見せるのである。
桶狭間はあまりにも有名だけど、作中でも語られている天王寺砦を巡る戦いでの果断さには眼を見張るものがありました。本願寺勢に攻められ今にも落とされそうになっている天王寺砦に、一報を聞いた信長は即座に出撃して、かろうじてついてきた100前後の騎馬だけを引き連れて包囲網を突き破り、砦に入城するや兵を鼓舞して今にも陥落しそうだった砦を、援軍が追いついてくるまで支えきって見せてるんですよね。
この時、天王寺砦が陥落していた場合、畿内から一気に織田家が追い落とされてもおかしくない、一種のポイント・オブ・ノーリターンがここだった、とも言えるだけに、自ら先頭に立って織田軍の崩壊を防いだ信長のそれは、前線指揮官としての才能もこれ際立ってたんじゃないかな、と思えるところなんですよね。

そして、危急に見舞われたロマネスコ家にあって、信長が転生したロゼリアは天王寺砦の時を彷彿とさせるように、ひたすらに迅速果断、疾風迅雷のように速く激しく動き立ち回り続けるのである。
実のところ、このときのロゼリアの動き方って天下人のようなどっしりとしたものではなく、戦国武将としての覇気と巧緻、武人としての迫力と戦国を渡り歩いたものとしての奸智を想起させるもので、特段「信長」を意識させるものではないとも言えるんですよね。
信長の来歴に当てはめて、ロゼリアが選んだ手段を色々と解説説明はしていますけれど、ある意味優秀な戦国武将なら嗜みで習得しているだろう手段や考え方とも言えますし。

ただ、幼女になっても消えないその武威。幼子を前に、大の大人がみな萎縮するほどの覇気。これこそが、天下人の貫目というものなのかもしれません。
本来ならどう転んでも絶体絶命を通り越して、王手あるいはチェックメイト以前にもう勝負が成立していない、投了が済んだあとだろう、というようなところから、家中を一気にまとめ上げ敵軍に一発ぶちかまし、領地を掌握していくその手練手管の見事さと迅速さは、描写の質実剛健とした巧みさと安定感もあって非常に面白かった。舞阪さんの戦記物はなんだかんだと戦争描写がどっしりと落ち着いているので読み応えあるんですよね。
しかし、身内にこれといった将帥がいないのが玉に瑕、と思ってたらとんでもない所から槍が飛んできた。いや、有能切れ者大人物がみんな女性に偏っちゃってしまったのはこれ大丈夫なんだろうか。
そもそも、信長さん女になってしまったことについてまだちゃんと落ち着いて考えてる暇なかったからあんまり真剣に考えてないみたいだけど、将来どうするつもりなのかねえ……いや、この人生きた時代背景的にも男もいける口だったか、そう言えばw

取り敢えず喫緊の侵略の危機は回避できたようなので、ひとまず落ち着いて領国の運営の方に力を傾けることが出来るのかしら、これ以降。

舞阪洸・作品感想

航宙軍士官、冒険者になる 4 ★★★   



【航宙軍士官、冒険者になる 4】 伊藤 暖彦/himesuz エンターブレイン

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貴族となるための足掛かりとしてドラゴンの討伐に成功した帝国航宙軍兵士アラン。彼はドラゴンの素材をオークションにかけ大金を手にし、目論見通り叙勲を受けることに成功する。ついに貴族となり、樹海の広大な土地を手に入れたアランは建国を見据え、本格的な開拓に着手することに。しかし、ドラゴンスレイヤーの称号を持つ彼を狙う者たちの影が迫るのだった…!!異星ファンタジー超大作、第四弾!

前巻でもまずアランの持つ情報支援システムの凄さから語ってしまったけれど、どうしてもこれが読んでて印象に残ってしまうんですよね。戦場における敵や地形などの索敵情報のリアルタイム掌握のみならず、今回は王都を舞台に不可視のドローンを動員した盗聴盗撮といった監視社会さながらの情報収集で、色んな意味で洗いざらいでしたからね。これもう好きなようにやりたい放題できるんじゃないだろうか。貴族や大商人の弱み握りまくるのも出来るだろうし。
その意味では、わざわざ真っ当な手段で叙爵するのを目的にしているのは控えめというか穏当なのかもしれないけど。あまりやられたら必ずやりかえす的な思考がないのもアランの特徴なのかもしれない。基本的に温厚なんですよね、海兵隊的な航宙軍の出身としては随分と大人しい気もするけれど。
それでも、毒まで平然と盛ってくる宰相はさすがに敵認定でしょう。それも、地下牢で政争に破れて囚われていた元宰相親子を救出するようなことがなければ、放置していたかも、と思わせる鷹揚さがアランにはある。それだけ、何をされても通じない、という余裕からなのでしょうけれど。アランが本気で敵だと思ってるのって、帝国軍の敵にして人類の敵である侵略性宇宙生物バグズだけなのだろう。
それにしても、宰相はやり方が杜撰ですよね、これ。実際に暗殺していないうちから、もう殺すからと護国卿みたいな自分を脅かしかねない軍権を掌握するような役職を与えてしまうとか。単に、自分をアランを暗殺した主犯と見られないため、という理由だけならもっと当たり障りないやり方もあっただろうに。むしろ、ドラゴンスレイヤーとはいえぽっと出の平民出身と思われる冒険者に軍権預けるような役職与えるとか、変な疑惑生みかねないだろうに。そんな常から太っ腹な姿勢の政治家でもなかろうに。
まあ小物である。
とはいえ、こういう俗物だけばかりが跋扈しているわけではなく、使者として現れたへリング士爵をはじめとしてなかなかおもしろい人物が王国にも散見されるんですよね。若き王様も宰相の傀儡状態ではあるみたいだけれど、無能な人物ではなさそうだし。正直、叙爵なんかしなくても勝手に樹海切り拓いて建国しても問題ないんじゃないか、と思っていたのですが、叙爵受けて領地として樹海をもらうという行程を挟めば煩わしい問題も減るでしょうし、王国内部に味方となってくれる人と今回の一件で人脈をつなげることが叶うなら、決して無駄な行程ではないのかしら。
てっきり、救出した元宰相親子は現宰相勢力を叩き潰す伏せ札になるのかと思いましたけれど、王国の宰相に返り咲くのではなく、なんかこのままアランに仕える流れになってますね。辣腕の政治家が加わるのは助かるけれど、王国の方これ骨抜きにならないだろうか。

さて、表紙ではクレリア姫がダンスパートナー務めてますけれど、実際の所彼女含めてエルナ、シャロン、セリーナと肝心のヒロイン衆はみんな特に目立ってなかったというか、なにしてたんだろう今回。釣り?
それに比べて一人、いや一頭気を吐いていたのがドラゴンのグローリアで。意思疎通が出来るようになったのもあるのだけれど、一途で真面目で可愛い子じゃないですかグローリア。もうこの娘がヒロインでいいんじゃないだろうか、ドラゴンだけど。存在感も段違いでしたし。

シリーズ感想

航宙軍士官、冒険者になる 3 ★★★☆   



【航宙軍士官、冒険者になる 3】 伊藤 暖彦/himesuz エンターブレイン

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帝国航宙軍兵士のアラン・コリントは航宙艦が不時着した先の"剣と魔法の惑星"を滅びの運命から救うため、星ごと接収し支配者となることを決意した。
クレリアの忠臣たちと合流しクランを立ち上げ、目的に徐々に近づいていくアラン。
そして、さらなる力をつけるため貴族になろうとする彼だったが、そのためにはドラゴンを狩るのが一番の近道だと知り……!?
異星ファンタジー超大作、第三弾!

アランが運用する探知システムが便利すぎる。個人の戦闘力云々よりも自立ドローンによる索敵によって近隣の動体反応が丸裸なのが強すぎる。常に主導権を握れるし、相手の数から素性から詳細に把握できるし地形状況も全部わかる。戦場の霧というのが此方だけ存在しない一方的な有利さなんですよね。
そりゃ、魔物も盗賊団も狩り放題ですわ。獲物がどこにいるか、出発する前から把握しているから行程にムダもないし、情報支援が潤沢すぎる。
まあそんな索敵システムもあって、盗賊に襲われていた商業ギルドの御令嬢を助けたのをきっかけに、商業ギルドのギルドマスターと懇意になり、魔物討伐や盗賊団撃滅を頻繁に行った結果、冒険者ギルドからも信用を得て、盗賊団相手に壊滅した冒険者パーティーの亡骸と遺品を丁重に扱い盗賊団を討って結果的に仇討ちをしたことをきっかけに街の有力クランのリーダーと仲良くなり、とまあトントン拍子で街の有力勢力と友好を結ぶことに成功するアラン。
ちょうど、クレリアの臣下たちを呼び寄せて彼らを冒険者にして大きなクランを立ち上げようとしていた所だっただけに渡りに船ではあったんですよね。明らかに新興勢力となるだろうアランのクラン、いきなり現れたのではよほど警戒もされただろうし、利害関係に基づく対立も発生していたでしょう。でも、アランたちが先に来て信用を築いていたお陰ですんなりと入り込めた、とも言えるんですよね。
いやだって、あとから来たクライアの臣下たちってもろに軍人なんですもん。規律正しく統制された全員が一定以上の実力を持つ男たちが退去として百人近くいきなり街に現れるんですよ? 普通はなんだこいつらは、ってなるし、見る人が見たらこいつら軍隊だ、というのも一目瞭然でしょう。いきなりどこのものともしれない軍隊が街に入ってきてクランを形成するって、怖いなんてもんじゃないですよ。彼らがその気になれば突然内部から街を占領、とかだって容易にできそうなものですし。
ってか、パーティー登録するときに1班、2班とかいう無味乾燥な名前つけるのなんて軍隊以外の何物でもないじゃないですか。隠そうともしてないし。
これ、アランが自分たちが有用で害意なく信用に値する人間である、というのをよほど浸透させる事に成功していた、ということでもあるんですよね。アランくん、決して街の有力者たちだけではなく、下働きの人たちは浮浪者同然だった孤児の兄弟なんかとも分け隔てなく仲良くなってて、特に意識しているようにも見えないのだけれど、わざわざ敵を作るような真似は一切していないのです。
アランの一番の特徴って、この誰とでも友好関係を結ぶことの出来るコミュニケーション能力なのかもしれない。勿論、基盤となる財力と武力があってこそ、相手に信用してもらえるだけの余裕を持てているのでしょうけれど。
これはドラゴンとの相対にも如実に出ていて、ドラゴン相手に無闇に突っかからないし小難しく理屈をこね回しもしない。わかりやすい基準を立てて、それに沿って行動することで攻撃と対話の使い分けが非常にはっきりとしている。何気に難しかったりするんですよね、このあたり。飄々としているようで、即断即決という面も垣間見えるのがアランくんの側面だったりします。
このあたり、まだセリーナとシャロンでは判断が遅かったり迷いがあったりする様子が見受けられるんですよね。経験の差、でもあるのでしょうけれど。クライアはそこにさらにまだ自信の欠如という要素が介在していたので、今回クランの大規模行動の時に一つの集団のリーダーを任せられて、それをしっかり務められたのは自信を得るのに良い経験になったのではないでしょうか。
リーダーシップを発揮しなければならない、という意味ではクライアは早々にそれを求められている立場でもありますしね。
さて、しかしこのドラゴン一等兵、どういう扱いで物語の中に組み込んでいくんだろう。この場合は人化なんて展開はつまらないことこの上ないだろうし。
ドラゴン、意思疎通は出来るけれど人間の言葉を話すことは出来ない、という状態が逆に妙に可愛げというか愛嬌のあるコミュニケーションになってて、なかなか可愛いです。喋れない、というのはこの場合アドバンテージでもあるんだよなあ。

幕間は、イーリス准将のオリジナルが二階級特進となるバグズとの絶望な戦いの勇戦のお話。ドラゴンと違い、意思疎通のかなわないしかし知性のあるバグズという存在との生存をかけた殲滅宇宙戦争という凄惨な様子と、人間の戦い抜く意思が伝わってくる壮絶な話でもありました。人類、きっつい戦いを続けてるんだなあ。

1巻  2巻感想

生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい 01 ★★★☆   



【生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい 01】 のの原兎太/ox  エンターブレイン

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エンダルジア王国は『魔の森』のスタンピードによって滅亡した。錬金術師の少女・マリエラは『仮死の魔法陣』の力で難を逃れたものの、ちょっとした“うっかり”で眠り続けてしまい、目覚めたのは200年後。―そこは錬金術師が死に絶え、ポーションが高級品と化した別世界だった。都市で唯一の錬金術師になってしまった少女・マリエラの願い。それは、のんびり楽しく、街で静かに暮らすこと。ほのぼのスローライフ・ファンタジー、ここに開幕!
錬金術師が死に絶え、とあらすじに書いてあるのでポーションの製作技術そのものが絶えてしまった世界なのかと勘違いしたのだけれど、エンダルジア王国があった地域では錬金術師が絶えてしまったけれど、他の地域では健在なんですよね。ただ、ポーションには土地縛りがあってその地と契約みたいなものをしてその地域の魔力を使って製作しなきゃいけない上に、その地域から出るとポーションも力を失ってしまう、という特性がある世界観……って、めっちゃ使いにくいなポーション!! グローバリゼーションに覿面に適さない地域特性! いや、流通が馬車レベルに限られてしまっている時代でも、生産された地域でしか効果を発揮しない、効果を維持するためには極めて高価な魔法具を必要とする、というのは使いづらくて仕方ない。鮮魚が港付近でしか流通しないのと似たようなもんか。もちろん、食材の一つに過ぎない魚と、特殊な回復アイテムであるポーションとでは重要度が全然違ってくるだろうし、マリエラが目覚めた迷宮都市は魔物と対峙する最前線とも言える場所でポーションの需要も非常に高いわけだから、そんな中でポーションを生産できる唯一の存在になってしまったマリエラの重要性というのは、政治的な意味においても極めて高いものになってしまうのか。
幸いなのは、マリエラ自身がその危険性に早々に自分で気づいていたことか。200年前の世界でも一人で細々と自分でツテを作ってやりくりしていたからこその慎重さ、なんだけど一方で根っこの部分でぽややんなんですよね、この子。経験に応じて注意深くはなっているし聡明ではあるんだけれど、鈍くさかったり押しに弱かったり、いわゆる切れ者とは程遠いんですよね。200年前もなんかぼったくられてたみたいだし。
最初に出会ったディック隊長たちの輸送隊が良い人たちだったから良かったものの、ディック隊長のことお人好しで大丈夫か、なんて心配してる場合じゃないぞマリエラさんよ。
そういう意味でも一人でやってくには心配な子だったのだけれど、迷宮都市に到着した早々に廃棄されかかっていた死にかけ奴隷のジークムントを買い求めることで、相棒を手に入れることに。
ただ、その動機というのが寂しさからなんですよね。200年後の世界で見知った人は全員死に絶え、住んでいた街も滅び、スタンピードの恐怖は眠っていた彼女にとってつい昨日のこと。恐怖と孤独感に突き動かされ、絶対的な味方、自分のそばに居てくれる誰か、というのを求めた結果が、偶々目の前で死にそうになっていたジークムントだったわけである。
これって、つまるところ「誰でもよかった」という意味でもあるんですよね。ぽややんな所のあるマリエラは、そのあたり今のところはあんまり深く考えていないようだし、寄す処とも言えるジークのことを大事にして、死にかけの体を回復させて、奴隷扱いではなく自分の助手か相棒のように接するのだけれど、ジークの方はそう簡単に割り切れないんですよね。
奴隷にされていた間、酷い扱いを受けていたジークは本当に心身ともにボロボロになっていて、それを救ってくれたマリエラには崇拝に近い気持ちを抱くのだけれど、同時に自分でなくても誰でもよかった、という事実は誰よりも実感しているし、途中で自分が彼女に抱いているのは崇拝などではなく、自分がもう二度と奴隷時代の酷い境遇に堕ちないための拠り所に過ぎないと気づいて、自分の醜悪さに苦しむことになるのである。
ジークが奴隷落ちしたのは誰かに騙されたとかではなく、結構自業自得なところがあるんですよね。元々腕利きの冒険者であったものの傲慢でろくでもない人間だった、というのはちょっと驚きの過去ではあったのですけれど、地獄を経験してそこから救われても醜さが消えてなくて、そんな自分を自覚して本当の意味でマリエラを、自分を救ってくれたこの人を守れるようになりたい、と自分に命題を課して生き方を改め努力を積み重ねていくジークは、最初からいい人だったというのとは違う味わいがあって、二人の関係がどうなっていくのかは非常に興味深いところであります。
縁が出来た黒鉄輸送隊の面々に助けられ、他にも良い縁を繋いでもらったお蔭で、なんとか順調に迷宮都市に生活基盤を築いていくマリエラとジーク。ただ、マリエラの持つ希少性はかなりのもので、彼女を取り巻く環境は決して安定しているとは言い難い。今後、色々と立場的にも危うい展開に巻き込まれそうだけれど、普通の女の子であるマリエラがどうやって乗り越えていくのか、楽しみでもあります。

陰の実力者になりたくて! 01 ★★★☆   



【陰の実力者になりたくて! 01】 逢沢 大介/東西  エンターブレイン

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主人公最強×異世界転生×勘違いシリアスコメディ、爆誕!!

『我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者……』
みたいな中二病設定を楽しんでいたら、まさかの現実に!?


主人公でも、ラスボスでもない。普段は実力を隠してモブに徹し、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す「陰の実力者」。この「陰の実力者」に憧れ、日々モブとして目立たず生活しながら、力を求めて修業していた少年は、事故で命を失い、異世界に転生した。

これ幸いと少年・シドは異世界で「陰の実力者」設定を楽しむために、「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく(おふざけで)暗躍していたところ、どうやら本当に、その「闇の教団」が存在していて……?

ノリで配下にした少女たちは勘違いからシドを崇拝し、シドは本人も知らぬところで本物の「陰の実力者」になっていき、そしてシドが率いる陰の組織「シャドウガーデン」は、やがて世界の闇を滅ぼしていくーー。

異世界に転生して、前世からの願望だった陰の実力者プレイを存分に楽しめていて、主人公のシドくん良かったね、と思いながら読んでたんですが、ふと気がついたんですよね。
あれ? これ実はシドくん、陰の実力者プレイの一番美味しいところ味わえてないんじゃないの?
本作、勘違いモノでもあるわけで、彼がおふざけで作ったシャドウガーデンなる組織は彼が助けたエルフの少女アルファを中心として、シドを頂点としつつその運営はアルファたちが仕切っていてその組織の実体についてはシドくん殆ど関与してないし関知していないし、知らないうちに巨大化強大化している現状なんてさっぱり知らないわけですよ。そして、シドくんが適当にでっち上げた敵対する闇の教団が、実は本当に実在していて社会の裏側闇側で暗躍していて、シャドウガーデンと衝突している、なんて事実も知らないのである。シドくん、陰の実力者としてそれらの敵対組織と影に日向に派手に激突し対決し、厨二病全開の実に楽しいロールをしながらやっつけまくっているわけですけれど……。
シド本人はそれらが本物の闇の組織だと知らず、ただの野盗とか野良のテロリストだと思ってるんですよね。各種の出来事ややられ役の連中が吐くそれっぽいセリフなんかも、アルファたちが演出してくれている、と思っているのです。
つまり、シドだけ「ごっこ遊び」のつもりなんですよね。でもそれって、もったいなくないですか? 現実には本物の闇の敵集団と本物の陰の組織として成立しているシャドウガーデンが、本当に世界の命運をかけて暗躍しあいしのぎを削り合い、シドは本物の陰の実力者として戦っているわけですよ。まさに夢見た展開・状況の只中にあって、それをごっこ遊びとしてしか捉えていなくて、本物の戦い、本物の陰の実力者プレイを本気でやれないって、堪能できないって、考えてみると陰の実力者プレイを十全全開で楽しめているのかというと、恐ろしい勢いで取りこぼしているようにも見えてしまうんですよね。本当は、もっと楽しめるはずなのに。本気の生き様を極められるはずなのに。
シド以外は矜持をかけて魂をかけて、この展開の中を生き切ろうとしているのに、ある意味主人公の彼だけが蚊帳の外、ぼっちなんですよねえ。理想の只中にあるというのに、本人は仮想のつもりでそれで満足してしまっている。
まあ、本人が大変満足しているので、それはそれで幸せなのかもしれませんけれど。知らぬが仏なのか。
シドくん当人、陰の実力者をやるために狂的にまで努力に努力を重ねているのだけれど、それは自身の能力とか技量に関するものに限定されていて、それは部下の組織幹部たちを鍛えてあげたり、と戦闘面については広げてはいるんだけれど、陰の実力者プレイを実際に行うための環境整備、という観点についてはまったく手を出していないんですよね。
例えて言うなら、もし学校をテロリストが占拠したら、というケースを想定した場合、自分ひとりが戦うための想定準備自己強化をしているか、それともそれに加えて対テロリストマニュアルを作成してこっそり協力者を募って即応集団を準備していざというとき学校そのものがマニュアルにしたがって対応できるように仕込んでいくか、の違いというべきか。トドメにテロリストまで自前で用意して自作自演で想定で済まさない、実際に行って堪能する、というところまで行くと本格的にやべえやつ、になってしまうけれど。
シドくんはそういう、実際に陰の実力者をやるために陰の実力者が本当に必要になる状況、陰の実力者が陰の実力者らしく動ける環境、つまり自分が演じるための舞台を構築する製作者というべきか監督というべきか、TRPGのGMというような範囲のところまでは興味とか関心はないんでしょうね。
なので、現状はシドくん本人は何も仕込んでいなくて、陰の実力者として実際に活動できる実力は身につけたものの、それ以外は完全に受身、待ちの状態だったんですよね、これ。それはシドくん本人もわかっているから、身の回りで起こっている事は偶然とある程度のアルファたちの好意によるもてなしの類だと思うわけで、ある種のごっこ遊びの範疇だと本人が思い込んでいるのも無理からぬところなんだよなあ。
まさか、それが本物で特に何もせずにいつでも行けるぜ状態で待ってたら、実は入れ食い据え膳的な状況だったとは思うまい、ってなもんで。いやあ、やっぱり微妙に可哀想に思えてきた。まあロールプレイであれだけ成り切って殺しまくっちゃってるのも、考えてみると相当にヤバイ奴なんですけどね。というか、ラストのテロリスト編なんていうのはもう遊びの範疇を明らかに超えてしまっているにも関わらず、シドくんは一貫してあれ「遊び」感覚なんですよね。あの状況であれらの行動を実行に移しながらなお徹底して遊び感覚でいる、というのは明らかに人間としてぶっ壊れているわけで。
そう考えてみると、シドくんの場合ごっこ遊びも本物の闇の教団との戦いも差は全く無いと捉えてしまう人間なのかもしれない。もし勘違いが解消されて、今現在世界の命運をかけて闇の教団と陰で戦いを繰り広げているのだ、と知ったとしても……彼自身今までの感覚とまるで変わらないんじゃないだろうか、ともう一度テロリスト編を見直しているとそう思えてきた。それとも、さすがにあの教授との対決では彼にも思うところが生じたのだろうか。シェリーの行く道に何か想いを馳せるものがあったのだろうか。遊びではなく、ごっこでもなく、本当の影の実力者としての行動によって一人の少女の未来に大きな影響を及ぼしたのだ、と受け止める気持ちが生まれたのだろうか。自分の生死を前にしてのローズの本気の涙に対して、思うところがあっただろうか。

この巻のラストシーンに、彼の内なる思いは書かれていない。

さて、シドについて色々と思い巡らすこと多かったですが、いずれにしても次巻にならないとわからないんですよね。手元にはあるので遠からず、ページを開いてみたいと思います。出番が少なかったお姉ちゃん、もうちょい出番増えないかなあ。あの裏ブラコンは好みであるが故に。

幼女戦記 5.Abyssus abyssum invocat ★★★★   



【幼女戦記 5.Abyssus abyssum invocat】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ  エンターブレイン

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金髪、碧眼の愛くるしい外見ながら『悪魔』と忌避される帝国軍のターニャ・フォン・デグレチャフ魔導中佐。
冬までのタイムリミットを約二ヶ月と見積もった帝国軍参謀本部は積極的な攻勢か、越冬を見通した戦線再構築かで割れていた。激論の末に導き出された結論は、攻勢に必要な物資集積の合間での『実態調査』。実行部隊として、ターニャ率いるサラマンダー戦闘団は白羽の矢を立てられる。
進むべきか、踏みとどまるべきか?逡巡する暇はない。
地獄が地獄を呼び、止めどなく激化してゆく戦争。誰もが、守るべきものを心に抱き戦場に向かうのだ。すべては「祖国」のために。
デグさん完全に便利屋扱いだよなあ、これ。有能さを示せば示すほど際限なく仕事を割り振られていくのがこの世の真理。その上、現場と上との現状認識の乖離は容易に無茶振りへと繋がっていってしまうのである。デグさんもなまじ、その無茶振りを熟しちゃうから、上もそれが当たり前だと思っちゃうのがまた問題で。
戦闘団の即応編成って、これデグさん以外に務まるものなんだろうか。彼女はあくまで戦闘団の諸兵科連合としての有用性を示したつもりでいるようだけれど、参謀本部の方が重視しているのは即応性の方であってその点でも認識がややズレているみたいだし。

しかし泥沼である。参謀本部の冬季突入までに攻勢で押し切るか、越冬を見越して踏みとどまるか、の意見対立、なにがヤバイってどちらも間違っていなくて現状に対する危機感も同等に有しているところなんですよね。どちらかが明らかに間違えているなら、正しい方を選べば戦局は良い方に進むのでしょう。でもどちらも間違えていない、どちらも正しいということは、どちらを選んでも先に見通しが立たない、泥沼必至というところなんですもんね。
進むも地獄、引くも地獄。
そんな消耗戦の中で、ついにデグさんの子飼いである「第二〇三魔導大隊」からも戦死者が出てしまう。替えの効かない精兵の喪失である。特に航空魔導師の隊は大隊と言っても48名しかいないので、一人でも抜ければそれだけで相当の被害になってしまうのに、今回の戦闘で食らった損害はそれどころではなかったですからね。
あのデグレチャフ氏をもってして痛恨事と言わしめ、彼女自身ショックと後悔でのたうち回る事態に陥る凄まじい大損害だったのである。戦争中にもう同じレベルの精兵を集めるのは不可能でありますし、一から新兵を鍛えなおしている余裕など便利屋扱いでたらい回しにされているデグさんの部隊ではあり得るはずもなく。それでも、君なら出来るだろう、これまでも出来てたし、と臆面もなく要求してくるのが上なんですよね。
人材の払底を身をもって痛感させられているデグさんにとって、こうなってくると手元の能力在る部下たちは以前にもまして宝石のように思えてくるわけで。要求する能力にまったく足りていない未熟な兵や士官、それどころか無能の烙印を連打しても飽き足らないような士官まで回されてきた日には、それまで自分の手元で働いてくれていたヴィーシャやヴァイス中尉がどれほど有能で行き届いた手腕の持ち主か、というのを改めて実感させられるわけで。もう文中からデグさんの、ヴィーシャたちへの絶賛に絶賛を重ねるような賛辞の連発と、こいつらが居てくれてよかった、ほんとよかった、もうこいつら居なかったらと思うとゾッとする。凄い! 素敵! もう最高! 抱いて! 結婚して! とでも言いたげな想いがビリビリと伝わってくるのですよね。
大隊結成当初なんぞ、部下に対してはもっと冷めているというか、利用価値のある出世のための道具、自分の安全を保証するための肉盾、みたいな認識があったと思うのですけれど、まあ根本のところでは変わっていないのかもしれませんけど、喪うことなど想像もしたくない大事な大事な部下たちという想いは間違いのないものになってきてるよなあ、と思うところなんですよね。

さて、ひたすら打開の方法すらない泥沼一直線かと思われた東方戦線も、連邦の一般将兵の認識がイデオロギーのための戦争ではなく、祖国を守るためのナショナリズムの戦争だと気づいたデグさんによっての、上層部への意見通達によって、東方戦線は戦争のやり方そのものを変えていくことに。連邦が真の意味で青ざめることになる、帝国の戦争方針の大転換は果たして戦局の打開に繋がるのか。少なくとも一方的にどうしようもなくなっていくだけの行き詰まった展開からは、希望が見えてきたのだろうか。

それにしても、思いの外連邦のロリヤが有能で驚かされる。保身と組織防衛と政敵を追いやる謀略だけに長けているのかと思ったら、先の魔導師の復権の提案もそうでしたけれど戦争に勝つために真に必要なことをイデオロギーなどの建前を排除して、ちゃんと提案し用意し準備することができてるんですよね。これ、連合のチャーブル首相なみに手強い相手になってるんじゃなかろうか。
デグさんもえらいのに目をつけられたなあ。

シリーズ感想

航宙軍士官、冒険者になる 2 ★★★☆   



【航宙軍士官、冒険者になる 2】 伊藤 暖彦/himesuz  エンターブレイン

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帝国航宙軍兵士アラン・コリントと彼に共生するナノマシン「ナノム」が乗艦する航宙艦は航行不能となり、未知の惑星に不時着することに。魔法を使うことができる人類が暮らす惑星でアランは怪我を負った少女クレリアを科学技術を駆使して救い、自身も魔法を覚え、剣と魔法のファンタジー世界に順応していく―。ある日、アランはAIの予測によりこの星が滅びの運命に瀕していることを知る。彼は人々を救うため、星ごと接収し、支配者になることを決意するのだが…!?異星ファンタジー超大作、第二弾登場!

これ、クローン技術で生み出されてしまった双子のセリーナとシャロン、えらいあっさりと登場したけれど、閑話での彼女らの誕生の話を見ると身の上としては壮絶なんですよね。
精神の健全な成長のために、製造から意識を目覚めさせるまでの30日間の間に人間として生まれ、普通の人間として成長してきた18年間の記憶を植え付けられてるんですよね。それで、目覚めた途端に貴方達はクローン技術によって製造された人造人間です。今貴方達の中にある人としての記憶は偽物ですのであしからず、とか言われるんですよ? 頭おかしくなりますわ。
いや、AIのイーリスさん、もうちょっとデリカシーというものを学びましょうよ。そのあたりは大変デリケートな問題なのですから。そのくせ、自分のベースとなった過去の英雄イリース・コンラートの細胞からクローンで生み出されたセリーナとシャロンのこと、無意識にか自分の娘みたいに捉えているのだから、結構タチが悪いんですよね。
このAI、人間味があるように見えて基本原則の部分では機械特有の融通の効かなさと機械であるがゆえに倫理観や常識に囚われず、融通の利きすぎる部分が併存してたりして、そういうところ凄く魂のないAI感が漂ってるのだけれど、一方でAIの元となったイーリスの思考パターンに則っているせいか、そこから徐々に人間らしさのようなものを獲得しはじめている過渡期のような側面も感じられて、なかなかおもしろい存在なのである。
一巻では、アランは船から脱出して異星に一人孤立していて、船も沈んでしまってもう二度と星間文明には接触できないと覚悟して動いていたのだけれど、イリースが健在である上にほぼ制約なくバックアップを受けられるというのは、もうほぼ何でもありなんですよね。
まあイリースも大きな損傷を受けて多くの資材を失い、リソースもだいぶ減っているわけですけれど、それでもあの星間文明レベルの技術を自由に使えたら、神を名乗っても遜色ないんですよね、これ。
ただ、普通にこの星で生きていく、というだけならイリースの戦力は過剰すぎる部分もあったわけです。アランも、このままなら冒険者として生き、縁あって出会ったクレイアを助けて、この星に身を埋めるくらいのある意味気楽な気分だったと思うんですよね。
しかし、イリースと接触しある計算結果を知ってしまったことで、彼はこの星で、帝国航宙軍士官として成さなければならない使命があることに気づき、そのためにすべてを費やすことを決意するのである。
この決断を以って、この物語は幕を開けたと言えるのではないだろうか。
計算結果からこの星の行く末を知らずに居たら、このアランくんポヤポヤとスローライフに終始してのんびり人生満喫して終了しててもおかしくないような男の子だもんなあ。
今回だって、暇さえあれば意気投合した宿屋の親父さんとの料理研究とレシピの伝授ばかり嬉々としてやってばっかりで。あれ、タイミングさえ違ってたら親父さんの誘いにのって料理人になってても不思議じゃないように見えたよ。料理好きだしねえ、この子。親父さんと料理談義しているときが一番楽しそうでしたし。クレリアと居るときよりも楽しそうだったぞ。

ともあれ、そんなのんびりとした未来は彼の選択肢から消え失せて、彼の人生すべてを賭けた数百年、或いは千年を超える先に目標を見据えた壮大な計画がスタートする。さてそれを、アランくん一代でどこまで描いていくことになるのか。自分の国を失い流浪の身となっていた自分の国の民たちと合流することになったクレリアと、アランの目的が重なったことでこのまま一緒に歩んでいくことになったわけだけれど、取り敢えず一旦ほんとによく話し合った方がいいですよ、二人とも。なんか、致命的な齟齬が出始めてるっぽいですし? 思い込み、よくない、うん。

1巻感想

幼女戦記 4.Dabit deus his quoque finem. ★★★★   



【幼女戦記 4.Dabit deus his quoque finem.】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ  エンターブレイン

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世界を敵にまわして、幼女は戦う

愛くるしい幼女の外見をしながらも『悪魔』と忌避されるは、帝国軍の誇る魔導大隊指揮官、ターニャ・フォン・デグレチャフ魔導少佐。

砂塗れの南方戦線から帰還するや否や、待構えていた参謀本部より彼女に発令されたのは、胡散臭い『演習命令』。それは、連邦領への極秘裏に遂行される越境作戦。

そこで目の当たりにしたのは……誰もが、ありえないと信じて疑わなかった連邦の参戦。その幻想は、放たれる列車砲の一弾と共にかき消される。

帝国は、戦うしかない。世界の全てを敵に回しても。もはや勝ち続ける以外に道はない。その先にあるのは不朽の栄光か、栄光の残照か。答えは、ターニャ・フォン・デグレチャフだけが知っている。

既に西部戦線を整理しきれず南方戦線を開幕してしまった時点で国力の限界を突破してしまい泥沼の状況へと突入したという危機感をこれ以上なく何度も何度も繰り返し言い募っていた上での……東部戦線の開幕である。
いやもう、これ完全に詰みでしょう。既に、合衆国も参戦を前提とした物資の流入に義勇兵の派遣、というところまではじまってしまっている段階で、デグさんとっとと店じまいして逃げ支度を始めるべきなのだろうに、まだ生き残れる目があると判断してしまっているのは組織内でこれまで投資し続けていた努力を無駄に帰するのを惜しんだか、それとも愛国心でも湧いたか部下に情でも湧いたか。後者2つは笑い話にもならないのだけれど、でも内心肉盾扱いだった部下たちを今では随分と慈しむようにもなっているので、自分で思っているほどデグさま冷徹でもない気がしないでもないのだけれど。
連邦の参戦は、幸か不幸かWW兇砲ける共産ソ連へのドイツ側からの奇襲ではなく、共産連邦側からの奇襲となったわけだけれど、予想していなかったわりに素早い帝国側の戦力投入と、粛清によって弱体化していた赤軍、さらに開戦冒頭にデグさまが部隊引き連れて連邦首都を急襲してやりたい放題やった影響で戦線は膠着化。いきなり前線が瓦解しなかっただけでも幸いなのかもしれないけれど、それでももう本当に無い袖は振れない状態になっちゃってるんですよね。あのゼートゥーアさんがこれほど言葉を尽くして、出涸らしも出ない!と言い切ってしまうのはよっぽどですよ。ルーデンドルフ将軍も、ツーカーの仲なんだからそれはわかっているだろうに、それでも戦力を絞り出させようとするのはどうしたって前線で戦う将軍のサガなんだろうか。後方の視点も多分に持っている人のはずなんだけれど。逆に言うと、ルーデンドルフ将軍がそれだけ無理を強いようとするくらいには、それくらいしないと戦争自体がどうしようもない瓦解を迎えてしまう、という認識を持っている証拠なのかもしれない。
つまるところ、言葉は違えど二人ともこれはもうあかん!と言ってるようなものなんですよねえ。
それでいて、戦争自体を終わらせる手段については今回二人から一切聞かれなかったのはなんとも身につまされる。逆に、デグさんからは連邦との戦争は妥協の余地のないどちらかが滅びるまで終わらない戦争だ、という見解まで示されてしまったわけで。
デグさままだ若いどころか幼女なんだから、また一から始めても十分お釣りが来ると思うんだけどなあ。
ただでも、戦況がどうしようもないことになっている、という意外ではデグさんの置かれた環境って上司も同僚も部下も大きな意味での軍組織も理想的、と言っていい環境なだけに捨てがたいというのも非常にわかるんだけれど。いやまあ、ゼートゥーア将軍は凄まじい無茶振りを喜べとばかりに投じてくるブラックもいいところな上司なのだけれど、でも彼のブラックさを引き出しているのはデグさん自身の黒さと見通しの甘さなわけですから多分に自業自得だしなー。
そもそも、サラマンダー戦闘団の結成過程とか、それ以前の独立魔導大隊構想でデグさん自分同じことやらかしてたじゃないですかー。そういう新基軸の戦闘単位を提案したら自分が実証のために創設して指揮するはめになる、と学んでいなかったのでしょうか。完全に同じパターンだし!
まあ以前と違って、十分な訓練期間なしに速攻で作って速攻で前線投入、なあたり余計に酷いことになっていますが、どうやら構想案で自分で即席で編成するよ、と書いちゃってたみたいだし、だから自業自得だよー。
だから、猫の手も借りたい戦力不足兵力不足精鋭不足が極まっている状況で、理想的な軍人にして英雄的な戦果をあげつづけているデグさんを手放すはずがなかろうに、そのへんデグさん自分の評価をどう考えているんだろう。過小評価する人ではないと思うんだけれど、どうにも周囲の評価に対して自分の評価の質というか方向性が根本から異なってるのかしら。
ゼートゥーア将軍との会談にしても、言葉は通じて会話も成り立っているのに妙に意思の疎通が出来てないような感じだったもんなあ。アレに関しては、双方ともそもそもの前提が違うにも関わらずそれを踏まえて話しているので、妙な齟齬が付きまとうのは当然なんだが。

あと、ついにあのメアリー・スーと直接交戦。この段階では普通にデグさん悪役で、メアリーは父の仇と遭遇した可愛そうで勇気のある少女兵って感じなんですよねえ。
ロリヤさん的には、デグさんなんかよりもメアリの方がストライクな気がするんだがなあ。ってか、ロリヤさんって名前がダイレクトすぎやしませんかね、ほんとに! そこまであからさまでいいの!? 政敵に粛清材料にされたりとかしないの!? まあ一番偉い人公認っぽいので、責められないのかもしれないが。

シリーズ感想

ご近所の平穏を乱す奴が相手なら、アラフィフ勇者の最強スキルを使わざるをえない! ★★★☆  



【ご近所の平穏を乱す奴が相手なら、アラフィフ勇者の最強スキルを使わざるをえない!】  嬉野 秋彦/ジョンディー エンターブレイン

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コネも金もなく王都で仕事にも就けずにいた青年ビム・ユンカースを拾ったのは、“ひだまりの館”に勤める美女ブルーベルだった。同僚は美女、仕事内容は魔王大戦後、失われつつある“技術”をもった老人たちに仕事を斡旋すること。その中でユンカースの役割は老人たちの仕事を補佐することだったが、彼が同道することになるメンバーはかつて魔王を倒した勇者、魔女、賢者のパーティだった!それゆえ斡旋される仕事も、現役騎士団すらも太刀打ちできないであろう魔物退治ばかりで―!?一癖も二癖もあるけれど、最強の“技術”を持つアラフィフ勇者パーティと、平凡な青年のレジェンドストーリー!!

これ、まんまシルバー人材派遣センターだ! 
ここで働いている老人たちは、アラフィフとタイトルにはあるけれど実際は50歳をみんな超えています。現代だと50代なんてまだまだ働き盛りと言っていいくらいには平均寿命が伸びているのですが、まだまだ文明が発展しきれていないこの異世界では大戦後数十年が経った今でも平均寿命は60を超えず、45歳をすぎれば老人と呼ばれるような社会なんですね。なので、彼らかつての勇者パーティーの面々は人生の晩年へと差し掛かっているわけだ。
もちろん、こんな世界では社会福祉が現代レベルで整っているわけではなく、年金制度があるわけでもない。人間、死ぬまで働かないといけないわけで。その意味では、この老人を雇用するという目的の人材派遣公社は王妃が出資している半公共機関みたいなものらしいけれど、立派な福祉事業なんですよね。
もっとも、そこに元勇者や賢者や魔女なんてのが所属していて、その組織の天辺が実質実権を持った女王陛下な王妃様だという以上、それだけが目的の組織ではないのだけれど。
しかしまー、世知辛い話ではあるんだ。魔王大戦の英雄である勇者パーティーが最晩年を家族もなく孤独に迎えているわけですから。
それを寂しい人生、なんて言ってしまうのは傲慢なんでしょうけれどね。家庭を持たなかったのも権力を求めなかったのも、彼ら自身が選ばなかった道であり、人の幸福なんてものはそれぞれが己で決めるものであって、他人が外から見てあーだこーだ言うもんじゃないですからね。ザッキさんやルードさんたちは、今の有様を当たり前のように受け止めていますし、家庭を持たなかったことを後悔しているわけでもない。ただ、心残りがあるとするならば、自分たちの技術の後継者すらもいないまま消えていくことだったのかもしれません。しかし、それも積極的に探し求めている、ということもなく自分たちの人生の終焉とともに失われていくことを、そういうものだと受け入れている。
ミロスさんは、子供を作れなかったことに幾許かの未練を抱いているようですけれど。ともあれ、若い連中に期待はしていないけれど、諦めてそっぽを向いているわけではない。もし運が良ければ後継者に巡り会えるだろう、くらいの気持ちではいるようなんですよね。狷介とも偏屈ともとれますが、これはこれで素直でもあるんだろうなあ。

そんな彼ら老人の前に現れた若者・ユンカースくんは田舎の農村出の朴訥な青年で何の特技があるわけでもなく、都会に出てきた目的も官庁の事務職狙い、というある意味現実的な手堅い生き方を目論んでいる奴なのである。だから、別に体力があるわけでも実戦経験があるわけでも秘められた力があるわけでもなく、変な野心があるわけでもなく、あると言えば家族経営の農業じゃ将来親が歳とって働けなくなったらやってけなくなるから、今のうちに都会で働こう、なんていう計算高さがあるくらいのガチで普通の青年である。いや本当に、ザックたちの荒事に担当職員としてつきあわされるようになっても、別になんの覚醒もしませんしね。
ただ、彼が凄いのはその図太さというか厚かましさというか精神的な鈍さというか、ザックにしてもルードにしてもかなり当たりきつい爺さんたちなんですけれど、毎回けっこうキツイ目にあって辞めたい辞めたい言いながらも、次の日になるとわりとケロッとして引きずった様子がないんですよね。それどころか、慣れてきたらズケズケと結構言いたいこと言って堪えた様子が全然ないのである。タフだなあ、と感心しかけたんだけれど、タフって打たれ強いとか我慢強いというイメージなので、そういうのとは違う感じなんですよねえ。そもそも、痛みを感じていないんじゃないか、というタイプの図太さというか。
おまけに、何かと言うと余計な一言が多くて、地味にユンカースくんの方が相手にダメージ食らわせているようにも見えますし。この子、地元にもあんまり友達いなかったんだろうなあ。無自覚にかなりザクザクと相手の心を切り刻むようなこと言ってますし。
ただ、その図太さというか厚かましさがわがまま老人なザックさんにはちょうど良かったのか、わりとしぶしぶユンカースの言うことを聞いているのを見ると、微妙に不良老人とその孫みたいに見えてくるから不思議です。
元勇者からしたら、何の見込みもなさそうなユンカースくんなんだけれど、その継がせようのないはずの技術というには感覚的すぎる「スキル」の後継者候補にユンカースくんのことを、ほんのちょびっとでも候補にあげている時点で、なんだかんだと彼のこと気に入ってるんじゃないか、と思えてくるわけで。微笑ましいには程遠いまでも、思わず微苦笑を浮かべてしまう老人たちと若者の関係なのでした。
彼ら勇者パーティーのみならず、人材派遣センターへの依頼者である農園の経営者の老夫婦の先行きと、彼らの元を飛び出していった孫の人生という、老後というものを考えさせられる沁み入る話で、なんとも味わい深いものがあって面白かった!

嬉野秋彦作品感想

航宙軍士官、冒険者になる ★★★☆  



【航宙軍士官、冒険者になる】 伊藤 暖彦 /himesuz  エンターブレイン

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帝国航宙軍兵士アラン・コリントの乗艦する航宙艦は超空間航行中に未知の攻撃を受け、アランはたった一人の生存者となってしまう。航宙艦は航行不能となり、アランは脱出ポッドで目前の惑星に不時着することに。彼は絶望するも、降り立った惑星には驚くべきことにアランの遺伝子の系譜に連なる人類が繁栄し、さらにはこの惑星の人類は“魔法”なるものを使っていたのだった。アランと、彼に共生するナノマシン“ナノム”は、科学技術を駆使して“剣と魔法の世界”を調査しつつ、サバイバル生活を送ることになるのだが…。異星ファンタジー超大作、登場!
SFの世界観からファンタジー世界へ、というのはやはりワクワク感が募ります。現代人レベルだと元の世界と切り離されてしまうと途端に無力となってしまい、神様などからチートを貰うか頭の中に詰め込んでいる知識を応用するくらいなのに対して、大宇宙航海時代の兵士ともなれば母船から切り離されても内臓コンピューターみたいなナノマシンみたいなもので未知の現象に対しても分析や人間には不可能なレベルでの微細な制御などを担ってもらえるので、持ってるアドバンテージが全然違うもんなあ。それも、母船とコンタクトが取れたらさらに違ってくるのでしょうけれど。
そもそも彼ら帝国航宙軍の軍人というのはスターシップトゥルーパーズみたいに、バグズと呼ばれる侵略性宇宙生物と千年以上に渡って戦い続けている超戦闘国家の出自ですし、バグズと生身で格闘戦が出来るように身体改造されているわけですから、そりゃ強いですわ。普通のSFなら装甲服とか戦車とか人型兵器とかに搭乗して戦うような相手でしょうし。いやまあ、そういう装備もちゃんとあるんでしょうけれど。
いきなりSF世界からファンタジーまっさかりな惑星へと遭難してしまったわけですけれど、そもそも航宙艦が撃沈された理由や方法がまったく不明なままなのが、これ物語がファンタジーな惑星上で収まるつもり全然ないんじゃないだろうか、という感じなんですよね。宇宙の各所に、まるで配されたように人型の人類が繁栄している、という設定もなにか大きな要素を感じさせるところでありますし。
ちなみにこの帝国って、祖が地球ってわけではないんですね。我らが母なる地球はわりと最近、帝国の航宙艦に発見されて汎人類連合的な要素のある帝国に吸収されてしまったみたいですし。その地球は今、観光地みたいにもてはやされて、地球の文化も帝国では大流行していて、末端の兵士であるアランも流行りのあれこれを携えてる、というのはあんまり無理なく地球の文化圏の物品や慣習なんかが使われる理由としてはうまいなあ、とちと感心したり。

さて、肝心の主人公。突然、宇宙から未知の惑星へと遭難してしまったアランくん。母船との連絡も途切れてしまい、もう二度と宇宙には上がれないと覚悟を決めた彼なのですが、母船からの脱出寸前に応急刷り込み型の士官教育……実質の価値観の洗脳が行われたせいか、かなり絶望感に苛まれるような状況なのですが、あんまり堪えた様子もなく前向きにここで生きていこうとしているのである。
その悩む様子もあまりない姿は随分とサッパリしていて、それが作品そのものにもサッパリとしたカラッとベトつかないイメージをもたらしている気がします。薄いとか軽い、とはまた違うんですよね。言葉も通じない現地人であるヒロインのクレリアとの試行錯誤で意思疎通を図りながら、何もかもが未知の世界で手探りで自分が生きていく足場を作っていく様子はサバイバルものとしてもじっくりと丁寧な作りですし、アランの快活さと親しくなった人たちと利益や幸運を自然に共有しようとする姿勢は、やっぱり見ていても気持ちの良いものでしたし。
クレリアが置かれている状況というのは、かなり重たく悲惨なもののはずなんですけれど、彼女が自分の行く末に対する悲嘆から立ち直り、復仇に拘らずに自由に生きていこうとどこか伸び伸びとした様子で思い定めたのには、アランくんのあのさっぱりとした明るさに影響受けたんだろうなあ、というのも伝わってくるものがありましたし。
しかし、アランくんがクレリアの素性を知ってもまったく態度変わらなかったのって、ある意味宇宙時代の人間らしい貴族階級というものへの無頓着さがあるんだろうか。身近に縁がなくても貴族王族というものがどういう存在なのか理解している現代人だと、全く反応示さないとなると単に無神経なだけじゃないのか、と思ってしまうけれど、そういう文化を実感としても歴史上のものとしても持っていない宇宙時代の人間なら、あそうなんだーで流してもおかしくない感触ではあるんですよね。
アランくんがそういう無神経なタイプでは全然ない、という信頼感もあるのでしょうが。いくらSF世界の人間と言っても、上官部下の上下関係はあるわけですしセレブみたいな特権階級だって存在はしていたら、貴族王族について無頓着なんてことはないんだろうけれど。

ともあれ、物語はタイトル通り、アランくんが冒険者としてスタートしたまさにスタート地点に立った段階なので、果たしてSF要素……特にバグズの存在などどう絡んでくるかわからないけれど、是非本作ならではの面白そうな展開を期待したい。

幼女戦記 3.The Finest Hour ★★★★   

幼女戦記 3 The Finest Hour

【幼女戦記 3.The Finest Hour】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ エンターブレイン

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戦場の霧を見通すは、幼女(バケモノ)ただ一人。

金髪、碧眼の幼い少女という外見とは裏腹に、『死神』『悪魔』と忌避される、帝国軍の誇る魔導大隊指揮官、ターニャ・デグレチャフ魔導少佐。
戦場の霧が漂い、摩擦に悩まされる帝国軍にあって自己保身の意思とは裏腹に陸、海、空でターニャの部隊は快進撃を続ける。
時を同じくして帝国軍は諸列強の手を跳ね除け、ついに望んだ勝利の栄冠を戴く。
勝利の美酒で栄光と誉れに酔いしれる帝国軍将兵らの中にあって、ターニャだけはしかし、恐怖に立ち止まる。
これは決定的勝利か、はたまたピュロスの勝利か。
――帝国は本当に全てを掴んだのか?と。
この回転ドア作戦は本当に見事。美しいとすら言える戦争芸術そのもので、これは人類戦史に燦然と輝く作戦になるのでしょう。
シュリーフェン・プランが完全に成功していたら、こうなってたのか。
まあその肝が、ロケット兵器による特攻紛い、というのが相当に博打も博打なんですけど。いやもうこれ、そこ以外は精緻な戦争計画に基づいた作戦なんだろうけど、この司令部強襲作戦、ちょっと一か八かすぎやしませんか!? ターニャが若干狂乱してたのも無理ないっすよ。頭おかしいもん。せめて実機の実働実験はしとかないと、フライト中に爆死! となっても全然不思議ではなく、そんな危険性を孕んだ作戦を、この戦争の行方を決めるであろう大作戦の肝に据えているという時点で相当アレである。エレニウム九五式の開発のときもそうだけれど、帝国って全体的に自国の開発する技術に対する信頼が、安全マージンという概念が存在しなんじゃないか、というくらいには狂的に存在している気がするぞ。V-1がまともに動くのか、少しでも不安を抱いてたらこんな作戦ゼートゥーア少将みたいな慎重な後方参謀がゴーサイン出せるとも思えないし。機械は壊れないもの、という信仰でも存在するんだろうか。或いは、やっぱり時代が加速度的に進展しているお陰で、機械の信頼性という概念自体あんまり定着していないのではないか、と思ってしまう。
世界大戦や総力戦というターニャが提唱した概念を、結局ゼートゥーアやレルゲンも感覚的にしか把握しきれず、この決定的な場面において旧時代の感性に身を任せてしまったことからも、時代の進展に肝心の人間たちが追いつけていないことが窺い知れるだけになおさらに。
おおよそ、時代の最先端を走っているであろう彼らをしてこれである。時代を切り開いていくのは人間ではなく、むしろ激流のように過去を押し流しミライへと突進していく時代を人間は後から必死に追いかけているだけで、自分たちが居る世界の有り様を渦中の人たちこそ全く把握しきれていないものなんじゃないだろうか。これは、作中の話だけではなく人類史の通史的にそうであり、まさに現代にも通じる話のように思う。今を生きる我々は、我々こそ今の時代の常に変容し未来へと流れていっている有り様に、ついていけてないし、全く把握しきれていない気がする。その一部でも鑑みれるようになるのは、果たして二十年後か半世紀後か、はたまた百年後か。数百年前の歴史ですら刻々とその見解が変わっていくのを見ると、果たして人類が歴史に太刀打ちできる存在なのか疑わしくなってくる。
ターニャ・デグレチャフ魔導少佐こそ、この時もっともそれを痛感していた一人なのかもしれない。神を憎み神を下して人類の世界を成り立たせようとしてる彼女にとって、この時代そのものの激流への抗いがたさはなんとも腹立たしいものだろう。もっとも、彼女の敵である存在Xたちですら、一石を投じるくらいの影響しか及ぼせずに無力を晒しているようにも見えるのだけれど。それも、随分と的はずれな一石ばかりを。まったくもって、旧世界の置き去りにされた存在である。もっとも、そんな存在であるからこそ、投じた一石が迷惑千万なことにもなるのだけれど。
ともあれ、自分が及ぼせる影響範囲にもどかしさを感じているだろうターニャ少佐だけれど、それでも未だ旺盛な出世欲が、自分が全部動かしてやる、という独裁的な野心に発展することなく、通常の組織内でのそれにとどまっているのは、らしいというかなんというか。
周りの評価も相当混沌と化してきてますしねえ。怪物や不良軍人扱いされたりする一方で、理想的な模範的軍人として評価されたりもして、直接相対する人たちの評価も千差万別。そのどれもが、ターニャ・デグレチャフの内面を言い当てているとはイイ難いのですが、一方で彼女の内面に対して彼女が実際に成している業績や実情が見事にすれ違っているのも確かな話で、ぶっちゃけターニャが何考えていようと結果がすべてと見るならば、やっぱり彼女優秀で理想的な軍人で英雄なんだよなあ。
北アフリカ戦線へと投入された彼女の、あの戦術レベルで戦略的に詰みへと至っていた戦況をひっくり返してしまった展開なんぞ、痛快の一言でしたし。ロンメル将軍相当の、あの砂漠狐さんはあれ、ターニャの使い方凄くうまいですよね。いや、放し飼いにしてるだけ、と言ったらそれまでなんだけれど、あれを放し飼いで自由にやらせる。放置じゃなくて、命令として自由にやれ任せる、と言えるのは性格的にアレなところが多分にあるとはいえ、やっぱり将器よなあ。
戦況は、海を隔てた大国すらまだ参戦していない状況なのですけれど、既に泥沼に足を突っ込んでしまってそれを抜いて脱出する機会を永遠に失ってしまったことは痛感させられてる展開なので、いやあどんどん酷いことになってくんでしょうなあ、楽しみ。

1巻 2巻感想


幼女戦記 2.Plus Ultra ★★★☆  

幼女戦記 (2) Plus Ultra

【幼女戦記 2.Plus Ultra】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ エンターブレイン

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金髪、碧眼の幼い少女という外見とは裏腹に、『死神』『悪魔』と忌避される、帝国軍の魔導大隊の指揮官、ターニャ・デグレチャフ魔導少佐。大軍を烏合の衆と嗤い、懸命の抵抗を蹂躙し、焼けといわれた街を焼く。彼女の姿は、帝国軍という暴力装置の矛先として先陣にあった。各国の思惑が入り乱れ、激化する戦局の中で、帝国軍参謀本部は、勝利の秘訣は、『前方への脱出』のみと確信する。
これ、確かにアニメ見るのがこの本を読むのより先か後かでだいぶ印象変わってくるだろうなあ。
自分はアニメが先だったので、デグ氏はあの容姿・碧さんの声で統一されております。
しかし、こうして読んでいるとデグ氏はホント他人を駒とか盾とか、自分の保身と出世基準で世の中見ている一方で、部下や上司に対しての評価はかなり高いんですよね。いや、周りの人間が基本的に優秀な人物ばかりなせいもあるのですけれど、何気に内心でも誉めっぱなしだし実際の言動でも評価と賞賛、報酬や気配りも欠かしていないので、厳しい軍人であるけれどそりゃ尊敬されるだろうな、と。客観的に見てたらデグ氏に対する周りの人間のそれは、勘違いじゃなくて妥当な評価なんだよなあ。
ヴァイス副長なんか、ダキア戦での叱責以降はもうデグ氏誉めっぱなしだし。読んでたら一挙手一投足に満足してますもんねえ。
ダキア大公国戦の、いわゆる実弾演習はむしろアニメ版の方がビジュアル的にもどれほどダキアが時代遅れかという点では分かりやすかったかも。あれに関しては映像の一目瞭然さが大きすぎましたからね。そんでもって、ダキア首都での避難勧告も、あれは悠木碧さんの幼女演技が効きすぎましたわな。
協商連合戦では、フィヨルド攻略戦のあと、あのアンソン氏がデグ氏によって撃墜された事件、あれアニメではかなり重要な脱出戦での攻防が省かれてたんですなあ。協商連合、デグ氏のお陰でとんでもないことになってるじゃないか。
これに関しては本当に偶然なのだけれど、そして客観的に調査しても偶然でしか無い、という結論しかでないんだけれど、サイコロ5つを三度振って三回とも1のゾロ目が出揃った場合、果たしてそれを人為的なものではなくあくまで偶然と、人間は信じられるかどうか、という問題。
信じられるわけがないのである。
おかげでありもしない謀略、内通者、情報漏えいなど防諜過程の徹底した洗い直し、という無駄な作業が絶対に原因が発見できないまま行われ続けるわけで、デグ氏の戦果はこれ何気に単なる協商連合の政治的残存勢力の根切りのみならず、アルビオン連合王国の情報関係を一時的にも機能不全にしたという意味で凄まじいものになっているはずなんだけれど、この事実を帝国の方はさっぱり把握してないんですよね。それもまあ当然なのですが。

小説ではデグ氏の大隊が北からライン戦線に戻されたあたりで新加入となるグランツ少尉。アニメだといつの間にかレギュラーとして居た彼ですけれど、原作だと途中からの補充兵だったのか。このあたりから、大隊でも戦死者こそ出さないものの、徐々に戦線復帰不能など離脱者が増えていくのね。ダキア戦の楽さはまだしも、協商連合戦などよりも西部戦線の過酷さがうかがい知ることが出来る。
その上、件のアレーヌ市制圧戦である。
これ、意外なことに後世でも法解釈的には問題はなく、帝国側が強硬措置に討ってでざるをえなかった事情と状況、戦況についてもちゃんと客観的に論評はされてるんだ。もっとヒステリーに悪意に拠る虐殺とレッテル貼られてもおかしくなさそうな状況だっただろうに。
そう考えると、デグ氏の徹底した戦場犯罪者として断罪されるのを避けるためにあれこれ駆使した予防措置というのは、ちゃんと機能していたんだなあ。もっとも、デグ氏からすると事前にあげておいた論文の実践が自分に回ってくるとは露とも思っていなかったわけですが。
デグ氏自身は立場や身の安全という保身主義的にこの虐殺を実行するリスクを鑑みてヤダなあ、と思っていたわけですけれど、傍から見ると軍人としては行わなくてはならないが人間として苦渋の決断をくださなくてはならない悲哀というふうに見えて、なぜか人間味があるように見えてしまうんですよね。手を下すはめになった部下からも恨みではなく共感という形で気持ちが離れることはありませんでしたし。

さて、この後のルーデンドルフ・ゼートゥーアコンビによる戦争芸術も、ひいてはデグ氏の示唆がきっかけであることを鑑みると、確かにこの世界大戦の様相の何割かはデグ氏が筆を加えたことによる有様なんですよねえ。結果として、ほぼ全部それに伴う実行・実践はデグ氏に回ってくるので自業自得を堪能しているのがなんともはや。
デグ氏、まんべんなくご愁傷様である。

1巻感想

ブラック・トゥ・ザ・フューチャー 坂上田村麻呂伝 ★★★★   

ブラック・トゥ・ザ・フューチャー 坂上田村麻呂伝

【ブラック・トゥ・ザ・フューチャー 坂上田村麻呂伝】 左高例/八つ森佳 エンターブレイン

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「何事も為せば成る、さ」 史上空前のオルタナ系歴史小説!!

アメリカ合衆国ゴッタマシティの黒人警官マール・タムラは薬をキメた神父に撃ち殺されて殉職するが、生まれ変わり日本の武官の子として目覚める。転生した先は、奈良平安時代、時は蝦夷討伐の真っ只中。その名も坂上田村麻呂として前向きに生きていくうち、蝦夷討伐軍の英雄としての生き様を運命づけられていく-------
あることないこと史実入り混じった史上空前のオルタナ系歴史小説が登場!!

主演:エディ・マーフィーですね、わかります。
声は山寺宏一ですね、わかります。

オルタナ系ってなんだよ!? と、あらすじの紹介文見て首捻ってたのですが、いわゆる「型にはまらない」という意味合いが相当しそう。作者の代表作は【異世界から帰ったら江戸なのである】。これがまた素晴らしくキレキレのコメディであると同時に、江戸の風俗を詳細に掌握した上でメチャクチャ面白くネタにしてる傑作なんですよね。かくの如く、ノリノリにハッチャケた歴史小説、という分野において富士山のごとくそそり立っているのがこの作者なのである。大ファンなのよね、自分。オルタナ系歴史小説という呼び方はこうして見るならばまさに的を射ているのかもしれません。
一方で、いわゆる大江戸日常モノな【異世界から帰ったら江戸なのである】に対して、本作は坂上田村麻呂という英雄の生涯を描いた大河浪漫でもあります。その観点に拠るのなら、むしろ本作は【神聖じゃないよ! 破門皇帝フレデリカさん】のタイプなのでしょう。
かの早すぎた啓蒙君主であるフリードリヒ2世が実は女の子フレデリカちゃんでした、というTS歴史コメディなのですが、あの作品も散々賑やかに笑いを絶やさず騒がしておきながら、やはり一人の英傑の一生涯を追想するという意味で悲劇あり、別れあり、そしてその結末においてもどこか寂寞の想いを掻き立てられる切なさがあったんですよね。
大河浪漫というものはそういうものかもしれません。一人の人間の生まれたときからその生涯の終わりまでをずっと見続けるのです。その終わりには寂しさを覚えずにはいられないものなあ。

でも、だからこそ明るく陽気にフィーバーフィーバー♪ なのですよ。主人公のマールは、それこそあのコメディポリスアクションに出てきそうな、底抜けに陽気で楽天的で人生を大いに楽しむ快男児。そんな男の人生が、暗く物悲しいものであるはずがありません。周りの人たちも巻き込んで、実に賑やかに騒がしくスチャラカホイホイと歴史は変転していきます。
坂上田村麻呂は、日本で最初の征夷大将軍と呼ばれた英雄。蝦夷討伐で功績をあげた、というところくらいまでは知っていましたけれど、その知名度とは裏腹に時代背景やその業績なんかなかなか知り得ないものだったのですけれど、いやあ結構色々とエピソード持ってるんですなあ。
パラッパラッパーなソウルをそのまま引き継ぎ、はっちゃけフリーダムなキャラクターとして幼い頃からブイブイ言わせていた田村麻呂の最大の理解者であったお爺さんの坂上犬養との掛け合いから、家族間の愛情にしても同輩や上司部下との親愛ある関係。田村麻呂が人好きする性格というのもあるのですが、彼の周りに愛されるフレンドリーなキャラが、読んでいても実に心地よかった。史実の坂上田村麻呂からして、ほとんど後ろ暗いところのない業績も人格も非の打ち所のないパーフェクト英雄だった、というのもあるんでしょうけれど、彼の陽気さに引っ張られるように老いも若きも笑顔が絶えない愉快さは、本当に楽しかった。
これと相対することになるアテルイたち蝦夷が可哀想になるくらい。あっちはどちらかというと苦行に耐えて試練を乗り越え楽園を目指す求道者たちの在り方でしたからね。あちらはあちらで主人公の風格を持ち得ていたのですが、根暗よりも陽気が強かったということなのか。単純に神のご加護的に「やっちまってた」というのもあるのかもしれませんが。
あれはアウトだね、アウト。偶像崇拝禁止!!

一方で、この時代まだ大和民族という単一民族が成立しきれていない、色んな民族が色んなところから流れてきて混在しているような時代で、キレキレワーカーホリックの桓武天皇からして母親は渡来人系。田村麻呂も隔世遺伝かで黒人と大陸系が混じったような容姿なのですが、そういう異なる様相、民族というのを諸共しない、そのカオスこそをパワーとしたような時代を、田村麻呂が先頭になって引っ張っていくような爽快感、痛快感がある英雄譚でもありました。蝦夷という異民族討伐も、異なる民族の排斥という枠組みにしないで民族の坩堝をより広げていくような勢いがあったんですよね。図らずも、田村麻呂自身がその坩堝を象徴し、わけへだけなく明るく楽しく陽気に人生楽しもうぜ、という姿勢を皆に見せつけていたからこそ、の空気なのでしょう。
前世男でギーグで同性愛者で、あと同僚だった娘さんが嫁に押しかけてきて、十年近くかけて結局押し切られて子供たくさん作っちゃうあたりも、率先して分け隔てなく生きたのを見せつけてくれたんじゃないでしょう、か!!
いやうん、前世がどうあれ、あれだけ可愛くて性格も良くて前世知識をいかしてあれこれ美味しいモノ作ってくれて胃袋掴まれた挙句、十年単位でにじり寄られたら、押し切られても仕方ないか、うんうん。

しかし、田村麻呂って蝦夷討伐以外にも結構色々と逸話とかあるんですねえ。この作品だと中身が中身だけに、すちゃらかにはっちゃけたエピソードになってますけれど、鈴鹿御前とかそうひねってきたかー。
なかなか馴染みのない時代だったんですけれど、軽いノリでありながらサラッと頭に入る時代背景や宮廷の様子、風俗なんかが描かれていて、そちらの観点からしても非常に面白かった。田村麻呂以外の登場人物も、キャラ立っていると同時に田村麻呂との人間関係の描かれ方、というか親しみ方というのが実に温かくて、突き放したところから見る英雄譚じゃなく、周りの人達の肩に手を回して抱き寄せながらくだらないことと吹きながら歩く愛すべき男の人生、と言った感じで、なんとも自然と笑みが浮かんでしまう素敵なお話でした。
一巻で完結というだけあって、結構サクサクと進んでしまうのがなんか勿体無いくらいで。これで終わってしまうのが物足りない、寂しい、まだまだ見ていた、と読後に思ってしまった時点で、一人の人生を描く作品としては成功だわなあ。
今度はもっかい、シリーズ物で書籍読みたいです。【投擲士と探検技工士は洞窟を潜る】とか、書籍化せんのだろうか、あれ。

あ、そう言えば狐面、こっちでも登場してましたね。あの一族の性質からして、居てもおかしくないとは思ってましたけれど。ってか、この時代だとまだ始祖にだいぶ近いのか。
あと、取り敢えず誰か餅で喉詰まらせて死なそうとしなさんなw 何気にピッツァに関しては江戸時代よりもこっちの方が材料限定していた分もあるんだろうけれど、作りやすそうだった気がする。美味そうだなあ、ピッツァ……。


左高例作品感想

幼女戦記 1.Deus lo vult ★★★★   

幼女戦記 (1) Deus lo vult

【幼女戦記 1.Deus lo vult】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ エンターブレイン

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金髪、碧眼そして白く透き通った肌の幼女が、空を飛び、容赦なく敵を撃ち落とす。
幼女らしい舌足らずさで軍を指揮する彼女の名はターニャ・デグレチャフ。
だが、その中身は、神の暴走により幼女へと生まれ変わることとなった日本のエリートサラリーマン。
効率化と自らの出世をなにより優先する幼女デグレチャフは、帝国軍魔導士の中でも最も危険な存在へとなっていく――。
おお、思ってたよりも分厚い。読んでも読んでも終わらなくて結構時間が掛かってしまった。アニメの方って、一巻分で五話くらいまで行ってたんだ。ということは、ストックだけなら相当あるんだなあ。
というわけで、アニメからの参入組。ウェブ掲載時から関心はあっていつかは読もうと思いながら幾星霜。書籍化どころかアニメ化までしてしまいましたよ。かなり濃度が高い文章がかなりの分量蓄積されてたんで軽々に読み始めること叶わなかったんですよね。とか言ってる間にここまで来てしまったのでどうしようもないのですが。
ともあれアニメという機会を得て、こうして書籍を……購入は実は結構前にしてたんですけどね、ともかく読むに至ったわけですから、アニメ化の影響ってのはやっぱり大きいんだなあと実体験で実感しております。
しかし、これ一度アニメという映像情報を入力してから読んで良かったですよ。これ、文章からだと結構イメージ湧きにくかったと思います。特に戦闘シーンなんぞは。一概にアニメの航空戦なんかが最良なものとはさすがに思わないんですけれど、イメージを固めるのに大まかな方向性を得るには十分な足がかりでした。
あと、声ね。これはもう悠木碧さんさまさまですなあ。もう完全にあの舌っ足らずの冷血声でイメージが固着されましたし、幼女でありながら軍人の中の軍人という矛盾した歪な存在をこれ以上無くしっかりと思い描くことが出来ましたし。
でもこう、意外と言えば意外なのですけれど、デグさん思ってたよりもマトモな感じするんですよねえ。もっと内面描写を目の当たりにするとヤバイ人なのかと思ってましたけれど、俗物極まるし他人に対して共感能力をあんまり持ってないし、戦略的な視野を持ってると評される割に内実は近視眼的というか先を見ているようで足元しか見て無くてよく頭ぶつけてるみたいな人なんだけれど、人格破綻者という程じゃあないんですよねえ。
そりゃあ、他人のこと人を人とも思ってない冷血人間ですけれど。情とかあんまり殆ど持ち合わせてないタイプですけれど。でも、善悪の区別はつくし(必要とあらば一顧だにしないしないにしても)、人間の持つ情は理解しているし(考慮するかは別にして)、それらを別に見下したり蔑視しておらず理性を以てそれらが社会的に評価され重要視されるものとして扱っているわけだし、社会秩序や人間の理性に対する破壊者ではないんですよね。
社会自体が狂気の方向に舵を切っても、一切ブレずに乗っかり続けるという意味では危険なのかもしれないけれど、彼女自身が主体的に危険な方、狂気の方角に社会を牽引するというタイプじゃないんですよね。
そりゃあもう、尋常ならざる人でなしではあるんだけれど。でも、この段階だと実際の人間性がどれだけあかんくても、周りの人はそれを実感するような行為を受けたわけじゃないですし、彼女が実際何を考えていたとしても結果は彼女に与えられている評価が示している以外のナニモノでもないわけで、レルゲン参謀のそれはまあ言い掛かりでしかないんだよなあ。彼のテグ氏への危険視も、半分的外れではあるわけだし。
そんでもって、テグ氏の愛嬌となっているのはその幼女な外装と内面のギャップもさることながら、その人でなしな俗物の在り方に対して、ほぼ常に痛い目見続けてる、或いは自業自得で責任を負い続けて一番キツイ部分を実行し続けているところなんですよね。
つまるところ、わりと頻繁に「ざまぁ」と喰らい続けている、と。そうでありながら、この人懲りないのである。全然懲りないのである。数々の失敗と言うか思惑を踏み外す原因となるところはわりと一貫して同じなのに、その部分についてはまあ反省しないどころか、自覚もないっぽいんですよねえ。なので懲りない。実にウキウキと楽しげに自分だけの利益を甘受しようとして下ばっかり見てて、頭を梁にぶつけるのである。理性の怪物でありながら、出世欲という欲望、或いは本能に関しては忠実すぎるほど忠実というべきなのか。
神もまあ、呆れるわけである。
とはいえ、その神もその理不尽さにかけてはひどいものだ。ってか、存在X、初対面時にテグ氏となるサラリーマン氏に思いっきり論破されかかってたように見えたんですが。思ってたより言い負かされてたし!もろ逆ギレじゃねえかw
あの神のマッチポンプには、さすがにテグ氏に同情してしまいます。人間の理性と意思の信奉者にとっちゃあひでえ扱いだもんなあ。あれは悪魔呼ばわりされても仕方ないというか、悪魔のほうがまだ契約方面に誠実な気がします。

さて、国際情勢と戦争についてですが、アニメだとさすがに国際情勢よくわからんかったのですが、こっちを読むと整理されていてかなりわかりやすかったです。
テグ氏の提唱した世界大戦という概念に対する衝撃も、協商との開戦から共和国の参戦という過程の実態を見ているとかなり実感として危機感を得られるものでしたし。
それに、協商との開戦から西部戦線のあの大ピンチっぷり、何が起こってどうなってたのか。なるほど、そりゃ帝国側、大悪手を打ってしまってたんだなあ。そりゃあ、事前に長年かけて準備していた戦争計画を目先の利益にかまけて自分で台無しにしちゃってたら、計画そのものがいきなり破綻してしまうのも無理ないですがな。
内戦作戦の難しさは、帝国の地政学的立ち位置も相まって考えさせられるところですけれど、だからこそあれだけ綿密に計画してたのに……。
物凄く雑な参照例ですが、シミュレーションゲームの【信長の野望】なんかでわりと似たようなことは良くやらかしましたねえ。織田包囲網シナリオの織田家プレイなんかしてると、結構実感できるんじゃないでしょうか、この帝国の苦闘なんかは。





 
11月26日

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